差込ソケット溶接継手
【課題】 ソケット本体の端面に内開先を形成することにより、溶接部の引張強度を向上させた差込ソケット溶接継手を提供する。
【解決手段】 管体1,2の溶接端部をソケット本体3の端部に差し込んだ状態で両者を溶接することにより、管体の配管を行う差込ソケット溶接継手であって、ソケット本体の端部外周面側から内周面側へ端面を切徐することにより、ソケット本体の端部内周面側に内開先4を形成したもので、管体に対する溶接長が従来の内開先を設けない差込ソケット溶接継手に比べて溶接部の引張強度が格段に向上するため、差込ソケット溶接継手と管体を接続する溶接部の耐久性及び信頼性の向上が図れる。
【解決手段】 管体1,2の溶接端部をソケット本体3の端部に差し込んだ状態で両者を溶接することにより、管体の配管を行う差込ソケット溶接継手であって、ソケット本体の端部外周面側から内周面側へ端面を切徐することにより、ソケット本体の端部内周面側に内開先4を形成したもので、管体に対する溶接長が従来の内開先を設けない差込ソケット溶接継手に比べて溶接部の引張強度が格段に向上するため、差込ソケット溶接継手と管体を接続する溶接部の耐久性及び信頼性の向上が図れる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接部の引張強度を向上させた差込ソケット溶接継手に関する。
【背景技術】
【0002】
従来ビル等の建造物には、水道管やガス管等(以下配管類という)が配管されており、これら配管類は建造物を建造する際に所定の配管スペース内に予め配管することが一般に行われている。
また、これら配管類は、例えば直管よりなる主管と、主管より分岐した枝管と称する分岐管等から構成されていて、主管同士の接続部や主管と分岐管の接続部、分岐管同士の接続部には、フランジやエルボ、チーズ、ソケット等の管継手が一般に使用されている。
【0003】
これら管継手には、管体と継手をねじにより接続するものがあるが、現在では施工の容易性やシール材が不要であること、接続部の信頼性が高い等の理由から、管体と継手を溶接により接続する溶接継手が多く使用されている。
特に配管に差込ソケット溶接継手を使用した場合、フランジ継手を使用する場合に比べて次のような利点がある。
【0004】
すなわち配管にフランジ継手を使用した場合は、フランジ継手の間にパッキンを介在させた状態でフランジ継手同士をボルトナット等の固着具により締結する作業を行うため、配管作業に時間がかかる上、パッキンや固着具等の部品を必要とすることから部品コストが高い等の問題があるが、差込ソケット溶接継手を使用した場合、パッキンや固着具が不要となるため部品コストの削減が図れる。
さらにビル等の建造物に配管する配管類には、凍結防止や保温のために配管類を保温材で被覆する必要がある。
【0005】
しかし配管にフランジ継手を使用した場合、図12に示すように配管類aとフランジ継手bを別の保温材c,dで保温する必要がある。
すなわち配管類aの外周面は、筒状の保温材cで被覆するが、フランジ継手b部分は、予めフランジ継手bの形状に合わせて製作したボックス型の保温材dにより被覆しなければならず、図11に示す差込ソケット溶接継手を使用して配管した場合に比べて費用的に大幅な相違がある。
例えば口径が100Aの管体を差込ソケット溶接継手を使用して配管した場合、差込ソケット溶接継手部分に要する1個所の保温費用は、施工費も含めて約300円程度である。
【0006】
これに対しフランジ継手bを使用した場合、フランジ継手b部分をボックス型の保温材dで被覆する必要があるため、フランジ継手b部分に要する1個所の費用は約4450円程度となり、実にソケット継手の約15倍もかかることになる。
以上のように配管に差込ソケット溶接継手を使用すると、配管作業が短時間で能率よく行える上、部品コストも低く、しかも保温に要する費用の大幅な削減が図れる等の利点があることから、差込ソケット溶接継手を使用した配管工法が注目されている。
【0007】
一方差込ソケット溶接継手を使用して配管類の配管を行う配管方法が例えば特許文献1や2に記載されている。
例えば特許文献1に記載の差込ソケット溶接継手の溶接方法は、配管の端部に差込ソケット溶接継手を差し込んで両者を肉盛り溶接するに当たって、上部に向けて複数層積層した溶接肉盛りの最終層を配管側に積層するようにしたもので、差込ソケット溶接継手の間隙部における溶接残留応力の発生を抑制することにより、応力腐食割れを防止することができる効果を得ている。
【0008】
また前記特許文献2に記載の差込ソケット溶接継手は、配管端部をソケットに差し込んで両者を溶接した後、溶接部近傍のソケット端部外周を切除することにより、溶接部に発生する高引張り残留応力を低減するようにしたもので、溶接材における高温割れの発生及び進展を抑制できる等の効果を得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−118074号公報
【特許文献2】特開平9−229248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
差込ソケット溶接継手を使用して配管を行う場合、ソケット本体に管体の接続端部を差し込んで、ソケット本体の端面と管体の外周面を溶接する作業を行うが、配管類の使用時には、管体内の内圧により管体とソケット本体の溶接部に大きな引張荷重が作用する。
このため管体とソケット本体の溶接部には、引張荷重に耐える引張強度が必要となるが、前記特許文献1や2に記載の差込ソケット溶接継手のように、両端面が軸線に対し直角な平面となった図13に示すような所謂I開先を使用した場合は、下記の表1に示す引張強度試験結果に示すように、引張強度が平均144.5N/mm2程度しか得られず、引張強度不足が問題となる。
【0011】
【表1】
溶接条件及び使用材料 TIG溶接2層盛り
管体:JIS G 3452(SGP)
差込ソケット溶接継手:肉厚6.0mm以上
差込ソケット溶接継手の内周と管体外周間の隙間1.5mm±0.5mm
なお試験方法としては、JISZ2241(金属材料引張試験方法)により行い、引張強さを算定した。
また引張試験機は、JIS7721による等級1級以上とした。
試験方法については、以下に示す各表についても同様である。
【0012】
本発明は前記問題を改善するためになされたもので、ソケット本体の端面に内開先を形成することにより、溶接部の引張強度を向上させた差込ソケット溶接継手を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の差込ソケット溶接継手は、管体の溶接端部をソケット本体の端部に差し込んだ状態で両者を溶接することにより、管体の配管を行う差込ソケット溶接継手であって、ソケット本体の端部外周面側から内周面側へ端面を切徐することにより、ソケット本体の端部内周面側に内開先を形成したものである。
【0014】
前記構成により、管体に対する溶接長が従来の内開先を設けない差込ソケット溶接継手に比べて増加するため溶接部の引張強度が格段に向上し、これによって差込ソケット溶接継と管体を接続する溶接部の耐久性及び信頼性の向上が図れる。
また差込ソケット溶接継手の端部に管体の溶接端部を差し込む際、ソケット本体の端部に形成された内開先が管体の溶接端部を差込ソケット溶接継手の内周面側へとガイドするため、管体の差し込み作業が容易な上、管体の溶接端部を差込ソケット溶接継手に差し込むことにより両者の芯合わせが完了し、これによって管体に継手を突き合せ溶接する配管方法に比べて、施工時の芯合わせと仮組みが容易かつ迅速に行えるようになる。
さらに差込ソケット溶接継手を使用して配管行うため、フランジ継手の間にパッキンを介在させた状態でフランジ継手同士をボルトナット等の固着具により締結する等の作業が不要となり、これによって配管作業が能率よく行える上、パッキンや固着具が不要となるため部品コストの削減が図れると共に、配管類の外周面を保温材で保温する場合、フランジ継手を使用して配管したものに比べてフランジ継手部分を予めフランジ継手形状に合わせて製作した保温材により被覆する必要がないため、保温に要する経費の大幅な削減が図れる。
【0015】
本発明の差込ソケット溶接継手は、内開先を、ソケット本体の端面を外周面から内周面方向へ楕円状に切徐することにより形成したR開先としたものである。
【0016】
前記構成により、管体対する溶接長が従来の内開先を設けない差込ソケット溶接継手の溶接長に比べて倍増するため、溶接部の引張強度が格段に向上する。
【0017】
本発明の差込ソケット溶接継手は、内開先を、ソケット本体の端部を外周面から内周面側へ斜めに切徐することにより形成したV開先としたものである。
【0018】
前記構成により、管体対する溶接長が従来の内開先を設けない差込ソケット溶接継手の溶接長に比べて倍増するため、溶接部の引張強度が格段に向上する。
【0019】
本発明の差込ソケット溶接継手は、内開先を、ソケット本体の端部を外周面側から内周面側へ斜めに切徐することにより形成した第1傾斜面と、第1傾斜面に連続し、かつ第1傾斜面と異なる角度で内周面方向へ斜めに切徐することにより形成した第2傾斜面とからなるZ開先としたものである。
【0020】
前記構成により、管体対する溶接長が従来の内開先を設けない差込ソケット溶接継手の溶接長に比べて倍増するため、溶接部の引張強度が格段に向上する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の差込ソケット溶接継手によれば、管体に対する溶接長が従来の内開先を設けない差込ソケット溶接継手に比べて溶接部の引張強度が格段に向上し、これによって差込ソケット溶接継手と管体を接続する溶接部の耐久性及び信頼性の向上が図れる。
また差込ソケット溶接継手の端部に管体の溶接端部を差し込む際、ソケット本体の端部に形成された内開先が管体の溶接端部を差込ソケット溶接継手の内周面側へとガイドするため、管体の差し込み作業が容易な上、管体の溶接端部を差込ソケット溶接継手に差し込むことにより両者の芯合わせが完了するため、管体に継手を突き合せ溶接する配管方法に比べて、施工時の芯合わせと仮組みが容易かつ迅速に行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態になる差込ソケット溶接継手を使用した配管例を示す正面図である。
【図2】本発明の実施の形態になる差込ソケット溶接継手の使用状態を示す一部切欠拡大図である。
【図3】本発明の実施の形態になる差込ソケット溶接継手の内開先部分を示す拡大断面図である。
【図4】本発明の実施の形態になる差込ソケット溶接継手の溶接部分を示す拡大断面図である。
【図5】本発明の実施の形態になる差込ソケット溶接継手の第1変形例を示す使用状態の一部切欠拡大図である。
【図6】本発明の実施の形態になる差込ソケット溶接継手の第1変形例を示す内開先部分の拡大断面図である。
【図7】本発明の実施の形態になる差込ソケット溶接継手の第1変形例を示す溶接部分の拡大断面図である。
【図8】本発明の実施の形態になる差込ソケット溶接継手の第2変形例を示す使用状態の一部切欠拡大図である。
【図9】本発明の実施の形態になる差込ソケット溶接継手の第2変形例を示す内開先部分の拡大断面図である。
【図10】本発明の実施の形態になる差込ソケット溶接継手の第2変形例を示す溶接部分の拡大断面図である。
【図11】本発明の実施の形態になる差込ソケット溶接継手を使用して配管した配管類の保温材施工状態を示す説明図である。
【図12】従来のフランジ継手を使用して配管した配管類の保温材施工状態を示す説明図である。
【図13】従来の差込ソケット溶接継手の溶接部分を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施の形態を、図面を参照して詳述する。
図1は差込ソケット溶接継手を使用して配管を行う差込ソケット溶接継手工法の1例を示すもので、例えば白ガス管(SGP)よりなる管体1及び2を差込ソケット溶接継手により接続した状態を示しており、以下管体1,2のサイズが呼称100Aの場合について説明する。
なお称呼100A以外の管体1,2を使用する場合は、差込ソケット溶接継手と各管体1,2の内周面との間に形成される隙間等の寸法は当然異なるものである。
差込ソケット溶接継手を構成するソケット本体3は、図2に示すように各管体1,2の外径より例えば+4mmほど内径が大きい筒状に形成されていて、ソケット本体3と各管体1,2の内周面との間に1.5mm±0.5mm程度の隙間が生じるようになっている。
【0024】
ソケット本体3は、例えば肉厚tは6.0mm以上となっており、ソケット本体3の両端部の内周面側に開先(これを内開先4という)が図3に示すように形成されている。
また図3に示す形状の内開先4をR開先4aという。
ソケット本体3の両端部に形成されたR開先4aは、ソケット本体3の端面3aを外周面3bからt1、例えば1.5mm残した状態で、機械加工により内周面3c方向へ楕円状に切徐することにより形成されていて、端面3aからの深さ、すなわち楕円の長半径L1は6.0〜6.6mm程度に、そして短半径L2は4.5mm程度となっている。
以上のようにしてソケット本体3の両端面にR開先4aが形成された差込ソケット溶接継手は、工場において配管類を下拵えする際、互いに接続する管体1,2の一方に予め溶接されて配管現場へ搬入されるが、工場において差込ソケット溶接継手の両端部に管体1,2を溶接したり、配管現場において差込ソケット溶接継手の両端部に管体1,2を溶接することもある。
【0025】
次に工場において予め一方の管体1に差込ソケット溶接継手を溶接する際の作用を説明すると、まず差込ソケット溶接継手の一端側開口部に管体1の溶接端部を差し込むが、このときソケット本体3の端部に形成したR開先4aが管体1の端部を差込ソケット溶接継手の内周面方向へガイドするように作用するため、内開先が形成されていない従来の差込ソケット溶接継手に比べて管体1の差し込み作業が容易となる。
これは管体1のサイズが大きくなるほど顕著となるため、特に重量の重いサイズの大きい管体1の場合に差し込み作業が容易かつ能率よく行える効果が得られる。
差込ソケット溶接継手に管体1の溶接端部を差し込んだら、被覆アーク溶接または半自動溶接等によりソケット本体3の端部に形成されたR開先4aより隅肉溶接を行う。
隅肉溶接による肉盛りは複数層、例えば2層により行い、図4に示すように差込ソケット溶接継手の端部に差し込まれた管体1の溶接端部と差込ソケット溶接継手の一方の端部を溶接するもので、ソケット本体3の端部にR開先4aを形成することにより、管体1に対する溶接長L3が、内開先を設けない従来の差込ソケット溶接継手(図13参照)のL7に比べて増大するため、溶接部の引張強度が格段に向上する。
なお工場において管体1の溶接端部と差込ソケット溶接継手の一方の端部を溶接した場合の引張強度試験結果を次の表2に示す。
【0026】
【表2】
溶接条件及び使用材料 半自動溶接2層盛り
使用溶接棒 フラックスワイヤ 径2.0mm
管体:JIS G 3452(SGP)
差込ソケット溶接継手:肉厚6.0mm以上
差込ソケット溶接継手の内周と管体外周間の隙間1.5mm±0.5mm
【0027】
一方工場により一端側に差込ソケット溶接継手が溶接された管体1は、配管現場に搬入された後、差込ソケット溶接継手の他端側に現場溶接により管体2の溶接端部が溶接される。
一端側に差込ソケット溶接継手が溶接された管体1とともに現場へと搬入された管体2には、差込ソケット溶接継手を溶接する側と反対の端部に、例えばエルボ5を介して別の管体6が予め工場で溶接されている。
管体1及び2は建造物等へ配管される際には、水平方向へ配管される横管となり、エルボ5を介して管体2に溶接された管体6は、垂直方向へ配管される縦管となる。
管体2の溶接端部を差込ソケット溶接継手に溶接するに当っては、管体2の溶接端部を図2に示すように差込ソケット溶接継手の他端側開口より差し込むが、このときもソケット本体3の端部に形成されたR開先4aが管体2の溶接端部を差込ソケット溶接継手の内周面側へとガイドするため、管体2にエルボ5を介して別の管体6が接続されているような場合でも、管体2の差し込み作業が容易な上、管体2の溶接端部を差込ソケット溶接継手に差し込むことにより両者の芯合わせが完了するため、管体に継手を突き合せ溶接する従来の配管方法に比べて、施工時の芯合わせと仮組みが容易かつ迅速に行えるようになる。
【0028】
管体2の溶接端部を差込ソケット溶接継手の所定位置まで差し込んだら、被覆アーク溶接により差込ソケット溶接継手の端部に形成されたR開先4aより隅肉溶接を開始し、肉盛りを例えば2層により行うことにより、差込ソケット溶接継手の端部に差し込まれた管体2の溶接端部と差込ソケット溶接継手の他方の端部を溶接するもので、1個所溶接するだけで縦管となる管体6を横管となる管体1に接続することができるようになる。
以上のようにして差込ソケット溶接継手に溶接された各管体2と差込ソケット溶接継手の引張強度は、ソケット本体3の両端部にR開先4aを設けたことにより、管体2に対する溶接長L1が、開先を設けない従来の差込ソケット溶接継手f(図13参照)の管体gに対する溶接長L7に比べて倍増するため、溶接部の引張強度が格段に向上する。
なお配管現場において管体2の溶接端部と差込ソケット溶接継手の一方の端部を溶接した場合の引張強度試験結果を次の表3に示す。
【0029】
【表3】
溶接条件及び使用材料 被覆アーク溶接2層盛り
溶接棒 B−17 径3.2mm
管体:JIS G 3452(SGP)
差込ソケット溶接継手:肉厚6.0mm以上
差込ソケット溶接継手の内周と管体外周間の隙間1.5mm±0.5mm
【0030】
以上はソケット本体3の両端部にR開先4aを形成した差込ソケット溶接継手を使用して配管を行う場合であるが、図5ないし図7に示す第1変形例や、図8ないし図10に示す第2変形例の場合も同様な効果が得られる。
図5ないし図7に示す第1変形例の差込ソケット溶接継手は、ソケット本体3の端部を外周面から内周面側へ斜めに切徐することにより内開先4が成されていて、開先角度θ1は、ソケット本体3の軸線と直交する線に対し40〜60°程度に設定されており、以下この内開先形状をV開先4bという。
ソケット本体3の両端部にV開先4bが形成された差込ソケット溶接継手を使用して配管を行う方法は、前記実施の形態と同様なのでその説明は省略するが、管体1,2に対する溶接長L4が、開先を設けない従来の差込ソケット溶接継手(図13参照)の溶接長L7に比べて倍増するため、溶接後の引張強度は下記の表4及び表5に示す通り、従来の内開先を設けない差込ソケット溶接継手に比べて格段に向上する。
なお表4はV開先4bのθ1が50°の場合、表5はV開先4bのθ1が60°の場合を示す(溶接条件及び使用材料は、何れも同じ)。
【0031】
【表4】
【表5】
溶接条件及び使用材料 被覆アーク溶接2層盛り
溶接棒 B−17 径3.2mm
管体:JIS G 3452(SGP)
差込ソケット溶接継手:肉厚6.0mm以上
差込ソケット溶接継手の内周と管体外周間の隙間1.5mm±0.5mm
【0032】
図8ないし図10に示す第2変形例の差込ソケット溶接継手は、ソケット本体3の端部を外周面から内周面側へ角度θ2で斜めに切徐することにより形成した第1傾斜面4cと、第1傾斜面4cに連続し、かつ異なる角度θ3で内周面方向へ斜めに切徐することにより形成した第2傾斜面4dからなる内開先4が形成されていて、第1傾斜面4cの角度θ2は、ソケット本体3の軸線と直交する線に対し60°程度に、そして第2傾斜面4dの角度θ3は、ソケット本体3の軸線と直交する線に対し45°程度に設定されており、以下この内開先形状をZ開先4eという。
ソケット本体3の両端部にZ開先4eが形成された差込ソケット溶接継手を使用して配管を行う方法は、前記実施の形態と同様なのでその説明は省略するが、管体1,2に対する溶接長L5が、内開先を設けない従来の差込ソケット溶接継手(図13参照)の溶接長L7に比べて倍増するため、溶接後の引張強度は下記の表6の通り、従来の内開先を設けない差込ソケット溶接継手に比べて格段に向上する。
【0033】
【表6】
溶接条件及び使用材料 被覆アーク溶接2層盛り
溶接棒 B−17 径3.2mm
管体:JIS G 3452(SGP)
差込ソケット溶接継手:肉厚6.0mm以上
【0034】
なお前記実施の形態及び第1,2変形例では、差込ソケット溶接継手と管体1,2を接続する場合について説明したが、差込ソケット溶接継手と例えばエルボやチーズ等の継手を溶接する場合にも適用できるものである。
また配管に使用する管体1,2は、白ガス管に限らず、黒ガス管や黒STPG管等でもよく、管体1,2の口径は、50A〜400A等が好適であり、配管の用途は、雨水配管、冷水配管、冷温水配管、冷却配管、蒸気配管、還水配管等に適用できるものである。
【符号の説明】
【0035】
1 管体
2 管体
3 ソケット本体
4 内開先
4a R開先
4b V開先
4c 第1傾斜面
4d 第2傾斜面
4e Z開先
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接部の引張強度を向上させた差込ソケット溶接継手に関する。
【背景技術】
【0002】
従来ビル等の建造物には、水道管やガス管等(以下配管類という)が配管されており、これら配管類は建造物を建造する際に所定の配管スペース内に予め配管することが一般に行われている。
また、これら配管類は、例えば直管よりなる主管と、主管より分岐した枝管と称する分岐管等から構成されていて、主管同士の接続部や主管と分岐管の接続部、分岐管同士の接続部には、フランジやエルボ、チーズ、ソケット等の管継手が一般に使用されている。
【0003】
これら管継手には、管体と継手をねじにより接続するものがあるが、現在では施工の容易性やシール材が不要であること、接続部の信頼性が高い等の理由から、管体と継手を溶接により接続する溶接継手が多く使用されている。
特に配管に差込ソケット溶接継手を使用した場合、フランジ継手を使用する場合に比べて次のような利点がある。
【0004】
すなわち配管にフランジ継手を使用した場合は、フランジ継手の間にパッキンを介在させた状態でフランジ継手同士をボルトナット等の固着具により締結する作業を行うため、配管作業に時間がかかる上、パッキンや固着具等の部品を必要とすることから部品コストが高い等の問題があるが、差込ソケット溶接継手を使用した場合、パッキンや固着具が不要となるため部品コストの削減が図れる。
さらにビル等の建造物に配管する配管類には、凍結防止や保温のために配管類を保温材で被覆する必要がある。
【0005】
しかし配管にフランジ継手を使用した場合、図12に示すように配管類aとフランジ継手bを別の保温材c,dで保温する必要がある。
すなわち配管類aの外周面は、筒状の保温材cで被覆するが、フランジ継手b部分は、予めフランジ継手bの形状に合わせて製作したボックス型の保温材dにより被覆しなければならず、図11に示す差込ソケット溶接継手を使用して配管した場合に比べて費用的に大幅な相違がある。
例えば口径が100Aの管体を差込ソケット溶接継手を使用して配管した場合、差込ソケット溶接継手部分に要する1個所の保温費用は、施工費も含めて約300円程度である。
【0006】
これに対しフランジ継手bを使用した場合、フランジ継手b部分をボックス型の保温材dで被覆する必要があるため、フランジ継手b部分に要する1個所の費用は約4450円程度となり、実にソケット継手の約15倍もかかることになる。
以上のように配管に差込ソケット溶接継手を使用すると、配管作業が短時間で能率よく行える上、部品コストも低く、しかも保温に要する費用の大幅な削減が図れる等の利点があることから、差込ソケット溶接継手を使用した配管工法が注目されている。
【0007】
一方差込ソケット溶接継手を使用して配管類の配管を行う配管方法が例えば特許文献1や2に記載されている。
例えば特許文献1に記載の差込ソケット溶接継手の溶接方法は、配管の端部に差込ソケット溶接継手を差し込んで両者を肉盛り溶接するに当たって、上部に向けて複数層積層した溶接肉盛りの最終層を配管側に積層するようにしたもので、差込ソケット溶接継手の間隙部における溶接残留応力の発生を抑制することにより、応力腐食割れを防止することができる効果を得ている。
【0008】
また前記特許文献2に記載の差込ソケット溶接継手は、配管端部をソケットに差し込んで両者を溶接した後、溶接部近傍のソケット端部外周を切除することにより、溶接部に発生する高引張り残留応力を低減するようにしたもので、溶接材における高温割れの発生及び進展を抑制できる等の効果を得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−118074号公報
【特許文献2】特開平9−229248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
差込ソケット溶接継手を使用して配管を行う場合、ソケット本体に管体の接続端部を差し込んで、ソケット本体の端面と管体の外周面を溶接する作業を行うが、配管類の使用時には、管体内の内圧により管体とソケット本体の溶接部に大きな引張荷重が作用する。
このため管体とソケット本体の溶接部には、引張荷重に耐える引張強度が必要となるが、前記特許文献1や2に記載の差込ソケット溶接継手のように、両端面が軸線に対し直角な平面となった図13に示すような所謂I開先を使用した場合は、下記の表1に示す引張強度試験結果に示すように、引張強度が平均144.5N/mm2程度しか得られず、引張強度不足が問題となる。
【0011】
【表1】
溶接条件及び使用材料 TIG溶接2層盛り
管体:JIS G 3452(SGP)
差込ソケット溶接継手:肉厚6.0mm以上
差込ソケット溶接継手の内周と管体外周間の隙間1.5mm±0.5mm
なお試験方法としては、JISZ2241(金属材料引張試験方法)により行い、引張強さを算定した。
また引張試験機は、JIS7721による等級1級以上とした。
試験方法については、以下に示す各表についても同様である。
【0012】
本発明は前記問題を改善するためになされたもので、ソケット本体の端面に内開先を形成することにより、溶接部の引張強度を向上させた差込ソケット溶接継手を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の差込ソケット溶接継手は、管体の溶接端部をソケット本体の端部に差し込んだ状態で両者を溶接することにより、管体の配管を行う差込ソケット溶接継手であって、ソケット本体の端部外周面側から内周面側へ端面を切徐することにより、ソケット本体の端部内周面側に内開先を形成したものである。
【0014】
前記構成により、管体に対する溶接長が従来の内開先を設けない差込ソケット溶接継手に比べて増加するため溶接部の引張強度が格段に向上し、これによって差込ソケット溶接継と管体を接続する溶接部の耐久性及び信頼性の向上が図れる。
また差込ソケット溶接継手の端部に管体の溶接端部を差し込む際、ソケット本体の端部に形成された内開先が管体の溶接端部を差込ソケット溶接継手の内周面側へとガイドするため、管体の差し込み作業が容易な上、管体の溶接端部を差込ソケット溶接継手に差し込むことにより両者の芯合わせが完了し、これによって管体に継手を突き合せ溶接する配管方法に比べて、施工時の芯合わせと仮組みが容易かつ迅速に行えるようになる。
さらに差込ソケット溶接継手を使用して配管行うため、フランジ継手の間にパッキンを介在させた状態でフランジ継手同士をボルトナット等の固着具により締結する等の作業が不要となり、これによって配管作業が能率よく行える上、パッキンや固着具が不要となるため部品コストの削減が図れると共に、配管類の外周面を保温材で保温する場合、フランジ継手を使用して配管したものに比べてフランジ継手部分を予めフランジ継手形状に合わせて製作した保温材により被覆する必要がないため、保温に要する経費の大幅な削減が図れる。
【0015】
本発明の差込ソケット溶接継手は、内開先を、ソケット本体の端面を外周面から内周面方向へ楕円状に切徐することにより形成したR開先としたものである。
【0016】
前記構成により、管体対する溶接長が従来の内開先を設けない差込ソケット溶接継手の溶接長に比べて倍増するため、溶接部の引張強度が格段に向上する。
【0017】
本発明の差込ソケット溶接継手は、内開先を、ソケット本体の端部を外周面から内周面側へ斜めに切徐することにより形成したV開先としたものである。
【0018】
前記構成により、管体対する溶接長が従来の内開先を設けない差込ソケット溶接継手の溶接長に比べて倍増するため、溶接部の引張強度が格段に向上する。
【0019】
本発明の差込ソケット溶接継手は、内開先を、ソケット本体の端部を外周面側から内周面側へ斜めに切徐することにより形成した第1傾斜面と、第1傾斜面に連続し、かつ第1傾斜面と異なる角度で内周面方向へ斜めに切徐することにより形成した第2傾斜面とからなるZ開先としたものである。
【0020】
前記構成により、管体対する溶接長が従来の内開先を設けない差込ソケット溶接継手の溶接長に比べて倍増するため、溶接部の引張強度が格段に向上する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の差込ソケット溶接継手によれば、管体に対する溶接長が従来の内開先を設けない差込ソケット溶接継手に比べて溶接部の引張強度が格段に向上し、これによって差込ソケット溶接継手と管体を接続する溶接部の耐久性及び信頼性の向上が図れる。
また差込ソケット溶接継手の端部に管体の溶接端部を差し込む際、ソケット本体の端部に形成された内開先が管体の溶接端部を差込ソケット溶接継手の内周面側へとガイドするため、管体の差し込み作業が容易な上、管体の溶接端部を差込ソケット溶接継手に差し込むことにより両者の芯合わせが完了するため、管体に継手を突き合せ溶接する配管方法に比べて、施工時の芯合わせと仮組みが容易かつ迅速に行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態になる差込ソケット溶接継手を使用した配管例を示す正面図である。
【図2】本発明の実施の形態になる差込ソケット溶接継手の使用状態を示す一部切欠拡大図である。
【図3】本発明の実施の形態になる差込ソケット溶接継手の内開先部分を示す拡大断面図である。
【図4】本発明の実施の形態になる差込ソケット溶接継手の溶接部分を示す拡大断面図である。
【図5】本発明の実施の形態になる差込ソケット溶接継手の第1変形例を示す使用状態の一部切欠拡大図である。
【図6】本発明の実施の形態になる差込ソケット溶接継手の第1変形例を示す内開先部分の拡大断面図である。
【図7】本発明の実施の形態になる差込ソケット溶接継手の第1変形例を示す溶接部分の拡大断面図である。
【図8】本発明の実施の形態になる差込ソケット溶接継手の第2変形例を示す使用状態の一部切欠拡大図である。
【図9】本発明の実施の形態になる差込ソケット溶接継手の第2変形例を示す内開先部分の拡大断面図である。
【図10】本発明の実施の形態になる差込ソケット溶接継手の第2変形例を示す溶接部分の拡大断面図である。
【図11】本発明の実施の形態になる差込ソケット溶接継手を使用して配管した配管類の保温材施工状態を示す説明図である。
【図12】従来のフランジ継手を使用して配管した配管類の保温材施工状態を示す説明図である。
【図13】従来の差込ソケット溶接継手の溶接部分を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施の形態を、図面を参照して詳述する。
図1は差込ソケット溶接継手を使用して配管を行う差込ソケット溶接継手工法の1例を示すもので、例えば白ガス管(SGP)よりなる管体1及び2を差込ソケット溶接継手により接続した状態を示しており、以下管体1,2のサイズが呼称100Aの場合について説明する。
なお称呼100A以外の管体1,2を使用する場合は、差込ソケット溶接継手と各管体1,2の内周面との間に形成される隙間等の寸法は当然異なるものである。
差込ソケット溶接継手を構成するソケット本体3は、図2に示すように各管体1,2の外径より例えば+4mmほど内径が大きい筒状に形成されていて、ソケット本体3と各管体1,2の内周面との間に1.5mm±0.5mm程度の隙間が生じるようになっている。
【0024】
ソケット本体3は、例えば肉厚tは6.0mm以上となっており、ソケット本体3の両端部の内周面側に開先(これを内開先4という)が図3に示すように形成されている。
また図3に示す形状の内開先4をR開先4aという。
ソケット本体3の両端部に形成されたR開先4aは、ソケット本体3の端面3aを外周面3bからt1、例えば1.5mm残した状態で、機械加工により内周面3c方向へ楕円状に切徐することにより形成されていて、端面3aからの深さ、すなわち楕円の長半径L1は6.0〜6.6mm程度に、そして短半径L2は4.5mm程度となっている。
以上のようにしてソケット本体3の両端面にR開先4aが形成された差込ソケット溶接継手は、工場において配管類を下拵えする際、互いに接続する管体1,2の一方に予め溶接されて配管現場へ搬入されるが、工場において差込ソケット溶接継手の両端部に管体1,2を溶接したり、配管現場において差込ソケット溶接継手の両端部に管体1,2を溶接することもある。
【0025】
次に工場において予め一方の管体1に差込ソケット溶接継手を溶接する際の作用を説明すると、まず差込ソケット溶接継手の一端側開口部に管体1の溶接端部を差し込むが、このときソケット本体3の端部に形成したR開先4aが管体1の端部を差込ソケット溶接継手の内周面方向へガイドするように作用するため、内開先が形成されていない従来の差込ソケット溶接継手に比べて管体1の差し込み作業が容易となる。
これは管体1のサイズが大きくなるほど顕著となるため、特に重量の重いサイズの大きい管体1の場合に差し込み作業が容易かつ能率よく行える効果が得られる。
差込ソケット溶接継手に管体1の溶接端部を差し込んだら、被覆アーク溶接または半自動溶接等によりソケット本体3の端部に形成されたR開先4aより隅肉溶接を行う。
隅肉溶接による肉盛りは複数層、例えば2層により行い、図4に示すように差込ソケット溶接継手の端部に差し込まれた管体1の溶接端部と差込ソケット溶接継手の一方の端部を溶接するもので、ソケット本体3の端部にR開先4aを形成することにより、管体1に対する溶接長L3が、内開先を設けない従来の差込ソケット溶接継手(図13参照)のL7に比べて増大するため、溶接部の引張強度が格段に向上する。
なお工場において管体1の溶接端部と差込ソケット溶接継手の一方の端部を溶接した場合の引張強度試験結果を次の表2に示す。
【0026】
【表2】
溶接条件及び使用材料 半自動溶接2層盛り
使用溶接棒 フラックスワイヤ 径2.0mm
管体:JIS G 3452(SGP)
差込ソケット溶接継手:肉厚6.0mm以上
差込ソケット溶接継手の内周と管体外周間の隙間1.5mm±0.5mm
【0027】
一方工場により一端側に差込ソケット溶接継手が溶接された管体1は、配管現場に搬入された後、差込ソケット溶接継手の他端側に現場溶接により管体2の溶接端部が溶接される。
一端側に差込ソケット溶接継手が溶接された管体1とともに現場へと搬入された管体2には、差込ソケット溶接継手を溶接する側と反対の端部に、例えばエルボ5を介して別の管体6が予め工場で溶接されている。
管体1及び2は建造物等へ配管される際には、水平方向へ配管される横管となり、エルボ5を介して管体2に溶接された管体6は、垂直方向へ配管される縦管となる。
管体2の溶接端部を差込ソケット溶接継手に溶接するに当っては、管体2の溶接端部を図2に示すように差込ソケット溶接継手の他端側開口より差し込むが、このときもソケット本体3の端部に形成されたR開先4aが管体2の溶接端部を差込ソケット溶接継手の内周面側へとガイドするため、管体2にエルボ5を介して別の管体6が接続されているような場合でも、管体2の差し込み作業が容易な上、管体2の溶接端部を差込ソケット溶接継手に差し込むことにより両者の芯合わせが完了するため、管体に継手を突き合せ溶接する従来の配管方法に比べて、施工時の芯合わせと仮組みが容易かつ迅速に行えるようになる。
【0028】
管体2の溶接端部を差込ソケット溶接継手の所定位置まで差し込んだら、被覆アーク溶接により差込ソケット溶接継手の端部に形成されたR開先4aより隅肉溶接を開始し、肉盛りを例えば2層により行うことにより、差込ソケット溶接継手の端部に差し込まれた管体2の溶接端部と差込ソケット溶接継手の他方の端部を溶接するもので、1個所溶接するだけで縦管となる管体6を横管となる管体1に接続することができるようになる。
以上のようにして差込ソケット溶接継手に溶接された各管体2と差込ソケット溶接継手の引張強度は、ソケット本体3の両端部にR開先4aを設けたことにより、管体2に対する溶接長L1が、開先を設けない従来の差込ソケット溶接継手f(図13参照)の管体gに対する溶接長L7に比べて倍増するため、溶接部の引張強度が格段に向上する。
なお配管現場において管体2の溶接端部と差込ソケット溶接継手の一方の端部を溶接した場合の引張強度試験結果を次の表3に示す。
【0029】
【表3】
溶接条件及び使用材料 被覆アーク溶接2層盛り
溶接棒 B−17 径3.2mm
管体:JIS G 3452(SGP)
差込ソケット溶接継手:肉厚6.0mm以上
差込ソケット溶接継手の内周と管体外周間の隙間1.5mm±0.5mm
【0030】
以上はソケット本体3の両端部にR開先4aを形成した差込ソケット溶接継手を使用して配管を行う場合であるが、図5ないし図7に示す第1変形例や、図8ないし図10に示す第2変形例の場合も同様な効果が得られる。
図5ないし図7に示す第1変形例の差込ソケット溶接継手は、ソケット本体3の端部を外周面から内周面側へ斜めに切徐することにより内開先4が成されていて、開先角度θ1は、ソケット本体3の軸線と直交する線に対し40〜60°程度に設定されており、以下この内開先形状をV開先4bという。
ソケット本体3の両端部にV開先4bが形成された差込ソケット溶接継手を使用して配管を行う方法は、前記実施の形態と同様なのでその説明は省略するが、管体1,2に対する溶接長L4が、開先を設けない従来の差込ソケット溶接継手(図13参照)の溶接長L7に比べて倍増するため、溶接後の引張強度は下記の表4及び表5に示す通り、従来の内開先を設けない差込ソケット溶接継手に比べて格段に向上する。
なお表4はV開先4bのθ1が50°の場合、表5はV開先4bのθ1が60°の場合を示す(溶接条件及び使用材料は、何れも同じ)。
【0031】
【表4】
【表5】
溶接条件及び使用材料 被覆アーク溶接2層盛り
溶接棒 B−17 径3.2mm
管体:JIS G 3452(SGP)
差込ソケット溶接継手:肉厚6.0mm以上
差込ソケット溶接継手の内周と管体外周間の隙間1.5mm±0.5mm
【0032】
図8ないし図10に示す第2変形例の差込ソケット溶接継手は、ソケット本体3の端部を外周面から内周面側へ角度θ2で斜めに切徐することにより形成した第1傾斜面4cと、第1傾斜面4cに連続し、かつ異なる角度θ3で内周面方向へ斜めに切徐することにより形成した第2傾斜面4dからなる内開先4が形成されていて、第1傾斜面4cの角度θ2は、ソケット本体3の軸線と直交する線に対し60°程度に、そして第2傾斜面4dの角度θ3は、ソケット本体3の軸線と直交する線に対し45°程度に設定されており、以下この内開先形状をZ開先4eという。
ソケット本体3の両端部にZ開先4eが形成された差込ソケット溶接継手を使用して配管を行う方法は、前記実施の形態と同様なのでその説明は省略するが、管体1,2に対する溶接長L5が、内開先を設けない従来の差込ソケット溶接継手(図13参照)の溶接長L7に比べて倍増するため、溶接後の引張強度は下記の表6の通り、従来の内開先を設けない差込ソケット溶接継手に比べて格段に向上する。
【0033】
【表6】
溶接条件及び使用材料 被覆アーク溶接2層盛り
溶接棒 B−17 径3.2mm
管体:JIS G 3452(SGP)
差込ソケット溶接継手:肉厚6.0mm以上
【0034】
なお前記実施の形態及び第1,2変形例では、差込ソケット溶接継手と管体1,2を接続する場合について説明したが、差込ソケット溶接継手と例えばエルボやチーズ等の継手を溶接する場合にも適用できるものである。
また配管に使用する管体1,2は、白ガス管に限らず、黒ガス管や黒STPG管等でもよく、管体1,2の口径は、50A〜400A等が好適であり、配管の用途は、雨水配管、冷水配管、冷温水配管、冷却配管、蒸気配管、還水配管等に適用できるものである。
【符号の説明】
【0035】
1 管体
2 管体
3 ソケット本体
4 内開先
4a R開先
4b V開先
4c 第1傾斜面
4d 第2傾斜面
4e Z開先
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管体の溶接端部をソケット本体の端部に差し込んだ状態で両者を溶接することにより、前記管体の配管を行う差込ソケット溶接継手であって、前記ソケット本体の端部外周面側から内周面側へ端面を切徐することにより、前記ソケット本体の端部内周面側に内開先を形成したことを特徴とする差込ソケット溶接継手。
【請求項2】
前記内開先を、前記ソケット本体の端面を外周面側から内周面方向へ楕円状に切徐することにより形成したR開先としてなる請求項1に記載の差込ソケット溶接継手。
【請求項3】
前記内開先を、前記ソケット本体の端部を外周面から内周面側へ斜めに切徐することにより形成したV開先としてなる請求項1に記載の差込ソケット溶接継手。
【請求項4】
前記内開先を、前記ソケット本体の端部を外周面側から内周面側へ斜めに切徐することにより形成した第1傾斜面と、前記第1傾斜面に連続し、かつ前記第1傾斜面と異なる角度で内周面方向へ斜めに切徐することにより形成した第2傾斜面とからなるZ開先としてなる請求項1に記載の差込ソケット溶接継手。
【請求項1】
管体の溶接端部をソケット本体の端部に差し込んだ状態で両者を溶接することにより、前記管体の配管を行う差込ソケット溶接継手であって、前記ソケット本体の端部外周面側から内周面側へ端面を切徐することにより、前記ソケット本体の端部内周面側に内開先を形成したことを特徴とする差込ソケット溶接継手。
【請求項2】
前記内開先を、前記ソケット本体の端面を外周面側から内周面方向へ楕円状に切徐することにより形成したR開先としてなる請求項1に記載の差込ソケット溶接継手。
【請求項3】
前記内開先を、前記ソケット本体の端部を外周面から内周面側へ斜めに切徐することにより形成したV開先としてなる請求項1に記載の差込ソケット溶接継手。
【請求項4】
前記内開先を、前記ソケット本体の端部を外周面側から内周面側へ斜めに切徐することにより形成した第1傾斜面と、前記第1傾斜面に連続し、かつ前記第1傾斜面と異なる角度で内周面方向へ斜めに切徐することにより形成した第2傾斜面とからなるZ開先としてなる請求項1に記載の差込ソケット溶接継手。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−73037(P2011−73037A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−226428(P2009−226428)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(598007274)ジャパン・エンヂニアリング株式会社 (9)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(598007274)ジャパン・エンヂニアリング株式会社 (9)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]