差込式管継手
【課題】パッキンのパッキン嵌合溝からのはみ出しを防止できる差込式管継手を提供する。
【解決手段】継手本体1の受口7の内周に設けたパッキン嵌合溝9に、接続管Pの端部の外周と受口7の内周との間をシールするためのパッキン2を嵌合している差込式管継手において、パッキン嵌合溝9における接続管差込み方向上流側の溝側壁9b及び/又はパッキン2の溝側壁9bと対向する一端面2cは、接続管差込み方向下流側に向かって次第に窄まり状のテーパー面5に形成している 。
【解決手段】継手本体1の受口7の内周に設けたパッキン嵌合溝9に、接続管Pの端部の外周と受口7の内周との間をシールするためのパッキン2を嵌合している差込式管継手において、パッキン嵌合溝9における接続管差込み方向上流側の溝側壁9b及び/又はパッキン2の溝側壁9bと対向する一端面2cは、接続管差込み方向下流側に向かって次第に窄まり状のテーパー面5に形成している 。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に埋設される電力や通信用のケーブル等が通される接続管、あるいは水道配管等に用いられる接続管を差込むだけでシール状に接続できる差込式管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の差込式管継手として、例えば、図8、図9に示すようなものが公知である(例えば、特許文献1,2参照。)。その差込式管継手は、筒状の継手本体21の軸心方向両端に、接続管Pの端部が差し込まれる受口22を開口し、この受口22の内部にゴム製のパッキン(リップパッキン)23と、このパッキン23より内奥側に配されたロックリング24および支持用弾性リング28とが組み込まれるとともに、継手本体21のロックリング24より内奥部には内径を少し細く絞る形で管端ストッパー部25を設けている。受口22の内周面のパッキン23が位置する箇所にはパッキン23が嵌合されるパッキン嵌合溝26が形成され、受口22の内周面のロックリング24および支持用弾性リング28が位置する箇所には外窄まりテーパー状の押圧面27aを有するリング嵌合溝27が形成されている。そして、接続管Pの接続に際し接続管Pの端部を受口22より管端ストッパー部25に突き当たるまで差し込むと、パッキン23が接続管Pの外周面に密接して気密状にシールされ、また接続管Pが抜け出し方向に移動したときにロックリング24がテーパー状の押圧面27aに当接して縮径することにより接続管Pの外周面に強く食い込んで接続管Pの抜止め状態が得られるようになっている。
【0003】
【特許文献1】特開2001−241580号公報
【特許文献2】特開2001−227688号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記差込式管継手では、図9に示すように、パッキン嵌合溝26における接続管差込み方向上流側の溝側壁26aはパッキン嵌合溝26の溝底26bから垂直に立ち上がっている一方、パッキン23の接続管差込み方向上流側の端面23aは垂直な溝側壁26aに対応して垂直に形成されている。このため、パッキン23の止水性能テストや気体漏れ検査時、あるいは接続管P内に電力や通信用のケーブルを空気圧を加えて通す時などにおいて、接続管Pへの封入空気(高圧)によってパッキン23が図11に示すごとくパッキン嵌合溝26内で接続管差込み方向上流側の方向Aへ押し動かされる。これにより、パッキン23の接続管差込み方向上流側の端部23a1が溝側壁26aにつけているアールRに沿って受口22の開口先部22aの内周と接続管Pの外周との間の隙間にはみ出すことがあった。このはみ出したパッキン23は元の位置に戻ることがない。このパッキン23のはみ出しによりシール効果が低下ないし喪失するという問題が発生する。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、上記のような、継手本体の受口の内周に設けたパッキン嵌合溝にパッキンを嵌合している差込式管継手においてパッキンあるいはパッキン嵌合溝の断面形状に工夫を凝らすことによりパッキンのパッキン嵌合溝からのはみ出しを確実に防止できる差込式管継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、請求項1に記載のように、図1〜図7に付した符号を参照して説明すると、接続管(P)の端部が差し込まれる受口(7)を有する継手本体(1)の受口(7)の内周に環状のパッキン嵌合溝(9)を設け、このパッキン嵌合溝(9)に接続管(P)の端部の外周と受口(7)の内周との間をシールするためのパッキン(2)を嵌合している差込式管継手において、パッキン嵌合溝(9)における接続管差込み方向上流側の溝側壁(9b)及び/又はパッキン(2)の溝側壁(9b)と対向する端面(2c)は、接続管差込み方向下流側に向かって次第に窄まり状のテーパー面(5)に形成していることに特徴を有するものである。
【0007】
上記構成によると、気体漏れ検査時等において接続管(P)への封入空気によってパッキン(2)がパッキン嵌合溝(9)内で接続管差込み方向上流側の方向Aへ押し動かされるが、このときパッキン(2)の接続管差込み方向上流側の端面(2c)がパッキン嵌合溝(9)の接続管差込み方向上流側の溝側壁(9b)に当接し、この当接作用によりパッキン(2)の接続管差込み方向上流側の端部がパッキン嵌合溝(9)の底方向、つまり反はみ出し方向に押される作用を受けるので、パッキン(2)がパッキン嵌合溝(9)からはみ出るのを確実に防止できることになる。
【0008】
請求項1記載の差込式管継手は、請求項2に記載のように、パッキン(2)がリング状部(2a)と、このリング状部(2a)の内周から径方向内方へ突設されたリップ部(2b)とを有するリップパッキンからなるものとすることができる。これによると、継手本体(1)内を流れる水が継手本体(1)の内周と接続管(P)の末端外周との間からパッキン(2)にまで流れ込んできてもその水圧によってリップ部(2b)を接続管(P)の外周面に押し付けるというシール圧が発生し、このため単一のパッキン(2)でもってシール機能を効果的に発揮する。また、パッキン(2)のリップ部(2b)は、接続管(P)の小さい差込み荷重で接続管(P)の外周面との摺接作用により容易に変形させることができるので、接続管(P)を差込み操作し易くする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、パッキン嵌合溝における接続管差込み方向上流側の溝側壁及び/又はパッキンの溝側壁と対向する端面は、接続管差込み方向下流側に向かって次第に窄まり状のテーパー面に形成するという簡単な手段で、パッキンのパッキン嵌合溝からのはみ出しを確実に防止できてシール性を確保できるという有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施例を図面に基づき説明する。図1は本発明の一実施例の差込式管継手を接続管の差込み完了状態で示す断面図、図2は図1の差込式管継手におけるパッキン収容部分の拡大断面図、図3は図1の差込式管継手におけるパッキンの一部断面図、図4は図1の差込式管継手におけるパッキン収容部分のパッキンが接続管差込み方向上流側の方向に動いた状態を示す断面図である。
【0011】
図1に示す差込式管継手は、継手本体1と、パッキン2と、ロックリング3、及び支持用弾性リング4とを備えている。
【0012】
継手本体1は金属製で筒状に形成され、この外周がポリエチレン等の樹脂よりなる防食筒体6で一体に被覆されている。この継手本体1はこれの軸方向両端部に接続管Pの端部が差し込まれる受口7を開口し、軸方向中央付近に当該箇所を細く絞る形で管端ストッパー部8を継手本体1と一体に設けている。防食筒体6の軸方向両端部6a,6aは継手本体1の軸方向両端より軸方向外方へ突出して受口7の開口先部7aを開口し、この開口先部7aの内奥にはパッキン嵌合溝9を形成している。継手本体1のパッキン嵌合溝9と管端ストッパー部8間の中間部は径方向外方へ膨出する形で当該箇所の内周にリング嵌合溝10を形成している。
【0013】
図2に示すように、パッキン嵌合溝9は、平坦な溝底壁9aと、この溝底壁9aにおける接続管差込み方向上流側の溝側壁9bおよび接続管差込み方向下流側の溝側壁9cとを有する断面角形状に形成している。図1に示すように、リング嵌合溝10の接続管差込み方向上流側の溝側壁は接続管差込み方向上流側に向かって次第に窄まり状のテーパー面10aに形成している。
【0014】
かくして、継手本体1のパッキン嵌合溝9にはパッキン2が嵌め込まれる。図3に示すように、パッキン2は、リング状部2aと、このリング状部2aの内周から径方向内方へ一体に突設された一つ又は2つ以上のリップ部2bとを有する形に合成ゴムや合成樹脂等で成形されている。図2、図3に示すように、パッキン嵌合溝9の溝側壁9b,9cに対向するリング状部2aの両端面2c,2d、あるいは少なくとも溝側壁9bに対向する一端面2cは接続管差込み方向下流側に向かって次第に窄まり状のテーパー面5に形成している。テーパー面5は、例えば、リング状部2aの垂直な端面2c,2dとの成す角度θ(図3参照)を10度とする。リング嵌合溝10にはロックリング3がテーパー面10aに面するよう支持用弾性リング4により受け止め支持される状態に嵌め込まれる。
【0015】
接続管Pの接続に際しては、図1に示すように、接続管Pの端部が管端ストッパー部8に当接するまで継手本体1の軸方向一端部の受口7に差し込まれる。図示省略するが、継手本体1の軸方向他端部の受口7にも同様に別の接続管Pの端部が差し込まれる。
【0016】
接続管Pの端部が継手本体1の受口7に管端ストッパー部8に当たるまで差し込まれると、図2に示すように、接続管Pの端部の外周面にパッキン2のリップ部2bが圧縮状に密接し、このパッキン2により受口7の内周面と接続管Pの端部外周面との間が気密にシールされる。パッキン2のリップ部2bが継手本体1の内奥方向に向いた状態で接続管Pの外周面に圧縮状に密着していると、継手本体1内を流れる水が継手本体1の内周と接続管Pの端部との間からパッキン2にまで流れ込んできてもその水圧によってリップ部2bを接続管Pの外周面に押し付けるというシール圧が発生し、このため単一のパッキン2でもってシール機能を効果的に発揮する。また、パッキン2のリップ部2bは接続管Pの小さい差込み荷重で接続管Pの外周面との摺接作用により容易に変形させることができるので、接続管Pを差込み操作し易い。
また、接続管Pの端部が継手本体1の受口7に管端ストッパー部8に当たるまで差し込まれると、図1のようにロックリング3の内周部が接続管Pの端部の外周面に軽く食込み係合する。接続管Pが抜き出し方向(反差込み方向)に引っ張られると、接続管Pと共に同一方向に移動するロックリング3の外周面がリング嵌合溝10のテーパー面10aと当接することにより、ロックリング3が縮径して接続管Pの外周面への食込みが増すことになり、接続管Pの端部が受口7から抜け出るのを防止できる。
【0017】
気体漏れ検査時等において、接続管Pへの封入空気によってパッキン2が図4のようにパッキン嵌合溝9内で接続管差込み方向上流側の方向(矢印A方向)へ押し動かされるが、このとき、パッキン2の接続管差込み方向上流側の端面2cは接続管差込み方向下流側に向かって次第に窄まり状のテーパー面5を形成しているので、パッキン2が矢印A方向に押し動かされると、パッキン2の接続管差込み方向上流側の端面2cのテーパー面5がパッキン嵌合溝9の接続管差込み方向上流側の溝側壁9bに当接することによりパッキン2の接続管差込み方向上流側の端部がパッキン嵌合溝9の溝底壁9aに向けて押される作用を受けることで、パッキン2がパッキン嵌合溝9からはみ出るのを効果的に防止できる。したがって、パッキン2によるシール性を確保できる。
【0018】
上記実施例では、パッキン2の接続管差込み方向上流側の端面2cを接続管差込み方向下流側に向かって次第に窄まり状のテーパー面5に形成しているが、これに代えて図5 に示すようにパッキン嵌合溝9の接続管差込み方向上流側の溝側壁9bに、接続管差込み方向下流側に向かって次第に窄まり状のテーパー面5に形成することによっても、気体漏れ検査時等においてパッキン2のパッキン嵌合溝9からのはみ出しを防止できる。また、図示省略するが、パッキン2の接続管差込み方向上流側の端面2cおよびパッキン嵌合溝9の接続管差込み方向上流側の溝側壁9bはいずれも接続管差込み方向下流側に向かって次第に窄まり状のテーパー面5に形成するものであってもよい。
【0019】
防食筒体6で一体に被覆されている継手本体1に限られず、図6、図7に示すように防食筒体6で被覆されていない継手本体1にも同様に適用できる。図6に示す差込式管継手は、継手本体1の軸方向一端部に開口した受口7の内周に設けた環状のパッキン嵌合溝9に、上記実施例の場合と同様のパッキン2を嵌合しているが、継手本体1の軸方向他端部に開口した受口11には押輪12をねじ込み、この押輪12により受口11内に嵌め込んだ断面略三角形状のパッキン13を保持するものとしてある。
【0020】
本発明は継手本体1のパッキン嵌合溝9に嵌合されるパッキン2としてリップ部2bを有する上記実施例のリップパッキンを使用するものに限られず、リップ部を有しないセルフシールパッキンを使用する場合にも同様に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施例の差込式管継手を接続管の差込み完了状態で示す半欠截断面図である。
【図2】図1の差込式管継手におけるパッキン収容部分の拡大断面図である。
【図3】図1の差込式管継手におけるパッキンの一部断面図である。
【図4】図1の差込式管継手におけるパッキン収容部分のパッキンが接続管差込み方向上流側の方向に動いた状態を示す断面図である。
【図5】他の実施例を図2に相応して示す断面図である。
【図6】さらに他の実施例の差込式管継手を接続管差込み前の状態で示す半欠截断面図である。
【図7】図6の差込式管継手を接続管の差込み完了状態で示す半欠截断面図である。
【図8】従来例の差込式管継手を接続管の差込み完了状態で示す半欠截断面図である。
【図9】図8の差込式管継手におけるパッキン収容部分の拡大断面図である。
【図10】図8の差込式管継手におけるパッキンの一部断面図である。
【図11】図8の差込式管継手におけるパッキン収容部分のパッキンが接続管差込み方向上流側の方向に動いた状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0022】
P 接続管
1 継手本体
2 パッキン
2a リング状部
2b リップ部
2c 接続管差込み方向上流側の端面
5 テーパー面
7 受口
9 パッキン嵌合溝
9b 接続管差込み方向上流側の溝側壁
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に埋設される電力や通信用のケーブル等が通される接続管、あるいは水道配管等に用いられる接続管を差込むだけでシール状に接続できる差込式管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の差込式管継手として、例えば、図8、図9に示すようなものが公知である(例えば、特許文献1,2参照。)。その差込式管継手は、筒状の継手本体21の軸心方向両端に、接続管Pの端部が差し込まれる受口22を開口し、この受口22の内部にゴム製のパッキン(リップパッキン)23と、このパッキン23より内奥側に配されたロックリング24および支持用弾性リング28とが組み込まれるとともに、継手本体21のロックリング24より内奥部には内径を少し細く絞る形で管端ストッパー部25を設けている。受口22の内周面のパッキン23が位置する箇所にはパッキン23が嵌合されるパッキン嵌合溝26が形成され、受口22の内周面のロックリング24および支持用弾性リング28が位置する箇所には外窄まりテーパー状の押圧面27aを有するリング嵌合溝27が形成されている。そして、接続管Pの接続に際し接続管Pの端部を受口22より管端ストッパー部25に突き当たるまで差し込むと、パッキン23が接続管Pの外周面に密接して気密状にシールされ、また接続管Pが抜け出し方向に移動したときにロックリング24がテーパー状の押圧面27aに当接して縮径することにより接続管Pの外周面に強く食い込んで接続管Pの抜止め状態が得られるようになっている。
【0003】
【特許文献1】特開2001−241580号公報
【特許文献2】特開2001−227688号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記差込式管継手では、図9に示すように、パッキン嵌合溝26における接続管差込み方向上流側の溝側壁26aはパッキン嵌合溝26の溝底26bから垂直に立ち上がっている一方、パッキン23の接続管差込み方向上流側の端面23aは垂直な溝側壁26aに対応して垂直に形成されている。このため、パッキン23の止水性能テストや気体漏れ検査時、あるいは接続管P内に電力や通信用のケーブルを空気圧を加えて通す時などにおいて、接続管Pへの封入空気(高圧)によってパッキン23が図11に示すごとくパッキン嵌合溝26内で接続管差込み方向上流側の方向Aへ押し動かされる。これにより、パッキン23の接続管差込み方向上流側の端部23a1が溝側壁26aにつけているアールRに沿って受口22の開口先部22aの内周と接続管Pの外周との間の隙間にはみ出すことがあった。このはみ出したパッキン23は元の位置に戻ることがない。このパッキン23のはみ出しによりシール効果が低下ないし喪失するという問題が発生する。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、上記のような、継手本体の受口の内周に設けたパッキン嵌合溝にパッキンを嵌合している差込式管継手においてパッキンあるいはパッキン嵌合溝の断面形状に工夫を凝らすことによりパッキンのパッキン嵌合溝からのはみ出しを確実に防止できる差込式管継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、請求項1に記載のように、図1〜図7に付した符号を参照して説明すると、接続管(P)の端部が差し込まれる受口(7)を有する継手本体(1)の受口(7)の内周に環状のパッキン嵌合溝(9)を設け、このパッキン嵌合溝(9)に接続管(P)の端部の外周と受口(7)の内周との間をシールするためのパッキン(2)を嵌合している差込式管継手において、パッキン嵌合溝(9)における接続管差込み方向上流側の溝側壁(9b)及び/又はパッキン(2)の溝側壁(9b)と対向する端面(2c)は、接続管差込み方向下流側に向かって次第に窄まり状のテーパー面(5)に形成していることに特徴を有するものである。
【0007】
上記構成によると、気体漏れ検査時等において接続管(P)への封入空気によってパッキン(2)がパッキン嵌合溝(9)内で接続管差込み方向上流側の方向Aへ押し動かされるが、このときパッキン(2)の接続管差込み方向上流側の端面(2c)がパッキン嵌合溝(9)の接続管差込み方向上流側の溝側壁(9b)に当接し、この当接作用によりパッキン(2)の接続管差込み方向上流側の端部がパッキン嵌合溝(9)の底方向、つまり反はみ出し方向に押される作用を受けるので、パッキン(2)がパッキン嵌合溝(9)からはみ出るのを確実に防止できることになる。
【0008】
請求項1記載の差込式管継手は、請求項2に記載のように、パッキン(2)がリング状部(2a)と、このリング状部(2a)の内周から径方向内方へ突設されたリップ部(2b)とを有するリップパッキンからなるものとすることができる。これによると、継手本体(1)内を流れる水が継手本体(1)の内周と接続管(P)の末端外周との間からパッキン(2)にまで流れ込んできてもその水圧によってリップ部(2b)を接続管(P)の外周面に押し付けるというシール圧が発生し、このため単一のパッキン(2)でもってシール機能を効果的に発揮する。また、パッキン(2)のリップ部(2b)は、接続管(P)の小さい差込み荷重で接続管(P)の外周面との摺接作用により容易に変形させることができるので、接続管(P)を差込み操作し易くする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、パッキン嵌合溝における接続管差込み方向上流側の溝側壁及び/又はパッキンの溝側壁と対向する端面は、接続管差込み方向下流側に向かって次第に窄まり状のテーパー面に形成するという簡単な手段で、パッキンのパッキン嵌合溝からのはみ出しを確実に防止できてシール性を確保できるという有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施例を図面に基づき説明する。図1は本発明の一実施例の差込式管継手を接続管の差込み完了状態で示す断面図、図2は図1の差込式管継手におけるパッキン収容部分の拡大断面図、図3は図1の差込式管継手におけるパッキンの一部断面図、図4は図1の差込式管継手におけるパッキン収容部分のパッキンが接続管差込み方向上流側の方向に動いた状態を示す断面図である。
【0011】
図1に示す差込式管継手は、継手本体1と、パッキン2と、ロックリング3、及び支持用弾性リング4とを備えている。
【0012】
継手本体1は金属製で筒状に形成され、この外周がポリエチレン等の樹脂よりなる防食筒体6で一体に被覆されている。この継手本体1はこれの軸方向両端部に接続管Pの端部が差し込まれる受口7を開口し、軸方向中央付近に当該箇所を細く絞る形で管端ストッパー部8を継手本体1と一体に設けている。防食筒体6の軸方向両端部6a,6aは継手本体1の軸方向両端より軸方向外方へ突出して受口7の開口先部7aを開口し、この開口先部7aの内奥にはパッキン嵌合溝9を形成している。継手本体1のパッキン嵌合溝9と管端ストッパー部8間の中間部は径方向外方へ膨出する形で当該箇所の内周にリング嵌合溝10を形成している。
【0013】
図2に示すように、パッキン嵌合溝9は、平坦な溝底壁9aと、この溝底壁9aにおける接続管差込み方向上流側の溝側壁9bおよび接続管差込み方向下流側の溝側壁9cとを有する断面角形状に形成している。図1に示すように、リング嵌合溝10の接続管差込み方向上流側の溝側壁は接続管差込み方向上流側に向かって次第に窄まり状のテーパー面10aに形成している。
【0014】
かくして、継手本体1のパッキン嵌合溝9にはパッキン2が嵌め込まれる。図3に示すように、パッキン2は、リング状部2aと、このリング状部2aの内周から径方向内方へ一体に突設された一つ又は2つ以上のリップ部2bとを有する形に合成ゴムや合成樹脂等で成形されている。図2、図3に示すように、パッキン嵌合溝9の溝側壁9b,9cに対向するリング状部2aの両端面2c,2d、あるいは少なくとも溝側壁9bに対向する一端面2cは接続管差込み方向下流側に向かって次第に窄まり状のテーパー面5に形成している。テーパー面5は、例えば、リング状部2aの垂直な端面2c,2dとの成す角度θ(図3参照)を10度とする。リング嵌合溝10にはロックリング3がテーパー面10aに面するよう支持用弾性リング4により受け止め支持される状態に嵌め込まれる。
【0015】
接続管Pの接続に際しては、図1に示すように、接続管Pの端部が管端ストッパー部8に当接するまで継手本体1の軸方向一端部の受口7に差し込まれる。図示省略するが、継手本体1の軸方向他端部の受口7にも同様に別の接続管Pの端部が差し込まれる。
【0016】
接続管Pの端部が継手本体1の受口7に管端ストッパー部8に当たるまで差し込まれると、図2に示すように、接続管Pの端部の外周面にパッキン2のリップ部2bが圧縮状に密接し、このパッキン2により受口7の内周面と接続管Pの端部外周面との間が気密にシールされる。パッキン2のリップ部2bが継手本体1の内奥方向に向いた状態で接続管Pの外周面に圧縮状に密着していると、継手本体1内を流れる水が継手本体1の内周と接続管Pの端部との間からパッキン2にまで流れ込んできてもその水圧によってリップ部2bを接続管Pの外周面に押し付けるというシール圧が発生し、このため単一のパッキン2でもってシール機能を効果的に発揮する。また、パッキン2のリップ部2bは接続管Pの小さい差込み荷重で接続管Pの外周面との摺接作用により容易に変形させることができるので、接続管Pを差込み操作し易い。
また、接続管Pの端部が継手本体1の受口7に管端ストッパー部8に当たるまで差し込まれると、図1のようにロックリング3の内周部が接続管Pの端部の外周面に軽く食込み係合する。接続管Pが抜き出し方向(反差込み方向)に引っ張られると、接続管Pと共に同一方向に移動するロックリング3の外周面がリング嵌合溝10のテーパー面10aと当接することにより、ロックリング3が縮径して接続管Pの外周面への食込みが増すことになり、接続管Pの端部が受口7から抜け出るのを防止できる。
【0017】
気体漏れ検査時等において、接続管Pへの封入空気によってパッキン2が図4のようにパッキン嵌合溝9内で接続管差込み方向上流側の方向(矢印A方向)へ押し動かされるが、このとき、パッキン2の接続管差込み方向上流側の端面2cは接続管差込み方向下流側に向かって次第に窄まり状のテーパー面5を形成しているので、パッキン2が矢印A方向に押し動かされると、パッキン2の接続管差込み方向上流側の端面2cのテーパー面5がパッキン嵌合溝9の接続管差込み方向上流側の溝側壁9bに当接することによりパッキン2の接続管差込み方向上流側の端部がパッキン嵌合溝9の溝底壁9aに向けて押される作用を受けることで、パッキン2がパッキン嵌合溝9からはみ出るのを効果的に防止できる。したがって、パッキン2によるシール性を確保できる。
【0018】
上記実施例では、パッキン2の接続管差込み方向上流側の端面2cを接続管差込み方向下流側に向かって次第に窄まり状のテーパー面5に形成しているが、これに代えて図5 に示すようにパッキン嵌合溝9の接続管差込み方向上流側の溝側壁9bに、接続管差込み方向下流側に向かって次第に窄まり状のテーパー面5に形成することによっても、気体漏れ検査時等においてパッキン2のパッキン嵌合溝9からのはみ出しを防止できる。また、図示省略するが、パッキン2の接続管差込み方向上流側の端面2cおよびパッキン嵌合溝9の接続管差込み方向上流側の溝側壁9bはいずれも接続管差込み方向下流側に向かって次第に窄まり状のテーパー面5に形成するものであってもよい。
【0019】
防食筒体6で一体に被覆されている継手本体1に限られず、図6、図7に示すように防食筒体6で被覆されていない継手本体1にも同様に適用できる。図6に示す差込式管継手は、継手本体1の軸方向一端部に開口した受口7の内周に設けた環状のパッキン嵌合溝9に、上記実施例の場合と同様のパッキン2を嵌合しているが、継手本体1の軸方向他端部に開口した受口11には押輪12をねじ込み、この押輪12により受口11内に嵌め込んだ断面略三角形状のパッキン13を保持するものとしてある。
【0020】
本発明は継手本体1のパッキン嵌合溝9に嵌合されるパッキン2としてリップ部2bを有する上記実施例のリップパッキンを使用するものに限られず、リップ部を有しないセルフシールパッキンを使用する場合にも同様に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施例の差込式管継手を接続管の差込み完了状態で示す半欠截断面図である。
【図2】図1の差込式管継手におけるパッキン収容部分の拡大断面図である。
【図3】図1の差込式管継手におけるパッキンの一部断面図である。
【図4】図1の差込式管継手におけるパッキン収容部分のパッキンが接続管差込み方向上流側の方向に動いた状態を示す断面図である。
【図5】他の実施例を図2に相応して示す断面図である。
【図6】さらに他の実施例の差込式管継手を接続管差込み前の状態で示す半欠截断面図である。
【図7】図6の差込式管継手を接続管の差込み完了状態で示す半欠截断面図である。
【図8】従来例の差込式管継手を接続管の差込み完了状態で示す半欠截断面図である。
【図9】図8の差込式管継手におけるパッキン収容部分の拡大断面図である。
【図10】図8の差込式管継手におけるパッキンの一部断面図である。
【図11】図8の差込式管継手におけるパッキン収容部分のパッキンが接続管差込み方向上流側の方向に動いた状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0022】
P 接続管
1 継手本体
2 パッキン
2a リング状部
2b リップ部
2c 接続管差込み方向上流側の端面
5 テーパー面
7 受口
9 パッキン嵌合溝
9b 接続管差込み方向上流側の溝側壁
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続管の端部が差し込まれる受口を有する継手本体の前記受口の内周に、環状のパッキン嵌合溝を設け、このパッキン嵌合溝に前記接続管の端部の外周と前記受口の内周との間をシールするためのパッキンを嵌合している差込式管継手において、前記パッキン嵌合溝における接続管差込み方向上流側の溝側壁及び/又は前記パッキンの前記溝側壁と対向する端面は、接続管差込み方向下流側に向かって次第に窄まり状のテーパー面に形成していることを特徴とする、差込式管継手。
【請求項2】
前記パッキンがリング状部と、このリング状部の内周から径方向内方へ突設されたリップ部とを有するリップパッキンである、請求項1記載の差込式管継手。
【請求項1】
接続管の端部が差し込まれる受口を有する継手本体の前記受口の内周に、環状のパッキン嵌合溝を設け、このパッキン嵌合溝に前記接続管の端部の外周と前記受口の内周との間をシールするためのパッキンを嵌合している差込式管継手において、前記パッキン嵌合溝における接続管差込み方向上流側の溝側壁及び/又は前記パッキンの前記溝側壁と対向する端面は、接続管差込み方向下流側に向かって次第に窄まり状のテーパー面に形成していることを特徴とする、差込式管継手。
【請求項2】
前記パッキンがリング状部と、このリング状部の内周から径方向内方へ突設されたリップ部とを有するリップパッキンである、請求項1記載の差込式管継手。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−48262(P2010−48262A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−210233(P2008−210233)
【出願日】平成20年8月19日(2008.8.19)
【出願人】(000231121)JFE継手株式会社 (140)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月19日(2008.8.19)
【出願人】(000231121)JFE継手株式会社 (140)
【Fターム(参考)】
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