説明

差込式管継手

【課題】接続管が正常に接続されたことを示すインジケータ機能を有した管継手をより簡単な構成でなす。
【解決手段】接続管が挿入される受口11を有する継手本体10と、受口11の入口側にその一端が支持されるように配置された円筒状のパッキン20と、このパッキン20の奥側にあって、受口11の内周面に沿って軸方向に摺動可能な接続管を係合させるための抜止手段30と、抜止手段30の奥側に押圧手段40を備える。さらに、受口11の入口近傍には、パッキン20または抜止手段30の摺動に伴い、受口11の入口側に突出する突出手段22を有する。抜止手段30は、受口11の軸方向に摺動可能かつ受口11の入口方向に向かって窄まり状のテーパ面32が形成されたスペーサ31と、外面部36がテーパ面32に内接し内径側が接続管の外周面に係合される抜止部材34とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の配管を接続するために使用される管継手に関するものであり、特に接続する際に技能がなくても容易に接続することが可能な差込式管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鋼管の端部にネジを加工し管継手とねじ込み接続を行ったり、鋼管と管継手とを溶接接続したりすることが行われてきた。近年、ねじ加工技能者や溶接技能者を施工現場で確保することが困難になりつつあり、技能がなくても容易に配管施工が可能な簡易接続型の管継手が各種提案されている。そして、このような簡易接続型管継手を利用する際には、必ずしも熟練した配管作業者が作業しなくても接続作業が可能となる一方で、正しい接続がなされたか否かを接続作業後に施工管理者が確認できる機能が要望されている。
施工完了確認が可能な管継手としては、確認窓を設けたもの(例えば特許文献1)、管継手の一部を透明化したもの(例えば特許文献2)があげられる。しかしながら、床下や天井裏といった暗くて狭い配管スペースの中で管継手のひとつひとつを視認することは容易な作業ではない。
【0003】
そこで出願人らは、施工完了の状態が視認だけでなく、手触りでも判断できるものとして特許文献3を提案した(特許文献3)。このものは、継手本体と、継手本体に一部が挿入される押ナットと、これらを連結する係止機構とを備え、係止機構は、押ナット外面に形成された環状溝と、継手本体内面に形成された第一係止溝と第二係止溝と、環状溝と第一係止溝に跨るように配置されたストップリングとから構成されたものである。そして、接続完了まで第一係止溝に係止されていたストップリングが、管の接続が完了後に管に抜け方向の力を加えると、継手本体の入口側の第二係止溝に移動し、押ナットの移動量で施工完了が認識可能となるものである。以下、施工完了状態が認識できる機能をインジケータ機能ともいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−207675号公報
【特許文献2】特開2009−299863号公報
【特許文献3】国際公開第2010/131609号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献3のものは、輸送途中などの振動でストップリングが第一係止溝から第二係止溝へ移動してはならず、施工完了後は適度な引き抜け力で第一係止溝から第二係止溝へ移動しなければならないという、相反する条件を満たす必要がある。したがって、第一係止溝、第二係止溝およびストップリングの寸法精度を精密に管理しなければならないという問題があった。
本発明は、このような問題点を解消するためになされたものであり、その目的とするところは、上記のような、インジケータ機能をより簡単な構成で容易に製造することができる差込式管継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたものであって、その要旨は、接続管の先端が挿入される受口を有する継手本体と、該受口の軸方向に摺動可能な円筒状パッキンと、該受口の軸方向に摺動可能かつ前記接続管の外周面に係合される抜止手段と、前記受口における前記パッキンおよび前記抜止手段の奥側に配置され、前記接続管が所定の位置に挿入されたとき、前記パッキンおよび前記抜止部材を受口入口側へ押圧可能な押圧手段を備え、前記受口入口近傍には、前記パッキンまたは前記抜止部材の摺動に伴い、前記受口入口に突出する突出手段を有することを特徴とする差込式管継手である。
【0007】
本発明によれば、パッキンおよび抜止手段が受口の軸方向に摺動可能であるので、前記接続管が所定の位置に挿入されたとき、押圧手段がパッキンおよび抜止部材を受口入口側へ押圧するように作用し、突出手段が管継手の外部に現れる。したがって、接続管が所定の位置に挿入され正常な接続が完了したことを容易に認識することができる。また、接続管に引き抜き方向の力が加わったとき、押圧手段がパッキンを押圧してシール面圧を上昇させるように作用する。したがって、接続管に引き抜き方向の力が加わった場合でも、管の引き抜けを阻止するとともに、長期的なシール性を向上させることができる。
【0008】
本発明において、前記突出手段は、前記パッキンに一体に設けられた突出部とすることができる。
この構成によれば、必然的に受口入口側にパッキン、奥側に抜止手段が配置されることとなる。したがって、パッキンは接続間とのシール性を確保するとともに外部から雨水等の浸入を防止することができる。
【0009】
上記発明において、前記受口の入口に、前記接続管が挿通する挿入孔と、該挿入孔に平行軸心の貫通孔と、所定の力以下では前記パッキンの移動を規制するパッキン支持部を形成した支持部材を備えることができる。
この構成によれば、パッキン支持部が所定の力以下では前記パッキンの移動を規制しているので、管継手の輸送途中など、押圧手段以外の力が加わった場合には突出部が管継手外面に飛び出すことがない。
【0010】
上記発明において、前記受口入口には、ナット部材が接続され、前記継手本体は不透明材料で、前記支持部材および前記ナット部材は、透明な材料で構成することができる。
この構成によれば、ナット部材および支持部材が透明材料で構成されているので、突出部の位置を視認しやすくなる。また突出部が突出する前には、突出部は不透明な継手本体内に隠れることとなるので、誤認することを防止できる。
【0011】
請求項1記載の発明において、前記受口の入口に前記接続管が挿通する挿入孔と、該挿入孔に平行軸心の貫通孔を形成した支持部材を有し、前記突出手段は、該支持部材の受口内方に該貫通孔から少なくともその一部が外部に突出するインジケータ部材とすることができる。
この構成によれば、インジケータ部材の形状、材質等、必要に応じて種々選択が可能で、例えば正常な接続が完了したことをより容易に認識することができる。
【0012】
上記発明において、前記抜止手段は、前記受口の軸方向に摺動可能かつ前記受口入口方向に向かって窄まり状のテーパ面が形成されたスペーサと、外面部が前記テーパ面に内接し内径部が接続管の外周面に係合される抜止部材とすることができる。
また、前記抜止部材は、外面部が前記テーパ面に内接し内側に前記接続管の外周面に食い込む刃部を有した複数の抜止刃部材と、外周面から内周面に貫通し、前記複数の抜止刃部材を支持する開口が形成された円筒状の保持部材とから構成することができる。
【0013】
また上記発明において、前記押圧手段は、一端にフランジ部を反対側にはスリット部が形成された円筒状のスプリングガイドと、前記スリット部の先端から前記スプリングガイドに挿通されたワッシャと、該ワッシャを抜け方向に規制し、前記スリット部の先端に設けたワッシャ規制部と、前記フランジ部と前記ワッシャとの間で圧縮状態に保持されるコイルバネと、前記スプリングガイドの内周面に挿通され前記スリット部の内周側への縮径を規制する移動片とから構成することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、パッキンおよび抜止手段が受口の軸方向に摺動可能であるので、前記接続管が所定の位置に挿入されたとき、押圧手段がパッキンおよび抜止部材を受口入口側へ押圧するように作用し、突出手段が管継手の外部に現れる。したがって、接続管が所定の位置に挿入され正常な接続が完了したことを容易に認識することができる。また、接続管に引き抜き方向の力が加わったとき、押圧手段がパッキンを押圧してシール面圧を上昇させるように作用する。したがって、接続管に引き抜き方向の力が加わった場合でも、管の引き抜けを阻止するとともに、長期的なシール性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の差込式管継手の第一の実施の形態を示す斜視図である。
【図2】図1の差込式管継手の断面図であり、対称となる部分を省略した1/4断面図である。
【図3】支持部材と突起部の変形形態を示す斜視図である。
【図4】図2の差込式管継手に接続管を挿入している途中の状態を示す図である。
【図5】図2の差込式管継手に接続管を接続完了した状態を示す図である。
【図6】本発明の第二の実施の形態の差込式管継手の断面図であり、対称となる部分を省略した1/4断面図である。
【図7】図6の差込式管継手に接続管を接続完了した状態を示す図である。
【図8】本発明の第三の実施の形態の差込式管継手の断面図であり、対称となる部分を省略した1/4断面図である。
【図9】図8の差込式管継手に接続管を接続完了した状態を示す図である。
【図10】本発明の第四の実施の形態の差込式管継手に接続管を挿入している途中の状態を示す断面図であり、対称となる部分を省略した1/4断面図である。
【図11】本発明の第五の実施の形態の差込式管継手に接続管を接続完了した状態を示す断面図であり、対称となる部分を省略した1/4断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第一実施例>
図1および図2に示すように、差込式管継手1Aは、接続管が挿入される受口11を有する継手本体10と、受口11の入口側にその一端が支持されるように配置された円筒状のパッキン20と、このパッキン20の奥側にあって、受口11の内周面に沿って軸方向に摺動可能な接続管80を係合させるための抜止手段30とから主になる。なお、図1は両側に接続管を接続するためのソケット型差込式管継手を示しているが、この形態に限らず、エルボ、チーズ、レヂューサ、キャップ等一般的な管継手の種々の形態をなすことができる。
【0017】
受口11には、段部13と、入口端の溝第一周15、そのやや奥側の第二周溝17が形成されている。第一周溝15には、パッキン20の一端を支持するための支持部材55Aが係り合うようにC型の第一止輪71が嵌合している。また第二周溝17に嵌合している第二止輪73は、後述するように、この差込式管継手1が高温にさらされパッキン20が焼失した際に抜止手段30が抜け出すことを防止するためのものである。
【0018】
抜止手段30は、受口11の軸方向に摺動可能かつ受口11の入口方向に向かって窄まり状のテーパ面32が形成されたスペーサ31と、外面部36がテーパ面32に内接し内径側が接続管の外周面に係合される抜止部材34とからなる。抜止部材34は、例えば外面部36がテーパ面32に内接し内側に接続管80の外周面に食い込む刃部37を有した複数の抜止刃部材35と、外周面から内周面に貫通し、前記複数の抜止刃部材35を支持する開口27が形成された円筒状の保持部材25とからなっている。この場合、刃部37は開口27の大きさより若干小さくなっており開口27に対して径方向の動きが許容されているが、抜止刃部材35の外面部36は開口27の大きさより若干大きくなっており、抜止刃部材35が内径側に脱落しないようになっている。
なお抜止部材34は、内周面に刃部が形成され、一箇所に切欠きのあるC型状の部材でもよい。
【0019】
また抜止手段30の奥側には押圧手段40が配置されている。この押圧手段40は、接続管80が所定の位置に挿入されたとき、抜止手段30を受口11の入口側へ押圧可能とするものである。
より具体的には、一端にフランジ部42を反対側にはスリット部43が形成された円筒状のスプリングガイド41と、スリット部43の先端からスプリングガイド41に挿通されたワッシャ45と、ワッシャ45を抜け方向に規制しスリット部43の先端に設けたワッシャ規制部44と、フランジ部42とワッシャ45との間で圧縮状態に保持されるコイルバネ46と、スプリングガイド41の内周面に挿通されスリット部43の内周側への縮径を規制する移動片47とから構成されている。
押圧手段は、上記の形態に限らず、接続管80が所定の位置に挿入されたとき、抜止手段30を受口11の入口側へ押圧可能とするものであればよい。例えば、ワッシャ45を省略し、ワッシャ規制部44を受口11に係合するものでもよいし、スリット部43と移動片47の一部が連結され、接続管80が挿入されたときに分離されるような形態も可能である。
【0020】
また受口11の内周面と保持部材25の外周面に接するように、リング状の熱膨張性パッキン75を嵌合させている。このように熱膨張性パッキン75が受口11に対して保持部材25を同心となるように配置しているので、例えば接続管80の挿入時に受口11に対して斜めに挿入された場合のように、保持部材25を偏心させる力が加わったときにでも保持部材25は偏心することなく、保持部材25の偏心に伴う抜止刃部材35の脱落を防止にすることができる。熱膨張パッキン75は合成ゴムに膨張性黒鉛を介在させたもので、高温にさらされると数百倍の体積に膨張する性質を有する。
なお、高温暴露時のシール性が問われない液体流体を取り扱う場合には、抜止刃部材35の脱落防止のみを考慮して、保持部材25に向かって付勢する弾性リングを複数の抜止刃部材35の外面に周回させてもよい。この場合には、抜止刃部材35が保持部材25に向かって付勢されているので、接続管80に食い込むことを容易にする作用も有する。
【0021】
パッキン20は、ゴム製の円筒形部材で、受口11に内接し、軸方向に摺動可能に配置される。パッキン20の受口11入口側には、複数の突出部22が形成されている。また、受口11の入口には、第一止輪71に係止された支持部材55Aを有する。支持部材55Aは、接続管80が挿通される通孔56と、通孔56と平行に設けられた貫通孔57を有する。また支持部材55Aのパッキン20側には、パッキン20に向かって拡径するテーパ面(パッキン支持部)58が形成され、パッキン20の突出部22を支持している。パッキン支持部58は、所定の力以下ではパッキン20の移動を規制するように突出部22を支持しており、輸送途中の振動や、差込式管継手を誤って落下させたときの衝撃力程度では、パッキン20は移動しない。
【0022】
貫通孔57と突出部22の形態は種々変形することが可能で、例えば、図3(a)は半円弧状の貫通孔57と突出部22の例、図3(b)は円周均等に8箇所の貫通孔57と突出部22を設けた例、図3(c)は円周均等に4箇所の貫通孔57と突出部22を設けた例である。
【0023】
差込式管継手1Aに接続管80を挿入すると、図4に示すように、パッキン20、抜止部材34の内周側を通過して、接続管80の先端が移動片47に当接する。なおパッキン20の内径は、接続管80の挿入荷重を軽減しかつ接続管80の先端でパッキン20内周面が傷つけられることを防止するために、接続管80の最大外径よりも若干大きめに設定することが好ましい。さらに安全を期するならば受口11の入口端に接続管80の先端をカバーし管のともに奥方向へスライドする傷つけ防止スリーブを設けるとよい。この状態では、押圧手段40は作用しておらず、抜止手段30およびパッキン20は、ほぼその位置を保っている。
【0024】
さらに接続管80を押し込むと、図5に示すように、移動片47が受口11の奥側へスライドし、スリット部43の縮径規制が外れ、ワッシャ45がワッシャ規制部44から飛び出す。同時にコイルバネ46が伸張してフランジ部42が熱膨張パッキン75を介して、抜止部材34を押圧する。抜止部材34はテーパ面32に沿って縮径するから刃部37が接続管80の外周面に食い込むこととなる。またコイルバネ46の伸張力によって、スペーサ31を介してパッキン20を押圧することとなる。したがって、パッキン20の内周面は縮径して接続管80の外周面をシールすることとなる。
また支持部材55Aのパッキン支持部58から突出部22が離脱してパッキン20がスライドし、突出部22が貫通孔57より受口11入口側へ突出する。したがって、接続管80が所定の位置に挿入され正常な接続が完了したことを作業者等が容易に認識することができ、また突出部22に指先で触ることによっても正常な接続が完了したことを作業者等が容易に認識できる。
【0025】
差込式管継手1Aと接続管80との接続が完了した後、接続管80に引き抜き方向の力が加わったときには、接続管80の外周面に係合される抜止手段30が、パッキン20の奥側に配置され、受口11の軸方向に摺動可能な構成であるので、抜止手段30がパッキン20を押圧してシール面圧を上昇させるように作用する。したがって、接続管80に引き抜き方向の力が加わった場合でも、管の引き抜けを阻止するとともに、長期的なシール性を向上させることができる。またパッキン20は受口11の入口に配置されてシール部材としてはひとつの部品ですむので部品費用を低減することができるとともに、接続管80とのシール性を確保と外部から雨水等の浸入を防止とを両立することができる。
【0026】
差込式管継手1Aが火災等によって高温にさらされた場合、パッキン20は焼失することとなる。このとき抜止手段30はコイルバネ46の伸張力を受けているから、第二止輪73に係止される。そして熱膨張性パッキン75が膨張して抜止手段30とフランジ部42との間に充満する。したがって火災等が発生した場合でも内部の流体を漏洩させる恐れがない。
【0027】
受口11の内周面およびスペーサ31の外周面を円形に設けておけば、スペーサ31は軸方向だけでなく周方向にも動きが許容される。接続管80を接続した後でも、受口11の内周面およびスペーサ31の外周面との間で回転可能であるので、エルボやチーズの方向調整をすることが容易となる。なお、受口11の内周面およびスペーサ31の外周面の間には摺動をより容易にするために、シリコンオイル等の潤滑材を塗布することが好ましい。あるいは飲料用水配管に用いる場合には、フッ素樹脂等の摩擦係数の小さい材料をコーティングしておくことが好ましい。
【0028】
<第二実施例>
図6に第二の実施の形態を示す。なお第一の実施の形態と同一の構成は、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。図示するように、差込式管継手1Bは、継手本体10Bにナット部材12をネジ部16を介して螺合接続している。ナット部材12および支持部材55Bは樹脂製の透明材料で成形されており、継手本体10Bは金属製等の不透明材料で構成されている。また突出部22は目立ちやすい色で着色されている。そして、突出部22は支持部材55Bのパッキン支持部58に支持され、外観からは突出部22が視認できない位置に継手本体10B内部に隠れている。
【0029】
接続管80を挿入接続すると、図7に示すように、パッキン20の突出部22がパッキン支持部58から離脱して貫通孔57より受口11入口側へ突出する。このとき突出部22は継手本体10Bの端部から現れ、ナット部材12および支持部材55Bが透明材料であるから、管継手外面からでも容易に視認することができる。
【0030】
<第三実施例>
図8に第三の実施の形態を示す。なお第一の実施の形態と同一の構成は、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。図示するように、差込式管継手1Cは図1に示した差込式管継手1Aから支持部材55Aを省略した変形例である。継手本体10Cの受口11には入口側に向かって縮径する内周テーパ面18が形成されている。第一止輪71Cは、パッキン20が押し出されてきたときに、パッキン20の抜け出しを阻止する大きさに設けられている。内周テーパ面18は、所定の力以下ではパッキン20の移動を規制するようにパッキン20を支持しており、輸送途中の振動や、差込式管継手を誤って落下させたときの衝撃力程度では、パッキン20は移動しない。
【0031】
接続管80を挿入接続すると、図9に示すように、パッキン20の突出部22が接続管80と第一止輪71Cの隙間から受口11入口側へ突出する。したがって、接続管80が所定の位置に挿入され正常な接続が完了したことを作業者等が容易に認識することができ、また突出部22に指先で触ることによっても正常な接続が完了したことを作業者等が容易に認識できる。さらにパッキン20は内周テーパ面18に押圧されて縮径方向に力を受けることになるからシール面圧が向上し、シール性がさらに向上する。
【0032】
<第四、第五実施例>
図10に第四の実施の形態を、図11に第五の実施の形態を示す。なお第一の実施の形態と同一の構成は、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
図10に示すように、差込式管継手1Dの支持部材55Dは、インジケータ部材65を介してパッキン20を支持する。その支持面には貫通孔57が形成されている。インジケータ部材65は例えば樹脂製のリング状部材で支持部材55C側に貫通孔57に挿通可能な凸部66を有する。そして、接続管80が挿入されパッキン20が押圧されると、凸部66が貫通孔57から突出するように構成されている。
【0033】
インジケータ部材65は、差込式管継手1Dの輸送途中の振動や、差込式管継手を誤って落下させたときの衝撃力程度では移動しない程度に受口11に嵌合されている。インジケータ部材65は所定の力以下では移動しなければよく、例えば受口11に段差を設け係止してもよい。あるいは、インジケータ部材65に所定の力が加わったときに連結が外れるように、インジケータ部材65と支持部材55Dとを連結してもよい。
接続管80を挿入すると押圧手段40が作用して抜止手段30、パッキン20を押圧する。このときの力で凸部66が貫通孔57から突出するので、この凸部66を視認することによって、接続管80が所定の位置に挿入され正常な接続が完了したことを作業者等が容易に認識することができる。
【0034】
一方、図11に示す差込式管継手1Eは差込式管継手1Dのパッキン20と抜止手段30の位置関係を入れ替えたものである。インジケータ機能を果たす部材が別体のインジケータ部材65として備えているので、管継手を構成する他の部材(パッキンや抜止手段)の配置が自由となる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
上記実施の形態においては、汎用の鋼管、ライニング鋼管、複合管、蛇腹形状のコルゲート管等の配管材料に好適である。流体は、気体液体を問わないが、飲料用水配管に用いる場合には、抜止手段30や押圧手段40の防食対策を要する。
【符号の説明】
【0036】
1A、1B、1C、1D、1E:差込式管継手
10、10B、10C:継手本体、11:受口、12:ナット部材、13:段部、15:第一周溝、17:第二周溝、
20、20B:パッキン、22:突出部、25:保持部材、27:開口、
30:抜止手段、31:スペーサ、32:テーパ面、34:抜止部材、35:抜止刃部材、36:外面部、37:刃部、
40:押圧手段、41:スプリングガイド、42:フランジ部、43:スリット部、44:ワッシャ規制部、45:ワッシャ、46:コイルバネ、47:移動片、
50:熱膨張パッキン、55A、55B、55D:支持部材、56:通孔、57:貫通孔、58:パッキン支持部、
65:インジケータ部材、66:凸部、
71、71C:第一止輪、73:第二止輪、75:熱膨張性パッキン、
80:接続管


【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続管の先端が挿入される受口を有する継手本体と、
該受口の軸方向に摺動可能な円筒状パッキンと、該受口の軸方向に摺動可能かつ前記接続管の外周面に係合される抜止手段と、
前記受口における前記パッキンおよび前記抜止手段の奥側に配置され、前記接続管が所定の位置に挿入されたとき、前記パッキンおよび前記抜止部材を受口入口側へ押圧可能な押圧手段を備え、
前記受口入口近傍には、前記パッキンまたは前記抜止部材の摺動に伴い、前記受口入口に突出する突出手段を有することを特徴とする差込式管継手。
【請求項2】
前記突出手段は、前記パッキンに一体に設けられた突出部であることを特徴とする請求項1に記載の差込式管継手。
【請求項3】
前記受口の入口に、前記接続管が挿通する挿入孔と、該挿入孔に平行軸心の貫通孔を形成した支持部材を有することを特徴とする請求項2に記載の差込式管継手。
【請求項4】
前記受口入口には、ナット部材が接続され、前記継手本体は不透明材料で、前記支持部材および前記ナット部材は、透明な材料で構成されることを特徴とする請求項3に記載の差込式管継手。
【請求項5】
前記受口の入口に前記接続管が挿通する挿入孔と、該挿入孔に平行軸心の貫通孔を形成した支持部材を有し、前記突出手段は、該支持部材の受口内方に該貫通孔から少なくともその一部が外部に突出するインジケータ部材であることを特徴とする請求項1に記載の差込式管継手。
【請求項6】
前記抜止手段は、前記受口の軸方向に摺動可能かつ前記受口入口方向に向かって窄まり状のテーパ面が形成されたスペーサと、外面部が前記テーパ面に内接し内径部が接続管の外周面に係合される抜止部材とからなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の差込式管継手。
【請求項7】
前記抜止部材は、外面部が前記テーパ面に内接し内側に前記接続管の外周面に食い込む刃部を有した複数の抜止刃部材と、外周面から内周面に貫通し、前記複数の抜止刃部材を支持する開口が形成された円筒状の保持部材とからなることを特徴とする請求項6に記載の差込式管継手。
【請求項8】
前記押圧手段は、一端にフランジ部を反対側にはスリット部が形成された円筒状のスプリングガイドと、
前記スリット部の先端から前記スプリングガイドに挿通されたワッシャと、
該ワッシャを抜け方向に規制し、前記スリット部の先端に設けたワッシャ規制部と、
前記フランジ部と前記ワッシャとの間で圧縮状態に保持されるコイルバネと、
前記スプリングガイドの内周面に挿通され前記スリット部の内周側への縮径を規制する移動片とからなることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の差込式管継手。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2012−219997(P2012−219997A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−89721(P2011−89721)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【Fターム(参考)】