説明

巻上機

【課題】簡単な構成で内蔵しているインバータが発する熱や回生制動用抵抗器が発する熱を効率良く外気に放熱でき、高頻度運転が可能な巻上機を提供すること。
【解決手段】荷昇降用電動機41、減速機構、回生制動用抵抗器70を具備し、荷昇降用電動機41を巻上機本体に内蔵するインバータ12で駆動すると共に、吊り荷の下降時荷昇降用電動機41で発電した電流を回生制動用抵抗器70に流し、回生制動をかける巻上機において、インバータ12を減速機構ケーシング15に面接触で密接させて取付け、該インバータ12で発生した熱を減速機構ケーシング15に放熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷昇降電動機を内蔵するインバータで駆動する電動チェーンブロックや電動ホイスト等の巻上機に関し、特にインバータで発する熱を効率よく外気に放熱することができると共に、荷昇降電動機の回生制動時に発生する回生電流を回生制動用抵抗器に流し発生する熱を効率良く外気に放熱でき、高頻度運転が可能な巻上機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
荷昇降用電動機として巻上機本体に内蔵するインバータで駆動するインバータ駆動電動機を用いた電動チェーンブロックや電動ホイスト等の巻上機がある。このような巻上機においては安全のため、インバータの温度が所定の設定温度を超えるとインバータをトリップ(遮断)し、巻上機の運転ができないようにしている。巻上機を高頻度運転した場合、即ち巻上機の運転時間+休止時間を100%として、運転時間が60%以上の運転を行なった場合、インバータから発する熱が多く、インバータを収容した制御ボックス内にこの熱が滞留する。そして制御ボックス内の温度が上記所定の設定温度値(例えば、100℃)を超えると、インバータがトリップし、巻上機の運転ができなくなるという問題がある。
【0003】
図1は従来のこの種の電動チェーンブロックの制御ボックスの内部構成を示す平面断面図である。制御ボックス100内にスチール製のパネル板101に実装されたインバータ102、電磁開閉器103、トランス104が配置されている。電動チェーンブロックを高頻度で運転した場合、インバータ102から上記のように大量の熱が発せられる。この熱はパネル板101がスチール製のため、アルミニウム等に比べて熱伝導率が劣り、板厚も薄いことから放熱性も悪い。そのため熱の逃げ場が無いことから熱が制御ボックス100内に滞留し、高温となり、インバータ102がトリップするという問題がある。なお、図1において、105は電動チェーンブロックの減速機構(後に詳述)が収容される減速機構ケーシングである。
【0004】
この対策として、図2に示すように制御ボックス100をアルミニウム製とし、インバータ102を制御ボックス100の内壁面に取付ける方法がある。これによると制御ボックス100が熱伝導率の良いアルミニウム材で出来ており、その外壁面が外気に曝されているため、インバータ102の放熱効果も期待できるが、インバータ102以外の電磁開閉器103やトランス104等がパネル板101を介して巻上機の本体側に取付けられているため、配線やメンテナンスが大変であるという問題がある。また、制御ボックス100に衝撃がかると、直接インバータ102に衝撃がかかるという懸念もある。
【0005】
また、上記巻上機において、吊り荷を下降させる際、荷昇降用電動機は発電機として機能し、その発電する回生電流を回生制動用抵抗器に流し、熱として消費することにより、該昇降用電動機に回生制動をかけている。
【0006】
図3は従来のこの種の回生制動用抵抗器の構成例を示す図であり、図3(a)は平面図、図3(b)は正面図、図3(c)は右側面図である。図示するように、抵抗器110は金属板(例えばアルミニウム板)からなる直方体の金属ケーシング111内に長尺の抵抗素子(例えば、耐熱性絶縁材からなる棒体にニクロム線を巻回した構成の抵抗素子)112を配置し、抵抗素子112以外の金属ケーシング111内の空間に無機材料からなる耐熱性絶縁材113を充填した構成である。また、抵抗素子112と抵抗素子112は金属ケーシング111内で一端がリード線115で電気的に直列に接続され、他端に接続されたリード線114は金属ケーシング111の端部から延びている。
【0007】
上記のように直方体の金属ケーシング111内に抵抗素子112を配置した構成の抵抗器を回生制動用抵抗器として用いた場合、巻上機を高頻度運転すると回生制動用抵抗器に多量の電流が流れ温度が上昇し、この温度上昇によりインバータの温度も上昇し、インバータの温度が上記設定温度を超えるとインバータがトリップするという問題があった。また、荷昇降用電動機が発電する回生電流が大きい場合は、複数の抵抗器110を用いる必要があり、配線、取付けに手間がかかるという問題もある。
【0008】
荷の下降時に電動機が発電する回生電流が大きい場合の対策として、図4(a)に示すように、金属ケーシング111内に配置する抵抗素子112の個数を多くする方法もあるが、抵抗素子112どうしが放熱しあい、多量の熱を放出するのに対して金属ケーシング111の表面積を大きくとれず、放熱性が劣るという問題がある。そこで図4(b)に示すように、抵抗器110とは別体にヒートシンク120を取り付ける方法もあるが、ヒートシンク120を含む抵抗器110の寸法、特に高さ寸法が大きくなるという問題がある。また、ヒートシンク120と抵抗器110の接触状態が良くないと放熱性が劣るという問題がある。また、ヒートシンク120の分部品点数が増え、コストが高くなるという問題もある。
【特許文献1】特開平1−27957号公報
【特許文献2】特開平5−39603号公報
【特許文献3】特開平10−32101号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、簡単な構成で内蔵しているインバータが発する熱や回生制動用抵抗器が発する熱を効率良く外気に放熱でき、高頻度運転が可能な巻上機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため請求項1に記載の発明は、荷昇降用電動機、減速機構、回生制動用抵抗器を具備し、前記荷昇降用電動機を巻上機本体に内蔵するインバータで駆動すると共に、吊り荷の下降時前記荷昇降用電動機で発電した電流を前記回生制動用抵抗器に流し、回生制動をかける巻上機において、前記インバータの発する熱を前記減速機構を収容する減速機構ケーシングに放熱する放熱手段を設けたことを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の巻上機において、前記放熱手段は前記インバータを前記減速機構ケーシングに少なくとも一部を面接触で密接させて取付け、該インバータで発生した熱を前記減速機構ケーシングに放熱することを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の巻上機において、前記減速機構ケーシングはアルミニウム材で構成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の巻上機において、前記回生制動用抵抗器は、表面を凹凸波形形状に形成すると共に裏面を該凹凸波形形状に対応させた凸凹波形形状に形成した波形金属板と平板金属板とを具備し、該波形金属板と平板金属板を重ね合わせた構成の抵抗器ケーシングを備え、前記抵抗器ケーシングの波形金属板の裏面の凹部空間に抵抗素子を配置し、前記波形金属板の裏面凹部空間を含む該波形金属板と前記平板金属板の間の空間に絶縁材を充填したことを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の巻上機において、前記抵抗器ケーシングの波形金属板及び平板金属板はアルミニウム材からなることを特徴とする。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の巻上機において、前記抵抗器ケーシングの波形金属板はアルミダイカストで成形されていることを特徴とする。
【0016】
請求項7に記載の発明は、請求項4乃至6のいずれか1項に記載の巻上機において、前記回生制動用抵抗器は前記巻上機のケーシングに前記抵抗器ケーシングの平板金属板を該巻上機のケーシング外表面に当接させて取り付けられていることを特徴とする。
【0017】
請求項8に記載の発明は、請求項4乃至7のいずれか1項に記載の巻上機において、前記回生制動用抵抗器は前記抵抗器ケーシングの波形金属板の凹凸波形形状の凹状溝長手方向が上下方向になるように配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の発明によれば、インバータの発する熱を減速機構ケーシングに放熱する放熱手段を設けたので、インバータの発する熱を熱容量の大きい減速機構ケーシングを介して効率よく外気に放熱することが可能となる。また、減速機構ケーシングはその内部に潤滑油が収容されたオイルバスとなっているから、油冷によるインバータの冷却も期待できる。よって、インバータを効率よく冷却でき、インバータ温度を所定のトリップ温度以下に維持できるから、巻上機の高頻度運転が可能となる。
【0019】
請求項2に記載の発明によれば、放熱手段はインバータを減速機構ケーシングに少なくとも一部を面接触で密接させて取付けて放熱する手段であるので、簡単な構成でインバータの発する熱を効率よく減速機構ケーシングに伝達させ放熱させることができる。また、インバータを減速機構ケーシングに密接させて取り付けるので、インバータと減速機構ケーシングの間に空間や部材が介在しないから、その分巻上機全体をコンパクトに構成できる。
【0020】
請求項3に記載の発明によれば、減速機構ケーシングは熱伝導率の高いアルミニウム材で構成されているので、更に効率よくインバータの発する熱を外気に放熱でき冷却効果が向上する。
【0021】
請求項4に記載の発明によれば、回生制動用抵抗器は抵抗器ケーシングの波形金属板の裏面の凹部空間に抵抗素子を配置し、波形金属板の裏面凹部空間を含む該波形金属板と平板金属板の間の空間に絶縁材を充填した構成であるので、波形金属板の表面面積が大きくなり、この面積の大きい表面が放熱面となるから、抵抗素子からの熱を効果的に放熱することができる。従って、上記のようにインバータの熱が効率よく放熱されることに合わせて回生制動用抵抗器の熱も効率よく放熱されるから、更に巻上機の高頻度運転が可能となる。
【0022】
請求項5に記載の発明によれば、回生制動用抵抗器の抵抗器ケーシングの波形金属板及び平板金属板はアルミニウム材からなるので、アルミニウム材は高い熱伝導性を有するから、抵抗素子から発せられる熱が効果的に放熱されることが期待できる。
【0023】
請求項6に記載の発明によれば、回生制動用抵抗器の抵抗器ケーシングの波形金属板はアルミダイカストで成形されているので、アルミダイカストはプレスに比べて肉厚を厚くできるから、抵抗器ケーシングの表面温度を下げる作用も有する。
【0024】
請求項7に記載の発明によれば、回生制動用抵抗器は巻上機のケーシングに抵抗器ケーシングの平板金属板を該巻上機のケーシング外表面に当接させて取り付けているので、外気が回生制動用抵抗器のケーシングの波形金属板の表面に接触することになり放熱作用を更に促進させる。更に、回生制動用抵抗器の平板金属板から巻上機のケーシング表面に放熱され、ケーシング表面から外気に放熱されるので、放熱が更に促進される。また、ケーシングと減速機構ケーシングを熱伝導性の低いガスケットによって仕切ることで、インバータの発する熱は減速機構ケーシングを通じて、回生制動用抵抗器の発する熱は直接外気とケーシング表面を通じてそれぞれ放熱されるようにしているので、それぞれの放熱量を制御することが出来て、全体として放熱効果を高めることが出来る。
【0025】
請求項8に記載の発明によれば、回生制動用抵抗器は抵抗器ケーシングの波形金属板の凹凸波形形状の凹状溝の長手方向が上下方向になるように配置されているので、波形金属板の表面で熱せられた空気は、凹凸波形の凹状溝を通って上昇する上昇気流となり上端から放出されると同時に、下端から外気流入するので、放熱作用を更に促進させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態例を図面に基づいて説明する。図5は本発明に係る電動チェーンブロックの制御ボックスの内部構成例を示す平面断面図である。図示するように、インバータ12を直接減速機構ケーシング15に取付けている。このときインバータ12と減速機構ケーシング15の接触面は互いに平坦に形成し、両者が密接する(面接触で密接する)ように取付けている。減速機構ケーシング15はアルミニウムダイカストで形成され、該減速機構ケーシング15内には減速機構を構成する歯車等を潤滑するための潤滑油(図示せず)が収容されている。
【0027】
また、制御ボックス10内には、スチール製のパネル板11に実装された電磁開閉器13、トランス14が配置されている。電動チェーンブロックが高頻度で運転された場合、インバータ12から上記のように大量の熱が発せられる。この熱はインバータ12から減速機構ケーシング15に伝達され、該減速機構ケーシング15から外気に放熱される。上記のように減速機構ケーシング15は高熱伝導率のアルミニウム材からなり、ダイカストで肉厚に構成されているから、インバータ12で発する熱は効率よく減速機構ケーシング15に伝達され、外気に放熱されることになる。また、減速機構ケーシング15はその内部に潤滑油が収容され、オイルバスとなっているから、油冷によるインバータの冷却も期待できる。また、インバータ12を直接減速機構ケーシング15に取付けることにより、制御ボックス10を点線で示し状態から、実線で示す状態に小型化(電動チェーンブロックの全体の長さの短縮化)ができる。
【0028】
また、上記のようにインバータ12と減速機構ケーシング15の接触面は互いに平坦に形成し両者が密接するように取付けるという極めて簡単な構成でインバータを効率良く冷却できる。特に減速機構ケーシング15内には、インバータ12や荷昇降用電動機41や吊り荷落下防止用機械式ブレーキ51のように、熱を発する発熱体が配置されていないから、この点からもインバータ12の効果的な冷却が期待できる。
【0029】
図6は、上記構成の制御ボックス10を備えた電動チェーンブロックの全体構成例を示す平面断面図である。電気チェーンブロック20は、本体ケーシング21を備え、該本体ケーシング21の一端に上記制御ボックス10が連結され、制御ボックス10内のインバータ12が直接減速機構ケーシング15に取り付けられている。本体ケーシング21の他端には、モータケーシング40の一端が連結され、該モータケーシング40の他端にはファンカバー50が連結されている。本体ケーシング21内にはチェーンブロック本体22が、モータケーシング40内には荷昇降用電動機41が、ファンカバー50内には、ファン翼54や吊り荷落下防止用機械式ブレーキ51がそれぞれ収容されている。
【0030】
チェーンブロック本体22は中空従動軸26と該中空従動軸26を貫通する駆動軸25を具備している。中空従動軸26は軸受23、軸受24で回転自在に支持され、駆動軸25は軸受34、軸受35で回転自在に支持されている。駆動軸25の一端は荷昇降用電動機41の回転軸46に連結され、他端は中空従動軸26を貫通し延び、その端部外周には大径中間従動歯車27が噛み合う歯車歯が形成されている。大径中間従動歯車27は回転軸28に固定され、該回転軸28は軸受29、軸受30で減速機構ケーシング15に回転自在に支持されている。また、該回転軸28には小径中間従動歯車31が固定され、該小径中間従動歯車31には中空従動軸26に固定された大径従動歯車32が噛み合っている。また、中空従動軸26にはロードシーブ33が連結されている。
【0031】
荷昇降用電動機41は、ステータ42とロータ43を備え、ステータ42はモータケーシング40内に嵌合固定されている。ロータ43は軸受44及び軸受45を介して回転自在に支持された回転軸46に固定され、ステータ42の中心部を貫通して配置されている。吊り荷落下防止用機械式ブレーキ51はモータケーシング40に固定されたブレーキ板52と回転軸46に固定されたブレーキ板53を備え、荷昇降用電動機41の電源が遮断されたときバネにより自動的にブレーキ板52をブレーキ板53に押し付け回転軸46を拘束し吊り荷の落下を防止すると共に、荷昇降用電動機41に電源が接続されたとき電磁石の磁気力によりブレーキ板52を前記バネ力に抗してブレーキ板53から離間させ、回転軸46を開放するようになっている。なお、回転軸46の端部にはファン翼54が取付けられている。
【0032】
上記構成の電動チェーンブロックにおいて、荷昇降用電動機41の回転軸46の回転力はチェーンブロック本体22の駆動軸25に伝達され、該駆動軸25に形成された歯車歯に噛み合う大径中間従動歯車27、小径中間従動歯車31、大径従動歯車32を介して中空従動軸26に伝達され、該中空従動軸26に連結されたロードシーブ33に伝達され、図示しないチェーンを巻上げ、巻下ろすようになっている。即ち、荷昇降用電動機41の回転力は大径中間従動歯車27、小径中間従動歯車31及び大径従動歯車32からなる減速機構を介して中空従動軸26に伝達され、ロードシーブ33を回転するようになっている。なお、減速機構ケーシング15内には上記減速機構を構成する駆動軸25に形成された歯車歯、大径中間従動歯車27、小径中間従動歯車31、大径従動歯車32の潤滑のため潤滑油(図示せず)が収容されている。
【0033】
図7は電動チェーンブロックの駆動回路の概略構成を示す図である。電磁開閉器60を閉じインバータ12に電源を投入し、制御回路61から正転、逆転、速度信号等の制御信号を与えることにより、荷昇降用電動機41は指定された速度で正転(吊り荷の巻上方向)、逆転(吊り荷の巻下方向)に回転する。電動チェーンブロックが高頻度運転、即ち巻上機の運転時間+休止時間を100%として、運転時間が60%以上の運転を行なった場合、インバータ12から多量の熱が発せられる。上記のように、インバータ12を直接減速機構ケーシング15に取り付けることにより、インバータ12からの熱は、減速機構ケーシング15を通って外気に効率よく放熱されるから、インバータ12は効果的に冷却される。また、上記のように減速機構ケーシング15内に潤滑油が収容され、該減速機構ケーシングはオイルバスとなっているから、インバータ12は油冷却されることにもなる。これにより、巻上機を高頻度運転してもインバータ12は所定のトリップ温度値(例えば、100℃)以上に昇温することなく、トリップを回避できる。
【0034】
また、図6に示すように、制御ボックス10の側部には回生制動用抵抗器70を取付けており、荷昇降用電動機41が吊り荷を下降させるとき、発電機として機能し、その発電した回生電流を回生制動用抵抗器70に通電して消費することにより、荷昇降用電動機41に回生制動をかけるようになっている。また、荷昇降用電動機41の運転中はファン翼54が回転し、吊り荷落下防止用機械式ブレーキ51及び荷昇降用電動機41に空気を送り、冷却する。
【0035】
図8は回生制動用抵抗器70の構成例を示す図で、図8(a)は平面図、図8(b)は正面図、図8(c)はA−A断面図である。図示するように、本回生制動用抵抗器70は波形金属板72と平板金属板73からなるケーシング71を備えている。波形金属板72はアルミニウム材からなり、ダイカスト成形により表面を凹凸波形形状に形成すると共に、裏面を該凹凸波形形状に対応させた凸凹波形形状に形成した構成である。また、波形金属板72の両側部の高さ寸法H1は凹凸部の高さ寸法H2より大きく(H1>H2)形成されている。平板金属板73は平坦なアルミニウム材からなる。波形金属板72と平板金属板73とを重ね合わせてケーシング71を構成している。
【0036】
ケーシング71の波形金属板72の裏面側の凹部空間75に抵抗素子74を配置し、該凹部空間75を含む波形金属板72と平板金属板73の間の空間に絶縁性充填材76を充填している。この絶縁性充填材76としては、例えば耐熱シリコンセメント等の耐熱セメントを用いる。また、波形金属板72と平板金属板73の接合は、平板金属板73を貫通してビス77を波形金属板72に捩じ込むことにより、平板金属板73を波形金属板72に固定する。複数本の抵抗素子74は電気的に直列に接続し、通電のためのリード端子80をケーシング71の側部から外側に導出している。
【0037】
抵抗素子74は、通電することによりその電流を効率よく熱に変換できる構成の抵抗体であればどのようなものでもよいが、例えば図9に示すように、セラミック材等の耐熱絶縁材からなる円柱材(又は円筒材)78にニクロム線等の抵抗線79を巻回した構成のものを用いてもよい。
【0038】
回生制動用抵抗器70を上記構成とすることにより、抵抗素子74に電流を流した場合、発生した熱は絶縁性充填材76を通して熱伝導性の良いアルミニウム材からなる波形金属板72に伝わる。波形金属板72はその表面を凹凸波形形状に形成され、広い表面積を有するから、伝わった熱を効率良く外気に放熱する。また、波形金属板72はアルミニウムダイカストで成形されているから、プレスに比べ肉厚を厚くでき、表面温度を下げる効果も有する。
【0039】
図10に示すように、制御ボックス10の外側面には回生制動用抵抗器70を取り付け、吊り荷の下降に際して荷昇降用電動機41が発電する電流を該回生制動用抵抗器70の抵抗素子74に流すことにより、発生した熱は絶縁性充填材76を通してアルミニウム材からなる波形金属板72に伝わる。回生制動用抵抗器70の波形金属板72は上記のようにアルミニウムダイカストで表面を凹凸波形形状に形成しているので、その表面積が広くなり、抵抗素子74からの熱を効率良く放熱できる。特に波形金属板72はアルミニウムダイカストで成形されているから、プレスに比べ肉厚を厚くできるから、表面温度を下げる効果も有する。
【0040】
制御ボックス10と減速機構ケーシング15は、熱伝導性の低いガスケット16によって仕切られている。減速機構ケーシング15に取り付けられたインバータ12の発熱量と耐熱性能、及び制御ボックス10に取り付けられた回生制動用抵抗器70の発熱量等によって、適宜、熱伝導性の低いガスケット16の配置位置を変え、電動チェーンブロックケーシング表面からそれぞれの放熱量及び熱伝導範囲を制御している。最も発熱するのは、回生制動抵抗器70で回生制動用抵抗器の発熱を放熱させる電動チェーンブロックケーシングの表面積を増やすことが効果的であるが、その熱が減速機構ケーシング15に取り付けたインバータ12に影響を及ぼすのは、インバータ12の耐熱性において好ましくない。また、インバータ12自身の発熱も電動チェーンブロックケーシングの表面から放熱させる必要もある。従って、インバータ12の耐熱性が高く、発熱量も少ない場合には、ガスケット16の取付け位置を制御ボックス10の表面積を広くする位置に配置し、或いは、インバータ12の耐熱性が低い、又は発熱量が多い場合には、ガスケット16の取付け位置を制御ボックス10の表面積を狭くし、その分、減速機構ケーシングの表面積を広くするなどして、巻上機全体の放熱性能を効果的に向上させることができる。なお、図10は図6の制御ボックス10部分の拡大図である。
【0041】
図11は本発明に係る電動チェーンブロックの他の制御ボックス10部分の拡大図である。図示するように制御ボックス10の側部に凹部81を形成し、この凹部81に制動抵抗となる回生制動用抵抗器70を配置している。凹部81の開口部を図12に示すような、複数のスリット82aが形成された板体82で覆っている。このように制御ボックス10の側部に凹部81を形成し、この凹部81内に回生制動用抵抗器70を配置することにより、図10に示すように回生制動用抵抗器70が制御ボックス10の側部に突出しないから、外観が良好になる。
【0042】
また、ここでは図13に示す回生制動用抵抗器70の波形金属板72の凹状溝72aが上下方向になるように配置し、制御ボックス10の凹部81の上下縁部には上下方向に溝10aを形成している。これにより下側縁部に形成された溝10aを通って流入した空気Aは、板体82と波形金属板72の間の空間(図11参照)に流入し、波形金属板72の表面から放射される熱により昇温され、凹状溝72aを通って上昇する上昇気流となり、上側縁部に形成された溝10aを通って流出すると共に、下方から冷たい新たな空気が流入する。これにより冷却効果は更に促進する。なお、図13は板体82を取り除いた制御ボックス10の側面を示す図である。
【0043】
上記のように回生制動用抵抗器70の抵抗素子74はケーシング21の波形金属板72の裏面の凹部空間75に配置するが、その位置は図14(a)に示すように凹部空間75の開口部、図14(b)に示すように凹部空間75の上部、図14(c)に示すように凹部空間75の下方に配置するが、図14(a)に示すように凹部空間75の開口部に配置するのが、放熱効果が一番よい結果が得られた。
【0044】
制御ボックス10の構成が図11に示すもので、抵抗素子74を図14(a)に示す位置に配置した回生制動用抵抗器70を用い電動チェーンブロックを高頻度運転し飽和温度となった場合の減速機構ケーシング15の表面温度A、制御ボックス10の外壁面温度B、回生制動用抵抗器70の波形金属板72の表面温度C、凹状溝72aの底部温度D、インバータ12を取り付けた部分の減速機構ケーシング15の表面温度Eの温度を測定すると、いずれも満足する結果が得られ、電動チェーンブロックの高頻度運転が可能であった。
【0045】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書、図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。例えば上記実施形態例では巻上機として電動チェーンブロックを例に説明したが、本発明に係る巻上機はドラムでワイヤーロープを巻き取り巻き戻す電動ホイスト等でもよいことは当然である。
【0046】
また、上記実施形態では、インバータ12で発する熱を減速機構ケーシング15に放熱する放熱手段として、インバータ12を直接減速機構ケーシング15に密着させて取り付け、インバータ12で発する熱を減速機構ケーシング15に伝えるようにしたが、放熱手段はこれに限定されるものではなく、例えばインバータ12で発する熱をヒートパイプ等の熱伝達手段を用いて減速機構ケーシング15に導くようにしてもよい。特にインバータを直接減速機構ケーシングに取り付けることができない場合や、インバータの側壁の広い部分を直接減速機構ケーシングに取り付けることができない場合等に他の熱伝達手段を又は他の熱伝達手段と併用させると効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】従来の電動チェーンブロックの制御ボックスの内部構成を示す平面断面図である。
【図2】従来の電動チェーンブロックの制御ボックスの内部構成を示す平面断面図である。
【図3】従来の巻上機の回生制動用抵抗器の構成例を示す図で、図3(a)は平面図、図3(b)は正面図、図3(c)は右側面図である。
【図4】従来の巻上機の回生制動用抵抗器の構成例を示す図で、図4(a)は平面図、図4(b)は正面図である。
【図5】本発明に係る電動チェーンブロックの制御ボックスの内部構成例を示す平面断面図である。
【図6】本発明に係る電動チェーンブロックの全体構成例を示す平面断面図である。
【図7】電動チェーンブロックの駆動回路の概略構成を示す図である。
【図8】本発明に係る電動チェーンブロックの回生制動用抵抗器の構成例を示す図で、図8(a)は平面図、図8(b)は正面図、図8(c)はA−A断面図である。
【図9】抵抗素子の構成例を示す図である。
【図10】本発明に係る電動チェーンブロックの他の制御ボックスの内部構成を示す平面断面図である。
【図11】本発明に係る電動チェーンブロックの他の制御ボックスの内部構成を示す平面断面図である。
【図12】本発明に係る電動チェーンブロックの回生制動用抵抗器のカバーの外形を示す図である。
【図13】本発明に係る電動チェーンブロックの制御ボックス部の回生制動用抵抗器の取り付け部を示す図である。
【図14】本発明に係る電動チェーンブロックの回生制動用抵抗器の抵抗素子の抵抗器ケーシング内の配置位置を示す図である。
【符号の説明】
【0048】
10 制御ボックス
11 パネル板
12 インバータ
13 電磁開閉器
14 トランス
15 減速機構ケーシング
16 ガスケット
20 電動チェーンブロック
21 本体ケーシング
22 チェーンブロック本体
23 軸受
24 軸受
25 駆動軸
26 中空従動軸
27 大径中間従動歯車
28 回転軸
29 軸受
30 軸受
31 小径中間従動歯車
32 大径従動歯車
33 ロードシーブ
34 軸受
35 軸受
40 モータケーシング
41 荷昇降用電動機
42 ステータ
43 ロータ
44 軸受
45 軸受
46 回転軸
50 ファンカバー
51 吊り荷落下防止用機械式ブレーキ
52 ブレーキ板
53 ブレーキ板
54 ファン翼
60 電磁開閉器
61 制御回路
70 回生制動用抵抗器
72 波形金属板
73 平板金属板
74 抵抗素子
75 凹部空間
76 絶縁性充填材
77 ビス
78 円柱材(又は円筒材)
79 抵抗線
80 リード端子
81 凹部
82 板体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷昇降用電動機、減速機構、回生制動用抵抗器を具備し、前記荷昇降用電動機を巻上機本体に内蔵するインバータで駆動すると共に、吊り荷の下降時前記荷昇降用電動機で発電した電流を前記回生制動用抵抗器に流し、回生制動をかける巻上機において、
前記インバータの発する熱を前記減速機構を収容する減速機構ケーシングに放熱する放熱手段を設けたことを特徴とする巻上機。
【請求項2】
請求項1に記載の巻上機において、
前記放熱手段は前記インバータを前記減速機構ケーシングに少なくとも一部を面接触で密接させて取付け、該インバータで発生した熱を前記減速機構ケーシングに放熱することを特徴とする巻上機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の巻上機において、
前記減速機構ケーシングはアルミニウム材で構成されていることを特徴とする巻上機。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の巻上機において、
前記回生制動用抵抗器は、表面を凹凸波形形状に形成すると共に裏面を該凹凸波形形状に対応させた凸凹波形形状に形成した波形金属板と平板金属板とを具備し、該波形金属板と平板金属板を重ね合わせた構成の抵抗器ケーシングを備え、
前記抵抗器ケーシングの波形金属板の裏面の凹部空間に抵抗素子を配置し、
前記波形金属板の裏面凹部空間を含む該波形金属板と前記平板金属板の間の空間に絶縁材を充填したことを特徴とする巻上機。
【請求項5】
請求項4に記載の巻上機において、
前記抵抗器ケーシングの波形金属板及び平板金属板はアルミニウム材からなることを特徴とする巻上機。
【請求項6】
請求項5に記載の巻上機において、
前記抵抗器ケーシングの波形金属板はアルミダイカストで成形されていることを特徴とする巻上機。
【請求項7】
請求項4乃至6のいずれか1項に記載の巻上機において、
前記回生制動用抵抗器は前記巻上機のケーシングに前記抵抗器ケーシングの平板金属板を該巻上機のケーシング外表面に当接させて取り付けられていることを特徴とする巻上機。
【請求項8】
請求項4乃至7のいずれか1項に記載の巻上機において、
前記回生制動用抵抗器は前記抵抗器ケーシングの波形金属板の凹凸波形形状の凹状溝長手方向が上下方向になるように配置されていることを特徴とする巻上機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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