説明

巻上機

【課題】巻上機に設けられた歯車に潤滑油を自動的に供給できるようにする。
【解決手段】巻上機である電気チェーンブロックは、ロードチェーン17が巻き付けられるスプロケット15を有し、スプロケット15は電動モータにより減速機構24を介して駆動される。減速機構24はギヤケース37内に組み込まれ、ギヤケース37内には潤滑油Lが収容される。潤滑油Lは吸引ホース41により潤滑ポンプ40に送られ、潤滑ポンプ40により吐出ホース43を介してノズル42に供給され、ノズル42から歯車33aに塗布される。ロードチェーン17によりロードフックが上限位置となると、ポンプ駆動軸57が揺動し潤滑ポンプ40が駆動される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吊荷を上下動するための電気チェーンブロック等の巻上機に関する。
【背景技術】
【0002】
荷物つまり吊荷を上下動するための巻上機には、電気チェーンブロックやホイスト等がある。電気チェーンブロックは、ロードチェーンが掛け渡されたスプロケットを駆動することにより、ロードチェーンの一端部に設けられた荷物吊り下げ用のロードフックを上下動させて荷物の巻上げと巻下げを行うようにしており、ロードチェーンの他端部は巻上機本体に設けられたチェーン収納器つまりチェーンバケットに収納されるようになっている。一方、ホイストは、ワイヤが巻き付けられるドラムを駆動することにより、ワイヤの下端部に設けられた荷物吊り下げ用のロードフックを上下動させて荷物の巻上げと巻下げを行うようにしている。
【0003】
ロードチェーンやワイヤ等の荷物用索条が巻き付けられるスプロケットやドラムなどの巻上げ回転体は、電動モータにより回転駆動される。特許文献1に記載されるように、巻上機は電動モータの回転を減速してスプロケットやドラムなどの巻上げ用の回転体に伝達するために、歯車対からなる減速機構を有し、減速機構は巻上機本体のギヤケース内に組み込まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−230751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
巻上機を用いて重量物を巻き上げるときには、重量物を吊り上げるロードチェーン等はもとより、ロードチェーン等を巻き取るための巻上げ用の回転体やこれに連結された減速歯車対にも大きな負荷が発生することになる。減速歯車の歯面は歯車同士の接触で摩耗し、摩耗が所定以上進行すると動力の伝達ができず荷重を保持できなくなる。そこで、歯面の摩耗を抑制するために歯車にはグリース等の潤滑油を塗布する必要がある。しかし、歯車同士の接触部に塗布された潤滑油は、塗布後、時間の経過とともに歯面から飛散、脱落してしまう。特に、複数段の減速歯車対を有する減速機構のうち初段の歯車対は高速回転するので潤滑油の飛散が著しい。また、作業者が潤滑油の塗布作業を定期的に行うことは、巻上機が高所に設定され、かつ過酷な環境で使用されている場合が多いので、手間がかかり困難である。
【0006】
本発明の目的は、巻上機に設けられた歯車に潤滑油を自動的に供給できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の巻上機は、荷物を引っ掛けるロードフックを備えた荷物用索条が巻き付けられる回転体と、当該回転体を回転駆動する電動モータと、当該電動モータの主軸の回転を減速して前記回転体に伝達する減速機構とを有する巻上機であって、前記減速機構が組み込まれるとともに前記減速機構を構成する歯車に供給される潤滑油が収容されるギヤケースを有する巻上機本体と、前記ギヤケースの油溜まり部に接続される吸引ホースが吸入口に接続され、前記減速機構に潤滑油を塗布するノズルを有する吐出ホースが吐出口に接続される潤滑ポンプと、前記吸入口と前記吐出口との間に形成され、前記吸入口から流入した潤滑油を前記吐出口に吐出するポンプ室と、前記荷物用索条に設けられた当接部により駆動され、前記ポンプ室を膨張収縮するポンプ駆動軸とを有し、前記ギヤケース内の潤滑油を前記歯車に循環供給することを特徴とする。
【0008】
本発明の巻上機は、前記潤滑ポンプは、前記ポンプ駆動軸の揺動往復動により直線往復動するピストンが設けられたシリンダと、前記ピストンと前記シリンダとにより区画される前記ポンプ室を膨張させると前記吸入口から潤滑油をポンプ室に流入させ前記ポンプ室を収縮させると前記吸入口を閉じる吸入側逆止弁と、前記ポンプ室を収縮させると前記ポンプ室から潤滑油を前記吐出口に吐出させ前記ポンプ室を膨張させると前記吐出口を閉じる吐出側逆止弁とを有することを特徴とする。本発明の巻上機は、前記減速機構を構成する複数の変速歯車対のうち初段の歯車対に前記ノズルから潤滑油を塗布することを特徴とする。本発明の巻上機は、前記減速機構を構成する複数の変速歯車対にそれぞれ潤滑油を塗布する複数のノズルを有することを特徴とする。本発明の巻上機は、前記当接部は、前記荷物用索条の前記ロードフック側の端部に設けられた巻上げ用のリミットばねであることを特徴とする。本発明の巻上機は、前記荷物用索条はロードチェーンであり、前記回転体はスプロケットであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の巻上機は、ギヤケース内の潤滑油を吸入して歯車に塗布する潤滑ポンプがロードフックを上下動する荷物用索条に設けられた当接部により駆動されるので、巻上機が操作されると、ギヤケース内の潤滑油が減速機構の歯車に自動的に塗布される。これにより、歯面に常に潤滑油を供給することができ、歯面間に油切れが発生することなく、巻上機の耐久性を向上させることができるとともに、巻上機の保守点検作業の頻度を低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(A)は本発明の一実施の形態としての巻上機である電気チェーンブロックを示す正面図であり、(B)は(A)の右側面図である。
【図2】電気チェーンブロックの内部構造を示す拡大正面図である。
【図3】電気チェーンブロックの内部構造を示す拡大側面図である。
【図4】電気チェーンブロックの減速機構を示す正面側断面図である。
【図5】図4に示された潤滑ポンプを示す拡大断面図である。
【図6】潤滑油を吐出した状態における潤滑ポンプを示す断面図である。
【図7】潤滑油を吸入した状態における潤滑ポンプを示す断面図である。
【図8】潤滑ポンプの変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1に示されるように、巻上機としての電気チェーンブロックは巻上機本体10を有している。巻上機本体10は長手方向中央部の中央ハウジング11を有し、この中央ハウジング11の両側には図3に示すように支持板11aが取り付けられている。中央ハウジング11の一方側にはモータハウジング12が取り付けられ、他方側には減速機ハウジング13が取り付けられている。中央ハウジング11とモータハウジング12と減速機ハウジング13とにより巻上機本体10が形成される。中央ハウジング11の上側部には、上フックつまり上吊具14が装着されており、巻上機本体10はこの上吊具14により吊り下げられた状態で使用される。中央ハウジング11内には上吊具14の下側に位置させて巻上げ用の回転体としてのロードシーブつまりスプロケット15が図2に示されるように回転軸16に設けられており、回転軸16は左右の支持板11aに回転自在に支持されている。このスプロケット15には荷物用索条としてのロードチェーン17が掛け渡されている。このロードチェーン17の一端部には、下フックや下吊具とも言われるロードフック18が設けられており、このロードフック18には荷物つまり吊荷が引っ掛けられるようになっている。
【0012】
スプロケット15を回転駆動することによりロードフック18に引っ掛けられた吊荷は、巻上げ移動および巻下げ移動される。図1に示されるように、中央ハウジング11にはロードチェーン17の他端部側を収容するためのチェーン収納器つまりチェーンバケット19が取り付けられており、吊荷が巻き上げられるとロードチェーン17の他端部側はチェーンバケット19内に入り込み、吊荷が巻下げられるとチェーンバケット19内からロードチェーン17が繰り出されることになる。巻上機本体10には、操作入力部21がケーブル22を介して接続されており、操作入力部21に設けられた巻上げ用スイッチと巻下げ用スイッチとを作業者が操作することにより吊荷の巻上げ動作と巻下げ動作が行われる。
【0013】
モータハウジング12内にはスプロケット15を回転駆動するための電動モータ23が配置されている。減速機ハウジング13内には、電動モータ23の主軸の回転を減速してスプロケット15に伝達するための減速機構24が配置され、さらにスプロケット15の回転を制動するためのブレーキ25が配置されている。
【0014】
スプロケット15を巻下げ方向に回転させることによってロードフック18が上限位置から下限位置となるまで下降移動し、スプロケット15を巻上げ方向に回転させることによって下限位置から上限位置まで上昇移動する。ロードフック18の運転可能な上下方向の範囲は揚程と言われ、巻上機が上限位置にまで駆動されたとき、および下限位置まで駆動されたときには、スプロケット15の回転を停止させるようにしている。そのため、図2および図3に示されるように、支持板11aに取り付けられたリミット軸26にはこれを中心に揺動自在にリミットレバー27が取り付けられている。リミットレバー27は図3に示されるように2本が平行となっており、両方のリミットレバー27の間には、ロードチェーン17のロードフック18側つまり先端部側を案内するチェーンガイド28aと反対側の基端部側を案内するチェーンガイド28bとが配置されている。ロードチェーン17の先端部には巻上げ用のリミットばね29aが装着され、基端部側には巻下げ用のリミットばね29bが装着されている。それぞれのリミットばね29a,29bは圧縮コイルばねにより形成されており、リミットレバー27に当接してリミットレバー27を介してリミット軸26を駆動する当接部となっている。
【0015】
例えば、ロードフック18を上昇させる巻上げ運転時には、ロードフック18が上限位置に近づくと巻上げ用のリミットばね29aがチェーンガイド28aを押し上げることになる。この押し上げ力は、リミットレバー27に作用し、リミットレバー27がリミット軸26を中心に図2において時計方向に揺動する。リミット軸26は図3に示されるリミットスイッチ30を作動し、巻上げ操作回路や巻上げ動力回路が開放されて電動モータ23は強制的に停止される。一方、ロードフック18を下降させる巻下げ運転時には、ロードフック18が下限位置に近づくと巻下げ用のリミットばね29bがチェーンガイド28bを押し上げることになる。これにより、リミットレバー27が図2において反時計方向に揺動し、巻下げ操作回路や巻下げ動力回路が開放されて電動モータ23は強制的に停止される。
【0016】
巻上機による作業が終了すると、一般的には、作業者はロードフック18が上限位置となるようにロードチェーン17を巻上げ操作することになる。この操作によりリミットレバー27がリミット軸26を中心に揺動しリミットスイッチ30が作動した状態となる。
【0017】
減速機構24は、図4に示されるように、電動モータ23の主軸に連結される駆動軸31とこれに平行な中間軸32とを有し、駆動軸31に設けられた駆動歯車33aは中間軸32に設けられた従動歯車33bに噛み合っている。従動歯車33bは駆動歯車33aよりも大径となっており、これらの歯車33a,33bにより第1段目の減速歯車対33が形成される。中間軸32に平行に中間軸34が配置されており、中間軸32に設けられた駆動歯車35aは中間軸34に設けられた従動歯車35bに噛み合っている。従動歯車35bは駆動歯車35aよりも大径となっており、これらの歯車35a,35bにより第2段目の減速歯車対35が形成される。中間軸34はスプロケット15が設けられた回転軸16と平行となっており、中間軸34に設けられた駆動歯車36aは回転軸16に設けられた従動歯車36bに噛み合っている。従動歯車36bは駆動歯車36aよりも大径となっており、これらの歯車36a,36bにより第3段目の減速歯車対36が形成される。
【0018】
これらの減速歯車対33,35,36はギヤケース37の内部に組み込まれており、ギヤケース37内にはそれぞれの歯車対の歯面に供給される潤滑油Lが収容される。潤滑油Lとしては、図示する巻上機においてはグリースが使用されている。グリースをギヤケース37内に供給する際には、グリースは粘度が比較的高いので、それぞれの歯車の歯面に粘着させるようにしてグリースが塗布される。歯面に塗布されたグリースは、巻上機が使用されるに従って時間の経過とともに歯面から脱落することがあり、脱落したグリースは図4に示すように、ギヤケース37の下部つまり油溜まり部38に集まることになる。
【0019】
油溜まり部38に溜まった潤滑油Lを歯面に供給するために、図4に示されるように、巻上機本体10には潤滑ポンプ40が装着されている。この潤滑ポンプ40は油溜まり部38に連通する吸引ホース41と、ギヤケース37に取り付けられたノズル42に連通する吐出ホース43との間に設けられている。この潤滑ポンプ40により油溜まり部38内の潤滑油Lはノズル42に案内される。ノズル42はその開口部が減速機構24を構成する駆動歯車33aに向けられており、ノズル42により潤滑油Lが駆動歯車33aに塗布される。駆動歯車33aは複数段の減速歯車対のうち初段の減速歯車対33の歯車であり、他の歯車対よりも高速で回転する。このように、高速で回転する駆動歯車33aに塗布された潤滑油Lは飛散し易いが、駆動歯車33aに向けてノズル42から潤滑油Lを塗布することにより、減速歯車対33に対して潤滑ポンプ40により潤滑油が補給される。
【0020】
図4において二点鎖線で示すように、ノズル42に加えてノズル42aを吐出ホース43に設けると、このノズル42aから減速歯車対35に向けて潤滑油Lを直接塗布させることができる。このノズル42aにより減速歯車対36に向けて潤滑油Lを塗布するようにすると、減速歯車対36に潤滑油Lを塗布することができる。また、それぞれの減速歯車対35,36に向けて潤滑油Lを供給するようにノズルを設けるようにしても良い。
【0021】
図5〜図7は、潤滑ポンプ40の一例を示す断面図であり、潤滑ポンプ40はシリンダ44とこのシリンダ44内に軸方向に往復動自在に装着される加圧ヘッドつまりピストン45とを有し、ピストン45は円筒形状の中空構造となっている。シリンダ44とピストン45とによりポンプ室46が区画形成されており、ピストン45をシリンダ44内に押し込む方向に前進移動させるとポンプ室46は収縮し、逆方向にピストン45を後退移動させるとポンプ室46は膨張する。ポンプ室46に開口してシリンダ44に形成された吸入口47には吸引ホース41が接続されている。一方、ピストン45に形成された吐出口48には吐出ホース43が接続されている。
【0022】
ピストン45を後退移動させると吸入口47を開放して吸入口47とポンプ室46とを連通状態としてポンプ室46内に潤滑油を流入させ、ピストン45を前進移動させると吸入口47を閉じて潤滑油の逆流を防止するために、シリンダ44内には吸入側逆止弁51が装着されている。このように、吸入側逆止弁51は、ポンプ室46をピストン45により膨張させると吸入口47から潤滑油Lをポンプ室46内に流入させ、ポンプ室46を収縮させると吸入口47を閉じる。
【0023】
ピストン45に設けられた弁座部52には吐出口48に連通する連通口53が形成されている。ピストン45を前進移動させるときには連通口53を開放して吐出口48を連通口53を介してポンプ室46に連通状態としてポンプ室46内の潤滑油を吐出ホース43に吐出させ、ピストン45を後退移動させるときには連通口53を閉じて吐出口48からポンプ室46内への潤滑油の逆流を防止するために、ピストン45内には吐出側逆止弁54が装着されている。このように、吐出側逆止弁54は、ポンプ室46を収縮させるとポンプ室46から潤滑油Lを吐出口48に吐出させ、ポンプ室46を膨張させると吐出口48を閉じて吐出口48とポンプ室46との連通を遮断する。
【0024】
ピストン45を後退移動させてポンプ室46を膨張させる方向にばね力を加えるために、ポンプ室46内には圧縮コイルばね55が装着されており、圧縮コイルばね55の一端は弁座部52に当接し、他端はシリンダ44の吸入口47側の端部に当接している。吐出側逆止弁54にはこれに対して連通口53に向かう方向のばね力が圧縮コイルばね56により加えられており、この圧縮コイルばね56は一端が吐出側逆止弁54に当接し他端がピストン45の底面に当接している。
【0025】
潤滑ポンプ40のピストン45を直線往復動するために、ポンプ駆動軸57が巻上機本体10に揺動往復動自在に装着されており、このポンプ駆動軸57は図3に示されるように、リミット軸26に連結されている。ポンプ駆動軸57に設けられた駆動レバー58はピストン45に設けられた接触部59に接触している。したがって、図5に示される休止状態からポンプ駆動軸57が図6に矢印で示す方向に駆動され、駆動レバー58によりピストン45がシリンダ44内に圧縮コイルばね55のばね力に抗して押し込まれると、ポンプ室46内の潤滑油Lが吐出ホース43に吐出される。これにより、ノズル42から潤滑油Lが駆動歯車33aに塗布される。
【0026】
一方、図7に示されるように、ポンプ駆動軸57が矢印で示す方向に駆動されてピストン45が圧縮コイルばね55のばね力により後退移動すると、吸引ホース41内の潤滑油Lがポンプ室46に向けて吸入される。吸入動作が終了すると、自重により吸入側逆止弁51が吸入口47を図5に示すように閉じることになる。
【0027】
上述のように、ロードフック18が上限位置にまで駆動されると、巻き上げ用のリミットばね29aがリミットレバー27に当接してリミットレバー27はリミット軸26を中心に揺動することになる。ポンプ駆動軸57はリミット軸26に連結されているので、リミット軸26がリミットレバー27により駆動されると、図6に示すように、潤滑ポンプ40のピストン45が前進移動してポンプ室46を収縮する。これにより、ポンプ室46内の潤滑油Lは吐出ホース43に向けて吐出され、ノズル42から潤滑油Lが駆動歯車33aに塗布される。
【0028】
一方、ロードフック18が上限位置から下降移動されると、巻上げ用のリミットばね29aはリミットレバー27から離れるので、リミットレバー27はリミット軸26を中心に上述とは逆方向に揺動する。これにより、図7に示すように、潤滑ポンプ40のピストン45が後退移動してポンプ室46は膨張し、吸引ホース41内の潤滑油Lはポンプ室46内に吸引される。
【0029】
このように、リミットスイッチ30を駆動するためのリミット軸26の揺動を利用して潤滑ポンプ40を駆動するようにしたので、巻上機による作業が終了して作業者がロードフック18を上限位置にまで巻上げ移動させると、自動的に潤滑油Lが減速機構24の駆動歯車33aに塗布されることになる。
【0030】
図8は潤滑ポンプの変形例を示す断面図であり、図8においては図5に示された部材と共通する部材には同一の符号が付されている。この潤滑ポンプ40はピストン45が軸方向に往復動自在に組み込まれたシリンダ44を有し、シリンダ44内にはピストン45の軸方向移動により膨張収縮するポンプ室46が区画形成されている。シリンダ44には、吸引ホース41が接続される吸入側継手61が取り付けられるとともに、吐出ホース43が接続される吐出側継手62が取り付けられている。吸入側継手61には吸入側逆止弁51が装着されている。この吸入側逆止弁51は、ポンプ室46をピストン45により膨張させると吸入口47から潤滑油Lをポンプ室46内に流入させ、ポンプ室46を収縮させると吸入口47を閉じる。吐出側継手62には吐出側逆止弁54が装着されている。吐出側逆止弁54は、ポンプ室46を収縮させるとポンプ室46から潤滑油Lを吐出口48に吐出させ、ポンプ室46を膨張させると吐出口48を閉じて吐出口48とポンプ室46との連通を遮断する。
【0031】
吸入側継手61には吸入側逆止弁51の上昇移動限を規制するために金網などからなるストッパ63が設けられている。吐出側継手62には吐出側逆止弁54が吐出ホース43内の流路を閉じることを規制するために同様にストッパ64が設けられている。
【0032】
このように、図5に示す潤滑ポンプ40は吐出ホース43がピストン45に設けられており、図8に示す潤滑ポンプ40は吐出ホース43と吸引ホース41とがともにシリンダ44側に設けられている。
【0033】
図8に示す潤滑ポンプ40もリミット軸26に連結されたポンプ駆動軸57により駆動されるようになっており、ロードフック18を上限位置まで上昇移動させると、潤滑ポンプ40から潤滑油Lが駆動歯車33aに塗布される。なお、ロードフック18が下限位置まで下降移動したときに、潤滑ポンプ40を駆動するようにしても良い。その場合には、リミットばね29bがリミットレバー27に当接することによりリミット軸26が揺動したときに潤滑ポンプ40が駆動される。
【0034】
上述した実施の形態においては、ポンプ駆動軸57をリミット軸26により駆動するようにしているが、ポンプ駆動軸57をリミット軸26から分離してポンプ駆動軸57に揺動部材を取り付け、ロードチェーン17の移動に伴って揺動部材を介してポンプ駆動軸57を揺動するようにしても良い。
【0035】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、図示する巻上機は電気チェーンブロックであるが、荷物用索条としてのワイヤが回転体としてのドラムに巻き付けられるようになっているホイストにも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0036】
10…巻上機本体、11…中央ハウジング、12…モータハウジング、13…減速機ハウジング、14…上吊具、15…スプロケット(回転体)、16…回転軸、17…ロードチェーン(荷物用索条)、18…ロードフック、19…チェーンバケット、21…操作入力部、23…電動モータ、24…減速機構、25…ブレーキ、26…リミット軸、27…リミットレバー、28a,28b…チェーンガイド、29a、29b…リミットばね、30…リミットスイッチ、31…駆動軸、32…中間軸、33…減速歯車対、34…中間軸、35…減速歯車対、36…減速歯車対、37…ギヤケース、40…潤滑ポンプ、41…吸引ホース、42…ノズル、43…吐出ホース、44…シリンダ、45…ピストン、46…ポンプ室、47…吸入口、48…吐出口、51…吸入側逆止弁、52…弁座部、53…連通口、54…吐出側逆止弁、55、56…圧縮コイルばね、57…ポンプ駆動軸、58…駆動レバー、59…接触部、61…吸入側継手、62…吐出側継手。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷物を引っ掛けるロードフックを備えた荷物用索条が巻き付けられる回転体と、当該回転体を回転駆動する電動モータと、当該電動モータの主軸の回転を減速して前記回転体に伝達する減速機構とを有する巻上機であって、
前記減速機構が組み込まれるとともに前記減速機構を構成する歯車に供給される潤滑油が収容されるギヤケースを有する巻上機本体と、
前記ギヤケースの油溜まり部に接続される吸引ホースが吸入口に接続され、前記減速機構に潤滑油を塗布するノズルを有する吐出ホースが吐出口に接続される潤滑ポンプと、
前記吸入口と前記吐出口との間に形成され、前記吸入口から流入した潤滑油を前記吐出口に吐出するポンプ室と、
前記荷物用索条に設けられた当接部により駆動され、前記ポンプ室を膨張収縮するポンプ駆動軸とを有し、
前記ギヤケース内の潤滑油を前記歯車に循環供給することを特徴とする巻上機。
【請求項2】
請求項1記載の巻上機において、前記潤滑ポンプは、前記ポンプ駆動軸の揺動往復動により直線往復動するピストンが設けられたシリンダと、前記ピストンと前記シリンダとにより区画される前記ポンプ室を膨張させると前記吸入口から潤滑油をポンプ室に流入させ前記ポンプ室を収縮させると前記吸入口を閉じる吸入側逆止弁と、前記ポンプ室を収縮させると前記ポンプ室から潤滑油を前記吐出口に吐出させ前記ポンプ室を膨張させると前記吐出口を閉じる吐出側逆止弁とを有することを特徴とする巻上機。
【請求項3】
請求項1または2記載の巻上機において、前記減速機構を構成する複数の変速歯車対のうち初段の歯車対に前記ノズルから潤滑油を塗布することを特徴とする巻上機。
【請求項4】
請求項1または2記載の巻上機において、前記減速機構を構成する複数の変速歯車対にそれぞれ潤滑油を塗布する複数のノズルを有することを特徴とする巻上機。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の巻上機において、前記当接部は、前記荷物用索条の前記ロードフック側の端部に設けられた巻上げ用のリミットばねであることを特徴とする巻上機。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の巻上機において、前記荷物用索条はロードチェーンであり、前記回転体はスプロケットであることを特徴とする巻上機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−18634(P2013−18634A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154847(P2011−154847)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(502129933)株式会社日立産機システム (1,140)