説明

巻付け型光ファイバケーブル

【課題】巻付け型光ファイバケーブルの鳥による啄害を防止する。コロナ騒音を低減する。断線して垂れ下がったときの地絡又は相間短絡事故を防止する。
【解決手段】光ファイバユニット2に保護被覆3を施してなる巻付け型光ファイバケーブルにおいて、保護被覆3の最外層7をデュロ硬度65°〜73°の半導電性ゴムで構成する。最外層7の半導電性ゴムは体積固有抵抗を10〜10Ω・cmとする。最外層7の厚さは1.5mm以上とする。最外層7の内側の層6は最高連続使用温度250℃以上の耐熱性樹脂で構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架空送電線や架空地線などの架空線に巻き付けて使用される巻付け型光ファイバケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に巻付け型光ファイバケーブルは、1本以上の光ファイバ心線を含む光ファイバユニットに保護被覆を施した構成となっている(特許文献1の図11、図12参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2000−207955号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光ファイバケーブルを架空線に巻き付けると、コロナ放電が発生しやすくなり、コロナ放電による騒音被害が問題となる。コロナ放電を抑制するためには、保護被覆を軟質の半導電性ゴムで構成し、光ファイバケーブルの保護被覆を架空線に密着させることが好ましい。しかし保護被覆が軟質の半導電性ゴムで構成された巻付け型光ファイバケーブルは、鳥(カラス等)の啄害を受けて保護被覆が損傷する可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、鳥の啄害を受けても保護被覆が損傷し難い巻付け型光ファイバケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するため本発明は、光ファイバユニットに保護被覆を施してなる巻付け型光ファイバケーブルにおいて、前記保護被覆の最外層がデュロ硬度65°〜73°の材料で構成されていることを特徴とするものである。
【0007】
本発明において、保護被覆の最外層の材料は体積固有抵抗が10〜10Ω・cmであることが好ましい。
【0008】
また本発明において、保護被覆の最外層は半導電性ゴムからなり、その内側の層が最高連続使用温度(JIS K 7226による)250℃以上の耐熱性樹脂からなることが好ましい。
【0009】
さらに本発明において、保護被覆の最外層の厚さは1.5mm以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
保護被覆の最外層をデュロ硬度65°〜73°の材料で構成すると、コロナ放電が低減でき、かつ鳥の啄害を受けても保護被覆が損傷し難くなる。
【0011】
架空線に巻き付けられた光ファイバケーブルが何らかの原因で断線した場合、切れた光ファイバケーブルが垂れ下がり、その下の送電線に接触して、地絡又は相間短絡事故を起こすおそれがある。保護被覆の最外層を体積固有抵抗10Ω・cm以上の材料で構成しておけば、切れた光ファイバケーブルが垂れ下がって下の送電線に接触しても電流が流れにくいので、地絡又は相間短絡事故を防止することができる。また保護被覆の最外層の体積固有抵抗が大きすぎると、コロナ放電が発生しやすくなるので、コロナ放電による騒音抑制の観点からは、保護被覆の最外層の体積固有抵抗を10Ω・cm以下にすることが好ましい。保護被覆の最外層の最も望ましい体積固有抵抗は10Ω・cm程度であり、この程度が地絡又は相間短絡事故防止とコロナ騒音防止とのバランスが最もよい。
【0012】
デュロ硬度65°〜73°の半導電性ゴムを被覆する際には、高温(250℃程度)の熱が数十秒間加わる。最外層の内側に、最高連続使用温度250℃以上の耐熱性樹脂からなる層を設けておけば、最外層に半導電性ゴムを被覆する際に、光ファイバユニット特に光ファイバ心線の樹脂被覆が熱的損傷を受けるのを防止できる。
【0013】
鳥の啄害を観察すると、傷の深さは概ね1mm程度であるので、保護被覆の最外層の厚さは1.5mm以上あれば、鳥の啄害を防止できる。鳥の啄害防止のためには、最外層の厚さは厚い方が有利であるが、最外層を厚くすると、ケーブル外径が大きくなり、風圧荷重が増大するので、最外層の厚さはこの面から制約される。このため、最外層の厚さは4mm以下とすることが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は本発明の一実施形態を示す。この巻付け型光ファイバケーブル1は、光ファイバユニット2に保護被覆3を施したものである。光ファイバユニット2は、複数本の光ファイバ心線4を抗張力線5と共に撚り合わせることにより構成されている。保護被覆3は、内層被覆6と外層被覆7の2層で構成されている。
【0015】
外層被覆7は半導電性ゴムで構成される。半導電性ゴムのデュロ硬度(JIS K 6253による)は65°〜73°、体積固有抵抗(JIS K 7194「導電性プラスチックの4探針法による抵抗率試験方法」による)は10〜10Ω・cmである。外層被覆7の材質は、より具体的には、カーボンブラックを配合して半導電性を付与したシリコーンゴム又はエチレンプロピレンゴム(EPDM)などであり、その硬さは添加剤によって調整される。
【0016】
内層被覆6は、外層被覆7を形成する際の熱から光ファイバユニット2を保護するため(特に光ファイバ心線4の被覆材料である紫外線硬化型樹脂が熱劣化して伝送損失増加が生じないようにするため)に設けられるもので、最高連続使用温度250℃以上の耐熱性樹脂で構成される。内層被覆7の材質は、より具体的には、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)などである。
【0017】
次に巻付け型光ファイバケーブルの試作試験についた説明する。
【0018】
〔鳥の啄害について〕図1のようなケーブル構成で、外層被覆7のデュロ硬度が異なる複数種類のサンプルを試作し(外層被覆7の厚さ1.5mm)、各々のサンプルを長さ1mの送電線に巻き付けたものを、鉄塔上の送電線の近くに設置し、1ヶ月後に回収して、鳥の啄害を調べた。その結果は表1のとおりであった。
【0019】
【表1】

【0020】
この結果によると、外層被覆7のデュロ硬度が65°以上あれば、鳥の啄害を受けても外層被覆が破れることはないことが分かる。なお、デュロ硬度が73°より高くなると、光ファイバケーブルを送電線に巻き付けたときに、送電線の素線と点接触するような状態になることからコロナ放電(騒音)が発生しやすくなる。
【0021】
〔耐電圧特性について〕図1のようなケーブル構成で、外層被覆7の体積固有抵抗が異なる複数種類のサンプルを試作し(外層被覆7の厚さ1.5mm)、各々のサンプルについて、課電試験装置によりフラッシュオーバー電圧を求めた。その結果は表2のとおりであった。
【0022】
【表2】

【0023】
この結果によると、外層被覆7の体積固有抵抗が10Ω・cm以上あれば、56kV/mの電圧がかかってもフラッシュオーバーが発生しないことが分かる。これは、切れた光ファイバケーブルが垂れ下がって下の送電線に接触しても、地絡又は相間短絡事故が発生しないことを意味する。
【0024】
〔コロナ特性について〕図1のようなケーブル構成で、外層被覆7の体積固有抵抗が異なる複数種類のサンプルを試作し(外層被覆7の厚さ1.5mm)、各々のサンプルを送電線に巻き付けて、電線表面最大電位傾度Gmax(kV/m)を変化させたときのコロナ騒音を測定した。なお、最外層を構成する樹脂のデュロ硬度は73°であった。測定結果を図2に示す。この結果によると、外層被覆7の体積固有抵抗が10Ω・cm以下、好ましくは10Ω・cm以下であれば、Gmax=16.8kV/cmにおいてコロナ騒音を十分低く抑えられることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る巻付け型光ファイバケーブルの一実施形態を示す断面図。
【図2】保護被覆の最外層の体積固有抵抗が異なる光ファイバケーブルの、コロナ騒音の測定結果を示すグラフ。
【符号の説明】
【0026】
1:巻付け型光ファイバケーブル
2:光ファイバユニット
3:保護被覆
4:光ファイバ心線
5:抗張力線
6:内層被覆
7:外層被覆

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバユニットに保護被覆を施してなる巻付け型光ファイバケーブルにおいて、前記保護被覆の最外層がデュロ硬度65°〜73°の材料で構成されていることを特徴とする巻付け型光ファイバケーブル。
【請求項2】
保護被覆の最外層の材料は体積固有抵抗が10〜10Ω・cmであることを特徴とする請求項1記載の巻付け型光ファイバケーブル。
【請求項3】
保護被覆の最外層が半導電性ゴムからなり、その内側の層が最高連続使用温度250℃以上の耐熱性樹脂からなることを特徴とする請求項1又は2記載の巻付け型光ファイバケーブル。
【請求項4】
保護被覆の最外層の厚さが1.5mm以上であることを特徴とする請求項3記載の巻付け型光ファイバケーブル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2007−233108(P2007−233108A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−55665(P2006−55665)
【出願日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(502308387)株式会社ビスキャス (205)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】