説明

巻取ユニット

【課題】解舒補助装置に対する給糸ボビンの位置を簡単な構成で調整可能な巻取ユニットを提供する。
【解決手段】ワインダユニットは、給糸ボビン21を供給するボビン供給装置60と、給糸ボビン21を支持する給糸ボビン支持部80と、給糸ボビン21の糸の解舒を補助する解舒補助装置12と、を備える。給糸ボビン支持部80は、芯部材52と、保持部53と、支持面86と、を備える。芯部材52は、ボビン管21aに挿入可能であり、支持状態において、規定位置で解舒補助装置を指向する。保持部53は、支持状態において、芯部材52の軸心に直交する方向に広がってボビン管21aの内面と接触することにより給糸ボビン21を保持する。支持面86は、支持状態において、ボビン管21aの糸解舒側と反対側の端部と接触することにより、ボビン管21aの糸解舒側の端部から解舒補助装置までの距離を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給糸ボビンから糸を解舒して巻取ボビンに巻き取る巻取ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、給糸ボビンから解舒された糸を巻取ボビンに巻き取って、パッケージを形成する巻取ユニットが知られている。巻取ユニットに給糸ボビンを支持する構成として、特許文献1及び2には、ボビン管の内側を複数の支点で支持する保持ペッグを備える巻取ユニットが開示されている。また、巻取ユニットにおいて、給糸ボビンから解舒される糸に発生する張力(解舒テンション)を適切な強さに調整して良好な巻取パッケージを形成するために、解舒補助装置が給糸ボビンの近傍(糸解舒側)に設けられることがある。解舒補助装置としては、例えば、給糸ボビンの糸が解舒される解舒位置に形成されるバルーンを筒形状のバルーン規制部で調整する構成が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−124230号公報
【特許文献2】特開2006−89284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記解舒テンションを安定させるためには、前記解舒補助装置に対して給糸ボビンが正しい位置にセットされることが必要になる。つまり、給糸ボビンが解舒補助装置に対してズレた状態でセットされた場合、糸の解舒時に当該糸が給糸ボビンの周りを周回する周回位置に応じて解舒テンションが大きく変動するため、巻取パッケージの品質低下を招き、好ましくない。給糸ボビンは、給糸ボビンの軸心と前記筒形状のバルーン規制部の軸心と、が一致する位置にセットされることが好ましい。また、給糸ボビンは、給糸ボビンの解舒側端部とバルーン規制部との間の距離が所定の値となる位置にセットされることが好ましい。
【0005】
一方で、巻取ユニットには糸種等に応じて様々な形状や内径のボビン管に糸を巻き付けた給糸ボビンが供給される。しかし、給糸ボビンの種類が異なると、巻取ユニットがボビン管を支持する際の接触部位が変化するため、給糸ボビンのセット位置が微妙にズレて、上記のように解舒テンションの不安定化を招くことも多い。そのため、オペレータは巻取ユニットに供給される給糸ボビンの種類が変更される毎に、バルーン規制部の軸心に給糸ボビンの軸心が一致するように、かつ、バルーン規制部から給糸ボビンまでの距離が所定の値になるように、給糸ボビンの位置を精密に調整する必要があった。その作業は、オペレータにとって、大きな負担となっていた。
【0006】
これに対して、特許文献1及び2に開示されている保持ペッグは、給糸ボビンの内周を複数の爪部材(緊締クロー群、把持片)により複数の支点で支持するため、異なる内径のボビン管に対してもボビンと巻取装置との位置関係を変えずに巻取作業を行うことができる。よって、特許文献1及び2に記載のボビン保持ペッグでは、給糸ボビンの解舒時の軸心をバルーン規制部の軸心と一致させることができる。
【0007】
しかし、特許文献1のボビン保持ペッグは、テーパ状に構成された受部で給糸ボビンのボビン管を支持する構成であるため、給糸ボビンの解舒側端部とバルーン規制部との間の距離が、ボビン管の内径の大きさによって異なってしまう。つまり、内径の大きなボビン管を支持する場合、給糸ボビンがバルーン規制部から遠くなり、内径の小さなボビン管を支持する場合、給糸ボビンがバルーン規制部に近くなる。このような場合、巻取ユニットは、バルーンが適切に調整できないため、適切な解舒テンションで巻取りが行えなくなる。
【0008】
一方、特許文献2のボビン保持ペッグは、挿入されたボビン管の内面に接触する爪部材のみを備え、軸部(ボビン管の軸心の鉛直方向の延長線上に配置される部材)を備えていない。爪部材の位置だけからボビン保持ペッグに挿入されるボビン管の軸心の位置を正確に把握するのは困難であるため、ボビン保持ペッグの中心を解舒補助装置に対して位置決めする場合、オペレータは、実際に給糸ボビンをボビン保持ペッグに支持させ、その給糸ボビンを目印として位置合わせする必要が生じる。従って、調整作業が煩雑となっていた。また、このボビン保持ペッグは、機械的に複雑な構成であるため、メンテナンスが難しい。
【0009】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、解舒補助装置に対する給糸ボビンの位置を簡単な構成で調整可能な巻取ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0010】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0011】
本発明の観点によれば、以下の構成の巻取ユニットが提供される。即ち、この巻取ユニットは、給糸ボビン供給部と、給糸ボビン支持部と、解舒補助装置と、を備える。前記給糸ボビン供給部は、ボビン管に糸が巻かれることで形成される給糸ボビンを供給する。前記給糸ボビン支持部は、前記給糸ボビン供給部から供給された前記給糸ボビンを支持する。前記解舒補助装置は、前記給糸ボビン支持部に支持された前記給糸ボビンの糸の解舒を補助する。前記給糸ボビン支持部は、軸部と、保持部と、高さ合わせ部と、を備える。前記軸部は、前記ボビン管に挿入可能であり、かつ、前記給糸ボビンを支持する支持状態において、予め規定された規定位置で前記解舒補助装置を指向する。前記保持部は、前記軸部に取り付けられ、かつ前記支持状態において、前記軸部の軸心に直交する方向に広がって前記ボビン管の内面と接触することにより前記給糸ボビンを保持する。前記高さ合わせ部は、前記支持状態において、前記ボビン管の糸解舒側と反対側の端部に一定の高さで接触することにより、前記ボビン管の糸解舒側の端部から前記解舒補助装置までの距離を決定する。
【0012】
これにより、本発明の巻取ユニットは、給糸ボビンを、給糸ボビンの軸心の位置及び給糸ボビンの解舒側端部の位置の両方が解舒基準位置に対して合わせ込まれた状態で支持することができる。そのため、巻取ユニットは、給糸ボビンからの解舒に伴い糸に発生する張力を解舒補助装置により適切な強さに保ちながら巻取作業を行うことができる。また、給糸ボビン支持部によって支持される給糸ボビンの軸心の位置は、軸部の軸心の位置と等しい。従って、オペレータは、給糸ボビンを給糸ボビン支持部に実際に支持させることなく、軸部の位置を見ることで、給糸ボビンの軸心を解舒補助装置に対して正確に合わせることができる。
【0013】
前記の巻取ユニットにおいては、前記保持部は、前記軸部の軸心方向における複数の位置において、当該軸部の軸心に直交する方向に広がって前記ボビン管の内面と接触可能であることが好ましい。
【0014】
これにより、ボビン管を軸心方向において複数箇所での拘束が可能になるため、保持部は、給糸ボビンをより安定的に保持することができる。
【0015】
前記の巻取ユニットにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記保持部は、前記軸部の軸心方向に並べて配置された第1保持部材と第2保持部材とを備える。前記第1保持部材及び前記第2保持部材は、前記軸部の軸心に直交する方向に広がって前記ボビン管の内面と接触可能である。
【0016】
即ち、給糸ボビンを軸心方向の複数箇所で保持する場合、保持する箇所同士が離れている方がより安定的に給糸ボビンを保持することができる。この点、上記の構成は、互いに離れた箇所をコンパクトな構成で(例えば軸心方向に細長い保持部を用いることなく)保持することができる。
【0017】
前記の巻取ユニットにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、この巻取ユニットは、押圧部と、伝達部と、支持部と、を備える。前記押圧部は、前記第1保持部材を押圧する。前記伝達部は、前記第1保持部材が受けた押圧力を前記第2保持部材に伝達する。前記支持部は、前記第2保持部材を一定の高さで支持することで、前記押圧力に対する反発力を、前記第2保持部材に生じさせる。前記伝達部は、前記第1保持部材及び前記第2保持部材の両方が、前記ボビン管の内面に接触するように、前記押圧力と前記反発力とを、前記第1保持部材と前記第2保持部材とに分配する。
【0018】
これにより、例えば内径が一様でない錘形状や、段形状のボビン管に対しても、第1保持部材及び第2保持部材の両方をボビン管の内面に押し付けることができる。従って、汎用性の高い給糸ボビン支持部が実現できる。
【0019】
前記の巻取ユニットにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記伝達部は、前記第1保持部材と前記第2保持部材との間に配置され、前記軸部の軸心方向に移動可能である。前記第1保持部材及び前記第2保持部材は、前記伝達部の移動によって前記軸部の軸心方向に押圧されることで、当該軸心方向に直交する方向に広がる。
【0020】
これにより、汎用性が高い給糸ボビン支持部が実現できるという上記の効果を簡単な構成で実現できる。また、第1保持部材及び第2保持部材をバランス良くボビン管の内面に押し付けることができるので、給糸ボビンをより安定的に支持することができる。
【0021】
前記の巻取ユニットにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、この巻取ユニットは、バネ部材を備える。前記押圧部は、前記バネ部材のバネ力を利用して、前記軸部の軸心に直交する方向に前記保持部を広げる。
【0022】
これにより、ボビン管の内径に応じて保持部の拡大量が自動的に調整されるので(ボビン管の内径の違いを弾性部材側で吸収できるので)、汎用性の高い給糸ボビン支持部を実現することができる。
【0023】
前記の巻取ユニットにおいて、前記第1保持部材と前記第2保持部材のうち、少なくとも一方の素材は、樹脂であることが好ましい。
【0024】
これにより、第1保持部材又は第2保持部材が複雑な形状であっても、容易に成形することができる。
【0025】
前記の巻取ユニットにおいて、前記第1保持部材と前記第2保持部材のうち、少なくとも一方は、円筒形状であって内周面に溝が形成された弾性体であることが好ましい。
【0026】
これにより、軸部の軸心方向に円筒形状の保持部材が力を受けると、溝が形成された位置を中心に当該保持部材が広がるので、変形時における保持部材の形状を一定にできる。そのため、保持部材がボビン管の略一定の箇所に接触するので、ボビン管をより安定的に保持することができる。
【0027】
前記の巻取ユニットにおいて、前記第1保持部材と前記第2保持部材のうち、少なくとも一方は、前記軸部の軸心方向に切込みが複数形成された弾性体であることが好ましい。
【0028】
これにより、切込みが形成された保持部材は、給糸ボビンを支持するときにおいて、ボビン管との接触部分が軸心方向にある程度の長さを有するように、当該ボビン管を保持することができる。従って、ボビン管をより安定的に保持することができる。また、この保持部材は、軸部の軸心に直交する方向に大きく広がることができる。従って、保持部材は、ボビン管の内径のバラツキが大きい場合であっても、これらのボビン管に適切に接触して給糸ボビンを保持できる。
【0029】
前記の巻取ユニットにおいては、前記第1保持部材と前記第2保持部材のうち、前記ボビン管の糸解舒側の内面に接触する保持部材の方が、他方の保持部材よりも小径であることが好ましい。
【0030】
これにより、保持部は、給糸ボビンが供給される方向に対して、全体として先細り状のレイアウトが実現される。これにより、本発明の巻取ユニットでは、給糸ボビン供給部から給糸ボビンが供給されるときにおいて、当該給糸ボビンのボビン管が保持部に引っ掛かることを少なくできる。従って、給糸ボビンの供給ミスを低減することができる。
【0031】
前記の巻取ユニットにおいては、前記高さ合わせ部は、前記支持状態における前記軸部の軸心に直交する方向に形成された平坦な支持面であることが好ましい。
【0032】
これにより、高さ合わせ部とボビン管との接触面積を大きくすることができるので、格子状の部材でボビン管を支持する構成等と比較して、給糸ボビンを精度良く解舒基準位置に合わせることができる。
【0033】
前記の巻取ユニットにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記解舒補助装置は、前記給糸ボビンの糸の解舒を補助する筒部材である解舒筒部材を備える。前記支持状態における前記軸部の軸心は、前記解舒筒部材の軸心と一致する。
【0034】
これにより、解舒筒部材の軸心と給糸ボビンの軸心とが一致するように合わせることができる。従って、給糸ボビンからの解舒される糸に発生する張力をより適切な強さに保ちながら巻取作業を行うことができる。
【0035】
前記の巻取ユニットにおいては、前記解舒筒部材は、前記給糸ボビンの糸が解舒されるにつれて、前記ボビン管の糸解舒側と反対側の端部に近づくことが好ましい。
【0036】
これにより、給糸ボビンからの解舒される糸に発生する張力をより適切な強さに保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】ワインダユニットの模式的な側面図。
【図2】ボビンセット部の構成を示す斜視図。
【図3】ボビンセット部の動作を模式的に示す側面図。
【図4】給糸ボビンの受取り後であって、給糸ボビンの保持前におけるボビンセット部の構成を示す側面図。
【図5】ボビンセット部が給糸ボビンを保持する様子を示す側面図。
【図6】第1保持部材の形状を示す斜視図。
【図7】保持部の別の構成を示す図。
【図8】保持部の別の構成を示す図。
【図9】保持部の別の構成を示す図。
【図10】保持部の別の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0038】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。初めに、本実施形態の自動ワインダの概要について図1を参照して説明する。図1は、ワインダユニット(巻取ユニット)の模式的な側面図である。なお、以下の説明において、ワインダユニット4の正面側を単に「正面側」、ワインダユニット4の背面側を単に「背面側」と称することがある。
【0039】
本実施形態の自動ワインダは、多数のワインダユニット4を並べて配置した構成となっている。また、この自動ワインダは、前記ワインダユニット4を集中的に管理するための図略の機台管理装置と、圧縮空気源及び負圧源を備えた図略のブロアボックスと、を備えている。
【0040】
ワインダユニット4は、給糸ボビン21の糸を巻取ボビン22に巻き取ってパッケージ29を形成するための装置である。図1に示すように、ワインダユニット4の正面側には、オペレータが給糸ボビン21を供給するためのボビン供給装置(給糸ボビン供給部)60が配置されている。ボビン供給装置60は、ワインダユニット4の下部から正面上方向に向かって設置されたマガジン保持部61と、このマガジン保持部61の先端に取り付けられているマガジンカン62と、マガジンカン62の下方に設置された給糸ボビン案内部64と、を備えている。
【0041】
マガジンカン62には複数の収納孔が円状に並べて形成されており、それぞれの収納孔には、給糸ボビン21を傾斜姿勢でセットすることができる。また、このマガジンカン62は、図略のモータによって間欠的な回転駆動が可能であるように構成されている。マガジンカン62は間欠駆動することによって、マガジンカン62にセットされている複数の給糸ボビン21を、1本ずつ、給糸ボビン案内部64へ通じる通用部へと移動させることができる。そして、通用部へと移動させられた給糸ボビン21は、マガジンカン62から、斜め下方へ落下する。
【0042】
給糸ボビン案内部64は、マガジンカン62から落下してきた給糸ボビン21を斜めに滑落させて、ボビンセット部10まで案内するように構成されている。なお、ボビンセット部10は、後述の図2に示すように、糸の解舒が完了した給糸ボビン21(ボビン管21a)を排出するための排出板40と、ボビンを支持する給糸ボビン支持部80と、排出板40及び給糸ボビン支持部80を駆動する駆動部100と、を備えている。なお、このボビンセット部10の詳細な構成は後述する。
【0043】
また、給糸ボビン支持部80は、背面側と正面側との間で、揺動可能に構成されている。そして、給糸ボビン支持部80は、背面側から正面側へ揺動することにより、給糸ボビン案内部64によって案内される給糸ボビン21を受取可能となっている。また、給糸ボビン支持部80は、背面側に揺動することにより、受け取った給糸ボビン21を略直立状態にすることができる。このようにボビンセット部10の給糸ボビン支持部80にセットされた給糸ボビン21の糸20は、巻取部16によって巻き取られる。なお、以下の説明では、巻取部16によって糸20が巻き取られるときの給糸ボビン21が給糸ボビン支持部80に支持されている状態を支持状態と称することがある。
【0044】
次に、巻取部16について説明する。巻取部16は、図1に示すように、巻取ボビン22を装着可能に構成されたクレードル23と、糸20をトラバースさせるとともに前記巻取ボビン22を駆動するための綾振ドラム24と、を備えている。
【0045】
また、前記巻取ユニット本体6は、ボビンセット部10と綾振ドラム24との間の糸走行経路中に各種の装置を備えている。具体的に説明すると、前記糸走行経路に配置される主要な装置として、ボビンセット部10側から綾振ドラム24側へ向かって順に、解舒補助装置12と、テンション付与装置13と、糸継装置14と、クリアラ(糸品質測定器)15と、が配置されている。
【0046】
解舒補助装置12は、図1に示すように、固定部材71と、可動部材(解舒筒部材)72と、昇降部材73と、を備える。
【0047】
固定部材71は、適宜の部材を介してユニットフレームに固定されている。この固定部材71の下部には、バルーンを制御するための絞り部(図略)が形成されている。可動部材72は、筒状に形成されており、固定部材71の外側を覆うように配置されている。
【0048】
昇降部材73はこの可動部材72と一体的に形成されている。また、昇降部材73と可動部材72とは、は鉛直方向に移動可能に構成されている。更に、昇降部材73は、給糸ボビン21のチェース部を検出する図略のセンサを備えている。
【0049】
この構成により、給糸ボビン21の糸20が解舒されてチェース部の位置が下降するに従って昇降部材73を下降させることができる。これにより、チェース部と可動部材72との距離を常に一定にすることができる。従って、ワインダユニット4は、給糸ボビン21が解舒される際にチェース部から糸が解離する位置で発生するバルーンの大きさを適切に規制することで、給糸ボビン21から解舒された糸20の張力を一定に保ちながら巻取作業を行うことができる。
【0050】
なお、解舒補助装置12が有する上記の解舒補助機能を十分に発揮させるためには、給糸ボビン21を所定の正しい位置(以下、解舒基準位置と称する)にセットする必要がある。ここで、解舒基準位置とは、給糸ボビン21の軸心とその延長線が、可動部材72の軸心とその延長線に一致し、かつ、給糸ボビン21の解舒側端部が解舒補助装置12まで所定の距離にある位置を意味する。なお、以下の説明で、給糸ボビン21を前記の解舒基準位置に正しくセットできた場合の当該給糸ボビン21の軸心を「基準軸L1」と称することがある。この基準軸L1は、可動部材72の軸心と一致している。
【0051】
テンション付与装置13は、走行する糸20に所定のテンションを付与するものである。本実施形態のテンション付与装置13は、固定の櫛歯に対して可動の櫛歯を配置するゲート式に構成されている。可動側の櫛歯は、櫛歯同士が噛合せ状態又は解放状態になるように、ロータリ式のソレノイドにより回動可能に構成されている。
【0052】
また、解舒補助装置12とテンション付与装置13との間には下糸検出センサ31が配置されている。下糸検出センサ31は、配置される位置において糸が走行しているか否かを検出可能に構成されている。
【0053】
クリアラ15は、糸20の糸太さを監視することにより、スラブ等の糸欠陥(糸欠点)を検出するように構成されている。また、クリアラ15よりも糸道の上流側(下方)には、当該クリアラ15が糸欠陥を検出したときに直ちに糸20を切断するためのカッタ39が配置されている。
【0054】
糸継装置14は、クリアラ15が糸欠陥を検出してカッタ39で糸を切断する糸切断時、給糸ボビン21からの解舒中の糸の糸切れ時、又は給糸ボビン21の交換時等に、給糸ボビン21側の下糸と、パッケージ29側の上糸とを糸継ぎするものである。このような糸継装置14としては、圧縮空気等の流体を用いるものや、機械式のものを使用することができる。
【0055】
糸継装置14の下側には、給糸ボビン21側の下糸を捕捉して案内する下糸案内パイプ25が設けられている。糸継装置14の上側には、パッケージ29側の上糸を捕捉して案内する上糸案内パイプ26が設けられている。下糸案内パイプ25の先端には吸引口32が形成され、上糸案内パイプ26の先端にはサクションマウス34が備えられている。下糸案内パイプ25及び上糸案内パイプ26には適宜の負圧源がそれぞれ接続されており、前記吸引口32及びサクションマウス34に吸引力を生じさせることができる。
【0056】
この構成で、給糸ボビンの交換時等においては、下糸案内パイプ25の吸引口32が下方へ回転して下糸を吸引捕捉し、その後、軸33を中心にして上方へ回転することで糸継装置14まで下糸を案内する。また、これとほぼ同時に、ワインダユニット4は、上糸案内パイプ26を図2の位置から軸35を中心として上方へ回転させるとともにパッケージ29を逆回転させ、当該パッケージ29から解舒される上糸をサクションマウス34によって捕捉する。続いて、ワインダユニット4は、軸35を中心として上糸案内パイプ26を下方へ回転させることで、糸継装置14に上糸を案内するようになっている。そして、糸継装置14において、下糸と上糸の糸継ぎが行われる。
【0057】
以上の構成で、自動ワインダの各ワインダユニット4は、給糸ボビン21から解舒された糸20を巻取ボビン22に巻き取って所定長のパッケージ29を形成することができる。
【0058】
次に、図2から図5までを参照して、ボビンセット部10について詳細に説明する。図2は、ボビンセット部10の構成を示す斜視図である。図3は、ボビンセット部10の動作を模式的に示す側面図である。図4は、給糸ボビン21の受取り後であって、給糸ボビン21の保持前におけるボビンセット部10の構成を示す側面図である。図5は、ボビンセット部10が給糸ボビン21を保持する様子を示す側面図である。
【0059】
図2に示すように、ボビンセット部10は、供給された給糸ボビン21を支持するための給糸ボビン支持部80と、糸の解舒が完了した給糸ボビン21を排出するための排出板40と、給糸ボビン支持部80及び排出板40を駆動する駆動部100と、を備えている。
【0060】
初めに、駆動部100について説明する。駆動部100は、ステッピングモータ101と、伝達ベルト103と、プーリ104と、カム軸105と、ベアリング92と、揺動アーム93と、リンク部材94と、ベアリング42と、揺動アーム43と、リンク部材44と、を備えている。
【0061】
プーリ104はカム軸105に固定されており、このプーリ104は、ステッピングモータ101の出力軸に対し伝達ベルト103を介して連結されている。伝達ベルト103は図2では簡略的に描かれているが、歯付きのタイミングベルトとして構成されており、ステッピングモータ101の出力軸の回転を滑りなくカム軸105に伝達することができる。
【0062】
支持部駆動カム91及び排出板駆動カム41は前記カム軸105に固定されており、当該カム軸105と一体的に回転する。また、支持部駆動カム91の背面側には揺動アーム93が配置され、排出板駆動カム41の背面側には揺動アーム43が配置されている。揺動アーム93,43の中途部には回転可能なベアリング92,42が取り付けられており、ベアリング92,42は、支持部駆動カム91及び排出板駆動カム41の外縁に接触しながら適宜回転できるように構成されている。
【0063】
揺動アーム93と、給糸ボビン支持部80が備える揺動板81と、は棒状のリンク部材94を介して連結されている。また、揺動アーム43と、排出板40に伝達軸46を介して連結されている伝動アーム45と、は棒状のリンク部材44を介して連結されている。
【0064】
次に、給糸ボビン支持部80について説明する。図2等に示すように、給糸ボビン支持部80は、ベース部85と、芯部材(軸部)52と、第1保持部材53aと、第2保持部材53bと、カラー部材(伝達部)54と、スライド部材51と、揺動板81と、を主要な構成として備えている。なお、図4及び図5においては、給糸ボビン支持部80のうちベース部85よりも上方の部分と、給糸ボビン21と、を断面図で示している。
【0065】
ベース部85は、回転軸82を中心として回転可能となるように適宜の部材に取り付けられている。このベース部85の上部には、平坦に形成された支持面86と、円柱状の突出部(支持部)87と、が形成されている。また、この突出部87の先端より上方の位置に保持部53が設けられている。この保持部53は第1保持部材53a及び第2保持部材53bから構成されており、給糸ボビン21が有するボビン管21aの内面に接触することで、給糸ボビン21を保持することができる。
【0066】
ベース部85は、回転軸82を中心として給糸ボビン支持部80を正面側にやや倒すように揺動することで、図3(a)に示すようにボビン供給装置60から斜め方向に供給される給糸ボビン21を給糸ボビン支持部80によって受け取るのに適した傾斜姿勢となる。また、ベース部85は、給糸ボビン支持部80を正面側に更に倒すように揺動することで、図3(d)に示すように、糸20の解舒が終わった給糸ボビン21を正面側へ排出するのに適した傾斜姿勢となる。また、ベース部85は、背面側に揺動することで、図3(b)及び図3(c)に示すように、芯部材52、第1保持部材53a及び第2保持部材53bをほぼ直立姿勢にすることもできる。
【0067】
給糸ボビン21から糸が解舒される場合は、図3(c)に示すように、芯部材52、第1保持部材53a及び第2保持部材53bが上記の直立姿勢となるように制御される。また、ベース部85の近傍には、例えばダイアル機構、ネジ機構等からなる図略の調整機構が備えられている。オペレータは、この調整機構を操作することにより、前記の直立姿勢にある芯部材52及び保持部53の軸心の位置及び傾きを微調整することができる。
【0068】
図2等に示すように、ベース部85にはスライド孔が形成されており、このスライド孔にはスライド部材51が配置されている。スライド孔は上下方向に細長く形成されており、スライド部材51は、このスライド孔の長手方向に沿って移動することができる。
【0069】
スライド部材51の上部には、芯部材52の端部が固定されている。この芯部材52は、突出部87から上方に突出可能に構成されている。芯部材52は、小径部52aと、大径部(押圧部)52bと、を有している。小径部52aは細長い丸棒状に形成されており、その下端がスライド部材51に接続されている。大径部52bは、芯部材52の上端部に形成されている。小径部52a及び大径部52bは、何れも円形の断面を有している。
【0070】
この芯部材52の軸心は、前記スライド部材51の移動方向と平行となるように向けられている。また、芯部材52及び保持部53が直立姿勢になったとき(図3(b)及び図3(c)を参照)、芯部材52の軸心は、前記調整機構により、前述の基準軸L1(解舒補助装置12との関係で定められる解舒基準位置に給糸ボビン21を正しくセットできた場合における当該給糸ボビン21の軸心)と一致するように、予めオペレータによって調整されている。なお、支持状態における保持部53の軸心は芯部材52の軸心と常に一致しているので(詳細は後述)、芯部材52を見ながら上記の調整作業を行うことで、保持部53の軸心を基準軸L1に対して正確に一致させることができる。
【0071】
この構成で、スライド部材51が上記のようにスライド孔と平行な向きに移動すると、芯部材52もスライド部材51と一体的に移動するので、突出部87から芯部材52が突出する長さが変化する。
【0072】
芯部材52は、ボビン供給装置60から給糸ボビン21が供給されたときに、この給糸ボビン21のボビン管21aの内部に差し込まれる(図3(a)を参照)。この状態で、ボビン管21aの下端は、突出部87の正面側及び背面側に形成された支持面(高さ合わせ部)86によって一定の高さで支持される。
【0073】
なお、支持面86の高さは、芯部材52及び保持部53が直立姿勢になったとき(即ち、支持状態になったとき、図3(b)及び図3(c)を参照)、当該支持面86に載っている給糸ボビン21の高さが前記解舒基準位置における給糸ボビン21の高さと一致するように、予め調整されている。
【0074】
図4に示すように、給糸ボビン支持部80は、芯部材52の大径部52bからベース部85側へ向かって順に、第1保持部材53aと、カラー部材54と、第2保持部材53bと、が芯部材52の軸心方向に並べて配置されている。第1保持部材53a、カラー部材54、及び第2保持部材53bは何れも筒状に形成されており、芯部材52の軸心に沿ってスライド可能となるように小径部52aに取り付けられている。
【0075】
第1保持部材53aは、シリコン等の樹脂製の部材であり、適度な弾性変形が可能になっている。図6には第1保持部材53aの形状が一部断面斜視図として示され、この図6に示すように、第1保持部材53aは円筒状に構成されている。第1保持部材53aの内径は、当該第1保持部材53aの内周面が芯部材52の小径部52aに対して隙間が生じないように適宜定められている。従って、第1保持部材53aの軸心は芯部材52の軸心と一致している。
【0076】
また、図6に示すように、当該第1保持部材53aの軸心方向中央部において、その内周面には円形の溝が周方向に形成されている。この溝により、第1保持部材53aの軸心方向中央部分が薄肉となり、強度が局所的に弱化されている。
【0077】
なお、第2保持部材53bは、第1保持部材53aと同一の素材を使用するとともに、第1保持部材53aよりも外径が大きくなるように構成されている。第2保持部材53bの内周面には、第1保持部材53aと同様に、円形の溝が周方向に形成されている。一方で、カラー部材54は、容易に弾性変形しない素材(例えば、金属)を使用して円筒状に形成されている。
【0078】
図4に示すように、第1保持部材53a及び第2保持部材53bが弾性変形しない状態では、全体的に先細り状のレイアウトとなっているので、給糸ボビン21が供給されたときにおいて、当該給糸ボビン21のボビン管21aが保持部53に引っ掛かりにくくすることができる。従って、ボビン管21aの下端を確実に支持面86に接触させることができる。
【0079】
図2及び図4に示すように、スライド部材51には伝達ピン84が固定されており、この伝達ピン84は、ベース部85に形成された上下方向のスライド孔を通じてベース部85の外側へ突出している。一方、ベース部85には、揺動板81が回転軸82を介して回転可能に支持されている。揺動板81には長孔83が形成されている。この長孔83には、スライド部材51に固定された前記伝達ピン84の先端部が差し込まれている。また、揺動板81は、リンク部材94を介して揺動アーム93と連結されている。
【0080】
回転軸82には、揺動板81を図2の矢印方向に付勢する付勢バネ(バネ部材)97が取り付けられている。この付勢バネ97のバネ力は、伝達ピン84を介してスライド部材51を引き下げることで、芯部材52をベース部85側に引き込むように作用する。また、付勢バネ97のバネ力は、揺動板81及びリンク部材94を介して揺動アーム93を引っ張ることで当該揺動アーム93をカム軸105側へ近づけ、揺動アーム93に取り付けられているベアリング92を支持部駆動カム91の縁部に押し当てるように作用する。
【0081】
従って、付勢バネ97は、支持部駆動カム91とベアリング92とを接触させるためのバネ力を発生させている。また、支持部駆動カム91が回転することで、付勢バネ97のバネ力により芯部材52がベース部85側に引き込まれた状態(図3(c))と、付勢バネ97のバネ力に抗して芯部材52がベース部85から引き出された状態(図3(b))と、ベース部85が給糸ボビン支持部80を正面側に倒すように揺動させた状態(図3(a)、図3(d))と、を切り替えることができる。
【0082】
この構成において、付勢バネ97のバネ力により揺動板81が回転し、スライド部材51とともに芯部材52が下方にスライドすると、大径部52bの下面が第1保持部材53aを下向きに押圧する。第1保持部材53a及びカラー部材54は上下にスライド可能であるため、この押圧力は、第2保持部材53bにも伝達される。また、突出部87は第2保持部材53bを一定の高さで支持しているため、第2保持部材53bは、突出部87の上面から押圧力の反発力によって上向きに押圧される。従って、第1保持部材53a及び第2保持部材53bは、押圧力と反発力によって挟み込まれる(圧縮される)ように力を受ける。また、カラー部材54は、上下にスライド可能であるため、押圧力と反発力とを第1保持部材53aと第2保持部材53bとに分配する。この結果、第1保持部材53a及び第2保持部材53bは、内周面に溝が形成された部分を中心としてそれぞれ径方向外側に膨張するように弾性変形する(図5を参照)。
【0083】
第1保持部材53a及び第2保持部材53bの内周面に形成された溝は、周方向で一様な形状となっている。そのため、第1保持部材53a及び第2保持部材53bの軸心方向中央部分は均等に膨張し、ボビン管21aの内周面に360°にわたって密着する。一方、第1保持部材53a及び第2保持部材53bにおける軸心方向両端部は径方向に殆ど膨張しないので、第1保持部材53a及び第2保持部材53bの軸心が芯部材52の軸心と一致した状態が維持されている。従って、第1保持部材53a及び第2保持部材53bが径方向に広がってボビン管21aの内周面に接触することで、当該ボビン管21aの軸心が芯部材52の軸心と一致するように給糸ボビン21は、支持される。
【0084】
前述のとおり、芯部材52の軸心は、解舒基準位置における基準軸L1と一致するように調整されている。従って、第1保持部材53a及び第2保持部材53bが広がることで、給糸ボビン21の軸心は上記の基準軸L1に一致することになる。また、給糸ボビン21の高さ方向の位置合わせ(高さ合わせ)は支持面86によって既に行われている。従って、給糸ボビン21は上記の解舒基準位置に正しく配置されることになる。
【0085】
図5には、図4に示すように軸心が若干ズレた状態で支持面86の上に載っていた給糸ボビン21に対し、第1保持部材53a及び第2保持部材53bの膨張によって軸心合わせが行われ、給糸ボビン21の位置決めが完了した状態が示されている。なお、図4は図3(b)に相当し、図5は図3(c)に相当する。
【0086】
本実施形態では図5に示すように、第1保持部材53a及び第2保持部材53bのそれぞれが径方向に広がることによって、ボビン管21aの内周面をボビン管21aの軸心方向の2箇所で拘束し、給糸ボビン21を解舒基準位置に位置させる。また、第1保持部材53a及び第2保持部材53bのそれぞれがボビン管21aの内周面に360°で密着する。従って、軸心合わせの精度が良好であるとともに強い保持力が得られ、糸解舒時においても給糸ボビン21の軸心が意に反してズレることがない。
【0087】
前述のように、芯部材52に取り付けられた各部材は上下方向にスライド可能に構成されているため、大径部52bが第1保持部材53aに作用させる押圧力は、第1保持部材53a及び第2保持部材53bに適切に分配されて伝達される。従って、例えばボビン管21aの筒孔が若干テーパ状に形成され、その内径が一様でない場合であっても、それに応じた膨張率で第1保持部材53a及び第2保持部材53bがそれぞれ広がるので、2箇所での軸心合わせ及び保持を問題なく行うことができる。
【0088】
なお、本実施形態では、スライド部材51や芯部材52をカムで直接駆動しているため、第1保持部材53a及び第2保持部材53bの膨張ストロークは一定である。従って、例えばボビン管21aの内径が小さい給糸ボビン21が供給された場合、第1保持部材53a及び第2保持部材53bによってボビン管21aの内面に過剰な力が加わり、ボビン管21aを破損させるおそれがある。この点、本実施形態では、付勢バネ97の弾性力によって第1保持部材53a及び第2保持部材53bが径方向に広がり、ボビン管21aの内周面に接触する。従って、供給されるボビン管21aの内径が変化しても、第1保持部材53a及び第2保持部材53bの膨張ストロークがボビン管21aの内径に応じて変化するので、給糸ボビン21を適切に保持することができる。
【0089】
なお、本実施形態では、給糸ボビン支持部80が傾斜姿勢となってボビン供給装置60から給糸ボビン21を受け取り(図3(a))、更に当該給糸ボビン支持部80が直立姿勢となった後に(図3(b))、揺動板81が図4における時計回りに回転して芯部材52をベース部85側へ引き込むように、支持部駆動カム91の形状が適宜定められている。従って、図3(a)、図3(b)、図3(c)に示すように各機構の動作を連携させることができる。
【0090】
次に、排出板40を駆動するための構成について説明する。排出板40には、回転可能に支持された伝達軸46の一端が固定されており、この伝達軸46の他端には伝動アーム45が固定されている。また、前記伝動アーム45には捩りコイルバネ状の戻しバネ47が取り付けられており、伝動アーム45を図2の矢印方向に付勢している。
【0091】
以上の構成で、戻しバネ47の弾性力が作用する伝動アーム45がリンク部材44を介して揺動アーム43を引っ張るので、揺動アーム43のベアリング42が排出板駆動カム41に押し当てられる。このように、戻しバネ47は、排出板駆動カム41とベアリング42とを接触させるためのバネ力を発生させている。
【0092】
この状態で排出板駆動カム41が回転し、排出板駆動カム41がベアリング42を押すと、揺動アーム43がカム軸105から離れる方向に移動し、当該揺動アーム43の先端がリンク部材44を介して伝動アーム45の伝達軸46と接続されている端部と反対側の端部を引っ張る。その結果、排出板40を正面側へ回動させることができる。そして、糸20の解舒が完了した給糸ボビン21(ボビン管21a)の下端を排出板40により持ち上げ、正面側へ排出することができる。
【0093】
なお、本実施形態では、保持部53による給糸ボビン21の保持が解除された後、給糸ボビン支持部80が傾斜姿勢となるのとほぼ同時に排出板40が回転するように、排出板駆動カム41の形状が、支持部駆動カム91の形状との関係で適宜定められている。従って、図3(c)、図3(d)に示すように各機構の動作を連携させることができる。
【0094】
以上に示したように、本実施形態のワインダユニット4は、ボビン供給装置60と、給糸ボビン支持部80と、解舒補助装置12と、を備える。ボビン供給装置60は、給糸ボビン21を供給する。給糸ボビン支持部80は、ボビン供給装置60から供給された給糸ボビン21を支持する。解舒補助装置12は、給糸ボビン支持部80に支持された給糸ボビンの糸20の解舒を補助する。給糸ボビン支持部80は、芯部材52と、保持部53と、支持面86と、を備える。芯部材52は、ボビン管21aに挿入可能であり、給糸ボビン21を支持する支持状態において、予め規定された規定位置で解舒補助装置12を指向する。保持部53は、芯部材52に取り付けられ、かつ支持状態において、芯部材52の軸心に直交する方向に広がってボビン管21aの内面と接触することにより給糸ボビン21を保持する。支持面86は、支持状態において、ボビン管21aの糸解舒側と反対側の端部と一定の高さで接触することにより、ボビン管21aの糸解舒側の端部から解舒補助装置12までの距離を決定する。
【0095】
これにより、本発明のワインダユニット4は、給糸ボビン21の軸心の位置及び高さの両方を解舒補助装置12に合わせ込んだ状態で解舒基準位置に一致するように、給糸ボビン21を給糸ボビン支持部80に支持させることができる。そのため、ワインダユニット4は、給糸ボビン21からの解舒に伴い糸20に発生する張力をより適切な強さに保ちながら糸20の解舒作業及び巻取作業を行うことができる。また、給糸ボビン支持部80によって支持される給糸ボビン21の軸心の位置は、芯部材52の軸心の位置と等しい。従って、オペレータは、給糸ボビン21を給糸ボビン支持部80に実際に支持させることなく、芯部材52の位置を見ることで、給糸ボビン21の軸心を基準軸L1に対して合わせることができる。
【0096】
また、本実施形態のワインダユニット4は、保持部53は、芯部材52の軸心方向における複数の位置(2箇所)において、当該芯部材52の軸心に直交する方向に広がってボビン管21aの内面と接触可能である。
【0097】
これにより、ボビン管21aを軸心方向において複数箇所での拘束が可能になるため、保持部53は、給糸ボビン21をより安定的に保持することができる。
【0098】
また、本実施形態のワインダユニット4において、保持部53は、芯部材52の軸心方向に並べて配置された第1保持部材53aと第2保持部材53bとを備える。第1保持部材53a及び第2保持部材53bは、芯部材52の軸心に直交する方向に広がってボビン管21aの内面と接触可能である。
【0099】
これにより、互いに離れた箇所をコンパクトな構成で(例えば軸心方向に細長い保持部53を用いることなく)保持することができる。
【0100】
また、本実施形態のワインダユニット4は、大径部52bと、突出部87と、カラー部材54と、を備える。大径部52bは、第1保持部材53aが受けた押圧力を第2保持部材53bに伝達する。突出部87は、第2保持部材53bを一定の高さで支持することで、前記押圧力に対する反発力を、第2保持部材53bに生じさせる。カラー部材54は、第1保持部材53a及び第2保持部材53bの両方が、ボビン管21aの内面に接触するように、前記押圧力と前記反発力とを、第1保持部材53aと第2保持部材53bとに分配する。
【0101】
これにより、汎用性が高い給糸ボビン支持部80を簡単な構成で実現できる。また、第1保持部材53a及び第2保持部材53bをバランス良くボビン管21aの内面に押し付けることができるので、給糸ボビン21をより安定的に支持することができる。
【0102】
また、本実施形態のワインダユニット4は、付勢バネ97を備える。大径部52bは、付勢バネ97のバネ力を利用して、芯部材52の軸心に直交する方向に保持部53を広げる。
【0103】
これにより、ボビン管21aの内径に応じて保持部53の拡大量が自動的に調整されるので(ボビン管21aの内径の違いを付勢バネ97側で吸収できるので)、汎用性の高い給糸ボビン支持部80を実現することができる。
【0104】
また、本実施形態のワインダユニット4において、第1保持部材53a及び第2保持部材53bの素材は、樹脂である。
【0105】
これにより、第1保持部材53a及び第2保持部材53bが複雑な形状であっても、容易に成形することができる。
【0106】
また、本実施形態のワインダユニット4において、第1保持部材53a及び第2保持部材53bは、円筒形状であって内周面に溝が形成された弾性体である。
【0107】
これにより、芯部材52の軸心方向に第1保持部材53a及び第2保持部材53bが力を受けると、溝が形成された位置を中心に第1保持部材53a及び第2保持部材53bが広がるので、変形時における第1保持部材53a及び第2保持部材53bの形状を一定にできる。そのため、第1保持部材53a及び第2保持部材53bがボビン管21aの略一定の箇所に接触するので、ボビン管21aをより安定的に保持することができる。
【0108】
また、本実施形態のワインダユニット4において、第1保持部材53aと第2保持部材53bのうち、ボビン管21aの糸解舒側の内面に接触する保持部材(第1保持部材53a)の方が、他方の保持部材(第2保持部材53b)よりも小径である。
【0109】
これにより、保持部53は、給糸ボビン21が供給される方向に対して、全体として先細り状のレイアウトが実現される。これにより、ワインダユニット4では、ボビン供給装置60から給糸ボビン21が供給されるときにおいて、当該給糸ボビン21のボビン管21aが保持部53に引っ掛かることを少なくできる。従って、給糸ボビン21の供給ミスを低減することができる。
【0110】
また、本実施形態のワインダユニット4において、給糸ボビン支持部80は、前記支持状態における芯部材52の軸心に直交する方向に形成された平坦な支持面86を備える。
【0111】
これにより、格子状の部材でボビン管21aを支持する構成等と比較して、広い接触面積でボビン管21aに接触できるので、給糸ボビン21を精度良く基準高さに合わせることができる。
【0112】
また、本実施形態のワインダユニット4において、解舒補助装置12は、給糸ボビン21の糸20の解舒を補助する可動部材72を備える。芯部材52の軸心は、可動部材72の軸心と一致する。
【0113】
これにより、可動部材72の軸心と給糸ボビン21の軸心とを一致させることができる。従って、給糸ボビン21からの解舒される糸に発生する張力をより適切な強さに保ちながら巻取作業を行うことができる。
【0114】
また、本実施形態のワインダユニット4において、可動部材72は、給糸ボビン21の糸20が解舒されるにつれて当該ボビン管21aの意図解舒側と反対側の端部に近づく。
【0115】
これにより、給糸ボビン21からの解舒される糸に発生する張力をより適切な強さに保つことができる。
【0116】
次に、図7から図10までを参照して、上記実施形態の保持部53の変形例を説明する。図7から図10までは、保持部53の別の構成を示す図である。なお、本変形例の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0117】
図7に示す保持部531は、上記実施形態と異なり、1つの保持部531で給糸ボビン21の保持を行う構成である。保持部531は、細長い円筒状の部材であり、図7に示すように、芯部材52の軸心方向に2つの溝が形成されている。
【0118】
この構成により、図7(a)に示す状態から大径部52bが下方に移動することで、図7(b)に示すように2箇所がボビン管21aの内周面に向けて広がる。これにより、1つの保持部531で安定的に給糸ボビン21を保持することができる。
【0119】
図8に示す保持部532は、図8(b)に示すように、第1保持部材532aと、第2保持部材532bと、から構成されている。第1保持部材532aと第2保持部材532bとは、同一形状となっており、図8(a)に示すように、前述の実施形態(図6)よりも幅広の溝(凹部)が形成されている。
【0120】
この構成により、第1保持部材532a及び第2保持部材532bは、ボビン管21aを支持するときにおいて、当該ボビン管21aとの接触部分が軸心方向にある程度の長さを有するように、当該ボビン管21aを保持することができる。これにより、給糸ボビン21を安定的に保持することができる。
【0121】
図9に示す保持部533は、図9(b)に示すように、第1保持部材533aと第2保持部材533bとから構成される。保持部533では、上記実施形態と同様に、第1保持部材533aが第2保持部材533bよりも小径となるように構成されている。また、第1保持部材533a及び第2保持部材533bにおいては、図9(a)及び図9(b)に示すように、その外周面に周方向の突起が形成されている。
【0122】
このように外周面に突起を形成した場合においても、上記実施形態と同様に、突起部分を中心として保持部533を広げることができる。
【0123】
図10に示す保持部534は、細長い円筒状の部材であり、図10(a)に示すように、複数(図10の例では、4つ)の細長い切込みが形成されている。この切込みは、芯部材52の軸心に沿う方向に細長く形成されており、径方向に貫通するように形成される。また、4つの切込みは、周方向で等間隔となるように配置されている。
【0124】
この構成の保持部534は、大径部52bが下方に移動することにより、図10(b)に示すように、切込みの形成部分が径方向に広がる。径方向で貫通する切込みを長く入れる構成では、保持部534を大きく広げることができるため、様々な径のボビン管21aと適切に接触させることができる。
【0125】
なお、保持部の構成は、上記で示した構成に限られず、ボビン管21aに接触するように広がる構成であれば適宜の形状の部材を用いることができる。また、その配置及び個数も上記で示したものに限られない。
【0126】
以上に本発明の好適な実施の形態変形例を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0127】
芯部材52の大径部52bを引き下げることにより保持部53を押圧する構成に代えて、突出部87を押し上げることにより保持部53を押圧するようにしても良い。ただし、芯部材52を引き下げる構成の方が、保持部53を介して給糸ボビン21を引き下げ、ボビン管21aの下端を支持面86に確実に接触させることができる点で有利である。
【0128】
また、例えば図4の構成において、芯部材52の引下げと突出部87の押上げを同時に行うように構成しても良い。この場合、カラー部材54をスライド不能に構成することもできる。
【0129】
芯部材52を駆動する構成としては、付勢バネ97の代わりに例えばシリンダを用いても良い。
【0130】
芯部材52の大径部52bと保持部53との間に別の部材を配置し、大径部52bが保持部53を間接的に押圧する構成としても良い。
【0131】
支持面86の高さを調整できる構成とすることもできる。この高さを調整する方法としては、例えば厚みの異なるスペーサを用いることが考えられる。
【0132】
上記実施形態及び変形例では、解舒補助装置12において筒状の可動部材72が用いられているが、これに代えて、ガイド穴を有する板部材や針金等で成形された線状ガイド部材や多角柱部材等、様々な形状の可動部材72を用いることができる。
【0133】
上記実施形態及び変形例では、ベース部85の傾斜状態と芯部材52のベース部85に対する突出状態とは、共通の切替機構である支持部駆動カム91の回転により切り替えられる構成であるが、ベース部85の傾斜状態と芯部材52の突出状態とは、別々の切替機構により切り替えられていても良い。
【符号の説明】
【0134】
4 ワインダユニット(巻取ユニット)
12 解舒補助装置
51 スライド部材
52 芯部材(軸部)
52b 大径部(押圧部)
53 保持部
53a 第1保持部材
53b 第2保持部材
54 カラー部材(伝達部)
60 ボビン供給装置(給糸ボビン供給部)
72 可動部材(解舒筒部材)
80 給糸ボビン支持部
81 揺動板
85 ベース部
86 支持面(高さ合わせ部)
87 突出部(支持部)
97 付勢バネ(バネ部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボビン管に糸が巻かれることで形成される給糸ボビンを供給する給糸ボビン供給部と、
前記給糸ボビン供給部から供給された前記給糸ボビンを支持する給糸ボビン支持部と、
前記給糸ボビン支持部に支持された前記給糸ボビンの糸の解舒を補助する解舒補助装置と、
を備え、
前記給糸ボビン支持部は、
前記ボビン管に挿入可能であり、かつ、前記給糸ボビンを支持する支持状態において、予め規定された規定位置で前記解舒補助装置を指向する軸部と、
前記軸部に取り付けられ、かつ、前記支持状態において、前記軸部の軸心に直交する方向に広がって前記ボビン管の内面と接触することにより前記給糸ボビンを保持する保持部と、
前記支持状態において、前記ボビン管の糸解舒側と反対側の端部に一定の高さで接触することにより、前記ボビン管の糸解舒側の端部から前記解舒補助装置までの距離を決定する高さ合わせ部と、
を備えることを特徴とする巻取ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の巻取ユニットであって、
前記保持部は、前記軸部の軸心方向における複数の位置において、当該軸部の軸心に直交する方向に広がって前記ボビン管の内面と接触可能であることを特徴とする巻取ユニット。
【請求項3】
請求項2に記載の巻取ユニットであって、
前記保持部は、前記軸部の軸心方向に並べて配置された第1保持部材と第2保持部材とを備え、
前記第1保持部材及び前記第2保持部材は、前記軸部の軸心に直交する方向に広がって前記ボビン管の内面と接触可能であることを特徴とする巻取ユニット。
【請求項4】
請求項3に記載の巻取ユニットであって、
前記第1保持部材を押圧する押圧部と、
前記第1保持部材が受けた押圧力を前記第2保持部材に伝達する伝達部と、
前記第2保持部材を一定の高さで支持することで、前記押圧力に対する反発力を、前記第2保持部材に生じさせる支持部と、
を備え、
前記伝達部は、前記第1保持部材及び前記第2保持部材の両方が、前記ボビン管の内面に接触するように、前記押圧力と前記反発力とを、前記第1保持部材と前記第2保持部材とに分配することを特徴とする巻取ユニット。
【請求項5】
請求項4に記載の巻取ユニットであって、
前記伝達部は、前記第1保持部材と前記第2保持部材との間に配置され、前記軸部の軸心方向に移動可能であり、
前記第1保持部材及び前記第2保持部材は、前記伝達部の移動によって前記軸部の軸心方向に押圧されることで、当該軸心方向に直交する方向に広がることを特徴とする巻取ユニット。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の巻取ユニットであって、
バネ部材を備え、
前記押圧部は、前記バネ部材のバネ力を利用して、前記軸部の軸心に直交する方向に前記保持部を広げることを特徴とする巻取ユニット。
【請求項7】
請求項3から6までの何れか一項に記載の巻取ユニットであって、
前記第1保持部材と前記第2保持部材のうち、少なくとも一方の素材は、樹脂であることを特徴とする巻取ユニット。
【請求項8】
請求項3から7までの何れか一項に記載の巻取ユニットであって、
前記第1保持部材と前記第2保持部材のうち、少なくとも一方は、円筒形状であって内周面に溝が形成された弾性体であることを特徴とする巻取ユニット。
【請求項9】
請求項3から8までの何れか一項に記載の巻取ユニットであって、
前記第1保持部材と前記第2保持部材のうち、少なくとも一方は、前記軸部の軸心方向に切込みが複数形成された弾性体であることを特徴とする巻取ユニット。
【請求項10】
請求項3から9までの何れか一項に記載の巻取ユニットであって、
前記第1保持部材と前記第2保持部材のうち、前記ボビン管の糸解舒側の内面に接触する保持部材の方が、他方の保持部材よりも小径であることを特徴とする巻取ユニット。
【請求項11】
請求項1から10までの何れか一項に記載の巻取ユニットであって、
前記高さ合わせ部は、前記支持状態における前記軸部の軸心に直交する方向に形成された平坦な支持面であることを特徴とする巻取ユニット。
【請求項12】
請求項1から11までの何れか一項に記載の巻取ユニットであって、
前記解舒補助装置は、前記給糸ボビンの糸の解舒を補助する筒部材である解舒筒部材を備え、
前記支持状態における前記軸部の軸心は、前記解舒筒部材の軸心と一致することを特徴とする巻取ユニット。
【請求項13】
請求項12に記載の巻取ユニットであって、
前記解舒筒部材は、前記給糸ボビンの糸が解舒されるにつれて、前記ボビン管の糸解舒側と反対側の端部に近づくことを特徴とする巻取ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−201495(P2012−201495A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70157(P2011−70157)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】