説明

巻取式ウインチを用いたワイヤロープ等の紐状体の移動システム及び移動装置

【課題】本発明は、巻取式ウインチを大空間部に適切に設置することができ、スムーズで安全性に優れた巻取式ウインチを用いたワイヤロープ等の紐状体の移動システム及び移動装置を提供することを課題とする。
【解決手段】空間部の所望の箇所に間隔を有して設置した複数台の巻取式ウインチの各巻回ドラムを回転駆動し、該巻回ドラムに巻回されたワイヤロープ等の紐状体を滑車で巻回移動して、ワイヤロープ等の紐状体に取り付けられたネット又はシート等の吊張体を昇降移動する巻取式ウインチを用いたワイヤロープ等の紐状体の移動システムにおいて、前記各巻取式ウインチの設置位置の傾斜に応じて巻回ドラムを水平又は垂直方向に回動するとともに、該巻回ドラムを滑車と正対方向に回動することである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤロープ等の紐状体を巻回する巻取式ウインチを用いて屋内外の所望の空間部を開閉する巻取式ウインチを用いたワイヤロープ等の紐状体の移動システム及び移動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
屋外及び屋内の空間部を有する各種の施設で、複数台の巻取式ウインチを用いてネットを開閉移動し、空間部を防球用や間仕切り用として使用する装置としては、次のような構成の装置がある。
【0003】
屋内施設としては、例えば、特許第4032315号公報に開示されている装置がある。この装置は、防球用又は間仕切り用として使用するネットと、該ネットの両端側にそれぞれ連結された2本のワイヤロープと、該ワイヤロープをそれぞれ巻き取り/引き出し移動する巻取式ウインチと、前記ネットの上端側に連結され上方側に巻き取り/引き出し移動する支持ロープとからから構成され、各巻取式ウインチの巻回ドラムを回転駆動することでドラムに巻回されたワイヤロープを巻き取り移動して2本のワイヤロープを逆方向に引っ張るとともに、支持ロープを上方に引っ張ることでネットの荷重を3方向に分散しながらワイヤロープに連結されたネットを水平状態を維持するように吊り張りして空間部を間仕切り等する。
【0004】
また、大空間部を有する多目的の室内球技場を利用目的に応じて間仕切りし、又利用者の安全のための防球用として大面積のネット又は複数のネットが利用されている。前記ネットは重量があるために、ネットを吊り張りする場合は、複数のワイヤーを利用して吊り張りする必要がある。
【0005】
上記複数のワイヤーを移動する巻取式ウインチを用いる方法として例えば、特開2007−44454号公報に開示されたネット等の吊張体の吊り張り方法である。
【0006】
上記ネット等の吊張体の吊り張り方法は、巻取式ウインチに巻回した複数のウインチワイヤーを天井の円弧部に沿って天頂部と該天頂部からの距離に応じて調整しながら移動することでネット等の吊張体を空間部に吊り張り又は天井側で収納する方法である。
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記空間部に設置する複数台の巻取式ウインチは梁や支柱等に設置するために、設置場所が傾斜している場合があり、その傾斜に対応し巻取式ウインチの巻回ドラムを水平状態とすべく水平基台を製造することで対応していたが、個々の基台の製造に時間を有し費用がかかる。
【0008】
また、従来は巻取式ウインチの設置場所が傾斜している場合は、その場所を避けて別の水平位置又は垂直位置に設置するが、この場合巻取式ウインチの巻回ドラムが滑車と正対しなくなり、巻回ドラムによるワイヤーの巻き取り時にワイヤーの乱巻きが発生しやすく頻繁なメンテナンスを必要とする。
【0009】
また、滑車の取り付け位置についても、巻取式ウインチと同様に傾斜している場所に設置する場合があり、滑車が巻取式ウインチの巻回ドラムと正対することができずスムーズなワイヤー移動ができないという欠点があった。
【0010】
特に、屋内施設の天井側の形状によりネットに連結したワイヤーの長さが相違する場合においては、上記各巻取式ウインチ間の制御が煩雑で、上記のような巻取式ウインチの巻回ドラムと滑車とが正対しないとその部分で発生する乱巻き等のためにネットのスムーズな移動が行えない。
【0011】
さらに、ネットが大面積であるためにワイヤーにかかる荷重が大きく、巻取式ウインチと滑車とが正対していない場合はワイヤー移動に無駄が生じやすくスムーズなワイヤー移動ができない。
【0012】
また、上端側が傾斜した場合や円弧状の場合は、ネットを折り畳んで上端側に移動する巻取式ウインチと滑車とが正対していないとワイヤー間の幅長が上端側と下端側で相違するために、上端側の傾斜や円弧に沿ってネットを適切に収納することができない。
【0013】
また、ネットは、網目に沿って収縮する性質があるために、巻取式ウインチと滑車とが正対していないとワイヤーにかかる負荷が大きくワイヤーの磨耗の原因となる欠点があった。
【0014】
そこで、本発明は、巻取式ウインチを大空間部に適切に設置することができ、スムーズで安全性に優れた巻取式ウインチを用いたワイヤロープ等の紐状体の移動システム及び移動装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は上記課題を解決するための巻取式ウインチを用いたワイヤロープ等の紐状体の移動システムの解決手段は、請求項1に記載のように、空間部の所望の箇所に間隔を有して設置した複数台の巻取式ウインチの各巻回ドラムを回転駆動し、該巻回ドラムに巻回されたワイヤロープ等の紐状体を滑車で巻回移動して、ワイヤロープ等の紐状体に取り付けられたネット又はシート等の吊張体を昇降移動する巻取式ウインチを用いたワイヤロープ等の紐状体の移動システムにおいて、前記各巻取式ウインチの設置位置の傾斜に応じて巻回ドラムを水平又は垂直方向に回動するとともに、該巻回ドラムを滑車と正対方向に回動することを特徴とする。
【0016】
また、具体的な解決手段は、請求項2に記載のように、滑車を設置位置の傾斜に応じて水平又は垂直方向に回動するとともに、巻回ドラムと正対方向に回動する。
【0017】
本発明は上記課題を解決するための巻取式ウインチを用いたワイヤロープ等の紐状体の移動装置の解決手段は、請求項3に記載のように、空間部の所望の箇所に間隔を有して設置し、駆動軸を介して各巻回ドラムを回転駆動する複数台の巻取式ウインチと、該巻回ドラムに巻回されたワイヤロープ等の紐状体と、該ワイヤロープ等の紐状体の移動を補助する滑車と、ワイヤロープ等の紐状体に取り付けられたネット又はシート等の吊張体とから構成された巻取式ウインチを用いたワイヤロープ等の紐状体の移動装置において、前記各巻取式ウインチには、設置位置の傾斜に応じて巻回ドラムを水平又は垂直状態とするための水平/垂直方向回動部と、巻回ドラムを滑車と正対するための正対方向回動部とが直接又は支持台を介して間接的に設けられていることを特徴とする。
【0018】
また、具体的な解決手段は、請求項4に記載のように、滑車には、設置位置の傾斜に応じて水平又は垂直状態とするための水平/垂直方向回動部と、巻取式ウインチと正対するための正対方向回動部とが設けられている。
【発明の作用・効果】
【0019】
次に、本発明の巻取式ウインチを用いたワイヤロープ等の紐状体の移動システムの作用及び効果について記載する。
【0020】
先ず、屋内外の所望の空間部に複数台の巻取式ウインチを間隔を設けて設置する。この際、巻取式ウインチのなかで傾斜している場所に設置する巻取式ウインチがあると、該傾斜に応じて水平又は垂直状態を維持する位置まで巻回ドラムに直接的に設けられた水平/垂直方向回動部を所望角度回動した後、巻回ドラムを固定する。
【0021】
この際、水平/垂直方向回動部が巻回ドラムに支持台を介して間接的に設けられている場合は、水平/垂直方向回動部を所望角度回動して支持台を水平又は垂直状態に維持すした後、固定する。
【0022】
上記状態で各巻取式ウインチの巻回ドラムは水平又は垂直状態で回転駆動することができるために、各巻取式ウインチの連動又は同期した駆動が容易に行える。
【0023】
次に、各巻取式ウインチの巻回ドラムをそれぞれ回転駆動して巻回ドラムよりワイヤロープ等の紐状体を引き出し、巻取式ウインチの近傍に取り付けられた滑車を介してワイヤロープ等の紐状体を引き出し移動する。
【0024】
この際、巻取式ウインチの巻回ドラムと巻取式ウインチの近傍に取り付けられた滑車とが正対していない巻取式ウインチがあると、巻取式ウインチに直接設けられた正対方向回動部を用いて滑車と正対する位置まで巻回ドラムを回動して巻取式ウインチの巻回ドラムと滑車とを正対することで、巻回ドラムより引き出された又は巻き取られるワイヤロープ等の紐状体をスムーズに移動することができる。
【0025】
また、正対方向回動部が巻取式ウインチに間接的に設けられている場合は、支持台を正対方向回動部で正対状態に維持する位置まで所望角度回動して固定する。
【0026】
そして、巻回ドラムよりワイヤロープ等の紐状体を上方側より床面下方側へ下降すべく引き出し移動して、各ワイヤロープ等の紐状体をネット又はシート等の吊張体に連結した後、ワイヤロープ等の紐状体を巻取式ウインチの巻回ドラムで巻き取り移動することで、ネット又はシート等の吊張体を空間部に沿って所望の高さまで上昇することができ、また、巻取式ウインチの巻回ドラムでワイヤロープ等の紐状体を床面側まで引出し移動することで、ネット又はシート等の吊張体を取り外して収納することができる。
【0027】
これにより、ネット又はシート等の吊張体を所望の空間部に吊り張りして空間部を閉塞(間仕切り等)及び空間部を開放する。
【0028】
また、上記滑車の設置位置が傾斜している場合は、水平/垂直方向回動部を所望角度回動して水平又は垂直状態を維持することで、常に水平又は垂直状態に滑車を取り付けすることができる。
【0029】
次に、巻取式ウインチの巻回ドラムと滑車とが正対していない場合は上記のように巻取式ウインチの正対方向回動部を正対する位置まで回動することで巻取式ウインチの巻回ドラムと滑車とを正対するが、正対が不十分な場合は滑車の正対方向回動部を回動することで、巻取式ウインチの巻回ドラムと滑車とを確実に正対することができる。
【0030】
このように、本発明は巻取式ウインチの設置角度、設置位置を自在に調整することができるために、あらゆる空間部に自在に対応して設置することができる。
【0031】
また、滑車も同様に設置角度、設置位置を自在に調整することができるために、あらゆる空間部に適切に対応して設置することができる。
【0032】
このため、巻回ドラム部分で発生するワイヤロープ等の紐状体の乱巻き等を解消することができ、従来のような頻繁なメンテナンス作業を必要としない。
【0033】
また、従来のように空間部の形状に応じて適する別体の基台の形成を必要としないので、コストの面の削減、及び設置の作業時間の削減を行うことができ、従来にない適切でスムーズな取り付けが可能となる。
【発明を実施するための最良の実施の形態】
【0034】
以下、本発明の巻取式ウインチを用いたワイヤロープ等の紐状体の移動システム及び移動装置の一実施例について下記のような図面を用いて説明する。
【0035】
図1は本発明の水平回動部と正対回動部との設けられた巻取式ウインチを示す概略説明正面図であり、図2は図1の巻取式ウインチを示す概略説明平面図であり、図3及び図4は本発明の水平/垂直回動部と正対回動部との設けられた滑車を示す概略説明正面図であり、図5は巻取式ウインチの水平/垂直回動部を使用した状態を示す概略説明正面図であり、図6は巻取式ウインチと滑車との正対状態を示す概略説明平面図であり、図7は上端側を水平に維持したネット又はシート等の吊張体の移動システムを示す概略説明図であり、図8は円弧状の空間部に取り付けたネット又はシート等の吊張体の移動システムを示す概略説明図であり、図9、図10は図7の他実施例のネット又はシート等の吊張体の移動システムを示す概略説明図であり、図11は本発明の他実施例で巻取式ウインチを垂直面に取り付けた状態を示す概略説明正面図であり、図12は本発明の他実施例で水平回動部と正対回動部とが一体となった巻取式ウインチを示す概略説明正面図であり、図13は本発明の他実施例で水平回動部と正対回動部とが一体となった滑車を示す概略説明正面図であり、図14は移動手段の設けられた巻取式ウインチを示す概略説明正面図である。
【0036】
本発明の巻取式ウインチを用いたワイヤロープ等の紐状体の移動装置の実施例について説明する。
【0037】
巻取式ウインチを用いたワイヤロープ等の紐状体の移動装置の構成は、一定の間隔で設置する複数個の巻取式ウインチ1と、該巻取式ウインチ1の巻回ドラム2に巻回された複数の紐状体3としてのワイヤーロープと、該紐状体3の移動を案内補助すべく巻取式ウインチ1の近傍に設けられた滑車4と、該複数の紐状体3に連結された吊張体5としてのネットとから構成されている。
【0038】
上記の巻取式ウインチ1は、基本的にウインチ本体1Aと駆動源とから構成され、ウインチ本体1Aには駆動源に連結(直接的/間接的)し回転駆動(手動電動又はアシスト電源で回転駆動する構成等その駆動手段は目的に応じて自在に選択することができる)する駆動軸2Aと、該駆動軸2Aに設けられた巻回ドラム2が設けられている。
【0039】
前記ウインチ本体1Aは、巻回ドラム2が取り付けられた枠体7の水平方向及び垂直方向を調整するテーブル状の水平/垂直方向回動体8と、該水平/垂直方向回動体8の回転軸が取り付けられ、基台6に対して360度回動することで前記巻回ドラム2を滑車4に正対する方向に調整する正対方向回動体9とから構成されている。
【0040】
前記滑車4は、略U字状の連結具10と、該連結具10に取り付けられ連結具10の水平/垂直方向を調整するテーブル状の水平/垂直方向回動体11と、該水平/垂直方向回動体11の回転軸が取り付けられ、円形の回転ローラ12の設けられた枠体13に対して360度回動することで回転ローラ12を巻回ドラム2に正対する方向に調整する正対方向回動体14とから構成されている。
【0041】
尚、前記回転ローラ12は外周面に沿って略V字状の溝12Aが形成されている。
【0042】
次に、上記のように構成された巻取式ウインチを用いたワイヤロープ等の紐状体の移動装置を用いた屋内空間部の間仕切りシステムについて説明する。
【0043】
先ず、所望の空間部の形状等に応じて、設置する巻取式ウインチ1の数、吊張体5の大きさ及び形状を確認後、空間部の上部側に複数の巻取式ウインチ1を設置する。
【0044】
この際、上部側の設置位置により傾斜した位置に設置する巻取式ウインチ1があると、基台6を設置した傾斜角度に応じて水平/垂直方向回動体8を上下方向に回動し、巻回ドラム2の設けられた枠体7を水平に位置させる。このようにして水平でない全ての巻取式ウインチ1の巻回ドラム2を水平状態とする。
【0045】
次に、上記設置された複数の巻取式ウインチ1の近傍にそれぞれ巻回ドラム2に巻回された紐状体3の取り出し移動又は引出し移動の案内補助するための滑車4を空間部の上部側にU字状連結具10を介して取り付ける。
【0046】
この際も、上記巻取式ウインチ1と同様に、滑車4の取り付け位置が傾斜している場合に、滑車4の水平/垂直方向回動体11を傾斜角度に応じて上下方向に回動することで回転ローラ12の設けられた枠体13を水平に位置する。このようにして水平でない全ての回転ローラ12の設けられた枠体13を水平状態とする。
【0047】
これにより、全ての巻取式ウインチ1が水平状態となり、紐状体3の取り出し又は引出し移動がスムーズに行える。従って、各巻取式ウインチ1の連動や同期移動を制御盤を介して行う場合はその設定を容易に行うことができる他、吊張体5の荷重を適切に各紐状体3で分散して支持することができ、連続した吊り張りが容易である。
【0048】
次に、上記各巻取式ウインチ1の巻回ドラム2と各回転ローラ12とが正対しているかを確認し、もし巻回ドラム2と各回転ローラ12とが正対していない場合は、巻取式ウインチ1の正対方向回動体9を角度に応じて左右方向に回動することで、巻回ドラム2と各回転ローラ12とを正対する。さらに、微調整が必要な場合は、滑車4の正対方向回動体14をさらに左右方向に回動することで、巻回ドラム2と回転ローラ12とを正対する。
【0049】
上記巻回ドラム2と各回転ローラ12との正対は、その角度に応じて、滑車4の正対方向回動体14による左右方向の回動のみでも対応することもできる。
【0050】
また、空間部の大きさや形状により巻取式ウインチ1の近傍の滑車4からさらに複数の滑車4を介して紐状体3を取り出し又は引出し移動する場合は、他の滑車も同様に水平/垂直方向回動体11と正対方向回動体14とを設けることで、紐状体3を取り出し又は引出し移動をさらにスムーズに行うことも可能である。
【0051】
従って、巻回ドラム2に巻回された紐状体3が適切にテンションのかかった状態で引出し又は巻き取り移動することができ、巻回ドラム2部分で弛みや撓みによる乱巻きが発生することなく紐状体3を移動することができ、メンテナンス作業を従来のように必要としない。
【0052】
上記のようにして設置された巻取式ウインチ1の巻回ドラム2より紐状体3を引出し移動して吊張体5の上端側に連結する。前記吊張体5は、上端側に水平棒体18を介して直接又は間接的に吊り張りされている。
【0053】
この状態で、先ず各巻取式ウインチ1を駆動し紐状体3を所望の位置まで巻き取り移動することで、吊張体5の上端側を決定することともに、空間部の所望の高さに吊張体5を吊り張りすることができる。
【0054】
これにより、使用目的に応じて空間部を吊張体5で間仕切りすることができ、また防球用とすることができる。
【0055】
次に、上記吊張体5を収納する場合は、各巻取式ウインチ1を駆動することで紐状体3を床側に引き出し移動した後、該紐状体3より吊張体5を取り外すことで吊張体5を容易に収納することができる。
【0056】
上記のように、本発明は巻回ドラム2を適切に空間部に設置することができ、しかも巻回ドラム2と各回転ローラ12とを正対することができるために、吊張体5の吊り張り及び収納を容易に行うことができる。
【0057】
尚、上記実施例では、吊張体5の上端側に設けられた水平棒体18を介して各紐状体3を連結したが、本発明において、吊張体5の取り付け方法はこれに限定されるものでなく、例えば、上端側を空間部に固定し、吊張体5の上方より下方に沿って取り付けられたリング体16に各紐状体3を挿通した後、吊張体5の下端側で錘体17に連結することで紐状体3に吊張体5を取り付けることも可能である。この場合は、リング体16部分で吊張体5を折り畳みながら吊張体5を折り畳んで上方に移動することで、紐状体3にかかる吊張体5の荷重が変化することなく、簡易に吊張体5を収納することができる。
【0058】
又、上記実施例では、1本の水平棒体18に紐状体3を連結したが本発明において、紐状体3の連結方法はこれに限定されるものでなく、例えば、複数の水平棒体18に吊張体5を取り付け、該水平棒体18間に取り付けられた連結紐状体3Bに紐状体3を移動自在に連結することにより、水平状態に吊張体5を維持する場合は、連結紐状体3Bの略中間部分に紐状体3の連結部を移動して上方に引き上げることで、吊張体5の荷重を各紐状体3で分散し安定した状態で吊張体5を吊り張りすることができ、また、斜め方向に吊張体5を移動する場合は、上方の水平棒体18端部に紐状体3の連結部を移動して、適切に吊り張りすることができる。この場合も巻回ドラム2と各回転ローラ12とを正対するように回動移動することができるために、上記紐状体3の連結部の移動に応じてそれぞれ巻回ドラム2と各回転ローラ12との正対位置を調整しながら対応することができる。即ち、紐状体3の連結部の移動に伴って、巻取式ウインチ1の正対方向回動体9を移動に応じて左右方向に回動するとともに、滑車4の正対方向回動体14をさらに左右方向に回動することで、常に正対状態を保ちながら紐状体3に対応することができる。
【0059】
又、上記実施例では、巻取式ウインチ1の水平/垂直方向回動体8と正対方向回動体9とをそれぞれ別体として構成したが、本発明において水平/垂直方向回動体8と正対方向回動体9との構成はこれに限定されるものでなく、例えば、球状体を使用することで360度あらゆる方向に回動できるように構成することで水平/垂直方向回動体8と正対方向回動体9とを一体として構成することも可能である。
【0060】
同様に、滑車4においても水平/垂直方向回動体11と正対方向回動体14とをそれぞれ別体として構成したが、例えば、球状体を使用することで360度あらゆる方向に回動できるように構成することで水平/垂直方向回動体11と正対方向回動体14とを一体として構成することも可能である。
【0061】
又、上記実施例では巻取式ウインチ1の水平/垂直方向回動体8と正対方向回動体9とを巻取式ウインチ1の巻回ドラム2に直接設けたが、本発明において、水平/垂直方向回動体8と正対方向回動体9との取り付けはこれに限定されるものでなく、例えば巻取式ウインチ1の基台6を支持台(図示せず)に取り付け、該支持台に水平/垂直方向回動体8と正対方向回動体9とを取り付け支持台を回動することで巻取式ウインチ1の巻回ドラム2を水平状態とし、また支持台を回動することで巻回ドラム2を滑車4と正対するように構成することも可能である。この場合、水平/垂直方向回動体8は一端側を壁に取り付け他端側を長さ調整可能な別の支え体で支えることで水平方向の回動を行い、壁に取り付けた一端側を180度回動できるようにすることで正対方向の回動を行うように構成することも可能である。
【0062】
同様に、上記実施例では滑車4においても、水平/垂直方向回動体11と正対方向回動体14とを直接設けたが、本発明において、水平/垂直方向回動体11と正対方向回動体14との取り付けはこれに限定されるものでなく、例えば滑車4の連結具10を支持台(図示せず)に取り付け、該支持台に水平/垂直方向回動体11と正対方向回動体14とを取り付け、支持台を回動することで滑車4を水平状態とし、また支持台を回動することで滑車4と巻取式ウインチ1の巻回ドラム2とを正対するように構成することも可能である。
【0063】
また、上記実施例においては各巻取式ウインチ1の設置は、傾斜がある位置等はあるものの一列状に設置可能として説明したが、空間部の形状に応じて、適切な設置を確保できない場合、例えば梁や支柱又は他の設置物が邪魔する場合においては、移動手段としてのレール15を巻取式ウインチ1の基台6に取り付けることで、該レール15を空間部に掛け渡し、該レール15に沿って基台6を移動することで、巻取式ウインチ1を適切な位置に設置することも可能である。この場合においても、巻取式ウインチ1に水平/垂直回動体8と正対回動体9とが設けられているために、左右前後方向に巻回ドラム2を回動することができ、巻取式ウインチ1の設置場所をさらに広げることも可能である。
【0064】
また、上記実施例では巻取式ウインチ1を天井側に設置したが、本発明において巻取式ウインチ1の設置位置はこれに限定するものでなく、例えば壁面等の垂直面に設置する場合で垂直状態を維持できない面に設置する場合は、水平/垂直回動体8を所望角度回動して、巻回ドラム2の垂直状態を維持することで、上記と同様に複数台の巻取式ウインチ1をスムーズに連動することができる。
【0065】
このように、本発明の巻取式ウインチを用いたワイヤロープ等の紐状体の移動装置を用いたシステムは、簡易な構成で巻取式ウインチをあらゆる傾斜面に設置することができ、その利用範囲が拡大することとなる。
【0066】
また、巻回ドラム2部分での乱巻き等が発生しないために、そのメンテナンスを従来のように頻繁に行うことがない。
【0067】
また、従来のように空間部毎に基台を形成する手間が省けることとなり、コストの面においても格段に削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の水平回動部と正対回動部との設けられた巻取式ウインチを示す概略説明正面図
【図2】図1の巻取式ウインチを示す概略説明平面図
【図3】本発明の水平回動部と正対回動部との設けられた滑車を示す概略説明正面図
【図4】本発明の水平回動部と正対回動部との設けられた滑車を示す概略説明正面図
【図5】巻取式ウインチの水平回動部を使用した状態を示す概略説明正面図
【図6】巻取式ウインチと滑車との正対状態を示す概略説明平面図
【図7】上端側を水平に維持したネットの移動システムを示す概略説明図
【図8】円弧状の空間部に取り付けたネットの移動システムを示す概略説明図
【図9】図7の他実施例のネット又はシート等の吊張体の移動システムを示す概略説明図
【図10】図7の他実施例のネット又はシート等の吊張体の移動システムを示す概略説明図
【図11】本発明の他実施例で巻取式ウインチを垂直面に取り付けた状態を示す概略説明正面図
【図12】本発明の他実施例で水平回動部と正対回動部とが一体となった巻取式ウインチを示す概略説明正面図
【図13】本発明の他実施例で水平回動部と正対回動部とが一体となった滑車を示す概略説明正面図
【図14】移動手段の設けられた巻取式ウインチを示す概略説明正面図
【符号の説明】
【0069】
1…巻取式ウインチ、3…紐状体、5…吊張体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間部の所望の箇所に間隔を有して設置した複数台の巻取式ウインチの各巻回ドラムを回転駆動し、該巻回ドラムに巻回されたワイヤロープ等の紐状体を滑車で巻回移動して、ワイヤロープ等の紐状体に取り付けられたネット又はシート等の吊張体を昇降移動する巻取式ウインチを用いたワイヤロープ等の紐状体の移動システムにおいて、前記各巻取式ウインチの設置位置の傾斜に応じて巻回ドラムを水平又は垂直方向に回動するとともに、該巻回ドラムを滑車と正対方向に回動することを特徴とする巻取式ウインチを用いたワイヤロープ等の紐状体の移動システム。
【請求項2】
前記滑車を設置位置の傾斜に応じて水平又は垂直方向に回動するとともに、巻回ドラムと正対方向に回動する請求項1に記載の巻取式ウインチを用いたワイヤロープ等の紐状体の移動システム。
【請求項3】
空間部の所望の箇所に間隔を有して設置し、駆動軸を介して各巻回ドラムを回転駆動する複数台の巻取式ウインチと、該巻回ドラムに巻回されたワイヤロープ等の紐状体と、該ワイヤロープ等の紐状体の移動を補助する滑車と、ワイヤロープ等の紐状体に取り付けられたネット又はシート等の吊張体とから構成された巻取式ウインチを用いたワイヤロープ等の紐状体の移動装置において、前記各巻取式ウインチには、設置位置の傾斜に応じて巻回ドラムを水平又は垂直状態とするための水平/垂直方向回動部と、巻回ドラムを滑車と正対するための正対方向回動部とが直接又は支持台を介して間接的に設けられていることを特徴とする巻取式ウインチを用いたワイヤロープ等の紐状体の移動装置。
【請求項4】
前記滑車には、設置位置の傾斜に応じて水平又は垂直状態とするための水平/垂直方向回動部と、巻取式ウインチと正対するための正対方向回動部とが設けられている請求項3に記載の巻取式ウインチを用いたワイヤロープ等の紐状体の移動装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2010−265112(P2010−265112A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−132527(P2009−132527)
【出願日】平成21年5月11日(2009.5.11)
【特許番号】特許第4453109号(P4453109)
【特許公報発行日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【出願人】(592206156)東田商工株式会社 (54)