説明

巻回体収容箱、巻回体入り収容箱及び長尺物引き出し方法

【課題】ロールに巻き戻ったフィルム先端を摘みやすくすることを助けるのに役立つ巻回体収容箱、巻回体入り収容箱及び長尺物引き出し方法を提供する。
【解決手段】巻回体入り収容箱1は、巻回体31rと巻回体収容箱10とを備える。巻回体収容箱10は、一面11hが開口した直方体状に形成された本体部11と、開口11hの一辺10jに回動可能に連接されて開口11hを塞ぐ蓋部16とを備え、巻回体31rが初めて引き出される際に巻回体31rの先端部の剥離を助ける引出テープ35の貼付を促す引出テープ保管表示部21が本体部11又は蓋部16に形成されている。収容箱10を開封して初めて長尺物31fを引き出す際に摘んだ引出テープ35を、長尺物31fから剥がし、収容箱10に貼付して保管し、長尺物31fの先端が巻回体31rに張り付いた際に、収容箱10に貼付して保管してある引出テープ35を用いて先端を巻回体31rから剥離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は巻回体収容箱、巻回体入り収容箱及び長尺物引き出し方法に関し、特にロールに巻き戻ってしまったフィルムの引き出しを助けるのに役立つ巻回体収容箱、巻回体入り収容箱及び長尺物引き出し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食材や料理あるいは皿などの食器を料理ごと包む食品用ラップフィルムが広く用いられている。食品用ラップフィルムは、典型的には、ロール状に巻かれた長尺のプラスチックフィルムが、長い直方体の容器に収容されており、使用する際には、先端のフィルムをロールから必要量引き出し、容器の蓋に取り付けられている切断刃で切断する。切断後のロール状に巻かれたプラスチックフィルムの先端は、容器の本体部と蓋部とに挟まれた状態で保管され、この状態が維持されれば次に使用する際にもフィルムの先端を摘みやすい。ところが、フィルムがロールに巻き戻ってしまうと、フィルムの先端がロールに張り付いてしまい、フィルムの先端を摘むのが困難になる。このような不都合を解消する技術として、容器本体の前面に切断後のラップフィルム端部を剥離可能に保持するフィルム保持部を形成するものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−184692号公報(段落0002等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、容器本体の前面にフィルム保持部を形成した場合でも、何らかの事情でフィルム先端がフィルム保持部から剥離してしまい、フィルムがロールに巻き戻ってしまうことが生じ得る。
【0005】
本発明は上述の課題に鑑み、フィルムがロールに巻き戻ってしまった場合にフィルム先端を摘みやすくすることを助けるのに役立つ巻回体収容箱、巻回体入り収容箱及び長尺物引き出し方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様に係る巻回体収容箱は、例えば図1に示すように、一面11hが開口した直方体状に形成された、薄膜状の長尺物31fが巻かれた巻回体31rを収容する本体部11と;開口11hの一辺10jに回動可能に連接され、開口11hを塞ぐ蓋部16とを備え;本体部11又は蓋部16に、本体部11に収容された巻回体31rが初めて引き出される際に巻回体31rの先端部の剥離を助ける引出テープ35の貼付を促す引出テープ保管表示部21が形成されている。
【0007】
このように構成すると、巻回体に張り付いた長尺物の先端を巻回体から剥離する際に用いるテープとして、引出テープの利用を促すことができる。また、巻回体の引き出しに用いられた引出テープが用済みになったとして保管されずに捨てられることを低減することができる。
【0008】
また、本発明の第2の態様に係る巻回体収容箱は、上記本発明の第1の態様に係る巻回体収容箱において、本体部11又は蓋部16(例えば図1参照)に貼付された剥離テープであって、引出テープ35(例えば図1参照)とは別の剥離テープを備える。
【0009】
このように構成すると、引出テープの保管を忘れた場合でも、巻回体に張り付いた長尺物の先端を巻回体から剥離する際に、剥離テープを用いることができる。
【0010】
また、本発明の第3の態様に係る巻回体収容箱は、上記本発明の第1の態様又は第2の態様に係る巻回体収容箱において、引出テープ保管表示部が、蓋部16(例えば図1参照)の裏面に形成されている。
【0011】
このように構成すると、引出テープの保管時の紛失を抑制することができる。
【0012】
また、本発明の第4の態様に係る巻回体入り収容箱は、例えば図1に示すように、薄膜状の長尺物31fが巻かれた巻回体31rであって、先端部に剥離を助ける引出テープ35が貼付された巻回体31rと;上記本発明の第1の態様乃至第3の態様のいずれか1つの態様に係る巻回体収容箱10とを備える。
【0013】
このように構成すると、流通に付される巻回体入り収容箱について、巻回体に張り付いた長尺物の先端を巻回体から剥離する際に用いるテープとして、引出テープの利用を促すことができる。
【0014】
また、本発明の第5の態様に係る長尺物引き出し方法は、例えば図1及び図3を参照して示すと、蓋部16が開閉する直方体状の収容箱10に収容された、薄膜状の長尺物31fが巻かれて先端に剥離を助ける引出テープ35が貼付された巻回体31rから、長尺物31fを引き出す方法であって;収容箱10を開封して初めて引き出す際に、引出テープ35を摘んで引き出す初期引出工程(St2)と;初期引出工程(St2)で長尺物31fを引き出した後に、引出テープ35を長尺物31fから剥がす引出テープ剥離工程(St3)と;引出テープ剥離工程(St3)で剥がした引出テープ35を、収容箱10に貼付して保管する引出テープ保管工程(St4)と;長尺物31fの引き出しを開始した後に長尺物31fの先端が巻回体31rに張り付いた際に、収容箱10に貼付して保管してある引出テープ35を用いて、巻回体31rに張り付いた長尺物31fの先端を巻回体31rから剥離する先端剥離工程(St7〜St9)とを備える。
【0015】
このように構成すると、引出テープを、巻回体に張り付いた長尺物の先端を巻回体から剥離する際のテープとして利用することとなり、別途先端剥離用のテープを用意しなくて済むため、利便性が向上する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、巻回体に張り付いた長尺物の先端を巻回体から剥離する際に用いるテープとして、引出テープの利用を促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態に係るラップ入りカートンの斜視図である。
【図2】ラップ入りカートンの細部を説明する図である。(a)は引出シールの平面図、(b)は保管表示部まわりの部分拡大図、(c)は説明部の拡大図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る長尺物引き出し方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において互いに同一又は相当する部材には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0019】
まず図1を参照して、本発明の実施の形態に係る、巻回体収容箱としてのラップカートン10、及びラップカートン10に巻回体としてのラップロール31rが収容された巻回体入り収容箱としてのラップ入りカートン1を説明する。図1は、ラップ入りカートン1の斜視図である。ラップカートン10は、ラップロール31rを収容する本体部11と、本体部11に連接された蓋部16とを備えている。
【0020】
ラップカートン10に収容されるラップロール31rは、薄膜状の長尺物としてのラップフィルム31fがロール状に巻かれたものである。以下の説明において、ラップロール31rとラップフィルム31fとの外観形状の区別をしない場合は、「ラップ31」と総称する。ラップ31は、本実施の形態では、ポリ塩化ビニリデンが用いられている。ラップフィルム31fは、本実施の形態では、幅が0.3m、長さが20mであるが、他に、幅が0.22mあるいは0.15m等であってもよく、長さは50m等でもよい。ラップフィルム31fの厚さは、本実施の形態では、5〜20μmである。未使用のラップロール31rの先端には、ラップフィルム31fの引き出しを助ける引出テープとしての引出シール35が貼付されている。引出シール35は、裏面に粘着剤が塗布されている。
【0021】
本体部11は、未使用のラップロール31rを収容できる大きさの直方体に対して、細長い面の1つが開口11hとなっている箱である。本体部11の大きさは、収容した未使用のラップロール31rを軸回りに回転させるのを妨げない隙間が形成される一方で、できるだけ小さく形成されている。本体部11は、開口11hと協働して直方体の側面を構成する前板12、底板13、後板14と、直方体の端面を構成する2つの脇板15とを有している。底板13は、開口11hに対向しており、前板12及び後板14は、開口11h及び底板13に直交している。
【0022】
蓋部16は、本体部11の開口11hを塞ぐ部材であり、蓋板17と、掩蓋片18と、側蓋片19とを有している。蓋板17は、開口11hの面と略同じ大きさの矩形平板状部材であり、蓋板17を開口11hに合わせることで本体部11を閉塞した直方体とすることができるようになっている。蓋板17が開口11hの面と略同じ大きさとは、蓋板17が、掩蓋片18の厚さ及び側蓋片19の厚さの分大きい場合を含むことを意味している。蓋板17は、長手方向の一辺が、本体部11の開口11hを形成する一辺であり、かつ、後板14の一辺である蝶番辺10jで連接している。換言すれば、本体部11と蓋板17とは、蝶番辺10jを介して連接している。蓋板17は、蝶番辺10jを回転軸線として、本体部11に対して回動することができるように構成されている。蓋板17は、蝶番辺10jに対向する折曲辺17fが前板12に接する位置と、平面で見て後板14よりも外側となる位置との間を移動することができるようになっている。
【0023】
掩蓋片18は、折曲辺17fを介して蓋板17と直交するように、本体部11側に延びて設けられている。掩蓋片18は、長手方向両端の幅(長方形の前板12の短辺方向の長さ)が、前板12の短辺方向の長さの約1/2で、長手方向中央部の幅が、前板12の短辺方向の長さの約3/4となっており、折曲辺17fに対向する先端辺18pがV字状に形成されている。掩蓋片18の先端辺18pには、ラップフィルム31fを切断するための切断刃18cが取り付けられている。側蓋片19は、蓋板17及び掩蓋片18の両端に合計2つ設けられており、蓋板17及び掩蓋片18の双方に直交して取り付けられている。側蓋片19は、長辺が蓋板17の短辺と同じ長さで、短辺が掩蓋片18の端部と同じ長さの長方形に形成されている。このように構成された蓋部16は、開口11hを閉じたときに、本体部11の開口11hまわりの一部に覆い被さるようになっている。
【0024】
本体部11及び蓋部16は、本実施の形態では、約0.45〜0.7mm厚のコートボール紙が加工されて形成されている。本実施の形態では、説明の便宜上、本体部11と蓋部16とを機能の観点から区別しているが、本体部11及び蓋部16は、1枚の原紙を切り出して組み立てられて一体に形成されている。本体部11及び蓋部16の表面は、消費者の購買意欲を惹起するようなデザインが印刷されたうえで、全体に表面処理が施されている。この表面処理は、好ましくは、引出シール35を貼り付けて剥がしても、引出シール35の粘着力の低下を抑制することができる処理であり、例えば紫外線硬化型ニスの塗布等が挙げられる。
【0025】
蓋部16の掩蓋片18の端の部分には、使用者に引出シール35の貼付を促す引出テープ保管表示部としての保管表示部21が形成されている。保管表示部21は、未使用のラップロール31rの先端に貼り付けられている引出シール35を、ラップ31が使用中に巻き戻って先端がラップロール31rに張り付いて摘みにくくなったときに先端を見つけるのに用いるべく、保管しておくことを勧める表示である。他方、本体部11の前板12の端の部分には、ラップ31が巻き戻ったときの対処法の例を示す説明部23が形成されている。
【0026】
図2(a)に引出シール35の平面図を、図2(b)にラップカートン10の保管表示部21まわりの部分拡大図を、図2(c)に説明部23の拡大図を、それぞれ示す。図2(a)に示すように、引出シール35は、やや細長い長方形の両端を半円弧にした平面形状を有するテープを基に、表面に情報伝達の文字35cが表示され、裏面に粘着剤が塗布されている。引出シール35の表面の文字35が表示されていない一端には、ラップ31の使い始めにラップフィルム31fを引き出す方向を示す矢印35aが表示されている。文字35cは、巻き戻ったラップ31の先端を見つけるのに引出シール35を再利用できる旨の情報を使用者に伝達するべく、本実施の形態では、「この引き出しシールを保管し、もしもラップが巻き戻ってしまった場合にお使いください」と表示している。文字35cは、巻き戻ったラップ31の先端を見つけるために引出シール35を再利用できること使用者に知らせることができるため、引出シール35が捨てられずに保管される確率を向上させることに寄与することとなる。
【0027】
図2(b)に示すように、保管表示部21は、引出シール35の輪郭に相当する破線21bが表示されている。また、保管表示部21には、破線21bに合わせて引出シール35を貼った場合に、引出シール35の矢印35aに対応する位置に矢印21aが、引出シール35の文字35cに対応する位置に文字21cが、それぞれ表示されている。保管表示部21の文字21cは、引出シール35の保管を使用者に促すべく、本実施の形態では「引き出しシールをここに貼って保管し、もしもラップが巻き戻ってしまった場合にご利用ください」と表示している。人間は、保管場所が決まっていないと片付けが進まないのに対して保管場所が決まっていると片付けがはかどるのと同様、保管表示部21によって引出シール35を保管する場所があらかじめ決められていると、引出シール35が保管される確率が向上することが期待される。
【0028】
図2(c)に示す説明部23がさらにラップカートン10に設けられていることで、引出シール35を保管しておくことが好ましい旨の注意喚起を使用者が目にする機会が増え、引出シール35が保管される確率がより向上することが期待される。説明部23には、本実施の形態では、「もしも、ラップが巻き戻ってしまったら... ・セロハンテープなどでラップを軽くたたいてラップの端を見つけてください。(開封時に引き出しシールを捨てずにラップのふた部分に貼り付けてセロハンテープの代わりにご使用になると便利です。) ・清潔なスポンジでラップをこすると切れ端を簡単に見つけることができます。つめ、刃物を使わないでください。」と表示されている。
【0029】
なお、引出シール35の素材としては、合成樹脂・紙等特に限定されないが、ポリプロピレンの延伸フィルムを主原料とし、その表面に無機微細粉末を含有させた合成紙が、耐水性・引裂耐性・印刷特性等において好適である。また、引出シール35に用いる粘着剤としては、アクリル酸エステル共重合樹脂が、粘着・接着の強度低下が少ないので好適である。
【0030】
次に図3を参照して、ラップ入りカートン1からラップフィルム31fを引き出す方法を説明する。図3は、ラップフィルム31fの引き出し方法を説明するフローチャートである。なお、以下の説明において、ラップ入りカートン1の構成に言及しているときは、適宜図1及び図2を参照することとする。未開封のラップ入りカートン1は、掩蓋片18の先端に、先端辺18p上のミシン目(不図示)を介して切取片(不図示)が接続されており、切取片(不図示)は前板12に複数の点で接着されている。ラップ31を初めて使用する際は、切取片(不図示)を、前板12から剥がしつつミシン目(不図示)で切断して掩蓋片18から分離する(St1)。このようにラップカートン10を開封することで、蓋部16が本体部11に対して回動可能な状態となる。
【0031】
ラップカートン10を開封し、蓋部16を開けると、本体部11の中にはラップロール31rが入っている。ラップロール31rには、ラップフィルム31fの先端に引出シール35が貼り付けられている。引出シール35を摘んで引き出すと、引出シール35に貼り付いているラップフィルム31fの先端がラップロール31rから剥離し、容易にラップフィルム31fを引き出すことができる(初期引出工程:St2)。ラップフィルム31fを必要な長さ分引き出し、蓋部16を閉め、掩蓋片18がラップフィルム31fに対して直角に近づく方向にラップカートン10をひねると、切断刃18cの圧がラップフィルム31fに加わってラップフィルム31fが切断される。このとき、ラップロール31r側の先端が前板12と掩蓋片18とに挟まれた状態になっている。その後、切断されたラップフィルム31fに貼り付いている引出シール35をラップフィルム31fから剥がす(引出テープ剥離工程:St3)。なお、引出シール35をラップフィルム31fから剥がす(St3)のは、ラップフィルム31fの切断前に行ってもよい。
【0032】
引出シール35をラップフィルム31fから剥がしたら、引出シール35をラップカートン10の保管表示部21に貼り付けて、引出シール35を保管する(引出テープ保管工程:St4)。このとき、引出シール35に再利用できる旨の文字35cが表示されていることと、ラップカートン10に保管表示部21が形成されていることとの相乗効果により、引出シール35が保管されずに捨てられることを回避して引出シール35が保管される確率を上昇させることができる。その後、ラップ31は、必要なときに必要量が引き出されて切断され、利用される(St5)。なお、ラップフィルム31fを初めて引き出して切断した後は、上述のように、ラップロール31r側の先端が前板12と掩蓋片18とに挟まれた状態になっているので、次にラップ31を引き出そうとして蓋部16を開けると、ラップフィルム31fの先端が、前板12の一部に掛かっている状態となっていてラップロール31rから離れているので、ラップフィルム31fの先端を摘んで容易に引き出すことができる。
【0033】
通常の使用時は、上述のように、ラップ31を引き出す際にラップフィルム31fの先端が前板12の一部に掛かっていてラップロール31rから離れているので、ラップフィルム31fの先端を容易に摘むことができる。しかしながら、何らかの原因で、前板12の一部に掛かっているラップフィルム31fが巻き戻ってしまい、ラップフィルム31fの先端がラップロール31rに貼り付いてしまう場合が生じ得る。ラップフィルム31fの先端がラップロール31rに貼り付くと、ラップフィルム31fの先端を摘むのが困難になる。ラップ31が巻き戻っていなければ(St6でNo)、ラップ31の利用(St5)を継続すればよい。
【0034】
ラップ31が巻き戻っている場合は(St6でYes)、保管表示部21に貼り付けて保管してある引出シール35をラップカートン10から剥がす(St7)。そして、剥がした引出シール35で、その粘着面がラップ31に接するように、ラップロール31rを軽くたたく(St8)。引出シール35でラップロール31rをたたいている最中で引出シール35をラップロール31rから遠ざけたとき、引出シール35が接した場所がラップ31の先端でなければ引出シール35だけがラップロール31rから離れ、引出シール35が接した場所がラップ31の先端であれば引出シール35と共にラップフィルム31fの先端もラップロール31rから離れる。このように、引出シール35を利用して、巻き戻ったラップ31の先端を探すことができる(St9)。なお、工程St7〜工程St9が、先端剥離工程に相当する。
【0035】
引出シール35でラップロール31rをたたいてラップ31の先端が見つからないときは(St9でNo)、引き続き引出シール35でラップロール31rをたたく(St8)。他方、ラップ31の先端が見つかった場合は(St9でYes)、ラップ31の先端を摘んで必要量を引き出し、蓋部16を閉めた後にラップカートン10をひねってラップフィルム31fを切断する。これにより、ラップロール31r側の先端が前板12と掩蓋片18とに挟まれた状態になり、次にラップ31を引き出そうとして蓋部16を開けた際に、ラップフィルム31fの先端が前板12の一部に掛かっていてラップロール31rから離れている状態となる。巻き戻ったラップ31の先端が見つかったら(St9でYes)、再び引出テープ剥離工程(St3)に戻り、以降、上述のフローを繰り返す。
【0036】
以上の説明では、引出テープが、裏面に粘着剤が塗布されている引出シール35であるとしたが、粘着剤が塗布されていなくてもラップフィルム31f及びラップカートン10の表面と接着性を有する材質で形成されたテープであってもよい。ここでの接着性は、少なくとも、ラップフィルム31fを引き出す際の力で剥離せず、ラップカートン10に密着させたときに自重で剥離しない接着性があるとよい。このようなテープとして、例えば酢酸ビニル系の樹脂で形成されたものを用いることとしてもよい。
【0037】
以上の説明では、未使用のラップロール31rの先端に貼付されていた引出シール35をラップカートン10に貼り付けて保管しておき、保管しておいた引出シール35を巻き戻ったラップ31の先端を見つけるのに用いることとしたが、引出シール35とは別のテープである剥離テープをあらかじめ(ラップカートン10の開封前から)ラップカートン10に貼り付けておき、この剥離テープを巻き戻ったラップ31の先端を見つけるのに用いることとしてもよい。剥離テープをあらかじめ備えておくと、ラップ31が巻き戻って先端がラップロール31rに貼り付いた際に、セロハンテープを用意することなく迅速にラップ31の先端を見つける作業に着手することができる。剥離テープは、引出シール35と同じ構成であってもよく、あるいはラップロール31rをたたいてラップ31の先端に接したときにラップフィルム31fの先端がラップロール31rから離れる接着性を持っていれば引出シール35と別の構成であってもよい。剥離テープを引出シール35と同じ構成とすると、同種のテープを兼用できることとなり、生産性が向上することとなる。
【0038】
以上の説明では、保管表示部21が掩蓋片18の表面に形成されていることとしたが、本体部11の前板12、底板13、後板14、脇板15の1箇所以上に形成されていてもよく、あるいは蓋部16の蓋板17及び/又は側蓋片19に形成されていてもよい。あるいは、保管表示部21が蓋部16の裏面に形成されていてもよい。ここで、蓋部16の裏面とは、蓋部16を閉じたときにラップカートン10の内側となる面である。保管表示部21が蓋部16の裏面に形成されていると、ラップフィルム31fから剥がした引出シール35を蓋部16の裏面に貼り付けて保管することが促進され、引出シール35が蓋部16の裏面で保管されることにより、通常使用時に擦れ等で引出シール35がラップカートン10から剥がれ落ちることが低減され、ラップカートン10内のラップ31がなくなるまで引出シール35を保管することができる確率を高めることができる。
【符号の説明】
【0039】
1 ラップ入りカートン
10 ラップカートン
10j 蝶番辺
11 本体部
11h 開口
16 蓋部
21 保管表示部
31f ラップフィルム
31r ラップロール
35 引出シール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面が開口した直方体状に形成された、薄膜状の長尺物が巻かれた巻回体を収容する本体部と;
前記開口の一辺に回動可能に連接され、前記開口を塞ぐ蓋部とを備え;
前記本体部又は前記蓋部に、前記本体部に収容された前記巻回体が初めて引き出される際に前記巻回体の先端部の剥離を助ける引出テープの貼付を促す引出テープ保管表示部が形成された;
巻回体収容箱。
【請求項2】
前記本体部又は前記蓋部に貼付された剥離テープであって、前記引出テープとは別の剥離テープを備える;
請求項1に記載の巻回体収容箱。
【請求項3】
前記引出テープ保管表示部が、前記蓋部の裏面に形成された;
請求項1又は請求項2に記載の巻回体収容箱。
【請求項4】
薄膜状の長尺物が巻かれた巻回体であって、先端部に剥離を助ける引出テープが貼付された巻回体と;
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の巻回体収容箱とを備える;
巻回体入り収容箱。
【請求項5】
蓋部が開閉する直方体状の収容箱に収容された、薄膜状の長尺物が巻かれて先端に剥離を助ける引出テープが貼付された巻回体から、前記長尺物を引き出す方法であって;
前記収容箱を開封して初めて引き出す際に、前記引出テープを摘んで引き出す初期引出工程と;
前記初期引出工程で長尺物を引き出した後に、前記引出テープを前記長尺物から剥がす引出テープ剥離工程と;
前記引出テープ剥離工程で剥がした前記引出テープを、前記収容箱に貼付して保管する引出テープ保管工程と;
前記長尺物の引き出しを開始した後に前記長尺物の先端が前記巻回体に張り付いた際に、前記収容箱に貼付して保管してある前記引出テープを用いて、前記巻回体に張り付いた前記長尺物の先端を前記巻回体から剥離する先端剥離工程とを備える;
長尺物引き出し方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−106751(P2012−106751A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255305(P2010−255305)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(000001100)株式会社クレハ (477)
【Fターム(参考)】