説明

巻回体収容箱及び巻回体入り収容箱

【課題】長尺物を切断する際に長尺物がさらに引き出されることを防ぐことができる巻回体収容箱及び巻回体入り収容箱を提供する。
【解決手段】巻回体収容箱1は、巻回体91rを収容する本体部10と、後板端辺18に回動可能に連接されて開口面10hを覆う蓋部20とを備える。蓋部20は、閉じたときに前板12の一部を覆う掩蓋片22を有する。蓋部20を閉じたときに掩蓋片22に覆われる前板12の部分のうち、引き出された長尺物91fの幅方向の端部に、長尺物91fが付着する付着手段Vが形成されている。而して、引き出された長尺物91fが前板12と掩蓋片22とに挟まれたときに付着手段Vに付着することとなり、切断しようとして長尺物91fの幅方向の端部を引いたときに長尺物91fがさらに引き出されてしまうことを防ぐことができ、適切に切断することができる。巻回体入り収容箱100は、巻回体91rと、巻回体収容箱1とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は巻回体収容箱及び巻回体入り収容箱に関し、特に長尺物を適切に切断することができる巻回体収容箱及び巻回体入り収容箱に関する。
【背景技術】
【0002】
食材や料理あるいは皿などの食器を料理ごと包む食品用ラップフィルムが広く用いられている。食品用ラップフィルムは、典型的には、ロール状に巻かれた長尺のプラスチックフィルム(巻回体)が、長い直方体の容器(収容箱)に収容されており、使用する際には、先端のフィルムをロールから必要量引き出し、容器の蓋に取り付けられている切断刃で切断する。切断刃の構造として、巻回体の軸方向に延びる直線状をなす構造と、巻回体の軸方向における中央が頂点になるV字状をなす構造とが一般に知られている。直線状の切断刃を用いてフィルムを切断する態様では、まず容器から引き出されたフィルムの上記巻回体の軸方向における一端を切断刃の一端に押し当て、次いで引き出されたフィルムを切断刃の歯先から歯根に向けて引き上げることによって、巻回体の軸方向における一端から他端に向けてフィルムが切り開かれる。
【0003】
他方、V字状の切断刃を用いてフィルムを切断する態様では、まず容器から引き出されたフィルムの上記巻回体の軸方向における中心位置を切断刃における巻回体の軸方向の中心位置に押し当て、次いで巻回体の軸に平行な回転軸を中心にして容器(切断刃)を回転させることによって、巻回体の軸方向における中心位置から両端に向けてフィルムが切り開かれることを予定している。ところが、容器を利用する者が切断刃の構造を認知するとは限らず、切断刃の構造を認知した場合であっても、その構造に適した切断方法を適切に選択するとも限らない。例えばV字状の切断刃が設けられた容器において、巻回体の軸方向における一端から他端に向けてフィルムが切断される場合があり得る。
【0004】
V字状の切断刃が設けられた容器において、巻回体の軸方向における一端から他端に向けてフィルムが切断される場合に対応したものとして、ラップフィルムが巻き回されたロールの軸方向に延びるように形成され、軸方向における中心位置が頂点になるV字状になるかたちで複数の歯先が配列された中央部を有し、ロールが収容される包装物供給装置に取り付けられることによりラップフィルムを軸方向で切断可能にする包装容器用の切断刃であって、中央部における軸方向の両端から軸方向の外側に延びる直線状になるかたちで複数の歯先が配列された一対の端部を有し、一対の端部を構成する歯先の軸方向における位置を、同歯先に対応する歯における一対の歯底の中間位置から軸方向の外側とすることで、切断性を損なうことなく切断方法の選択範囲を拡張した切断刃を備えた包装容器がある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−120656号公報(段落0002−0010等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
フィルムを巻回体の軸方向の中央から切断する場合も一端から他端に向けて切断する場合も、切断刃が取り付けられた蓋の、巻回体の軸方向中央部分を押さえて、フィルムが切断刃の歯先から歯根に向けて引き上げられるのが一般的である。フィルムを巻回体の軸方向の一端から他端に向けて切断しようとする場合、巻回体の軸方向中央部分の蓋を押さえてフィルムを引き上げると、蓋の端部にはフィルムを押さえる力が作用していないため、フィルムを切断しようとする力が、フィルムが巻回体から引き出される方向に作用してしまい、適切にフィルムを切断することができないことがあった。
【0007】
本発明は上述の課題に鑑み、長尺物を切断しようとする力によって長尺物がさらに引き出されることを防いで適切に切断することができる巻回体収容箱及び巻回体入り収容箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様に係る巻回体収容箱は、例えば図1に示すように、薄膜状の長尺物91fが巻かれた巻回体91rを収容する直方体状に形成された本体部10であって、巻回体91rが収容されたときに巻回体91rの軸線91aと平行になる4つの長方形面のうちの1つが開口した開口面10hに形成されると共に、開口面10hに直交する2つの長方形面のうちの一方を構成する後板14と、後板14に対向する長方形面を構成する前板12と、を有する本体部10と;後板14の開口面10hと交わる端辺である後板端辺18に、回動可能に連接されて開口面10hを覆う蓋部20であって、蓋部20を閉じたときに前板12の一部を覆う掩蓋片22を有する蓋部20とを備え;掩蓋片22は、前板12の開口面10hと交わる端辺である前板端辺19に沿って、巻回体91rから引き出された長尺物91fを前板12との間で長尺物91fの幅全体にわたって挟むことができる大きさに形成されると共に、引き出された長尺物91fを切断する切断刃23が長尺物91fの幅全体にわたって設けられ;蓋部20を閉じたときに掩蓋片22に覆われる前板12の部分のうち、引き出された長尺物91fの幅方向の端部に、長尺物91fが付着する付着手段Vが形成されている。
【0009】
このように構成すると、引き出された長尺物が前板と掩蓋片とに挟まれたときに付着手段に付着することとなり、長尺物を幅方向の端部から切断しようとして長尺物の幅方向の端部を引いたときに長尺物がさらに引き出されてしまうことを防ぐことができ、適切に切断することができる。
【0010】
また、本発明の第2の態様に係る巻回体収容箱は、例えば図1に示すように、上記本発明の第1の態様に係る巻回体収容箱1において、前板12の、付着手段Vが形成された部分を含む付着手段含有部分12pが、付着手段含有部分12pの周囲12yよりも、本体部10の外側に浮いて形成されている。
【0011】
このように構成すると、蓋部を閉めたときに掩蓋片と前板との間に隙間が生じる場合であっても付着手段含有部分と掩蓋片とで長尺物を挟むことができ、長尺物がさらに引き出されてしまうことを防ぐことができる。
【0012】
また、本発明の第3の態様に係る巻回体収容箱は、例えば図1に示すように、上記本発明の第1の態様又は第2の態様に係る巻回体収容箱1において、付着手段Vが、蓋部20を閉じたときに掩蓋片22に覆われる前板12の部分のうち、引き出された長尺物91fの幅方向の両方の端部に形成(VA、VB)されている。
【0013】
このように構成すると、巻回体収容箱を持つ手と長尺物を摘む手とが、それぞれ左右どちらの場合でも対応することができる。
【0014】
また、本発明の第4の態様に係る巻回体入り収容箱は、例えば図1に示すように、薄膜状の長尺物が巻かれた巻回体91rと;上記本発明の第1の態様乃至第3の態様のいずれか1つの態様に係る巻回体収容箱1とを備える。
【0015】
このように構成すると、長尺物を幅方向の端部から切断する場合も適切に切断することができる巻回体入り収容箱となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、引き出された長尺物が前板と掩蓋片とに挟まれたときに付着手段に付着することとなり、長尺物を幅方向の端部から切断しようとして長尺物の幅方向の端部を引いたときに長尺物がさらに引き出されてしまうことを防ぐことができ、適切に切断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(A)は本発明の実施の形態に係るラップカートンを含むラップ入りカートンの斜視図、(B)は(A)における部分拡大斜視図、(C)は(A)における部分側面断面図である。
【図2】(A)は本発明の実施の形態の変形例に係るラップカートンの部分斜視図、(B)は(A)における部分側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において互いに同一又は相当する部材には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0019】
まず図1を参照して、本発明の実施の形態に係る、巻回体収容箱としてのラップカートン1、及びラップカートン1に巻回体としてのラップロール91rが収容された巻回体入り収容箱としてのラップ入りカートン100を説明する。図1(A)は、ラップ入りカートン100の斜視図、図1(B)は(A)における小片12pAまわりの部分拡大斜視図、図1(C)は(A)における部分側面断面図である。図1(A)は、開蓋状態を示している。ラップロール91rは、薄膜状の長尺物としてのラップフィルム91fが円筒状の巻芯に軸線91aまわりに巻かれてロール状に形成されたものである。以下の説明において、ラップロール91rとラップフィルム91fとの外観形状の区別をしない場合は、「ラップ91」と総称する。ラップフィルム91fは、本実施の形態では、ポリ塩化ビニリデンを原料として厚さが5〜20μmに形成されている。ラップカートン1は、ラップロール91rを収容する本体部10と、本体部10に連接された蓋部20とを備えている。
【0020】
本体部10は、未使用のラップロール91rを収容できる大きさの直方体に対して、細長い面の1つが開口面10hとなっている箱である。本体部10の大きさは、収容した未使用のラップロール91rを軸線91a回りに回転させるのを妨げない隙間が形成される一方で、できるだけ小さく形成されており、本実施の形態では幅44mm、高さ44mm、長さ310mmの大きさに形成されている。本体部10は、開口面10hと協働して直方体の側面を構成する前板12、底板13、後板14と、直方体の端面を構成する2つの脇板15とを有している。底板13は、開口面10hに対向している。前板12及び後板14は、開口面10h及び底板13に直交している。脇板15は、典型的には正方形に形成されているが、縦横の長さが異なる矩形であってもよい。以下の説明においては、水平な面に底板13が載置された状態を基準として、底板13側を下、開口面10h側を上として説明する場合もある。
【0021】
脇板15の上端の中央部分には、3mm程度上方に延びた小片が外側に折り返されて形成された突起15pが設けられている。突起15pは、2つあるそれぞれの脇板15の上端に設けられている。また、本体部10は、前板端辺19で前板12と連続する副板16(図1(C)参照)を有している。前板端辺19は、前板12と開口面10hとが交わる部分の前板12の端辺である。副板16は、前板12と略同じ大きさであるが底板13とは接しておらず、前板12よりも本体部10の内側に設けられている。副板16は、底板13側の端辺が、長手方向に沿って前板12に接着されている。
【0022】
蓋部20は、本体部10の開口面10hを塞ぐ部材である。蓋部20は、蓋板21と、掩蓋片22と、切断刃23と、側蓋片25とを有している。蓋板21は、開口面10hと略同じ大きさの矩形平板状部材であり、蓋板21を開口面10hに合わせることで本体部10を閉塞した直方体とすることができるようになっている。蓋板21が開口面10hと略同じ大きさとは、蓋板21が、掩蓋片22の厚さ及び側蓋片25の厚さの分大きく、蓋部20の開閉を妨げない隙間が形成される程度大きい場合を含むことを意味している。蓋板21は、長手方向の一辺が、本体部10の後板端辺18で連接している。換言すれば、本体部10と蓋板21とは、後板端辺18を介して連接している。後板端辺18は、後板14と開口面10hとが交わる部分の後板14の端辺である。蓋板21は、後板端辺18を回転軸線として、本体部10に対して回動することができるように構成されている。
【0023】
掩蓋片22は、折曲辺21fを介して蓋板21と直交し、蓋部20を閉じたときに底板13に向かって延びるように設けられている。掩蓋片22は、ラップロール91rの軸線91aが延びる方向(以下「軸線方向D」という。)の両端における高さ(長方形の前板12の短辺方向の長さ)が、前板12の短辺方向の長さの約1/2で、軸線方向Dの中央部の高さが、前板12の短辺方向の長さの約3/4となっている。このような構成により、折曲辺21fに対向する先端辺22tがV字状に形成されることとなる。掩蓋片22は、蓋部20が閉じられたときに、前板12に沿って前板12の外側に重なり、前板12の上部を五角形状に覆うこととなる。掩蓋片22は、軸線方向Dの長さが前板12よりも長く構成されており、本体部10に収容されているラップ91の幅よりも長い。これにより、掩蓋片22は、本体部10の中から引き出されたラップフィルム91fを、その幅全体にわたって、前板12との間に挟むことができるように構成されている。掩蓋片22の先端辺22tには、ラップフィルム91fを切断するための切断刃23が取り付けられている。切断刃23は、刃先が先端辺22tから出るように、先端辺22tに沿ってV字状に設けられている。
【0024】
側蓋片25は、蓋板21及び掩蓋片22の双方に直交して設けられている。側蓋片25は、蓋板21(掩蓋片22)の両端に合計2つ設けられている。側蓋片25は、基本形状が、長辺が蓋板21の短辺と同じ長さで、短辺が掩蓋片22の中央部における高さ(V字状の先端から折曲辺21fまでの最短距離)と略同じ長さの長方形に形成されている。この基本形状を基に、側蓋片25は、底板13側の辺と後板14側の辺とが交わる角部が、丸みを帯びている。この角部の丸みは、半径を15〜16mm、中心角を90°とする円弧である。側蓋片25は、掩蓋片22に連接された接合片22jに接着剤で固定されている。側蓋片25の内側には、接合片22jと蓋板21との間に、凹部25dが形成されている。凹部25dには、蓋部20を閉じたときに、脇板15の上端に設けられた突起15pが嵌ることとなる。上述のように構成された蓋部20は、閉じたときに、本体部10の開口10hに覆い被さり、掩蓋片22が前板12の上部を覆うようになっている。
【0025】
本体部10及び蓋部20は、本実施の形態では、約0.45〜0.7mm厚のコートボール紙が加工されて形成されている。本実施の形態では、説明の便宜上、本体部10と蓋部20とを機能の観点から区別しているが、本体部10及び蓋部20は、1枚の原紙を切り出して組み立てられて一体に形成されている。本体部10及び蓋部20の表面は、消費者の購買意欲を惹起するようなデザインが印刷されたうえで、全体に表面処理が施されている。
【0026】
ラップカートン1は、前板12の上部中央に、フラップ12fが形成されている。フラップ12fは、本実施の形態では、軸線方向Dの長さが前板12(以下、単に前板12というときは、フラップ12f等を含めた長方形の前板12全体をいう。)の長さの約1/3、高さ方向の長さが前板12の長さの約1/2に形成されている。フラップ12fは、輪郭が、前板端辺19を概ね3等分する点の一方から、底板13側かつ遠い方の脇板15側に進みつつ、上記概ね3等分する点の他方に至るように、前板12の面内が切断されることで形成されている。フラップ12fの下側の辺は、3つの凸部ができるような波形に形成されている。フラップ12fは、前板端辺19で副板16と連接しており、前板端辺19を回転軸線として回動することができるように構成されている。フラップ12fの概ね図心部分には、保持部12fsが設けられている。保持部12fsは、UVニスが塗布されることで形成されている。保持部12fsを形成するUVニスは、ラップフィルム91fに対して付着するが、紙や埃等は付着しない特性を有している。フラップ12fは、蓋部20を閉じたときに掩蓋片22に覆われて外面に表れない大きさに形成されている。
【0027】
ラップカートン1は、さらに、前板12の上部の軸線方向Dの端部に、小片12pが形成されている。小片12pは、本実施の形態では、フラップ12fを正面に見て左側の小片12pAと、右側の小片12pBとの合計2つが形成されている。2つの小片12pA、12pBは、前板12を軸線方向Dに2等分する仮想直線に対して線対称に形成されている。以下、2つの小片12pA、12pBに共通の構成を説明するときは、単に「小片12p」と総称する。小片12pは、輪郭が、前板端辺19上の点から前板12の面内を通り、出発点から離れた前板端辺19上の点に至り、全体として台形あるいは矩形状となるように、前板12の面内が切断されることで形成されている。小片12pは、前板端辺19で副板16と連接しており、前板端辺19を回転軸線として回動することができるように構成されている。このような構成により、小片12pは、副板16から離れ、本体部10の外側に浮いている。他方、小片12pを除く小片12pのまわりの、フラップ12f以外の前板12の部分である前板主部12yは、副板16に実質的に接している(接していない部分があっても接しているに等しいと評価できる)。小片12pは、前板主部12yよりも、外側に浮いている。
【0028】
小片12pは、本実施の形態では、軸線方向Dの長さが約30mm、高さ方向の長さが約20mmで、脇板15から約10mm離れた位置に形成されており、脇板15に接触せずに離れており、フラップ12fにも接触せずに離れている。小片12pは、蓋部20を閉じたときに掩蓋片22に覆われて外面に表れない位置及び大きさに形成されている。小片12pは、外表面に付着手段Vが形成されている。付着手段Vという表現は、小片12pAの付着手段VAと、小片12pBの付着手段VBとの総称である。付着手段Vは、UVニスが塗布されることで形成されている。付着手段Vを形成するUVニスは、ラップフィルム91fに対して付着するが、紙や埃等は付着しない特性を有している。また、付着手段Vに付着したラップフィルム91fは、付着面に平行な方向(せん断方向)には強く付着するが、付着面から引き離す方向には弱く付着する。つまり、付着手段Vは、ラップフィルム91fが付着面から離れる方向に引かれたときにはラップフィルム91fが容易に剥がれるように構成されている。付着手段Vとして塗布されるUVニスは、典型的には保持部12fsとして塗布されるUVニスと同じものであるが、異なるものであってもよい。本実施の形態では、付着手段Vの面積が小片12pの面積よりも小さく形成されているが、小片12pの表面全体に付着手段Vが形成されていてもよい。このように、小片12pは、付着手段Vを含んでおり、付着手段含有部分を構成する。
【0029】
引き続き図1を参照して、ラップ入りカートン100の作用を説明する。ラップカートン1の作用は、ラップ入りカートン100の作用の一環として説明する。未開封のラップ入りカートン100は、掩蓋片22の先端に、先端辺22t上のミシン目(不図示)を介して切取片(不図示)が接続されており、切取片(不図示)は前板12に複数の点で接着されている。ラップフィルム91fを初めて使用する際は、切取片(不図示)を、前板12から剥がしつつミシン目(不図示)で切断して掩蓋片22から分離する。このようにラップカートン1を開封することで、蓋部20が本体部10に対して後板端辺18まわりに回動可能な状態となる。
【0030】
開封されたラップ入りカートン100は、本体部10の中にラップロール91rが入っている。ラップロール91rには、ラップフィルム91fの先端に引出シール(不図示)が貼り付けられており、引出シール(不図示)を摘んで引き出すことでラップフィルム91fの先端がラップロール91rから剥離し、容易にラップフィルム91fを引き出すことができる。ラップフィルム91fを使用する際は、ラップロール91rからラップフィルム91fを必要な長さ分引き出して切断刃23で切断する。このとき、ラップフィルム91fを必要な長さ分引き出した状態で蓋部20を閉じ、ラップフィルム91fを前板12と掩蓋片22とで挟み、掩蓋片22の図心を親指で押さえ、切断刃23の中央を引き出されたラップフィルム91fに食い込ませるようにラップ入りカートン100を軸線91aまわりにひねると、ラップフィルム91fがよじれることなくきれいに切断することができ、好適である。
【0031】
切断された後に前板12と掩蓋片22との間に挟まれているラップフィルム91fは、保持部12fsに付着しているため、ラップロール91rへの巻き戻りが防止される。また、次回ラップフィルム91fを使用する際に、蓋部20を開けると、フラップ12fが前板主部12yから浮いているので、保持部12fsに付着しているラップフィルム91fの先端も前板主部12yから浮くこととなり、摘みやすい。
【0032】
V字状の切断刃23が設けられたラップカートン1では、上述のように切断刃23の中央(V字の頂点)から両端に向かって切断刃23がラップフィルム91fに接するように切断することを予定している。ところが、切断刃23がV字状であるか否かにかかわらず、切断刃23の一端から他端に向けて切断刃23がラップフィルム91fに接するように切断しようとする使用者もいる。ラップフィルム91fを一端から切断する場合は、一般に、ラップカートン1を持った手とは逆の手の指先でラップフィルム91fの先端を持ち、ラップフィルム91fの切断を始めようとする端が蓋板21の方に引き上げられるように、ラップフィルム91fを持った手を動かす。この動きに伴って、引き出されたラップフィルム91fの幅方向の、切断を始めようとする端は、ラップロール91rからさらに引き出される方向の力が作用する。
【0033】
ラップカートン1を持つ手によって掩蓋片22の中央部はラップフィルム91fを挟んで前板12に接しているが、掩蓋片22の端は、蓋部20を開閉自在にするために前板12との間に隙間を空けている構造のまま、前板12に接していない。そのため、従来のラップカートンでは、ラップフィルム91fの幅方向の端の部分が押さえられないため、ラップフィルム91fを端から切断しようとすると、その端がラップロール91rからさらに引き出されてしまってたるんでしまい、ラップフィルム91fの切断しようとする端に適切な張力が作用せず、きれいに切断することができなかった。しかし、本実施の形態に係るラップカートン1を備えるラップ入りカートン100によれば、前板主部12yから浮いた小片12pが、掩蓋片22との間にラップフィルム91fを挟むと共に、付着手段Vがラップフィルム91fに付着するので、ラップフィルム91fを端から切断しようとする場合でも、その端がラップロール91rからさらに引き出されることが防止される。これにより、ラップフィルム91fの切断しようとする端に適切な張力が作用し、きれいに切断することができる。
【0034】
上述のように、ラップ入りカートン100によれば、ラップフィルム91fを切断刃23の中心から切断する場合も端から切断する場合も、ラップフィルム91fに適切な張力を作用させることができ、ラップフィルム91fを適切に切断することができる。上述の趣旨に鑑み、付着手段Vが形成される端部とは、引き出されたラップフィルム91fをその幅方向の端から切断しようとしてラップフィルム91fの当該端を蓋板21の方に引き上げたときに、ラップフィルム91fの当該端に切断を妨げるほどのたるみを生じさせずに適切な張力を作用させることができる範囲まで中央側に入り込んだ領域を含む概念である。
【0035】
以上の説明では、ラップフィルム91fがポリ塩化ビニリデンを原料として薄膜状に形成されているとしたが、ポリ塩化ビニリデン以外の、例えば、ポリエチレンやポリ塩化ビニル等の通常家庭用ラップで使用される合成樹脂で形成されていてもよい。
【0036】
以上の説明では、付着手段Vが小片12pに形成されているとしたが、小片12pによる前板主部12yからの浮きがなくてもラップフィルム91fの端のたるみを防ぐことができる場合は、小片12pを形成せずに前板主部12yに直接付着手段Vが形成されていてもよい。
【0037】
以上の説明では、付着手段V(及び小片12p)が軸線方向Dの両端に形成されているとしたが、ラップフィルム91fを端から切断する際の方向を決める場合は、切断を始める一方の端にのみ付着手段V(及び小片12p)を形成することとしてもよい。しかしながら、付着手段V(及び小片12p)が軸線方向Dの両端に形成されていると、ラップフィルム91fをどちらの端から切断する場合でもたるみ防止の効果を享受することができ、ラップカートン1を右手で持って切断する人と左手で持って切断する人との両者に対応できるため、好ましい。
【0038】
以上の説明では、付着手段Vが、UVニスが塗布されて形成されているとしたが、粘着剤を塗布する等、UVニス以外の物質で形成されていてもよい。また、付着手段Vは、塗布によって形成されるもののほか、ラップフィルム91fが付着する材質であらかじめ形成されたシート状のラベルを貼付することによって形成されていてもよい。ラップフィルム91fが付着する材質として、ラップフィルム91f自体(ラップフィルム91fと同じ材料で形成されたラベル)、あるいは、ポリ塩化ビニリデン、ポロプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂のうち、ラップカートン1に収容されるラップ91に付着するものが挙げられる。つまり、付着手段Vは、用いられるラップフィルム91f等の長尺物の材質に応じて、当該長尺物には付着しつつ容易に剥がせることができるが埃等の異物は付着しない特性を有している物質で形成されていると好適である。
【0039】
以上の説明では、付着手段含有部分が、前板端辺19を回動軸線として回動することができる小片12pであるとしたが、小片12p以外の構成で前板主部12yよりも外側に浮かせることとしてもよい。
図2(A)は本発明の実施の形態の変形例に係るラップカートン1Aの開蓋状態の部分斜視図、図2(B)はラップカートン1Aの部分側面断面図である。ラップカートン1Aでは、ラップカートン1(図1参照)に設けられていた小片12p(図1参照)に代えて、エンボス加工によって外側に凸になるように形成されたエンボス部12eが設けられている。エンボス部12eは、前板主部12yよりも外側に浮くように形成されている。エンボス部12eの外表面にも、小片12p(図1参照)と同様に、UVニスの塗布やラベルの貼付等によって付着手段Vが形成されている。エンボス部12eは、典型的には、小片12p(図1参照)が設けられていた位置に小片12p(図1参照)と同じ大きさで前板12に形成されているが、ラップフィルム91fを端から切断しようとする場合にその端がラップロール91rからさらに引き出されることが防止されるように掩蓋片22と協働してラップフィルム91fを押さえることができれば、位置及び/又は大きさを適宜変更してもよい。ラップカートン1Aの上記以外の構成は、ラップカートン1(図1参照)と同様である。このように構成されたラップカートン1Aによれば、前板主部12yから浮いたエンボス部12eが、掩蓋片22との間にラップフィルム91fを挟むと共に、付着手段Vがラップフィルム91fに付着するので、ラップフィルム91fを端から切断しようとする場合でも、その端がラップロール91rからさらに引き出されることが防止され、これにより、ラップフィルム91fの切断しようとする端に適切な張力が作用し、きれいに切断することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 ラップカートン
10 本体部
10h 開口面
12 前板
12e エンボス部
12p 小片
12y 前板主部
13 底板
14 後板
15 脇板
18 後板端辺
19 前板端辺
20 蓋部
21 蓋板
22 掩蓋片
23 切断刃
25 側蓋片
91a 軸線
91f ラップフィルム
91r ラップロール
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V UVニス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜状の長尺物が巻かれた巻回体を収容する直方体状に形成された本体部であって、前記巻回体が収容されたときに前記巻回体の軸線と平行になる4つの長方形面のうちの1つが開口した開口面に形成されると共に、前記開口面に直交する2つの前記長方形面のうちの一方を構成する後板と、前記後板に対向する前記長方形面を構成する前板と、を有する本体部と;
前記後板の前記開口面と交わる端辺である後板端辺に、回動可能に連接されて前記開口面を覆う蓋部であって、前記蓋部を閉じたときに前記前板の一部を覆う掩蓋片を有する蓋部とを備え;
前記掩蓋片は、前記前板の前記開口面と交わる端辺である前板端辺に沿って、前記巻回体から引き出された前記長尺物を前記前板との間で前記長尺物の幅全体にわたって挟むことができる大きさに形成されると共に、引き出された前記長尺物を切断する切断刃が前記長尺物の幅全体にわたって設けられ;
前記蓋部を閉じたときに前記掩蓋片に覆われる前記前板の部分のうち、引き出された前記長尺物の幅方向の端部に、前記長尺物が付着する付着手段が形成された;
巻回体収容箱。
【請求項2】
前記前板の、前記付着手段が形成された部分を含む付着手段含有部分が、前記付着手段含有部分の周囲よりも、前記本体部の外側に浮いて形成された;
請求項1に記載の巻回体収容箱。
【請求項3】
前記付着手段が、前記蓋部を閉じたときに前記掩蓋片に覆われる前記前板の部分のうち、引き出された前記長尺物の幅方向の両方の端部に形成された;
請求項1又は請求項2に記載の巻回体収容箱。
【請求項4】
薄膜状の長尺物が巻かれた巻回体と;
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の巻回体収容箱とを備える;
巻回体入り収容箱。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−39954(P2013−39954A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−179223(P2011−179223)
【出願日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(000001100)株式会社クレハ (477)
【Fターム(参考)】