説明

巻回体収容箱及び巻回体入り収容箱

【課題】中央部を把持している感覚を得られつつ折れ曲がりを抑制することができる巻回体収容箱及び巻回体入り収容箱を提供する。
【解決手段】巻回体収容箱1は、巻回体91rを収容する本体部10と、後板端辺18に回動可能に連接されて開口面10hを覆う蓋部20とを備える。天板21、底板13、及び後板14の少なくとも1つに、長方形の面の長手方向Dの中央部分1cに、軸線91aに平行で長方形の面の図心21cを通る仮想直線SLに対して交差するように、線状のエンボス21pが形成されている。而して、エンボス21pが形成された面21の強度を向上させることができて、折れ曲がりを抑制することができる。また、巻回体収容箱1の長手方向中央の部分を握るように巻回体収容箱1の使用者を誘導することができる。巻回体入り収容箱100は、巻回体91rと、巻回体収容箱1とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は巻回体収容箱及び巻回体入り収容箱に関し、特に折れ曲がりを抑制することができる巻回体収容箱及び巻回体入り収容箱に関する。
【背景技術】
【0002】
食材や料理あるいは皿などの食器を料理ごと包む食品用ラップフィルムが広く用いられている。食品用ラップフィルムは、典型的には、ロール状に巻かれた長尺のプラスチックフィルム(巻回体)が、長い直方体の容器(収容箱)に収容されており、使用する際には容器の長手方向中央部を片手で持ち、もう一方の手で先端のフィルムをロールから必要量引き出し、容器の蓋に取り付けられている切断刃で切断する。容器の各面のうちから切断面がどの位置にあるかを、容器を手に持ったときに即座に分かるようにした容器として、ロール状に巻回された包装物の周方向を囲う複数の側面を有した箱体状の容器の、周方向を囲う複数の側面に、切断面に対するそれぞれの位置を示す段差部が、ロール状包装物の軸方向に沿って延びるように設けられているものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−265032号公報(図1−図3等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、容器の側面にロール状包装物の軸方向に沿って延びる段差部を設けると、容器の側面が段差部に沿って折れ曲がってしまうことがあった。
【0005】
本発明は上述の課題に鑑み、収容箱の中央部を把持している感覚を得られつつ折れ曲がりを抑制することができる巻回体収容箱及び巻回体入り収容箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様に係る巻回体収容箱は、例えば図1に示すように、長尺物91fが巻かれた巻回体91rを収容する直方体状に形成された本体部10であって、巻回体91rが収容されたときに巻回体91rの軸線91aと平行になる4つの長方形面のうちの1つが開口した開口面10hに形成されると共に、開口面10hに対向する長方形面を構成する底板13と、開口面10hに直交する2つの長方形面のうちの一方を構成する後板14と、後板14に対向する長方形面を構成する前板12と、4つの長方形面10h、12、13、14に直角で直方体状の端面を構成する脇板15であって長方形面よりも面積が小さい脇板15と、を有する本体部10と;後板14の開口面10hと交わる端辺である後板端辺18に回動可能に連接された蓋部20であって、蓋部20を閉じたときに、開口面10hを覆う長方形に形成された天板21と、天板21に連接されて前板12の一部を覆う掩蓋片22と、天板21に連接されて脇板15の一部を覆う側蓋片25と、を有する蓋部20とを備え;天板21、底板13、及び後板14の少なくとも1つに、長方形の面の長手方向の中央部分1cに、軸線91aに平行で長方形の面の図心21cを通る仮想直線SLに対して交差するように、線状のエンボス21pが形成されている。ここで、中央部分は、巻回体収容箱の長手方向に見て強度の向上が望まれる範囲である。
【0007】
このように構成すると、エンボスが形成された面の強度を向上させることができて、巻回体収容箱を持ったときにエンボスに沿って折れ曲がることを抑制することができる。また、巻回体収容箱の長手方向中央の部分を握るように巻回体収容箱の使用者を誘導することができる。
【0008】
また、本発明の第2の態様に係る巻回体収容箱は、例えば図1に示すように、上記本発明の第1の態様に係る巻回体収容箱1において、中央部分1cが、長方形の面の長手方向に3等分した中央の部分の範囲である。
【0009】
このように構成すると、エンボスが形成された面の強度を適切に向上させることができる。
【0010】
また、本発明の第3の態様に係る巻回体収容箱は、例えば図1に示すように、上記本発明の第1の態様又は第2の態様に係る巻回体収容箱1において、エンボス21pが、長方形の面を長手方向に2等分する仮想分割線SDLを挟むように複数形成されている。
【0011】
このように構成すると、中央の強度をより向上させることができる。
【0012】
また、本発明の第4の態様に係る巻回体収容箱は、例えば図2に示すように、上記本発明の第1の態様乃至第3の態様のいずれか1つの態様に係る巻回体収容箱において、エンボス21pが、軸線91a(例えば図1参照)に直角な方向の長さPVの、軸線91a(例えば図1参照)に平行な方向の長さPHに対する比(PV/PH)が、2以上に形成されている。
【0013】
このように構成すると、巻回体収容箱がエンボスに沿って折れ曲がってしまうことを防ぐことができ、強度の低下をより抑制することができる。
【0014】
また、本発明の第5の態様に係る巻回体収容箱は、例えば図1に示すように、上記本発明の第1の態様乃至第4の態様のいずれか1つの態様に係る巻回体収容箱1において、エンボス21pが天板21に形成されている。
【0015】
このように構成すると、底板及び後板に比べて強度が低下しがちな天板の強度を向上させることができ、巻回体収容箱を持ったときに天板が折れ曲がってしまうことを抑制することができる。
【0016】
また、本発明の第6の態様に係る巻回体入り収容箱は、例えば図1に示すように、長尺物が巻かれた巻回体91rと;上記本発明の第1の態様乃至第5の態様のいずれか1つの態様に係る巻回体収容箱1とを備える。
【0017】
このように構成すると、長方形面の強度が向上した巻回体入り収容箱となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、エンボスが形成された面の強度を向上させることができて、巻回体収容箱を持ったときにエンボスに沿って折れ曲がることを抑制することができる。また、巻回体収容箱の長手方向中央の部分を握るように巻回体収容箱の使用者を誘導することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】(A)は本発明の実施の形態に係るラップカートンを含むラップ入りカートンの斜視図、(B)は本発明の実施の形態に係るラップカートンの平面図である。
【図2】蓋エンボスまわりの蓋板の部分平面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るラップカートンを底板及び後板が表れる方向から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において互いに同一又は相当する部材には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0021】
まず図1を参照して、本発明の実施の形態に係る、巻回体収容箱としてのラップカートン1、及びラップカートン1に巻回体としてのラップロール91rが収容された巻回体入り収容箱としてのラップ入りカートン100を説明する。図1(A)は、ラップ入りカートン100の斜視図、図1(B)はラップカートン1の平面図である。図1(A)は、開蓋状態を示している。ラップロール91rは、薄膜状の長尺物としてのラップフィルム91fが円筒状の巻芯に軸線91aまわりに巻かれてロール状に形成されたものである。以下の説明において、ラップロール91rとラップフィルム91fとの外観形状の区別をしない場合は、「ラップ91」と総称する。ラップフィルム91fは、本実施の形態では、ポリ塩化ビニリデンを原料として厚さが5〜20μmに形成されている。ラップカートン1は、ラップロール91rを収容する本体部10と、本体部10に連接された蓋部20とを備えている。
【0022】
本体部10は、未使用のラップロール91rを収容できる大きさの直方体に対して、細長い面の1つが開口面10hとなっている箱である。本体部10の大きさは、収容した未使用のラップロール91rを軸線91a回りに回転させるのを妨げない隙間が形成される一方で、できるだけ小さく形成されており、本実施の形態では幅44mm、高さ44mm、長さ310mmの大きさに形成されている。本体部10は、開口面10hと協働して直方体の側面を構成する前板12、底板13、後板14と、直方体の端面を構成する2つの脇板15とを有している。底板13は、開口面10hに対向している。前板12及び後板14は、開口面10h及び底板13に直交している。脇板15は、前板12、底板13、後板14の各々よりも面積が小さく、典型的には正方形に形成されているが、縦横の長さが異なる矩形であってもよい。以下の説明においては、水平な面に底板13が載置された状態を基準として、底板13側を下、開口面10h側を上として説明する場合もある。
【0023】
脇板15の上端の中央部分には、3mm程度上方に延びた小片が外側に折り返されて形成された突起15pが設けられている。突起15pは、2つあるそれぞれの脇板15の上端に設けられている。また、本体部10は、前板端辺19で前板12と連続する副板16を有している。前板端辺19は、前板12と開口面10hとが交わる部分の前板12の端辺である。副板16は、前板12と略同じ大きさであるが底板13とは接しておらず、前板12よりも本体部10の内側に設けられている。副板16は、底板13側の端辺が、長手方向に沿って前板12に接着されている。
【0024】
蓋部20は、本体部10の開口面10hを塞ぐ部材である。蓋部20は、天板としての蓋板21と、掩蓋片22と、切断刃23と、側蓋片25とを有している。蓋板21は、開口面10hと略同じ大きさの矩形平板状部材であり、蓋板21を開口面10hに合わせることで本体部10を閉塞した直方体とすることができるようになっている。蓋板21が開口面10hと略同じ大きさとは、蓋板21が、掩蓋片22の厚さ及び側蓋片25の厚さの分大きく、蓋部20の開閉を妨げない隙間が形成される程度大きい場合を含むことを意味している。蓋板21は、長手方向の一辺が、本体部10の後板端辺18で連接している。換言すれば、本体部10と蓋板21とは、後板端辺18を介して連接している。後板端辺18は、後板14と開口面10hとが交わる部分の後板14の端辺である。蓋板21は、後板端辺18を回転軸線として、本体部10に対して回動することができるように構成されている。
【0025】
掩蓋片22は、折曲辺21fを介して蓋板21と直交し、蓋部20を閉じたときに底板13に向かって延びるように設けられている。掩蓋片22は、ラップロール91rの軸線91aが延びる方向(以下「軸線方向D」という。)の両端における高さ(長方形の前板12の短辺方向の長さ)が、前板12の短辺方向の長さの約1/2で、軸線方向Dの中央部の高さが、前板12の短辺方向の長さの約3/4となっている。このような構成により、折曲辺21fに対向する先端辺22tがV字状に形成されることとなる。掩蓋片22は、蓋部20が閉じられたときに、前板12に沿って前板12の外側に重なり、前板12の上部を五角形状に覆うこととなる。掩蓋片22の先端辺22tには、ラップフィルム91fを切断するための切断刃23が取り付けられている。切断刃23は、刃先が先端辺22tから出るように、先端辺22tに沿ってV字状に設けられている。
【0026】
側蓋片25は、蓋板21及び掩蓋片22の双方に直交して設けられている。側蓋片25は、蓋板21(掩蓋片22)の両端に合計2つ設けられている。側蓋片25は、基本形状が、長辺が蓋板21の短辺と同じ長さで、短辺が掩蓋片22の中央部における高さ(V字状の先端から折曲辺21fまでの最短距離)と略同じ長さの長方形に形成されている。この基本形状を基に、側蓋片25は、底板13側の辺と後板14側の辺とが交わる角部が、丸みを帯びている。この角部の丸みは、半径を15〜16mm、中心角を90°とする円弧である。側蓋片25は、掩蓋片22に連接された接合片22jに接着剤で固定されている。側蓋片25の内側には、接合片22jと蓋板21との間に、凹部25dが形成されている。凹部25dには、蓋部20を閉じたときに、脇板15の上端に設けられた突起15pが嵌ることとなる。上述のように構成された蓋部20は、閉じたときに、本体部10の開口10hに覆い被さり、掩蓋片22が前板12の上部を覆うようになっている。
【0027】
本体部10及び蓋部20は、本実施の形態では、約0.45〜0.7mm厚のコートボール紙が加工されて形成されている。本実施の形態では、説明の便宜上、本体部10と蓋部20とを機能の観点から区別しているが、本体部10及び蓋部20は、1枚の原紙を切り出して組み立てられて一体に形成されている。本体部10及び蓋部20の表面は、消費者の購買意欲を惹起するようなデザインが印刷されたうえで、全体に表面処理が施されている。
【0028】
ラップカートン1は、前板12の上部中央に、フラップ12fが形成されている。フラップ12fは、本実施の形態では、軸線方向Dの長さが前板12(以下、単に前板12というときは、フラップ12f等を含めた長方形の前板12全体をいう。)の長さの約1/3、高さ方向の長さが前板12の長さの約1/2に形成されている。フラップ12fは、輪郭が、前板端辺19を概ね3等分する点の一方から、底板13側かつ遠い方の脇板15側に進みつつ、上記概ね3等分する点の他方に至るように、前板12の面内が切断されることで形成されている。フラップ12fの下側の辺は、3つの凸部ができるような波形に形成されている。フラップ12fは、前板端辺19で副板16と連接しており、前板端辺19を回転軸線として回動することができるように構成されている。フラップ12fの概ね図心部分には、保持部12fsが設けられている。保持部12fsは、UVニスが塗布されることで形成されている。保持部12fsを形成するUVニスは、ラップフィルム91fに対して付着するが、紙や埃等は付着しない特性を有している。フラップ12fは、蓋部20を閉じたときに掩蓋片22に覆われて外面に表れない大きさに形成されている。
【0029】
ラップカートン1は、さらに、蓋板21に、線状のエンボスとしての蓋エンボス21pが形成されている。蓋エンボス21pは、仮想直線SLに対して交差する向きに形成されている。仮想直線SLは、軸線方向Dに平行で蓋板21の図心21cを通る仮想の直線である。蓋エンボス21pは、本実施の形態では、仮想分割線SDLを挟んで、片方に2本ずつ、合計4本が形成されている。仮想分割線SDLは、仮想直線SLに直交して図心21cを通る仮想の直線であり、蓋板21を長手方向に2等分する直線でもある。2本ずつの蓋エンボス21pは、仮想分割線SDLを軸として、線対称に形成されている。4本の蓋エンボス21pは、軸線方向Dの中程の中央部分としての中央エリア1cの中に形成されている。中央エリア1cは、軸線方向Dに見てラップカートン1の強度の向上が望まれる範囲であり、ラップカートン1の軸線方向Dの全長が長いほど広くするとよく、また、ラップカートン1の使用者によって通常把持されることが予想される範囲とすることが好ましく、切断刃23がV字状に設けられている本実施の形態では、ラップカートン1を軸線方向Dに3等分したエリアのうちの真ん中の部分としている。
【0030】
ここで図2を参照して、蓋エンボス21pのさらに詳しい構成を説明する。図2は、蓋エンボス21pまわりの蓋板21の部分平面図である。1本あたりの蓋エンボス21pは、軸線方向Dに離れた2つの輪郭線21pC、21pCの間の距離が、概ね2.5mmとなっている。蓋エンボス21pは、輪郭線21pCを境界として、2つの輪郭線21pC、21pCの間の部分が本体部10の外側に凸になるように、エンボス加工が施されている。蓋エンボス21pの長手方向の両端は、輪郭線が形成されておらず滑らかに蓋板21に合流している。蓋エンボス21pは、軸線方向Dに直交する方向の長さが、同方向における蓋板21の長さの0.3〜0.7倍程度であることが好ましいところ、本実施の形態では0.4倍に形成されている。
【0031】
また、蓋エンボス21pは、仮想分割線SDLと脇板15(図1参照)との間で見て、掩蓋片22側から後板14側に進むにつれて脇板15に近づくように傾いている。蓋エンボス21pの傾きは、蓋板21が軸線方向Dに直交する方向に反るように折れ曲がるのを抑制する観点から、軸線方向Dに直交する成分の長さである直交長さPVの、軸線方向Dに平行な成分の長さである平行長さPHに対する比(PV/PH)を、2以上とするとよく、本実施の形態では概ね3.6としている。蓋エンボス21pは、軸線方向Dに対して直角に延びていてもよい。さらに本実施の形態では、蓋エンボス21pが、仮想分割線SDL側に盛り上がるように曲線状に形成されており、その曲線は半径45mmの円弧に形成されている。
【0032】
蓋エンボス21pは、後板14側の端部で見て、仮想分割線SDLに隣接するものが仮想分割線SDLから概ね15mm(蓋板21の短辺の長さの概ね1/3)離れており、脇板15側のものが隣接するものから概ね15mm離れて形成されている。本実施の形態では、線対称のものを同形と見ると、4本の蓋エンボス21pのそれぞれが、同じ形状になっている。蓋エンボス21pは、軸線方向Dを横にして蓋板21を平面に見たときに縦方向に延びているため、これを縦エンボスと表現することもある。なお、蓋エンボス21pの形状は、上述の例に限らず、例えば曲がりのない直線状としてもよく、軸線方向Dに直交する方向に対して傾きがなくてもよい。
【0033】
次に図3を参照して、底板13及び後板14の態様について説明する。図3は、ラップカートン1の底板13及び後板14が表れる方向から見た斜視図である。底板13には、軸線方向Dに平行に延びる底エンボス13eが、本体部10の内側に凸となる(外側は凹んでいる)ように2本形成されている。後板14には、軸線方向Dに平行に延びる後エンボス14eが、本体部の外側に凸となるように2本形成されている。底エンボス13e及び後エンボス14eは、共に、中央エリア1cに形成されているが、軸線方向Dに平行であるため縦エンボスではない。以下、軸線方向Dに平行に延びるエンボスを横エンボスということもある。底板13及び後板14は、共に、四方が比較的強固な面に連接されているために曲がりやたわみが比較的少ないので、本実施の形態では比較的製造が容易な横エンボスを形成することとしている。底エンボス13eの長さは、後エンボス14eの長さよりも長く形成されている。
【0034】
引き続き図1乃至図3を参照して、ラップ入りカートン100の作用を説明する。ラップカートン1の作用は、ラップ入りカートン100の作用の一環として説明する。未開封のラップ入りカートン100は、掩蓋片22の先端に、先端辺22t上のミシン目(不図示)を介して切取片(不図示)が接続されており、切取片(不図示)は前板12に複数の点で接着されている。ラップフィルム91fを初めて使用する際は、切取片(不図示)を、前板12から剥がしつつミシン目(不図示)で切断して掩蓋片22から分離する。このようにラップカートン1を開封することで、蓋部20が本体部10に対して後板端辺18まわりに回動可能な状態となる。
【0035】
開封されたラップ入りカートン100は、本体部10の中にラップロール91rが入っている。ラップロール91rには、ラップフィルム91fの先端に引出シール(不図示)が貼り付けられており、引出シール(不図示)を摘んで引き出すことでラップフィルム91fの先端がラップロール91rから剥離し、容易にラップフィルム91fを引き出すことができる。ラップフィルム91fを使用する際は、ラップカートン1を片手で持ち、もう一方の手でラップフィルム91fの先端を摘み、ラップロール91rからラップフィルム91fを必要な長さ分引き出して切断刃23で切断する。このとき、ラップフィルム91fを必要な長さ分引き出した状態で蓋部20を閉じ、ラップフィルム91fを前板12と掩蓋片22とで挟み、掩蓋片22の図心を親指で押さえ、切断刃23の中央を引き出されたラップフィルム91fに食い込ませるようにラップ入りカートン100を軸線91aまわりにひねると、ラップフィルム91fがよじれることなくきれいに切断することができ、好適である。
【0036】
上述の好ましい態様でラップフィルム91fを切断するには、ラップカートン1の中央エリア1cを持つのが好適であるところ、ラップカートン1は蓋板21、底板13、及び後板14の各中央エリア1cに、それぞれ、蓋エンボス21p、底エンボス13e、後エンボス14eが形成されているので、ラップカートン1を握る際は中央エリア1cを握るように使用者を誘導することができる。なお、底板13及び後板14は、上述のように、共に、四方が比較的強固な面に連接されている。これに対し、蓋板21は、後板端辺18の反対側で掩蓋片22に連接しているが、掩蓋片22は先端辺22tがラップカートン1の使用時には自由端となっているため外力によって変形しやすく、変形しやすい掩蓋片22に連接されている蓋板21も、底板13及び後板14に比べて外力によって変形しやすくなっている。この点、ラップカートン1では、蓋板21に縦エンボスである蓋エンボス21pが形成されているので、上述の好ましい態様でラップフィルム91fを切断する際に最も荷重が掛かる中央エリア1cにおける、この荷重に対する抗力(曲がりを抑制する力)が横エンボスを形成した場合よりも大きくなり、ラップカートン1の損傷(へこみ等)を抑制することができる。
【0037】
切断された後に前板12と掩蓋片22との間に挟まれているラップフィルム91fは、保持部12fsに付着しているため、ラップロール91rへの巻き戻りが防止される。また、次回ラップフィルム91fを使用する際に、蓋部20を開けると、フラップ12fが前板12から浮いているので、保持部12fsに付着しているラップフィルム91fの先端も前板12から浮くこととなり、摘みやすい。
【0038】
以上の説明では、中央エリア1cが、ラップカートン1を軸線方向Dに3等分したエリアのうちの真ん中の部分であるとしたが、この範囲に限らず、ラップカートンの使用者によって通常把持されることが予想される範囲を考慮して決定するとよい。例えば、切断刃が、V字状ではなく、軸線方向Dに平行に延びる直線状に形成されている場合、一般に切断刃の端からラップフィルム91fを切断するため、V字状の場合に比べて軸線方向Dの端部寄りを把持する場合が多く、使用者によって把持されるエリアが比較的広くなるため、ラップカートン1を軸線方向Dに4等分したエリアのうちの真ん中の2区分を中央エリア1cとすることが好ましい。
【0039】
以上の説明では、縦エンボス(蓋エンボス21p)が4本形成されているとしたが、4本に限らず、ラップカートン1の軸線方向Dの長さや中央エリア1cの面積等に応じて、2本、5本、6本、8本等、適切な本数を形成するとよい。
【0040】
以上の説明では、蓋板21に形成されている蓋エンボス21pが縦エンボスであり、底板13及び後板14に形成されている底エンボス13e及び後エンボス14eが横エンボスであるとしたが、縦エンボスは、蓋板21、底板13及び後板14の少なくとも1つの中央部分に形成されていればよく、縦エンボスが形成されていない面には、横エンボスを形成してもよく、エンボスが形成されていないフラットな面のままとしてもよい。しかしながら、蓋板21に縦エンボスが形成されていると、ラップカートン1を持ったときに荷重が蓋板21に掛かる場合に、この荷重に対する抗力(曲がりを抑制する力)を発揮する強度が得られるため、好適である。また、中央エリア1cの外側の両方の端エリア1a、1bには、滑り止めの効果を奏する段差部を適宜形成してもよい。段差部は、典型的にはエンボスで形成され、縦エンボスと同様に仮想直線SLに対して交差する形態であってもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 ラップカートン
1c 中央エリア
10 本体部
10h 開口面
12 前板
13 底板
14 後板
15 脇板
18 後板端辺
20 蓋部
21 蓋板
21c 図心
21p 蓋エンボス
22 掩蓋片
25 側蓋片
91a 軸線
91f ラップフィルム
91r ラップロール
100 ラップ入りカートン
SL 仮想直線
SDL 仮想分割線
PV 直交長さ
PH 平行長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺物が巻かれた巻回体を収容する直方体状に形成された本体部であって、前記巻回体が収容されたときに前記巻回体の軸線と平行になる4つの長方形面のうちの1つが開口した開口面に形成されると共に、前記開口面に対向する前記長方形面を構成する底板と、前記開口面に直交する2つの前記長方形面のうちの一方を構成する後板と、前記後板に対向する前記長方形面を構成する前板と、前記4つの長方形面に直角で前記直方体状の端面を構成する脇板であって前記長方形面よりも面積が小さい脇板と、を有する本体部と;
前記後板の前記開口面と交わる端辺である後板端辺に回動可能に連接された蓋部であって、前記蓋部を閉じたときに、前記開口面を覆う長方形に形成された天板と、前記天板に連接されて前記前板の一部を覆う掩蓋片と、前記天板に連接されて前記脇板の一部を覆う側蓋片と、を有する蓋部とを備え;
前記天板、前記底板、及び前記後板の少なくとも1つに、長方形の面の長手方向の中央部分に、前記軸線に平行で前記長方形の面の図心を通る仮想直線に対して交差するように、線状のエンボスが形成された;
巻回体収容箱。
【請求項2】
前記中央部分が、前記長方形の面の長手方向に3等分した中央の部分の範囲である;
請求項1に記載の巻回体収容箱。
【請求項3】
前記エンボスが、前記長方形の面を長手方向に2等分する仮想分割線を挟むように複数形成された;
請求項1又は請求項2に記載の巻回体収容箱。
【請求項4】
前記エンボスが、前記軸線に直角な方向の長さの、前記軸線に平行な方向の長さに対する比が、2以上に形成された;
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の巻回体収容箱。
【請求項5】
前記エンボスが、前記天板に形成された;
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の巻回体収容箱。
【請求項6】
長尺物が巻かれた巻回体と;
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の巻回体収容箱とを備える;
巻回体入り収容箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−39966(P2013−39966A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−179816(P2011−179816)
【出願日】平成23年8月19日(2011.8.19)
【出願人】(000001100)株式会社クレハ (477)
【Fターム(参考)】