説明

巻回物を固定する方法

電気機器の線材巻線を有する巻回物を含浸組成物で固定する方法であって、
a)組成物を塗布することによって、前記巻回物に含浸させる工程であって、組成物は、
(A)OH、NHR、SH、カルボキシレート、およびCH酸性基からなる群から選択される求核基を有する少なくとも1種の樹脂5〜95重量%、好ましくは5〜60重量%と、
(B)少なくとも1種のアミド基含有樹脂0〜70重量%、好ましくは1〜50重量%と、
(C)少なくとも1種の有機溶媒および/または水0〜95重量%、場合によっては0.1〜40重量%と
を含み、
ここで成分(A)および/または成分(B)の樹脂は、α−カルボキシ−β−オキソシクロアルキルカルボン酸アミド基を含み、重量%は、コーティング組成物の全重量に基づく、工程と、
b)塗布した含浸組成物を硬化する工程と
を含む方法。
本発明による方法は、巻回物に優れた接着特性、ならびに優れた収縮および浸入をもたらす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻回物への浸入特性が優れた、電気機器中の巻回物、特に線材巻線を固定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回転子、固定子、または変圧器などの電気機器は、しばしば金属コアからなり、その周りに箔または電線材料、例えば銅箔または銅線が巻かれている。現在では、これら三次元コンポーネント中の巻線を固定し、かつその機能を維持するために、巻回物にラジカル重合性化合物を含浸させ、次いで硬化させる。硬化は、オーブン中100℃を超える温度で熱を加えることによって、または誘導加熱によって実現される。
【0003】
含浸樹脂または含浸剤と呼ばれるラジカル重合性化合物は、例えばスチレンまたはヘキサンジオールジアクリレートなど、不飽和の芳香族または脂肪族ラジカル重合性モノマーに溶解する例えば不飽和ポリエステル樹脂を含有する。こうしたモノマーは、非常に高い蒸気圧を有することが多く、したがってその大部分は熱硬化中に逃散する。これによって、環境問題が生じる。スチレンを含有する材料は、例えば不快臭および比較的高い毒性を有する。したがって、例えばその後燃焼により廃棄することが必要である。
【0004】
含浸後、導電性巻線に電流を流すことによって、硬化に必要な熱を生成できることが知られている。
【0005】
例えば、独国特許出願公開第4022235号明細書および米国特許第5,466,492号明細書に開示されているように、被覆された電気巻回物を、熱と高エネルギー放射線、例えば紫外線の組合せで硬化させることも知られている。
【0006】
防食用コーティングを製造するのにα−カルボキシ−β−シクロペンタン酸エチルとの反応生成物をベースとする反応性系が知られている。独国特許出願公開第10260299号明細書および独国特許出願公開第10260269号明細書を参照のこと。国際公開第2007/019434号パンフレットには、エナメル塗りの速さを上げるための特定の樹脂をベースとする電線コーティング組成物が開示されている。ポリオール/イソシアネート系も、電気巻回物の含浸に使用することができる。当業者に周知の2成分(2K)ポリオール/イソシアネート材料が知られている。しかし、ブロックイソシアネートは、健康に危険な望ましくない低分子生成物放出のため、および非常に低い含浸性のため使用可能でない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、電気機器の線材巻線を有する巻回物(wound item)を含浸組成物で固定(fix)する方法であって、
a)組成物を塗布(apply)することによって、前記巻回物に含浸させる工程であって、
(A)OH、NHR、SH、カルボキシレート、およびCH酸性基からなる群から選択される求核基を有する少なくとも1種の樹脂5〜95重量%、好ましくは5〜60重量%と、
(B)少なくとも1種のアミド基含有樹脂0〜70重量%、好ましくは1〜50重量%と、
(C)少なくとも1種の有機溶媒および/または水0〜95重量%、場合によっては0.1〜40重量%と
を含み、
ここで成分(A)および/または成分(B)の樹脂は、α−カルボキシ−β−オキソシクロアルキルカルボン酸アミド基を含み、重量%は、コーティング組成物の全重量に基づく、工程と、
b)塗布した含浸組成物を硬化する工程と
を含む方法を提供する。
【0008】
本発明による方法は、巻回物に優れた接着特性、ならびに優れた収縮および巻回物への優れた浸入をもたらす。本発明の方法において、含浸組成物を1成分(1K)材料として、健康に危険な低分子生成物を放出することなく使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の特徴および利点は、当業者が以下の詳細な説明を読むことによってさらに容易に理解されよう。明確にするため別々の実施形態の文脈に上述および後述された本発明のいくつかの特徴が、組み合わされて単一の実施形態に記載されることもあり得ることを理解されたい。逆に、簡潔にするため単一の実施形態の文脈に記載された本発明の様々な特徴が、別々にまたは任意の副次的な組合せで記載されることもあり得る。さらに、単数形の言葉は、文脈にそうでないことが具体的に記載されていない限り、複数形も包含することができる(例えば、「a」および「an」は、1つ、または1つもしくは複数を意味することができる)。
【0010】
記載された範囲の上下にあるわずかなばらつきを使用して、その範囲内の値と実質的に同じ結果を実現することができる。また、これらの範囲の開示は、最小値と最大値の間のあらゆる値を包含する連続した範囲として意図されている。
【0011】
本方法は、浸漬含浸、フローコーティング、真空含浸、真空圧含浸、または滴下含浸(trickle impregnation)によって、巻回物に含浸させること、含浸させた巻回物を、熱硬化と同時にまたはその後に高エネルギー放射線でさらに硬化させることを特徴とする。
【0012】
塗布前、または好ましくは塗布後に、巻回物に電流を流すことによって、高温を生成することが可能である。このように、含浸すると直ちに架橋が開始される。含浸剤は巻線(コイル)内に固定され、もはや流れ出ることはない。
【0013】
浸入が良好になるようにするために、このように含浸させる対象物を、電流または別の熱源、例えばオーブンによりもたらされた熱の発生によって予熱することが好ましい場合がある。熱の発生は、含浸中、好ましくは含浸前に進行してもよい。しかし、温度は、良好なフローが起こり得るように選択されるべきである。非常に低粘度の材料が使用される場合、ゲル化が起こることさえあり得る。このように、巻回物からの滴下および流去が回避される。これによって、材料損失が低減し、基材に形成される欠陥、例えば空隙が低減する。
【0014】
本発明によれば、巻回物への良好な浸入を実現するために含浸樹脂を加熱することも可能である。
【0015】
含浸した後、含浸樹脂を硬化するために対象物を加熱する。架橋(硬化)のための熱は、巻線に電流を流すことによって生成することができる。しかし、オーブンまたは赤外(IR)もしくは近赤外(NIR)線を使用することも可能である。硬化反応の残りは、熱処理によって進行する。この熱処理は、オンラインまたは連続的に行われてもよく、温度(対象物温度)は、例えば約80°〜180℃の範囲であり、反応時間は、硬化対象の系に応じて異なるが、例えば1分〜180分である。NIR線の場合、硬化時間は、より短く、例えば1分未満であってもよい。温度は、例えば単に流す電流の量によって制御することができる。固体の部分は加熱されず、したがってエネルギー消費は低いままである。
【0016】
本発明による含浸組成物は、水系または溶媒系コーティング組成物として塗布することが可能である。
【0017】
本発明の含浸組成物は、下記の成分
(A)OH、NHR、SH、カルボキシレート、およびCH酸性基からなる群から選択される求核基を有する少なくとも1種の樹脂5〜95重量%、好ましくは5〜60重量%と、
(B)少なくとも1種のアミド基含有樹脂0〜70重量%、好ましくは1〜50重量%と、
(C)少なくとも1種の有機溶媒および/または水0〜95重量%、場合によっては0.1〜40重量%と
を含み、
成分(A)および/または成分(B)の樹脂は、α−カルボキシ−β−オキソシクロアルキルカルボン酸アミド基を含み、重量%は、含浸組成物の全重量に基づく。
【0018】
成分A)として、電気巻回物用の含浸材料として当業者に知られているラジカル重合性化合物を、5〜95重量%、好ましくは5〜60重量%の範囲(重量%は含浸組成物の全重量に基づく)で使用してもよい。
【0019】
ラジカル重合性化合物の例は、例えば欧州特許出願公開第0643467号明細書に記載されているように、例えばアクリル酸やメタクリル酸のエステルなど、1つまたは複数のオレフィン性二重結合を有する、モノマー、オリゴマー、ポリマー、コポリマー、またはそれらの組合せをベースとした通例の放射線硬化性、特にUV硬化性の化合物、および1つまたは複数のビニルまたはアリル二重結合を有する化合物である。
【0020】
本発明に特に適しているラジカル重合性化合物は、例えば欧州特許出願公開第0134513号明細書に記載されているように、反応性希釈剤としてオレフィン性不飽和ポリエステルおよびオレフィン性不飽和モノマーを含有するものである。
【0021】
成分A)として、次の樹脂、例えばポリエステル、さらにヘテロ環式含窒素環を有するポリエステル、例えばイミドおよびヒダントインおよびベンゾイミダゾール構造が縮合して分子となったポリエステルも使用することができる。ポリエステルは、具体的には多塩基性の脂肪族、芳香族、および/または脂環式のカルボン酸ならびにその無水物、多価アルコール、ならびにイミドを含むポリエステルの場合はポリエステルアミノ基を含む化合物、および場合によっては所定量の単官能性化合物、例えば1価アルコールの縮合生成物である。飽和ポリエステルイミドは、好ましくはジオールに加えて、ポリオール、および追加のジカルボン酸成分としてジアミノジフェニルメタンとトリメリト酸無水物(trimelletic acid anhydride)の反応生成物を含有することもできるテレフタル酸ポリエステルをベースとする。さらに、不飽和ポリエステル樹脂および/またはポリエステルイミド、ならびにポリアクリレートを使用することもできる。成分Aとして、下記:芳香族、脂肪族および芳香族−脂肪族のポリアミド、例えば熱可塑性ポリアミド、さらに例えばトリメリト酸無水物とジイソシアナト−ジフェニルメタンから生成されたタイプのポリアミドイミドも使用することができる。
【0022】
成分B)の樹脂は、0〜70重量%、好ましくは1〜50重量%の範囲(重量%は含浸組成物の全重量に基づく)で使用することができる。成分B)の樹脂は、α−カルボキシ−β−オキソシクロアルキルカルボン酸アミド基を含むことができる。α−カルボキシ−β−オキソシクロアルキルカルボン酸アミド基は、好ましくは末端部位に組み込まれている。上記のα−カルボキシ基は、好ましくはアルキル−またはアリール−エステル化されている。一方、このタイプのα−カルボキシ−β−オキソシクロアルキルカルボン酸アミドは、反応するカルボン酸、またはカルボン酸ハロゲン化物、カルボン酸無水物基など、その反応性誘導体から、アミン基との反応によって生成することができる。アミンとカルボン酸からの合成中にジシクロヘキシルカルボジイミドなどのアミド化補助剤を使用することも好都合である。α−カルボキシ−β−オキソシクロアルキルカルボン酸は、例えば塩基性条件下におけるハロギ酸エステルとの反応、およびその後の選択的ケン化によって得ることができる。1−カルボキシ−2−オキソシクロアルカンは、例えば1,n−カルボン酸ジエステルから、アルコール開裂を伴う塩基との反応によって合成して得ることができる。一方、前記α−カルボキシ−β−オキソシクロアルキルカルボン酸アミドは、塩基性条件下における前記1−カルボキシ−2−オキソシクロアルカンとイソシアネートとの反応によって生成することもできる。前記1−カルボキシ−2−オキソシクロアルカンは、例えばグルタル酸ジアルキルエステル、グルタル酸ジアリールエステル、アジピン酸ジアルキルエステル、アジピン酸ジアリールエステル、ピメリン酸ジアルキルエステル、ピメリン酸ジアリールエステル、オクタン二酸ジアルキルエステル、オクタン二酸ジアリールエステル、ならびにアルキル−、アリール−、アルコキシ−、アリールオキシ−、アルキルカルボキシ−、アリールカルボキシ−、ハロゲン−、およびその他のその置換誘導体、特に好ましくはアジピン酸ジメチルおよびエチルエステルから得ることができる。
【0023】
上記のイソシアネートは、例えばプロピレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、エチルエチレンジイソシアネート、3,3,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−シクロペンチルジイソシアネート、1,4−シクロヘキシルジイソシアネート、1,2−シクロヘキシルジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,5−トルイレンジイソシアネート、2,6−トルイレンジイソシアネート、4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、1,4−ナフチレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート;アニリン、ホルムアルデヒド、およびCOCl2の反応に由来し、>2個の官能基を有する多核イソシアネート;4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリイソシアナトノナン、またはこれらのイソシアネートから作製されたオリゴマーおよびポリマー(例えば、ウレトジオン、イソシアヌレートなど)とすることができる。
【0024】
例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,3−プロパンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリトリトール、および他のジオール、トリオール、テトラオール、ポリオール、あるいはアミノアルコール、ジアミン、トリアミン、およびポリアミンとの反応によって得ることができる前記イソシアネートから得られた過剰のウレタンまたはウレアを使用することもできる。
【0025】
アミド化に使用される上記のアミンは、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどの脂肪族第一級ジアミン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミンなどの脂環式ジアミン、あるいはトリアミンとすることができ、第二級アミンを使用することも可能である。アミンは、ジアミノジフェニルメタン、フェニレンジアミン;>2個の可能基を有する多核芳香族アミン、トルイレンジアミン、または対応する誘導体などの芳香族アミンとすることもできる。分子中に別の官能基を有するアミン、例えばモノエタノールアミンおよび/またはモノプロパノールアミンなどのアミノアルコール、あるいはグリシン、アミノプロパン酸、アミノカプロン酸、またはアミノ安息香酸などのアミノ酸、およびそのエステルを使用することも可能である。
【0026】
α−カルボキシ−β−オキソシクロアルキルカルボン酸アミド基を、成分(A)に直接組み込むこともできる。これは、例えば成分(A)の樹脂とジ−またはポリイソシアネートおよび少なくとも1つのカルボキシ−β−オキソシクロアルカンの反応によって実現することができる。
【0027】
成分C)として、組成物は、水および/またはブタノール、アセテートなど、当技術分野で周知である1種もしくは複数の低揮発性有機溶媒を0〜95重量%、場合によっては0.1〜40重量%、好ましくは0〜40重量%の範囲(重量%は含浸組成物の全重量に基づく)で含有することができる。
【0028】
当業者によって知られている通常の添加剤および補助剤、例えば増量剤、可塑化成分、促進剤、例えば金属塩、置換アミン、安定化剤、消泡剤、およびフローコントロール剤、さらにチタン酸テトラブチル、チタン酸イソプロピル、チタン酸クレゾール、それらの多量体の形、ジラウリン酸ジブチルスズなど、触媒を、本方法の含浸組成物中で使用することができる。
【0029】
コーティング組成物は、成分(J)として、例えばSiO2、Al23、TiO2、Cr23をベースとする顔料および/または充填剤、例えば二酸化チタンやカーボンブラックなど、カラー付与無機および/または有機顔料、ならびに金属フレーク顔料および/または真珠光沢顔料など、エフェクト顔料を含有してもよい。
【0030】
通常の添加剤および補助剤、ならびに顔料および/または充填剤は、組成物中で、当業者に知られている範囲、例えば0〜40重量%、好ましくは0.1〜30重量%の範囲(重量%は含浸組成物の全重量に基づく)で使用することができる。
【0031】
被覆用組成物は、さらにモノマーおよび/またはポリマーの元素−有機化合物を含有することができる。ポリマーの有機−元素化合物の例としては、例えば独国特許出願公開第198 41 977号(A)明細書に記載されているタイプの無機−有機ハイブリッドポリマーが挙げられる。モノマーの有機−元素化合物の例としては、ノニル、セチル、ステアリル、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、アセチルアセトン、アセト酢酸エステル、テトライソプロピル、クレジル、テトラブチルチタネートおよびジルコネートなどのオルト−チタン酸エステルおよび/またはオルト−ジルコン酸エステル、チタニウムテトララクタート、ハフニウムおよびケイ素化合物、例えばハフニウムテトラブトキシドおよびケイ酸テトラエチル、ならびに/または様々なシリコーン樹脂が挙げられる。このタイプの追加のポリマーおよび/またはモノマーの有機−元素化合物を、例えば0〜70重量%の含有量(重量%は含浸組成物の全重量に基づく)で含むことができる。
【0032】
本発明による組成物は、当業者に知られているように、単に個々の成分を一緒に混合するだけで生成することができる。例えば、成分A)の樹脂と水を混合することによって樹脂分散液を生成することが可能である。次いで、別の成分を、例えば撹拌しながら添加して、安定な分散液または溶液を生成するが、熱および分散化剤を投入してもよい。樹脂と有機溶媒の混合物を生成することも可能である。次いで、別の成分を、例えば撹拌することによって添加する。
【0033】
本発明の方法に従う塗布を、次のように進めることができる:
浸漬含浸:このプロセスでは、被含浸物を、例えば予備試験によって求められた時間、含浸樹脂に浸漬し、または連続プロセスでは、含浸樹脂に通して引き抜く。
【0034】
フローコーティング:この場合、被含浸物を含浸容器に入れ、次いで含浸剤を充填して、基材を充満させる。
【0035】
真空含浸および真空圧含浸:このプロセスを使用するとき、被含浸物を、まず真空容器中で真空にし、所望の真空が実現すると、含浸剤を貯蔵容器から真空容器に移送し、次いで加圧して、基材に塗布してもよい。
【0036】
滴下含浸:このプロセスは、回転子を含浸するとき好ましい。この場合、対象物を含浸剤に浸漬せず、ノズルを使用して、重合性化合物を基材に塗布する。基材を、塗布時に例えば回転させてもよい。
【0037】
本発明による組成物は、複数の応用分野で使用することができる。これらは、巻き基材、特に回転子、固定子、もしくは変圧器のような電気装置中のマグネットワイヤのような巻き線材、または電気分野における金属箔コイル、またはガラス繊維、プラスチック繊維もしくはプラスチック箔をベースとする巻き基材などの巻回物の固定に特に有用であり、布地の含浸にも使用することができる。
【実施例】
【0038】
実施例1
従来技術の含浸組成物の塗布
以下の市販含浸組成物を使用する:
実施例1.1:2Kポリウレタン常温硬化性充填剤入り注型用樹脂(Voltatex(登録商標)CE12)
実施例1.2:1K不飽和ポリエステル含浸樹脂(Voltatex(登録商標)4012)
実施例1.1の材料を、10:2の比でジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)をベースとする市販のオリゴマー硬化剤と混合する。混合物を室温で24時間硬化し、その後80℃で5時間硬化する。
実施例1.2の材料を150℃で1時間硬化する。
【0039】
実施例2
本発明の含浸組成物の塗布
メチレンジフェニルジイソシアネートのオリゴマー誘導体と2−オキソ−シクロペンチルカルボン酸エチルエステルの付加物100部をヒマシ油200部と混合し、次いでSiO2をベースとする無機充填剤130部を混合物中に分散し、添加剤パッケージ4部および硬化触媒4部を添加する。この組成物を150℃で1時間硬化する。
【0040】
結果
以下の調査用の試験片は、実施例1.1、1.2、および2の材料を、上記の実施例に記載する硬化パラメータに従ってアルミニウム蓋(直径5cm)において硬化することによって作製する。硬化した材料をアルミニウム蓋から取り外す能力を調査することによって、蓋への接着性を測定する。ショアーD硬度をDIN EN ISO 868によって測定する。収縮をISO 3521によって測定する。
結果を表1に示す。
【0041】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻回物を含浸組成物で固定する方法であって、
a)組成物を塗布することによって、前記巻回物に含浸させる工程であって、組成物は、
(A)OH、NHR、SH、カルボキシレート、およびCH酸性基からなる群から選択される求核基を有する少なくとも1種の樹脂5〜95重量%と、
(B)少なくとも1種のアミド基含有樹脂0〜70重量%と、
(C)少なくとも1種の有機溶媒および/または水0〜95重量%と、
を含み、
ここで成分(A)および/または成分(B)の樹脂は、α−カルボキシ−β−オキソシクロアルキルカルボン酸アミド基を含み、重量%は、コーティング組成物の全重量に基づく、工程と、
b)塗布した含浸組成物を硬化する工程と
を含む方法。
【請求項2】
塗布される組成物が、
(A)OH、NHR、SH、カルボキシレート、およびCH酸性基からなる群から選択される求核基を有する少なくとも1種の樹脂5〜60重量%と、
(B)少なくとも1種のアミド基含有樹脂1〜50重量%と、
(C)少なくとも1種の有機溶媒および/または水0〜40重量%と
を含み、
成分(A)および/または成分(B)の樹脂は、α−カルボキシ−β−オキソシクロアルキルカルボン酸アミド基を含み、重量%は、コーティング組成物の全重量に基づく、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
巻回物の含浸が、浸漬含浸、フローコーティング、真空含浸、真空圧含浸、または滴下含浸によって行われる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
含浸させた巻回物の硬化が、熱硬化と同時にまたはその後に高エネルギー放射線によって行われる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
塗布前または塗布後に、電流を巻回物に流すことによって、高温を生成する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
巻回物の予熱が、電流またはオーブンによりもたらされる熱の発生によって行われる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
反応性希釈剤としてオレフィン性不飽和ポリエステルおよびオレフィン性不飽和モノマー、ならびに/またはイミド、ヒダントイン、および/もしくはベンゾイミダゾール構造が縮合して分子となったポリエステルが、成分A)として使用される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
末端の位置に組み込まれているα−カルボキシ−β−オキソシクロアルキルカルボン酸アミド基を含有する樹脂が、成分B)として使用される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法で固定された巻回物。

【公表番号】特表2011−510482(P2011−510482A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−539728(P2010−539728)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【国際出願番号】PCT/US2008/087122
【国際公開番号】WO2009/079542
【国際公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】