説明

巻糸機のボビンチャック装置

【課題】簡易な構成にして、ボビンを簡単かつ確実にチャック及び解除することができる巻糸機のボビンチャック装置を提供する。
【解決手段】ボビンチャック装置1は、回転軸2の外周に設けられ、径方向に回動可能なチャックピース3と、回転軸2が挿着され、チャックピース3の位置に対応する開口部41を有し、軸方向に移動可能なスリーブ部材4とを備え、スリーブ部材4の軸方向への移動によって開口部41の内径端部41aがチャックピース3を押すことにより、チャックピース3が外径方向に回動して開口部41において突出し、ボビンBの内壁面を押圧することによりボビンBをチャックする一方、スリーブ部材4の逆軸方向への移動によって開口部41の内径端部41aがチャックピース3を逆方向に押すことにより、チャックピース3が内径方向に回動して開口部41において引っ込み、ボビンBのチャックを解除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボビンホルダにボビンが装着され、ボビンホルダの回転軸が回転することによりボビンに糸条部材を巻き取る巻糸機のボビンチャック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
巻糸機は、ボビンホルダにボビンが装着され、ボビンホルダの回転軸が回転することによりボビンに糸条部材を巻き取っている。このような巻糸機におけるボビンは、通常、駆動モータによって回転するボビンホルダに着脱可能に形成された円筒部材であり、このボビンが巻き取りの最中にボビンホルダから外れないようにするため、ボビンホルダ側に設けられたボビンチャック装置によってボビンは固定(チャック)される。また、ボビンチャック装置による固定が解除されれば、ボビンホルダからボビンを外すことができる。
【0003】
上記のようなボビンチャック装置は、従来から知られており、例えば、下記特許文献1に開示されている。
【0004】
この特許文献1のボビンチャック装置においては、ボビンホルダが挿着される(挿入された状態に設けられる)複数のスペーサリング間に間隔が可変に保持部材が連結され、スペーサリングにおける軸方向への移動によって径方向に回動しながら倒立可能なチャックピースを保持部材で保持し、チャックピースを倒れる方向に回動させるよう付勢する弾性軸がチャックピースに設けられている。
【0005】
上記の構成によって、スペーサリングが軸方向の間隔を縮める方向に移動した場合、チャックピースがスペーサリングに押されることによって回動しながら起立状態を形成して、チャックピースの外周がボビンの内周を把持するとともに、チャックピースの内周がボビンホルダの外周を把持する。また、スペーサリングが軸方向の間隔を広げる方向に移動した場合、チャックピースがスペーサリングから解放され、チャックピースの回転軸である弾性軸の付勢力により、チャックピースが回動しながら横倒状態を形成して、チャックピースがボビンの内周及びボビンホルダの外周から離れる。このようにして、ボビンのチャック及び解除している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平6−73038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のボビンチャック装置は、ボビンホルダの軸方向にスペーサリングと保持部材とを交互に連結させており、スペーサリングにおける軸方向への移動を連鎖的に順次伝わるようして、チャックピースを起立状態あるいは横倒状態にしている。従って、ボビンチャック装置としての構成が複雑であるため製造コストが高いといった問題があった。また、部品点数も多いため不具合の生じる可能性が高かった。
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、簡易な構成にして、ボビンを簡単かつ確実にチャック及び解除することができるボビンチャック装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る巻糸機のボビンチャック装置は、ボビンホルダにボビンが装着され、ボビンホルダの回転軸が回転することによりボビンに糸条部材を巻き取る。この巻糸機のボビンチャック装置は、回転軸の外周に設けられ、径方向に回動可能なチャックピースと、回転軸が挿着され、チャックピースの位置に対応する開口部を有し、軸方向に移動可能なスリーブ部材とを備えており、スリーブ部材の軸方向への移動によって開口部の内径端部がチャックピースを押すことにより、チャックピースが外径方向に回動して開口部において突出し、ボビンの内壁面を押圧することによりボビンをチャックする一方、スリーブ部材の逆軸方向への移動によって開口部の内径端部がチャックピースを逆方向に押すことにより、チャックピースが内径方向に回動して開口部において引っ込み、ボビンのチャックを解除することを特徴とする。
【0010】
これによれば、スリーブ部材の軸方向への移動によって開口部の内径端部がチャックピースを押すことにより、チャックピースが外径方向に回動して開口部において突出し、ボビンの内壁面を押圧することによりボビンをチャックしている。一方、スリーブ部材の逆軸方向への移動によって開口部の内径端部がチャックピースを逆方向に押すことにより、チャックピースが内径方向に回動して開口部において引っ込み、ボビンのチャックを解除している。このことより、回動することによってボビンをチャック及び解除するチャックピースには、起立状態あるいは横倒状態させるための複雑な構成を設ける必要がなくなる。従って、簡易な構成にして、ボビンを簡単かつ確実にチャック及び解除することができる。
【0011】
また、弾性力によりスリーブ部材を軸方向に移動させる弾性部材を備え、弾性部材の弾性力によってスリーブ部材が軸方向に移動することにより、チャックピースが外径方向に回動するのが好ましい。これによれば、スリーブ部材における軸方向への移動を弾性部材の弾性力によって行うため、ボビンを容易にチャックすることができる。
【0012】
また、押圧力によりスリーブ部材を逆軸方向に移動させるエアシリンダを備え、エアシリンダの押圧力によってスリーブ部材が逆軸方向に移動することにより、チャックピースが内径方向に回動するのが好ましい。これによれば、スリーブ部材における逆軸方向への移動をエアシリンダの押圧力によって行うため、ボビンのチャックを容易に解除することができる。
【0013】
また、スリーブ部材に連結され、エアシリンダの押圧力により揺動する揺動部材を備え、エアシリンダの押圧力によって揺動部材が揺動することにより、スリーブ部材が逆軸方向に移動するのが好ましい。これによれば、所望のタイミングでエアシリンダを作動させることにより、揺動部材を介してスリーブ部材を逆軸方向に移動させることができる。
【0014】
また、チャックピースは、突出の際に押されるための第1ピース部と、引っ込みの際に押されるための第2ピース部とを備え、スリーブ部材の軸方向への移動によって開口部の内径端部がチャックピースの第1ピース部を押すことにより、チャックピースが外径方向に回動して開口部において突出し、ボビンの内壁面を押圧することによりボビンをチャックする一方、スリーブ部材の逆軸方向への移動によって開口部の内径端部がチャックピースの第2ピース部を逆方向に押すことにより、チャックピースが内径方向に回動して開口部において引っ込み、ボビンのチャックを解除するのが好ましい。これによれば、突出する際には第1突出部が開口部の内径端部で押されるようにし、また、引っ込む際には第2突出部が開口部の内径端部で押されるようにしたため、開口部の内径端部からの力を適切に受けられ、チャックピースを確実に回動させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、スリーブ部材の軸方向への移動によって開口部の内径端部がチャックピースを押すことにより、チャックピースが外径方向に回動して開口部において突出し、ボビンの内壁面を押圧することによりボビンをチャックする一方、スリーブ部材の逆軸方向への移動によって開口部の内径端部がチャックピースを逆方向に押すことにより、チャックピースが内径方向に回動して開口部において引っ込み、ボビンのチャックを解除する。
【0016】
このことにより、回動することによってボビンをチャック及び解除するチャックピースには、起立状態あるいは横倒状態させるための複雑な構成を設ける必要がなくなる。従って、簡易な構成にして、ボビンを簡単かつ確実にチャック及び解除することができる。
【0017】
このため、ボビンの取り替えにかかる作業性が向上し、巻糸機における巻き取りが高効率化される。また、ボビンが確実にチャックされているため、巻き取りを行っている際の安全性も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】ボビンチャック装置を備えたボビンホルダを示す斜視図である。
【図2】図1に示すII−IIの線矢視図である。
【図3】ボビンチャック装置の要部を示し、(a)チャックピースが外径方向に回動している場合の断面図と、(b)チャックピースが内径方向に回動している場合の断面図とである。
【図4】揺動機構を示す平面図である。
【図5】ボビンチャック装置を備えたボビンホルダの各状態を示し、(a)ボビンチャックした状態を示す断面図と、(b)ボビンチャックを解除した状態を示す断面図とである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明に係る巻糸機のボビンチャック装置の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。この実施形態における巻糸機のボビンチャック装置(以下「本装置」という)1は、ボビンホルダ10にボビン100が装着され、ボビンホルダ10の回転軸2が回転することによりボビン100に糸条部材を巻き取る巻糸機のボビンホルダ10に適用される。本装置1が適用されるボビンホルダ10は、図1に示すように、フランジFを境界とした部位Aが図示略の巻糸機本体における内部で保持されるとともに、部位Bが巻糸機本体における外部に突出するように保持されている。このボビンホルダ10においては、巻糸機本体の内部で保持される駆動モータによってボビンホルダ10における回転軸2が回転し、ボビンホルダ10が挿着されるボビン100に糸条部材が巻き取られる。以下の説明では、ボビンホルダ10を説明するとともに本装置1の構成及び作用を説明する。なお、図1中に示すように、ボビンホルダ10において、部位Aが位置する側の端部を「基端部」、部位Bが位置する側の端部を「先端部」として説明する。
【0020】
ボビンホルダ10は、図2に示すように、水平方向に設けられた回転軸2と、回転軸2の外周に所定の間隔で設けられた複数のチャックピース3と、回転軸2が挿着され、チャックピース3の設けられる位置に対応する開口部41を有するスリーブ部材4と、部位Bにおける基端部側においてスリーブ部材4と連結された揺動機構6とを備える。また、本装置1は、上記した構成のうち、チャックピース3と、スリーブ部材4と、揺動機構6とを備えてなる。
【0021】
前記回転軸2は、部位Aから部位Bまでを貫くように設けられた回転軸部材であり、駆動モータによって水平な状態を維持したまま回転する。この回転軸2が回転することにより、ボビンホルダ10が挿着するボビン100に糸条部材が巻き取られていく。
【0022】
前記チャックピース3は、部位Bにおける回転軸2の外周に均等に配設されている。具体的に、チャックピース3は、回転軸2の軸方向に等間隔で4箇所に設けられており、また、回転軸2の周方向に対しては90°毎に設けられている。すなわち、合計で16個のチャックピース3が回転軸2の外周に配置されている。なお、各所に設けられたチャックピース3はいずれも同様の構成を有しているため、以下では、1つのチャックピース3に注目して説明する。
【0023】
チャックピース3は、図3(a)及び図3(b)に示すように、角部に丸み帯びた長円状の第1ピース部31と、第1ピース部31の中間部に直交する態様で設けられた第2ピース部32とを備えている。
【0024】
前記第1ピース部31は、回転軸2側の一方端部にチャックピース回動軸31aを有している。このチャックピース回動軸31aは、回転軸2に設けられた固定部材21によって、回転軸2の外周における接線方向(図3(a)及び図3(b)においては表面から裏面への方向)に平行に設けられている。従って、このチャックピース回動軸31aを中心にして、第1ピース部31は図3(a)及び図3(b)中の矢印で示す方向に回動可能であるため、チャックピース3全体として回動可能である。ここで、例えば、図3(a)に示すように、第1ピース部31が先端部側に回動している状態(横倒状態)にある場合において、チャックピース3に対し先端部側から後述のスリーブ部材4が移動してくると、スリーブ部材4によって第1ピース部31が押される。これにより、チャックピース3はチャックピース回動軸31aを中心に外径方向に回動し、第1ピース部31が起立状態となる(図3(b)の状態)。なお、ここにいう「外径方向」とは、第1ピース部31が起立状態になるために回動する方向のことである。
【0025】
前記第2ピース部32は、第1ピース部31が横倒状態から起立状態になるために回動する側に直交する態様で設けられている。すなわち、この実施形態において、第2ピース部32は、第1ピース部31における基端部側に設けられている。従って、例えば、図3(b)に示すように、第1ピース部31が起立状態にある場合において、チャックピース3に対し上記とは逆方向(基端部側から先端部側)にスリーブ部材4が移動してくると、第1ピース部31よりも先行して第2ピース部32が逆方向に押される。これにより、チャックピース3はチャックピース回動軸31aを中心に内径方向に回動し、第1ピース部31が横倒状態になる(図3(a)の状態)。なお、ここにいう「内径方向」とは、第1ピース部31が横倒状態になるために回動する方向のことである。
【0026】
前記スリーブ部材4は、図2に示すように、回転軸2を挿着させる一体構造の略円筒状部材であり、部位Bにおけるボビンホルダ10の外形を形成している。また、スリーブ部材4は、回転軸2における先端部側と基端部側との両方に向かって移動可能であり、回転軸2とともに回転する。なお、以下において、スリーブ部材4の移動において、先端部側から基端部側への移動のことを「軸方向への移動」といい、基端部側から先端部側への移動のことを「逆軸方向への移動」という。
【0027】
スリーブ部材4は、チャックピース3の各々に対応した位置に開口部41を有している。この開口部41は、図3(a)及び図3(b)に示すように、内径端部41aにおいて、チャックピース3の第1ピース部31及び第2ピース部32と当接し得るように形成されている。従って、上記したように、スリーブ部材4が軸方向に移動する場合、チャックピース3を開口部41の内径端部41aに当接させた状態で外径方向に回動させる。また、スリーブ部材4が逆軸方向に移動する場合、チャックピース3を開口部41の内径端部41aに当接させた状態で内径方向に回動させる。従って、スリーブ部材4の移動により、チャックピース3を確実に回動させることができる。
【0028】
ここで、図3(a)及び図3(b)に示すように、開口部41の上端から回転軸2までの高さをH、第1ピース部31が起立状態となった場合におけるチャックピース3の回転軸2からの最高点の高さをH1、第1ピース部31が横倒状態となった場合におけるチャックピース3の回転軸2からの最高点の高さをH2とする場合、H2<H<H1という関係を満たすよう、チャックピース3及びスリーブ部材4は構成されている。
【0029】
ここにおいて、第1ピース部31が起立状態になった際にH<H1を満たすことは、第1ピース部31がボビンホルダ10の外形を形成しているスリーブ部材4の開口部41において突出することである。従って、ボビンホルダ10としての径を大きくすることとなる。このことにより、第1ピース部31がボビンホルダ10に装着されたボビン100の内壁面を押圧し、結果としてボビン100がチャックされることとなる。
【0030】
一方、第1ピース部31が横倒状態になった際にH2<Hを満たすことは、第1ピース部31が開口部41において引っ込むことである。従って、第1ピース部31により大きくなっていたボビンホルダ10の径を、スリーブ部材3が形成する外形まで小さくくすることとなる。このことにより、第1ピース部31がボビンホルダ10に装着されていたボビン100の内壁面を押圧しなくなり、結果としてボビン100のチャックが解除されることとなる。
【0031】
また、このスリーブ部材4は、図2に示すように、ボビンホルダ10の先端部分42a及び中間部分42bの外径が他の部分の径より径大に形成されており、これに伴って先端部分42a及び中間部分42bの内径も径大となるよう形成されている。このスリーブ部材4においては、第1バネ部材51aがスリーブ部材4の先端部分42aの内部に、また、第2バネ部材51bがスリーブ部材4の中間部分42bの内部に設けられている。
【0032】
まず、第1バネ部材51aに着目すると、回転軸2が挿通され、一方端が回転軸2の先端側において径方向に突設された係止部材43aに当接しており、他方端がスリーブ部材4の先端部分42aの径が小さくなっている付勢面44aと当接している。従って、第1バネ部材51aは、スリーブ部材4が先端部側にある場合、回転軸2に固定された係止部材43aにより、回転軸2の軸方向に弾性変形して弾性力を保持することができるとともに、保持した弾性力を付勢面44aに与えることにより付勢して、スリーブ部材4を軸方向に移動させる。
【0033】
また、第2バネ部材51bも同様、回転軸2が挿通され、一方端が回転軸2の径方向に突設された係止部材43bに当接しており、他方端がスリーブ部材4の中間部分42bの径が小さくなっている付勢面44bと当接している。従って、第2バネ部材51bは、スリーブ部材4が先端部側にある場合、回転軸2に固定された係止部材43bにより、回転軸2の軸方向に弾性変形して弾性力を保持することができるとともに、保持した弾性力を付勢面44bに与えることにより付勢して、スリーブ部材4を軸方向に移動させる。
【0034】
このようにして、スリーブ部材4を軸方向に移動させる2つの第1バネ部材51a、第2バネ部材51bが設けられることにより、スリーブ部材4に大きな力を与えて、スリーブ部材4を軸方向に容易に移動させることが可能となる。
【0035】
前記揺動機構6は、図1に示すように、部位Bにおける基端部側に設けられている。この揺動機構6は、スリーブ部材4と当接しないように上下から挟むように設けられた上側揺動部材61a及び下側揺動部材61bと、両揺動部材61a、61bが接し合う部分の一方端を固定するとともに、両揺動部材61a、61bを揺動させるための軸をなす揺動軸部62と、スリーブ部材4を隔てて揺動軸部62とは反対側において両揺動部材61a、61b同士が接し合う部分を接続する接続部63と、両揺動部材61a、61bとスリーブ部材4とを連結させる連結部64と、接続部63に接続されるエアシリンダ65とを備えている。
【0036】
前記上側揺動部材61a及び下側揺動部材61bは、いずれも略半円形状の部材であり、上下から対で挟むように合わせることによって環形状を形成している。
【0037】
前記揺動軸部62は、上側揺動部材61a及び下側揺動部材61b同士が接し合う一方側に設けられ、両揺動部材61a、61bが移動しないよう固定している。また、この揺動軸部62は、図4に示すように、スリーブ部材4の近傍においてスリーブ部材4の移動方向に直交する方向に揺動軸621を有している。この揺動軸621により、揺動軸部62は、両揺動部材61a、61b同士が相対的に移動しないよう固定しながら、図4に示す矢印の方向(軸方向)に、両揺動部材61a、61bを揺動させる。
【0038】
前記接続部63は、両揺動部材61a、61b同士が相対的に移動しないよう固定しており、かつ、回転軸2の軸方向に移動可能である。従って、両揺動部材61a、61bは、環形状を維持したまま、スリーブ部材4に当接することなく、揺動軸部62によって揺動することができる。
【0039】
前記連結部64は、図1及び図4に示すように、上側揺動部材61a及び下側揺動部材61bの中間部において回転軸2側に向けて設けられた連結棒641と、図2に示すように、連結棒641に接続されるとともに、スリーブ部材4における基端部側の端部45bと軸方向において当接するように設けられた連結筒642とを備える。連結部64においては、両揺動部材61a、61bが揺動することに伴って連結棒641が先端部側に移動することにより、連結棒641に接続されている連結筒642がスリーブ部材4の基端部側の端部45bを先端側に押し動かす。これにより、スリーブ部材4が逆軸方向に移動する。
【0040】
前記エアシリンダ65は、図示略の空気供給装置などから空気の供給を受けることにより、接続部63を回転軸2の先端部側の方向に移動させるための押圧力を保持する。エアシリンダ65が保持した押圧力によって接続部63が先端部側に移動すると、両揺動部材61a、61bが揺動軸621を中心に揺動する。これに伴って、連結部64を介してスリーブ部材4を逆軸方向に移動させる。なお、ここにおいて、エアシリンダ65が保持する押圧力は、第1バネ部材51a及び第2バネ部材51bの付勢力より大きい。
【0041】
このことより、揺動機構6においては、空気を供給することによりエアシリンダ65に押圧力を保持させ、この押圧力により接続部63を軸方向の先端側に移動させる。これにより、両揺動部材61a、61bが揺動軸621を中心に揺動し、その揺動に伴って連結棒641が連結筒642を回転軸2の先端側に移動させる。このため、連結筒642に当設するスリーブ部材4の端部45bが先端部側に押し動かされるため、スリーブ部材4を逆軸方向に移動させることができる。また、所望のタイミングでエアシリンダ65に空気の供給をすれば、第1バネ部材51a及び第2バネ部材51bの弾性力に抗する押圧力によってスリーブ部材4を逆軸方向に移動させることが可能になるため、ボビン100の巻き取り状況に応じて、ボビン100のチャックを容易に解除することが可能となる。
【0042】
次に、本装置1の使用方向について説明する。以下の説明においては、ボビン100がボビンホルダ10に装着されていない段階から説明する。エアシリンダ65には空気が供給されており、スリーブ部材4には先端部側に押圧力が作用しているため、スリーブ部材4は先端部側に予め移動している。従って、チャックピース3は、開口部41において引っ込んでいる状態(図3(a)の状態)である。
【0043】
まず、ボビン100をチャックする場合について説明する。はじめに、ボビンホルダ10にボビン100が装着される。このとき、スリーブ部材4における開口部41からはチャックピース3が突出していないため、スムーズに装着される。
【0044】
次に、エアシリンダ65への空気の供給を停止する。これにより、エアシリンダ65の押圧力が喪失され、スリーブ部材4は、内部に収容する第1バネ部材51a及び第2バネ部材51bが保持していた弾性力により押されて、軸方向に移動する。
【0045】
このスリーブ部材4における軸方向への移動により、チャックピース3の第1ピース部31が開口部41の内径端部41aに押される。このことより、チャックピース3が外径方向に回動して、第1ピース部31が起立状態となる。従って、チャックピース3の第1ピース部31は、開口部41において突出して、ボビン100の内壁面を押圧し、図5(a)に示すように、ボビン100がチャックされる。
【0046】
次に、ボビン100のチャックを解除する場合について説明する。ボビン100がチャックされた状態において、エアシリンダ65に空気が供給される。これにより、エアシリンダ65は押圧力を保持し、この押圧力により揺動機構6の接続部63が先端部側に移動し、連結部64を介してスリーブ部材4は逆軸方向に移動する。
【0047】
このスリーブ部材4における逆軸方向への移動により、チャックピース3の第2ピース部32が開口部41の内径端部41aに上記とは逆方向に押される。このことより、チャックピース3が内径方向に回動して、第1ピース部31が横倒状態となる。従って、チャックピース3の第1ピース部31は、開口部41において引っ込み、ボビン100の内壁面を押圧しなくなり、図5(b)に示すように、ボビン100のチャックが解除される。
【0048】
以上より、スリーブ部材4の軸方向への移動によって開口部41の内径端部41aがチャックピース3の第1ピース部31を押すことにより、チャックピース3が外径方向に回動してチャックピース3の第1ピース部31が開口部41において突出し、ボビン100の内壁面を押圧することにより、ボビン100をチャックすることができる。一方、スリーブ部材4の逆軸方向への移動によって開口部41の内径端部41aがチャックピース3の第2ピース部32を逆方向に押すことにより、チャックピース3が内径方向に回動してチャックピース3の第1ピース部31が開口部41において引っ込み、ボビン100のチャックを解除することができる。
【0049】
このことにより、ボビン100をチャック及び解除するチャックピース3には、起立状態あるいは横倒状態させるための複雑な構成を設ける必要がなくなる。従って、簡易な構成にして、ボビン100を簡単かつ確実にチャック及び解除することができる。このため、ボビン100の代替にかかる作業性、巻糸機としての動作の安全性、及び巻き取りにおける効率を向上させることが可能になる。
【0050】
なお、上記の実施形態において、スリーブ部材4は一体構造である場合について説明したが、一体構造でなくてもよく、複数の部品から構成されるようにしてもよい。
【0051】
また、スリーブ部材4は略円筒形状である場合について説明したが、任意の形状であってもよい。
【0052】
また、チャックピース3は、突出の際に押されるための第1ピース部31と、引っ込みの際に押されるための第2ピース部32とを備える場合について説明したが、スリーブ部材4における開口部41に内径端部41aに押されて回動すれば任意の形状であってもよい。
【0053】
また、チャックピース3は回転軸2の外周に均等に配設されている場合について説明したが、適宜配設されるようにしてもよい。
【0054】
また、第1バネ部材51a及び第2バネ部材51bの2つを設ける場合について説明したが、弾性部材は1つでもよいし、3つ以上でもよい。また、バネ部材以外の任意の弾性部材でもよい。
【0055】
また、スリーブ部材4が軸方向に移動することによりチャックピース3が外径方向に回動してボビン100をチャックする一方、スリーブ部材4が逆軸方向に移動することによりチャックピース3が内径方向に回動して、ボビン100のチャックを解除する場合について説明した。しかしながら、逆に、スリーブ部材4が逆軸方向に移動することによりチャックピース3が内径方向に回動してボビン100をチャックする一方、スリーブ部材4が軸方向に移動することによりチャックピース3が外径方向に回動して、ボビン100のチャックを解除するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0056】
1…ボビンチャック装置
2…回転軸
3…チャックピース
31…第1ピース部
32…第2ピース部
4…スリーブ部材
41…開口部
41a…内径端部
51a…第1バネ部材
51b…第2バネ部材
6…揺動機構
10…ボビンホルダ
100…ボビン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボビンホルダにボビンが装着され、ボビンホルダの回転軸が回転することによりボビンに糸条部材を巻き取る巻糸機のボビンチャック装置であって、
前記回転軸の外周に設けられ、径方向に回動可能なチャックピースと、
前記回転軸が挿着され、前記チャックピースの位置に対応する開口部を有し、軸方向に移動可能なスリーブ部材とを備え、
前記スリーブ部材の軸方向への移動によって前記開口部の内径端部が前記チャックピースを押すことにより、前記チャックピースが外径方向に回動して前記開口部において突出し、前記ボビンの内壁面を押圧することにより前記ボビンをチャックする一方、
前記スリーブ部材の逆軸方向への移動によって前記開口部の内径端部が前記チャックピースを逆方向に押すことにより、前記チャックピースが内径方向に回動して前記開口部において引っ込み、前記ボビンのチャックを解除することを特徴とする巻糸機のボビンチャック装置。
【請求項2】
弾性力により前記スリーブ部材を軸方向に移動させる弾性部材を備え、
前記弾性部材の弾性力によって前記スリーブ部材が軸方向に移動することにより、前記チャックピースが外径方向に回動する請求項1に記載の巻糸機のボビンチャック装置。
【請求項3】
押圧力により前記スリーブ部材を逆軸方向に移動させるエアシリンダを備え、
前記エアシリンダの押圧力によって前記スリーブ部材が逆軸方向に移動することにより、前記チャックピースが内径方向に回動する請求項1または請求項2に記載の巻糸機のボビンチャック装置。
【請求項4】
前記スリーブ部材に連結され、前記エアシリンダの押圧力により揺動する揺動部材を備え、
前記エアシリンダの押圧力によって前記揺動部材が揺動することにより、前記スリーブ部材が逆軸方向に移動する請求項3に記載の巻糸機のボビンチャック装置。
【請求項5】
前記チャックピースは、突出の際に押されるための第1ピース部と、引っ込みの際に押されるための第2ピース部とを備え、
前記スリーブ部材の軸方向への移動によって前記開口部の内径端部が前記チャックピースの第1ピース部を押すことにより、前記チャックピースが外径方向に回動して前記開口部において突出し、ボビンの内壁面を押圧することによりボビンをチャックする一方、
前記スリーブ部材の逆軸方向への移動によって前記開口部の内径端部が前記チャックピースの第2ピース部を逆方向に押すことにより、前記チャックピースが内径方向に回動して前記開口部において引っ込み、前記ボビンのチャックを解除する請求項1から請求項4のいずれかに記載の巻糸機のボビンチャック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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