説明

巻糸装置

【課題】接圧ローラのパッケージに対する適切な接圧力を維持することができる巻糸装置を提供する。
【解決手段】巻糸装置は、1つのボビンホルダ32に2本の糸条L1、L2の各パッケージを直列に配置して巻き取りを行う巻取装置1を備えており、この巻取装置1が、糸条部材L1、L2を巻き取る巻取部3と、該巻取部3の斜め上方に平行に設けられた接圧部4と、該接圧部4に接続された回動リンク機構5と、該回動リンク機構5に接続された引張装置6とを備えている。この巻取装置1においては、巻き取られているいずれかの糸条部材が切れたことに応じて引張装置6の第1エアシリンダ61a、61bのいずれかの引張力を喪失させることより、接圧ローラ41のパッケージに対する接圧力を減少させるようにしたため、接圧ローラ41のパッケージに対する適切な接圧力を維持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つのボビン軸に複数の糸条部材のパッケージを直列に配置して巻き取りを行う巻糸装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の巻糸装置は、1本の糸条部材をトラバース(綾振り)しながらボビンに巻き取っている。この際、通常はボビンに形成された糸条部材のパッケージの表面を接圧するための接圧ローラが設けられており、この接圧ローラを糸条部材のパッケージの表面に接圧させながら巻き取りを行うことにより、糸条部材の巻崩れを防止している。
【0003】
近年では、この巻糸装置における巻き取りの効率化を図るため、複数の糸条部材を同時に巻き取るような巻糸装置が知られており、例えば、下記特許文献1に開示されている。
【0004】
この特許文献1の巻糸装置は、複数の糸条部材のパッケージを直列に配置して巻き取りを行うボビン軸(ボビンホルダ)と、ボビン軸に平行に設けられた移動可能なコンタクトローラ(接圧ローラ)と、空気の圧力を利用してボビン軸に対して平行な状態でコンタクトローラを移動させるエアシリンダと、複数の糸条部材の各パッケージとコンタクトローラとの接圧の状況に基づいて変化するコンタクトローラなどの荷重を測定するロードセルと、ロードセルの測定値に基づいてエアシリンダに空気の供給を行う装置(空気供給装置)とを備えている。これらの構成により、測定したコンタクトローラなどの荷重から複数の糸条部材のパッケージとコンタクトローラとの接圧の状況を検知し、その結果に基づいてエアシリンダに供給する空気を制御することによって、コンタクトローラと複数の糸条部材のパッケージとにおいて所定の接圧が行われるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−321873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、糸条部材を巻き取っている際に、糸条部材が切れてしまう場合がある。特許文献1の巻糸装置においては、接圧ローラが各糸条部材のパッケージと所定の接圧を行うように設定されているが、いずれかの糸条部材が切れると、コンタクトローラが切れずに継続して巻き取られている他の糸条部材のパッケージに過剰な接圧力を作用させてしまう虞があるため、巻糸装置の動作を全て停止させて、糸条部材の巻き取りを中断しなければならないという問題があった。
【0007】
本発明は、上記した問題に鑑みてなされたものであって、接圧ローラのパッケージに対する適切な接圧力を維持することができる巻糸装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る巻糸装置は、1つのボビン軸に複数の糸条部材のパッケージを直列に配置して巻き取りを行うものであって、ボビン軸に平行に設けられ、各パッケージを同時に接圧する接圧ローラと、ボビン軸に対して平行な状態で接圧ローラを近接離間方向に移動可能に支持するリンク機構と、並列的に設けられ、リンク機構を介して接圧ローラに引張力を作用させることにより、接圧ローラの各パッケージに対する接圧力を生じさせる複数の引張部材と、巻き取られる糸条部材の異常を検知する異常検知センサとを備え、異常検知センサにより糸条部材の異常が検知された場合、少なくとも一つの引張部材の引張力を喪失または減少させることにより、接圧ローラの各パッケージに対する接圧力を減少させることを特徴とする。
【0009】
これによれば、巻き取られているいずれかの糸条部材が切れたことに応じて少なくとも一つの引張部材による引張力を喪失または減少させることより、接圧ローラのパッケージに対する接圧力を減少させるようにしたため、接圧ローラの各パッケージに対する適切な接圧力を維持することができる。
【0010】
また、リンク機構及び複数の引張部材は、接圧ローラの一方端側に配置されているのが好ましい。これによれば、リンク機構及び複数の引張部材を一方側に集約させることが可能になるため、巻糸装置全体の小型化を図ることができる。
【0011】
また、引張部材は、エアシリンダであるのが好ましい。これによれば、空気を供給することにより引張力を容易に作用させることができるとともに、空気の供給を停止することにより引張力を容易に喪失または減少させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、巻き取られているいずれかの糸条部材が切れたことに応じて少なくとも一つの引張部材による引張力を喪失または減少させることより、接圧ローラのパッケージに対する接圧力を減少させるようにしたため、接圧ローラのパッケージに対する適切な接圧力を維持することができる。このため、巻き取られているいずれかの糸条部材が切れた場合でも、巻き糸装置の動作を全て停止させて、糸条部材の巻き取りを中断させる必要がなくなり、糸条部材の効率的な巻き取りが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この実施形態にかかる巻取装置の要部を示す斜視図である。
【図2】図1に示すII−IIの矢視図である。
【図3】図1に示すIII−IIIの矢視図である。
【図4】図1に示すIV−IVの矢視図である。
【図5】巻取装置における電気的構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明に係る巻糸装置の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。この実施形態に係る巻糸装置は、断面が円形状である2本の糸条部材(以下「糸条」という)を並列させて同時に搬送し、最終工程として、1つのボビンホルダ(ボビン軸)に2本の糸条L1、L2の各パッケージを直列に配置して巻き取りを行う巻取装置1を備える。なお、巻取装置1は、図4で示す側を正面として以下説明する。
【0015】
巻取装置1は、図1に示すように、糸条L1、L2を巻き取る巻取部3と、該巻取部3の斜め上方に平行に設けられた接圧部4と、該接圧部4に接続された回動リンク機構5と、該回動リンク機構5に接続された引張装置6とを備えている。
【0016】
この巻取装置1は、図2及び図3に示すように、本体部2として各種構成を収容するための筺体21を有しており、巻取部3及び接圧部4を筺体21の外部において保持し、回動リンク機構5及び引張装置6を筺体21の内部において保持する。この巻取装置1においては、引張装置6の引張力を喪失または減少させることにより、回動リンク機構5を介して、接圧部4の接圧力を減少させるよう構成されている。以下では、この巻取装置1における具体的な構成及び動作について説明する。
【0017】
前記巻取部3は、図3に示すように、本体部2の筺体21から突出するボビンホルダ32と、ボビンホルダ32に直列に設けられたボビン31a、31bとを備える。ボビンホルダ32は、本体部2に収容される駆動モータ22に連結されており、駆動モータ22の回転駆動によって回転する。これに伴って、ボビン31a、31bが図1中の矢印Aで示す方向(正面から見て反時計方向)に回転するようになっている。従って、ボビン31a、31bでは、図1に示すように、それぞれ上方から並列に搬送されてきた糸条L1、L2が巻き取られていくことにより、前後方向に直列に配置された各パッケージ33a、33bが形成される。
【0018】
前記接圧部4は、図1に示すように、巻取部3の斜め上方の隣接した位置に設けられている。この接圧部4は、図2に示すように、前記各パッケージ33a、33bを接圧する接圧ローラ41と、糸条L1、L2をボビン31a、31bに巻き取るための第1トラバース部42a及び第2トラバース42b(以下、2つを総称して「トラバース部42」という)と、接圧ローラ41及びトラバース部42を支持する接圧ボックス43とを備える。
【0019】
前記接圧ボックス43は、略直方体形状に形成され、後述する回動リンク機構5によってボビンホルダ32に平行な状態で支持されている。この接圧ボックス43は、接圧ローラ41を回転可能に支持するとともに、トラバース部42が糸条L1、L2の各々をトラバースするためのカム機構を内部に保持している。また、接圧ボックス43は、ボビンホルダ32の基端側(本体部2側)から先端までの長さと略同一の長さを有している。
【0020】
前記トラバース部42は、図2及び図4に示すように、接圧ボックス43の上方側にあってかつボビンホルダ32側に設けられている。このトラバース部42は、接圧ボックス43の長手方向における中間部と先端部との間を往復可能に構成された第1トラバース部42aと、接圧ボックス43の長手方向における中間部と基端側(本体部2側)との間を往復可能に構成された第2トラバース部42bとを有する。第1トラバース部42aは、接圧ボックス43に保持されたカム機構により、搬送されてきた糸条L1を接触させながら搬送するとともに、往復運動によりボビン31aにおいて均等に巻き取りが行われるよう綾振りを行い、第1パッケージ33aを形成させる。また、同様に、第2トラバース部42bは、糸条L2を接触させながら搬送するとともに、接圧ボックス43の基端側において往復運動することにより、ボビン31bにおいて均等に巻き取りが行われるように綾振りを行って第2パッケージ33bを形成させる。従って、1つのボビンホルダ32において、複数の糸条L1、L2による各パッケージ33a、33bを直列に配置して巻き取りを行うことができる。なお、カム機構によるトラバース部42の往復運動は、ボビンホルダ32の回転運動に連動している。
【0021】
前記接圧ローラ41は、図4に示すように、接圧ボックス43の巻取部3側(図4中右側)であってトラバース部42の下方側に配置され、接圧ボックス43の長手方向に向かって回転の軸を有するローラ部材である。この接圧ローラ41は、ボビンホルダ32に平行に設けられ、接圧ボックス43の長手方向の略全てに亘るよう構成されている。これにより、接圧ローラ41は、ボビン31a、31bに形成される両パッケージ33a、33bを同時に接圧することが可能である。
【0022】
前記回動リンク機構5は、図2に示すように、フランジ部50aにより本体部2における筺体21の内壁に固定される軸支部材51と、軸支部材51により巻取部3のボビンホルダ32と同一方向に回転可能に軸支された回転軸52と、回転軸52の筺体21の内側端部に固設されたリンク部材53と、回転軸52の筺体21の外側端部に固設された保持アーム54とを備えている。
【0023】
前記回転軸52は、軸支部材51によってボビンホルダ32の回転方向と同一方向に回転可能に軸支されている。また、回転軸52は、筺体21の内側端部がリンク部材53と直交するように固定され、また、筺体21の外側端部が保持アーム54と直交するように固定されている。従って、回転軸52、リンク部材53及び保持アーム54が一体であるため、回転軸52を介して、リンク部材53及び保持アーム54の回動は連動する。
【0024】
前記リンク部材53は、図4中の一点鎖線で示すように設けられており、回転軸52における回転の中心から所定距離Dだけ離れた位置に連結部531を有している。この連結部531が、リンク部材53と後述する引張装置6とを連結させる。また、連結部531は、図4中に示すように、回転軸52から保持アーム54の延びている方向を2点鎖線で示した直線m1と、回転軸52から連結部531が位置する方向を2点鎖線で示した直線m2との挟角θが、90°≦θ≦270°となるよう設けられている。これにより、以下で説明する引張装置6の引張力を回動リンク機構5を介して効率的に伝達させることができる。
【0025】
前記保持アーム54は、図2に示すように、略直方体形状を有し、回転軸52に直交固設されている。また、保持アーム54は、回転軸52の固定される逆側において、接圧ボックス43を直交させて保持しているため、回転軸52の回転に伴って保持アーム54は図4中で示す矢印Bの方向に回動する。従って、保持アーム54に直交固設された接圧ボックス43もともに回動する。すなわち、回転軸52がボビンホルダ32と平行に設けられていることより、接圧ボックス43はボビンホルダ32に対して平行な状態で近接離間方向に移動することとなる。換言すれば、ボビンホルダ32に平行に設けられた接圧ローラ41は、回動リンク機構5により、ボビンホルダ32に対して平行な状態で近接離間方向に移動する。
【0026】
前記引張装置6は、図2に示すように、本体部2の筺体21内部に固定された固定部材62と、固定部材62及びリンク部材53の連結部531に両端部が連結するように設けられた第1エアシリンダ61a及び第2エアシリンダ61bとを備えている。
【0027】
前記第1エアシリンダ61a及び第2エアシリンダ61bは、空気の供給を受けることによって引張力を保持する引張部材であり、いずれも同一の構成を有している。これら第1エアシリンダ61a及び第2エアシリンダ61bは、並列的に設けられており、いずれも一方端部が固定部材62に接続され、他方端部がリンク部材53の連結部531に接続されている。
【0028】
従って、第1エアシリンダ61a及び第2エアシリンダ61bにおいて、図1の上方に向けて引張力を生じさせると、リンク部材53においては回転軸52を中心にして図4の時計方向に回動しようとし、それに伴い、接圧ボックス43においては図4の時計方向に回動しようとし、これにより接圧ローラ41がパッケージ33a、33bに所定の接圧力で接圧するようになっている。
【0029】
このため、両エアシリンダ61a、61bの保持する引張力は、回動リンク機構5のリンク部材53、回転軸52及び保持アーム54を介して、接圧部4の接圧ボックス43における接圧ローラ41の接圧力を変化させる力として作用する。換言すれば、引張装置6の引張力を変化させることにより、接圧ローラ41の両パッケージ33a、33bに対する接圧力を変化させることが可能である。例えば、両エアシリンダ61a、61bのいずれもが空気の供給を受けている場合、引張装置6は2本分のエアシリンダによる引張力(引張力2T)を保持する。また、この状態からいずれか一方のエアシリンダのみ空気の供給を停止させた場合、1本分のエアシリンダの引張力Tが喪失され、引張装置6は継続して空気の供給を受けている他のエアシリンダ1本分の引張力Tを保持する。このように、引張装置6の保持する2本分の引張力2Tから1本分の引張力Tを喪失(半減)させると、図4中における連結部531の時計方向へのモーメントが小さくなる。すなわち、リンク部材53と一体である回転軸52及び保持アーム54における時計方向へのモーメントが小さくなるため、各パッケージ33a、33bの表面を押圧していた接圧ローラ41の接圧力を減少(半減)させることができる。
【0030】
なお、ここにおいては、引張装置6の有する引張部材(第1エアシリンダ61a及び第2エアシリンダ61b)と、巻き取りを行う糸条(糸条L1、L2)との数量を対応させて構成しており、各エアシリンダ61a、61bへの空気の供給及び空気の供給の停止を実行することのみで、引張装置6の引張力を段階的に変化させ、これに伴って接圧力を段階的に減少させるようにしている。こうすることにより、この実施形態においては、糸条L1、L2の2本を巻き取っている場合においても、また、いずれかの糸条が切れた場合においても、巻き取りが行われている糸条のパッケージと接圧ローラ41とにおける接圧力を、対応させた数量に基づいて、適切な状態に維持させることができる。
【0031】
上記した構成を有する巻取装置1は、さらに以下で説明する異常検知センサ70、制御装置71及び空気供給装置72を備え、図5に示すように、電気的に接続されている。
【0032】
前記異常検知センサ70は、糸条L1、L2が切れるなどといった異常を検知する。異常検知センサ70は、一般的には糸条L1、L2の搬送過程に設けられ、糸条L1、L2に異常が生じた場合、糸条L、L2に異常が生じた旨の信号を制御装置71に送信する。
【0033】
前記制御装置71は、異常検知センサ70から送信された糸条L1、L2の異常についての信号を受信する。受信した信号に基づいて、制御装置71は、空気供給装置72に第1エアシリンダ61a及び第2エアシリンダ61bの各々に空気を供給させるか否かについての信号を送信する。
【0034】
前記空気供給装置72は、制御装置71からの信号に基づいて、第1エアシリンダ61a及び第2エアシリンダ61bの各々に空気の供給及び空気の供給の停止を実行する。ここにおける空気供給装置72は、各エアシリンダ61a、61bに供給する空気が予め定められており、空気の供給を行うことにより、各エアシリンダ61a、61bが所定の引張力Tを各々保持する。
【0035】
次に、巻取装置1の動作について説明する。以下の説明において、引張装置6の各エアシリンダ61a、61bは、空気供給装置72からの空気の供給を受けて各々引張力T(引張装置6としては合計で引張力2T)を保持している状態であり、この状態で糸条L1、L2を巻き取る場合について説明する。この場合、引張装置6の保持する引張力2Tが、回動リンク機構5のリンク部材53、回転軸52及び保持アーム54を介して、接圧部4の接圧ローラ41に作用することにより、糸条L1、L2の2本を同時に巻き取るに際して適切な接圧力で接圧ローラ41が接圧しているものとして説明する。
【0036】
今、糸条L1、L2は、図1に示すように、引張装置6の引張力2Tに基づいて、適切な接圧力のもと、各パッケージ33a、33bがボビンホルダ32に直列に配置されて各々巻き取られている。
【0037】
ここにおいて、糸条L1が切れた場合、それを異常検知センサ70が検知し、異常検知センサ70は制御装置71にその旨の信号を送信する。
【0038】
制御装置71は、異常検知センサ70から送信された信号を受信し、第1エアシリンダ61aへの空気の供給を停止する旨の信号を空気供給装置72に送信する。
【0039】
空気供給装置72は、制御装置71からの信号に基づいて、第1エアシリンダ61aへの空気の供給を停止する。これにより、引張装置6は、第1エアシリンダ61aが保持していた引張力Tを喪失する。このことにより、引張装置6としての引張力は、第2エアシリンダ61bの引張力Tのみになる。すなわち、第2エアシリンダ61bによる1本分の引張力Tのみでリンク部材53の連結部531が引っ張られることとなるため、リンク部材53、回動軸52及び保持アーム54を介して、接圧ローラ41の各パッケージ33a、33bに対する接圧力が半減し、接圧ローラ41をパッケージ33bに継続して適切に接圧させ続けることができる。
【0040】
なお、上記においては、糸条L1が切れると、第1エアシリンダ61aへの空気の供給が停止されて第1エアシリンダ61aの引張力を喪失する場合について説明したが、第2エアシリンダ61bへの空気の供給が停止されて第2エアシリンダ61bの引張力を喪失するようにしてもよい。また、糸条L2が切れると、第1エアシリンダ61aまたは第2エアシリンダ61bへの空気の供給が停止されるようにしてもよい。要は、いずれかの糸条が切れた場合、いずれかのエアシリンダの引張力を喪失するようにすればよい。
【0041】
このように、2本の糸条L1、L2を巻き取っている際、引張装置6の引張力2Tに基づく適切な接圧力で接圧を行うとともに、糸条がL1が切れた場合、第1エアシリンダ61aの引張力Tを喪失させることにより、第2エアシリンダ61bの引張力Tのみに基づく接圧力へと半減させるため、切れずに残った糸条L2のパッケージ33bに対して接圧ローラ41を適切な接圧力で接圧させ続けることができる。また、逆に、糸条L2が切れた場合、第1エアシリンダ61bの引張力Tを喪失させることにより、第1エアシリンダ61aの引張力Tのみに基づく接圧力へと半減させるため、切れずに残った糸条L1のパッケージ33aに対して接圧ローラ41を適切な接圧力で接圧させ続けることができる。
【0042】
従って、巻き取られているいずれかの糸条L1、L2が切れた場合でも、巻糸装置の動作を全て停止させて、糸条L1、L2の巻き取りを中断する必要がなくなり、糸条L1、L2の効率的な巻き取りが可能となる。
【0043】
また、引張装置6における両エアシリンダ61a、61bを並列的に設けるようにしたことにより、接圧ローラ41を回動させるための引張装置6及び回動リンク機構5を接圧ローラ41の一方側に集約することができたため、巻取装置1全体の小型化を実現することができる。
【0044】
なお、上記の実施形態において、接圧ローラ41は、接圧ボックス43の長手方向の略全てに亘るような1本のローラ部材である場合について説明したが、パッケージ化する糸条に対応させて、複数のローラ部材を前後方向に直列されたものであってもよい。
【0045】
また、複数のエアシリンダのうち、切れた糸条の数に対応した数のエアシリンダの引張力を喪失させる場合について説明したが、必要に応じた分だけの引張力を減少させるようにしてもよい。
【0046】
また、巻き取りを行う糸条が2本である場合について説明したが、3本以上であってもよい。この場合、引張装置のエアシリンダを同数分だけ設ける。
【0047】
また、糸条L1、L2は、断面が円形状の糸条である場合について説明したが、断面が扁平(テープ)状の糸条など、その他の形状の糸条であってもよい。
【符号の説明】
【0048】
1…巻取装置
2…本体部
3…巻取部
31a、31b…ボビン
32…ボビンホルダ
33a、33b…パッケージ
4…接圧部
41…接圧ローラ
43…接圧ボックス
5…回動リンク機構
52…回転軸
53…リンク部材
531…連結部
54…保持アーム
6…引張装置
61a…第1エアシリンダ
61b…第1エアシリンダ
70…異常検知センサ
71…制御装置
72…空気供給装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つのボビン軸に複数の糸条部材のパッケージを直列に配置して巻き取りを行う巻糸装置であって、
前記ボビン軸に平行に設けられ、各パッケージを同時に接圧する接圧ローラと、
前記ボビン軸に対して平行な状態で前記接圧ローラを近接離間方向に移動可能に支持するリンク機構と、
並列的に設けられ、前記リンク機構を介して前記接圧ローラに引張力を作用させることにより、前記接圧ローラの各パッケージに対する接圧力を生じさせる複数の引張部材と、
巻き取られる糸条部材の異常を検知する異常検知センサとを備え、
前記異常検知センサにより糸条部材の異常が検知された場合、少なくとも一つの前記引張部材の引張力を喪失または減少させることにより、前記接圧ローラの各パッケージに対する接圧力を減少させることを特徴とする巻糸装置。
【請求項2】
前記リンク機構及び前記複数の引張部材は、前記接圧ローラの一方端側に配置されている請求項1に記載の巻糸装置。
【請求項3】
前記引張部材は、エアシリンダである請求項1または請求項2に記載の巻糸装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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