説明

巻胴式エレベータ

【課題】昇降路の頂部空間を有効に活用でき、主駆動装置を振動減衰装置を介してガイドレールに固定することにより振動騒音を抑制し得る巻胴式エレベータを得る。
【解決手段】乗場5側と対向した昇降路3側面壁近傍に配置された巻上機20と、歯車の軸に連結され、巻胴22と交差すると共に、巻胴22を回転させる乗場5側方向に延設配置されたモータ50と、モータ50と巻上機20とから成る主駆動装置55を連結固定する揺動自在な揺動機構を第1の防振ゴム38を介してガイドレール18の側面部に連結固定された振動減衰装置28とを備え、巻上機20及び振動減衰装置28と、かご10との平面投影が重なり合わないように配置しており、モータ50とドア駆動装置14との平面投影が重なり合わないように配置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻胴式エレベータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の巻胴式エレベータは、昇降路の乗場側に立設された一対のガイドレールと、該ガイドレール上端に支持台を介して直接載設した巻胴を有する巻上機と、該巻胴を駆動するモータと、該巻上機によって主索を介してガイドレールに沿って昇降するかごとを備えたものが記載されている。
【0003】
かかる巻胴式エレベータによれば、巻胴式の主駆動装置を昇降路頂部に設けてかごを昇降するようにしたために、吊り車を設ける必要がなく、主駆動装置を設置する特別の空間を設けるまでもなく、昇降路頂部を高くすれば良い。これにより、エレベータ装置の設置空間を節約することができる。
【0004】
【特許文献1】実開昭63−178278号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記巻胴式エレベータは、かごの進行方向の上方に巻上機が配置されており、かごのドア開放側、すなわち、かごのドアを開閉するドア駆動装置がかごの進行方向上部に巻上機が配置されている。したがって、かごの上昇によりかごがドア駆動装置,巻上機との双方による接触を避けるため、昇降路頂部の空間を有効に活用し切ってないという課題を有することを見出した。
加えて、乗場の近傍に巻上機などの主駆動装置が配置されており、ガイドレール上端に支持台を介して直接載設した巻上機を設けているので、巻上機などから発生した振動が直接ガイドレールに伝わり、該振動に基づく騒音が充分に減衰することなく乗場側に伝わるという課題を有することを見出した。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、巻上機とかご上のドア駆動装置に影響を受けることなく、かごが上昇し得ることにより昇降路の頂部空間を有効に活用でき、併せて、乗場側と反対側奥に巻上機などを配置すると共に、巻上機などから成る主駆動装置を振動減衰装置を介してガイドレールに固定することにより振動騒音を抑制し得る巻胴式エレベータを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明に係る巻胴式エレベータは、下記の機器、装置が昇降路内に設けられており、乗場に近い一端部と乗場に遠い他端部を有すると共に、ドアを有するかごと、 該かごの一端部側の上部に設けられると共に、前記ドアを開閉するドア駆動装置と、前記乗場と反対側に立設されると共に、前記かごの他端部側を上下方向に案内する一対のガイドレールと、該ガイドレールに連結され、該ガイドレールの上部に配設されると共に、前記かごと前記かごの他端部側に連結されたロープを巻回する溝を有する巻胴を有し、該巻胴よりも下方に設けられると共に、該巻胴を回転させる複数の歯車から成るギア部を有し、前記乗場側と対向した前記昇降路側面壁近傍に配置された巻上機と、前記歯車の軸に連結され、前記巻胴と交差すると共に、前記巻胴を回転させる前記乗場側方向に延設配置されたモータと、該モータと前記巻上機とから成る主駆動装置を連結固定する揺動自在な揺動機構と第1の緩衝部材とを有し、前記揺動機構を第1の緩衝部材を介して前記ガイドレールの側面部に連結固定された振動減衰装置とを備え、前記巻上機及び振動減衰装置と、前記かごとの平面投影が重なり合わないように配置しており、前記モータと前記ドア駆動装置との平面投影が重なり合わないように配置している、ことを特徴とするものである。
かかる巻胴式エレベータによれば、巻上機及び振動減衰装置と、かごとの平面投影が重なり合わないと共に、モータとドア駆動装置と平面投影が重なり合わないように配置形成されている。このため、かごが最上階まで進んでも、巻上機及び振動減衰装置とドア駆動装置がかごの進行の障害にならない。したがって、かごの側面部が巻上機と対向する位置まで上昇し得るので、昇降路の高さを抑制できる。
さらに、巻上機を駆動するモータが乗場側方向に延設配置されているので、昇降路の奥域を小さくできる。これにより、上記昇降路の高さの抑制と相まって昇降路の容積を小さくできる。
加えて、かごの乗場側と対向した昇降路側面近傍に巻上機を配置すると共に、モータと巻上機とから成る主駆動装置を連結固定する揺動自在な揺動機構を第1の緩衝部材を介してガイドレールの側面部に連結固定された振動減衰装置とを備えた。これにより、巻上機などから発生した振動を揺動機構が巻胴の回動方向など変換し、揺動機構を第1の緩衝部材を介してガイドレールの側面部に連結固定した振動減衰装置により、上記振動を減衰してガイドレールに伝えるので、振動騒音を抑制し得る。さらに、空間的に乗場から離れた位置に巻上機を設置しているので、乗場側の振動騒音を抑制し得る。
【0008】
第2の発明に係る巻胴式エレベータにおける巻上機におけるギア部は、ウォームとそれに歯合すると共に、ウォームよりも下側に配置された軸を有するウォームホィールとを有しており、ウォームの軸にモータの軸が連結固定している、ことが好ましい。
これにより、巻上機のギア部がウォームギアでも、かごの側面部が巻上機のギア部のウォームホィールと対向する位置まで上昇し得るので、昇降路の高さを抑制できる。
【0009】
第3の発明に係る巻胴式エレベータにおける巻胴の溝は、斜めに形成され、ウォームホィールと巻胴とが連通して設けられており、前記巻胴の一端部をロープの巻始め端として固定し、前記巻胴の他端部を前記ロープの巻き終わり端として巻回し、かごが最下階で、前記かごの中心線と前記ロープとの成す第1の角度θd、前記かごが最上階で、前記かごの中心線と前記ロープとの成す第2の角度θu、前記かごが前記最下階と前記最上階との中間で、前記かごの中心線と前記ロープとの成す第3の角度θmとすると、下記関係を有するように前記かごが巻胴に対して配置されている、
θd>θm>θu
前記角度θd,θm,θuとの傾きが前記溝の斜めと同一方向である、ことが好ましい。
かかる巻胴式エレベータによれば、巻胴の溝にロープが案内される際に、かごの中心線とロープとの成す角度がかごの最下階、中間、最上階でθd>θm>θuの関係にある。これにより、かごの中心線とロープとの成す角度が最上階から最下階に行くに従い巻胴の溝の傾きと同一方向を維持しながら大きくなる。
一方、上記角度が上記とは逆にかごの最下階、中間、最上階で第4の角度θda,第5の角度θua、第6の角度θmaとすると、θda<θma<θuaの関係にある比較例と、本件発明のうち好適な本件態様では、本件態様と比較例のうち大きい角度どうしを比較すると、θd<θuaとなる。これは、角度θd,θuaは、巻胴の一端部とかごの上記中心線までの距離により形成されるので、本件態様では、比較例よりも巻胴からかごまでのロープ長さが長くなるからθd<θuaとなる。したがって、本件態様によれば、巻胴の溝からロープが案内され易くなることにより、ロープが巻胴の溝から極めて外れにくくなる。
【0010】
第4の発明に係る巻胴式エレベータにおける第2の角度θuは、巻胴の溝に対して引いた垂直線と、前記溝の傾きとにより形成される傾斜角度よりも大きい、ことが好ましい。
これにより、かごが最上階で、第2の角度θuが上記傾斜角度よりも大きくなるので、かごが最上階においても、巻胴の溝にロープがより円滑に案内される。
【0011】
第5の発明に係る巻胴式エレベータにおける振動減衰装置は、主駆動装置に連結固定されると共に、ガイドレールに対して回動自在な回動機構を備え、該回動機構は、第1の緩衝部材を介して前記ガイドレールの側面部に連結固定される、ことが好ましい。
例えば、モータのトルクリップルなどにより巻上機が振動すると、該振動が回動機構により回動方向の成分となり、この成分の振動が第1の緩衝部材を介してガイドレールの側面部に伝えられる。このため、巻上機等から発生した振動が乗場やかご内に伝わりにくくなるので、乗場及びかご内の騒音も減少する。
揺動機構は、ガイドレールに対してX,Y,Z軸方向に自由に揺れ動くもので、回動機構は、ガイドレールに対してX,Y平面状を回動するから、揺動機構の動きを限定したものと捉えることができる。
【0012】
第6の発明に係る巻胴式エレベータにおける回動機構は、ガイドレールに連結固定された支持部材と、主駆動装置に連結固定され、前記ガイドレールに沿って設けられ、ピンを介して前記支持部材と回転可能に設けられると共に、前記主駆動装置を回動自在にする回動部材とを備え、前記第1の緩衝部材は、前記回動部材と前記ガイドレールとの間に設けられている、ことが好ましい。
これにより、回動機構は回動部材とピンと支持部材とにより簡易に形成できると共に、第1の緩衝部材を介してガイドレールに固定される。したがって、巻上機などから発生した振動が第1の緩衝部材により減衰してガイドレールに伝わるので、振動騒音が減少する。
【0013】
第7の発明に係る巻胴式エレベータにおける回動部材は、巻上機の底部側に近い一端と、ピン側に近い他端とを有し、前記回動部材の一端と前記巻上機の底部との間に設けられた第2の緩衝部材を、備えることが好ましい。
これにより、巻上機などからの振動が第2の緩衝部材を介して回動部材に伝わるので、さらにガイドレールに伝わる振動をより低減できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、かごが巻上機とかご上のドア駆動装置に影響を受けることなく、上昇できる。したがって、昇降路の頂部空間を有効に活用でき、かごの乗場側と対向した昇降路側面近傍に巻上機を配置すると共に、モータと巻上機とから成る主駆動装置を連結固定する揺動自在な揺動機構を第1の緩衝部材を介してガイドレールの側面部に連結固定された振動減衰装置とを備えたので、主駆動装置から発生した振動を振動減衰装置により抑制してガイドレールに伝えることができる。加えて、空間的に乗場から離れた位置に主駆動装置を設置したので、乗場側の騒音を充分に減少し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
実施の形態1.
本発明の一実施の形態を図1から図4によって説明する。図1はエレベータの全体構成図である。図2は図1に示す巻胴式エレベータの平面図、図3は図1に示す巻胴式エレベータのかごの中心線とロープとの成す角度をかごの位置により変化することを表す模式説明図、図4は図1に示す主駆動装置が振動減衰装置を介してガイドレールに連結固定する機構図である。
図1において、個人住宅などに施設される巻胴式エレベータ1は、略長方体形状の空洞に形成された昇降路3にかご10などの以下の機器が収納されており、かご10を上昇下降方向に案内する一対のガイドレール18が乗場5と反対側の奥に垂直に立設している。なお、ガイドレール18は、平面視凸形状をしている。このガイドレール18と摺動係合すると共に、かご10の乗場5に遠い他端部10bに連結固定された平面視凹形状のガイドシュー17を有している。
【0016】
巻胴式エレベータ1は、かご10に一端部10aが巻胴22に連結固定された二本のロープ(主索)16の他端部10bを巻胴22に巻き取ったり巻き戻したりする巻上機20を有している。巻上機20は巻胴22の長手方向が一対のガイドレール18の上方に跨ぐように配置されている。
巻胴式エレベータ1は、三停止で各階にかご10の乗場5を有する三階建ての住宅に設置されており、昇降路3の底部に緩衝器7が設置されている。乗場5には、それぞれ一階用、二階用、三階用乗場ドア5a〜5cを有している。
【0017】
かご10は、箱状で昇降路3内に設けられ、乗場5に近い一端部10aと乗場5に遠い他端部10bとを有すると共に、乗場5と対向して一端部10a側にかごドア12を有している。そして、かご10には、一端部10a側の上部に設けられると共に、かごドア12を開閉するドア駆動装置14を有している。かごドア12の開閉と連動して、停止した階の乗場ドア5a(5b,5c)を開閉するように形成されている。
【0018】
ドア駆動装置14には、駆動源となるモータ14m、モータ14mの回転運動をかごドア12の開閉運動に変換する歯付きベルト14b、プーリー14pなどのドア機構を有している。
さらに、昇降路3内には、ガイドレール18の底面が昇降路3底部に固定されており、巻上機20が揺動機構としての回動機構30がガイドレール18の側面上部に回動自在に連結されている。
【0019】
巻上機20は、乗場5と反対側の昇降路3側面壁近傍に配置されており、巻上機20には、下方に台26を有し、かご10の他端部10b側に連結されたロープ16を巻回する溝22uを有する巻胴22を有し、巻胴22よりも下方に設けられると共に、巻胴22を回転させる複数の歯車から成るギア部24を有している。
ギア部24はヘリカルギアでも良いが、ウォームギアが好ましい。簡易に減速できるからである。本実施形態では、ギア部24は、ウォーム24mとそれに歯合すると共に、ウォーム24mよりも下側に配置された軸を有するウォームホィール24hとを有しており、ウォーム24mの軸にモータ50の軸50bが連結固定している。
モータ50は、昇降路3内部に配設されて、胴部50aが乗場5側に延設するように設けられており、軸50bがウォーム24mの軸に連結固定され、巻胴22と交差すると共に、巻胴22を回転させるように形成されている。
モータ50と巻上機20とにより主駆動装置55を成して、主駆動装置55が昇降路3内に設けられている。
【0020】
巻上機20と、かご10の平面投影が重なり合わないと共に、モータ50とドア駆動装置14との平面投影が重なり合わないように配置されており、モータ50とかご10との平面投影が重なるように配置されている。
これにより、かご10が上昇すると、巻上機20とドア駆動装置14に接触することなく図1に示す矢印mまでの距離を有効に移動し得る。したがって、モータ50と衝突するまで、かご10が上昇走行し得るので、昇降路3の上部空間のスペースを少なくできる。
【0021】
図2及び図3において、巻上機20は巻胴22が一つで、溝22uに複数として二本のロープ16を案内するように形成されており、ウォームホィール24hと巻胴22とが連通して設けられていている。巻上機20は、ウォームホィール24hの回転に同期して巻胴22が回転するように形成し、巻胴22の一端部22aをロープ16の巻始め端16aとして固定し、巻胴22の他端部22bをロープ16の巻き終わり端16bとして巻回している。
そして、かご10が最下階で図3の正面から見て、かご10床面の水平方向と直交する中心線、すなわち、かご10の上下方向の中心線とロープ16との成す第1の角度θd、かご10が最上階で、上記中心線とロープ16との成す第2の角度θu、かご10が最下階と最上階との中間で、上記中心線とロープ16との成す第3の角度θmとすると、下記関係を有するようにかご10が巻胴22に対して配置されている。
θd>θm>θu
さらに、巻胴22の溝22uは、左ねじの関係で第1の角度θd,第2の角度θu,第3の角度θmと同一方向に斜めに設けられている。巻胴22を回転する際にロープ16を溝22uに案内しやすくするためである。
また、第2の角度θuは、巻胴22の溝22uに対して引いた垂直線と、溝22uの傾きとにより形成される傾斜角度θrよりも大きい、ことが好ましい。
かご10が最上階でも、ロープ16が溝22uの方向に対して同一角度を維持できるので、かご10が最上階において、巻胴22の溝22uにロープ16がより円滑に案内できるからである。
【0022】
図4において、主駆動装置55は、巻上機20などから発生した振動を振動減衰装置28によってガイドレール18の乗場5と反対側の側面部に取付けられており、振動減衰装置28は、ガイドレール18に対して回動自在な揺動機構としての回動機構30を有し、回動機構30がガイドレール18に第1の緩衝部材としての第1の防振ゴム38を介してガイドレール18に取付けられている。
回動機構30は、ガイドレール18に対してロープ16と反対側に設けられており、巻上機20などの矢印Bに示す回転方向の振動を減衰してガイドレール18に伝達するように形成されている。ガイドレール18に対してロープ16と反対側に設けたのは、かご10の進路を阻害しないからである。
【0023】
回動機構30は、ガイドレール18に対して交差して連結固定された板状の支持部材32と、巻上機20の台26に連結固定され、ガイドレール18に沿って設けられ、ピン34を介して支持部材32と回転可能に設けられると共に、巻上機22を回動自在にする回動部材36と、を有している。
回動部材36は巻上機20の底部側に近い一端と、ピン34側に近い他端とを有し、板状でL形状の基体部36aと、基体部36aに連通した板状の天部36bとを有している。
回動機構30は、回動部材36の基体部36aに接着剤により第1の緩衝部材としての第1の防振ゴム38を介してガイドレール18に固定されている。
さらに、回動機構30は、回動部材36の天部32bに接着剤により第2の緩衝部材としての第2の防振ゴム39が台26に固定されることが好ましい。
【0024】
上記のように構成された巻胴式エレベータの動作を図1から図4を参照して説明する。いま、かご10が最下階(1階)に停止していると、ロープ16とかご10との中心線とが挟む第1の角度θdとなっている。この状態で、3階への呼びが発生すると、モータ50が回転してかご10が上昇する。この運転の際、図4に示すように、巻上機20などから発生した振動は、振動減衰装置28の回動機構30に固定された第2の防振ゴム39を介して回動部材36により矢印B方向に変換する。すなわち、ピン34を中心にした回動方向の振動に変換する。該振動は、回動部材36と第1の防振ゴム38を介して減衰してガイドレール18に伝達する。
【0025】
かご10が2階を通過する際には、ロープ16とかご10との上下方向の中心線との挟む第3の角度θmとなる。さらに、かご10が上昇して3階に到着すると、ロープ16とかご10との中心線との挟む第2の角度θuとなる。かご10が3階に停止状態で、かご10上のドア駆動装置14が昇降路3の上部空間に位置し、かご10の頂部が巻上機20の側面に対向すると共に、モータ50の手前で停止する。
【0026】
上記実施形態による巻胴式エレベータ1は、下記の機器10,18、20、28、50,及び主駆動装置28が昇降路3内に設けられており、乗場5に近い一端部10aと乗場5に遠い他端部10bを有すると共に、ドア12を有するかご10と、かご10の一端部10a側の上部に設けられると共に、ドア12を開閉するドア駆動装置14と、乗場5と反対側に立設されると共に、かご10の他端部10b側を上下方向に案内する一対のガイドレール18と、該ガイドレール18に連結され、該ガイドレール18の上部に配設されると共に、かご10とかご10の他端部10b側に連結されたロープ16を巻回する溝22uを有する巻胴22を有し、巻胴22よりも下方に設けられると共に、巻胴22を回転する複数の歯車から成るギア部24を有し、乗場5側と対向した昇降路3側面壁近傍に配置された巻上機20と、歯車の軸に連結され、巻胴22と交差すると共に、巻胴22を回転させる乗場5側方向に延設配置されたモータ50と、モータ50と巻上機20とから成る主駆動装置55を連結固定する揺動自在な揺動機構を第1の防振ゴム38を介してガイドレール18の側面部に連結固定された振動減衰装置28とを備え、巻上機20及び振動減衰装置28と、かご10との平面投影が重なり合わないように配置しており、モータ50とドア駆動装置14との平面投影が重なり合わないように配置している。
【0027】
かかる巻胴式エレベータ1によれば、巻上機20と、かご10との平面投影、モータ50とドア駆動装置14との平面投影が重なり合わないように形成されている。このため、かご10が最上階まで進んでも、巻上機20とドア駆動装置14がかご10の進行方向の障害にならない。したがって、かご10の側面部が巻上機20と対向する位置までかご10が上昇し得るので、昇降路3の高さを抑制できる。
なお、かご10が最上階よりもさらに上昇方向に進行すると、モータ50とかご10との平面投影が重なるため、かご10の上部にモータ50が接触し得る。
また、モータ50の胴部50aが乗場5側方向に延設配置されているので、モータ50の胴部50aが乗場5側と反対方向に延設配置と場合と比較して昇降路3の奥域を小さくできる。
このように、長方体状の昇降路3の高さ、奥行きを小さくできるので、住宅そのものが小型化し得る。
さらに、かご10の乗場5側と対向した昇降路3側面近傍に巻上機20を配置すると共に、主駆動装置55を連結固定する回動自在な回動機構30を第1の防振ゴム38を介してガイドレール18の側面部に連結固定された振動減衰装置28を備えた。これにより、空間的に乗場5から離れた位置に巻上機20を設置すると共に、主駆動装置55から発生した振動を振動減衰装置28により減衰してガイドレール18に伝えるので、巻上機20などからの発生した振動、騒音が乗場5側に伝達しにくくなる。よって、居室などの騒音が減少し得る。
【0028】
上記実施形態による巻胴式エレベータ1は、巻上機20のギア部24は、ウォーム24mとそれに歯合すると共に、ウォーム24mよりも下側に配置された軸を有するウォームホィール24hとを有しており、ウォーム24mの軸にモータ50の軸50bが連結固定している、ことが好ましい。
これにより、巻上機20のギア部24がウォームギアでも、かご10の側面部が巻上機20のギア部24と対向する位置まで上昇し得るので、昇降路3の高さを抑制できる。
【0029】
上記実施形態による巻胴式エレベータ1は、巻胴22が一つで、溝22uに二本のロープ16を案内するように形成されており、巻胴22の溝22uが斜めに形成され、ウォームホィールと巻胴22とが連通して設けられており、巻胴22の一端部22aをロープ16の巻始め端16aとして固定し、巻胴22の他端部22bをロープ16の巻き終わり端16bとして巻回し、かご10が最下階で、かご10の中心線とロープ16との成す第1の角度θd、かご10が最上階で、同様に第2の角度θu、かご10が中間で、同様に第3の角度θmとすると、下記関係を有するようにかご16が巻胴22に対して配置されている、角度θd,θm,θuとの傾きが同一方向で、溝22uの傾きとも同一方向である、ことが好ましい。
θd>θm>θu
【0030】
かかる巻胴式エレベータによれば、巻胴22の溝22uにロープ16が案内される際に、かご10の中心線とロープ16との成す角度がかご10の最下階、中間、最上階でθd>θm>θuの関係にある。これにより、かご10の中心線とロープ16との成す角度が最上階から最下階に行くに従い巻胴22の溝22uの傾きと同一方向を維持しながら大きくなる。
したがって、巻胴22の溝22uからロープ16が案内され易くなることにより、ロープ16が巻胴22の溝22uから極めて外れにくくなる。
【0031】
巻胴式エレベータの巻胴22の溝22uは角度θdと同一方向に設けられており、第2の角度θuは、巻胴22の溝22uに対して引いた垂直線と、溝22uの傾きとにより形成される傾斜角度θrよりも大きい、ことが好ましい。
これにより、かご10が最上階でも、ロープ16が巻胴22の溝22uの方向に同一の角度を維持し得るので、かご10が最上階において、巻胴22の溝22uにロープ16がより円滑に案内される。
【0032】
巻胴式エレベータ1における振動減衰装置28は、主駆動装置55に連結固定されると共に、ガイドレール18に対して回動自在な回動機構30を備え、該回動機構30は、第1の防振ゴム38を介してガイドレール16の側面部に連結固定される、ことが好ましい。
モータ50のトルクリップルなどにより巻上機20が振動すると、該振動が回動機構30により回動方向の成分となり、この成分の振動が第1の防振ゴム38を介してガイドレール18に伝えられる。このため、巻上機20等から発生した振動が乗場5やかご10内に伝わりにくくなるので、乗場5及びかご10内の騒音も減少する。
【0033】
回動機構30は、ガイドレール18と交差するように固定された支持部材32と、巻上機20に連結固定され、ガイドレール18に沿って設けられ、ピン34を介して支持部材32と回動可能に設けられると共に、巻上機20を回動自在にする回動部材36とを備え、第1の防振ゴム38は、回動部材36とガイドレール18の側面部との間に設けられ、回動部材36とガイドレール18に端面が接着剤により固着されている、ことが好ましい。
これにより、回動機構30は回動部材36とピン34と支持部材32とにより簡易に形成できると共に、第1の防振ゴム38を介してガイドレール18に固定される。したがって、巻上機20などから発生した振動が第1の防振ゴム38により減衰してガイドレール18に伝わるので、振動騒音が減少する。
【0034】
巻胴式エレベータ1における回動部材36は、巻上機20の底部側に近い一端と、ピン34側に近い他端とを有し、回動部材36の一端と巻上機20の底部に設けられた台26との間に設けられた第2の防振ゴム39を、備えることが好ましい。
これにより、巻上機20などからの振動が第2の防振ゴム39を介して回動部材36に伝わるので、さらにガイドレール18に伝わる振動をより低減できる。
【0035】
比較例1.
本実施形態を図5に示す比較例1と比較することにより本実施形態の優位性を説明する。図5は図3に対する比較例としてかごの中心線とロープとの成す角度をかごの位置により変化することを表す模式説明図である。
図5において、巻胴22の他端部22bをロープ16の巻始め端16aとして固定し、巻胴22の一端部22aをロープ16の巻終わり端16bとして巻回している。つまり、本実施形態の図3とは巻始め端16aと巻終わり端16bとが巻胴22に対して逆になっている。
かご10が最下階で、かご10床面の水平方向と直交する中心線とロープ16との成す第4の角度θda、かご10が最上階で、上記中心線とロープ16との成す第5の角度θua、かご10が中間で、上記中心線とロープ16との成す第6の角度θmaとすると、下記関係を有するようにかご10が巻胴22に対して配置されている。
θda<θma<θua
すなわち、本実施の形態と本比較例1とで、最も大きい最大角度どうしを比較すると、下記の関係になる。
θd<θua
この関係は、図3及び図5から明らかのように昇降行程が長いほど顕著となる。これにより、図3に示す本実施形態では、比較例1よりも上記最大角度の値がかなり小さくなるので、巻胴22の溝22uからロープ16が外れにくくなることが容易に理解し得る。
【0036】
比較例2.
本実施形態を図6に示す比較例2と比較することにより本実施形態の優位性を説明する。図6は図3に対する比較例としてかごの中心線とロープとの成す角度をかごの位置により変化することを表す模式説明図である。
単純にかご10のかご10床面の水平方向と直交する中心線とロープ16との成す角度をかご10の最上階と最下階とで、単純に振り分けるのであれば、巻胴22の一端部22aと他端部22bとの間にかご10の上下方向中心に配置すれば、第7の角度θubと第9の角度θdbとが略等しくなる。しかしながら、図6に示す巻胴22の左側が溝22uと上記中心線とロープ16との成す角度とが反対向きとなり、巻胴22の溝22uにロープ16を案内し難くなるので、適当でない。
なお、かご10の中間位置では、上記中心線とロープ16の成す角度は第8の角度θmbとなっている。
【0037】
本発明は、上記発明の実施の形態の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様も本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、巻胴式エレベータに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施の形態による巻胴式エレベータの全体構成図である。
【図2】図1に示す巻胴式エレベータの平面図である。
【図3】図1に示す巻胴式エレベータのかごの中心線とロープとの成す角度をかごの位置により変化することを表す模式説明図である。
【図4】図1に示す主駆動装置が振動減衰装置を介してガイドレールに連結固定する機構図である。
【図5】図3に対する比較例1としてかごの中心線とロープとの成す角度をかごの位置により変化することを表す模式説明図である。
【図6】図3に対する比較例2としてかごの中心線とロープとの成す角度をかごの位置により変化することを表す模式説明図である。
【符号の説明】
【0040】
3 昇降路、5 乗場、10 かご、12 かごドア、14 ドア駆動装置、16 ロープ、18 ガイドレール、20 巻上機、22 巻胴、22u 溝、28 振動減衰装置、30 回動機構、32 支持部材、34 ピン、36 回動部材、38 第1の防振ゴム、39 第2の防振ゴム、50 モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の機器、装置が昇降路内に設けられており、
乗場に近い一端部と乗場に遠い他端部を有すると共に、ドアを有するかごと、
該かごの一端部側の上部に設けられると共に、前記ドアを開閉するドア駆動装置と、
前記乗場と反対側に立設されると共に、前記かごの他端部側を上下方向に案内する一対のガイドレールと、
該ガイドレールに連結され、該ガイドレールの上部に配設されると共に、前記かごと前記かごの他端部側に連結されたロープを巻回する溝を有する巻胴を有し、該巻胴よりも下方に設けられると共に、該巻胴を回転させる複数の歯車から成るギア部を有し、前記乗場側と対向した前記昇降路側面壁近傍に配置された巻上機と、
前記歯車の軸に連結され、前記巻胴と交差すると共に、前記巻胴を回転させる前記乗場側方向に延設配置されたモータと、
該モータと前記巻上機とから成る主駆動装置を連結固定する揺動自在な揺動機構と第1の緩衝部材とを有し、前記揺動機構を第1の緩衝部材を介して前記ガイドレールの側面部に連結固定された振動減衰装置とを備え、
前記巻上機及び振動減衰装置と、前記かごとの平面投影が重なり合わないように配置しており、
前記モータと前記ドア駆動装置との平面投影が重なり合わないように配置している、
ことを特徴とする巻胴式エレベータ。
【請求項2】
前記ギア部は、ウォームとそれに歯合すると共に、前記ウォームよりも下側に配置された軸を有するウォームホィールとを有しており、前記ウォームの軸に前記モータの軸を連結固定している、
ことを特徴とする請求項1に記載の巻胴式エレベータ。
【請求項3】
前記巻胴の溝は、斜めに形成され、
前記ウォームホィールと前記巻胴とが連通して設けられており、
前記巻胴の一端部を前記ロープの巻始め端として固定し、前記巻胴の他端部を前記ロープの巻き終わり端として巻回し、
前記かごが最下階で、前記かごの中心線と前記ロープとの成す第1の角度θd、前記かごが最上階で、前記中心線と前記ロープとの成す第2の角度θu、前記かごが前記最下階と前記最上階との中間で、前記中心線と前記ロープとの成す第3の角度θmとすると、下記関係を有するように前記かごが巻胴に対して配置されている、
θd>θm>θu
前記角度θd,θm,θuとの傾きが同一方向で、前記溝の傾きとも同一方向である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の巻胴式エレベータ。
【請求項4】
前記第2の角度θuは、前記巻胴の前記溝に対して引いた垂直線と、前記溝の傾きとにより形成される傾斜角度よりも大きい、
ことを特徴とする請求項3に記載の巻胴式エレベータ。
【請求項5】
前記振動減衰装置は、前記主駆動装置に連結固定されると共に、前記ガイドレールに対して回動自在な回動機構を備え、該回動機構は、前記第1の緩衝部材を介して前記ガイドレールの側面部に連結固定される、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の巻胴式エレベータ。
【請求項6】
前記回動機構は、前記ガイドレールに連結固定された支持部材と、
前記主駆動装置に連結固定され、前記ガイドレールに沿って設けられ、ピンを介して前記支持部材と回転可能に設けられると共に、前記主駆動装置を回動自在にする回動部材とを備え、
前記第1の緩衝部材は、前記回動部材と前記ガイドレールの側面との間に設けられている、
ことを特徴とする請求項5に記載の巻胴式エレベータ。
【請求項7】
前記回動部材は、前記巻上機の底部側に近い一端と、前記ピン側に近い他端とを有し、
前記回動部材の一端と前記巻上機の底部との間に設けられた第2の緩衝部材を、
備えたことを特徴とする請求項6に記載の巻胴式エレベータ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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