説明

布おむつの素材として好適なパイル編地

【課題】 保水性及び乾燥性に優れたパイル編地を提供する。特に、布おむつの素材として好適なパイル編地を提供する。
【解決手段】 このパイル編地は、グランド部とパイル部とからなる。グランド部は編物組織で形成されている。パイル部は、グランド部をベースとして表面に密生している多数のパイルからなる。パイル部におけるパイル密度は、10000本/cm2以上になっている。パイル部は、単糸繊度1.1デシテックス以下の疎水性フィラメントから構成されるマルチフィラメント糸条を30質量%以上含有している。グランド部は、異繊度異型異断面疎水性フィラメントから構成される疎水性マルチフィラメント糸条を30質量%以上含有している。パイル部のマルチフィラメント糸条及びグランド部の疎水性マルチフィラメント糸条は、仮撚加工糸条であるのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保水性及び乾燥性に優れたパイル編地に関し、特に布おむつの素材として使用するのに適したパイル編地に関するものである。ここで、布おむつとは、その形態如何を問わず、尿もれ防止用に使用する全ての物品を包含するものであって、繰り返し洗濯可能なおむつのことを意味している。したがって、洗濯をしない使い捨ておむつは、布おむつの概念から排除されている。
【背景技術】
【0002】
従来より、幼児向けや成人向けおむつ、或いは失禁パッドや失禁パンツ等の布おむつの素材としては、綿製編織物が用いられていた。しかし、洗濯及び乾燥に時間がかかるといった点や、保水量の低い点などから、近年では、綿製編織物に代えて、高吸水性ポリマーと不織布等との組み合わせからなる素材を用いた使い捨ておむつが主流になっている。
【0003】
使い捨ておむつは、一般的に、焼却して廃棄されるため、最近ではダイオキシン等の環境問題の観点から、忌避される傾向となっている。このため、再び、編織物よりなる布おむつが種々提案されている(特許文献1及び2)。特許文献1は、表面が特殊な布帛で、内部に編織物等よりなる吸水性繊維シートを配した積層布帛を素材とする布おむつが提案されている。また、特許文献2では、単糸繊度を細くし、かつ繊維密度を高くした布帛を素材とする布おむつが提案されている。
【0004】
特許文献1記載の積層布帛は、表面が特殊な布帛で構成されているため、肌と接触したときのサラサラ感は改善されているが、吸水性繊維シートに何らの工夫も施されていないため、保水性が不十分であり、また洗濯及び乾燥にも時間がかかるという問題があった。また、特許文献2記載の布帛は、単に細い糸使いで高密度化を図っただけであるため、保水量は高いものの、洗濯及び乾燥に時間がかかるという問題があった。
【0005】
【特許文献1】特開平7−148876号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2002−272778公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、布おむつ用の布帛としてパイル編地を用いると共に、パイル部とグランド部の糸使いを工夫し、かつ、パイル部のパイル密度を高くすることによって、保水性がよく、洗濯及び乾燥が短時間で行えるようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、編物組織で形成されたグランド部と、該グランド部をベースとして表面に密生している多数のパイルからなるパイル部とで構成されるパイル編地において、前記パイル部は、パイル密度が10000本/cm2以上になっていると共に、単糸繊度1.1デシテックス以下の疎水性フィラメントから構成されるマルチフィラメント糸条を30質量%以上含有しており、前記グランド部は、異繊度異型異断面疎水性フィラメントから構成される疎水性マルチフィラメント糸条を30質量%以上含有していることを特徴とするパイル編地に関するものである。
【0008】
本発明に係るパイル編地は、グランド部とパイル部とからなっている。グランド部は、地糸を丸編組織等の編物組織で編成することによって形成される。パイル部は、グランド部の表面上に密生した状態の多数のパイルによって構成されている。このパイルは、パイル糸を用いて、地糸と共に編成することによって形成しうる。たとえば、図1に示す編組織で、パイル糸Aと地糸Bとを編成すれば、地糸Bによって形成されたグランド部と、パイル糸Aによって形成された多数のパイルからなるパイル部とを持つパイル編地を得ることができる。また、その他、従来公知のパイル編地の編成方法を採用すれば、簡単にグランド部とパイル部とを持つものを得ることができる。
【0009】
本発明に係るパイル編地のパイル部は、パイル密度が10000本/cm2以上となっている。好ましくは、パイル密度は10000本/cm2〜150000本/cm2であるのが良く、さらに好ましくは、30000本/cm2〜100000本/cm2であるのが良い。パイル密度とは、単位面積当たりに存在するパイルを形成しているフィラメント数を意味している。たとえば、単位面積当たりに、パイルを形成しているモノフィラメントが一本ある場合、パイル密度は1本/cm2となる。そして、このモノフィラメントに代えて、フィラメント数が100本のマルチフィラメントが用いられた場合には、パイル密度が100本/cm2となる。このことから分かるように、パイル密度を高くするには、パイルそのものの数を多くする方法、又はパイル糸を構成しているマルチフィラメント糸条のフィラメント数を多くする方法がある。パイル密度が10000本/cm2未満になると、フィラメント相互間が間隙が広くなると共に、パイル間に形成される間隙の数を少なくなり、保水性が低下するので、好ましくない。また、パイル密度が150000本/cm2を超えると、パイル糸相互間の間隙が小さくなりすぎて、保水量が低下する傾向が生じる。
【0010】
パイルは、ループパイルであってもよいし、カットパイルであってもよい。ループパイルの方が、その表面でフィラメント相互間の間隙が広くなりにくく、保水性に優れるので、好ましい。また、カットパイルの場合は、保水した水が、パイル表面に滲み出し易くなるので、この点からもループパイルの方が好ましい。なお、ループパイルの場合におけるパイル密度の算出方法は、1本のフィラメントからなるパイル糸でループパイルが形成されている場合であっても、このループパイルの先端近傍をカットしてカットパイルとした場合、フィラメント数は2本となるので、2本とする。すなわち、単位面積あたり、ループパイルを形成しているフィラメント数が50本/cm2である場合、パイル密度は100本/cm2となる。
【0011】
パイル部には、単糸繊度1.1デシテックス以下の疎水性フィラメントから構成されるマルチフィラメント糸条(以下、この疎水性フィラメントのことを「パイルフィラメント」といい、パイルフィラメントから構成されるマルチフィラメント糸条のことを「パイルフィラメント糸条」という。)が、少なくとも30質量%以上含有されている。すなわち、パイル部を構成しているパイル糸のうち、少なくとも30質量%以上が、パイルフィラメント糸条となっている。具体的には、1本のパイル糸中に、パイルフィラメント糸条が30質量%以上含有されており、このようなパイル糸からパイル部が形成されている場合が挙げられる。また、パイル部を構成しているパイル糸のうち、30質量%以上がパイルフィラメント糸条のみからなり、その余が他の糸条からなっている場合が挙げられる。パイルフィラメント糸条が30質量%未満になると、保水性が低下するので、好ましくない。
【0012】
パイルフィラメント糸条は、仮撚加工糸条であるのが好ましい。仮撚加工すると、パイルフィラメントに多数のクリンプが形成され、パイルフィラメント相互間に形成される間隙の数が増加して、保水性が向上するからである。
【0013】
パイルフィラメント糸条を構成するパイルフィラメントの単糸繊度は、1.1デシテックス以下であり、好ましくは0.5デシテックス以下である。単糸繊度が1.1デシテックスを超えると、パイルフィラメント間に形成される間隙が広くなると共に、間隙の数が少なくなって、保水性が低下するので、好ましくない。パイルフィラメントの単糸繊度の下限は、0.01デシテックス以上であるのが好ましい。下限が0.01デシテックス未満になると、パイルフィラメントが細くなりすぎて、切断しやすくなり、パイル編地の耐久性が低下する傾向が生じる。また、パイルフィラメントがパイルフィラメント糸条を構成せずに、単一のフィラメントとして使用すると、パイルフィラメント間に狭い間隙が形成されずに、保水性が低下するので、好ましくない。パイルフィラメント糸条を形成するには、たとえば、溶融紡糸法で得られたパイルフィラメントを複数本集束すればよい。また、二種類以上のポリマーを複合溶融紡糸して得られた分割型フィラメントよりなる糸条で、パイルを形成した後に、分割型フィラメントを分割させて、パイルフィラメントを発現させ、結果的に、パイルフィラメントからなるパイルフィラメント糸条を形成してもよい。分割の方法としては、染色工程等の後加工で行えば良い。たとえば、アルカリ溶解性ポリエステルとアルカリ不溶性ポリエステルとで構成された分割型フィラメントよりなる糸条で、パイルを形成した後、アルカリ水溶液に浸漬して、アルカリ溶解性ポリエステルを溶出させ、パイルフィラメントからなるパイルフィラメント糸条を形成することができる。なお、本発明においては、編地を編成する際に、単糸繊度の細いパイルフィラメントが存在すると、これが引っ掛かったり、汚れやすかったりするため、後でパイルフィラメントを発現させる分割型フィラメントを用いるのが、好ましい。
【0014】
また、パイルフィラメントは疎水性の合成樹脂で形成されている。疎水性の合成樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリオキシエトキシベンゾエート、ポリエチレンナフタレート、シクロヘキサンジメチレンテレフタレート等のポリエステル及び、これら等のポリエステルに付加的部分として更にイソフタル酸、スルホイソフタル酸の酸性分、ポロピレングリコール、ブチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコールのようなジオール成分を共重合した共重合ポリエステル系樹脂、ナイロン6、ナイロン66、芳香族ナイロン等のポリアミドからなるポリアミド系樹脂、ポリエチレン、ポリポロピレン等のポリオレフィンからなるポリオレフィン系樹脂、アクリルニトリルからなるアクリル系樹脂、またはポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリ乳酸等の土壌中や水中に長時間放置すると微生物などの作用によって炭酸ガスと水に分解される脂肪族ポリエステル化合物からなる生分解性樹脂等が挙げられる。本発明においては、特に、工業洗濯等の高温洗濯下で、収縮の少ないポリエステルで形成されたポリエステルフィラメントを用いるのが好ましい。また、パイルフィラメントのラスターについては、ブライト、セミダル、フルダル等の任意のものでよく、さらにパイルフィラメント中に酸化チタン等の任意の添加物を含有させてもよい。
【0015】
パイルフィラメントの横断面形状は、円型、三角型、四角型、五角型、扁平型、くさび型、或いはアルファベットを象ったC型、H型、I型、W型等のどのような形状であってもよい。好ましくは、円型以外の異型断面形状であるのが好ましい。この方が、パイルフィラメント間に複雑な間隙が形成され、保水性を向上せしめる傾向があるからである。
【0016】
本発明に係るパイル編地のグランド部は、異繊度異型異断面疎水性フィラメントから構成される疎水性マルチフィラメント糸条(以下、この異繊度異型異断面疎水性フィラメントのことを、単に「グランドフィラメント」といい、グランドフィラメントから構成される疎水性マルチフィラメント糸条のことを「グランドフィラメント糸条」という。)を30質量%以上含有している。すなわち、グランド部を構成している地糸のうち、少なくとも30質量%以上が、グランドフィラメント糸条となっている。具体的には、1本の地糸中に、グランドフィラメント糸条が30質量%以上含有されており、このような地糸でグランド部が形成されている場合が挙げられる。また、グランド部を構成している地糸のうち、30質量%以上がグランドフィラメント糸条のみからなる場合が挙げられる。グランドフィラメント糸条が30質量%未満になると、パイル部で保水した水を拡散しにくくなり、保水性が低下し、また洗濯後の乾燥が遅くなるので、好ましくない。
【0017】
グランドフィラメント糸条も、パイルフィラメント糸条と同様に、仮撚加工糸条であるのが好ましい。仮撚加工すると、グランドフィラメントに多数のクリンプが形成され、グランドフィラメント相互間に形成される間隙の数が増加して、保水性及び乾燥性が向上するからである。
【0018】
グランドフィラメント糸条を構成するグランドフィラメントは、単一の断面及び単一の繊度を持つものではなく、種々の異なった異型断面と種々の異なった繊度を持つものである。すなわち、グランドフィラメント糸条は、異なった異型断面と異なった繊度を持つグランドフィラメントの集束体となっている。グランドフィラメントの異型断面としては、三角型、四角型、五角型、扁平型、くさび型、或いはアルファベットを象ったC型、H型、I型、W型等が挙げられ、これらの少なくとも二種以上が混合されてグランドフィラメント糸条を構成している。また、グランドフィラメントの単糸繊度としては、0.3〜4.0デシテックスの範囲のものを採用するのが好ましく、異なった単糸繊度のものが混合されてグランドフィラメント糸条を構成している。異繊度異型異断面のグランドフィラメントが集束されてなるグランドフィラメント糸条は、グランドフィラメント相互間に大小の間隙が多数形成される。その結果、毛細管現象を促進することができ、パイル部に保水した水分を速やかに、吸収し拡散することが可能である。したがって、パイル編地全体の保水性をさらに向上させうる。しかも、グランドフィラメント相互間には、比較的大きな間隙も形成されているため、洗濯後の乾燥も速やかに行われる。また、本発明に係るパイル編地が少量の水を吸水した場合、パイル部に吸水した水は、グランド部によって吸水拡散され、パイル部の水によるべとつき感等が軽減される。
【0019】
また、グランドフィラメントも疎水性の合成樹脂で形成されおり、使用される合成樹脂としては、パイルフィラメントの場合と同様のものが用いられる。
【0020】
本発明に係るパイル編地の繊維密度は、1g/cm3以下であるのが好ましく、特に0.5g/cm3以下であるのが好ましい。繊維密度が1g/cm3を超えると、保水性も低下するし、洗濯後の乾燥性も低下する。ここで、繊維密度とは、パイル編地の単位体積当たりの重量のことである。なお、パイル編地の体積を算出する際に使用する、パイル編地の厚さは、JIS L 1096に記載の方法で、測定されるものである。
【0021】
本発明に係るパイル編地の保水率は、300%以上であることが好ましく、特に400%以上であるのが、より好ましい。保水率が300%未満になると、大量の失禁時に、尿をパイル編地で保水することができず、尿もれする恐れがある。また、パイル編地の保水率の上限は1000%以下であるのが好ましく、特に700%以下であるのが実用面で好適である。上限が1000%を超えると、パイル編地が嵩高になりすぎる傾向が生じる。ここで、保水率の測定方法は、以下のとおりである。まず、パイル編地から20cm四方に切り出した試料を準備する。そして、これを、室温20℃、湿度65%の環境で120分間吊り干し乾燥を行った後に重量を測り、元重量とする。続いて、蒸留水の入ったバットを用意し、試料を5 分間完全に浸漬させる。試料を取り出した後、絞らずに室温20℃、湿度65%の環境で吊り干しし、水滴が落ちなくなった時点で重量を測り、浸漬後の重量とする。次に、下記式に従い保水率を算出し、この操作を試料3枚について行って、3枚の平均値を本発明で言う保水率とする。
保水率(%)=[(浸漬後の重量−元重量)÷元重量]×100
【0022】
また、本発明に係るパイル編地の乾燥重量率は、60分で10%以下であることが好ましい。60分での乾燥重量率が10%を超えると、冬期には乾燥速度が遅くなり、また夏季の高温・多湿状態ではカビの原因になり不衛生になりやすくなる。さらには、リネンサプライ等の工場で使用した際には、乾燥時間の短縮化が十分に図れず、低コスト化や省エネが不十分となる。ここで、乾燥重量率の測定方法は、以下のとおりである。まず、パイル編地を、タテ/ヨコ=10cm/10cmの大きさに裁断した試料を準備する。この試料を12時間、温度20℃、湿度65%の環境下で調湿した後に、元重量を測定する。次いで、温度20℃、湿度65%の環境下で試料に純水1mlを滴下し、60分経過後の乾燥重量を測定する。次に、下記式に従い乾燥重量率を算出し、この操作を試料2枚について行って、2枚の平均値を本発明で言う乾燥重量率とする。
乾燥重量率(%)=[(乾燥重量−元重量)÷元重量]×100
【0023】
本発明に係るパイル編地は、長尺状の形態として、従来の綿製編織物の場合と同様にして、そのまま布おむつとして適用される。また、失禁パンツや失禁パッドの布おむつの所定箇所に縫製して、布おむつの素材としても、用いられる。さらに、布おむつに適用する場合、本発明に係るパイル編地を複数枚積層し、積層物として適用することも好ましいことである。複数枚積層した積層物とすることによって、保水率を高めることができ、また平面方向への水の拡散の程度を大きくすることができるからである。
【0024】
以上、本発明に係るパイル編地が主として布おむつに適用される場合について説明したが、その他、一般家庭用品用途、資材用途、副資材用途、工業用品用途、介護衣料用途等に幅広く使用されうるものである。なお、本発明に係るパイル編地が、布おむつに適用される場合には、上記で説明した水は尿と等価のものとして扱われる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係るパイル編地は、グランド部とパイル部とから形成されており、パイル部は、パイルフィラメントからなるパイルフィラメント糸条を30質量%以上含有しており、しかも、パイル密度が高くなっている。したがって、パイルフィラメント相互間に多量の水を保水することができ、保水性が良好であるという効果を奏する。また、グランド部は、グランドフィラメント糸条を30質量%以上含有しているので、保水性が良好であると共に、パイル部に保水された水を、グランド部で平面方向に速やかに拡散しうるという効果を奏する。さらには、グランドフィラメント相互間に形成された比較的大きな間隙の存在によって、洗濯後の乾燥が速くなるという効果も奏する。
【0026】
また、パイルフィラメント糸条及び/又はグランドフィラメント糸条として、仮撚加工糸条を採用した場合には、各フィラメント相互間に形成される間隙の数が更に増加し、保水性及び乾燥性を更に向上させるという効果を奏する。
【実施例】
【0027】
実施例1
パイル糸となる糸条として、図2に示す分割型フィラメントより構成された78デシテックス/48フィラメントの仮撚加工マルチフィラメント糸条を準備した。この分割型フィラメントは、後にパイルフィラメントとなる断面楔状の成分(1b)と、この(1b)を接合している成分(1a)とで形成されている。成分(1b)は、極限粘度0.67のポリエチレンテレフタレートである。成分(1a)は、分子量6000のポリエチレングリコール23重量%及びスルホイソフタル酸2モル%からなる共重合ポリエステルである。また、成分(1b)と成分(1a)の重量割合は、(1b):(1a)=4:1である。なお、成分(1b)がパイルフィラメントとなったときの単糸繊度は、0.14デシテックスであった。
【0028】
パイル編地のグランド部を形成する地糸として、73デシテックス/44フィラメントの仮撚加工マルチフィラメント糸条を準備した。このマルチフィラメント糸条は、ユニチカファイバー株式会社製の商品名「ルミエース」であって、異繊度異型異断面ポリエステルフィラメントから構成されているものであり、グランドフィラメント糸条となるものである。
【0029】
上記したパイル糸及び地糸用いて、図1に示す組織にて福原精機株式会社製 シングルニット編機 30インチ*28G の丸編み機にて、パイル編物を編成した。得られた編物を、サーキュラー染色機(株式会社日阪製作所製)にて、アルカリ濃度:NaOH 10g/リットル、100℃ 30分間で、分割型フィラメントの分割割繊処理を行なった。この結果、図2に示す成分(1a)が溶解除去され、成分(1b)からなるパイルフィラメントが発現した。次いで、サーキュラー染色機(株式会社日阪製作所製)にて、分散染料(DyStar株式会社製 Dianix Blue UN- SE)を0.1%o.w.f.、均染剤(日華化学株式会社製 ニッカサンソルト SN−130)を0.5g/リットル、酢酸を0.2cc/リットル、吸水加工剤(高松油脂株式会社製 SR−1000)を2%o.w.f.使用して、130℃30分にて染色を行い、パイル編地を得た。
【0030】
実施例2
パイル糸となる糸条として、丸断面で非分割型のポリエステルフィラメントで構成された110デシテックス/144フィラメントの仮撚加工マルチフィラメント糸条を用い、分割割繊処理を行わなかった他は、実施例1と同様にしてパイル編地を得た。
【0031】
実施例3
パイル糸となる糸条として、実施例1で用いた78デシテックス/48フィラメントの仮撚加工マルチフィラメント糸条と、丸断面で非分割型のポリエステルフィラメントで構成された83デシテックス/36フィラメントの仮撚加工マルチフィラメント糸条を、交互に使用し、1:1の割合で編成した他は、実施例1と同様にしてパイル編地を得た。
【0032】
実施例4
グランド部を形成する地糸として、実施例1で用いた73デシテックス/44フィラメントの仮撚加工マルチフィラメント糸条と、丸断面で非分割型のポリエステルフィラメントで構成された83デシテックス/36フィラメントの仮撚加工マルチフィラメント糸条を、交互に使用し、1:1の割合で編成した他は、実施例1と同様にしてパイル編地を得た。
【0033】
比較例1
実施例3において、パイル糸となる糸条として、実施例1で用いた78デシテックス/48フィラメントの仮撚加工マルチフィラメント糸条と、丸断面で非分割型のポリエステルフィラメントで構成された83デシテックス/36フィラメントの仮撚加工マルチフィラメント糸条を、1:2の割合で編成した他は、実施例3と同様にしてパイル編地を得た。
【0034】
比較例2
実施例4において、グランド部を形成する地糸として、実施例1で用いた73デシテックス/44フィラメントの仮撚加工マルチフィラメント糸条と、丸断面で非分割型のポリエステルフィラメントで構成された83デシテックス/36フィラメントの仮撚加工マルチフィラメント糸条を、1:3の割合で編成した他は、実施例4と同様にしてパイル編地を得た。
【0035】
比較例3
実施例2において、パイル糸となる糸条として、丸断面で非分割型のポリエステルフィラメントで構成された110デシテックス/144フィラメントの仮撚加工マルチフィラメント糸条と、丸断面で非分割型のポリエステルフィラメントで構成された56デシテックス/12フィラメントの仮撚加工マルチフィラメント糸条を、1:3の割合で編成した他は、実施例2と同様にしてパイル編地を得た。
【0036】
比較例4
パイル糸となる糸条として、丸断面で非分割型のポリエステルフィラメントで構成された83デシテックス/36フィラメントの仮撚加工マルチフィラメント糸条を用いた他は、実施例2と同様にしてパイル編地を得た。
【0037】
比較例5
グランド部を形成する地糸として、丸断面で非分割型のポリエステルフィラメントで構成された83デシテックス/36フィラメントの仮撚加工マルチフィラメント糸条を用いた他は、実施例2と同様にしてパイル編地を得た。
【0038】
実施例1〜4及び比較例1〜5で得られたパイル編地について、パイル部におけるパイルフィラメント糸条の含有率(含有率1)、グランド部におけるグランドフィラメント糸条の含有率(含有率2)及びパイル密度は、表1に示したとおりであった。なお、含有率1及び2の%は、質量%である。
[表1]
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
含有率1 含有率2 パイル密度
(%) (%) (本/cm2
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
実施例1 100 100 96520
実施例2 100 100 34560
実施例3 42 100 52780
実施例4 100 46 86400
比較例1 24 100 17200
比較例2 100 23 86000
比較例3 40 100 8640
比較例4 0 100 8250
比較例5 100 0 34560
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

















【0039】
そして、実施例1〜4及び比較例1〜5で得られたパイル編地について、保水率及び乾燥重量率を測定したところ、表2に示すとおりとなった。なお、保水率及び乾燥重量率の測定方法は、前述したとおりである。
[表2]
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
保水率 重量乾燥率
(%) (%)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
実施例1 558 5.2
実施例2 383 8.1
実施例3 336 7.3
実施例4 485 9.2
比較例1 289 7.2
比較例2 440 11.7
比較例3 248 6.8
比較例4 215 5.8
比較例5 371 14.3
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【0040】
表2に示す結果から明らかなように、実施例1〜4に係るパイル編地は、パイル部はパイルフィラメント糸条を30質量%以上含有しており、グランド部はグランドフィラメント糸条を30質量%以上含有しており、しかも、パイル密度が10000本/cm2以上と高くなっている。したがって、保水性及び乾燥性の両者共に優れている。一方、比較例1に係るパイル編地は、パイル部にパイルフィラメント糸条を約24質量%しか含有していないため、保水性に劣る結果となっている。比較例2に係るパイル編地は、グランド部にグランドフィラメント糸条を約23質量%しか含有していないため、乾燥性に劣る結果となっている。比較例3に係るパイル編地は、パイル密度が10000本/cm2未満となっているため、保水性に劣る結果となっている。比較例4に係るパイル編地は、パイル部にパイルフィラメント糸条を含有しておらず、しかもパイル密度も10000本/cm2未満となっているため、保水性に劣る結果となっている。比較例5に係るパイル編地は、グランド部にグランドフィラメント糸条を含有していないため、乾燥性に劣る結果となっている。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】実施例においてパイル編物を編成したときの編組織の概略図である。
【図2】実施例においてパイル部を形成するのに用いた分割型フィラメントの横断面図である。
【符号の説明】
【0042】
A パイル糸
B 地糸
1a 共重合ポリエステル成分
1b ポリエチレンテレフタレート成分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
編物組織で形成されたグランド部と、該グランド部をベースとして表面に密生している多数のパイルからなるパイル部とで構成されるパイル編地において、前記パイル部は、パイル密度が10000本/cm2以上になっていると共に、単糸繊度1.1デシテックス以下の疎水性フィラメントから構成されるマルチフィラメント糸条を30質量%以上含有しており、前記グランド部は、異繊度異型異断面疎水性フィラメントから構成される疎水性マルチフィラメント糸条を30質量%以上含有していることを特徴とするパイル編地。
【請求項2】
マルチフィラメント糸条及び/又は疎水性マルチフィラメント糸条が、仮撚加工糸条である請求項1記載のパイル編地。
【請求項3】
繊維密度が1g/cm3以下である請求項1又は2記載のパイル編地。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のパイル編地を用いた布おむつ。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のパイル編地を複数枚積層した積層物を用いた布おむつ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−169682(P2006−169682A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−365659(P2004−365659)
【出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【出願人】(399065497)ユニチカファイバー株式会社 (190)
【Fターム(参考)】