説明

布への樹脂含浸装置

【課題】
樹脂が含浸された布を巻き取る巻取り棒の表面に複数の針を設けて、重くてスリップし易い樹脂が含浸された布に針を挿通して確実に巻き取る。
【解決手段】
樹脂含浸プール1で樹脂が含浸された布3は、巻取り棒8に順次巻き取られる。この巻取り棒8の表面には針9…が多数突設され、巻き取る布3を挿通/貫通する。これにより、樹脂が含浸した布3を容易に巻回でき、巻回する布3にしわやねじれが生じない。この樹脂が含浸された布3は、垂直方向に対して1度乃至60度傾斜し、この布3の傾斜面の下に上記巻取り棒8及び針9…が位置する状態とされる。巻き取られる布が傾斜していると、針9…が布3を容易に挿通して針9が布3から外れにくくなる。樹脂が含浸された布3はほぼ垂直方向に垂下されるので、含浸された樹脂が布3から外に垂れず、垂れても布を染み渡っていく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布への樹脂含浸装置に関し、特に布に樹脂を含浸させて巻き取る装置に関し、このような樹脂が含浸された布は石綿資材の封じ込め、屋根の補強などに使用される。
【背景技術】
【0002】
建造物を取り壊して、新たに建造物を新築すると、膨大な建築廃材が出る。近年、このような建築廃材を出さないようにすることが、環境対策上強く求められている。また、屋根だけを新たに建造しなおしても、やはり膨大な建築廃材が出る。また、新たな建造中は、当然のことながら当該建造物を使用することができず不便であった。
【0003】
特に、石綿(アスベスト)屋根資材は、人体に非常に有害であり、石綿粒子が人間の肺の中に入ると肺ガンを起こす危険も指摘されている。このような石綿屋根資材は年月が経過するにしたがって劣化し、表面から石綿粒子が飛散する危険があった。これを解決するため以下の特許文献1〜4に示す従来技術が存在する。しかし、これは塗料だけで封じ込めるものであり、強度的及び耐久性に問題があった。
【0004】
そこで本件出願人は、下記特許文献5〜7に示す、石綿資材の封じ込め方法、屋根補強装置などを出願した。このような石綿資材の封じ込め方法、屋根補強装置には、布が用いられ、この布には樹脂が含浸され、この布が石綿資材または屋根の表面に付着される。
【0005】
【特許文献1】特開平5−176844公報
【特許文献2】実用新案登録2581123号公報
【特許文献3】実開平4−25628公報
【特許文献4】特開平6−49391公報
【特許文献5】特開2004−251102号公報
【特許文献6】特開2005−194162号公報
【特許文献7】特開2006−9381号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の第一の目的は、布を用いて石綿資材の封じ込め、屋根の補強をするにあたり、樹脂が含浸した布を迅速かつ容易に提供することである。本発明の第二の目的は、樹脂が含浸した布を容易に巻回でき、巻回する布にしわやねじれが生じないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、繰り出される布に対して、防水性で液体の樹脂を当該布に含浸させる樹脂含浸機構と、 この樹脂含浸機構で樹脂が含浸された布を巻取る巻取り棒と、 この巻取り棒の外側面に突設され、上記樹脂が含浸された布を挿通する複数の針とを備えた。
【0008】
また、本件発明は、上記樹脂含浸機構から上記巻取り棒へかけて、樹脂が含浸された布は、垂直方向に対して1度乃至60度傾斜し、この布の傾斜面の下に上記巻取り棒及び針が位置する状態とされるようにした。
【発明の効果】
【0009】
樹脂が含浸された布は一般的には重量があり、巻取り棒に対してスリップしてしまい、円滑に巻回することができない。本件発明では、樹脂が含浸された布を挿通する複数の針が巻取り棒の外側面に突設されているので、樹脂が含浸された布を巻取り棒の外側面に確実に係合でき、樹脂が含浸された布を円滑に巻き取ることができる。
【0010】
また、樹脂が含浸された布が傾斜していると、複数の針が上記布を容易に挿通し、上記複数の針が上記布から外れにくくなり、樹脂が含浸された布を円滑に巻き取ることができる。さらに、このような複数の針によって、樹脂が含浸した布を容易に巻回でき、巻回する布にしわやねじれが生じないようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(1)樹脂含浸装置
図1乃至図4は樹脂含浸装置の側面、平面、正面、斜視全体などを示す。樹脂含浸プール1は底の浅い直方体の桶状で、中に防水性かつ液体で、布に含浸可能な樹脂が満たされている。
【0012】
布蓄積軸2には、繊維製の長尺状の布3が巻回されている。この布蓄積軸2から順次繰り出された/送り出された布3は、引き入れローラ4で繰り出し方向が変えられ、含浸開始ローラ5及び含浸終了ローラ6の間で上記樹脂が順次含浸され、引き上げローラ7で樹脂から引き上げられる。含浸開始ローラ5及び含浸終了ローラ6の下部は、上記樹脂含浸プール1の液体樹脂に浸っており、この2つのローラ5、6の間で、布3に上記樹脂が含浸される。
【0013】
引き上げローラ7からの樹脂が含浸された布3は、巻取り棒8に順次巻き取られる。この巻取り棒8の外側面には、長手方向に平行に、一列に並んで複数の針9…が等間隔で突設されている。この針9…は、ほぼ同じ長さ、ほぼ同じ太さ、ほぼ同形、ほぼ同大またはほぼ同材質である。布3が巻取り棒8に巻き取られるごとに、この針9…は布3を挿通/貫通する。これにより、樹脂が含浸された布3を巻取り棒8の外側面に確実に係合でき、樹脂が含浸された布3を円滑に巻き取ることができる。
【0014】
上記巻取り棒8は円柱状の棒状で両端にほぼ立方体状の回転規制部12、12が取り付けられている。ほぼ立方体状の回転規制部12、12の前後側面が凸状に湾曲している。上記巻取り棒8は複数が、一対の縦ガイド10、10の間に上から順に積層される。
【0015】
この巻取り棒8の上記針9…は水平方向の向きとなるように積層される。一番下の巻取り棒8は、水平方向に動かす一対の棒送りシリンダー11、11によって、回転規制部12、12が押されて、上記引き上げローラ7の下に送り出され、布3に当接する。
【0016】
布3を挟んで上記一対の棒送りシリンダー11、11の反対側には、逆水平方向に動かす針刺しシリンダー16、16が設置され、この針刺しシリンダー16、16のピストンの先端には針受け杆17が架渡され、この針受け杆17の側面には複数の針受け筒18…が突設されている。この針受け筒18…は、上記巻取り棒8の針9…と同数同位置で、一対一で対応しており、針9…を出没自在に収容可能となっている。
【0017】
上記棒送りシリンダー11、11によって巻取り棒8及び針9…が水平方向に押し出されるとき、針刺しシリンダー16、16によって針受け筒18…も逆水平方向に押し出されて布3に当接し、布3と巻取り棒8とが互いに当接し、巻取り棒8の針9…が布3を挿通/貫通する。
【0018】
この針9…が布3を挿通/貫通するとき、布3は垂直方向に対して1度乃至60度、望ましくは2度乃至45度、より望ましくは3度乃至30度、さらに望ましくは4度乃至15度、例えば5度に傾斜している。この傾斜は、布3の傾斜面の下に巻取り棒8及び針9…が位置する状態とされる。これにより、複数の針9…が上記布3を容易に挿通/貫通し、複数の針9…が上記布3から外れにくくなり、樹脂が含浸された布3を円滑に巻き取ることができる。
【0019】
このように、樹脂が含浸された布3が傾斜していると、上記複数の針9…が布3から外れにくくなり、樹脂が含浸された布3を円滑に巻き取ることができる。さらに、このような複数の針9…によって、樹脂が含浸した布3を容易に巻回でき、巻回する布3にしわやねじれが生じないようにすることができる。
【0020】
また、樹脂が含浸された布3はほぼ垂直方向に垂下されるので、含浸された樹脂が布3から外に垂れてしまうことがない。また、たとえ樹脂が垂れても布3を染み渡っていくので、布3への樹脂の含浸をより補助できる。
【0021】
上記針刺しシリンダー16、16の下方には、垂直方向に動かす棒下げシリンダー37、37が設けられている。この棒下げシリンダー37、37のピストンの先端には、水平方向に動かす棒受け取りシリンダー38、38が取り付けられている。この棒受け取りシリンダー38、38のピストンの先端には、2本の棒状の挟持ガイド39、39が取り付けられている。
【0022】
この挟持ガイド39、39は、上動及び水平動されて、その間には、上記巻取り棒8の回転規制部12、12が挟持される。このときに、上述の布3と巻取り棒8とが互いに当接し、巻取り棒8の針9…が布3を挿通/貫通する。布3に針9…を挿通/貫通させた巻取り棒8は、棒下げシリンダー37、37の復帰動によって下動される。
【0023】
上記針刺しシリンダー16、16一方の下方の外側には、巻取りモーター31が設けられている。上記針刺しシリンダー16、16他方の下方の外側には、軸受け32が設けられている。これら、巻取りモーター31と軸受け32との下には、水平方向に動かすチャックシリンダー33、34が設けられている。
【0024】
このチャックシリンダー33、34によって、巻取りモーター31と軸受け32とが互いに接近するように水平方向に移動され、巻取りモーター31の回転軸と軸受け32の軸とが、上記逆水平動及び下動された巻取り棒8の両端に係合固定される。
【0025】
これにより、巻取りモーター31の回転によって、巻取り棒8が回転され、樹脂が含浸された布3が巻取り棒8に順次所定量巻き取られていく。この直前に、棒受け取りシリンダー38、38の復帰動によって挟持ガイド39、39が逆水平動されて、挟持ガイド39、39が回転規制部12、12から離脱される。
【0026】
上記棒送りシリンダー11、11のやや下には、水平方向に動かす一対の布固定シリンダー21、21が設けられ、この布固定シリンダー21、21のピストンの先には布押さえ部22、22が取り付けられ、この布押さえ部22、22は上記布3を押して布受け部23、23に当接し、布押さえ部22、22と布受け部23、23との間で、当該布3の幅方向の両端が挟持固定される。
【0027】
上記布固定シリンダー21、21の下には、布3の幅方向に沿って、水平方向に延びる長尺状の布カットシリンダー25が設けられている、この布カットシリンダー25によって、布カッター26が水平方向にスライド可能となっている。
【0028】
この布カッター26の先端は、布3の端の外側に位置しており、布カットシリンダー25によって布カッター26がスライドすると、両端が挟持固定された両端付近を横断するように布3が切断される。この切断位置は、上記布押さえ部22、22と布受け部23、23との間で布3の両端が挟持固定される位置のすぐ下である。
【0029】
この布3が切断され、樹脂が含浸された布3が巻き取られた巻取り棒8から、チャックシリンダー33、34の復帰動によって、巻取りモーター31の回転軸と軸受け32の軸とが外れる。すると、布3が巻き取られた巻取り棒8は自重で落下して、ストックスロープ41に沿ってスライドし、複数の布3が巻き取られた巻取り棒8が順次ストックされる。
【0030】
上記ストックスロープ41は板状で傾斜しており、下に向かうほど湾曲して傾斜が緩やかになっている。したがって、落下した布3が巻き取られた巻取り棒8に加速がつくことはなく、ブレーキがかかる。
【0031】
図6は、樹脂が含浸された布3が巻き取られた巻取り棒8に対して逆の回転モーメント/回転方向/回転付勢を付与する機構を示す。巻取り棒8に巻き取られた樹脂が含浸された布3の端は垂下して、巻き取った布3の端の重みによって、図6において、反時計方向に回転モーメント/回転方向/回転付勢が付与される。
【0032】
上記縦ガイド10、10の下方には、鎖43、43が垂下され、これらの鎖43、43の間にも鎖43が垂下されている。この鎖43…には、巻取り棒8に巻き取られた樹脂が含浸された布3が接触する。この鎖43…が重く、樹脂が含浸された布3に対する摩擦が大きい。
【0033】
これにより、鎖43…の重みまたは/及び鎖43…への摩擦によって、巻き取った布3の端の重みによる上記回転モーメント/回転方向/回転付勢と逆の時計方向に回転モーメント/回転方向/回転付勢が付与される。この結果、巻取り棒8に巻取られた布3が、解かれる方向に回転されないようにされる。
【0034】
このような逆回転モーメント/回転方向/回転付勢を付与する素材としては、金属製の鎖43…のほか、面ファスナー、ベルト、柱、壁、板、回転ローラなど、摩擦が大きいまたは重みがあればよい。なお、鎖43…は、図1乃至図4には示されていないが、実際には垂下設置されている。
【0035】
図7は、上記巻取り棒8の端とストックスロープ41の端とを示す。上記巻取り棒8の端は、上述のようにほぼ立方体状の回転規制部12、12が形成されていて、この回転規制部12、12の下面がストックスロープ41の上面を滑って回転されないようにされる。
【0036】
巻取り棒8の端は、ストックスロープ41の端縁の上をスリップしていく。巻取り棒8の端は、ジュラコン樹脂などの、磨耗に強い素材からなっている。回転規制部12、12もジュラコン樹脂からなっていてもよい。
【0037】
(2)布3とこの布3に含浸される樹脂
図5は上記布3の部分拡大を示す。上記布3の具体的製品としてはユピカマットのTシリーズ、MCタイプ(日本ユピカ株式会社製品)などがよい。上記布3は、織布または不織布の布またはマットであり、クッション性はない。
【0038】
この布3の各糸または繊維の隙間は、上記含浸される樹脂の粘度がよく含浸する隙間に選択される。例えば樹脂の粘度が0.1ポイズ乃至50ポイズであれば、布3の糸または繊維の太さを表す糸番手が15番から25番、若しくは糸または単繊維の太さは0.5〜15デニール、好ましくは1〜5デニールであり、布として織り込まれたまたは編まれた各糸または各繊維の糸密度または繊維密度が1インチ当たり21本から53本となる。
【0039】
この布3は、ポリエチレンテレフタレート製またはナイロン製などの合成樹脂製、玄武岩繊維、ガラス繊維、ホウ素繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、炭素繊維、アラミド繊維、鋼繊維などであり、上記不織布のフィラメント糸がポリエチレンテレフタレートまたはナイロンの合成樹脂で成形されたものである。
【0040】
フィラメント糸から成形された不織布のフィラメント糸およびその交絡部が上記不織布の内部空隙の一部を埋める熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂によって被覆され、上記内部空隙の残りが上記上層樹脂3または/及び下層樹脂1の含浸を可能にする樹脂含浸許容空隙を形成し、上記熱硬化性樹脂発泡体または上記熱可塑性樹脂発泡体の内包する気泡が熱可塑性樹脂皮膜または熱硬化性樹脂被膜で包まれた独立気泡であり、上記樹脂含浸許容隙が布2の体積全体の20〜40容量%を占め、かさ密度が0.03〜0.06g/cm3である。
【0041】
図5において、11は合成繊維のフィラメント糸、12は上記フィラメント糸11の交絡部、13は上記フィラメント糸1およびその交絡部12を被覆している熱可塑性樹脂発泡体または熱硬化性樹脂発泡体であり、該発泡体13内には熱可塑性樹脂皮膜または熱硬化性樹脂被膜で包まれた多数の独立気泡14を内包している。15は上記発泡体13の間に形成される空隙であり、この空隙15内に二次加工時の熱硬化性樹脂溶液が含浸される。
【0042】
布3が不織布である場合は、フィラメント糸をランダムに配列、重ね合わせ、必要に応じてニードルパチング、樹脂加工されたスパンボンド織物といわれるものが使用される。不織布の厚みおよび目付重量は特に限定されないが、この発明を好適に達成するには厚み2〜6mm、目付重量50〜170g/m2が好ましい。
【0043】
上記熱可塑性樹脂発泡体または熱硬化性樹脂発泡体中に内包されている独立気泡は、後記する発泡性熱可塑性樹脂粒子の膨張により形成されるものであって、その平均直径は45〜135マイクロが好ましく、平均直径が45マイクロ未満であると布2の厚みが小さく、比重が大きくなり、かつ樹脂含浸許容隙率が低下し、軽量にして高剛性の強化プラスチックが得られず、これに反し平均直径が135マイクロを越えると独立気泡の破泡現象が生じ易く、圧縮弾性回復性が低下して好ましくない。
【0044】
上記の独立気泡が増大して布2の比重が0.03未満になると後記する樹脂含浸許容空隙が不足し、反対に独立気泡が減少して布2の比重が立0.06を超えると上記の樹脂含浸許容空隙が過大になり、いずれもこの発明の目的に使用できない。
【0045】
布3の空隙率(単位体積あたりの糸・繊維以外の空間の体積の比率)は20〜40%であり、空隙率が20%未満であると、布3の風合いが硬くなり二次加工樹脂含浸量が低くなりすぎて、硬質発泡ポリウレタン、硬質ポリ塩化ビニル板などの非含浸タイプの挙動に近似し、強化ブラスチツクの曲げ弾性、曲げ強度、耐衝撃強度が低下して好ましくない。また空隙率が40%を越えると、布2の圧縮弾性回復性が低下し、保管中に体積を減少し、また二次加工時の樹脂含浸量が多くなって重くなり不経済となる。
【0046】
上記の構造を有する布3は、通常その厚みが1〜20mm、望ましくは1〜10mm、より望ましくは1〜5mm、さらに望ましくは1〜3mm、目付重量が50〜900g/m2、望ましくは50〜450g/m2、より望ましくは50〜270g/m2、さらに望ましくは50〜170g/m2であるが、上記の範囲のものに限定されるものではない。この布3には、パンチ加工などによって穿孔加工を施してもよい。
【0047】
上記布3に含浸される樹脂は、熱硬化性若しくは熱可塑性であり、または無発泡性または発泡性であり、防水性である。例えば、不飽和ポリエステル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、不飽和/飽和アクリル樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリウレタンなどのほか、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリプロピレン、メタクリル樹脂、ポリカーボネード、ポリアミド、ポリアセタール、フッ素樹脂、これらの混合物などである。
【0048】
このうち、ナイロン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂が望ましく、不飽和ポリエステル樹脂がより望ましい。また、オルソ系、イソフタル酸系、ビスフェノール系いずれでもよい。具体的製品としてはユピカ4183APT、ユピカ4183PT(日本ユピカ株式会社製品)がよい。
【0049】
上記樹脂が含浸された布3は、巻取り棒8から引き出されて、石綿の表面に付着され、石綿の飛散を防止する石綿資材の封じ込めに使用される。これにより、布3に含浸された樹脂によって石綿の表面に布3が密着・接着されるので、石綿の飛散が完璧に防止される。
【0050】
本装置によって樹脂が含浸された布が付着される、石綿資材が使われている箇所としては、屋根のほか、ほか、建築物/施設の屋上床面、建築物/施設の天井/床の上面/下面/傾斜面、建築物/施設の垂直面/傾斜面の壁面、水平/垂直/傾斜の地中埋設/地上の土管/管/電柱/鉄柱/柱/塔/門/橋/道路/トンネルといった構造物の外表面/内表面など、どのような場所でもよい。
【0051】
上記樹脂が含浸された布3は、巻取り棒8から引き出されて、屋根の表面に付着され、屋根の補強に使用される。これにより、布3に含浸された樹脂によって屋根の表面に布が密着・接着されるので、屋根の強度がより高まる。
【0052】
本装置によって樹脂が含浸された布が付着されて、補強される屋根としては、工場の屋根、アーケードの屋根、ビルディングの屋上の床面、ドーム型屋根、スポーツ施設の屋根、公共施設などの大きな施設の屋根、プレハブ工法による住宅の屋根、木造家屋の屋根、鉄筋コンクリート建造物の屋根/屋上床面などといった建築物/施設の屋根の上面または下面(屋根裏)でもよく、これらの屋根はスレート屋根に限られずどのような石綿資材でもよいし、これら屋根等の素材は石綿資材以外の素材が使われてもよい。
【0053】
(3)他の実施の形態
本発明は、上記実施例に限定されず、種々変更可能である。例えば、上記巻取り棒8の針9…は巻取り棒8の長手方向に沿って一部または全部等間隔でならずに突設されてもよい。また、巻取り棒8の針9…は、巻取り棒8の周回方向に沿って、等間隔に突設されてもよいし、一部または全部等間隔でならずに突設されてもよい。
【0054】
巻取り棒8の針9…は巻取り棒8の長手方向に平行にならずに、ジグザグに配列されてもよいし、湾曲して配列されてもよいし、複数列に配列されてもよい。巻取り棒8の針9…は、それぞれ、異なる長さでもよいし、異なる太さでもよいし、異なる形でもよいし、異なる大きさでもよいし、異なる材質でもよい。
【0055】
巻取り棒8の針9…は、直線状の針状であるが、円錐状、円柱状、角錐状、角柱状、螺旋状、フック状、S字状、J字状、これらの複合体など、太さが変化したり、湾曲したりしてもよい。これにより、針9…にいったん挿通/貫通された布3が容易に離脱しなくなる。巻取り棒8の針9…は、釘状、とげ状など布に挿通できる突起状であれば何でもよい。
【0056】
上記布3を挿通/貫通する巻取り棒8の針9…は、はじめから巻取り棒8に突設されていたが、布3に対して針9…を貫通させ、この後に、この貫通した針9…を巻取り棒8に突き刺すようにしてもよい。
【0057】
上記布固定シリンダー21、布押さえ部22、布受け部23の一部または全部は省略されてもよい。この場合、巻取り棒8、針9…、針受け筒18…によって、布3の切断時に布3が固定されるまた、布カットシリンダー25、布カッター26の一部または全部は省略されてもよい。この場合、手作業で布3が切断される。
【0058】
上記布カッター26の先端は、上記布押さえ部22、布受け部23の上に位置してもよい。これにより、上記布押さえ部22及び布受け部23と、上記巻取り棒8の針9…及び針受け筒18…との間の張られた布3の部分を切断することができる。
【0059】
上記棒下げシリンダー37、37、棒受け取りシリンダー38、38、挟持ガイド39、39の一部または全部は省略されてもよい。この場合、巻取りモーター31、軸受け32、チャックシリンダー34、35の位置が上に移動され、布3に巻取り棒8の針9…が挿通/貫通される。
【0060】
この後、巻取り棒8の針9…と針受け筒18…とが互いに離間され、さらに巻取りモーター31の回転軸及び軸受け32の軸が、上記巻取り棒8の両端に係合固定される。さらにこの後、巻取りモーター31が回転されて、巻取り棒8が回転され、樹脂が含浸された布3が巻取り棒8に順次所定量巻き取られていく。
【0061】
上記布3はロール状に蓄積されるほか、折りたたんで蓄積されてもよいし、織機から織られて供給されてもよい。樹脂を布3に含浸させる機構は上記プール形式のほか、樹脂が布3の上から降り注いだり、刷毛などで布3に塗布されたり、スプレー含などで吹き付けられても良い。
【0062】
上記樹脂が含浸された布3が巻き取られた巻取り棒8は、ストックスロープ41上を回転してスライドする。この回転は、巻取り棒8に巻かれた布3がほどかれる向きであるが、針9…が布3を固定しているので、巻かれた布3がほどかれることはない。
【0063】
なお、ストックスロープ41の傾斜の向きは図1において左下方向ではなく、右下方向にしてもよい。巻取り棒8の回転は、巻取り棒8に巻かれた布3がほどかれる向きと逆になって、巻かれた布3がほどかれなくなる。
【0064】
上記樹脂が含浸された布3が巻き取られた巻取り棒8は、ストックスロープ41を回転されずに移動されて複数蓄積されてもよい。この場合、ストックスロープ41の両縁には、ガイドが形成され、このガイドに巻取り棒8の回転規制部12の平面部分が接触したまま回転せずにスライドする。これにより、各巻取り棒の各布が回転しないので、一方の巻取り棒の針で他方の巻取り棒の布に傷をつけたり破いたりすることがないし、周囲に樹脂が付着してしまうことがない。
【0065】
上記ストックスロープ41にストックされる樹脂が含浸された布3が巻かれた巻取り棒8のそれぞれの間には、スペーサーが手作業又は自動的に挟まれてもよい。このスペーサーは、表面にフッ素加工、防水加工、防油加工などがなされ、金属板・樹脂板などの上記樹脂が付着しない構造となっている。これにより、各巻取り棒8の各布3の樹脂がくっ付き合うことがなく、布3にしわやねじれが生じない。
【0066】
(4)他の発明の効果
[1]繊維製の長尺状の布を蓄積する布蓄積部と、 この蓄積部より繰り出される布に対して、防水性で液体の樹脂を当該布に含浸させる樹脂含浸機構と、 この樹脂含浸機構で樹脂が含浸された布を巻取る巻取り棒と、 この巻取り棒の外側面に突設され、上記樹脂が含浸された布を挿通する複数の針とを備えたことを特徴とする布への樹脂含浸装置。このような複数の針によって、樹脂が含浸した布を容易に巻回でき、巻回する布にしわやねじれが生じないようにすることができる。
【0067】
[2]上記樹脂含浸機構から上記巻取り棒へかけて、樹脂が含浸された布は、垂直方向に対して1度乃至60度傾斜し、この布の傾斜面の下に上記巻取り棒及び針が位置する状態とされることを特徴とする請求項1記載の布への樹脂含浸装置。
【0068】
これにより、樹脂が含浸された布はほぼ垂直方向に垂下されるので、含浸された樹脂が布から外に垂れてしまうことがなく、垂れても布を染み渡っていくことができる。樹脂が含浸された布が傾斜していると、複数の針が上記布を容易に挿通し、上記複数の針が上記布から外れにくくなり、樹脂が含浸された布を円滑に巻き取ることができる。
【0069】
[3]上記複数の針は、同じ長さ、同じ太さ、同形、同大、同材質であり、巻取り棒の長手方向に平行に、一列に並んで、等間隔で突設されていることを特徴とする請求項1または2記載の布への樹脂含浸装置。これにより、巻き取る布の幅方向にわたって均等に力がかかり、巻き取る布にしわがよったりねじったりすることがなくなる。
【0070】
[4]上記巻取り棒に所定量巻取られた上記樹脂が含浸された布は幅方向の両端を固定され、この固定された両端付近を横断するように切断機構で切断されることを特徴とする請求項1、2または3記載の布への樹脂含浸装置。これにより、切断しにくい樹脂が含浸された布でも容易に切断できる。
【0071】
[5]上記巻取り棒に所定量巻取られた上記樹脂が含浸された布には、摩擦の大きな素材が接触され、この摩擦によって、巻き取った布の端の重みによる回転モーメントと逆の回転モーメントが掛けられることを特徴とする請求項1、2、3または4記載の布への樹脂含浸装置。これにより、巻取り棒に巻取られた布が解かれる方向に回転されない。
【0072】
[6]上記樹脂が含浸された布は、石綿の表面に付着され、石綿の飛散を防止する石綿資材の封じ込めに使用されることを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載の布への樹脂含浸装置。布に含浸された樹脂によって石綿の表面に布が密着・接着されるので、石綿の飛散が完璧に防止される。
【0073】
[7]上記樹脂が含浸された布は、屋根の表面に付着され、屋根の補強に使用されることを特徴とする請求項1、2、3、4、5または6記載の布への樹脂含浸装置。布に含浸された樹脂によって屋根の表面に布が密着・接着されるので、屋根の強度がより高まる。
【0074】
[8]上記巻取り棒に巻取られた樹脂が含浸された布は回転されずに移動されて複数蓄積されることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6または7記載の布への樹脂含浸装置。これにより、各巻取り棒の各布が回転しないので、一方の巻取り棒の針で他方の巻取り棒の布に傷をつけたり破いたりすることがないし、周囲に樹脂が付着してしまうことがない。
【0075】
[9]上記樹脂が含浸された布が巻き取られた巻取り棒は、巻取り棒に巻かれた布がほどかれる向きと逆向きに回転されて複数蓄積されることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7または8記載の布への樹脂含浸装置。これにより、巻取り棒に巻かれた布がほどかれなくなる。
【0076】
[10]上記樹脂が含浸された布が巻き取られた巻取り棒は、巻取り棒に巻かれた布がほどかれる向きに回転されて複数蓄積されることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8または9記載の布への樹脂含浸装置。この場合、巻取り棒の針が巻き取った布を固定しているので、布がほどかれることはない。
【0077】
[11]上記蓄積される樹脂が含浸された布が巻かれた巻取り棒のそれぞれの間には、スペーサーが挟まれることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9または10記載の布への樹脂含浸装置。これにより、各巻取り棒の各布の樹脂がくっ付き合うことがなく、布にしわやねじれが生じない。
【産業上の利用可能性】
【0078】
樹脂が含浸された布を巻き取る巻取り棒の表面に複数の針を設けて、重くてスリップし易い樹脂が含浸された布に針を挿通して確実に巻き取る。樹脂含浸プール1で樹脂が含浸された布3は、巻取り棒8に順次巻き取られる。この巻取り棒8の表面には針9…が多数突設され、巻き取る布3を挿通/貫通する。これにより、樹脂が含浸した布3を容易に巻回でき、巻回する布3にしわやねじれが生じない。
【0079】
この樹脂が含浸された布3は、垂直方向に対して1度乃至60度傾斜し、この布3の傾斜面の下に上記巻取り棒8及び針9…が位置する状態とされる。巻き取られる布が傾斜していると、針9…が布3を容易に挿通して針9が布3から外れにくくなる。樹脂が含浸された布3はほぼ垂直方向に垂下されるので、含浸された樹脂が布3から外に垂れず、垂れても布を染み渡っていく。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】樹脂含浸装置の側面図を示す。
【図2】樹脂含浸装置の平面図を示す。
【図3】樹脂含浸装置の正面図を示す。
【図4】樹脂含浸装置の斜視図を示す。
【図5】布3の部分拡大図を示す。
【図6】樹脂が含浸された布3が巻き取られた巻取り棒8に対して、逆の回転モーメントを付与する機構を示す。
【図7】上記巻取り棒8の端とストックスロープ41の端とを示す。
【符号の説明】
【0081】
1…樹脂含浸プール、2…布蓄積軸、
3…布、4…引き入れローラ、
5…含浸開始ローラ、6…含浸終了ローラ、
7…引き上げローラ、8…巻取り棒、
9…針、10…縦ガイド、
11…棒送りシリンダー、12…回転規制部、
16…針刺しシリンダー、17…針受け杆、
18…針受け筒、21…布固定シリンダー、
22…布押さえ部、23…布受け部、
25…布カットシリンダー、26…布カッター、
31…巻取りモーター、32…軸受け、
34、35…チャックシリンダー、
37…棒下げシリンダー、38…棒受け取りシリンダー、
39…挟持ガイド、41…ストックスロープ、
43…鎖。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維製の長尺状の布を蓄積する布蓄積部と、
この蓄積部より繰り出される布に対して、防水性で液体の樹脂を当該布に含浸させる樹脂含浸機構と、
この樹脂含浸機構で樹脂が含浸された布を巻取る巻取り棒と、
この巻取り棒の外側面に突設され、上記樹脂が含浸された布を挿通する複数の針とを備えたことを特徴とする布への樹脂含浸装置。
【請求項2】
上記樹脂含浸機構から上記巻取り棒へかけて、樹脂が含浸された布は、垂直方向に対して1度乃至60度傾斜し、この布の傾斜面の下に上記巻取り棒及び針が位置する状態とされることを特徴とする請求項1記載の布への樹脂含浸装置。
【請求項3】
上記複数の針は、同じ長さ、同じ太さ、同形、同大、同材質であり、巻取り棒の長手方向に平行に、一列に並んで、等間隔で突設されていることを特徴とする請求項1または2記載の布への樹脂含浸装置。
【請求項4】
上記巻取り棒に所定量巻取られた上記樹脂が含浸された布は、幅方向の両端を固定され、この固定された両端付近を横断するように切断機構で切断されることを特徴とする請求項1、2または3記載の布への樹脂含浸装置。
【請求項5】
上記巻取り棒に所定量巻取られた上記樹脂が含浸された布には、摩擦の大きな素材が接触され、この摩擦によって、巻き取った布の端の重みによる回転モーメントと逆の回転モーメントが掛けられることを特徴とする請求項1、2、3または4記載の布への樹脂含浸装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−63678(P2008−63678A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−240735(P2006−240735)
【出願日】平成18年9月5日(2006.9.5)
【出願人】(398016212)オオブユニティ株式会社 (3)
【出願人】(504334784)株式会社デンソーファシリティーズ (9)
【Fターム(参考)】