説明

布団の防ダニ処理方法及び装置

【課題】布団わたをホウ酸塩ナトリウ水溶液で均一に濡らし、脱水、乾燥してダニが生息できない布団を提供するための実用的な方法を提案する。
【解決手段】布団をホウ酸塩水溶液で濯ぎ、ホウ酸塩水溶液を脱水回収し、回収液を精製、濃度調整して再利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は布団を防ダニ処理する方法及び装置に関する。さらに詳しくは、布団に無機ホウ素化合物を含浸する方法及び装置に関する。
【0002】
布団は、快適な睡眠をとるための必需品であるが、同時にダニ、ノミ、カビなどの繁殖媒体でもある。特にダニは安眠を妨げるだけでなく、喘息やアトピー性皮膚炎などの深刻な疾患と密接に関係することが知られている。
【背景技術】
【特許文献1】特開2005−30604
【非特許文献1】(株)帝松サービス「平成16年度中小企業・ベンチャー挑戦支援事業のうち実用化研究開発事業実績報告書:ホウ酸塩を含浸させた高機能不織布の開発」、2005年
【0003】
布団に生息するダニを駆除する方法として、布団わたにホウ酸塩を含浸する方法がある。(株)帝松サービスの研究では、布団わたに八ホウ酸二ナトリウム四水和物(DOT)1%を含浸させた綿布団を25〜30℃、湿度75%の環境に置き、約100頭のヤケヒョウヒダニを放流したところ、2ヶ月後にはダニは完全に死滅し、その後増殖は観察されなかった。
【0004】
これに対し、DOTを含浸しない綿布団ではヤケヒョウヒダニは2ヶ月後に7,000頭に達した。DOTの代わりにホウ酸やホウ砂を使用しても同様の効果が認められた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
布団わたにホウ酸塩を含浸するには、布団をホウ酸塩水溶液に浸漬した後、脱水、乾燥すればよい。この方法は、実験室的には容易であるが、多数の布団を連続的に処理するためには、いくつかの課題を解決しなければならない。
【0006】
ホウ酸塩水溶液を含んだ布団は、かなりの重量があり、かつ形状が一定しないため、取り扱い方によっては、布団を破損したり、品質を低下させたりするおそれがある。
【0007】
また、水質汚濁防止法により事業所排水中のホウ素濃度は10ppm以下に制限されるため、脱水時に発生するホウ素を含む排水を適切に処理することが要求される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第一の本発明は、布団をホウ酸換算濃度0.2%以上、10%以下のホウ酸塩水溶液で濯ぎ、ついでホウ酸塩水溶液を脱水回収し、さらに回収液を精製、濃度調整して再利用することを特徴とする布団の防ダニ処理方法である。
【0009】
第二の本発明は、第一の本発明を実行するための処理装置であり、洗濯脱水装置、ホウ酸塩水溶液タンク、ホウ酸塩水溶液精製装置を必須要素とする。
【0010】
本発明でいう布団とは、木綿、羊毛、羽毛、合成繊維等の詰め物を布や皮革等で被覆した構造をもつもので、敷き布団、かけ布団、座布団、クッション、枕、ぬいぐるみなどの総称である。
【0011】
本発明でいうホウ酸塩とは、ホウ素と酸素を主要元素とする無機化合物の総称で、通常はホウ酸、ホウ砂、八ホウ酸二ナトリウム四水和物、あるいはこれらの混合物である。
【0012】
本発明で布団を濯ぐには、布団を所定濃度のホウ酸ナトリウム水溶液に浸し、足踏みなどの方法で布団の詰め物をまんべんなく濡らした後、脱水してもよいが、最も好ましいのは市販の布団洗濯機を使用することである。
【0013】
布団洗濯機は洗浄機能、濯ぎ機能及び脱水機能を備えている。処理すべき布団を洗濯機に装填し、適量のホウ酸塩水溶液を供給し、濯ぎ機能を利用してホウ酸塩水溶液が布団わた組織を完全に濡らすようにする。濯ぎが終了したら排水弁を開いてホウ酸塩水溶液を排出し、脱水工程に移る。排水は全てタンクに戻す。洗濯機中の布団を取りし、形を整えて乾燥する。
【0014】
汚れた布団を防ダニ処理する場合は、通常の方法で洗浄、濯ぎ、脱水し、次ぎにホウ酸ナトリウム水溶液で濯ぎ、脱水し、ホウ酸ナトリウム水溶液をタンクに返し、布団を整形、乾燥する。ホウ酸ナトリウムの濃度は、ホウ酸換算で布団わた乾燥重量の0.1〜5.0%、好ましくは0.3〜1.0%のホウ酸塩が布団わた内に残留するように選定する。
【0015】
回収されるホウ酸ナトリウム溶液は繊維屑や布団の汚れを持ち込むので、必要に応じて濾過、吸着、漂白等の手段で精製する。濾過はタンクと洗濯機の間回収ラインで行うと便利である。
【0016】
吸着、漂白等の操作は、吸着剤、漂白剤をタンクに投入する方法、濾過のように処理液の循環ラインに組み込む方法、独立した精製装置をタンクと結合し、必要に応じて運転する方法のいずれでもよい。
【0017】
ホウ酸ナトリウム水溶液は、布団を防ダニ処理するに従って減少するので補充が必要である。また、洗濯脱水した布団を処理する場合は、ホウ酸ナトリウム濃度が低下するので適宜調整する必要がある。
【発明の効果】
【0018】
本発明を用いれば、従来駆除が困難とされた布団に生息するダニを長期間、効果的に制御することができる。また、今日、商業的に実施されている布団丸洗いサービスに本発明の装置を結合すれば少額の投資で防ダニ処理が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明を実施するための防ダニ処理装置は布団洗濯機、ホウ酸塩水溶液タンク、ホウ酸塩水溶液精製装置から構成されることが好ましい。図1のフローシートは、本発明の布団防ダニ処理装置1例である。
【0020】
1は布団洗濯機で通常布団の丸洗いに使用している洗濯機である。汚れた布団と洗剤を洗濯機1の中に投入し、給水弁7を開いて給水した後、洗濯工程で布団を洗濯する。洗濯終了後に排水弁9を開いて洗濯機1の中の水を排水する。排水後、濯ぎ工程と脱水工程は通常洗濯機自体のプログラムにより自動的に処理されて脱水が終了する。
【0021】
次にホウ酸塩水溶液タンク2に必要量のホウ酸塩水溶液を入れて循環ポンプ5によりフィルター3と吸着筒4と三方弁11の洗濯機側から給液弁8を通って洗濯機1に給液する。給液後、洗濯機1は濯ぎ工程で布団綿にホウ酸塩水溶液を完全に含浸させた後、脱水工程を行って、濯ぎ及び脱水された水溶液はホウ酸塩水溶液逆戻し弁10と液戻しポンプ6を通ってタンク2に戻される。
【0022】
濯ぎ及び脱液されて汚れたタンク2の中の水溶液は、循環ポンプ5とフィルター3及び吸着筒4と三方弁11のタンク側を通ってタンク2に戻る循環回路により、常時精製されている。
【0023】
フィルター3は、この実施例ではバッグ型フィルターを使用しているが、カートリッジ型、加圧葉状型、膜分離型などを使用することもできる。また、バッグ型フィルターのフィルターバッグの中に活性炭などの吸着剤を装入したり、葉状型のフィルターに吸着剤をプリコートして濾過と吸着を兼用することもできる。
【0024】
吸着筒4は活性炭などの脱色剤を充填しているが、2基を並列に配置して、1基を使用している間に他の吸着筒の充填物を必要に応じて交喚することが好ましい。充填物の粒子が細かくて、深層濾過が可能な場合には、吸着と濾過とを兼用することもできる。
【実施例1】
【0025】
遠心脱水式布団洗浄機に5年間使用した木綿わた敷き布団(重量5.2kg)を入れ、40℃の水50kg、市販の粉末状洗剤(アタック)40gを加えて30分間洗浄した後、濯ぎ、脱水を2度繰り返した。
【0026】
ついでタンクから0.8%ホウ酸水溶液を洗濯機に満たし、20分間洗浄した後遠心脱水した。この際の排水は、全てタンクに回収した。タンクの水量変化は殆ど認められなかった。
【0027】
洗濯機から取り出した布団(重量11.1kg)を熱風乾燥機で乾燥したのち、布団側を外し、布団中央部と四隅の5箇所から各1グラムの木綿わたを採取した。サンプルの各々を1リットルの三角フラスコに入れ、純水500gを加え、温度80±5℃で5時間攪拌し、木綿わたに吸着したホウ酸を抽出した。室温まで冷却後ビーカーの内容を濾過し、濾液中のホウ素をICP分光分析で定量した。布団わたのホウ酸含有率は0.65±0.10%に収まり、処理が均一に行われたことを示した。この濃度範囲はヤケヒョウヒダニの増殖を完全に抑制できる濃度である。
【産業上の利用可能性】
【0028】
市販の布団洗濯機、タンク、濾過、吸着装置を市販のバルブ、ポンプ、ホースで結合することにより、経済的、効率的な布団防ダニ処理が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】布団防ダニ処理装置のフローシートである。
【符号の説明】
【0030】
1 布団洗濯機
2 ホウ酸塩水溶液タンク
3 フィルター
4 吸着筒
5 循環ポンプ
6 液戻しポンプ
7 給水弁
8 給液弁
9 排水弁
10 ホウ酸塩水溶液逆戻し弁
11 三方弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
布団をホウ酸換算濃度0.2重量パーセント以上、10重量パーセント以下のホウ酸塩水溶液中で濯ぎ、余分の水溶液を脱水回収し、回収した水溶液を精製、濃度調整して再利用することを特徴とする布団の防ダニ処理方法。
【請求項2】
洗濯脱水機、ホウ酸塩水溶液タンク、ホウ酸塩水溶液精製装置を必須要素とする布団防ダニ処理装置。

【図1】
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