説明

布地の基材に物質を付着させる方法

布地の基材(1)に機能的組成物を付着させる方法が記載されている。この方法は、布地の基材(1)の供給を行うことと、デジタル型の第1のノズルを設けることと、この第1のノズルへ機能的組成物を供給することと、デジタル型の第2のノズルを設けることと、この第2のノズルへカプセル化組成物を供給することと、前記機能的組成物を前記第1のノズルから選択的に付着させ、前記基材(1)に一連の機能的液滴(10)を形成することと、前記カプセル化組成物を前記第2のノズルから選択的に付着させ、一連のカプセル化液滴(16)を形成して前記機能的液滴(10)を少なくとも部分的に被覆することと有する。このようにして、所定の量の特殊な機能的組成物即ち「薬剤」を、これらが必要とされる箇所で正確に付着させ、続いてカプセル化組成物によって被覆させることが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布地の基材に仕上げ処理を施す方法に関するものである。特に、本発明は、付着されたカプセル化物質を有する布地を作製するためのデジタル式手順に関する。
【背景技術】
【0002】
布地の作製は、伝統的に複数の異なった過程で行われる。このような作製は大まかに5つの段階、すなわち、材料繊維を作製すること、この材料繊維を紡績すること、布(例えば織布あるいは編布、房状材料あるいはフェルトおよび不織材料)を製造すること、この布の品質を向上させること、および最終製品を作製するかあるいは製造することに区別することができる。布の品質向上には、準備、脱色、漂白、染色(浸染および/または捺染)および仕上げ処理のような、複数の作業が含まれている。これらの作業は一般に、使用者によって望まれる外観と物理的および機能的な特性とを布地に付与するという目的を有する。
【0003】
浸染の間にわたり、布地の基材には通常、単一の純色が施される。浸染は、今日、布製品を染浴の中に浸すことによって行われ、この結果、布地は適切な色付き化学物質で飽和される。
【0004】
布地のコーティングは、仕上げ処理の比較的重要な技術の1つであり、また、結果として生じる製品へさまざまな特定の特性を付与するために使用されることができる。これは、基材を不燃性あるいは防炎性、撥水性、撥油性、しわなし性、防縮性、防腐性、非滑り性、折り曲げ保持性、帯電防止性などにするために使用することができる。布地のコーティングには、布地の基材の表面へ例えば適切な化学物質の薄い層を適用することが伴う。このコーティングは布地の基材あるいは下にある他の層を保護するために役立つことがある。これを、また、基部あるいはすぐ下の層のための「下塗り部(primer)」として使用することもでき、または所望の特別な効果を達成するために使用することもできる。
【0005】
溶媒あるいは水に基づくコーティングを適用するための通常の技術は、いわゆる「ナイフオーバーローラ」型スクリーンコーター、「浸漬」型スクリーンコーターおよび「リバースローラ」型スクリーンコーターである。水中におけるポリマー物質の溶液、懸濁液あるいは分散液は通常、布へ塗布され、続いて、過剰なコーティングはその後、ドクターナイフで掻き落とされる。
【0006】
布地の仕上げ処理のために採用されることのあるさらに別の手順は、フーラーディング(foularding)のような浸漬技術あるいは浴技術を使用することである。布地は適用される機能的組成物が含有されている水溶液の中に充分浸漬される。その後の乾燥、固着および圧縮(condensation)の反復するサイクルが、この作業を遂行するために必要である。これによって、資源、とりわけ水およびエネルギーのかなり用いられる。一般に、このような技術のために使用される溶液、懸濁液あるいは分散液は、低い濃度の所望の機能的組成物を有する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の品質向上のための手順には、含浸(すなわち、化学物質の塗布あるいは導入)、反応/固着(すなわち、化学物質の基材への結合)、洗浄(すなわち、過剰な化学物質および補助化学物質の除去)および乾燥から選択される複数の一連の作業を実行することが必要とされる。これらの一連の作業の各々は、例えば洗浄およびすすぎの反復サイクルのように何回か繰り返されることが必要であり、これによって、比較的高い環境影響、長い処理時間および比較的高い製造コストを必然的に伴う。
【0008】
浸染およびコーティングのような従来の品質向上技術の顕著な特徴は、これらの技術が布地の全表面にわたって行われることである。このことは、フルフォント処理と称されることがよくある。ある処理については、ある区域へ特定の特性をもたらすために布地のこれらの区域だけに仕上げ処理あるいはコーティングを行うという要望があり得る。仕上げ処理のために使用される処理法および化学物質が特に高価であるという場合や、限定的であるが均衡のとれた化学物質の分布で充分な場合もまた、よくある。このような場合において、とりわけ、布地のある特定の区域が不要であるかあるいは処理の必要のないものであるときには、布地の全区域にわたる処理の遂行は非能率的かつ/または浪費的なものであろう。
【0009】
布製品の中に含まれているのが望ましいであろうある生成物質もまた、環境に影響されやすい。こういう訳で、これらの使用は、その生成物質を劣化が起きないように布地へ適用することの困難性によって、過去、制限されてきた。他の機能的生成物質は布地の基材に含まれていることが好ましいであろうと提唱されてきた。それにもかかわらず、このような生成物質を付着させるための適切な方法はこれまで得られていなかった。
【0010】
布製品の内部に、薬剤あるいは薬品を担体に付着させることによって組み入れることが示唆されてきた。このような担体の再検討は、オーテックス・リサーチ・ジャーナル(Autex Research Journal )の第2巻、第4号のBretelerらによる論文、表題「医療用途での布地緩慢解放システム」(Textile Slow Release System with Medical Applications)において見出され、この論文の内容は、全体が参照として本明細書に組み入れられる。検討された担体には、シクロデキストリン、フラーレン、アザクラウンエーテル、さらにはポリ乳酸(PLA)が含まれている。これらの担体を適用する明確な方法については、どのような指示も与えられていない。
【0011】
布地を仕上げ処理するためのデジタル式技術の使用が、ともに2004年9月22日に出願された未刊行のPCT出願であるPCT/EP2004/010732号およびPCT/EP2004/010731号に示唆されており、これらの内容はその全体が参照として本明細書に組み入れられる。
【0012】
東レ工業株式会社(Toray Industries)の未審査日本特許出願である特開昭61−152874号では、布地シートを機能的組成物で点の形態に含浸させることが示唆された。抗生物質、吸湿剤、撥水剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、蛍光増白剤、膨潤剤、溶剤、鹸化剤、脆化剤、無機顆粒剤、金属顆粒剤、磁性材料、難燃剤、抵抗材料、酸化剤、還元剤、香料などが含まれるさまざまな機能的組成物が示唆されている。この文献には、伝統的なフォトグラビアロール・スクリーン・プリント法では、あまりに大きすぎることもある点のパターンが作製され、吹き付け技術では、付着した製品の点の大きさおよび品質を調整することが困難であることが示されている。この文献では布地を機能的組成物で点の形態に含浸させることが提案されており、点の平均直径が30乃至500ミクロンであり、また、点の占有区域比が3乃至95%である。この文献ではインクジェットプリント技術の使用が示唆されているが、この文献では、とりわけ伝統的なコーティング組成物の高い粘度のために、従来のインクジェット装置が適していない、ことが認識されている。この文献は主として、特定可能な液滴構造を維持することと液滴が連続して流れるのを防止することとに関するものである。さらにまた、この文献によれば、溶液の使用に関する例がもたらされるが、分散あるいは懸濁というインクジェット付着の問題に対処することができない。
【0013】
グラフィックイメージを提供するためのさまざまな型のインクジェットプリンタが広く知られている。このようなプリンタは、オフィスあるいは家庭で使用されるようなデスクトップ型インクジェットプリンタであってもよく、また、染料を包含している水性インクの小さい液滴(20pL未満)を用いて特定の種類の紙基材(プリント用紙)の上にプリントするために広く使用されている。一般に、工業的なインクジェットプリンタは、グラフィックイメージあるいは日付/バッチのコードを製品の上にプリントするためにもまた存在しており、これらのプリンタは典型的には、染料・顔料を包含している溶剤性インクを用いて無孔性基材の上にプリントする。しかしながら、このような調合物は、とりわけ耐変色性がないために、大部分の布地に適用するには適していない。インクジェット技術を用いて布地の上にプリントするためには、布製品はこれまで、インク液滴が適用されるコーティングで前処理されてきた。品質を向上させる目的のためには、現在用いられている大部分のコーティング組成物および仕上げ処理組成物は、インクジェット技術を使用する付着については適していない。大きい液滴を作る工業的なインクジェットプリンタおよびノズルは、一般に溶剤性着色インクで使用するために設計されている。さらにまた、噴射することのできる液滴容積は、きわめて少ない50pLの程度であり、布地の仕上げ処理のためにはほとんど不充分であって、この場合には布の中へのかなりの浸透が必要である。典型的な仕上げ処理用調合物は、大部分が水性であり、また、一般に、ノズルの目詰まりを引き起こすおそれのある粒子径を有する。気泡発生、跳ね飛びおよび外皮形成に関するさらに別の問題に直面した。100KHzまで連続的に作動する多数のノズルで稼働するときには、信頼性および故障なし作業が最も重要である。特開昭61−152874号では、従来のインクジェット装置は仕上げ処理組成物を適用するためには適していないということを指摘しているものの、これをどのようにして改善するかについての教示を提供していない。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、布地の基材の供給を行うことと、デジタル型の第1のノズルを設けることと、この第1のノズルへ機能的組成物を供給することと、デジタル型の第2のノズルを設けることと、この第2のノズルへカプセル化組成物を供給することと、前記機能的組成物を前記第1のノズルから選択的に付着させ、前記基材に一連の機能的液滴を形成することと、前記カプセル化組成物を前記第2のノズルから選択的に付着させ、一連のカプセル化液滴を形成して前記機能的液滴を少なくとも部分的に被覆することとを有する布地の基材に機能的組成物の液滴を付着させる方法が提供される。このようにすると、所定の量の特殊な機能的組成物あるいは「薬剤」を、これらが必要とされる個所に正確に付着させ、続いて、カプセル化組成物によって被覆することができる。
【0015】
この文脈では、「機能的組成物」という用語は、インクおよび染料を使用する従来のインクジェットプリントと同様に、布地の基材に色付きデザインを設けたり、あるいは外観を変化させたりするだけではなく、布地の基材へ機能性を付与する組成物あるいは薬剤を意味するものであると理解されたい。本発明の重要な利点によれば、この組成物は前記基材と反応しないものであってもよい。このようにして、調合物を、そうでない場合よりも多様な基材に適用することができる。
【0016】
「デジタル型ノズル」という用語は、デジタル信号に応じて規定された液滴を薬剤の供給部から放出するとともに、規定されかつ調整することのできる位置でこの液滴を付着させるための装置に言及することを目的としている。この用語には、連続流(コンティニュアス)の原理およびドロップ・オン・デマンドの原理の両方で作動するインクジェット印字ヘッドが含まれる。この用語はまた、ピエゾ型およびサーマル型のインクジェットヘッドの両方を含むとともに、デジタル型液滴付着を行うことのできるバルブジェットのような他の同等な装置を含む。デジタル型ノズルは一般に、グラフィックプリントの分野の当業者に広く知られている。本発明のノズルは10乃至150ミクロンの、好ましくは約70乃至90ミクロンの射出口径を有すると考えられる。
【0017】
「布地」という用語は、織布、編布および不織布を含むすべての形態の布製品を含むことを目的としている。この用語は、カーペット、紙および段ボールのような2次元剛性を有する繊維製品を除くことを目的としている。これらの繊維製品は、時には布地として言及されるが、これらは実質的に一定の2次元形態を維持するようにして、内部で連結されている。これらが第3の次元において柔軟であってもよいが、これらは一般には、本当の布地において本来備わっているように、自由に伸びたり歪んだりしない。好ましいのは、布地の基材は、長さが100メートルを超え、1メートルを超える幅を備えたロールなどに供給されることである。好ましい布地には、木綿および/または他の処理ずみセルロース系繊維、さらに、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリルニトリル、アセテートおよびトリアセテートあるいはこれらの混合物が含まれている。
【0018】
この方法は連続過程で実行されるのが好ましい。従って、布地の基材は、ロールからのように連続して、あるいは先の工程から直接、供給されてもよい。
【0019】
本発明の重要な態様によれば、前記第1及び第2のノズルを通過させて前記布地の基材を移動させるための搬送面をさらに設けることができ、前記基材は、ともに移動するために前記搬送面によって保持される。布地は伸びたり歪んだりする可能性があるので、このような搬送面の使用によって、前記基材が平坦なままであることと、この過程の間に有意な移動が生じないこととが保証される。前記基材の位置が機能的液滴の付着とカプセル化液滴の付着との間に動くようなことがあれば、正確なカプセル化は不可能であろう。前記搬送面は、前記基材が例えば剥離性粘着剤によってあるいは真空によって一時的に貼付けられるコンベアベルトの形態であってもよい。代わりに、前記搬送面は、布地が貼り付けられる保形性担持層、例えば裏当て用薄膜であってもよい。前記搬送面の適切な調整を、液滴の付着の調整と相互に関連して行なうことができる。
【0020】
前記カプセル化は、個々の機能的液滴について行われてもよく、複数の機能的液滴について集団的に行われてもよい。従って、これらの機能的液滴を、第1の機能的配列で供給して、続いて1つ以上のカプセル化液滴によって集合的に被覆してもよい。本発明の特定の実施形態によれば、前記カプセル化液滴は、前記機能的液滴よりも大きく、各カプセル化液滴は、対応する機能的液滴を実質的に被覆する。この1対1関係は、カプセル化機能的物質の微小付着を作製するために好ましいであろう。
【0021】
代わりの実施形態では、複数のカプセル化液滴は、単一の機能的液滴をともに被覆することができる。このようにして、機能的液滴のいっそう完全なカプセル化を達成することができる。これらのカプセル化液滴は、同一のノズルによってすべて付着されてもよく、あるいは異なる複数のノズルから付着されてもよい。さらに、これらは、各々が前記機能的液滴の一部を被覆するために互いに隣接して付着されてもよい。これらの液滴を注意深く位置決めすることにより、前記層を通して細孔あるいは開口を形成することができる。代わりに、これらのカプセル化液滴を、カプセル化層を形成するように、互いに上下して付着してもよい。これらのカプセル化液滴が異なる複数のノズルから付着されると、これらは各々異なる組成物を備え、これによって例えば多層カプセル化を形成することができる。
【0022】
前記機能的液滴の下側は前記基材に直接接触していてもよい。この場合には、布地の基材はそれ自体、カプセル化の一部を形成することができるとともに、前記機能的液滴の作用を決定する際に使用する(active)ことができる。従って、この布地は、例えば障壁層、律速層あるいは吸上層(wicking layer)として作用することができる。布地の基材を、前処理することができ、そうでなければ、この機能を促進するためにコーティングすることができる。本発明の重要な態様によれば、この方法は、デジタル型の第3のノズルを設けることと、この第3のノズルへ下地組成物を供給することと、前記機能的組成物を付着させる前に、前記第3のノズルから前記下地組成物を選択的に付着させ、前記基材に一連の下地液滴を形成することとをさらに有し、前記機能的液滴は、実質的に前記下地液滴に付着されてもよい。前記下地液滴を、前記基材のうち前記機能的液滴と同一の側面に付着してもよい。代わりに、これら下地液滴を前記基材の反対の側面に付着してもよい。この場合には、前記下地液滴を、前記機能的液滴の付着に続いて画然と付着することができる。
【0023】
まず前記下地液滴を供給することにより、前記機能的液滴を、下地層とカプセル化層との間に「挟む」ことができる。前記下地液滴と機能的液滴との両方あるいは一方は、前記下地液滴の劣化を防止するための保護層を形成することができる。代わりに、あるいは加えて、前記下地液滴と機能的液滴との液滴の両方あるいは一方は、前記機能的液滴の作用(activity)の速度を調整するための律速層を形成することができる。前記機能的液滴を「被覆する」カプセル化層に言及したが、この層は前記機能的液滴の下に、すなわち前記下地液滴の代わりに配置されてもよく、あるいは、これら2つの層の液滴は、充分に混合されてもよく、あるいは互いに反応してもよい。本発明にとって重要なことは、これらの液滴を互いに注意深く位置させることができることである。
【0024】
前記下地液滴および前記カプセル化液滴の正確な組成および機能は、前記機能的液滴の性質に大きく左右される。
【0025】
前記機能的液滴は、薬用剤あるいは薬物、生物剤または生化学機能剤を有していてもよい。このような組成物は、抗生物活性、例えば抗アレルギー性、抗真菌性、抗菌性あるいは抗ウイルス性を有していてもよい。このような薬剤には、シクロデキストリン、ペプチド、蛋白および酵素が含まれる。これらの薬剤については、40℃未満の低温での付着が好ましい。これらの場合には、前記基材における良好な保持が重要である。これは、例えば本体への解放速度を調整する下地層、および外側への解放を防止するカプセル化層に組み合わせることができる。このような布地を、従来の衣料品中だけではなく、創傷用の被覆材および包帯の中に一体化することができる。
【0026】
機能的液滴の特に有用な形態においては、薬剤あるいは薬用剤または生物活性剤は、担体に入れられて前記基板に付着される。適切な担体には、シクロデキストリン、フラーレン、アザクラウンエーテル、さらにはポリ乳酸(PLA)が含まれる。これらの担体は布地の繊維と薬剤との両方に接着するのに理想的に適している。これらの担体の検討は、オーテックス・リサーチ・ジャーナル(Autex Research Journal )の第2巻、第4号のBretelerらによる論文、表題「医療用途での布地緩慢解放システム」(Textile Slow Release System with Medical Applications)において見出される。本発明における代わりの実施形態によれば、前記機能的組成物は、好ましくは吐出された組成物の中で75乃至95重量%で存在する紫外線硬化型有機希釈剤に基づくものであってもよい。このような紫外線硬化組成物は、急速で硬化し、きわめて耐久性があり、また、特定の機能的薬剤のための担体として理想的である。紫外線硬化組成物に特有なことは、実質的にすべての付着された物質が前記基材に残るということである。しかしながら、一般的には好ましくないものの、粘度を減少させるために時には溶媒を添加してもよい。代わりの担体はゾル−ゲル系であってもよい。このような場合には常に、担体はカプセル化層の前記機能を少なくとも一部遂行することができ、カプセル化液滴を別に付着することは必要でない。担体と薬剤とを、担体と薬剤との一体化が前記基材で行われるように、同時付着(co-deposit)させることもできる。
【0027】
前記機能的液滴はまた、指示薬を有していてもよい。この指示薬は、例えば化学剤および生物剤の存在あるいは不存在を知らせるための、あるいは、布地によって示されたある環境に対する保護の程度を指示するための生化学センサーの形態にあってもよい。これらの指示薬は、前記機能的薬剤が所定の化学物質に反応して色変化を受けるクロム酸であってもよい。この場合には、前記カプセル化液滴は、と区的の化学物質の進入を規制するとともに他のものを排除することができる。指示薬の他の形態は、光(紫外線)に反応して衣料の摩耗を監視することのできるトレーサー(例えば蛍光体に基づくもの)を付着させることで、自己監視型布地を得るために使用することができる。この指示薬液滴を覆う前記カプセル化層は摩耗に対して反応を示すものであってもよい。このカプセル化層が摩耗してしまうと、指示薬は、光(あるいは他の効果)に曝されて、例えば色が変化することで、このように曝されたことを示す。
【0028】
前記機能的液滴はまた、電子部品を備えていてもよい。このような電子部品は、例えば半導電性ポリマー、液晶などを付着させることで電子回路の一部を形成することができるとともに、センサー、アクチュエータ、エネルギー変換器、記憶素子などの一部として作動することができる。このような場合には、前記カプセル化層および/または前記下地層は、前記電子回路の部品を形成することができる。この電子部品は、回路の一部であってもよく、または、それ自体が、単一の液滴の内部に付着された完全なマイクロ回路あるいはナノ回路を備えていてもよい。
【0029】
上述の機能的組成物については、この機能的組成物は感温性のものであり、この機能的組成物の付着は適切な温度で行なわれるべきである。生物的に活性な組成物については、付着は40℃未満の温度で行なわれるべきであることが好ましい。
【0030】
前記機能的組成物が他の環境条件に対して反応を示すものである場合には、前記機能的液滴および前記カプセル化液滴の付着は制御された環境で行なわれることができる。一例として、前記機能的液滴が酸化に反応を示すものであるときには、この機能的液滴は、酸素のない環境において付着されて続いてカプセル化することができる。
【0031】
様々な形式のデジタル型ノズルを使用することができるが、好ましいのは、このデジタル型ノズルが連続インクジェット(CIJ)型のものであり、また、前記機能的組成物がコンティニュアスジェットによる付着によって付着されることである。コンティニュアス法では、ポンプ又は他の圧力源によって、一定流の薬剤がノズルのきわめて小さい1つ以上の吐出口へ送られる。1つ以上のジェット状の薬剤が、これらの吐出口を通して吐出される。励振機構の影響を受けて、このようなジェットは同一サイズの複数の液滴からなる一定の流れへ分裂する。最もよく使用される励振器は圧電結晶であるが、他の形態の励振あるいはキャビテーションを使用することもできる。生成された複数の液滴からなる一定流から、特定の液滴だけが、布地の基材への塗布のために選定される。この目的のために、これらの液滴は帯電されるかあるいは放電される。CIJにおいては、布地に液滴を分布させるための2つの変形例、すなわち、バイナリCIJと多重偏向(multi-deflection)CIJとがある。バイナリCIJ法によれば、液滴は帯電されるか、帯電されない。帯電された液滴は、印字ヘッドで電界を通過するため偏向される。具体的なバイナリCIJプリンタの構成に左右されるが、帯電された液滴は上記基材へ導かれ、一方、帯電されない液滴は印字ヘッドのガター内に回収されて再循環されるか、あるいは逆の処理を受ける。多重偏向法として知られたより好ましい方法によれば、液滴は、一定の電界を通過する前に可変に帯電させることにより、あるいは逆に、これら液滴が可変な電界を通過する前に一定に帯電させることにより、上記基材へ塗布される。液滴の電荷/電界の相互作用の程度を変化させることが可能なことは、これら液滴が受ける偏向の度合い(従って、基材におけるこれらの位置)を変更することができることを意味し、それゆえ「多重偏向(multi-deflection)」である。帯電していない滴りは、印字ヘッドのガターにより回収されて再循環される。より具体的には、本方法は、
調合物をほぼ連続流で前記複数のノズルへ送給することと、
ノズル中の連続流を分裂させ、それぞれの液滴を形成する一方、同時に前記液滴を帯電するために必要とされるような電界を印加することと、
第2の電界を印加し、前記液滴を偏向させてこれら液滴が布製品の適切な箇所で付着されるようにすることとを有する。
【0032】
従来、グラフィックプリントの目的のために、50ミクロンまでの吐出口外径を有するノズルが使用されてきた。一般的な傾向は、プリント解像度および画質を改善するためにノズル寸法がますます小さくなってきている。機能的組成物又はカプセル化組成物を付着させるという目的のために、70ミクロンを超える直径を備えたノズル吐出口を使用することができる。この方式では、比較的大きい粒径および比較的大きい固形分割合を有する仕上げ処理組成物を付着させることができる。より大きいノズルの使用することも、これらのノズルから作られた比較的大きい液滴により、生産性が高くなる、すなわち、各ノズルからの比較的流速(毎秒の流体の容積)が高くなるので、好ましい。
【0033】
さらにまた、CIJの場合には、形成された液滴のサイズを、所定のノズルのサイズに対して、ポンプ圧力あるいは励振周波数を変化させることによって変化させることができる。これらのパラメータの適切な電子制御によって、液滴のサイズを制御することができる。このような制御は、例えば設定あるいは較正の間に断続的に変化させることができるが、液滴ごとに変化させ、カプセル化のサイズのさらに別の制御を可能とすることもできる。
【0034】
コンティニュアスインクジェット法を用いることによって、1ジェット1秒当たり、64,000乃至125,000個の液滴を生成することが可能になる。この多数の液滴および衣類の幅全体にわたる多数の相互に隣接したヘッドによって、比較的高い生産性が得られる。すなわち、高いスプレー速度を考慮すると、この技術を使用して、原則として毎分約20メートルという生産速度をさらに実現することができ、また、ノズルに関連するタンクの小さい容積を考慮すると、きわめて短い時間内に仕上げ処理様式を実現することができる。しかしながら、使用される仕上げ処理組成物が液滴を帯電させることを可能とする伝導率を有し、これら液滴を電界により偏向することができることは、コンティニュアスインクジェット法の必要条件である。従って、CIJについては、仕上げ処理組成物が500μS/cmより大きい伝導率を有することが好ましい。
【0035】
デジタル型の前記第1、第2および/または第3のノズルは、前記布地の基材の幅にわたる、複数のノズルからなる静止した複数の配列で設けられているのが好ましい。このようにすると、これらのノズルが移動する基材を横断することが必要とされるシステムに比べて、布地の搬送についての実質的により高い速度を達成することができる。特に、各ノズルを、布地の供給方向に対してほぼ垂直である液滴の多重偏向を生じさせるように向き付けることができる。このようにして、1つのノズルによって、5mm程度の基材幅にわたる仕上げ処理を施すことができる。
【0036】
好ましい実施形態によれば、個々のノズルを例えばコンピュータによって形成された中央制御装置で向き付けることができる。このコンピュータは、最適な印字ヘッド作動条件を確立し液滴形成の質を確かめさらに適正な液滴形成の位置決めをするために使用することのできる液滴と位置との視覚化システムを採用することが好ましいであろう。
【0037】
本発明はまた、上述の方法に従って製造され、各々がカプセル化液滴によって少なくとも部分的にカプセル化され、選択的に付着された複数の機能的液滴を有する布地の基材を備える品質の向上した布製品に関する。
【0038】
好ましいのは、前記布地の基材は、長さが100メートルより長く、1メートルを超える幅を有するロールに供給されることができることである。個々のカプセル化液滴を試験的に先に作製することができるが、本発明による液滴は、仕上げ処理手順あるいは品質向上手順でこのような構成の基材に作製されていないことが考えられている。
【0039】
前記機能的液滴は1mm未満の直径を有するのが好ましい。より好ましいのは、これらは約200ミクロンの直径を有することである。これら機能的液滴を、例えば必要な機能に応じた分布密度で布地の全表面にわたって分布させることができる。
【0040】
さらに、本発明は、上述の方法に従って、このような品質の向上した布地を作製するための装置に関する。特に、本発明は、連続的に供給される布地の基材を搬送するためのコンベアと、第1の配列の複数のデジタル型ノズルであって、一連の機能的液滴でこれらのノズルからの機能的組成物を所定パターンで前記基材の選択された領域に選択的に付着させるために前記機能的組成物が供給される第1の配列のノズルと、カプセル化組成物が供給される第2の配列の複数のデジタル型ノズルと、前記カプセル化組成物の液滴を付着させて前記機能的液滴を少なくとも部分的に被覆するために前記第2の配列のノズルを制御する制御部とを備える装置に関するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
本発明の特徴および利点は、以下の図面の記載を参照することで認められる。
【0042】
以下のものは、ほんの一例として、図面を参照して与えられた、本発明のある実施形態の説明である。図1は、布地の基材にカプセル化された機能的液滴を付着させるための可能な構成の第1の例を斜視図で模式的に示している。図1によれば、本発明によって品質向上用装置2へ送給される連続ロール状の布地の基材1が示されている。布地の基材1は、男性のシャツに適した色および重さの標準的な木綿織布である。
【0043】
基材1はコンベア4によって、連続流多層偏向型(continuous flow multilevel deflection type)の29個のインクジェットヘッド8の列が配置されている第1のビーム6まで移送される。各インクジェットヘッドは、複数の(この場合は8つの)個々のノズル(図示略)を備える。
【0044】
第1のビーム6は、抗菌剤からなる機能的組成物を供給され、この組成物の機能的液滴10を布地の基材1に付着させる。この例では、機能的液滴10は、可視化のために、拡大されたスケールで示されている。実際には、機能的液滴10は80ミクロン程度の直径を有するであろうと理解される。
【0045】
第1のビーム6が配置された後に、コンティニュアスの多重偏向タイプのインクジェットヘッド14の列が備わっている第2のビーム12も配置されている。インクジェットヘッド14にはカプセル化組成物が供給され、この組成物は、機能的液滴10を被覆する一連の第2のカプセル化液滴16として付着される。
【0046】
第1及び第2のビーム6、12を通過させて搬送するために、基材1はコンベア4へ部分的に貼り付けられ、布地のずれが防止されるとともに機能的液滴とカプセル化液滴との正確な位置合わせが保証される。このことを、例えば従来の接着技術あるいは真空技術により達成することができる。1つの仕上げ処理装置に前記の付着作業を組み合わせることで、これらの液滴の配置の精度が保証される。コンベア4の端部において、基材1は解放されるとともに硬化用ビーム18を通過する。硬化用ビーム18は従来の紫外線源を備え、これによって、前記カプセル化液滴の硬化が引き起こされ、そして、前記機能的液滴を覆う保護層が形成される。
【0047】
このような組成物を現在のインクジェット技術を用いて付着させるためには、これらの組成物を、以下の表Iに規定されたような用途に適合するように調合することができる。
【0048】
特定の特性についての一般的情報
伝導率:これは、液滴の帯電を可能にすることで続いて電界を使用して印刷のために偏向することができるように、CIJ技術において必要とされる。他のすべてのインクジェット技術について、導電率は、インクに接触した金属構成部材の腐食を助長するため、望ましくない。
【0049】
塩類含有量:これは伝導率に関する上記コメントに関連する。塩化物のような複数の特定の塩類は、これらが他の塩類よりも腐食性であるので、特に好ましくない。CIJの構成で使用される塩類は、望ましい水準の伝導率を付与する一方でこれらの腐食助長効果を最小限にするように選択されるべきである。さらにまた、サーマルインクジェットの構成では、多価の金属塩(Mg2+およびCa2+のようなもの)を、これらがコゲーション(kogation)(印字ヘッドのヒーター部材の硬化)を助長して、印字ヘッドを早期に故障させるため、避けるべきである。
【表1】

【0050】
粘度:ほとんどの計量分配技術に比べて、インクジェット法には低い粘度の流体が必要とされる。印字ヘッドは、流体の粘度を減少させてインクジェットプリントすることができるようにするために、しばしば加熱される(このことによって、周囲温度の変化の印刷の信頼性に対する効果も減少する)。インクジェットを付着させるためにはニュートン流体が好ましいが、せん断減粘性流体(shear thickening fluid)も注意して使用することができる。せん断増粘性流体(shear thickening fluid)は避けるべきである。インクジェットプリントの過程にとって、弾性のような、流体流れ特性の他の様相も重要であり、適正な粘度を備えているように見える流体を確実に吐出させることを妨げうるため、ある流体について望ましい粘度を達成することにより、インクジェットプリントがうまくいくことは保証されない。
【0051】
表面張力:一般に、印字ヘッドの内部で流体の濡れを制御する。表面張力が高すぎるならば、流体は、印字ヘッドの内側を適当に濡らさず、また、確実なプリントを妨げるエアーポケットを残すであろう。流体の表面張力が低すぎるときには、印字ヘッドノズルの中にメニスカスが適切に形成されず、また、DoDの場合には、流体は、印字ヘッドのフェースプレートへ自発的に流れ(フェースプレート濡れ(face plate wetting)として知られている)、このことも確実な吐出を妨げるであろう。CIJの場合には、液滴の分裂は、信頼性がないであろう。
【0052】
粒子径:インクジェットノズルはきわめて小さい(典型的には20乃至75ミクロンのオーダ)ので、プリントすることのできる流体の最大粒子径は、インクジェットノズルの詰まりを防止するために制限される。許容することのできる最大粒子径は、複数の粒子が同時にノズルを通って流れようすると同時に、互いにぶつかり合うことで詰まりを引き起こすときに密集効果(crowding effect)が生じるノズルのサイズよりも実質的に小さい。このような理由から、許容することのできる最大粒子径もまた、使用される粒子の密度(concentration)にある程度関係している。
【0053】
pH:通常、流体の活性な構成成分の溶解度(あるいは分散安定度)を制御するために用いられる。印字ヘッドが作動することのできるpHの範囲は、印字ヘッドが構成されている素材の腐食性によって制限される。ピエゾDODについては、セラミック製印字ヘッドを利用することができ、これはpHの全範囲にわたって流体を確実に吐出させることができる。
【0054】
固形分%:流体の固形分含有量は、上述したように、粒子径だけではなく、粘度(および弾性)によって制限される。しかしながら、流体の固形分含有量が高すぎると、インクジェットの液滴を吐出(あるいは分裂)させるために使用される圧力パルスを過剰減衰させることもあり、また、確実な印刷を妨げる。
【0055】
せん断に対する安定性:インクジェットプリントは高せん断技術であるため、高せん断に対して安定ではない物質は、印字ヘッドノズル内で分解して同ノズル(あるいはCIJシステムについては戻りガター)を詰まらせるおそれがあり、また、基材についての望ましい用途あるいはエンドユーザー特性を提供しえなくなる。CIJについては、ノズルの中で受けるせん断力は、他のインクジェット技術によるせん断力よりも大きく、また、流体は、再循環され、ノズルを何度も通過しうる。従って、せん断に対する安定性は、この技術についてはきわめて重要である。
【0056】
これらの特性を達成するために、仕上げ処理組成物は、以下の表IIに規定されたような構成成分を含むのが好ましい。
【表2】

【0057】
大抵の場合には、活性剤の布地との相互作用のための最良の化学的な基礎がもたらされるため、溶媒あるいは媒体は、脱イオン化され、脱塩された水であるのが好ましい。望ましい特性が適しているかあるいは、適当していることが必要とされるときには、エタノールあるいは乳酸塩のような非水溶性溶媒を利用する、代わりの仕上げ処理組成物を採用することもできる。このことは、第2層が水性成分に位置されるべきとき、下側層との親和性が望ましくないとき、迅速な乾燥が必要なとき、あるいは活性剤が水と反応するときに、あてはまり得る。具体的には、乳酸塩は、セルロース系布地をきわめて良好に通り抜けると信じられている。
【0058】
活性成分の溶解性および導電剤との親和性を改良するためには、補助溶媒(co-solvent)が大抵必要であろう(これらの物質との間の非親和性は、共通の調合物の問題点であるため)。一般的に、これらの補助溶媒は、活性成分の担体として作用した後に基材の表面から蒸発することのできる低沸点液体である。エタノール、メタノールおよび2−プロパノールからなる群から選択された補助溶媒を使用することが好ましい。
【0059】
保湿剤は通常、吐出動作していないときに、ノズルの硬化を防止するために使用される低揮発性、高沸点の液体である。保湿剤が、多価アルコール、グリコール、とりわけポリエチレングリコール(PEG)、グリセロール、n−メチルピロリドン(NMP)からなるグループから選択されることは好ましい。複数の組成物で、5%を超える保湿剤が使用されるようであるが、実際には、同じ物質が粘度調整剤として存在していることもある。
【0060】
粘度調整剤は、液滴形成・分裂の過程を調整するため、インクジェットプリントの信頼性と品質とのために重要な要素であり、この物質はしばしば「活性成分」でもあり、エンドユーザー特性のいくつかをもたらす。一般に、溶液中の高分子量ポリマーは、これらの弾性がジェットの分裂を達成することを困難にするため、避けられるべきである。好ましい粘度調整剤には、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、アクリリックス(acrylics)、スチレンアクリリックス(styrene acrylics)、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリアクリル酸(PAA)が含まれる。K−30重量級(K-30 weight grade)のPVPが、細菌に敏感ではなく非イオン性のために特に有用であることがわかった。
【0061】
伝導率は、CIJで、液滴を帯電させ、従って偏向させることができるように必要とされ、また、導電剤は、インク中にもともと存在する導電率が不十分なときに使用される。導電剤は、調合物の他の構成成分との親和性があって、しかも腐食を助長することのないものを選択しなければならない。このような配慮に適している公知の導電剤には、硝酸リチウムと、チオシアン酸カリウムと、ジメチルアミン塩酸塩と、チオフェン基物質、例えば3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDT)を含んでいるポリチオフェンあるいはチオフェンコポリマーと、ポリエチレンチオフェンとが含まれる。チオシアン酸カリウムは、望ましい導電率を達成するために要求されることが比較的少ないために、吐出のためには特に有用であるということがわかった。前記インクの元々の導電率が不充分であるときには、導電性塩類が使用される。導電性は、前記液滴を帯電させ、それゆえ偏向させることを可能とするために必要である。調合物の他の組成物との間で相溶性があり、腐食を助長しない塩類を選択することがきわめて重要である。
【0062】
界面活性剤は、一般に、調合物の発泡を減少させるとともに溶解ガスを解放するためか、液滴の表面張力を低下させて濡れを改善するためかのいずれかのために含まれている。好ましい界面活性剤には、サーフィノール(Surfynol)DF75(登録商標)、サーフィノール104E(登録商標)、ダイノール(Dynol)604(登録商標)(以上のものはすべてエアー・プロダクツ社(Air Products)から入手可能)、およびゾニール(Zonyl)FSA(登録商標)(デュ・ポン社(Du Pont)から入手可能)が含まれる。BYK022(登録商標)(ビーワイケー・ケミー社(BYK Chemie)から入手可能)およびレスプミット(Respumit)S(登録商標)(ベイヤー社(Bayer)から入手可能)は、ともにシリコーン基消泡剤であって、吐出目的のためにはきわめて効果的であることが判明した。
【0063】
湿潤剤は、デジタル型ノズルの内部の毛細管での流体の表面濡れを改良するために利用される。好ましい湿潤剤には、アセチリニックジオールが含まれる。界面活性剤および補助溶媒は湿潤剤としても機能する。
【0064】
殺生物剤はインクの中で細菌が成長するのを阻止するために使用され、これは、インクの他の構成成分(IPAのような)が細菌を殺すために充分な濃度があるときには、必要でないことが多い。
【0065】
pH調整剤は、インクの固形分が溶解することのできる(あるいは安定的に分散される)pH、典型的にはこれはpH>7であるpHに維持するために使用され、大抵はアルカリ性である。pH調整剤はまた、前記組成物/活性剤と布地自体との間における相互作用の化学性に影響を及ぼすためにも使用される。pH調整剤には、アンモニア、モルホリン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンおよび酢酸が適している。一般に、印字ヘッドにおける腐食を減少させるためには、比較的中性の溶液を使用することがインクジェットの観点から望ましい。
【0066】
腐食抑制剤は、流体の中に(通常は活性成分に由来する不純物として)存在している望ましくないイオンがプリンタの腐食を引き起こすのを防止するために使用される。
【0067】
特定の環境では、特に高い耐久性仕上げ処理が望まれるときには、紫外線硬化樹脂もまた好ましい。このような樹脂は、例えば先に付着した液滴のカプセル化のために適しているであろう。
【0068】
上記の実施例は本発明の好ましい実施形態を例示しているが、添付の特許請求の範囲によって規定されたように、本発明の精神および範囲に入る他のさまざま構成も考えられることに留意すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明によるデジタル型カプセル化の手順の一例を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
布地の基材の供給を行うことと、
デジタル型の第1のノズルを設けることと、
この第1のノズルへ機能的組成物を供給することと、
デジタル型の第2のノズルを設けることと、
この第2のノズルへカプセル化組成物を供給することと、
前記機能的組成物を前記第1のノズルから選択的に付着させ、前記基材に一連の機能的液滴を形成することと、
前記カプセル化組成物を前記第2のノズルから選択的に付着させ、一連のカプセル化液滴を形成して前記機能的液滴を少なくとも部分的に被覆することとを具備する布地の基材に機能的組成物の液滴を付着させる方法。
【請求項2】
前記布地の基材は、実質的に連続して供給される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1及び第2のノズルを通過させて前記布地の基材を移動させるための搬送面をさらに具備し、前記基材は、ともに移動するために前記搬送面によって保持される請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記カプセル化液滴は、前記機能的液滴よりも大きく、各カプセル化液滴は、対応する機能的液滴を実質的に被覆する前記全ての請求項のいずれか1に記載の方法。
【請求項5】
複数のカプセル化液滴は、単一の機能的液滴をともに被覆する請求項1乃至3のいずれかに1に記載の方法。
【請求項6】
デジタル型の第3のノズルを設けることと、
この第3のノズルへ下地組成物を供給することと、
前記機能的組成物を付着させる前に、前記第3のノズルから前記下地組成物を選択的に付着させ、前記基材に一連の下地液滴を形成することとをさらに具備し、前記機能的液滴は、実質的に前記下地液滴に付着される前記全ての請求項のいずれか1に記載の方法。
【請求項7】
前記下地液滴は、前記機能的液滴の劣化を防止するための保護層を形成する請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記下地液滴は、前記機能的液滴の活性の速度を調整するための律速層を形成する請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記カプセル化液滴は、前記機能的液滴の劣化を防止するための保護層を形成する前記全ての請求項のいずれか1に記載の方法。
【請求項10】
前記カプセル化液滴は、前記機能的液滴の活性の速度を調整するための律速層を形成する前記全ての請求項のいずれか1に記載の方法。
【請求項11】
前記機能的組成物は、感温性であり、この機能的組成物の付着は、40℃未満の温度で行われる前記全ての請求項のいずれか1に記載の方法。
【請求項12】
前記機能的組成物は、環境条件に対して反応を示し、前記機能的液滴とカプセル化液滴との付着は、調整された環境で行なわれる前記全ての請求項のいずれか1に記載の方法。
【請求項13】
前記ノズルは、コンティニュアスインクジェット型であり、液滴が、連続ジェットによる付着により付着される前記全ての請求項のいずれか1に記載の方法。
【請求項14】
前記ノズルは、多重偏向型であり、液滴が、前記液滴を帯電させ、これら液滴を電界を使用して前記基材へ導くことにより付着され、この際、前記電荷又は前記電界のいずれかが変化する請求項13に記載の方法。
【請求項15】
布地の供給方向にほぼ垂直に整列されたデジタル型の前記第1、第2および/または第3の配列の静止したノズルを設けることをさらに具備する前記全ての請求項のいずれか1に記載の方法。
【請求項16】
選択的に付着された複数の機能的液滴を有する布地の基材を具備し、各機能的液滴は、カプセル化液滴によって少なくとも部分的にカプセル化されている品質の向上した布地。
【請求項17】
前記機能的液滴は、生物剤を有する請求項16に記載の品質の向上した布地。
【請求項18】
前記機能的液滴は、薬用剤を有する請求項16に記載の品質の向上した布地。
【請求項19】
前記機能的液滴は、指示薬を有する請求項16に記載の品質の向上した布地。
【請求項20】
下地液滴をさらに具備し、この下地液滴とカプセル化液滴とは、前記機能的液滴を少なくとも部分的にカプセル化するように協働する請求項16乃至19のいずれか1に記載の品質の向上した布地。
【請求項21】
前記カプセル化液滴および/または前記下地液滴は、前記機能的液滴の劣化を防止するための保護層を有する請求項16乃至20のいずれか1に記載の品質の向上した布地。
【請求項22】
前記カプセル化液滴および/または前記下地液滴は、前記機能的液滴の活性の速度を調整するための律速層を有する請求項16乃至21のいずれか1に記載の品質の向上した布地。
【請求項23】
複数のデジタル型ノズルを具備し、請求項1乃至15のいずれか1に記載の方法により布地の基材に機能的組成物の液滴を設ける装置。

【図1】
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【公表番号】特表2008−534792(P2008−534792A)
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−502412(P2008−502412)
【出願日】平成18年3月22日(2006.3.22)
【国際出願番号】PCT/EP2006/060964
【国際公開番号】WO2006/100273
【国際公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(506094529)テン・ケイト・アドバンスト・テクスタイルス・ビー.ブイ. (7)
【Fターム(参考)】