説明

布帛の耐水圧を評価する方法

【課題】集中豪雨を想定した布帛の耐水圧を簡易的に評価する方法を提供する。
【解決手段】連続水流発生装置から発生した連続水流を布帛の表面に噴射し、該連続水流の該布帛への透過性を測定することにより布帛の耐水圧を評価する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布帛の耐水圧を簡易的に評価する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、短時間に多量の降雨が観測される突然の集中豪雨が多く確認されるようになった。一方、これまで多くの透湿防水布帛が開発されてきたが、その評価方法は様々で、たとえばJIS規格L−1092に記載された、雨試験(ブンデスマン法)や高水圧法等がある(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
しかしながら、前者は降雨量では集中豪雨を凌ぐものの、水圧や水滴形状で集中豪雨を十分再現しているとは言いにくい。また、後者は布帛表面に静水圧を負荷するものであり、実際の豪雨内で使用される被服の耐水評価としては相関が得られにくいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−248667号公報
【特許文献2】特開2004−256939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記の背景に鑑みなされたものであり、その目的は、集中豪雨を想定した布帛の耐水圧を簡易的に評価する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は上記の課題を達成するため鋭意検討した結果、連続水流発生装置から発生した連続水流を布帛の表面に噴射することにより、集中豪雨を想定した布帛の耐水圧を簡易的に評価することができることを見出し、さらに鋭意検討を重ねることにより本発明を完成するに至った。
【0006】
かくして、本発明によれば「布帛の耐水圧を評価する方法であって、連続水流発生装置から発生した連続水流を布帛の表面に噴射し、該連続水流の該布帛への透過性を測定することにより布帛の耐水圧を評価することを特徴とする布帛の耐水圧を評価する方法。」が提供される。
その際、前記連続水流の水圧が100〜1000kPaの範囲内であることが好ましい。また、前記連続水流の横断面の直径が0.5〜5mmの範囲内であることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、集中豪雨を想定した布帛の耐水圧を簡易的に評価する方法が得られる。また、かかる方法により、集中豪雨を想定した被服の製造が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明において用いることのできる、布帛の耐水圧を評価する装置を模式的に示す図(布帛は図示せず。)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明において、連続水流発生装置から発生した連続水流を布帛の表面に噴射し、該連続水流の該布帛への透過性を測定することにより布帛の耐水圧を評価する。
前記連続水流発生装置としては、例えば、卓上手押噴霧器(クラマタ産業社製)など市販のものや、水道水を用いてノズルから連続水流を発生させてもよい。
【0010】
ここで、本発明でいう連続水流とは1秒以上(好ましくは1秒以上1時間以内)連続する水流のことである。1秒未満の間欠水流では、集中豪雨を想定した布帛の耐水圧評価にならないおそれがあり、好ましくない。
【0011】
また、前記連続水流の水圧としては100〜1000kPa(1〜10kgf/cm)の範囲内であることが好ましい。該水圧が100kPaよりも小さいと、水圧が低すぎて集中豪雨を想定した布帛の耐水圧評価にならないおそれがある。逆に、該水圧が1000kPaより大きくても、水圧が大きすぎて集中豪雨を想定した布帛の耐水圧評価にならないおそれがある。
また、前記連続水流の横断面の直径としては、集中豪雨の雨滴を想定して0.5〜5mmの範囲内であることが好ましい。
【0012】
本発明において用いる装置としては、図1に模式的に示すように、連続水流発生装置1と噴射ノズル4とを送水チューブ2により接続したものが好ましい。
ここで、送水チューブを分岐し、複数(好ましくは2〜4個)のノズルに接続すると、複数の布帛を同時に評価することができ好ましい。
【0013】
なお、図1は、噴射ノズル4の個数が2個の場合を示したものであるが、噴射ノズル4の個数は、同時に評価する布帛の枚数に応じて選定すればよく、本発明において、噴射ノズルの個数が2個に限定されないことはいうまでもない。
布帛は試料枠5に取り付けられる(図1では布帛を図示せず。)。その際、布帛を試料枠5に取り付ける方法としては、両面テープや接着剤などにより貼り付けてもよいし、クランプなどを用いて物理的な方法により取り付けてもよい。
【0014】
本発明の方法において、連続水流発生装置から発生した連続水流を布帛の表面に噴射させ、連続水流が布帛を透過するかどうか(漏水性)を目視により測定してもよいし、布帛の上に感湿紙や感湿センサーなどを取り付けてこれらを用いて漏水性を測定してもよい。さらには、ビデオなどを用いて撮影し画像解析することによりミストの漏水性を測定してもよい。
【0015】
また、本発明の方法によれば、従来の静水圧法にくらべて、噴射水を用いているので集中豪雨を想定した布帛の耐水圧を簡易的に評価することができる。特に、噴射ノズル4の布帛に対する噴射角度を適宜設定(自動コントロールしてもよい。)すると、衣服に対して垂直ではなく、さまざまな角度を有しながらあたる集中豪雨を、より忠実に再現することができる。そして、かかる方法により、集中豪雨を想定した被服の製造が容易になる。
【実施例】
【0016】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【0017】
[実施例1]
図1に模式的に示すような、装置を作製した。すなわち、まず、厚さ5mmのアクリル板を用いて、巾30cm、高さ50cm、奥行き25cmにて躯体部を作製し、躯体上部から奥行き12.5cm、高さ25cm、巾全面に渡ってカットし、開口部に、同じく厚さ5mmのアクリル板で作製した試料(布帛)止め枠を設置した。また躯体内部の高さ20cmの位置に水受け用に厚さ5mmアクリル板を設置した。
【0018】
次いで、試料止め枠の中心部に向って、2個の噴射ノズル4(ハギテック社製、ミニフィッティング(P)VPI116)を躯体部に固定した。また、連続水流発生装置1として最高級卓上手押噴霧器(クラマタ産業社製、容量1000cc、使用時圧力3kgf/cm)を用い、連続水流発生装置1と噴射ノズル4とをシリコンチューブ(ハギテック製)にて接続した。また、噴射は、同時に2試料を評価するため途中で分岐コネクタ(ハギテック社製、ミニフィッティング(P)VPT116)を使い、2方向へ同時噴射を行えるようにした。
この装置を用い、実際の集中豪雨で評価した布帛を用いて評価したところ、実際の集中豪雨をよく再現するものであった。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明によれば、集中豪雨を想定した布帛の耐水圧を簡易的に評価する方法が得られ、その工業的価値は極めて大である。
【符号の説明】
【0020】
1:連続水流発生装置
2:送水チューブ
3:躯体部
4:噴射ノズル
5:試料(布帛)止め枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
布帛の耐水圧を評価する方法であって、連続水流発生装置から発生した連続水流を布帛の表面に噴射し、該連続水流の該布帛への透過性を測定することにより布帛の耐水圧を評価することを特徴とする布帛の耐水圧を評価する方法。
【請求項2】
前記連続水流の水圧が100〜1000kPaの範囲内である、請求項1に記載の布帛の耐水圧を評価する方法。
【請求項3】
前記連続水流の横断面の直径が0.5〜5mmの範囲内である、請求項1または請求項2に記載の布帛の耐水圧を評価する方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−107345(P2012−107345A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254859(P2010−254859)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【Fターム(参考)】