説明

布帛の表面加工処理方法

【課題】本発明は、厚さが0.2mm〜1.5mmで目付けが100g/m2〜1000g/m2の薄地の布帛において撥水剤を裏抜けすることなく外表面全体に水分の滲み防止に必要な量を付与できるとともに繊維製品としての吸水性の機能を確保することが可能な布帛の表面加工処理方法を提供することを目的とするものである。
【解決手段】布帛の少なくとも一方の片面に吸水剤を付与して乾燥させることで少なくとも一方の片面に吸水性の機能を持たせる吸水加工工程と、1インチ当りのメッシュ数が40メッシュ〜300メッシュのロータリスクリーン捺染機により撥水剤を含む捺染糊を布帛の他方の片面に10g/m2〜70g/m2の塗糊量で印捺した後、乾燥及び熱処理させることで他方の片面に撥水性の機能を持たせる撥水加工工程とを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄地の布帛に対して片面に撥水加工処理を行う表面加工処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
布帛に対する表面加工処理方法としては、種々の物理的処理及び化学的処理が施されているが、汗に対する吸水性及び発散性を向上させるために吸水性及び撥水性を兼備した布帛の表面加工処理方法が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、直接肌に触れる布帛裏面の凸部表層全部分にのみ撥水処理層を形成し、この撥水処理層を除いた残りの布帛裏面凹部分及びこれと連続する布帛表面部分に吸水処理を施す表面加工処理方法が記載されている。また、特許文献2では、布帛の片側の表面層に撥水処理を行うに際して表面積の3〜30%を微細な点および/または線状で未撥水部分として残して撥水処理を行い、しかる後布帛の未撥水部分全体に親水化処理を施す表面加工処理方法が記載されている。
【0004】
また、特許文献3では、撥水性、抗菌性あるいは親水性(吸湿性)などの様々な機能を与える塗布液を、グラビアコーティングの表面処理技術を利用して繊維製品の表面上に塗布するようにした点が記載されており、こうした表面処理により外表面に撥水性を備え、内表面に抗菌性及び親水性を備えるといった複数の機能を有する繊維製品を製作することができる。
【0005】
また、特許文献4では、二層構造織編地の少なくとも一方の面にポリエステル系繊維よりなるパイルを配置してなり、パイルを有する片方の面に吸水剤を付与し、もう片方の面に撥水剤を付与した点が記載されている。
【0006】
また、特許文献5では、夏場にワイシャツ等の薄手の衣料を着用した際に布帛表面に表出する汗滲みを防止するために、布帛の構成繊維に撥水処理を施し、布帛の少なくとも一方の面に起毛処理を行って起毛処理された繊維の切断面において実質的に撥水処理剤が付着していないようにした吸水性布帛が記載されている。こうした薄手の衣料の汗濡れによる変色を防止する方法としては、繊維布帛表面に白色顔料を付与する方法(特許文献6参照)や体側の内側を吸水性繊維で外側を撥水性繊維の多重構造組織で作成する方法(特許文献7参照)が挙げられる。
【特許文献1】特公平1−53394号公報
【特許文献2】特公平4−28830号公報
【特許文献3】特開2005−344273号公報
【特許文献4】特開2002−266249号公報
【特許文献5】特開2004−156174号公報
【特許文献6】特開平11−181673号公報
【特許文献7】特開2004−131904号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した先行文献でも認識されているように、薄手の衣料では夏場の汗滲みに伴う衣料の変色を防止することが要請されており、また、近年においては高齢者の増加に伴い失禁等による滲みが衣料の外面に表出して変色することを防止したいという要望も高まってきている。さらに、屋外でにわか雨に遭遇した場合等に水滴による衣料の滲みに伴う変色への対策も求められている。
【0008】
こうした水分の滲みによる変色を防止するための対策としては、上述した先行文献でも行われているように、撥水剤を繊維製品の外表面に表面加工処理することで外表面への滲みを防止する方法が提案されている。変色を防止するためには、外表面全体に撥水剤を分布させて(1)内側から滲み出てくる水分を外表面に表出するのを遮断する、(2)外側からの水分を布帛外表面の撥水性により遮断する等の対策が必要になる。しかしながら、薄手の繊維製品に用いられる薄地の布帛の場合には、表面に液状の撥水剤を処理する際に裏抜けして、片面のみの撥水剤付与が困難であった。こうした撥水剤の裏抜けは、衣料品等では快適性のファクターの1つである吸水性を阻害することになり、使用時の不快感を招くようになる。
【0009】
そこで、本発明は、厚さが0.2mm〜1.5mmで目付けが100g/m2〜1000g/m2の薄地の布帛において撥水剤を裏抜けすることなく外表面全体に水分の滲み防止に必要な量を付与できるとともに、吸水面(内表面)において吸水性の機能を確保することが可能な布帛の表面加工処理方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る布帛の表面加工処理方法は、厚さが0.2mm〜1.5mmで目付けが100g/m2〜1000g/m2の布帛の表面加工処理方法であって、布帛の少なくとも一方の片面に吸水剤を付与して乾燥させることで少なくとも一方の片面に吸水性の機能を持たせる吸水加工工程と、1インチ当りのメッシュ数が40メッシュ〜300メッシュのロータリスクリーン捺染機により撥水剤を0.5重量%〜30重量%含む捺染糊を布帛の他方の片面に10g/m2〜70g/m2の塗糊量で印捺した後、乾燥及び熱処理させることで他方の片面に撥水性の機能を持たせる撥水加工工程とを含むことを特徴とする。さらに、前記捺染糊の粘度は、8000mPa・s〜25000mPa・sであることを特徴とする。さらに、前記撥水加工工程は、複数回の印捺処理により布帛の他方の片面に撥水剤の必要量を付与することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、上記のような構成を備えることで、ロータリスクリーン捺染機により撥水剤を含む捺染糊を布帛の他方の片面のみに印捺処理して、その加工工程の前後に関わらず、布帛の少なくとも一方の片面に吸水剤を付与して少なくとも一方の片面に吸水性の機能を持たせることで、一方の面に吸水性の機能を持たせ、他方の面に撥水性の機能を持たせた薄地の布帛を得ることができる。
【0012】
ロータリスクリーン捺染機により印捺処理することで、撥水剤を含む捺染糊を裏抜けすることなく外表面全体に水分の滲み防止に必要な量を付与できる。より厚さの薄い布帛に対しては複数回の印捺処理を行うことで、撥水剤の必要量を複数回に分けて付与し、裏抜けを確実に防止しつつ必要量を付与することが可能となる。
【0013】
撥水加工工程において裏抜けすることなく他方の片面のみに撥水加工処理を施すことができるので、薄地の布帛の一方の面に吸水性を確保することができ、衣料として用いた場合にも汗を吸収してベタつきを抑えることが可能となる。また、撥水加工により水分の滲みが防止されて滲みに伴う布帛の変色が抑えられるが、水分が蒸発する発散性や通気性に影響を与えることはないため、薄手のワイシャツ、Tシャツ、下着類のように直接肌に触れる衣料に好適である。そして、汗の滲み以外に、失禁による水分の滲みやにわか雨等の水滴の滲みに対しても薄地の布帛の外表面の変色を抑えることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係る表面加工処理を施す布帛としては、レーヨンに代表される再生繊維、綿に代表される天然繊維、アセテート等の半合成繊維、ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステル系合成繊維、ナイロンに代表される脂肪族ポリアミド系合成繊維等の吸水加工及び撥水加工が可能なすべての繊維あるいはこれらの混合繊維を用いた薄地の布帛が挙げられる。そして、織物、編物又は不織布等いずれの布帛にも適用することができ、特に限定されることはない。
【0015】
布帛の厚さは、0.2mm〜1.5mmのものに適用することが好ましく、厚さが0.2mmより薄くなると、撥水加工工程で一方の面に印捺した捺染糊が他方の面にまで及ぶようになり、十分な吸水性が確保できなくなる。1回の印捺処理では、布帛の厚さが0.55mm〜1.5mmが好適であり、布帛の厚さが0.2mm〜1.5mmの場合には、1回以上の印捺処理が好適である。
【0016】
また、布帛の目付けは、100g/m2〜1000g/m2のものに適用することが好ましく、目付けが100g/m2より小さくなると、撥水加工工程で一方の面に印捺した捺染糊が他方の面にまで及ぶようになり、十分な吸水性が確保できなくなる。1回の印捺処理では、布帛の目付けが130g/m2〜1000g/m2が好適であり、布帛の目付けが100g/m2〜1000g/m2の場合には、1回以上の印捺処理が好適である。
【0017】
吸水加工工程で用いられる吸水剤としては、布帛に使用される繊維と親和性のある吸水剤であれば、いずれも用いることができる。一般には、吸汗剤、親水化剤と称される薬剤も含め、親水性を有する薬剤を繊維に付着させて親水性を有する皮膜を形成する。
【0018】
例えば、ポリエステル系繊維に対しては、親和性の高い芳香族ポリエステル−ポリエーテルブロック共重合体等の親水化剤が挙げられる。吸水剤の加工処理方法は、吸尽法、浸漬法、塗布又はスプレー等の方法のように布帛全面又は片面に満遍なく付与処理する方法が好適である。吸水剤の付与量としては、吸水剤の種類に応じて適宜調整して付与すればよく、例えば、吸水加工剤(製品面SR−1000、高松油脂株式会社製)の場合には、布帛の単位重量に対して0.5重量%〜10重量%程度付与するのが好ましい。
【0019】
吸水加工工程は、撥水加工工程の前後に関わらず布帛の少なくとも一方の片面に対して加工処理すればよく、特に限定されない。例えば、布帛の全面に吸水加工処理して全面に吸水性の機能を持たせた後他方の片面に撥水加工処理することで、一方の片面に吸水性の機能を持たせ、他方の片面に撥水性の機能を持たせることができる。また、布帛の一方の片面のみに吸水加工処理して一方の片面に吸水性の機能を持たせた後他方の片面に撥水加工処理することで、一方の片面に吸水性の機能を持たせ、他方の片面に撥水性の機能を持たせることができる。また、布帛の他方の片面に撥水加工処理して他方の片面に撥水性の機能を持たせた後布帛の一方の片面に吸水加工処理することで、一方の片面に吸水性の機能を持たせ、他方の片面に撥水性の機能を持たせることができる。また、布帛の他方の片面に撥水加工処理して他方の片面に撥水性の機能を持たせた後布帛の全面に吸水加工処理することで、撥水加工処理した他方の面では付与された吸水剤は弾かれて定着することがなく、撥水機能が維持されるようになるため、一方の片面に吸水性の機能を持たせ、他方の片面に撥水性の機能を持たせることができる。
【0020】
撥水加工工程に用いられる撥水剤としては、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂、パラフィン系樹脂、エチレン尿素系樹脂、脂肪酸系樹脂等が挙げられ、これらを複数混合した樹脂を用いてもよい。捺染糊には、撥水剤を0.5重量%〜30重量%を添加する。捺染糊の粘度は、8000mPa・s〜25000mPa・sに調整するのがよい。8000mPa・sより粘度が小さくなると、印捺処理を行う場合に布帛表面から内部に浸透するようになり、吸水面側に影響が生じて十分な吸水効果を得ることができない。粘度が25000mPa・sを超えると、メッシュから十分な塗湖量を印捺することができなくなる。粘度の調整は、一般に増粘剤と称される薬剤で調整することができる。
【0021】
また、付与した撥水処理層の耐久性を高めるために、架橋剤を用いてもよい。架橋剤としては、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。架橋剤は、0.01重量%〜10重量%用いるとよい。
【0022】
撥水剤を含む捺染糊を印捺するロータリスクリーン捺染機としては、例えば、円筒状スクリーン版を用いた装置が挙げられるが、これ以外の公知のロータリスクリーン捺染機を用いてもよく、特に限定されない。円筒状スクリーン版を用いた装置は、金属製の円筒状スクリーン版の内部にスキージを配置し、スキージの先端部が円筒状スクリーン版の内周面に圧接した状態に設定されている。円筒状スクリーン版の内周面とスキージとの間には、捺染糊が供給され、円筒状スクリーン版の外周面には撥水処理を行う布帛が圧接するようにバックアップローラが配設される。そして、円筒状スクリーン版を回転させることで、捺染糊がスキージにより堰き止められて円筒状スクリーン版から押し出されるようになり、円筒状スクリーン版と同期して回転するバックアップローラにより搬送される布帛の片面に捺染糊が印捺処理されていくようになる。
【0023】
ロータリスクリーン捺染機のスクリーンのメッシュ数は、1インチ当りのメッシュ数が40メッシュ〜300メッシュに設定するのが好ましく、メッシュ数が40より小さくなると、布帛表面の撥水処理された面積の分布が粗くなって水分の滲みによる変色防止が十分でなくなり、メッシュ数が300を超えると、捺染糊が高粘度であるため、塗糊量が著しく減少し、撥水性の不安定化を招く。
【0024】
また、捺染糊の塗糊量は、布帛の片面に10g/m2〜70g/m2付与することが好適である。塗糊量が10g/m2より少なくなると、十分な撥水効果を得ることができず、水分の滲みによる変色が抑えられなくなる。また、塗糊量が70g/m2より多くなると、布帛が固くなって柔軟性が損なわれ、また、捺染糊の乾燥に要する時間が長くなるため、撥水剤の裏抜けが生じるようになる。
【0025】
撥水加工工程では、撥水剤が布帛の反対側の面まで浸透しないようにしなければならないが、ロータリスクリーン捺染機により印捺処理することで、メッシュ数、捺染糊の粘度及び塗糊量をきめ細かく調整して撥水剤の付与量及び付与分布を最適の状態で印捺処理することができる。そして、より厚さの薄い布帛、特に、厚さが0.55mm未満で目付けが130g/m2未満の布帛の場合には、1回以上の印捺処理を行うことで布帛の片面全体に撥水処理が行え、水分の滲みによる変色防止の効果を得ることができる。
【0026】
撥水加工工程の前に吸水性を阻害する水溶性物質(PVA等)を、片面処理又は浸漬処理により付与しておき、撥水加工工程を行った後に布帛を洗浄して、付与した水溶性物質を除去するようにしてもよい。このように撥水加工前に吸水性が阻害されるので、撥水処理する片面以外の部分に撥水剤が浸透するのを抑えることができる。
【0027】
撥水加工工程では、撥水剤を付与した布帛を乾燥後、100℃〜200℃、より好ましくは160℃〜195℃で熱処理することが望ましい。こうした熱処理により安定した撥水効果が得られる。
【0028】
撥水加工処理後の布帛に対して、吸水性を備えた面側に撥水剤を付与して弱い撥水性を持たせるようにしてもよい。このように弱い撥水性を持たせることで、汗を吸収した場合のベタつき感を抑えることができる。こうした撥水剤の付与には、グラビアロール法、キスロール法、泡加工法、ロータリスクリーン捺染法、フラットスクリーン捺染法、ローラ捺染法を用いることで、撥水剤の付与量を微調整して撥水性を最適の状態に設定することができる。
【実施例】
【0029】
以下に実施例を示して本発明をさらに詳しく説明するが、実施例は本発明を限定するものと解してはならない。
【0030】
[実施例1]
厚さ0.75mmで目付け302g/m2のポリエステル繊維90%及びポリウレタン繊維10%からなる編物製布帛を用いて以下の表面加工処理を行った。
<吸水加工工程>
吸水加工剤として、高松油脂株式会社製の吸水加工剤(製品名SR−1000)を用いた。吸水加工剤を布帛の単位重量当り5重量%用い、浴中処理を125℃で30分間行った後180℃で1分間乾燥処理した。
<撥水加工工程>
上述した円筒状スクリーン版を用いたロータリスクリーン捺染機を使用して、捺染糊を印捺処理した。スクリーン版のメッシュ数は、80メッシュ/インチとし、捺染糊の塗糊量を38g/m2に設定した。
捺染糊は、以下の物質を混合して調製し、粘度を14000mPa・sとした。
水 93重量%
フッ素系撥水剤(日華化学株式会社製) 6重量%
ウレタン系架橋剤(日華化学株式会社製) 1重量%
印捺処理後布帛を155℃で十分乾燥させた。その後、乾燥させた布帛を180℃で1分間熱処理した。
【0031】
[実施例2]
厚さ0.7mmで目付け157g/m2のポリエステル繊維65%及び綿繊維35%からなる丸編製布帛を用いて以下の表面加工処理を行った。
<吸水加工工程>
吸水加工剤として、高松油脂株式会社製の吸水加工剤(製品名SR−1000)を用いた。吸水加工剤を布帛の単位重量当り5重量%用い、浴中処理を100℃で30分間行った後180℃で1分間乾燥処理した。
<撥水加工工程>
上述した円筒状スクリーン版を用いたロータリスクリーン捺染機を使用して、捺染糊を印捺処理した。スクリーン版のメッシュ数は、80メッシュ/インチとし、捺染糊の塗糊量を38g/m2に設定した。捺染糊は、実施例1と同じものを調製して用いた。印捺処理後布帛を155℃で十分乾燥させ、乾燥させた布帛を180℃で1分間熱処理した。
【0032】
[実施例3]
厚さ0.52mmで目付け231g/m2のポリエステル繊維80%及びポリウレタン繊維20%からなる編物製布帛を用いて以下の表面加工処理を行った。
<吸水加工工程>
吸水加工剤として、高松油脂株式会社製の吸水加工剤(製品名SR−1000)を用いた。吸水加工剤を布帛の単位重量当り5重量%用い、浴中処理を120℃で30分間行った後180℃で1分間乾燥処理した。
<撥水加工工程>
上述した円筒状スクリーン版を用いたロータリスクリーン捺染機を使用して、2回の印捺処理を行った。
(1)1回目の印捺処理
スクリーン版のメッシュ数は、60メッシュ/インチとし、捺染糊の塗糊量を18g/m2に設定した。
捺染糊は、以下の物質を混合して調製し、粘度を18000mPa・sとした。
水 98重量%
シリコーン系撥水剤(共栄社化学株式会社製) 2重量%
印捺処理後布帛を155℃で十分乾燥させた。
(2)2回目の印捺処理
スクリーン版のメッシュ数は、80メッシュ/インチとし、捺染糊の塗糊量を38g/m2に設定した。
捺染糊は、以下の物質を混合して調製し、粘度を14000mPa・sとした。
水 93重量%
フッ素系撥水剤(日華化学株式会社製) 6重量%
ウレタン系架橋剤(日華化学株式会社製) 1重量%
印捺処理後布帛を155℃で十分乾燥させた。その後、乾燥させた布帛を180℃で1分間熱処理した。
【0033】
[実施例4]
厚さ0.25mmで目付け114g/m2のポリエステル繊維65%及び綿繊維35%からなる織物製布帛を用いて以下の表面加工処理を行った。
<吸水加工工程>
吸水加工剤として、高松油脂株式会社製の吸水加工剤(製品名SR−1000)を用いた。吸水加工剤を布帛の単位重量当り5重量%用い、浴中処理を130℃で30分間行った後180℃で1分間乾燥処理した。
<撥水加工工程>
上述した円筒状スクリーン版を用いたロータリスクリーン捺染機を使用して、2回の印捺処理を行った。
(1)1回目の印捺処理
スクリーン版のメッシュ数は、250メッシュ/インチとし、捺染糊の塗糊量を16g/m2に設定した。
捺染糊は、以下の物質を混合して調製し、粘度を18000mPa・sとした。
水 98重量%
シリコーン系撥水剤(共栄社化学株式会社製) 2重量%
印捺処理後布帛を155℃で十分乾燥させた。
(2)2回目の印捺処理
実施例3の2回目の印捺処理と同様の処理を行った後布帛を155℃で十分乾燥させた。その後、乾燥させた布帛を180℃で1分間熱処理した。
【0034】
[比較例1]
実施例4と同じ布帛を用いて、実施例4と同様の吸水加工工程を行った後、撥水加工工程では、実施例4の1回目の印捺処理を行わずに2回目の印捺処理のみ行った。印捺処理後布帛を155℃で十分乾燥させた。その後、乾燥させた布帛を180℃で1分間熱処理した。
【0035】
[比較例2]
比較のため、実施例4で用いた布帛に対して表面加工処理を行わずに評価試験を行った。
【0036】
(評価試験)
吸水性の評価試験は、JIS L−1907に準拠した滴下法により行った。また、撥水性の評価試験は、JIS L−1092に準拠したスプレー試験により行った。水分の滲みに伴う布帛の変色は、吸水性を備えた面に水滴を滴下し反対側の撥水性を備えた面から見た変色の程度を目視により評価した。評価結果を表1に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
この評価結果によれば、薄地の布帛に対して片面に撥水性を備えることで水分の滲みに伴う布帛の変色を防止することができるとともに反対側の面では十分な吸水性を確保することが可能となっている。
【0039】
また、実施例3及び4に示すように、より薄地の布帛に対しては印捺処理を2回施すことにより片面のみを撥水処理して反対側の面の吸水性を損なわないように処理することができる。これに対して、比較例1では、1回の印捺処理により片面の撥水性は備わっているものの反対側の面の吸水性が大幅に低下しており、反対側の面に撥水剤が浸透してしまったことが窺われる。このように、複数回に分けて印捺処理することで、反対側の面に撥水剤が浸透することを抑えて吸水性を損なうことなく十分な撥水処理を行うことが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さが0.2mm〜1.5mmで目付けが100g/m2〜1000g/m2の布帛の表面加工処理方法であって、布帛の少なくとも一方の片面に吸水剤を付与して乾燥させることで少なくとも一方の片面に吸水性の機能を持たせる吸水加工工程と、1インチ当りのメッシュ数が40メッシュ〜300メッシュのロータリスクリーン捺染機により撥水剤を0.5重量%〜30重量%含む捺染糊を布帛の他方の片面に10g/m2〜70g/m2の塗糊量で印捺した後、乾燥及び熱処理させることで他方の片面に撥水性の機能を持たせる撥水加工工程とを含むことを特徴とする布帛の表面加工処理方法。
【請求項2】
前記捺染糊の粘度は、8000mPa・s〜25000mPa・sであることを特徴とする請求項1に記載の表面加工処理方法。
【請求項3】
前記撥水加工工程は、複数回の印捺処理により布帛の他方の片面に撥水剤の必要量を付与することを特徴とする請求項1又は2に記載の表面加工処理方法。

【公開番号】特開2008−63700(P2008−63700A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−243526(P2006−243526)
【出願日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(302059746)東洋染工株式会社 (5)
【Fターム(参考)】