説明

布帛及びその製造方法

内面(10)を有する布帛を、疎水性となるように処理したヤーン(11)から形成し、疎水性ヤーンの間を液体が透過可能であって、布帛の外面(20)を形成する親水性ヤーン(12)と接触するような方法で組み上げる。ヤーンは綿繊維から作られていることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウィッキング(吸い上げること、wicking)によって布帛の内面から外面へ液体を輸送可能な、新規布帛及びその製造方法に関する。本発明の好ましい実施態様の1つでは、この布帛の全体が綿繊維からなり、着用者が乾燥かつ快適な状態であることを補助するスポーツ用衣服又は下着を製造するのに適している。
【背景技術】
【0002】
原料状態の綿繊維は自然に生じたワックスでコートされており、そのワックスによって疎水性となっている。例えば精練してこの被膜を除去すると、繊維表面は、他の非セルロース繊維よりもかなり強力な親水性である。この高い表面エネルギーは利点をもたらすが、ある条件では非常に不利になる。
【0003】
衣服の微気候(microclimate)中の水分がほとんど気体状態である低活性状態では、綿繊維の吸湿特性のおかげで、皮膚に隣接する綿布帛が水蒸気変化を非常にうまく穏やかに又は「緩衝」する。そのため、綿の持つ「通気性」評価は幅広く認識されている。水分量が上昇して液体の汗が生成すると、綿は皮膚から汗を速やかにかつ容易に吸い上げる。しかしながら大量の汗が排出される条件では、液体の橋が皮膚と布帛との間に形成し、それが「ウェットクリング(wet cling)」として知られる現象、すなわち動作中に布帛が皮膚にくっついて引きずられるといったことを引き起こす。高い表面エネルギー及び細い直径の綿繊維もまた、綿布帛が高い液体貯蔵容量を有する原因となる。綿布帛は飽和したときに、他の繊維からなる同等の布帛と比べてより多くの液体を保持するため、乾燥するのに非常に時間がかかる。その結果、現代の合成繊維と比較して、綿は比較的「ローテク」製品であると一般に考えられている。
【0004】
合成ポリマーは通常比較的低い表面エネルギーを有している。これらのポリマーのウィッキング性能を改善するために、様々な形態の親水性仕上げ剤で処理して繊維の表面エネルギーを増大することが多いが、綿と同じ水準には到達しない。ウェットクリングはほとんど問題にならない。より技術指向性の高い合成品のいくつかでは、汗を皮膚から優先的に輸送して除くために、様々な表面エネルギー及び/又は様々な繊維径の繊維からなる多層構造体を使用して、布帛の内表面と外表面との間にウィッキング勾配を作る。布帛のある面から他の面に優先的に生じる水分輸送は、ウィッキング差として知られており、様々な繊維径の複数層を使用してウィッキング差を実現する布帛は、一般にデニール勾配布帛として知られている。
【0005】
米国特許出願第2002/0064639号に、ウェットクリングを低減するように設計されたセルロース繊維を含む多層布帛がいくつか記載されている。この米国特許出願の焦点となる特定種類の布帛は、内表面から外表面へ液体を輸送するために、布帛の内表面から布帛の外表面へと延在するウィッキング窓を有している。この布帛は、低表面エネルギー領域を形成するために疎水剤を不連続的に内表面に適用し、こうしてウィッキング窓を形成する比較的高表面エネルギーの未処理領域を残すことにより作られる。実際は、汗が通常通る布帛内部への経路と同じ経路を、この疎水剤が適用中に進むことが多いため、この米国特許出願に記載されているコーティング処理は非常に困難である。着用中、一旦布帛が飽和するとこのウィッキング窓も同様に濡れてしまい、そのため布帛は皮膚に対して乾燥した感触をもたらさない。疎水性処理を受けていない布帛の全ての部分にわたって汗が均一に分布するため、この種類の布帛は真のウィッキング差構造体であるとはみなせない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、布帛の内面から外面への液体のウィッキングが布帛構造体によって改良可能であるという認識に基づいている。ここでは、布帛の内面は実質的に均一な疎水性であり、その内面を液体が透過可能であって、かつ布帛の外面の少なくとも一部を形成する親水性ヤーンとその液体が接触可能であるように組み上げた疎水性ヤーンによって、この内面は形成されている。液体が内面を透過し親水性ヤーンと接触したときに、その液体を布帛の内面を通って外面に引き出すことが可能である。
【0007】
本発明によれば、
i)疎水性となるように処理された1つ以上の疎水性ヤーンから全体が形成された内面であって、該内面全体にわたって実質的に同じ疎水性を有するように、該ヤーンが該内面全体に組み上げられている、内面と;
ii)該内面と比較して親水性であり、かつ少なくとも部分的に1つ以上の親水性ヤーンで形成されている、外面と
を含む布帛であって、該内面を液体が透過可能であって、かつ該布帛の該外面の少なくとも一部を形成して該布帛の該外面へ液体を引き出すことのできる該親水性ヤーンとその液体が接触可能であるように、該疎水性ヤーンが組み上げられていることを特徴とする布帛が提供される。
【0008】
内面にある疎水性ヤーンのいくつかの区分が、液体が透過可能な間隔で離されるように、疎水性ヤーンを組み上げるのが好ましい。
【0009】
この明細書全体で、疎水性ヤーン同士の「間隔」とは、ヤーンの外表面間の距離を指す。
【0010】
親水性及び疎水性ヤーンには、以下の種類の繊維のいずれか1つ又は混紡が含まれるが、これらに限られない:(a)ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル及び再生セルロースを含む人造又は人工繊維;(b)ウール及び髪の毛のようなタンパク性繊維、並びに綿のようなセルロース繊維を含む天然繊維。
【0011】
布帛の内面を形成する疎水性ヤーンに人造繊維又はフィラメントが含まれる場合、人造ヤーンを疎水剤で処理するのが好ましい。
【0012】
親水性ヤーンのいずれかに組み入れる場合は、必要であれば人工繊維を親水剤で処理してもよい。
【0013】
しかしながら、非セルロース人造繊維は、綿及び他のセルロース繊維に周知の水分緩衝能力を欠いている。このことから、最適な布帛は、好ましくは、綿繊維及びいくつかの工業合成布帛の持つ液体ウィッキング特性をいくらか有する改質綿繊維から作られるものが好ましいとの結論に至る。
【0014】
本明細書全体で、以下の語句「内面全体で実質的に同じ疎水性」又はその変形を、そのようなものを有する布帛を説明するのに使用する。直接肌に接触して布帛が着用される場合、この語句は、布帛の内面と皮膚の間の全ての接触点が、布帛の内面を形成する疎水性ヤーンと触れている状況を指すことを意図している。例えばこの語句は、布帛の内面を形成するヤーンに疎水特性を付与するために使用する方法及び処理に関する、作業上の特徴及び制約が原因で生じうる疎水性の変化を包含する。以下の既知の手法、すなわちパディング、フォーム適用、キスロール、ディップ−ハイドロ(dip-hydro)、スプレー、印刷又はドクターブレードのいずれかを用いて、布帛の内面を形成するヤーンに疎水剤を適用することも可能である。また、完全に形成された布帛として、又は布帛に組み上げる前に個々のヤーンとして組み上げるときに、ヤーンを処理することも可能である。
【0015】
疎水性ヤーンから形成された内面を有し、かつその内面全体が実質的に同じ疎水性を有する布帛を作製する手法の一例は、2つの別々の布帛層を積層することであり、1つは疎水性層、もう1つは親水性層であって、これらは内面及び外面を有する完全な布帛を形成するために合わせて積層する前に、別々に製造及び処理されている。特に、積層布帛組立体の内面を形成するよう意図した布帛層を、上述の既知の方法及び手法のいずれか又は複数を用いて、積層する前に、完全に形成された布帛として疎水剤で処理してもよい。その後、適当な接着法を用いて、疎水剤で処理されていない他の布帛層とこの処理した布帛層を積層してもよい。
【0016】
しかしながら、好ましい手法は、前処理した疎水性ヤーンを1つ以上の親水性ヤーンと一緒に織る又は編むことである。
【0017】
布帛に形成する前に、疎水性ヤーンを疎水剤で前処理しておくことが好ましい。
【0018】
スライバー又はロービングのようなヤーンを形成する前の、緩い繊維状態又は他の任意の段階にある間に疎水性ヤーンの繊維を疎水剤で処理してもよいが、ヤーン形状であるときに、繊維を疎水剤で前処理しておくのが好ましい。
【0019】
布帛の外面は主に親水性ヤーンから作るのが好ましい。これは、綿繊維及び/又は他の種類のセルロース繊維の持つ、元来の親水性セルロース表面を利用することによって、少なくとも部分的に実現することができる。この繊維は、疎水性の不純物、例えば綿の場合は天然ワックスを除去するために精練を必要とする場合がある。言い換えると、外層を形成するヤーンは、内層を形成するヤーンを処理するために使用した疎水剤で前処理されていないことが好ましい。
【0020】
明細書全体で「主に」とは、ある特性量を比例基準で表現するために使用する。例えば、布帛の外面が主に親水性ヤーンから作られると表現した状況では、その外面は質量基準で少なくとも50%の親水性ヤーンを含んでいる。
【0021】
より好ましくは、布帛の外面は80%の親水性ヤーンから作られている。
【0022】
さらにより好ましくは、布帛の外面は100%の親水性ヤーンから作られている。
【0023】
疎水性ヤーンは吸尽法を用いて前処理されているのが好ましい。
【0024】
人工繊維を含む人造繊維及びウールのような天然繊維がヤーンに含まれてもよいと上述したが、その繊維には綿繊維及び/又は他の種類のセルロース繊維が含まれることが好ましい。
【0025】
さらにより好ましくは、ヤーンが、綿及び/又は他の種類のセルロース繊維を少なくとも50%含む。天然に存在する綿繊維以外のセルロース繊維には、マーセル化した綿、黄麻、麻、亜麻、ラミー、リネン、又はビスコース、レーヨン及びリヨセルのような再生セルロース繊維が含まれるが、これらに限られない。
【0026】
より好ましくは、ヤーンが、綿及び/又は他の種類のセルロース繊維を少なくとも80%含む。
【0027】
さらにより好ましくは、ヤーンの全体が、綿及び/又は他の種類のセルロース繊維から作られている。同様に、完全に形成した布帛の全体が、綿及び/又は他の種類のセルロース繊維から作られていてもよい。
【0028】
全体を綿及び/又は他のセルロース繊維で作った本発明の布帛が提供する利点の1つは、この布帛には溶融及び皮膚やけどの危険がないことである。この危険は、繊維デニール勾配又は繊維の層間での表面エネルギー差を利用してウィッキング差を作り出している、市販されている布帛の多くに特徴的である。デニール勾配を使用することによるウィッキング差は、一般に熱可塑性合成繊維から作られる布帛構造体を用いて実現される。合成繊維及び天然繊維の層を組み合わせてウィッキング差を実現する他の布帛構造体は、皮膚に接触することになる布帛内面に合成層を有しているのが一般的である。
【0029】
皮膚に対して熱可塑性合成繊維が有する危険とは、非常時の火災のような激しい熱源に曝されている間、その繊維は溶融に十分なエネルギーを吸収しうることである。その結果生じた、溶融した合成材料は皮膚に付着して、再固化する際に放出された溶融物の潜熱がひどいやけどを引き起こしうる。綿及び他のセルロース繊維に元来備わっている溶融に対する抵抗性を考慮すると、本発明の布帛を綿及び/又は他の種類のセルロース繊維で全体が作られているヤーンから形成する場合、この布帛は救急隊員及び軍人に加えて他の作業者の衣服によく適している。
【0030】
親水性ヤーンを布帛の内面に近づけつつも布帛の内面の中に取り込まないために、前処理した疎水性ヤーンと親水性ヤーンとを布帛内部で互いにかみ合わせることが好ましい。
【0031】
親水性ヤーン及び疎水性ヤーンの比率は、質量基準でそれぞれ95:5〜10:90であることが好ましい。
【0032】
親水性ヤーン及び疎水性ヤーンの比率は、質量基準でそれぞれ60:40〜80:20であることがさらにより好ましい。
【0033】
疎水性ヤーン及び親水性ヤーンの比率を管理する利点は、布帛のウィッキング特性及び液体貯蔵容量を最適化できることである。
【0034】
内面にループ又は浮き糸を形成して、間隔が離された疎水性ヤーンの区分を形成するために、疎水性ヤーンを布帛の内面全体に組み上げることが好ましい。この例では、ループ又は浮き糸は構造体を提供し、液体はその構造体の間を透過して、布帛の疎水性内面を通過できる。
【0035】
布帛の特定用途に応じて、例えば布帛が人間の皮膚に直接触れて着用される場合、布帛を着用する人間の排出する汗は、布帛が人間の皮膚にもたれているため、又は人間が動くと布帛が屈曲するために、圧力を受ける場合がある。この手の汗の液滴にかかる圧力は、さらにその液体を内面の疎水性ヤーン形成物の間で透過させるか、又はその透過を補助する場合がある。布帛が衣服の第2又は第3の層として着用される状況では、布帛が人間の皮膚と直接接触することはまず起こらない。しかしながら同じ原理がここでも適用される場合があって、布帛の内面に接触する液体は、少なくとも動作中に布帛が屈曲して形状が変化する場合に圧力を受ける。
【0036】
液体が親水性ヤーンと一旦接触すると、連続した外部からの圧力、及び疎水性ヤーンの間への液体の透過を補助してウィッキングを開始しうる力を与えなくとも、その液体が布帛の内面から外面へと完全に吸い上げられることが分かっている。言い換えると、一旦開始すると、内面と接触した全ての液体が外面へと輸送されるまで、又は親水性ヤーンの液体貯蔵容量を使い切るまで、ウィッキングが継続しうる。
【0037】
布帛の内面における疎水性ヤーン区分の間隔は、ウェール又は縦糸方向に0.01〜25mmの範囲であり、コース又は横糸方向に0.01〜25mmの範囲であることが好ましい。「間隔」とは、ヤーンの中心間の距離ではなく外表面間の距離を指す。
【0038】
布帛の内面における疎水性ヤーン区分の間隔は、ウェール又は縦糸方向に0.1〜2.5mm、コース又は横糸方向に0.1〜2.5mmであることがさらにより好ましい。
【0039】
布帛が直接皮膚に接触して着用される状況では、布帛の内面と皮膚との間の全ての接触点は、布帛の内面を形成する疎水性ヤーンと触れている。言い換えると、人間が布帛を着用する場合、親水性ヤーンが人間の皮膚に直接接触せずに、疎水性ヤーンが人間の皮膚に接触しているのが好ましい。本発明のこの好ましい態様によって提供される利点は、布帛自体が大量の液体を含む場合があるものの、この液体の大半は外面に再分配されて、その結果比較的乾燥した疎水性ヤーンのみが人間の皮膚と接触しているために、この布帛を着用する人間は布帛が濡れていると感じないことである。またこの利点は、布帛の再乾燥時間、すなわち皮膚と接触する布帛が乾燥する時間、あるいは少なくとも他の市販のウィッキング布帛と比べて乾燥していると感じる時間という観点で表すこともできる。
【0040】
疎水性ヤーン及び親水性ヤーンは、好ましくは親水性ヤーンが布帛のコア又は中心領域及び布帛の外面の部分を形成するようなやり方でかみ合わされる。親水性ヤーンは、布帛の内面には現れないが、疎水性面を透過する液体と接触しうる点で表面の下に位置している。
【0041】
好ましくは、親水性ヤーンは布帛内面の外表面から0.01〜2.0mmの距離に位置している。
【0042】
さらにより好ましくは、親水性ヤーンは布帛内面の外表面から0.1〜1.0mmの距離に位置している。
【0043】
布帛の形成に使用できるニット布帛構造体の例として、オールニードル及びハーフゲージのダブルニット、シングルジャージ添え糸編み構造体、並びに弾力性ヤーンを含むつぶれたリブ構造体が挙げられる。布帛の形成に使用できる織物布帛構造体の例として、綾織、綿繻子、朱子織及びダブルクロスが挙げられる。
【0044】
好ましくは、液体水に対する布帛の緩衝容量Kfは、Hohenstein Instituteの標準試験に従って測定したときに0.1〜1である。
【0045】
さらにより好ましくは、液体水に対する布帛の緩衝容量Kfは、Hohenstein Instituteの標準試験に従って測定したときに0.9〜1である。
【0046】
また好ましくは、布帛の液滴吸収指数iBは、Hohenstein Instituteの標準試験に従って測定したときに0〜250である。
【0047】
さらにより好ましくは、布帛の液滴吸収指数iBは、Hohenstein Instituteの標準試験に従って測定したときに0〜5である。
【0048】
上記段落で触れられたHohenstein Instituteの標準試験は、見出し「詳細な説明」の下、31及び32頁により詳細に記載されている。
【0049】
また本発明によれば、
i)1つ以上の疎水性ヤーンから全体が形成された内面であって、該内面が該内面全体にわたって実質的に同じ疎水性を有して衣服の内側を作るために適するように、該ヤーンが該内面全体に組み上げられており、該ヤーンが綿及び/又は他の種類のセルロース繊維を含みかつ布帛に形成される前に疎水剤で前処理されている、内面と;
ii)該内面を通って外面に液体を吸い上げることが可能なように、該内面と比較して相対的に親水性の外面であって、綿及び/又は他の種類のセルロース繊維を含むヤーンから作られている、外面と
を含む、布帛も提供される。
【0050】
本発明によれば、
i)疎水性であって、全体が実質的に同じ疎水性を有し、かつ衣服の内側を作るのに適している、内面と
ii)該内面と比較して親水性の外面であって、そのため該内面に接触する液体を該内面に保持することなく布帛を通って該外面に吸い上げることが可能である、外面と
を含み、布帛の該内面及び該外面が綿繊維及び/又は他の種類のセルロース繊維を含むヤーンから作られている、布帛が提供される。
【0051】
本発明によれば、
i)1つ以上の疎水性ヤーンから全体が形成される内面であって、該内面が該内面全体にわたって実質的に同じ疎水性を有するように、該ヤーンが該内面全体に組み上げられており、該ヤーンが綿繊維及び/又は他の種類のセルロース繊維を含む、内面と;
ii)該内面と比較して親水性の外面であって、そのため該内面に接触する液体を、布帛を通って該外面に吸い上げることが可能であり、該外面が綿繊維及び/又は他の種類のセルロース繊維を含むヤーンから作られている、外面と
を含む、布帛が提供される、
【0052】
好ましくは、布帛の内面全体に組み上げられる疎水性ヤーンは、布帛の外面の少なくとも一部を形成する親水性ヤーンとかみ合わされる。その疎水性ヤーンは、液体が親水性ヤーンにより疎水性面を通って引き出されるように配置されている。
【0053】
本発明によれば、布帛の内面を通って外面に液体を吸い上げることが可能な布帛の製造方法も提供される。その方法は、
a)親水性ヤーンを用意し;
b)疎水性となるように処理された疎水性ヤーンを用意し;及び
c)該親水性ヤーン及び該疎水性ヤーンを用いて布帛を形成する
工程を含み、該布帛の該内面全体が該疎水性ヤーンから作られるように、該ヤーンを互いに関係させて組み上げ、さらに液体が透過可能であって、かつ該布帛の該外面の少なくとも一部を形成する親水性ヤーンとその液体が接触可能であるように、該疎水性ヤーンを該内面に配置することを特徴とする。
【0054】
好ましくは工程(b)が、疎水剤で疎水性ヤーンの繊維を前処理することを含んで、疎水剤が繊維に固着する。
【0055】
好ましくは、親水性ヤーンは布帛の内面に現れないがその表面下に位置して、布帛の内面を通して外面に液体を引き出すことができる。
【0056】
好ましくは、疎水性ヤーンのいくつかの区分が、液体が透過可能な間隔で離されるように疎水性ヤーンが配置される。
【0057】
好ましくは、親水性ヤーン及び疎水性ヤーンには、以下の種類の繊維のいずれか1つ又は混紡が含まれるが、これらに限られない:
i)人造又は合成繊維、例えばポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル及び再生セルロース;並びに
ii)天然繊維、例えばウールなどのタンパク性繊維、及び綿などのセルロース繊維。
【0058】
本発明によれば、1つ以上の疎水性ヤーンと、綿及び/又は他の種類のセルロース繊維を含む1つ以上の親水性ヤーンとを含む布帛の製造方法が提供され、該布帛の該内面の疎水性を該内面全体で実質的に同じにするため、内面全体が該疎水性ヤーンから形成されるようにヤーンが一緒に織られるか編まれており、該布帛を通って該内面から外面に液体を吸い上げることが可能であるように、該布帛の該外面が相対的に親水性である。この方法には、該布帛の該内面を形成する該疎水性ヤーンの綿及び/又は他の種類のセルロース繊維を、該布帛を作るために該ヤーンを使用する前に、疎水剤を含む浴で前処理する工程が含まれる。
【0059】
ヤーンには、合成繊維を含む人造繊維、及びウールなどの天然繊維が含まれてもよいと上述したが、好ましくは、布帛に綿繊維及び/又は他の種類のセルロース繊維が含まれる。
【0060】
さらにより好ましくは、少なくとも1つのヤーンが綿及び/又は他の種類のセルロース繊維を少なくとも50%含む。
【0061】
天然綿繊維以外のセルロース繊維には、マーセル化した綿、黄麻、麻、亜麻、ラミー、リネン、又はビスコース、レーヨン及びリヨセルのような再生セルロース繊維が含まれるが、これらに限られない。
【0062】
より好ましくは、少なくとも1つのヤーンが、綿及び/又は他の種類のセルロース繊維を少なくとも80%含む。
【0063】
さらにより好ましくは、ヤーン全体が綿及び/又は他の種類のセルロース繊維から作られている。
【0064】
好ましくは工程(b)が、疎水剤を含む浴で繊維を前処理することを含んで、疎水剤が繊維に固着する。
【0065】
本発明によれば、布帛の内面を通って外面に液体を吸い上げることが可能な布帛の製造方法が提供され、その布帛は、綿繊維及び/又は他の種類のセルロース繊維を含有する2つ以上のヤーンを含んでいる。この方法は、
a)繊維に疎水特性を付与するために、疎水剤を含む浴で、該ヤーンの少なくとも1つの精練した綿繊維及び/又は他の種類のセルロース繊維を前処理し;及び
b)少なくとも1つのヤーンが、工程(a)に従って前処理した綿繊維及び/又は他の種類のセルロース繊維を含んでいる、2つ以上のヤーンから布帛を形成する
工程を含み、該布帛の該内面全体が工程(a)に従って前処理された繊維を含む該ヤーンから作られており、かつ該布帛の該内面が該外面と比較して疎水性であって、該内面全体にわたって実質的に同じ疎水性を有するように、該ヤーンを互いに関係させて組み上げることを特徴とする。
【0066】
好ましくは、疎水剤を含む浴で綿繊維及び/又は他のセルロース繊維を前処理する工程により、疎水剤を繊維に固着させる。
【0067】
本明細書全体で、「繊維に固着した疎水剤」との語句は、疎水剤を綿繊維に固着させる任意の物理吸着又は化学反応を包含する。疎水剤をセルロース繊維に固着させうる吸着及び反応の例として、イオン結合及び交換、共有結合及び交換、ファンデルワールス(非分散力)結合及び交換又はいわゆる双極子−双極子結合及び交換、並びにこれらが派生したものが挙げられるが、これらに限られない。
【0068】
当然のことながら、工程(a)は、綿繊維及び/又は他の種類のセルロース繊維をヤーンに紡糸する前、最中、又は後のいずれにおいても行うことができる。
【0069】
また、工程(a)に従って前処理した綿繊維及び/又は他の種類のセルロース繊維を、任意の形状、例えば緩い繊維、スライバー、ロービング、紡績糸、かせ、及びさらには織布、ニット布又は不織布にすることも可能である。しかしながら、工程(a)に従って前処理した繊維が紡績糸形状であることが好ましい。
【0070】
好ましくは、綿繊維及び/又は他の種類のセルロース繊維を含むヤーンは全体が綿繊維からなる。しかしながら、ヤーンが、綿繊維と他のセルロース繊維との混紡、及び綿繊維とポリエステルなどの非セルロース繊維との混紡を含んでもよい。当然のことながら、天然綿繊維以外のセルロース繊維には、以下の種類の繊維:マーセル化した綿、黄麻、麻、亜麻、ラミー、リネン、又はビスコース、レーヨン及びリヨセルのような再生セルロース繊維が含まれるが、これらに限られない。
【0071】
工程(a)によって前処理した綿繊維及び/又は他の種類のセルロース繊維が布帛の形状である場合、その布帛をほぐして、本発明の方法の工程(b)に従って、他のヤーンとさらに処理可能な連続したヤーン又は加工糸を形成してもよい。ニット布を前処理して、その後ヤーンにほぐし、布帛に再形成する方法は、ニット−デニット(knit-deknit)法として知られている。
【0072】
また当然のことながら、工程(a)及び(b)は連続して行ってもよく、別々に行ってもよい。
【0073】
綿繊維及び/又は他の種類のセルロース繊維と浴を接触可能にする、様々な方法を用いて工程(a)を行うことも可能である。例えば、提供される繊維の形状に応じて、疎水剤を含む浴を、繊維上にパディング、ロールがけ、又はスプレーすることによって繊維と接触させてもよい。しかしながら、工程(a)が浴中に綿繊維を浸漬することを含んで、疎水剤が浴から綿繊維に優先的に吸収されることが好ましい。
【0074】
工程(a)によって前処理した繊維が、チューブに巻かれてヤーンパッケージを形成している紡績糸の形状である場合、好ましくは、工程(a)には、吸尽法を用いて繊維を液体と接触させることが含まれる。
【0075】
吸尽法は、染料をヤーンに適用するのに適した現在知られている方法であり、加圧可能であってヤーンを通して染料を噴出させることが可能な密閉容器の中に、1つ以上のヤーンパッケージを配置することを含む。吸尽法を用いると疎水剤を繊維に十分に固着できることが分かっている。
【0076】
吸尽法によれば、他の可能な手法、例えばパディング、フォーム適用、キスロール、ディップ−ハイドロ、スプレー、印刷又はドクターブレードと比べて、疎水剤がより長持ちするように適用できることが分かっている。その結果、この好ましい実施態様に従って吸尽処理した繊維から製造した布帛のウィッキング挙動が示しうるのは、数多くの洗濯着用サイクルの後でもそのウィッキング特性がより多く保持されていることである。
【0077】
工程(a)は任意の適当な温度で行ってもよいが、好ましくは、工程(a)は10〜110℃の範囲で行われる。
【0078】
さらにより好ましくは、工程(a)は20〜70℃の範囲で行われる。
【0079】
好ましくは、工程(a)は、開始温度10℃で、最高110℃まで、0.1〜5.0℃/分の速度で昇温して行われる。
【0080】
さらにより好ましくは、工程(a)は、開始温度20℃で、最高70℃まで、0.5〜1.5℃/分の速度で昇温して行われる。
【0081】
本発明の工程(a)で使用可能な疎水剤の例として、シリコーン、フルオロケミカル、オイル、ラテックス及び炭化水素のいずれか1つ又はこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限られない。好ましくは、浴に含まれる疎水剤はフルオロアクリレートポリマーである。
【0082】
好ましい疎水剤によって提供される利点は、同じ布帛の中で処理済み及び未処理のヤーンの間で色合いを変えることなく、その布帛を反応染料のような従来の染料を用いて後染めできることである。加えて、染色処理によって布帛のウィッキング機構は変化しない。
【0083】
本発明の方法によって製造された新しい布帛の可使期間は、液体のウィッキングが内面から外面に優先的に起こらなくなるまで続けることが可能な、洗濯着用サイクルの回数によって決定される。この回数は、物理的ダメージ及び/又は洗濯処理中の洗脱に対する疎水剤の耐性の関数でもある。
【0084】
布帛のウィッキング特性を長持ちさせるために、工程(a)に従って処理した綿及び/又は他の種類のセルロース繊維と、疎水剤が共有結合を生成可能であることが好ましい。
【0085】
処理浴から疎水剤を吸収する速度、及びヤーンパッケージ全体への疎水剤の付着の均一性は、電解質が利用できるか否かにも左右される場合がある。同様に、使用する疎水剤の性質、処理浴から疎水剤を完全に吸尽しかつ処理容器への不要なポリマー付着を回避する能力、又は疎水剤の軟凝集に応じて、場合によっては処理浴に電解質が含まれる必要がある。
【0086】
処理浴が電解質も含んでいることが好ましい。電解質は任意の適当な電解質、例えば硫酸ナトリウム又は塩化マグネシウムであってよい。
【0087】
処理浴に電解質が含まれる場合、工程(a)に溶液中の電解質濃度を制御することが含まれることが好ましい。疎水剤を均一に適用しかつ疎水剤を処理浴から完全に吸尽するために、濃度制御を必要とする場合がある。
【0088】
好ましくは、電解質濃度は0〜20g/Lである。
【0089】
さらにより好ましくは、電解質濃度は5〜10g/Lである。
【0090】
疎水剤が綿又は他の種類のセルロース繊維と共有結合を生成できるか否かに拘わらず、さらに安定性を高めて疎水剤が効果を発揮する期間を延ばすためには、疎水剤と綿又は他のセルロース繊維との間に結合を生成するための架橋剤が、処理浴に含まれることが好ましい。繊維及び/又は基材に対して結合するイソシアネート架橋剤を含有する疎水剤が、この処理に有用な場合がある。
【0091】
加えて、架橋剤をセルロース繊維自体に固着させてもよい場合がある。例えば、架橋剤は、綿繊維及び/又は他の種類のセルロース繊維の表面に存在するヒドロキシル基と反応させてもよい。
【0092】
架橋剤を使用する主な利点は、疎水剤の洗濯耐久性が向上することである。
【0093】
架橋剤を熱で活性化することがさらに好ましい。
【0094】
架橋剤を活性化するために、本方法に、前処理したヤーンを50〜230℃に加熱する熱硬化工程がさらに含まれることが好ましい。
【0095】
さらにより好ましくは、硬化工程に、前処理したヤーンを110〜190℃に加熱することが含まれる。
【0096】
熱硬化工程は任意の適当な時間行ってもよいが、その時間は1秒〜40分が好ましい。より好ましくは、熱硬化工程の行われる時間が30秒〜20分、又はこの範囲の任意の時間である。
【0097】
熱硬化工程は、本発明の方法における様々な異なる段階、例えば工程(b)の前又は後のいずれか、で行ってもよい。布帛がニットである例では、工程(a)に従って前処理したヤーンにニット潤滑剤を適用して編み作業を容易にしてもよく、その後、疎水剤の前処理に悪影響を及ぼすことなく、硬化前又は硬化後に従来の精練技術を用いて、そのニット潤滑剤を除去してもよいことが分かっている。この場合、硬化工程は工程(b)の後に行われる。
【0098】
また、ヤーンを他のヤーンと編む又は織る前に、熱硬化工程を行うことも可能である。
【0099】
本発明によれば、上述の布帛を含む衣服も提供される。また、衣服を構成する布帛が、上述の好ましい特徴又は追加の特徴のうち、いずれか1つ又はこれらの組み合わせを含んでもよい。衣服はズボン、シャツ又はジャケットのような任意の外衣であってよいが、好ましくは、衣服は皮膚に接触して着用される基層衣服である。ここに記載する布帛は、服飾品又は服飾システムの構成部品として使用してもよい。例えば、接着剤印刷又はコーティングのような周知の積層技術を用いて、これらの布帛を機能フィルムの片面に、第2の布帛をフィルムの反対面に、同時に積層してもよい。これらの布帛を、リバーシブル布帛を製造する構造体の両面にして使用することもできる。機能フィルムは防水及び/又は防風通気性の膜であってもよい。吸収された液体の汗は、接合した機能フィルムの隣の親水性層へと運ばれ、フィルムの通気性によい影響を及ぼしうる。この種類の積層布帛は産業用及びアウトドアスポーツ用途に良く適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0100】
本発明の好ましい実施態様を、図1に示した布帛構造を参照しながら説明する。好ましくは、全体が綿ヤーンからなる2つ以上のヤーンから布帛が作られる。しかし当然のことながら、綿ヤーンを部分的に又は完全に他の種類のセルロース繊維又はさらに合成繊維で置換しうることも本発明の範囲内である。言い換えると、本発明の他の実施態様には、全体が人造繊維から作られた、又は合成繊維とセルロース繊維との混紡から作られたヤーンが含まれてもよい。
【0101】
図1に示す布帛には、参照番号10で概ね示されている内面が含まれ、その内面は、綿繊維を含有するヤーンから全体が作られており、その綿繊維は、布帛形成前に、ヤーンの状態で、ここに記載する方法に従って疎水剤で前処理されている。前処理したヤーンは、実質的に永続的な疎水特性を示し、布帛の内面10が実質的に均一な疎水性表面を有するように配置されている。対照的に、参照番号20によって示される布帛の外面は、綿繊維がセルロース表面に固有の親水特性を示すように、疎水剤で前処理せずかつ精練した綿繊維を含有するヤーンから作られる。布帛の内面10及び外面20の間の親水性又は表面エネルギーの違いによって、図1に示す矢印30の方向に布帛を通って内側から外側へ、液体を吸い上げることが可能となる。
【0102】
好ましくは、布帛には、親水性ヤーン12が布帛の内面10に向かうようにするが、その面10の部分を実際には形成しないように、疎水性の綿ヤーン11及び親水性綿ヤーン12が布帛内部でかみ合わされている重層構造がある。より詳細には、図1に示すように、布帛の内面10を形成するループ又は浮き糸13を形成するように、疎水性ヤーン11を組み上げるのが好ましい。ループ及び浮き糸13は、汗の液滴のような液体をループ及び浮き糸13の間に透過させるのに十分な間隔が空けられて、液体がループ13の間に位置すると、その液体は布帛の外面部分を形成する親水性ヤーン12と接触できる。一旦液体が親水性ヤーンと接触すると、親水性ヤーン12は布帛の内面10を通って外面20へと液体を引き出す。布帛及びその布帛を着用している人間の皮膚の間の動作によって生じる液体への圧力のような、外部からの圧力が液体に与えられる。いずれにしても、一旦ウィッキング経路が作られると、全ての液体が布帛の内面10から除去されるまで、もしくは親水性ヤーン12の液体貯蔵容量を使い切るまで、ウィッキングが継続しうる。
【0103】
図1に示す構造断面は、比較的一定の間隔で離されたループ又は浮き糸13を描いているが、当然のことながら布帛の疎水性ヤーンの間隔は、ヤーン張力及び直径を含む現在の製造に関する可変要素の観点から、少なくともある程度は変化すると思われる。加えて、選択した特定の布帛構造に応じて、布帛のパターンを、一定の間隔で互いに近接しているが隣のループ群からは空間的に離れている、2つ以上のループ13とすることが可能である。いずれにしても、布帛の内面10がその内面10の全体にわたって実質的に同じ疎水性を有しており、液体の透過及び親水性ヤーン12との接触を可能にする内面10に疎水性ヤーンのない間隔又は空隙を形成するために、疎水性ヤーン11の区分、典型的にはループ13が離れているように、ループ13が組み上げられているということが、正味の結果である。こうして液体を上述したように布帛の外面へ吸い上げることができる。
【0104】
図2は本発明の実施態様のフロー図であり、ここではヤーンに紡糸された綿繊維が1つ以上のチューブに巻かれて、第1段階でヤーンパッケージを形成している。ヤーンパッケージは最初に精練され、次に疎水剤を含有する浴で処理されて、その結果疎水剤が直接綿繊維に吸着される。疎水剤は好ましくはフルオロアクリレートポリマーである。加えて、疎水性前処理段階の最中に綿ヤーンに適用される、熱活性化架橋剤が浴に含まれてもよい。
【0105】
好ましくは、疎水剤はエマルジョンとして浴に含まれる。疎水剤が綿繊維に付着する速度、及びヤーンパッケージ全体での疎水剤の付着均一性は、数多くの作業パラメータ、例えばエマルジョン中の粒子の大きさ及び濃度、滞留時間又はヤーンの処理時間、浴温度、及び開始温度と最終温度との間の昇温速度に左右される。エマルジョンからの粒子の吸収速度もまた、浴に含まれる硫酸ナトリウムのような電解質濃度の関数である。実際には、浴から粒子を完全に吸尽するために、疎水剤の軟凝集又は装置部品への疎水剤の付着を防ぐ目的で、電解質濃度を最適にしなければならない場合がある。
【0106】
好ましくは、このエマルジョンの粒径は室温で500nm未満である。さらにより好ましくは、エマルジョンの粒径は室温で240nm未満であり、最も好ましいのは粒径が120nm未満の場合である。
【0107】
疎水剤前処理段階の後、綿ヤーンを加熱硬化オーブン内で処理して架橋剤を活性化する。活性化した架橋剤は綿繊維に吸着した疎水剤間に結合を形成でき、架橋剤の種類によっては架橋剤自体が綿繊維と結合する場合がある。いずれにしても、架橋剤の目的は疎水性処理の耐洗濯性をさらに増大することである。好ましくは、熱硬化段階で綿繊維をおよそ150℃の実質的に均一な温度に加熱する。最小限の時間で実質的に均一な温度にするために、ヤーンを各ヤーンパッケージから解いてもよい。
【0108】
次に、摩擦を低下させるニット潤滑剤を前処理したヤーンに適用し、そのヤーンを第2の親水性の綿ヤーンと編んで、布帛をウィッキング差構造体に形成する。その後布帛を衣服に変形する前に、その布帛を精練してニット潤滑剤を除去する。いくつかの疎水剤に関しては、疎水剤の性能に悪影響を及ぼさずに精練してニット潤滑剤を除去できることが分かっている。
【0109】
疎水性処理段階は、疎水剤を綿繊維に接触させて固着することが可能な任意の適当な技術を用いて行ってもよい。繊維を浴と接触させるのに使用可能な種類の技術として、パディング、フォーム適用、キスロール、ディップ−ハイドロ、スプレー、印刷及びドクターブレードが例示される。しかしながら、浴に綿繊維を浸漬して浴を綿繊維と接触させることが好ましい。液体に繊維を浸漬する方法の例が吸尽処理である。従来から、吸尽処理は有色染料で繊維を染色するために使用されてきた。
【0110】
図3は、疎水性ヤーンを布帛に形成した後に、綿ヤーンに熱硬化段階を行ったことを除いて図2に示した実施態様と同じ、別の実施態様のフロー図である。詳細には、図3には、i)綿ヤーンを紡糸しチューブに巻き取る;ii)ヤーンを精練して表面の汚れを除去する;iii)前処理段階で疎水剤を綿ヤーンに吸着させる;iv)布帛を作るために少なくとも1つの他のヤーンと一緒に、前処理したヤーンを編む又は織る;v)従来の精練技術を用いて布帛から潤滑剤及び他の加工助剤を除去する;vi)疎水剤及び存在するならば架橋剤を熱硬化する;及び最後に布帛を衣服に変形する段階を含む方法が図示されている。
【0111】
図2又は3のいずれにも示していないが、熱硬化段階を精練前に行うことも可能である。加えて、疎水剤及び架橋剤を含有する浴に、疎水性前処理段階中に綿ヤーンに適用されるニット潤滑剤をさらに含ませることも可能である。
【0112】
上述の本発明の実施態様に従って作製した布帛の有する優れたウィッキング性能は、水と接触させた後に布帛の内面及び外面にある水の相対量を評価する試験によって示すことができる。試験法は以下のようにまとめることができる。最初に布帛の試験サンプル(寸法100mm×100mm)を選択し、布帛の水分含量を確実に均一なものとするために、試験前に相対湿度65%、20℃で4時間保管する。次に、ピペットを用いて一定体積の水を各サンプルの内面の中央付近に垂らす。水が完全に吸収された後、布帛を2片の吸着紙に挟み、表面全体に均一に圧力を掛けて短時間平らに置く。各片の紙が吸収した水の質量を測定して記録する。これら2つの質量比を質量ウィッキング比とする。反対面を上にして試験を繰り返し、重力効果を除くために結果を平均する。
【0113】
ウィッキング差の効果を評価する別の方法は、上述の試験で説明したように準備した試験サンプルの各面に広がる水の面積を、一定量の水が完全に吸収された直後に測定することである。これら2つの面積比を面積ウィッキング比とする。
【0114】
下表に異なる5種類の布帛のウィッキング性能の結果を示す。布帛1は従来の100%綿布帛である。布帛2は他の市販の布帛のように、布帛の内面に疎水性層が印刷されている先行技術の綿布帛である。布帛3は本発明の実施態様に従って疎水性ヤーンから作られた疎水性内面を有する綿布帛である。布帛4は、ポリプロピレンヤーンで作られた内面と綿ヤーンで作られた外面とを有する先行技術の布帛である。布帛5は、ポリエステルダブルニット形状の先行技術の布帛である。
【0115】
【表1】

【0116】
以下の非限定的な例を参照して、本発明をさらに説明する。これらの例は説明する目的のみに提供されるものであって、本発明の範囲を定義するものとみなしてはならない。
【実施例】
【0117】
例1:この例は、外面が親水性綿ヤーン及び内面が疎水性綿ヤーンから作製された、ダブルニット布帛の作製を説明する。両方のヤーンを、従来の綿処理を使用して最初に精練及び漂白する。こうして綿の表面を親水性にする。布帛の内面に使用するヤーンは、次に上述の装置及び方法を用いた吸尽処理により、Nuva TTC(Clariant)で処理して疎水性にする。使用するヤーンパッケージの大きさは900gで、密度0.3g/ccに巻かれており、以下の条件でそのヤーンを処理する。
【0118】
浴比 12:1
Nuva TTC ヤーン質量の5%
硫酸ナトリウム 8g/L
開始温度 20℃
最終温度 70℃
温度上昇 0.5℃/分
保持時間(70℃) 15分
浴フローサイクル アウト−イン 4分、イン−アウト 3分
【0119】
処理サイクル中に浴は徐々に透明となっていき、処理終了時間で浴は完全に透明となり、ヤーンへの吸尽が完了したことを示す。
【0120】
浴はリンスせずに装置から排出し、ヤーンパッケージを脱水して80℃で乾燥する。次にヤーンを巻き戻して、編む前にパラフィン潤滑剤を塗る。
【0121】
布帛の製造はダブルジャージ編み機で行う。編んだ後、Hostapal FA−Z(Clariant)1g/L及び炭酸ナトリウム1g/Lの存在下、65℃、30分間布帛を精練してニットワックスを除去する。乳化したワックスの再付着を防ぐため、浴は65℃で排出する。布帛を40℃、10分間×2回リンスし、脱水して、テンターで乾燥する。乾燥処理中、布帛は145℃に5分間さらされて、疎水剤が硬化する。
【0122】
この布帛のウィッキング差の挙動は、最低で30サイクルの家庭用洗濯機による洗濯及び乾燥機による乾燥について保持される。洗濯は、ECE洗剤を用い、ISO6330の2A Cotton Cycleを用いて60℃で行う。乾燥機の乾燥は低温で60分行う。
【0123】
例2:この例は、布帛の硬化工程が、編んだ後、潤滑剤を除去する最終精練の前に行われることを除いて、例1と同じである。
【0124】
この布帛のウィッキング差の挙動は、最低で30サイクルの家庭用洗濯機による洗濯及び乾燥機による乾燥について保持される。洗濯は、ECE洗剤を用い、ISO6330の2A Cotton Cycleを用いて60℃で行う。乾燥機の乾燥は低温で60分行う。
【0125】
例3:この例は、柔軟剤/潤滑剤であるSandolube SVNが、ヤーン処理工程中に、繊維質量の1%の比率で疎水剤と一緒に適用されていることを除いて、例1と同じである。Sandolubeは、例1の巻き戻しの最中に添加されるパラフィンニット潤滑剤の代わりである。
【0126】
この布帛のウィッキング差の挙動は、最低で30サイクルの家庭用洗濯機による洗濯及び乾燥機による乾燥について保持される。洗濯は、ECE洗剤を用い、ISO6330の2A Cotton Cycleを用いて60℃で行う。乾燥機の乾燥は低温で60分行う。
【0127】
例4:この例では、例1に記載された手順を用いて用意した完成布帛を、綿製品に適用可能な従来の反応染色手順を用いて後染めする。
【0128】
この布帛のウィッキング差の挙動は、最低で30サイクルの家庭用洗濯機による洗濯及び乾燥機による乾燥について保持される。洗濯は、ECE洗剤を用い、ISO6330の2A Cotton Cycleを用いて60℃で行う。乾燥機の乾燥は低温で60分行う。
【0129】
例5:この例は、両方のヤーンが処理されて布帛に編まれる前に、従来の綿着色技術を用いて染色されていることを除いて、例1と同じである。この例では、予備的な精練及び漂白工程を必要としない。疎水面に使用するヤーンは、疎水剤で処理する前に、残留する不純物及び自由な染料を除去するために、炭酸ナトリウムを用いて軽く精練される。この布帛のウィッキング差の挙動は、最低で30サイクルの家庭用洗濯機による洗濯及び乾燥機による乾燥について保持される。洗濯は、ECE洗剤を用い、ISO6330の2A Cotton Cycleを用いて60℃で行う。乾燥機の乾燥は低温で60分行う。
【0130】
例6:この例は、従来のパッド/乾燥/硬化処理により疎水剤が布帛に適用されており、ニット−デニット法により疎水性ヤーンが調製されていることを除き、例1と同じである。疎水性面に使用する綿ヤーンを最初に精練及び漂白し、次にシングルフィードFAK実験機で単一のジャージチューブに編む。小さいマングルを用いて布帛質量の5%で、Nuva TTCをチューブ状布帛片にパディングする。引き続き布帛を乾燥し、ポリマーを熱硬化する。ヤーンを布帛片からほぐし(デニットし)、巻き戻して、編むためのワックスを適用する。
【0131】
この布帛のウィッキング差の挙動は、最低で30サイクルの家庭用洗濯機による洗濯及び乾燥機による乾燥について保持される。洗濯は、ECE洗剤を用い、ISO6330の2A Cotton Cycleを用いて60℃で行う。乾燥機の乾燥は低温で60分行う。
【0132】
例7:この例では、布帛の内面に使用するヤーンを、Ruco−Dry DFE(Rudolf Chemie)を疎水剤として用いて処理する。製造を行うための方法及び装置、並びに処理工程の全ての作業条件は、以下の処理条件を除いて例1に記載したものと同じである。
【0133】
浴比 10:1
Rudo−Dry DFE ヤーン質量の5%
開始温度 25℃
最終温度 40℃
温度上昇 1.5℃/分
保持時間(40℃) 10分
【0134】
この布帛のウィッキング差の挙動は、最低で30サイクルの家庭用洗濯機による洗濯及び乾燥機による乾燥について必要とされるものである。洗濯は、ECE洗剤を用い、ISO6330の2A Cotton Cycleを用いて60℃で行う。乾燥機の乾燥は低温で60分行う。
【0135】
例8:この例は、外面が1/30綿番手(20Tex)の親水性綿ヤーン及び内面が1/50綿番手(12Tex)の疎水性綿ヤーンから作製された、ダブルニット布帛の作製を説明する。両方のヤーンを精練し、疎水性ヤーンは例1のように処理する。
【0136】
布帛の製造は、28ニードル/インチ(28ゲージ)のダブルジャージ編み機で行う。最初の編み点又は送りでは、親水性ヤーンは1つの針床のみ全ての針に編まれる。これを次の送りでも繰り返す。3回目の送りで、疎水性ヤーンを第2の針床の1つおきの針に編み、第1の針床の針と互い違いにするために差し込む。先の疎水性コースでは省略された針に疎水性ヤーンを差し込むことを除いて、この一連の作業を次の3回の送りの組についても編み機で繰り返す。布帛の親水性ヤーンと疎水性ヤーンとの質量比は75:25である。
【0137】
27頁に記載した手順で測定した、液体水に対する布帛の緩衝指数Kfは0.99であり、水分吸収指数iBは0.7であり、両方ともこれらの特性について好ましい値の範囲内にある。上述の試験法により決定した質量ウィッキング比は18:1である。ウィッキング差の挙動は、30サイクルを超える家庭用洗濯機による洗濯及び乾燥機による乾燥ついて保持される。洗濯は、ECE洗剤を用い、ISO6330の2A Cotton Cycleを用いて60℃で行う。乾燥機の乾燥は低温で60分行う。
【0138】
本発明に関する当業者であれば、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、好ましい実施態様に様々な変更を加えてもよいことを理解する。
【0139】
好ましくは、本発明に従って作製される布帛は、Hohenstein Institute of Boennigheim,Germanyの標準試験に従って測定可能な性能基準を満たす。この試験は、布帛の持つ液体水のウィッキング及び乾燥の挙動を評価することを目的としており、以下のようにまとめられる。
【0140】
1.液体水に対する緩衝容量Kf:この試験は、標準試験指図書 BPI 1.2 「Testing of Textiles − Measurement of the Buffering Capacity of Textiles with the Thermoregulatory Model of Human Skin(Skin Model)」(Bekleidungsphysiologisches Institut E. V. Hohenstein, March 1994)に記載されている。
【0141】
fの決定は、温湿度調節された保管庫内に置かれた、ガード付きホットプレート上で行う。Hohenstein Skin Modelとして広く知られる、この2つの物品を組み合わせたシステムは、特定の装置構成とホットプレート全体を横切る所定の空気流とを備えている。中央プレートの寸法は20cm×20cmであり、プレートは35℃に加熱される。保管庫内部の条件は35℃及び相対湿度30%に制御される。不透過性フィルムをガード付きホットプレートの表面に配置し、薄くてウィッキング性のあるポリエステル布帛をそのフィルム上に置く。寸法が21cm×21cmの試験サンプルを用い、保管庫内の空気と同じ温度及び湿度にて試験の前に12時間予めなじませる。温度35℃である15ccの蒸留水を、皮下注射用注射器を用いてポリエステル全体に均一に分布させ、即座に試験サンプルをその上に置き、プレートの中央に位置させる。
【0142】
水のいくらかは布帛に吸収又は吸い上げられ、いくらかはプレートで又は布帛から蒸発し、またいくらかはポリエステル中に保持される。所定の15分後、布帛を取り除いて秤量する。保管庫内に蒸発した水の量G1を、一定の湿度条件を維持するために保管庫の空気から除去された水の質量から決定する。布帛の残存する水の量G2は、サンプルの最終質量からなじませた後の質量を引いて決定する。緩衝指数Kfは、これら要素の合計と初期質量G0との比である。従って、Kf=(G1+G2)/G0である。
【0143】
2.液滴吸収指数iB:この試験は、標準試験指図書 BPI 3.2 「Testing of Textiles − Measurement of the Sorption index iB」(Bekleidungsphysiologisches Institut E. V. Hohenstein, January 2003)に記載されている。
【0144】
この試験は、20℃及び相対湿度65%の雰囲気中、予め24時間なじませてある、およそ2cm×3cmの布帛サンプルについて行う。サンプルは、通常皮膚と接触する面を上に向けて、両面テープで平らな台の上に固定する。体積42μLの蒸留水の水滴を、試験サンプル中央から上方5cmに位置する注射器から、速度13.76μL/秒で機械的に滴下する。吸収指数iBは、この液滴が完全に吸収されるのにかかる時間、すなわち液滴の接触角が0°になる時間iBである。滴下速度(drop rate)はソフトウェア制御されたビデオカメラシステムにより監視するのが最善である。
【図面の簡単な説明】
【0145】
【図1】本発明の実施態様による布帛の、ある部分の構造断面である。
【図2】本発明の実施態様により、布帛を作製する工程を説明するフロー図である。
【図3】本発明の別の実施態様により、布帛を作製する工程を説明するフロー図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)疎水性となるように処理された1つ以上の疎水性ヤーンから全体が形成された内面であって、該内面全体にわたって実質的に同じ疎水性を有するように、該ヤーンが該内面全体に組み上げられている、内面と;
ii)該内面と比較して親水性であり、かつ少なくとも部分的に1つ以上の親水性ヤーンで形成されている、外面と
を含む布帛であって、該内面を液体が透過可能であって、かつ該布帛の該外面の少なくとも一部を形成して該布帛の該外面に液体を引き出すことのできる該親水性ヤーンとその液体が接触可能であるように、該疎水性ヤーンが組み上げられていることを特徴とする、布帛。
【請求項2】
前記内面にある疎水性ヤーンのいくつかの区分の間隔が離されており、その間隔を通って液体が透過可能であるように、前記疎水性ヤーンが組み上げられている、請求項1に記載の布帛。
【請求項3】
前記内面にループ又は浮き糸を形成することにより、間隔の離れた疎水性ヤーンの前記区分を形成するように、前記布帛の前記内面全体にわたって疎水性ヤーンが組み上げられている、請求項1又は2のいずれかに記載の布帛。
【請求項4】
前記布帛の前記内面における前記疎水性ヤーン区分の間隔が、ウェール又は縦糸方向に0.01〜25mmの範囲であり、コース又は横糸方向に0.01〜25mmの範囲である、請求項1〜3のいずれか1つに記載の布帛。
【請求項5】
前記布帛の前記内面における前記疎水性ヤーン区分の間隔が、ウェール又は縦糸方向に0.1〜2.5mmの範囲であり、コース又は横糸方向に0.1〜2.5mmの範囲である、請求項1〜4のいずれか1つに記載の布帛。
【請求項6】
皮膚に接触して着用される又は物体に接触して配置される場合に、親水性ヤーンは該皮膚又は該物体に直接接触せず、前記疎水性ヤーンが該皮膚又は該物体に直接接触する、請求項1〜5のいずれか1つに記載の布帛。
【請求項7】
前記親水性及び疎水性ヤーンが、以下の種類の繊維のいずれか1つ又は混紡を含む、請求項1又は2に記載の布帛。
(a)ポリエステル、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル及び再生セルロースを含むが、これらに限られない、人造又は合成繊維
(b)ウール及び髪の毛のようなタンパク性繊維、並びに綿のようなセルロース繊維を含む天然繊維
【請求項8】
前記疎水性ヤーンが、前記布帛に形成される前に疎水剤で前処理される、請求項1〜7のいずれか1つに記載の布帛。
【請求項9】
前記疎水性ヤーンの繊維が、ヤーン形状であるときに疎水剤で前処理される、請求項8に記載の布帛。
【請求項10】
前記布帛の前記外面が少なくとも50%の親水性ヤーンから作られる、請求項1〜9のいずれか1つに記載の布帛。
【請求項11】
前記布帛の前記外面が少なくとも80%の親水性ヤーンから作られる、請求項1〜9のいずれか1つに記載の布帛。
【請求項12】
前記布帛の前記外面が100%の親水性ヤーンから作られる、請求項1〜9のいずれか1つに記載の布帛。
【請求項13】
前記疎水性ヤーンが吸尽法を用いて前処理される、請求項1〜12のいずれか1つに記載の布帛。
【請求項14】
前記疎水性又は親水性ヤーンの少なくとも一方が、綿繊維及び/又は他の種類のセルロース繊維を含む、請求項1〜13のいずれか1つに記載の布帛。
【請求項15】
前記疎水性又は親水性ヤーンの少なくとも一方が、綿及び/又は他の種類のセルロース繊維を少なくとも50%含む、請求項1〜13のいずれか1つに記載の布帛。
【請求項16】
前記疎水性又は親水性ヤーンの少なくとも一方が、綿及び/又は他の種類のセルロース繊維を少なくとも80%含む、請求項1〜13のいずれか1つに記載の布帛。
【請求項17】
前記両方のヤーンの全体が、綿及び/又は他の種類のセルロース繊維から作られる、請求項1〜13のいずれか1つに記載の布帛。
【請求項18】
親水性ヤーンと疎水性ヤーンの比率が、質量基準でそれぞれ95:5〜10:90である、請求項1〜17のいずれか1つに記載の布帛。
【請求項19】
親水性ヤーンと疎水性ヤーンの比率が、質量基準でそれぞれ60:40〜80:20である、請求項1〜17のいずれか1つに記載の布帛。
【請求項20】
前記親水性ヤーンが前記布帛のコア又は中心領域及び前記布帛の前記外面の部分を形成するようなやり方で、前記疎水性ヤーン及び前記親水性ヤーンがかみ合わされる、請求項1〜19のいずれか1つに記載の布帛。
【請求項21】
前記疎水性ヤーンが、前記布帛の前記内面の外表面から0.01〜2.0mmの距離に位置している、請求項1〜20のいずれか1つに記載の布帛。
【請求項22】
前記疎水性ヤーンが、前記布帛の前記内面の外表面から0.1〜1.0mmの距離に位置している、請求項1〜20のいずれか1つに記載の布帛。
【請求項23】
液体水に対する前記布帛の緩衝容量Kfが、Hohenstein Instituteの標準試験に従って測定したときに0.1〜1である、請求項1〜22のいずれか1つに記載の布帛。
【請求項24】
液体水に対する前記布帛の緩衝容量Kfが、Hohenstein Instituteの標準試験に従って測定したときに0.9〜1である、請求項1〜22のいずれか1つに記載の布帛。
【請求項25】
前記布帛の液滴吸収指数iBが、Hohenstein Instituteの標準試験に従って測定したときに0〜250である、請求項1〜24のいずれか1つに記載の布帛。
【請求項26】
前記布帛の液滴吸収指数iBが、Hohenstein Instituteの標準試験に従って測定したときに0〜5である、請求項1〜24のいずれか1つに記載の布帛。
【請求項27】
i)1つ以上の疎水性ヤーンから全体が形成された内面であって、該内面が該内面全体にわたって実質的に同じ疎水性を有して衣服の内側を作るために適するように、該ヤーンが該内面全体に組み上げられており、該ヤーンが綿及び/又は他の種類のセルロース繊維を含みかつ布帛に形成される前に疎水剤で前処理されている、内面と;
ii)該内面を通って外面に液体を吸い上げることが可能なように、該内面と比較して相対的に親水性の外面であって、綿及び/又は他の種類のセルロース繊維を含むヤーンから作られている、外面と
を含む、布帛。
【請求項28】
前記布帛に形成される前に、前記疎水性ヤーンが疎水剤で前処理される、請求項27に記載の布帛。
【請求項29】
前記疎水性ヤーンを形成する繊維が、ヤーン形状であるときに疎水剤で前処理される、請求項28に記載の布帛。
【請求項30】
前記疎水性ヤーンが吸尽法を用いて前処理される、請求項28に記載の布帛。
【請求項31】
前記布帛の前記外面が少なくとも50%の親水性ヤーンから作られる、請求項27〜30のいずれか1つに記載の布帛。
【請求項32】
前記布帛の前記外面が少なくとも80%の親水性ヤーンから作られる、請求項27〜30のいずれか1つに記載の布帛。
【請求項33】
前記布帛の前記外面が100%の親水性ヤーンから作られる、請求項27〜30のいずれか1つに記載の布帛。
【請求項34】
前記疎水性又は親水性ヤーンの少なくとも一方が、綿及び/又は他の種類のセルロース繊維を50%含む、請求項27〜33のいずれか1つに記載の布帛。
【請求項35】
前記疎水性又は親水性ヤーンの少なくとも一方が、綿及び/又は他の種類のセルロース繊維を少なくとも80%含む、請求項27〜33のいずれか1つに記載の布帛。
【請求項36】
前記両方のヤーンの全体が、綿及び/又は他の種類のセルロース繊維から作られる、請求項27〜33のいずれか1つに記載の布帛。
【請求項37】
前記布帛の親水性ヤーンと疎水性ヤーンの比率が、質量基準でそれぞれ95:5〜10:90である、請求項27〜36のいずれか1つに記載の布帛。
【請求項38】
前記布帛の親水性ヤーンと疎水性ヤーンの比率が、質量基準でそれぞれ60:40〜80:20である、請求項27〜36のいずれか1つに記載の布帛。
【請求項39】
前記内面にある疎水性ヤーンのいくつかの区分の間隔が離されており、その間隔を通って、液体が透過可能であって、かつ前記布帛の前記外面の少なくとも一部を形成して前記布帛の前記外面に液体を引き出すことのできる前記親水性ヤーンとその液体が接触可能であるように、前記疎水性ヤーンが組み上げられている、請求項27〜38のいずれか1つに記載の布帛。
【請求項40】
前記疎水性ヤーンが、前記内面にループ又は浮き糸を形成し、かつ液体が透過可能な間隔の離れた前記疎水性ヤーン区分を形成する、請求項39に記載の布帛。
【請求項41】
前記布帛の前記内面における前記疎水性ヤーン区分の間隔が、ウェール又は縦糸方向に0.01〜25mmの範囲であり、コース又は横糸方向に0.01〜25mmの範囲である、請求項39又は40のいずれかに記載の布帛。
【請求項42】
前記布帛の前記内面における前記疎水性ヤーン区分の間隔が、ウェール又は縦糸方向に0.1〜2.5mmの範囲であり、コース又は横糸方向に0.1〜2.5mmの範囲である、請求項39又は40のいずれかに記載の布帛。
【請求項43】
前記親水性ヤーンが前記布帛のコア又は中心領域及び前記布帛の前記外面の部分を形成するようなやり方で、前記疎水性ヤーン及び前記親水性ヤーンがかみ合わされる、請求項27〜42のいずれか1つに記載の布帛。
【請求項44】
前記親水性ヤーンが、前記布帛の前記内面の外表面から0.01〜2.0mmの距離に位置している、請求項27〜43のいずれか1つに記載の布帛。
【請求項45】
前記親水性ヤーンが、前記布帛の前記内面の外表面から0.01〜1.0mmの距離に位置している、請求項27〜44のいずれか1つに記載の布帛。
【請求項46】
皮膚に接触して着用される又は物体に接触して配置される場合に、親水性ヤーンは該皮膚又は該物体に直接接触せず、親水性ヤーンが該皮膚又は該物体に直接接触する、請求項27〜45のいずれか1つに記載の布帛。
【請求項47】
液体水に対する前記布帛の緩衝容量Kfが、Hohenstein Instituteの標準試験に従って測定したときに0.1〜1である、請求項27〜46のいずれか1つに記載の布帛。
【請求項48】
液体水に対する前記布帛の緩衝容量Kfが、Hohenstein Instituteの標準試験に従って測定したときに0.9〜1である、請求項27〜46のいずれか1つに記載の布帛。
【請求項49】
前記布帛の液滴吸収指数iBが、Hohenstein Instituteの標準試験に従って測定したときに0〜250である、請求項28〜48のいずれか1つに記載の布帛。
【請求項50】
前記布帛の液滴吸収指数iBが、Hohenstein Instituteの標準試験に従って測定したときに0〜5である、請求項28〜48のいずれか1つに記載の布帛。
【請求項51】
布帛の内面を通って外面に液体を吸い上げることが可能な布帛の製造方法であって、
a)親水性ヤーンを用意し;
b)疎水性となるように処理された疎水性ヤーンを用意し;及び
c)該親水性ヤーン及び該疎水性ヤーンを用いて布帛を形成する
工程を含み、該布帛の該内面全体が該疎水性ヤーンから作られており、さらに該内面を液体が透過可能であって、かつ該布帛の該外面の少なくとも一部を形成して該布帛の該内面を通って該外面に液体を引き出すことのできる親水性ヤーンとその液体が接触可能であるように、該ヤーンを互いに関係させて組み上げることを特徴とする、方法。
【請求項52】
前記内面にある疎水性ヤーンのいくつかの区分が、液体が透過可能な間隔で離されている、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記親水性及び疎水性ヤーンが、以下の種類の繊維のいずれか1つ又は混紡を含む、請求項51又は52に記載の方法。
(a)ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル及び再生セルロースを含むが、これらに限られない、人造又は合成繊維
(b)ウール及び髪の毛のようなタンパク性繊維、並びに綿のようなセルロース繊維を含む天然繊維
【請求項54】
前記疎水性又は親水性ヤーンの少なくとも一方が、綿繊維及び/又は他の種類のセルロース繊維を含む、請求項51〜53のいずれか1つに記載の方法。
【請求項55】
前記疎水性又は親水性ヤーンの少なくとも一方が、綿及び/又は他の種類のセルロース繊維を少なくとも50%含む、請求項51〜53のいずれか1つに記載の方法。
【請求項56】
前記疎水性又は親水性ヤーンの少なくとも一方が、綿繊維及び/又は他の種類のセルロース繊維を少なくとも80%含む、請求項51〜53のいずれか1つに記載の方法。
【請求項57】
前記両方のヤーンの全体が、綿及び/又は他の種類のセルロース繊維から作られる、請求項51〜53のいずれか1つに記載の方法。
【請求項58】
工程(b)が、疎水剤を含む浴で前記繊維を前処理することを含んで、該疎水剤が前記繊維に固着する、請求項54〜57のいずれか1つに記載の方法。
【請求項59】
前記前処理が、吸尽法を用いて前記繊維を前記浴と接触することを含む、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記前処理が10〜110℃で行われる、請求項58又は59のいずれかに記載の方法。
【請求項61】
前記前処理が20〜70℃で行われる、請求項58又は59のいずれかに記載の方法。
【請求項62】
前記前処理が、開始温度10℃で、最高110℃まで、0.1〜5.0℃/分の速度で昇温して行われる、請求項58又は59のいずれかに記載の方法。
【請求項63】
前記前処理が、開始温度20℃で、最高70℃まで、0.5〜1.5℃/分の速度で昇温して行われる、請求項58又は59のいずれかに記載の方法。
【請求項64】
前記前処理に使用する前記疎水剤が、シリコーン、フルオロケミカル、オイル、ラテックス及び炭化水素のいずれか1つ又は組み合わせである、請求項58〜63に記載の方法。
【請求項65】
前記浴に含まれる前記疎水剤がフルオロアクリレートポリマーである、請求項58〜665のいずれか1つに記載の方法。
【請求項66】
疎水剤の不要な付着又は疎水剤の軟凝集を最小限にし、かつヤーンパッケージ全体への前記疎水剤の均一な付着を補助する濃度の電解質が、前記浴に含まれる、請求項58〜65のいずれか1つに記載の方法。
【請求項67】
前記液体が硫酸ナトリウム又は塩化マグネシウムの形態の電解質を含む、請求項58〜65のいずれか1つに記載の方法。
【請求項68】
前記浴中の前記電解質の濃度が0〜20g/Lである、請求項66又は67のいずれかに記載の方法。
【請求項69】
前記浴中の前記電解質の濃度が5〜10g/Lである、請求項66又は67のいずれかに記載の方法。
【請求項70】
前記浴が、前記疎水剤と前記綿又は他のセルロース繊維との間に結合を生成するための架橋剤を含む、請求項51〜69のいずれか1つに記載の方法。
【請求項71】
前記架橋剤が熱活性化されるものであって、前記方法が、前記前処理したヤーンを50〜230℃に加熱する熱硬化工程を含む、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記硬化工程が、前記前処理したヤーンを110〜190℃に加熱することを含む、請求項70に記載の方法。
【請求項73】
前記熱硬化工程が1秒〜40分行われる、請求項71又は72のいずれかに記載の方法。
【請求項74】
布帛の内面を通って外面に液体を吸い上げることが可能であって、綿繊維及び/又は他の種類のセルロース繊維を含む2つ以上のヤーンを含む、布帛の製造方法であって、
a)該繊維に疎水特性を付与するために、疎水剤を含む浴で、該ヤーンの少なくとも1つの綿繊維及び/又は他の種類のセルロース繊維を前処理し;
b)少なくとも1つのヤーンが、工程(a)に従って前処理された該綿繊維及び/又は他の種類のセルロース繊維を含んでいる、2つ以上のヤーンから布帛を形成する
工程を含み、該布帛の該内面全体が工程(a)に従って前処理された繊維を含む該ヤーンから作られており、かつ該布帛の該内面が該外面と比較して親水性であって、該内面全体にわたって実質的に同じ疎水性を有するように、該ヤーンを互いに関係させて組み上げることを特徴とする、方法。
【請求項75】
疎水剤を含む前記浴で前記綿繊維及び/又は他のセルロース繊維を前処理する前記工程により、前記疎水剤を前記繊維に固着させる、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
工程(a)が、前記綿繊維及び/又は他の種類のセルロース繊維をヤーンに紡糸する前、最中、又は後のいずれかで行われる、請求項74又は75のいずれかに記載の方法。
【請求項77】
前記ヤーンの少なくとも1つが、綿及び/又は他の種類のセルロース繊維を少なくとも50%含む、請求項74〜76のいずれか1つに記載の方法。
【請求項78】
前記ヤーンの少なくとも1つが、綿及び/又は他の種類のセルロース繊維を質量基準で少なくとも80%含む、請求項74〜76のいずれか1つに記載の方法。
【請求項79】
前記ヤーンが綿繊維を含み、及び/又は他の種類のセルロース繊維の全体が綿繊維からなる、請求項74〜76のいずれか1つに記載の方法。
【請求項80】
工程(a)が前記浴中に前記綿繊維を浸漬することを含み、前記疎水剤が前記浴から前記綿繊維に優先的に吸収される、請求項74〜79のいずれか1つに記載の方法。
【請求項81】
工程(a)が、吸尽法を用いて前記繊維を前記浴と接触させることを含む、請求項74〜80のいずれか1つに記載の方法。
【請求項82】
工程(a)が10〜110℃で行われる、請求項74〜81のいずれか1つに記載の方法。
【請求項83】
工程(a)が20〜70℃で行われる、請求項74〜81のいずれか1つに記載の方法。
【請求項84】
工程(a)が、開始温度10℃で、最高110℃まで、0.1〜5.0℃/分の速度で昇温して行われる、請求項74〜81のいずれか1つに記載の方法。
【請求項85】
工程(a)が、開始温度20℃で、最高70℃まで、0.5〜1.5℃/分の速度で昇温して行われる、請求項74〜81のいずれか1つに記載の方法。
【請求項86】
前記浴が、シリコーン、フルオロケミカル、オイル、ラテックス及び炭化水素のいずれか1つ又は組み合わせを含む、請求項74〜85のいずれか1つに記載の方法。
【請求項87】
前記浴に含まれる前記疎水剤がフルオロアクリレートポリマーである、請求項74〜86のいずれか1つに記載の方法。
【請求項88】
前記疎水剤が、工程(a)に従って処理した綿及び/又は他の種類のセルロース繊維の表面と共有結合を生成可能である、請求項74〜87のいずれか1つに記載の方法。
【請求項89】
ヤーンパッケージ全体への前記疎水剤の均一な付着を補助し、かつ処理容器へのポリマーの不要な付着又は疎水剤の軟凝集を最小限にする濃度の電解質が、前記浴に含まれる、請求項74〜88のいずれか1つに記載の方法。
【請求項90】
前記電解質が、硫酸ナトリウム又は塩化マグネシウムの一方又は組み合わせである、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
前記電解質の濃度が0〜20g/Lである、請求項89又は90のいずれかに記載の方法。
【請求項92】
前記電解質の濃度が5〜10g/Lである、請求項89又は90のいずれかに記載の方法。
【請求項93】
浴が、前記疎水剤と前記綿又は他のセルロース繊維との間に結合を生成するための架橋剤を含む、請求項74〜92のいずれか1つに記載の方法。
【請求項94】
前記架橋剤が熱活性化される、請求項93に記載の方法。
【請求項95】
前記方法が、前記前処理したヤーンを50〜230℃に加熱する熱硬化工程を含む、請求項93に記載の方法。
【請求項96】
前記硬化工程が、前記前処理したヤーンを110〜190℃に加熱することを含む、請求項95に記載の方法。
【請求項97】
前記熱硬化工程が1秒〜40分行われる、請求項94〜96のいずれか1つに記載の方法。
【請求項98】
前記熱硬化工程が30秒〜20分の範囲であってよい時間行われる、請求項94〜96のいずれか1つに記載の方法。
【請求項99】
前記外面が、防水及び/又は防風通気性の膜に積層又は接合される、請求項1〜50のいずれか1つに記載の布帛。
【請求項100】
請求項1〜50、又は99のいずれか1つに記載の布帛を含む衣服。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2008−517178(P2008−517178A)
【公表日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−537073(P2007−537073)
【出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【国際出願番号】PCT/AU2005/001638
【国際公開番号】WO2006/042375
【国際公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(598123677)ゴア エンタープライズ ホールディングス,インコーポレイティド (279)
【Fターム(参考)】