説明

布帛製品

【課題】布帛を所定の形状に裁断した布帛片を縫製してなる布帛製品であって、前記布帛片は、前記布帛の織目の方向が、当該布帛片の縦方向に対し斜めの方向となる布帛製品を提供する。
【解決手段】布帛を所定の形状に裁断した布帛片を縫製してなり、前記布帛片は、前記布帛の織目200の方向が、当該布帛片の縦方向に対し斜めの方向となるよう配置された布帛製品1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、寝袋、衣類、寝袋カバー等の布帛製品の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、布帛製品の一例として寝袋がある。この寝袋として、例えば、使用者の体を収納する長尺な内室を画成し、この内室を外気に対して保温する保温手段と、前記保温手段に設けられた前記内室への出入口と、前記保温手段を内室断面積を狭める方向へ圧縮する弾性手段と、を備え、前記弾性手段は、前記保温手段の全長にわたり所定間隔で配設されているものがある。(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、内張布、外張布及び当該内外張布間に充填された保温材を有すると共に、使用者の体を収納する長尺な室内を形成し、この室内を外気に対して保温する寝袋本体と、前記寝袋本体に設けられた前記室内への出入口とを備え、前記寝袋本体は、使用者の体格に適合する所定の規定幅よりも広い幅の内張布及び外張布を有し、かつ弾性手段を適宜位置に配することにより、不使用時に前記規定幅を呈するように収縮されると共に、前記規定幅と前記広い幅の間を拡縮可能に構成された寝袋も紹介されている。(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】実用新案登録第2079863号公報
【特許文献2】特開2001−46205号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した従来の寝袋は、ユーザが着用した際に、適度にユーザの体にフィットすると共に、寝返りを打ったり、寝袋内での着替えや胡座をかく等の動作に対応できるように、幅方向にギャザーを設け、当該寝袋が幅方向に伸縮するようにしている。このため、寝袋を構成するための生地(布帛)が多く必要になり、重量や嵩が増加して携帯に不便であると共に、保管時等に広いスペースが必要となる。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、従来のように布帛片を伸縮させるため、布帛を多く取り、ギャザーを付ける、伸縮させるためのゴム糸を配設する等、重量や嵩を増加させることなく、布帛片を布帛製品の縦方向及び横方向に伸ばすことができる布帛製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するため本発明は、布帛を所定の形状に裁断した布帛片を縫製してなる布帛製品であって、前記布帛片は、前記布帛の織目の方向が、当該布帛片の縦方向に対し斜めの方向となる布帛製品を提供するものである。
【0007】
この構成を備えた布帛製品は、前記布帛の織目の方向が前記布帛片の縦方向(横方向)に対し斜めの方向となっているため、前記布帛の織目の方向が前記布帛片の縦方向(横方向)に対し平行である場合に比べ、布帛片の縦方向及び横方向に伸ばすことができる。したがって、布帛製品を着用した場合は、縦方向及び横方向に動き易くなり、布帛製品の中に物品を入れた場合は、縦方向及び横方向に内部空間を拡げやすくすることができる。また、前記伸ばすための力から解放された際には、元の状態に戻ることができる。
【0008】
本発明の一実施態様として、前記布帛片は、例えば、寝袋や衣服等の見頃を構成することができる。例えば、前記布帛片が、寝袋の見頃を構成する場合は、当該寝袋は、ユーザが着用した際に、縦方向及び横方向(すなわち、ユーザの身長方向及び幅方向)に伸び易い構造となるため、寝返りや寝袋の中での着替え、胡座をかく等、ユーザの動きに応じて変形することができる。また、前記布帛片が、衣服の見頃を構成する場合も、ユーザの縦方向及び横方向(身長方向及び幅方向)に伸び易い構造となるため、ユーザの体に適度にフィットさせることができると共に、ユーザの動きに合わせ易くすることができる。
【0009】
また、本発明にかかる布帛製品は、前記布帛片が、表側となる表布帛片と、裏側となる裏布帛片を含み、前記表布帛片と裏布帛片との間に、表面に毛細繊維を有する毛細繊維体を介在させた構成を備えることもできる。前記毛細繊維体としては、例えば、羽毛、わた等が挙げられる。
【0010】
そしてまた、本発明にかかる布帛製品は、前記布帛の織目方向に沿って縫製した構成を備えることもできる。このようにすることで、布帛片が伸びようとした際に、縫い目がこの伸びを阻止することを防止することができる。また、前記縫い目が、布帛片の伸びに追従するため、前記伸びによって布帛片の織目がずれることを抑制することができる。したがって、前記利点に加え、例えば、前記表布帛片と裏布帛片との間に毛細繊維体を介在させた場合であっても、織目部分や縫い目部分から毛細繊維体(羽毛や、わた等)が抜け落ちることを防止することができる。
【0011】
さらにまた、本発明にかかる布帛製品は、布帛片にコーティング処理を施してもよい。このコーティング処理としては、例えば、アクリルコーティング、ポリウレタンコーティング、PVCコーティング、シリコンコーティング、ゴムコーティング等、様々な樹脂コーティングを挙げることができる。また、布帛片には、ラミネーション処理を施してもよい。このようにすることで、前記利点に加え、織目部分や縫い目部分から毛細繊維体(羽毛や、わた等)が抜け落ちることを、より一層確実に防止することができる。
【0012】
また、本発明にかかる布帛製品は、布帛にシレ加工を施してもよい。このようにすることで、前記利点に加え、軽くて丈夫であり、織目部分や縫い目部分から毛細繊維体(羽毛や、わた等)が抜け落ちることを防止することができる。
【0013】
なお、寝袋製品の特性として毛細繊維体の嵩高さを保つために表布帛もしくは裏布帛に適度な通気性を有する必要がある。一方でその通気性が高すぎる場合は毛細繊維体が抜け落ちることがあるので通気性は適度に保たれる必要がある。そのため、現在の市場で使用されている表布帛及び裏布帛にはシレ加工や通気性をもったコーティング加工がなされている。一般に快適に使用するために寝袋製品はストレッチすることが望まれているが、通常ストレッチ素材として使用される布帛製品(たとえばポリウレタンカバリング糸を使用した布帛製品)をそのまま使用した場合、前述した通気性が一定に保たれなくなり毛細繊維体が抜け落ちてしまうことが多い。また、ポリウレタンカバリング糸を使用した場合、重量も増える。また、布帛を多く取りギャザーをつけるなどの措置がされているものがあるが、こちらも布帛を多くとることにより重量や嵩が増加してしまう。
【0014】
本発明はバイアス方向に生地をとることにより、布帛使用量を増やすことなく(重量や嵩を増加させることなく)ストレッチを得ることができ、かつ、保温材である毛細繊維体の抜け出しを十分に抑えることができるものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかる布帛製品は、布帛の織目の方向が、布帛片の縦方向(横方向)に対し斜めの方向となっているため、従来のように布帛片を伸縮させるため、布帛を多く取り(余分な布帛を使用し)、ギャザーを付ける等、重量や嵩を増加させることなく、布帛片を布帛製品の縦方向及び横方向に伸ばすことができる布帛製品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明の好適な実施の形態にかかる布帛製品について図面を参照して説明する。なお、以下に記載される実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこれらの実施の形態にのみ限定するものではない。したがって、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、様々な形態で実施することができる。
【0017】
図1は、本発明の実施の形態にかかる布帛製品の平面図、図2は、図1に示す布帛製品の一部を底面側から見た斜視図、図3は、図1に示す布帛製品をユーザが着用し、仰臥した状態を示す平面図、図4は、図1に示す布帛製品をユーザが着用し、胡座をかいた状態を示す斜視図、図5は、図1に示す布帛製品の縦方向及び横方向と、布帛の織目の方向を拡大して示す平面図、図6は、図1に示すVI−VI線に沿った断面図である。なお、前記各図では、説明を判り易くするため、各部材の厚さやサイズ、拡大・縮小率等は、実際のものとは一致させずに記載した。
【0018】
図1〜図6に示すように、本実施の形態にかかる布帛製品1は、例えば、寝袋であり、ユーザ100の身体を収納する長尺な室内を形成し、この室内を外気に対して保温する本体2と、本体2に配設され、前記室内への出入口を外側及び内側の両方から開閉可能である開閉チャック3と、ユーザ100が着用した際に、ユーザ100の頭を覆うと共に顔を露出させる開口4が形成されたフード部5と、ユーザ100が着用した際に、ユーザ100の脚先を覆う底部6と、を備えて構成されている。
【0019】
本体2、フード部5及び底部6は、図6に示すように、布帛製品1の表側となる表布帛片11と、裏側(中側)となる裏布帛片12と、これら表布帛片11と裏布帛片12とで囲われた空隙内に充填された羽毛や、わた等の毛細繊維体13から構成されている。
【0020】
本体2及びフード部5を構成する表布帛片11及び裏布帛片12は、布帛製品1をユーザ100が着用した際に、これらの織目200の方向が、図5に示すように、ユーザ100の身長方向(縦方向)及び幅方向(横方向)に対し斜めの方向(本実施の形態では、約45度)となるように配置されている。このため、本体2及びフード部5は、ユーザ100の身長方向及び幅方向に伸び易くなるため、表布帛片11及び裏布帛片12を伸縮させるため、布帛を多く取り、ギャザーを付ける等、重量や嵩を増加させる必要がない。したがって、軽量且つコンパクトで、携帯や保管に便利であると共に、布帛の使用量を減らすことができるため、価格を抑えることもできる。
【0021】
底部6は、本体2のフード部5とは反対側の端部に位置しており、底部6を構成する表布帛片11及び裏布帛片12は、布帛製品1をユーザ100が着用した際に、これらの織目200(図5参照)の方向が、図2に示すユーザ100の幅方向及び前後方向に対し、斜めの方向(本実施の形態では、約45度)となるように配置されている。このため、底部6は、ユーザ100の幅方向及び前後方向に伸び易くなっている。
【0022】
また、表布帛片11、毛細繊維体13及び裏布帛片12からなる積層体には、キルティングを施してもよい。この場合、表布帛片11及び裏布帛片12の織目200に沿ってキルティングをかけることで、表布帛片11及び裏布帛片12が伸びる際に、キルティング(縫い目)がこの伸びを阻止することを防止することができる。また、毛細繊維体13が、キルティングの針穴部分から抜け落ちることを防止することもできる。
【0023】
本体2とフード部5との境界部分には、図1及び図3に示すように、紐(ドローコード)15が首囲に沿って配設されており、この紐15を絞ることによって、布帛製品1をユーザの首にフィットさせることができ、首から暖かさが逃げることを防止することができるようになっている。また、この紐15の両端には、紐15の絞り状態を維持し固定するストッパ21が各々設けられている。
【0024】
なお、この布帛製品1は、フード部5の開口4の近傍に、図示しない紐(ドローコード)を配設し、この紐を絞ることによって、開口4を縮小させ、ユーザの輪郭付近にフード部5を密着させるようにしてもよい。
【0025】
この構成を備えた布帛製品1は、前述したように、ユーザ100が着用した際に、本体2及びフード部5がユーザ100の身長方向及び幅方向に伸びるため、図3に示すようにユーザ100が仰臥した際には、窮屈感がなく、寝返りを打つ動作等にも支障を来すことがない。したがって、快適に安眠することができる。また、布帛製品1の中で着替えを行うこともできる。また、図4に示すように、ユーザ100が胡座をかく等、所望の動作を楽に行うことができる。なお、この胡座をかく動作等は、フード部5を被った状態で行うこともできる。
【0026】
なお、表布帛片11及び裏布帛片12は、布帛(織物)であれば、任意の種類のものを使用可能である。また、布帛製品1を、表布帛片11、毛細繊維体13及び裏布帛片12からなる積層体によって形成する場合、シレ加工や、コーティング処理が施された布帛(表布帛片11及び裏布帛片12)を使用することで、毛細繊維体13が縫い目等から外部に抜け落ちることを防止することができる。
【0027】
また、本実施の形態では、布帛製品1として、寝袋を例に取って説明したが、これに限らず、布帛製品1は、衣類や、寝袋のカバー等、物品を収納する袋類等、特に限定されるものではない。したがって、各布帛製品を構成する布帛片は、布帛の織目の方向が、当該布帛片の縦方向(あるいは横方向)に対し斜めの方向となるよう配置されていればよい。
【0028】
さらにまた、本実施の形態では、本体2及びフード部5を構成する表布帛片11及び裏布帛片12の織目200の方向を、ユーザ100の身長方向(縦方向)及び幅方向(横方向)に対し約45度に傾斜させ、底部6を構成する表布帛片11及び裏布帛片12の織目200の方向を、ユーザ100の幅方向及び前後方向に対し約45度に傾斜させた場合について説明したが、これに限らず、前記傾斜角度は、所望により決定することができる。
【0029】
そしてまた、本実施の形態では、布帛製品1を表布帛片11、毛細繊維体13及び裏布帛片12からなる積層体によって形成した場合について説明したが、これに限らず、布帛製品1は、一重の布帛片を縫製して構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態にかかる布帛製品の平面図である。
【図2】図1に示す布帛製品の一部を底面側から見た斜視図である。
【図3】図1に示す布帛製品をユーザが着用し、仰臥した状態を示す平面図である。
【図4】図1に示す布帛製品をユーザが着用し、胡座をかいた状態を示す斜視図である。
【図5】図1に示す布帛製品の縦方向及び横方向と、布帛の織目の方向を拡大して示す平面図である。
【図6】図1に示すVI−VI線に沿った断面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 布帛製品
2 本体
3 開閉チャック
4 開口
5 フード部
6 底部
11 表布帛片
12 裏布帛片
13 毛細繊維体
100 ユーザ
200 織目

【特許請求の範囲】
【請求項1】
布帛を所定の形状に裁断した布帛片を縫製してなる布帛製品であって、
前記布帛片は、前記布帛の織目の方向が、当該布帛片の縦方向に対し斜めの方向となる布帛製品。
【請求項2】
前記布帛片が見頃を構成する請求項1記載の布帛製品。
【請求項3】
前記布帛片は、表側となる表布帛片と、裏側となる裏布帛片を含み、前記表布帛片と裏布帛片との間に、表面に毛細繊維を有する毛細繊維体を介在させてなる請求項1または請求項2記載の布帛製品。
【請求項4】
前記布帛の織目方向に沿って縫製してなる請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の布帛製品。
【請求項5】
前記布帛片は、コーティング処理が施されてなる請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の布帛製品。
【請求項6】
前記布帛は、シレ加工が施されている請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の布帛製品。
【請求項7】
前記布帛片が、寝袋を構成する請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の布帛製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−160217(P2009−160217A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−445(P2008−445)
【出願日】平成20年1月7日(2008.1.7)
【出願人】(391008146)株式会社モンベル (19)
【Fターム(参考)】