説明

布接着装置、及び圧力制御プログラム

【課題】貯蔵室が密閉されていない状態で貯蔵室内の圧力制御が行われてしまうことを防止することが可能な布接着装置、圧力制御プログラムを提供する。
【解決手段】布接着装置は、接着剤が充填される貯蔵室内への気体圧力の印加制御を行うバルブを備えている。貯蔵室の蓋部を開閉不可能な状態とした(S11)後、バルブを開放して(S13)、貯蔵室内に気体圧力を印加する。圧力センサによって貯蔵室内の圧力が検出される(S15)。圧力が所定値以上である場合(S17:YES)、接着剤はギアポンプに対して押し出されているので、ギアポンプの稼働を許可する(S19)。一方、圧力が所定値未満である場合(S17:NO)、接着剤はギアポンプに押し出されていないので、バルブを閉鎖し(S21)、ギアポンプの稼働を禁止し(S23)、蓋部を開閉可能な状態とする(S25)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布接着装置及び圧力制御プログラムに関する。より詳細には、接着剤を貯蔵する貯蔵室を備えた布接着装置及び当該装置の圧力制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、針や縫糸による縫製を必要とせず、接着剤によって布同士を接着させる方法及び装置が提案されている。布同士を接着剤で接着することによって、縫糸による縫製時において布表面に形成されるような縫糸の凹凸を無くし、加工後の布の表面を平滑面とすることが可能となる。これによって肌ざわりのよい布を作製することが可能となる。
【0003】
上述の装置では、通常、接着剤は貯蔵室内で加熱されて液状とされる。液状とされた接着剤はノズルに供給され、ノズルから布に対して吐出される。これによって、布に接着剤が付着する。次いで、接着剤が付着した状態の布に別の布が重ねられる。そして双方の布が圧着され、布同士が接着される。
【0004】
接着剤は、貯蔵室内に気体圧力を印加することによって貯蔵室から押し出され、ノズルに供給される。適性量の接着剤を貯蔵室から押し出すための方法としては、例えば、圧力センサが貯蔵室内の圧力を計測し、計測した圧力に基づいて貯蔵室内の圧力を制御する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2−265670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上述の方法は、貯蔵室内が密閉されていることを前提として圧力制御が行われる。従って、貯蔵室が密閉されていない状態(例えば、貯蔵室の蓋が開いてしまっている状態)では、貯蔵室内に圧力が加わらないので、圧力センサの計測する圧力に基づいた貯蔵室の圧力制御ができず、適性量の接着剤を貯蔵室から押し出すことができないという問題点がある。
【0007】
本発明は上述の問題点を解決するためになされたものであり、貯蔵室が密閉されていない状態で貯蔵室内の圧力制御が行われてしまうことを防止することが可能な布接着装置、及び、当該装置の圧力制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の問題点を解決するために、請求項1に係る発明の布接着装置は、接着剤が貯蔵される貯蔵室であって、開口部を備えた中空状の容器部と、前記容器部の開口部に開閉可能に設けられた蓋部とを少なくとも備えた貯蔵室と、前記蓋部を開放可能な状態と開放不可能な状態とに切り替える蓋開閉制御手段と、前記貯蔵室内に所定の気体圧力を印加するためのホースに設けられ、開閉することによって前記貯蔵室内の気体圧力を制御可能なバルブと、前記バルブを開閉するように制御するバルブ制御手段と、前記貯蔵室内の気体圧力を検出するセンサと、前記センサにて検出される前記貯蔵室内の気体圧力を取得する圧力取得手段と、前記貯蔵室内に気体圧力が印加された場合に前記貯蔵室から押し出される前記接着剤を、接着剤吐出口を有するノズルに至る流路に供給する供給手段と、前記供給手段を駆動制御する供給制御手段とを備えた布接着装置であって、前記圧力取得手段は、前記蓋開閉制御手段にて前記蓋部を開放不可能な状態に切り替えた後、前記バルブ制御手段が前記バルブを開放して前記貯蔵室内に気体圧力を印加させた状態で、前記センサによって検出される前記貯蔵室内の気体圧力を取得し、前記圧力取得手段において取得された気体圧力が所定値未満であった場合に、前記バルブ制御手段が前記バルブを閉鎖し、前記供給制御手段が前記供給手段による前記接着剤の供給を停止させ、前記蓋開閉制御手段が前記蓋部を開放可能な状態に切り替えることを特徴とする。
【0009】
また、請求項2に係る発明の布接着装置は、請求項1に記載の発明の構成に加えて、前記ホースを介して前記貯蔵室内に気体圧力を印加させる圧縮機と、前記圧縮機を制御して前記貯蔵室内への気体圧力の印加を開始又は停止させる圧縮機制御手段とを備え、前記圧縮機制御手段は、前記圧縮機を制御して前記貯蔵室内に気体圧力を印加させた状態で、前記圧力取得手段において取得された気体圧力が所定値未満であった場合に、前記貯蔵室内への気体圧力の印加を停止させるように前記圧縮機を制御することを特徴とする。
【0010】
また、請求項3に係る発明の布接着装置は、接着剤が貯蔵される貯蔵室であって、開口部を備えた中空状の容器部と、前記容器部の開口部に開閉可能に設けられた蓋部とを少なくとも備えた貯蔵室と、前記蓋部を開放可能な状態と開放不可能な状態とに切り替える蓋開閉制御手段と、前記貯蔵室内に所定の気体圧力を印加するためのホースの内部に気体圧力を印加させる圧縮機と、前記圧縮機を制御して前記貯蔵室内への気体圧力の印加を開始又は停止させる圧縮機制御手段と、前記貯蔵室内の気体圧力を検出するセンサと、前記センサにて検出される前記貯蔵室内の気体圧力を取得する圧力取得手段と、前記貯蔵室内に気体圧力が印加された場合に前記貯蔵室から押し出される前記接着剤を、接着剤吐出口を有するノズルに至る流路に供給する供給手段と、前記供給手段を駆動制御する供給制御手段とを備えた布接着装置であって、前記圧力取得手段は、前記蓋開閉制御手段にて前記蓋部を開放不可能な状態に切り替えた後、前記圧縮機制御手段が前記圧縮機を制御して前記貯蔵室内に気体圧力を印加させた状態で、前記センサによって検出される前記貯蔵室内の気体圧力を取得し、前記圧力取得手段において取得された気体圧力が所定値未満であった場合に、前記圧縮機制御手段が前記圧縮機を制御して前記貯蔵室内への気体圧力の印加を停止させ、前記供給制御手段が前記供給手段による前記接着剤の供給を停止させ、前記蓋開閉制御手段が前記蓋部を開放可能な状態に切り替えることを特徴とする。
【0011】
また、請求項4に係る発明の布接着装置は、請求項1から3のいずれかに記載の発明の構成に加えて、前記貯蔵室は、前記蓋部を閉じた状態として開放を禁止することが可能な鍵部を備え、前記鍵部は、前記容器部又は前記蓋部のうち一方に設けられた中空状の孔部と、前記容器部又は前記蓋部のうち、前記孔部が設けられていない側に設けられた突起状の突起部とを備えており、前記孔部に前記突起部を嵌合させることによって、前記蓋部の開放を禁止することを特徴とする。
【0012】
また、請求項5に係る発明の布接着装置は、請求項4に記載の発明の構成に加えて、前記孔部及び前記突起部のうち少なくとも一方を稼働させる稼働手段を備え、前記蓋開閉制御手段は、前記稼働手段を制御することによって、前記孔部と前記突起部とが嵌合した状態又は嵌合しない状態となるように前記孔部及び前記突起部のうち少なくとも一方を稼働させることを特徴とする。
【0013】
また、請求項6に係る発明の布接着装置は、請求項5に記載の発明の構成に加えて、前記稼働手段はエアシリンダであることを特徴とする。
【0014】
また、請求項7に係る発明の圧力制御プログラムは、請求項1から6のいずれかに記載の布接着装置の各処理手段としてコンピュータを駆動させる。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明の布接着装置では、貯蔵室の蓋部を開放不可能とした状態で、バルブを開いて貯蔵室内に気体圧力を印加させる。気体圧力を印加させた状態で、センサによって貯蔵室内の圧力が検出される。検出された圧力が所定値位置未満である場合には、貯蔵室内が密閉されていない可能性があるので、バルブを閉じて気体圧力の印加を停止させる。また、供給手段によるノズルへの接着剤の供給を停止させる。また、蓋部を開放可能とする。これによって、貯蔵室内が密閉されていない状態で貯蔵室内に気体圧力が印加されてしまうことを防止できる。また、ノズルへの接着剤の供給を停止させることができる。また、気体圧力の印加が停止された状態で蓋部が開放可能な状態となるので、接着剤の充填時やメンテナンス時などに蓋部が開放された状態で、気体圧力が印加されてしまうことを防止できる。
【0016】
また、請求項2に係る発明の布接着装置は、請求項1に記載の発明の効果に加えて、圧縮機を制御して気体圧力の印加を制御するので、何らかの原因でバルブが故障した場合であっても、貯蔵室内の気体圧力を制御することが可能となる。
【0017】
また、請求項3に係る発明の布接着装置は、貯蔵室の蓋部を開放不可能とした状態で、圧縮機を制御して貯蔵室内に気体圧力を印加させる。気体圧力を印加させた状態で、センサによって貯蔵室内の圧力が検出される。検出された圧力が所定値未満である場合には、貯蔵室内が密閉されていない可能性があるので、圧縮機を制御して気体圧力の印加を停止させる。また、供給手段によるノズルへの接着剤の供給を停止させる。また、蓋部を開放可能とする。これによって、貯蔵室内が密閉されていない状態で貯蔵室内に気体圧力が印加されてしまうことを防止できる。また、ノズルへの接着剤の供給を停止させることができる。また、気体圧力の印加が停止された状態で蓋部が開放可能な状態となるので、接着剤の充填時やメンテナンス時などに蓋部が開放された状態で、気体圧力が印加されてしまうことを防止できる。
【0018】
また、請求項4に係る発明の布接着装置は、請求項1から3のいずれかに記載の発明の効果に加えて、孔部と突起部とを嵌合させることによって、簡単な構成で蓋部の開放を禁止させることが可能となる。
【0019】
また、請求項5に係る発明の布接着装置は、請求項4に記載の発明の効果に加えて、稼働手段が鍵部の孔部と突起部とのうち少なくとも一方を稼働させることによって、蓋の開放が可能な状態と、蓋の開放を禁止させた状態とに確実に切り替えることが可能となる。
【0020】
また、請求項6に係る発明の布接着装置は、請求項5に記載の発明の効果に加えて、稼動手段がエアシリンダであるので構成が簡単である。そして、エアシリンダを制御することによって、蓋の開放が可能な状態と、蓋の開放を禁止させた状態とに切り替えることが可能となる。
【0021】
また、請求項7に係る発明の圧力制御プログラムは、請求項1から6のいずれかに記載の布接着装置の各処理手段としてコンピュータを駆動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】布接着装置1全体を前方斜め上から見た斜視図である。
【図2】接着機2を前方左斜め上から見た斜視図である。
【図3】接着機2の正面図である。
【図4】接着機2の左側面図である。
【図5】接着機2の内部構造を前方左斜め上から見た斜視図である。
【図6】貯蔵室18部分を拡大した正面図である。
【図7】図2のI−I線における矢視方向断面図である。
【図8】図2のII−II線における矢視方向断面図である。
【図9】接着作業時におけるノズル17近傍の様子を示した部分拡大斜視図である。
【図10】布接着装置1の電気的構成を示す模式図である。
【図11】作業準備処理を示すフローチャートである。
【図12】後処理を示すフローチャートである。
【図13】接着処理を示すフローチャートである。
【図14】布接着装置5全体を前方左斜め上から見た斜視図である。
【図15】布接着装置5の電気的構成を示す模式図である。
【図16】第二の実施の形態における作業準備処理を示すフローチャートである。
【図17】第二の実施の形態における後処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<第一の実施の形態>
以下、本発明に係る布接着装置1の第一の実施の形態について、図面を参照して説明する。なおこれらの図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものであり、記載されている装置の構成、各種処理のフローチャートなどは、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。
【0024】
はじめに、図1〜図4を参照し、布接着装置1の物理的構成について説明する。以下、図3に示す接着機2のうち紙面上側を接着機2の上側、紙面下側を接着機2の下側、紙面右側を接着機2の右側、紙面左側を接着機2の左側、紙面手前側を接着機2の前側及び正面側、紙面手奥行き側を接着機2の後側及び背面側と定義して説明する。
【0025】
図1を参照し、布接着装置1全体の物理的構成について説明する。図1に示すように、布接着装置1は、接着機2と、接着機2を固定するための使用台220とを備えている。接着機2は、対向配置させた布の間に接着剤を付着させ、次いで布を押圧し移送させることによって、布同士を接着させる。接着機2は、左右方向を長手方向とする略直方体状の台座部11、台座部11の右端から鉛直方向に立設する脚柱部12、及び、脚柱部12の上端から左方に延設するアーム部13を備えている。接着機2の構成詳細については後述する。
【0026】
接着機2は、使用台220が備える天板211の上側に載置している。天板211は、左右方向を長手方向とする平面視略長方形状を有する。接着機2は、天板211の略中央部分に載置している。
【0027】
使用台220は、天板211における接着機2の固定部分の右側に、布接着装置1に対して各種動作設定を行うことが可能な操作パネル210を備える。操作パネル210は、各種情報を表示させる液晶表示部207と、ユーザからの各種入力設定を受け付けるパネルキー209とを備える。
【0028】
使用台220は、天板211の左端部より、天板211の平面に対して鉛直方向に下方に延設する脚212と、天板211の右端部より、天板211の平面に対して鉛直方向に下方に延設する脚213とを備える。脚212の下方先端部に、前後方向を長手方向とする略棒状の支持台214が接続している。同様に、脚213の下方先端部に、前後方向を長手方向とする略棒状の支持台215が接続している。それぞれの支持台の前後両端部の下方にキャスターが接続している。これによって、キャスターを転がせて使用台220を容易に移動させることが可能となっている。
【0029】
使用台220は、支持台214の前後方向略中央部分と支持台215の前後方向略中央部分とに亙って架設する板状の足掛け216を備える。また足掛け216の左右方向略中央に、布の移送速度を調整する為のペダル208を備える。
【0030】
使用台220は、天板211の下側に、CPU201(図10参照)等を実装させた制御基板を格納するための制御ボックス3を備える。
【0031】
図2〜図4を参照し、接着機2の物理的構成について説明する。図2及び図3に示すように、接着機2は、左右方向を長手方向とする略直方体状の台座部11、台座部11の右端から鉛直方向に立設する脚柱部12、及び、脚柱部12の上端から左方に延設するアーム部13を備えている。アーム部13の左右方向の長さは、台座部11の左右方向の長さの約3分の1である。
【0032】
台座部11は、布を押圧して移送させるローラやモータ等を内部に備える。また台座部11は、脚柱部12、アーム部13等を下方から支持する土台として機能する。これによりユーザは、接着機2を安定させた状態で使用可能となる。
【0033】
アーム部13は、布を押圧して移送させるためのモータや、接着剤を供給するためのモータ等を内部に備える。アーム部13の左側端には、図2及び図4に示すように、前方から順にポンプケース14、貯蔵室18、及び梁部19が其々接続している。
【0034】
ポンプケース14について説明する。ポンプケース14は、図2及び図3に示すように、アーム部13の左側端から左方に延設する略立方体状の第一ポンプケース31、及び、第一ポンプケース31の左端部から下方に延設する略直方体状の第二ポンプケース32を備えている。第一ポンプケース31は、所定量の接着剤をノズル17に供給するギアポンプを内部に備える。第二ポンプケース32は、左側端にて支持部16を揺動可能に軸支する。ポンプケース14は、接着剤を通流させる供給路を内部に備えており、貯蔵室18に蓄えられた接着剤を支持部16に供給するための機能を有する。
【0035】
支持部16について説明する。図2及び図3に示すように、支持部16は、上下方向を長手方向とする略棒状を有している。そして、支持部16の上端部の右側を第二ポンプケース32が軸支している。支持部16の上端部の上側端から、第一エアシリンダ24を軸支させる軸支部が上方に延設している。支持部16の下端部の左側から、ノズル17が左方に延設している。支持部16は、下端部と台座部11との間に僅かな隙間を形成させる程度の長さを有している。支持部16は、接着剤を通流させる供給路を内部に備える。支持部16は、ポンプケース14から供給される接着剤を、供給路を通流させることによってノズル17に供給する。
【0036】
支持部16は、軸支部に軸支した第一エアシリンダ24を伸縮させることによって、上端部を揺動中心軸として下端部を前後方向に揺動させる。これによってノズル17を、布の接着作業を行う場合の位置に移動させたり、保守を行う場合の位置に移動させたりすることが可能となっている。
【0037】
ノズル17について説明する。図2に示すように、ノズル17は円筒形状を有し、接着剤を吐き出す吐き出し口を下側に備えている。布の接着作業を行う場合、対向配置させた布の間にノズル17を挿入させる。そして、支持部16内部の供給路を通流させてノズル17に供給させた接着剤を、吐き出し口より布に吐き出させる。これによって、ノズル17の下方に位置する布の表面に接着剤を付着させる。
【0038】
貯蔵室18について説明する。貯蔵室18は、図2及び図3に示すように、上下方向を長手方向とする略直方体状を有しており、アーム部13の左側端であってポンプケース14の後方部分から上方に立設する。貯蔵室18は、上側に開口を有する箱状の容器部46、容器部46の上側を覆う蓋部47、容器部46に蓋部47を軸支するための軸支部48、及び、蓋部47を開閉不可能とすることが可能なロック機構部70を備える。貯蔵室18は、接着剤を容器部46内に蓄え、必要に応じてノズル17に供給する。
【0039】
図2に示すように、蓋部47にはホース61が挿通している。ホース61には、ホース61の中空孔を開閉可能なバルブ60が接続されている。バルブ60は、図示されない周知の圧縮機から貯蔵室18内に供給される気体の通流を制御する。圧縮機は、ホース61を介して貯蔵室18内に気体圧力を印加することが可能である。ホース61における蓋部47との接続部分の近傍に圧力センサ65が接続している。圧力センサ65は、バルブ60を経由してホース61内を流通する気体の圧力を検出することによって、貯蔵室18内の気体圧力を検出する。詳細は後述する。
【0040】
梁部19について説明する。図2に示すように、梁部19は、アーム部13の左側端から左方水平方向に延設する略棒状の本体部51、本体部51の左端部から前方水平方向に延設する板状のばね支持部53、及び、本体部51の左端部から前方斜め下の方向に延設する棒状の柱部52を備えている。本体部51の左右方向の長さは、図3に示すように、台座部11の左右方向の長さの約3分の1である。ばね支持部53の前後方向の長さは、図2に示すように、台座部11の前後方向の長さの約2分の1である。柱部52は、図2及び図4に示すように、延設方向の角度が水平面に対して約45度となるような状態で本体部51に接続している。柱部52は、図3及び図4に示すように、前方先端部と台座部11との間に僅かな隙間を形成させる程度の長さを有している。
【0041】
図2に示すように、ばね支持部53は前方先端部に孔を備えており、ばね21の軸部の上端部分が孔に貫通している。ばね21は、ローラ保持部20を下方に付勢する。柱部52は、先端部分の左側にローラ保持部20を軸支している。梁部19は、本体部51のうちばね支持部53の右側にて、第一エアシリンダ24を軸支する。第一エアシリンダ24は、支持部16を稼働させる。
【0042】
ローラ保持部20について説明する。図2及び図4に示すように、ローラ保持部20は、前後方向を長手方向とする略棒状を有している。そしてローラ保持部20の後端部の右側を、柱部52が軸支している。これによりローラ保持部20は、後端部を揺動中心軸として前端部を上下方向に揺動させることが可能となっている。ローラ保持部20は、前端部に上移送ローラ22を軸支している。上移送ローラ22は、略円筒形状を有しており、左右水平方向を回転軸の延設方向として、前後方向に回転可能となっている。また、ローラ保持部20の上側であって上移送ローラ22の軸支部分の後方から、ローラ保持部20に対して鉛直方向にばね軸支部が延設している。そして、ばね軸支部にばね21の軸部の下端部が軸支している。ローラ保持部20は、柱部52及びばね部21と接続した状態で略水平状態となる。前端部に軸支した上移送ローラ22は、支持部16より延設されたノズル17の後方近傍に配置する。
【0043】
図2に示すように、台座部11は、上移送ローラ22の下方部分に、開口した孔部23を備える。台座部11内の下移送ローラ25(図5参照)が、下方から孔部23に挿通し上方に僅かに突出している。上移送ローラ22は、下移送ローラ25との間に布を挟んだ状態で、下移送ローラ25とともに回転する。これにより、布を前方から後方に移送させる。
【0044】
図5を参照し、接着機2の内部構造について説明する。図5に示すように、接着機2は、ギアポンプ124を駆動させるための第一モータ91、上移送ローラ22を駆動させるための第二モータ92、下移送ローラ25を駆動させるための第三モータ93等を内部に備える。以下詳細を説明する。
【0045】
第一モータ91は、ポンプケース14内を挿通する主軸を介して、ギアポンプ124を回動させる。ギアポンプ124は、二つのポンプギア(ポンプギア122、ポンプギア123)を備えている。第一モータ91は、アーム部13のうちポンプケース14が接続している部分の右方に内装している。ギアポンプ124を回転させることによって、所定量の接着剤を貯蔵室18からノズル17に供給する。
【0046】
第二モータ92は、梁部19内及びローラ保持部20内を挿通する主軸及びベルトを介して、上移送ローラ22を回転させる。第二モータ92は、アーム部13のうち梁部19が接続している部分の右方に内装する。上移送ローラ22を回転させることによって、下移送ローラ25との間に挟んだ状態の布を前方から後方に移送させる。
【0047】
第三モータ93は、台座部11内を挿通する主軸及びベルトを介して、下移送ローラ25を回転させる。下移送ローラ25は、略円筒形状を有しており、左右水平方向を回転軸の延設方向とし前後方向に回転可能な状態で、台座部11のうち上移送ローラ22の下方に内装している。第三モータ93は、台座部11の右端に内装している。下移送ローラ25を回転させることによって、上移送ローラ22との間に挟んだ状態の布を前方から後方に移送させる。
【0048】
図6を参照し、貯蔵室18について説明する。図6に示すように、貯蔵室18は、周壁と底壁とで構成された容器部46を備えている。容器部46には接着剤が充填される。蓋部47が、容器部46の上側に、容器部46の上側の開口部を覆うように配置している。容器部46を構成する周壁のうち左側上端には、軸支部48が配置している。容器部46は、軸支部48において蓋部47を軸支している。蓋部47は、軸支部48を支軸として、容器部46の開口部を覆った(蓋部47が閉じた)状態と、容器部46の開口部を覆わない(蓋部47が開放した)状態とに移働可能となっている。図6に示す例では、蓋部47が閉じた状態が示されている。蓋部47が閉じた状態となった場合、貯蔵室18の内部(容器部46と蓋部47とで覆われた空間)は密閉状態となる。
【0049】
容器部46を構成する周壁のうち右側上端には、ロック機構部70が配置している。ロック機構部70は、第二エアシリンダ71を備えている。第二エアシリンダ71のピストンには、棒状の嵌合棒72が接続されている。嵌合棒72は、第二エアシリンダ71から左方水平方向に延設している。第二エアシリンダ71は、ピストンを左右水平方向に移動させる。これによって第二エアシリンダ71は、嵌合棒72を第二エアシリンダ71から左方に突出させた状態と、嵌合棒72を第二エアシリンダ71の内部に引き込んだ状態とに切り替えることができる。
【0050】
蓋部47の右側端面には、孔状の嵌合孔73が配置している。嵌合孔73の径は、嵌合棒72の径と比較して僅かに大きい。嵌合棒72が第二エアシリンダ71の左方に突出した状態で、嵌合棒72と嵌合孔73とは嵌合する。嵌合棒72と嵌合孔73とが嵌合した状態では、蓋部47を開放させることはできない。従って、第二エアシリンダ71を制御してピストンを移動させることによって、貯蔵室18の蓋部47が開放可能な状態と、蓋部47が開放不可能な状態とに切り替えることができる。
【0051】
蓋部47にはホース61が挿通している。ホース61のうち蓋部47と接続する側と反対側の端部には、図示されない周知の圧縮機が接続している。圧縮機は、ホース61を介して貯蔵室18内に気体圧力を印加することができる。容器部46に充填された状態の接着剤の上方から気体圧力を印加することによって、容器部46の下方に設けられた供給路81へと接着剤を押し出す。押し出した接着剤は、ギアポンプ124を経由してノズル17へと至る。
【0052】
ホース61には、ホース61の中空孔を開閉可能なバルブ60が接続している。バルブ60は、圧縮機から貯蔵室18内に供給される気体の通流を制御する。バルブ60の開閉は、CPU201(図10参照、後述)からの電気制御によって行うことが可能である。バルブ60を開放した場合、蓋部47が閉じていれば、貯蔵室18内には気体圧力が印加される。バルブ60が閉鎖している場合、貯蔵室18内には気体圧力が印加されない。又、ホース61には、貯蔵室18内の気体圧力を検出することが可能な圧力センサ65が接続している。
【0053】
貯蔵室18、ポンプケース14、及び支持部16に設けられた接着剤の供給路について説明する。図7に示すように、容器部46のうち底壁には、容器部46に充填させた接着剤をポンプケース14に導くための供給路81が貫通している。供給路81は、貯蔵室18からポンプケース14に接着剤を通流させるための中空状の孔である。
【0054】
供給路81は、貯蔵室18より延び、ポンプケース14内を貫通し、第一ポンプケース31が内装するギアポンプ124に至っている。ギアポンプ124は、回転可能なポンプギア122及びポンプギア123より構成される。ポンプギア122及びポンプギア123は、双方のギアの歯を掛合させた状態となっている。図8に示すように、ポンプギア122は、アーム部13に内装する第一モータ91の回転軸と主軸を介して接続している。図7及び図8に示すように、供給路81は、ギアポンプ124のうちポンプギア122とポンプギア123との掛合部の上端部に至る。
【0055】
ポンプケース14は、供給路82を内部に備える。供給路82は、ギアポンプ124を通過した接着剤を支持部16の供給路83に導くための中空状の孔である。供給路82は、ポンプギア122とポンプギア123(図7参照)との掛合部の下端部から延び、支持部16の供給路83に至る。
【0056】
支持部16は供給路83を内部に備える。供給路83は、ポンプケース14の供給路82を介して通流する接着剤を、支持部16の下端部より延設するノズル17に導くための中空状の孔である。供給路83は、支持部16の上端部の右端にて、供給路82と接続する。供給路83は、支持部16内を貫通し、ノズル17の供給路84に至る。
【0057】
ノズル17は供給路84を備える。供給路84は、支持部16の供給路83を介して通流する接着剤を、吐き出し口86に導くための中空状の孔である。供給路84は、ノズル17内を左右方向に貫通している。右端にて供給路83と接続し、左端にて吐き出し口86に接続している。供給路84内を通流した接着剤は、吐き出し口86より外部に吐出する。
【0058】
接着剤が、貯蔵室18よりポンプケース14及び支持部16を経由してノズル17の吐き出し口86より吐出する迄の流れについて、図7及び図8を参照して説明する。はじめに、貯蔵室18内に気体圧力を印加し、容器部46に充填した接着剤を供給路81に対して押し出す。押し出された接着剤はギアポンプ124に至る。第一モータ91が回転することに基づき、ポンプギア122及びポンプギア123が回転する。ポンプギア122及びポンプギア123の回転に伴い、回転数に応じた所定量の接着剤が送り出される。これによって、接着剤が供給路81から供給路82に対して送り出される。供給路82に送り出された接着剤は、さらに支持部16の供給路83に流れ込み、供給路83を経由してノズル17に至る。そしてノズル17の供給路84を経由し、吐き出し口86より外部に吐出する。
【0059】
図9を参照し、上布151と下布152とを接着させる接着作業時における接着機2の様子について説明する。図9に示すように、布接着装置1を使用して接着作業を行う場合には、上布151及び下布152を重ねて配置させ、布の接着部分にノズル17を挟む。ノズル17の後方にて、上移送ローラ22及び下移送ローラ25によって上布151と下布152とを上下方向から挟む。
【0060】
接着作業が可能な状態となった後、貯蔵室18の蓋部47が閉じた状態で貯蔵室18内に気体圧力を印加する。貯蔵室18の容器部46に充填された接着剤は、供給路81を経由してギアポンプ124へと押し出される。
【0061】
この状態でユーザがペダル208を踏み込むと、ギアポンプ124が回動する。接着剤が供給路82〜84を経由して、ノズル17の吐き出し口86より吐出する。これによって、下布152に接着剤が付着する。同時に、上移送ローラ22及び下移送ローラ25が、上布151及び下布152を前方から後方に移送させる方向に回転する。これによって、上布151と下布152とを前方から後方に移送させると同時に、上布151と下布152とを上下方向から押圧する。これによって、上布151と下布152とを接着させる。以上のようにして布の接着作業が実行される。
【0062】
図10を参照し、布接着装置1の電気的構成について説明する。図10に示すように、布接着装置1は、操作パネル210やペダル208などの入力装置からの入力情報や、各種センサにて検出された検出情報を受信する受信処理、各種モータ等を制御する制御処理など実行するCPU201、CPU201が実行するプログラムや各種初期設定パラメータ等を記憶するROM202、タイマやカウンタ、フラグ等を一時的に記憶するRAM203、及び、ユーザが入力する各種設定情報を記憶するフラッシュメモリ29を備えている。CPU201からROM202、RAM203、フラッシュメモリ29の記憶領域にアクセスすることが可能なように、CPU201とROM202、RAM203、及びフラッシュメモリ29とは其々電気的に接続している。
【0063】
布接着装置1は、ユーザが布の移送速度を調節する場合に使用するペダル208を備える。そして、ユーザがペダル208を踏み込んだ場合の踏み込み量を認識することが可能なように、CPU201とペダル208とは電気的に接続している。CPU201は、認識したペダル208の踏み込み量に基づいて、上移送ローラ22及び下移送ローラ25の回転速度や、ギアポンプ124を構成するポンプギア122、123の回転速度を決定する。
【0064】
布接着装置1は、ユーザが各種動作設定を行う場合に使用するパネルキー209を備える。そして、ユーザによるパネルキー209の押下状態を認識することが可能なように、CPU201とパネルキー209とは電気的に接続している。CPU201は、認識したパネルキー209の押下状態に基づいて、ユーザが入力した各種動作設定の情報をフラッシュメモリ29に記憶させる。
【0065】
布接着装置1は、液晶表示部207、及び液晶表示部207を制御して所望の像を表示させることが可能な表示駆動ドライバ205を備えている。そして、CPU201より液晶表示部207に対して各種情報を表示させることが可能なように、CPU201と表示駆動ドライバ205とは電気的に接続している。また表示駆動ドライバ205と液晶表示部207とは電気的に接続している。
【0066】
布接着装置1は、ギアポンプ124を回転駆動させるための第一モータ91、上移送ローラ22を回転駆動させるための第二モータ92、及び、下移送ローラ25を回転駆動させるための第三モータ93を備えている。また、其々のモータを所望の回転速度にて回転させるための制御を行うモータ駆動ドライバ206を備えている。そして、CPU201が其々のモータを所望の回転速度にて回転させることが可能なように、CPU201とモータ駆動ドライバ206とは電気的に接続している。モータ駆動ドライバ206と第一モータ91、第二モータ92、及び第三モータ93とは、其々電気的に接続している。
【0067】
布接着装置1は、支持部16の位置を使用位置と保守位置とに稼働させる第一エアシリンダ24を備えている。また布接着装置1は、ロック機構部70の嵌合棒72を稼働させる第二エアシリンダ71を備えている。第一エアシリンダ24及び第二エアシリンダ71の空気口へ送り込む空気の圧力制御を行うエア駆動ドライバ204を備えている。そして、CPU201より第一エアシリンダ24及び第二エアシリンダ71の伸縮制御を行うことが可能なように、CPU201とエア駆動ドライバ204とは電気的に接続している。エア駆動ドライバ204が第一エアシリンダ24及び第二エアシリンダ71を駆動可能なように、エア駆動ドライバ204と第一エアシリンダ24及び第二エアシリンダ71とは接続している。
【0068】
布接着装置1は、ホース61の中空孔を開閉制御可能なバルブ60を備えている。CPU201がバルブ60を制御して中空孔を開閉制御することが可能なように、CPU201とバルブ60とは電気的に接続している。
【0069】
布接着装置1は、貯蔵室18内の気体圧力を検出することが可能な圧力センサ65を備えている。圧力センサ65によって検出された圧力値をCPU201にて検出することが可能なように、CPU201と圧力センサ65とは電気的に接続している。
【0070】
図11〜図13を参照し、布接着装置1のCPU201にて実行される各種処理(作業準備処理、接着処理)について説明する。なお、ホース61に接続された状態の図示されない圧縮機は、常時稼働状態であるとする。CPU201が各処理において使用するフラグについて説明する。許可フラグは、ギアポンプ124の稼働の許否を示す。ギアポンプ124の稼働を許可する場合、許可フラグに「1」を記憶する。ギアポンプ124の稼働を禁止する場合、許可フラグに「0」を記憶する。以下、許可フラグに「1」を記憶することを「許可フラグをONする」という。許可フラグに「0」を記憶することを、「許可フラグをOFFする」という。許可フラグは、RAM203に記憶される。
【0071】
なお、作業準備処理及び接着処理は、それぞれ所定の周期(例えば1ms)で実行される。一方の処理の実行中に他方の実行タイミングが到来した場合、実行中の処理は中断し、他方の処理が実行される。実行中の処理が中断した場合、次の実行タイミングでは、中断時点から処理が再開される。これによってCPU201は双方の処理を実行することが可能となっている。
【0072】
図11及び図12を参照し、CPU201が実行する作業準備処理について説明する。ユーザによって、布の接着作業を開始させる操作がパネルキー209を介して行われたことをCPU201が検出した場合、CPU201は作業準備処理を起動し実行する。
【0073】
作業準備処理が起動されると、CPU201は、はじめに、嵌合棒72を第二エアシリンダ71から突出させるように、第二エアシリンダ71を制御する。嵌合棒72が第二エアシリンダ71から突出すると、嵌合棒72は嵌合孔73に嵌合する。貯蔵室18の蓋部47は開放不可能な状態となる(S11)。
【0074】
CPU201は、バルブ60を制御し、ホース61の中空孔を開放させる(S13)。稼働中の圧縮機が、貯蔵室18内に気体圧力を印加する。次いでCPU201は、圧力センサ65が検出する貯蔵室18内の気体圧力を取得する(S15)。CPU201は、取得した気体圧力と所定の閾値とを比較する(S17)。
【0075】
貯蔵室18の蓋部47が閉じられ、貯蔵室18内が密閉している場合、S13の処理によって気体圧力が印加された状態の貯蔵室18内の気体圧力は所定の閾値以上となる(S17:YES)。この場合、容器部46に充填した接着剤は、上方からの気体圧力によって供給路81に押し出されている。このため、ギアポンプ124を稼働することによってノズル17に接着剤を供給することが可能な状態である。そこでCPU201は許可フラグをONする(S19)。
【0076】
次いで、CPU201は、ユーザがパネルキー209を介して接着作業を終了させる為の操作を行ったかを判断する(S27)。ユーザが終了操作を行った場合(S27:YES)、CPU201は後処理(S29、図12参照)を実行し、その後作業準備処理を終了する。一方、ユーザが終了操作を行っていない場合(S27:NO)、S15に戻り、CPU201は上述の処理を繰り返し実行する。
【0077】
図12を参照し、後処理について説明する。CPU201は、はじめに許可フラグをOFFする(S41)。次いでCPU201は、バルブ60を制御し、ホース61の中空孔を閉鎖する(S43)、これによって、貯蔵室18内への気体圧力の印加を停止させる。次いでCPU201は、圧力センサ65が検出する貯蔵室18内の気体圧力を取得する(S44)。そしてCPU201は、取得した気体圧力と所定の閾値とを比較する(S45)。
【0078】
S43にてバルブ60を閉じているので、貯蔵室18内の圧力は徐々に低下する。圧力センサ65から取得する圧力が所定の閾値以上である場合(S45:NO)、CPU201は、バルブ60を閉鎖してからの経過時間を監視する(S49)。経過時間が所定時間未満である場合(S49:NO)、S44に戻る。CPU201は、継続して圧力センサ65から気体圧力を取得し、値を監視する。経過時間が所定時間以上となった場合(S49:YES)、ユーザに対してエラーが発生したことを通知する為の画面を液晶表示部207に表示させる(S51)。そして後処理を終了し、作業準備処理(図11参照)に戻る。
【0079】
圧力センサ65から取得した気体圧力が所定の閾値未満となった場合(S45:YES)、貯蔵室18内の気体圧力は十分低下している。CPU201は、嵌合棒72が第二エアシリンダ71に引き込まれた状態となるように、第二エアシリンダ71を制御する。貯蔵室18の蓋部47は開放可能な状態となる(S47)。そしてCPU201は後処理を終了し、作業準備処理(図11参照)に戻る。
【0080】
一方、図11に示すように、作業準備処理のS17の処理において、圧力センサ65が検出した圧力が所定の閾値未満であった場合(S17:NO)、接着剤に対して気体圧力が印加されていない。この場合、容器部46に充填した接着剤は供給路81に対して押し出されていないので、ギアポンプ124を稼働してもノズル17に所望量の接着剤が供給されない。CPU201は、バルブ60を制御し、ホース61の中空孔を閉鎖する(S21)。次いでCPU201は、許可フラグをOFFする(S23)。次いでCPU201は、嵌合棒72が第二エアシリンダ71に引き込まれた状態となるように、第二エアシリンダ71を制御する。嵌合棒72が第二エアシリンダ71に引き込まれると、嵌合孔73に嵌合棒72が嵌合しない状態となる。貯蔵室18の蓋部47は開放可能な状態となる(S25)。そしてCPU201は、作業準備処理を終了する。
【0081】
以上のように、貯蔵室18内が密閉された状態で気体圧力が確実に印加されている状態となった場合にのみ、ギアポンプ124の稼働を許可する。これによって、容器部46と蓋部47との間に隙間が発生する等の要因で、貯蔵室18内に圧力が印加されていない状態では、ギアポンプ124の稼働を許可しないように制御できる。又、貯蔵室18内に気体圧力が印加されている状態では、蓋部47の開放を禁止する。これによって、接着作業中に蓋部47が開放されてしまって気体圧力が低下し、所望量の接着剤が貯蔵室18に押し出されなくなってしまうことを防止できる。蓋部47が開放可能な状態では、バルブ60はホース61の中空孔を閉鎖する。これによって、蓋部47が開放中に圧縮機から気体が流入し気体圧力が印加されてしまうことを防止できる。
【0082】
図13を参照し、CPU201において実行される接着処理について説明する。布接着装置1の電源が投入された場合に、CPU201は接着処理を起動し実行する。
【0083】
接着処理が起動されると、CPU201は、ペダル208が踏み込まれた状態であるかを判断する(S31)。ユーザがペダル208を踏み込んだことをCPU201が検出しない状態では(S31:NO)、S31に戻り、CPU201は継続してペダル208の状態を監視する。
【0084】
ここで、ユーザによって接着機2に布がセットされ、ペダル208が踏み込まれる。ペダル208の踏み込みをCPU201が検出した場合(S31:YES)、CPU201は、許可フラグがONしているかを判断する(S33)。許可フラグOFFしている場合(S33:NO)ギアポンプ124の稼働が禁止されているので、特段処理を行うことなくS31に戻る。
【0085】
許可フラグがONしている場合(S33:YES)、ギアポンプ124を稼働させることによってノズル17から接着剤を吐出させることが可能な状態である。CPU201は、ペダル208の踏み込み量に基づいて回転速度を定め、第一モータ91を回転させてギアポンプ124を稼働させる(S35)。そしてS31に戻る。
【0086】
ギアポンプ124が稼働することによって、接着剤がノズル17に導かれ、吐き出し口86から吐出する。吐出した接着剤は布に付着する。また同時にCPU201は、第二モータ92及び第三モータ93を回転させる。これによって上移送ローラ22と下移送ローラ25とが回転する。回転する上移送ローラ22と下移送ローラ25によって、重ねられた状態の布を上下方向から押圧し、前方から後方に移送する。以上のようにして、布の接着処理が実行される。
【0087】
以上説明したように、第一の実施の形態における布接着装置1では、貯蔵室18内の気体圧力が所定の閾値以上となった場合に、許可フラグをONしてギアポンプ124の稼働を許可する。これによって、気体圧力の印加が不十分で所望の量の接着剤がノズル17の吐き出し口86から吐き出されない不具合を防止できる。
【0088】
貯蔵室18内に気体圧力が印加されている状態では、貯蔵室18の蓋部の開放を禁止する。これによって、接着作業中に蓋部47が開放されてしまうことを防止できる。なお、バルブ60を閉塞して貯蔵室18内に気体圧力が印加されない状態とした場合に、蓋部47は開放可能となる。これによって、接着剤の充填時やメンテナンス時などに蓋部47が開放された状態で、気体圧力が印加されてしまうことを防止できる。
<第二の実施の形態>
【0089】
第二の実施の形態について説明する。なお、上述の第一の実施の形態と同様の部分については、同様の符号を付し、説明を省略又は簡略する。
【0090】
図14を参照し、布接着装置5の物理的構成について説明する。図14に示すように、布接着装置5は、上述の第一の実施の形態とは異なり、圧縮機75を備えている。圧縮機75は、上下方向を長手方向とする略円筒形状を有しており、使用台220の脚212の左側に配置している。圧縮機75の上部にはホース61が挿通している。ホース61のうち圧縮機75と接続する側と反対側の端部は、接着機2の貯蔵室18の蓋部47に挿通している。圧縮機75は、ホース61を介して貯蔵室18内に気体圧力を印加する。圧縮機75の稼働/停止は、CPU201から電気的に制御可能である。
【0091】
ホース61にはバルブ60が接続している。バルブ60は、圧縮機75から貯蔵室18内に供給される気体の通流を制御する。ホース61には、貯蔵室18内の気体圧力を検出することが可能な圧力センサ65が接続している。圧力センサ65は、ホース61のうち蓋部47と接続する部分の近傍に配置している。
【0092】
図15を参照し、布接着装置5の電気的構成について説明する。図15に示すように、布接着装置5は、圧縮機75を備えている。CPU201と圧縮機75とは電気的に接続している。CPU201が圧縮機75の稼働状態と停止状態とを切り替えることが可能となっている。
【0093】
図16及び図17を参照し、布接着装置5のCPU201にて実行される作業準備処理について説明する。CPU201が実行する接着処理は、上述の第一の実施の形態と同様である。
【0094】
ユーザが接着作業を開始させるための操作をパネルキー209を介して行うと、図16に示すように、CPU201は、はじめに、嵌合棒72を第二エアシリンダ71から突出させるように、第二エアシリンダ71を制御する。貯蔵室18の蓋部47は開放不可能な状態となる(S11)。CPU201は、圧縮機75を制御して稼働を開始させる(S71)。次いでCPU201は、バルブ60を制御してホース61の中空孔を開放する(S13)。稼働中の圧縮機75から貯蔵室18内に気体が流入し、貯蔵室18内に気体圧力が印加される。
【0095】
CPU201は、圧力センサ65が検出する貯蔵室18内の気体圧力を取得する(S15)。取得した気体圧力が所定の閾値以上であった場合(S17:YES)、容器部46に充填した接着剤に対して上方から気体圧力が印加されている。ギアポンプ124を稼働させることによって、ノズル17に接着剤を供給することが可能な状態であるので、CPU201は許可フラグをONする(S19)。次いでCPU201は、ユーザが接着作業を終了する為の操作を行ったかを判断する(S27)。ユーザが終了操作を行った場合(S27:YES)、CPU201は後処理を実行し(S29、図17参照)、その後作業準備処理を終了させる。ユーザが終了操作を行っていない場合(S27:NO)、S15に戻り、CPU201は上述の処理を繰り返し実行する。
【0096】
図17に示すように、後処理では、CPU201は、はじめに許可フラグをOFFする(S41)。次いでCPU201は、圧縮機75を制御して稼働を停止させる(S75)。次いでCPU201は、バルブ60を制御し、ホース61の中空孔を閉鎖し(S43)、気体圧力の印加を停止させる。次いでCPU201は、圧力センサ65が検出する貯蔵室18内の気体圧力を取得する(S44)。
【0097】
圧力センサ65から取得した圧力が所定の閾値以上である場合(S45:NO)、CPU201は、バルブ60を閉鎖してからの経過時間を監視する(S49)。経過時間が所定時間未満である場合(S49:NO)、S45に戻る。経過時間が所定時間以上となった場合(S49:YES)、ユーザに対してエラーが発生したことを通知する為の画面を液晶表示部207に表示させる(S51)。そして作業準備処理(図16)に戻る。
【0098】
圧力センサから取得した気体圧力が所定の閾値未満となった場合(S45:YES)、CPU201は、嵌合棒72が第二エアシリンダ71に引き込まれた状態となるように、第二エアシリンダ71を制御する。貯蔵室18の蓋部47は開放可能な状態となる(S47)。そして作業準備処理(図16)に戻る。
【0099】
一方、図16に示すように、作業準備処理のS17の処理において、圧力センサ65が検出した圧力が所定の閾値未満であった場合(S17:NO)、ギアポンプ124を稼働してもノズル17に接着剤が供給されない。CPU201は、バルブ60を制御し、ホース61の中空孔を閉鎖する(S21)。次いでCPU201は、圧縮機75を制御して稼働を停止させる(S73)。次いでCPU201は、許可フラグをOFF(S23)する。次いでCPU201は、嵌合棒72が第二エアシリンダ71に引き込まれた状態となるように、第二エアシリンダ71を制御する。貯蔵室18の蓋部47は開放可能な状態となる(S25)。そしてCPU201は、作業準備処理を終了する。
【0100】
以上説明したように第二の実施の形態では、バルブ60の開閉制御とともに、圧縮機75の稼働/停止制御を行う。これによって、バルブが故障した場合であっても、圧縮機75を制御することによって、貯蔵室18内の気体圧力制御を行うことが可能となる。
【0101】
なお、本発明は上記第一の実施の形態及び第二の実施の形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。上述の実施の形態では、ロック機構部70のうち嵌合棒72の稼働を第二エアシリンダ71によって制御することにより、蓋部47に設けられた嵌合孔73との嵌合状態を切り替え、蓋部47を開放可能な状態と開放不可能な状態とに切り替えていた。しかしながら本発明はこの方法に限定されない。従って例えば、蓋部47に嵌合棒を取り付け、エアシリンダに取り付けられた嵌合孔の稼働を制御することによって、蓋部47に設けられた嵌合棒との嵌合状態を切り替え、蓋部47を開放可能な状態と開放不可能な状態とに切り替えてもよい。
【0102】
上述の第二の実施の形態では、バルブ60の開閉制御と圧縮機75の稼働/停止制御を行うことによって、貯蔵室18内の気体圧力制御を行っていた。しかしながら本発明はこの構成及び方法に限定されない。布接着装置5は、バルブ60を備えない構成であってもかまわない。圧縮機75の稼働/停止制御のみを行う構成であっても、上述の第一及び第二の実施の形態と同様に、貯蔵室18内の気体圧力を制御することが可能となり、上述と同様の効果を奏することができる。
【0103】
図11のS13、S21、図12のS43の処理を行うCPU201が、本発明の「バルブ制御手段」に相当する。図11のS11、S25、図12のS47の処理を行うCPU201が、本発明の「蓋開閉制御手段」に相当する。図2の圧力センサ65が本発明の「センサ」に相当する。図11のS15、図12のS44の処理を行うCPU201が「圧力取得手段」に相当する。図5のギアポンプ124が本発明の「供給手段」に相当する。図13のS35の処理を行うCPU201が本発明の「供給制御手段」に相当する。図16のS71、S73、図17のS75の処理を行うCPU201が本発明の「圧縮機制御手段」に相当する。
【0104】
図6のロック機構部70が本発明の「鍵部」に相当し、嵌合棒72が本発明の「突起部」に相当し、嵌合孔73が本発明の「孔部」に相当し、第二エアシリンダ71が本発明の「稼働手段」に相当する。
【符号の説明】
【0105】
1、5 布接着装置
2 接着機
17 ノズル
18 貯蔵室
46 容器部
47 蓋部
48 軸支部
60 バルブ
61 ホース
65 圧力センサ
70 ロック機構部
71 第二エアシリンダ
72 嵌合棒
73 嵌合孔
75 圧縮機
81、82、83、84 供給路
201 CPU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着剤が貯蔵される貯蔵室であって、開口部を備えた中空状の容器部と、前記容器部の開口部に開閉可能に設けられた蓋部とを少なくとも備えた貯蔵室と、
前記蓋部を開放可能な状態と開放不可能な状態とに切り替える蓋開閉制御手段と、
前記貯蔵室内に所定の気体圧力を印加するためのホースに設けられ、開閉することによって前記貯蔵室内の気体圧力を制御可能なバルブと、
前記バルブを開閉するように制御するバルブ制御手段と、
前記貯蔵室内の気体圧力を検出するセンサと、
前記センサにて検出される前記貯蔵室内の気体圧力を取得する圧力取得手段と、
前記貯蔵室内に気体圧力が印加された場合に前記貯蔵室から押し出される前記接着剤を、接着剤吐出口を有するノズルに至る流路に供給する供給手段と、
前記供給手段を駆動制御する供給制御手段と
を備えた布接着装置であって、
前記圧力取得手段は、
前記蓋開閉制御手段にて前記蓋部を開放不可能な状態に切り替えた後、前記バルブ制御手段が前記バルブを開放して前記貯蔵室内に気体圧力を印加させた状態で、前記センサによって検出される前記貯蔵室内の気体圧力を取得し、
前記圧力取得手段において取得された気体圧力が所定値未満であった場合に、前記バルブ制御手段が前記バルブを閉鎖し、前記供給制御手段が前記供給手段による前記接着剤の供給を停止させ、前記蓋開閉制御手段が前記蓋部を開放可能な状態に切り替えることを特徴とする布接着装置。
【請求項2】
前記ホースを介して前記貯蔵室内に気体圧力を印加させる圧縮機と、
前記圧縮機を制御して前記貯蔵室内への気体圧力の印加を開始又は停止させる圧縮機制御手段と
を備え、
前記圧縮機制御手段は、
前記圧縮機を制御して前記貯蔵室内に気体圧力を印加させた状態で、前記圧力取得手段において取得された気体圧力が所定値未満であった場合に、前記貯蔵室内への気体圧力の印加を停止させるように前記圧縮機を制御することを特徴とする請求項1に記載の布接着装置。
【請求項3】
接着剤が貯蔵される貯蔵室であって、開口部を備えた中空状の容器部と、前記容器部の開口部に開閉可能に設けられた蓋部とを少なくとも備えた貯蔵室と、
前記蓋部を開放可能な状態と開放不可能な状態とに切り替える蓋開閉制御手段と、
前記貯蔵室内に所定の気体圧力を印加するためのホースの内部に気体圧力を印加させる圧縮機と、
前記圧縮機を制御して前記貯蔵室内への気体圧力の印加を開始又は停止させる圧縮機制御手段と、
前記貯蔵室内の気体圧力を検出するセンサと、
前記センサにて検出される前記貯蔵室内の気体圧力を取得する圧力取得手段と、
前記貯蔵室内に気体圧力が印加された場合に前記貯蔵室から押し出される前記接着剤を、接着剤吐出口を有するノズルに至る流路に供給する供給手段と、
前記供給手段を駆動制御する供給制御手段と
を備えた布接着装置であって、
前記圧力取得手段は、
前記蓋開閉制御手段にて前記蓋部を開放不可能な状態に切り替えた後、前記圧縮機制御手段が前記圧縮機を制御して前記貯蔵室内に気体圧力を印加させた状態で、前記センサによって検出される前記貯蔵室内の気体圧力を取得し、
前記圧力取得手段において取得された気体圧力が所定値未満であった場合に、前記圧縮機制御手段が前記圧縮機を制御して前記貯蔵室内への気体圧力の印加を停止させ、前記供給制御手段が前記供給手段による前記接着剤の供給を停止させ、前記蓋開閉制御手段が前記蓋部を開放可能な状態に切り替えることを特徴とする布接着装置。
【請求項4】
前記貯蔵室は、
前記蓋部を閉じた状態として開放を禁止することが可能な鍵部を備え、
前記鍵部は、
前記容器部又は前記蓋部のうち一方に設けられた中空状の孔部と、
前記容器部又は前記蓋部のうち、前記孔部が設けられていない側に設けられた突起状の突起部とを備えており、
前記孔部に前記突起部を嵌合させることによって、前記蓋部の開放を禁止することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の布接着装置。
【請求項5】
前記孔部及び前記突起部のうち少なくとも一方を稼働させる稼働手段を備え、
前記蓋開閉制御手段は、
前記稼働手段を制御することによって、前記孔部と前記突起部とが嵌合した状態又は嵌合しない状態となるように前記孔部及び前記突起部のうち少なくとも一方を稼働させることを特徴とする請求項4に記載の布接着装置。
【請求項6】
前記稼働手段はエアシリンダであることを特徴とする請求項5に記載の布接着装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の布接着装置の各処理手段としてコンピュータを駆動させるための圧力制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−222763(P2010−222763A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−74791(P2009−74791)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】