布接着装置、及び接着プログラム
【課題】安定的に布に接着剤を塗布し、布と布とを適切に接着することができる布接着装置、及び接着プログラムを提供する。
【解決手段】布接着装置は、ペダルの踏み込み量から、布の移送速度を特定する(S13)。布接着装置は、作業者が予め設定した接着剤の厚さ、ノズルの吐出口の幅、及び移送速度から、ギアポンプの回転速度を特定する(S14)。布接着装置は、ギアポンプの回転速度が、ギアポンプを駆動するモータが許容できる最大の回転速度を超えた場合(S19:YES)、作業者が設定した接着剤の厚さで布に接着剤を塗布できるように、ギアポンプ、上移送ローラ及び下移送ローラの回転速度を修正する(S21,S23)。ギアポンプの回転速度は、モータが許容できる最大の回転速度に修正するので、ギアポンプは安定的に駆動し、接着剤は安定的にノズルから吐出する(S41)。
【解決手段】布接着装置は、ペダルの踏み込み量から、布の移送速度を特定する(S13)。布接着装置は、作業者が予め設定した接着剤の厚さ、ノズルの吐出口の幅、及び移送速度から、ギアポンプの回転速度を特定する(S14)。布接着装置は、ギアポンプの回転速度が、ギアポンプを駆動するモータが許容できる最大の回転速度を超えた場合(S19:YES)、作業者が設定した接着剤の厚さで布に接着剤を塗布できるように、ギアポンプ、上移送ローラ及び下移送ローラの回転速度を修正する(S21,S23)。ギアポンプの回転速度は、モータが許容できる最大の回転速度に修正するので、ギアポンプは安定的に駆動し、接着剤は安定的にノズルから吐出する(S41)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布と布を接着する布接着装置、及び接着プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
布接着装置は、針と縫糸で布を縫製する代わりに、接着剤で布と布を接着するものである。縫糸で布と布とを縫製した場合、縫糸が布表面に現れ、凹凸が発生する。布接着装置は、布と布を接着剤で接着することで、布表面に発生する凹凸を無くすことが可能である。布接着装置による加工後の布の表面は平滑である。故に、布接着装置は、肌に触れて不快感のない衣服等を作製することが可能である。
【0003】
特許文献1に記載した布接着装置は、布に塗布する接着剤の厚さ、及び、ノズルのうち接着剤を吐出する吐出口の幅を作業者が設定する。布接着装置は、作業者がペダルを踏み込んだ場合のペダルの調節量から、布の移送速度を特定する。布接着装置は、ノズルから吐出する接着剤の単位時間当たりの量を、次式によって算出する。
接着剤の単位時間当たりの量(m3/s)=布の移送速度(m/s)×接着剤の厚さ(m)×吐出口の幅(m)
【0004】
布接着装置は、算出した量の接着剤をノズルから吐出するために必要なギアポンプの回転速度を決定する。布接着装置は、ギアポンプを駆動するモータが、決定した回転速度で回転するように制御する。ギアポンプは、算出した量の接着剤をノズルに供給し、ノズルは、算出した量の接着剤を吐出する。故に布接着装置は、作業者が設定した塗布厚の接着剤を布に塗布することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−180487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ギアポンプを駆動するモータの能力には限界がある。このため、モータの能力を超える回転速度でモータが回転するように設定すると、モータの駆動状態が不安定となる可能性がある。この場合、布に付着する接着剤の厚さにばらつきが生じて不安定となり、布接着装置は、布と布を適切に接着することができないという問題点がある。
【0007】
本発明の目的は、安定的に布に接着剤を塗布し、布と布を適切に接着することができる布接着装置、及び接着プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一態様に係る布接着装置は、接着剤を布に吐出する吐出口を備えたノズルと、前記ノズルに前記接着剤を供給する供給手段と、前記布を押圧して移送する移送手段と、前記布に塗布する前記接着剤の厚さである塗布厚、前記吐出口における前記布の移送方向と交差する方向の幅である吐出幅、及び、前記移送手段が移送する前記布の速度である移送速度を取得する第一取得手段と、前記第一取得手段において取得した前記移送速度で前記布を移送し、且つ前記第一取得手段において取得した前記塗布厚で前記接着剤を前記布に塗布するために必要な前記供給手段の駆動条件である第一駆動条件で前記供給手段を駆動できるか否かを判断する第一判断手段と、前記第一判断手段において、前記第一駆動条件で前記供給手段を駆動できないと判断した場合に、前記第一駆動条件、及び、前記移送速度で前記布を移送するために必要な前記移送手段の駆動条件である第二駆動条件のうち少なくとも一方を修正する修正手段と、前記修正手段において前記第一駆動条件を修正した場合に、修正した前記第一駆動条件で前記供給手段を駆動制御し、前記第二駆動条件を修正した場合に、修正した前記第二駆動条件で前記移送手段を駆動制御する駆動制御手段とを備えている。
【0009】
第一態様によれば、布接着装置は、修正した第一駆動条件に基づいて供給手段を安定的に駆動し、接着剤をノズルから吐出できる。布接着装置は、布に塗布した接着剤の厚さを安定化できるので、布と布とを適切に接着することができる。また布接着装置は、修正した第二駆動条件に基づいて移送手段を駆動することで、第一駆動条件で供給手段を駆動できない場合でも、所望する厚さの接着剤を布に塗布することができる。故に布接着装置は、最適な厚さで接着剤を布に塗布し、布と布を確実に接着することができる。
【0010】
また第一態様において、前記供給手段は、回転駆動することで前記接着剤を送り出すギアポンプを備え、前記移送手段は、回転駆動することで前記布を移送するローラを備え、前記第一駆動条件は、前記移送速度で前記布を移送し、且つ前記塗布厚で前記接着剤を前記布に塗布するために必要な前記ギアポンプの回転速度であるギア速度であり、前記第二駆動条件は、前記移送速度で前記布を移送するために必要な前記ローラの回転速度であるローラ速度であり、前記修正手段は、前記ギア速度及び前記ローラ速度のうち少なくとも一方を修正してもよい。布接着装置は、修正したギア速度でキアポンプを安定的に駆動することができる。故に布接着装置は、ギアポンプがノズルに供給する接着剤の量を安定化できる。また布接着装置は、ローラによって布を押圧しながら移送し、布と布とを接着することができる。さらに布接着装置は、修正したローラ速度でローラを駆動することで、最適な厚さの接着剤を布に塗布することができる。
【0011】
また第一態様において、前記塗布厚及び前記移送速度のうちいずれを優先するかを判断する第二判断手段を備え、前記修正手段は、前記第二判断手段において前記塗布厚を優先すると判断した場合に、少なくとも前記ローラ速度を修正し、前記移送速度を優先すると判断した場合に、少なくとも前記ギア速度を修正してもよい。布接着装置は、布や接着剤の種類、接着作業の内容等に応じて、塗布厚及び移送速度のうちいずれを優先するかを選択することができる。故に作業者は、塗布厚を優先することで布の仕上がりを思い通りに調整するか、又は、移送速度を優先することで効率的に接着作業を進めるかを選択することができる。
【0012】
また第一態様において、前記ギアポンプが許容できる最大の回転速度である最大ギア速度を取得する第二取得手段を備え、前記第二判断手段において、前記塗布厚を優先すると判断した場合に、前記第一判断手段は、前記第二取得手段において取得した前記最大ギア速度で前記ギアポンプが駆動し、且つ前記塗布厚で前記接着剤を前記布に塗布するために必要な前記ローラの回転速度である最大ローラ速度よりも、前記ローラ速度の方が大きい場合に、前記ギア速度で前記ギアポンプを駆動できないと判断し、前記修正手段は、前記ギア速度を前記最大ギア速度に修正し、且つ、前記ローラ速度を前記最大ローラ速度に修正してもよい。布接着装置は、ギア速度を最大ギア速度に修正するので、ギアポンプが許容できる駆動条件でギアポンプを駆動することができる。故に布接着装置は、ギアポンプをより安定的に駆動することができる。また布接着装置は、ギア速度の修正に加えてローラ速度を最大ローラ速度に修正することで、塗布厚の接着剤を確実に布に塗布することができる。
【0013】
また第一態様において、前記ギアポンプが許容できる最大の回転速度である最大ギア速度を取得する第二取得手段を備え、前記第二判断手段において、前記移送速度を優先すると判断した場合に、前記第一判断手段は、前記第二取得手段において取得した前記最大ギア速度よりも前記ギア速度の方が大きい場合に、前記ギア速度で前記ギアポンプを駆動できないと判断し、前記修正手段は、前記ギア速度を前記最大ギア速度に修正してもよい。布接着装置は、ギア速度を最大ギア速度に修正するので、ギアポンプが許容できる駆動条件でギアポンプを駆動することができる。故に布接着装置は、ギアポンプをより安定的に駆動することができる。また布接着装置は、ローラ速度を修正しないので、作業者は布を思い通りの移送速度で移送することができる。故に布接着装置は、接着作業を効率的に行うことができる。
【0014】
本発明の第二態様に係る接着プログラムは、接着剤を布に吐出する吐出口を備えたノズルと、前記ノズルに前記接着剤を供給する供給手段と、前記布を押圧して移送する移送手段とを備えた布接着装置のコンピュータに実行させる接着プログラムであって、前記コンピュータに、前記布に塗布する前記接着剤の厚さである塗布厚、前記吐出口における前記布の移送方向と交差する方向の幅である吐出幅、及び、前記移送手段が移送する前記布の速度である移送速度を取得する第一取得ステップと、前記第一取得ステップにおいて取得した前記移送速度で前記布を移送し、且つ前記第一取得ステップにおいて取得した前記塗布厚で前記接着剤を前記布に塗布するために必要な前記供給手段の駆動条件である第一駆動条件で前記供給手段を駆動できるか否かを判断する第一判断ステップと、前記第一判断ステップにおいて、前記第一駆動条件で前記供給手段を駆動できないと判断した場合に、前記第一駆動条件、及び、前記移送速度で前記布を移送するために必要な前記移送手段の駆動条件である第二駆動条件のうち少なくとも一方を修正する修正ステップと、前記修正ステップにおいて前記第一駆動条件を修正した場合に、修正した前記第一駆動条件で前記供給手段を駆動制御し、前記第二駆動条件を修正した場合に、修正した前記第二駆動条件で前記移送手段を駆動制御する駆動制御ステップとを実行させる。
【0015】
第二態様によれば、布接着装置は、修正した第一駆動条件に基づいて供給手段を安定的に駆動し、接着剤をノズルから吐出できる。布接着装置は、布に塗布した接着剤の厚さを安定化できるので、布と布とを適切に接着することができる。また布接着装置は、修正した第二駆動条件に基づいて移送手段を駆動することで、第一駆動条件で供給手段を駆動できない場合でも、所望する厚さの接着剤を布に塗布することができる。故に布接着装置は、最適な厚さで接着剤を布に塗布し、布と布とを確実に接着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】布接着装置1全体を前方斜め上から見た斜視図である。
【図2】接着機2を前方斜め上から見た斜視図である。
【図3】接着機2の左側面図である。
【図4】接着機2の内部構造の透視図である。
【図5】図2におけるI−I線矢視方向屈曲断面図である。
【図6】布接着装置1の電気的構成を示すブロック図である。
【図7】駆動条件テーブル211を示す図である。
【図8】パラメータテーブル991を示す図である。
【図9】接着作業時のノズル45近傍の斜視図である。
【図10】接着処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の布接着装置1について、図面を参照して説明する。これらの図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものである。記載されている装置の構成、各種処理のフローチャート等は、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。以下、図2の上側、下側、右斜め上側、左斜め下側、右斜め下側、左斜め上側を、夫々、接着機2の上側、下側、右側、左側、前側、後側と定義して説明する。
【0018】
図1を参照し、布接着装置1の構成について説明する。布接着装置1は、接着機2、及びテーブル220を備えている。テーブル220は、接着機2を固定する。接着機2は、対向配置した二層の布の間に接着剤を付着し、布を押圧し移送する。二層の布は、接着機2の前述した動作により互いに接着する。接着機2の構成の詳細については後述する。
【0019】
テーブル220は、接着機2右側に操作パネル210を備える。操作パネル210は、液晶表示部208、及び複数のキー209を備える。液晶表示部208は、各種情報を表示する。キー209は、各種入力をするものである。作業者は、液晶表示部208を見ながらキー209を操作することで、布接着装置1の各種動作を設定する。テーブル220は、下端にペダル206を回動可能に支持している。作業者は、ペダル206の踏み込み量を調節することで、布の移送速度を調節することができる。テーブル220は、接着機2と対向する位置に制御ボックス3を備えている。制御ボックス3は、CPU201(図6参照)等を実装した制御基板を格納する。制御ボックス3は、接着機2、操作パネル210、及びペダル206と電気的に接続する。
【0020】
図2及び図3を参照し、接着機2の構成について説明する。接着機2は、台座部11、脚柱部12、及びアーム部13を備えている。台座部11は、左右方向を長手方向とする略直方体状である。脚柱部12は、台座部11右端から鉛直方向に延びている。アーム部13は、脚柱部12上端に接続し、脚柱部12左側面の左方に突出している。台座部11は、脚柱部12を支持する土台として機能する。脚柱部12は、アーム部13を支持する。アーム部13左端部は、前方から順に、ポンプケース31、貯蔵室26、梁部14を支持している。
【0021】
ポンプケース31は、第一ポンプケース32、及び第二ポンプケース33を備えている。第一ポンプケース32は、アーム部13左側面に固定している。第一ポンプケース32は、内部にギアポンプ35(図4、図5参照)を備える。ギアポンプ35は、接着剤をノズル45に供給する。第二ポンプケース33は、第一ポンプケース32左下端面から下方に延びている。第二ポンプケース33は、左側に軸部を備えている。該軸部は、支持部40上端部右側に接続し、支持部40を揺動可能に支持する。ポンプケース31は、後述する第一流路51、第二流路52(図5参照)を備えている。第一流路51は、接着剤を貯蔵室26からギアポンプ35へ導く。第二流路52は、接着剤をギアポンプ35から支持部40へ導く。
【0022】
支持部40の形状は、上下方向を長手方向とする略直方体状である。支持部40下端と台座部11の間に僅かな隙間が存在する。支持部40は、下端にノズル45を備えている。ノズル45は、支持部40から左側に延びている。支持部40は、上端に駆動伝達部43を備えている。駆動伝達部43は、エアシリンダ41の可動部42を支持する。支持部40は、エアシリンダ41の可動部42が前後に移動すると、上端の軸部を中心軸として前後方向(図3の矢印A方向)に揺動する。ノズル45は、支持部40の揺動に伴って、布の接着作業を行う場合の位置と保守を行う場合の位置に移動する。
【0023】
ノズル45は円筒形状である。ノズル45は、接着剤を吐き出す吐出口を備えている。作業者が布の接着作業を行う場合、吐出口は台座部11と対向する。作業者は、接着作業を行う場合、対向配置した2層の布の間にノズル45を挿入する。ギアポンプ35は、支持部40内の第三流路53(図5参照)を介して、接着剤をノズル45に供給する。ノズル45は、吐出口から布に接着剤を吐き出す。接着剤は、ノズル45の下方に位置する布の表面に付着する。
【0024】
貯蔵室26は、上下方向を長手方向とする略直方体状である。貯蔵室26は、アーム部13左側、且つポンプケース31後方部分から上方に延びている。貯蔵室26は、本体部27、蓋部28、及び蓋軸部29を備える。本体部27の形状は、上部が開口した有底筒状である。蓋部28は、本体部27上部開口を覆う。本体部27は、上端に蓋軸部29を有する。蓋軸部29は、蓋部28を開閉可能に支持する。貯蔵室26は、接着剤を本体部27内部に貯蔵する。貯蔵室26は貯蔵した接着剤を必要に応じてノズル45に供給する。
【0025】
梁部14は、本体部15、ばね支持部16、及び柱部17を備えている。本体部15は、アーム部13の左側後端部から左方へ水平方向に延びる部材である。ばね支持部16は板状であり、本体部15の左後端部から前方へ水平方向に延びる。柱部17は、水平面に対して約45度の角度で、本体部15から前方斜め下方へ延びている。柱部17下端部は台座部11と離れている。
【0026】
ばね支持部16は、前方端部に穴を有する。ばね支持部16は、軸部19を上下動可能に支持する。軸部19は、ばね18に挿通してある。軸部19上端部分は、ばね支持部16の穴に挿入してある。
【0027】
柱部17は、下端部分の左側に、左右方向に延びる軸部を有している。該軸部は、ローラ保持部20後端部21を支持している。ローラ保持部20は、該軸部を揺動中心として、その前端部22を上下方向に揺動する。本体部15は、ばね支持部16右側にエアシリンダ41を備えている。エアシリンダ41は、支持部40の位置を切り替えるものである。
【0028】
ローラ保持部20前端部22は、円柱状の上移送ローラ24を回転可能に支持している。上移送ローラ24は、ノズル45後方近傍にある。ローラ保持部20は、前方上面に軸支持部23を有する。軸支持部23は、軸部19を支持している。ばね18は、ばね支持部16と軸部19の下部の間に介在する。ばね18は、軸部19を下方へ付勢することで、軸部19が接続するローラ保持部20を下方へ付勢する。
【0029】
図4を参照し、接着機2の内部構造について説明する。接着機2は、内部にモータ91、92、93等を備える。モータ91は、回転軸121を介して回転駆動力をギアポンプ35に伝達することで、ギアポンプ35を駆動する。ギアポンプ35は、駆動ギア36、及び従動ギア37を備えている。駆動ギア36は、回転軸121と共に回転する。従動ギア37は、駆動ギア36と噛合する。駆動ギア36と従動ギア37は、接着剤をノズル45に供給する。
【0030】
モータ92は、回転軸126、127、128、及びベルト129、130を介して、回転駆動力を上移送ローラ24に伝達することで、上移送ローラ24を駆動する。上移送ローラ24は、モータ92が回転することで回転する。モータ93は、回転軸141、及びベルト142を介して、回転駆動力を下移送ローラ25に伝達することで、下移送ローラ25を駆動する。下移送ローラ25は円柱形状であり、回転軸141に固定している。下移送ローラ25は、上移送ローラ24下方、且つ台座部11内に位置する。下移送ローラ25は、モータ93が回転することで回転する。
【0031】
図5を参照し、接着剤の流路について説明する。貯蔵室26の本体部27は、周壁と底壁を有する。本体部27は、周壁と底壁が囲む空間に接着剤を貯蔵する。第一流路51は、貯蔵室26側の周壁からポンプケース31側へ延びる貫通穴である。第一流路51は、本体部27が貯蔵する接着剤をギアポンプ35に導く通路である。第一流路51は、貯蔵室26からポンプケース31の第一ポンプケース32内の中央に至る。第一流路51は、第一ポンプケース32の中央部分で右方に直角に曲折し、駆動ギア36と従動ギア37とが噛み合う部分の上側に至る。
【0032】
第二流路52は、ギアポンプ35を通過した接着剤を支持部40の第三流路53に導く通路である。第二流路52は、駆動ギア36と従動ギア37が噛み合う部分の下端から左方に延びる。左方に延びた第二流路52はその左端において下方へ曲折し、その下端において左方へ曲折し、支持部40の上端部の内部へ至る。第三流路53は、第二流路52を流れる接着剤をノズル45に導く通路である。第三流路53は、支持部40内で上端部から下端部まで延び、ノズル45に接続する。
【0033】
図6を参照し、布接着装置1の電気的構成について説明する。布接着装置1は、CPU201、ROM202、RAM203、記憶装置99を備えている。CPU201は、受信処理と制御処理とを実行する。受信処理は、キー209、ペダル206等からの入力情報を受信する処理である。制御処理は、モータ等を制御する処理である。ROM202は、CPU201が実行する接着プログラム、及び各種初期設定パラメータ等を記憶する。RAM203は、タイマ値、カウンタ値、フラグ、及び、後述する駆動条件テーブル211を記憶する。記憶装置99は、後述するパラメータテーブル991を記憶する。CPU201は、ROM202、RAM203、記憶装置99に夫々電気的に接続している。
【0034】
ペダル206はCPU201と電気的に接続している。作業者は、布の移送速度を調節する場合にペダル206を使用する。CPU201はペダル206の踏み込み量を認識することができる。キー209はCPU201と電気的に接続している。CPU201は、作業者によるキー209の押下状態を認識する。CPU201は、認識したキー209の押下状態に基づいて、作業者が入力した情報を記憶装置99に記憶する。表示駆動ドライバ205はCPU201と電気的に接続している。表示駆動ドライバ205は液晶表示部208と電気的に接続している。CPU201は、表示駆動ドライバ205を介して所望の情報を液晶表示部208に表示する。
【0035】
エア駆動ドライバ204はCPU201と電気的に接続している。エアシリンダ41は、エア駆動ドライバ204に電気的に接続している。CPU201は、エア駆動ドライバ204を介して、エアシリンダ41へ送り込む空気の圧力を制御する。モータ駆動ドライバ207はCPU201と電気的に接続している。モータ91、92、93は、夫々モータ駆動ドライバ207に電気的に接続している。CPU201は、モータ駆動ドライバ207を介してモータ91、92、93を制御する。
【0036】
図7を参照し、RAM203に記憶した駆動条件テーブル211について説明する。駆動条件テーブル211は、ギア速度及びローラ速度を記憶する。ギア速度は、接着作業時における駆動ギア36及び従動ギア37の回転速度である。ローラ速度は、接着作業時における上移送ローラ24及び下移送ローラ25の回転速度である。布接着装置1は、接着作業時、駆動条件テーブル211に記憶したギア速度で駆動ギア36及び従動ギア37が回転するように、モータ91を駆動制御する。布接着装置1は、接着作業時、駆動条件テーブル211に記憶したローラ速度で上移送ローラ24及び下移送ローラ25が回転するように、モータ92、93を駆動制御する。
【0037】
図8を参照し、パラメータテーブル991について説明する。パラメータテーブル991は、塗布厚、吐出幅、最大ギア速度、及び動作モードを記憶する。塗布厚は、布に塗布する接着剤の厚さである。吐出幅は、ノズル45の吐出口における布の移送方向と交差する方向(左右方向)の幅である。最大ギア速度は、駆動ギア36及び従動ギア37を駆動するモータ91が回転可能な最大の回転速度である。動作モードは、布接着装置1が接着作業を実行する場合に優先する動作種別である(詳細は後述する。)。作業者は、接着作業を行う前に、キー209を介して、塗布厚、吐出幅、最大ギア速度、及び動作モードを入力する。CPU201は、キー209を介して作業者が入力した塗布厚、吐出幅、最大ギア速度、及び動作モードを、パラメータテーブル991に記憶する。
【0038】
図9を参照し、上布151と下布152を接着する接着作業時における接着機2の動作について説明する。接着作業を行う場合、接着機2は、エアシリンダ41(図2参照)の可動部42を前方に移動して、支持部40を使用位置に移動する。作業者は、上布151と下布152を重ねて配置する。作業者は、布の接着部分にノズル45を配置する。上移送ローラ24と下移送ローラ25は、ノズル45の後方で上布151と下布152を挟持する。
【0039】
作業者がペダル206(図1参照)を踏み込むと、ギアポンプ35(図4、図5参照)は回転する。接着剤は、流路51〜53(図5参照)を経由してノズル45の吐出口から下方へ吐出し、下布152に付着する。上移送ローラ24と下移送ローラ25は、上布151と下布152とを前方から後方へ移送する方向に回転する。ばね18は、上移送ローラ24を下方へ付勢している。故に、上移送ローラ24と下移送ローラ25は、接着剤が付着した下布152に上布151を押し付けて接着する。
【0040】
布接着装置1は、ペダル206の踏み込み量に応じてローラ速度を決定し、決定したローラ速度で上移送ローラ24及び下移送ローラ25を回転する。これによって布接着装置1は、ペダル206の踏み込み量に応じた移送速度で布を移送する。布接着装置1は、パラメータテーブル991に記憶した塗布厚の接着剤を布に塗布するために、次の手順でギア速度を決定する。はじめに布接着装置1は、ペダル206の踏み込み量に応じた布の移送速度と、パラメータテーブル991に記憶した塗布厚及び吐出幅から、ノズル45から吐出する接着剤の単位時間当たりの量を、次の(1)式によって算出する。
接着剤の単位時間当たりの量(m3/s)=布の移送速度(m/s)×塗布厚(m)×吐出幅(m)・・・(1)
続いて布接着装置1は、算出した量の接着剤をノズル45に供給するために必要な駆動ギア36及び従動ギア37のギア速度を決定する。布接着装置1は、決定したギア速度で駆動ギア36及び従動ギア37を回転する。これによって布接着装置1は、パラメータテーブル991に記憶した塗布厚の接着剤を布に塗布する。
【0041】
決定したギア速度が、パラメータテーブル991に記憶した最大ギア速度を超える場合がある。このギア速度で駆動ギア36及び従動ギア37が回転するようにモータ91を駆動制御した場合、モータ91の回転速度は不安定になる。故に、ギアポンプ35の駆動状態は不安定となり、ギアポンプ35は接着剤をノズル45に安定的に供給できなくなる可能性がある。これに対して布接着装置1は、決定したギア速度が最大ギア速度を超える場合、ギア速度を最大ギア速度に落とす。これによって布接着装置1は、ギアポンプ35を安定的に駆動し、所望する量の接着剤をノズル45に供給する。
【0042】
布接着装置1は、パラメータテーブル991に記憶した動作モードに応じて動作することで、異なる手法で接着作業を行うことができる。動作モードには、厚さ優先モードと速度優先モードとがある。布接着装置1は、厚さ優先モードで動作する場合、パラメータテーブル991に記憶した塗布厚で布に接着剤を塗布することを優先する。布接着装置1は、決定したギア速度が最大ギア速度を超える場合、ギア速度を最大ギア速度に落とし、且つ、ローラ速度を落とす。これによって布接着装置1は、ギア速度を落とすことで接着剤の吐出量が減った場合でも、布の移送速度を遅くすることで、布に塗布する接着剤の厚さが塗布厚となるようにしている。
【0043】
一方布接着装置1は、速度優先モードで動作する場合、ペダル206の踏み込み量に応じた移送速度で布を移送することを優先する。布接着装置1は、ギア速度が最大ギア速度を超える場合、ギア速度を最大ギア速度に落とし、ローラ速度はそのまま維持する。これによって布接着装置1は、ペダル206の踏み込み量に応じた移送速度で布を移送し続けることができる。なお、ギア速度を落とすことで接着剤の吐出量が減っているが、布の移送速度は変化していないので、布に塗布する接着剤の厚さは、塗布厚よりも薄くなる。
【0044】
図10を参照し、布接着装置1の接着処理について説明する。CPU201は、作業者が接着作業を開始する操作を、キー209を介して入力した場合に、接着処理を起動し実行する。
【0045】
接着処理が起動すると、CPU201は、パラメータテーブル991に記憶した塗布厚、吐出幅、及び最大ギア速度を取得する(S11)。CPU201は、作業者が踏み込んだペダル206の踏み込み量に応じてローラ速度を特定する(S12)。CPU201は、特定したローラ速度を駆動条件テーブル211に記憶する。例えばCPU201は、ローラ速度を以下の手順で決定する。なお、上移送ローラ24及び下移送ローラ25の径は同一であり、且つ、モータ92とモータ93とで、回転可能な最大の回転速度は同一であるとする。はじめにCPU201は、ペダル206を最大限踏み込んだ場合の踏み込み量に対する、実際に作業者が踏み込んだペダル206の踏み込み量の割合を算出する。次にCPU201は、上移送ローラ24及び下移送ローラが回転可能な最大の回転速度を特定する。なお上移送ローラ24及び下移送ローラ25が回転可能な最大の回転速度は、モータ92、93が回転可能な最大の回転速度に相当する。CPU201は、上移送ローラ24及び下移送ローラ25が回転可能な最大の回転速度と、算出した割合とを乗算する。CPU201は、算出結果を、ローラ速度として決定する。なお、ローラ速度の決定方法はこの方法に限定されない。
【0046】
CPU201は、決定したローラ速度で上移送ローラ24及び下移送ローラ25を回転した場合の布の移送速度を取得する(S13)。CPU201は、S11で取得した塗布厚及び吐出幅、及び、S13で取得した移送速度を(1)式に代入することで、ノズル45から吐出する接着剤の単位時間当たりの量を算出する。CPU201は、算出した量の接着剤をノズル45に供給するために必要なギア速度を特定する(S14)。CPU201は、特定したギア速度を駆動条件テーブル211に記憶する。
【0047】
CPU201は、パラメータテーブル991に記憶した動作モードが厚さ優先モードであるか速度優先モードであるかを判断する(S15)。CPU201は、動作モードが厚さ優先モードである場合(S15:YES)、最大ギア速度で駆動ギア36及び従動ギア37が回転した場合にノズル45に供給する接着剤の単位時間あたりの量を算出する。以下、最大ギア速度でギアポンプ35が回転した場合にノズル45に供給する接着剤の単位時間当たりの量を「最大供給量」ともいう。CPU201は、パラメータテーブル991に記憶した塗布厚及び吐出幅と最大供給量を(1)式に代入することで、布の移送速度を算出する。CPU201は、算出した移送速度で布を移送するために必要なローラ速度を特定する(S17)。以下、塗布厚、吐出幅、及び最大供給量から算出した移送速度で布を移送するために必要なローラ速度を「最大ローラ速度」ともいう。最大ローラ速度は、パラメータテーブル991に記憶した塗布厚の接着剤を安定的に塗布する場合に取り得る最大のローラ速度に相当する。CPU201は、S17で特定した最大ローラ速度、及びS12で特定したローラ速度を、液晶表示部208に表示する(S18)。ユーザは、最大ローラ速度及びローラ速度を認識できる。
【0048】
CPU201は、S12で特定して駆動条件テーブル211に記憶したローラ速度が、S17で特定した最大ローラ速度よりも大きいか否かを判断する(S19)。CPU201は、ローラ速度が最大ローラ速度以下である場合(S19:NO)、駆動条件テーブル211に記憶したギア速度は、最大ギア速度以下の値であることになる。故に、駆動条件テーブル211に記憶したギア速度で駆動ギア36及び従動ギア37を回転した場合に、布接着装置1は、パラメータテーブル991に記憶した塗布厚で安定的に接着剤を塗布できる。
【0049】
CPU201は、S14で特定して駆動条件テーブル211に記憶したギア速度を修正せず、そのまま維持する(S25)。CPU201は、S12で特定して駆動条件テーブル211に記憶したローラ速度を修正せず、そのまま維持する(S27)。CPU201は、駆動条件テーブル211に記憶したギア速度で駆動ギア36及び従動ギア37が回転するように、モータ91を駆動制御する。CPU201は、駆動条件テーブル211に記憶したローラ速度で上移送ローラ24及び下移送ローラ25が回転するように、モータ92、93を駆動制御する(S41)。布接着装置1は、ペダル206の踏み込み量に応じた移送速度で布を移送し、パラメータテーブル991に記憶した塗布厚の接着剤を布に塗布する。処理はS12に戻る。
【0050】
CPU201は、S12で特定して駆動条件テーブル211に記憶したローラ速度が、S17で特定した最大ローラ速度よりも大きい場合(S19:YES)、駆動条件テーブル221に記憶したギア速度は、最大ギア速度を超える値であるということになる。故に、駆動条件テーブル211に記憶したギア速度で駆動ギア36及び従動ギア37を回転した場合、駆動ギア36及び従動ギア37が安定的に駆動せず、布に塗布する接着剤の厚さが不安定となる可能性がある。
【0051】
前述の場合CPU201は、駆動条件テーブル211に記憶したギア速度を最大ギア速度に修正することで(S21)、ギア速度を落とす。CPU201は、駆動条件テーブル211に記憶したローラ速度を最大ローラ速度に修正することで(S23)、ローラ速度を落とす。CPU201は、修正したギア速度で駆動ギア36及び従動ギア37が回転するように、モータ91を駆動制御する。CPU201は、修正したローラ速度で上移送ローラ24及び下移送ローラ25が回転するように、モータ92、93を駆動制御する(S41)。この場合、ノズル45から吐出する接着剤の単位時間あたりの量、移送速度、及び塗布厚は、(1)式の関係を満たす。故に布接着装置1は、ギアポンプ35を安定的に駆動し、且つ、パラメータテーブル991に記憶した塗布厚の接着剤を布に塗布することができる。このように厚さ優先モードでは、モータ91は安定して回転可能な回転速度の範囲内で回転し、ギアポンプ35を安定的に駆動する。また、ギア速度及びローラ速度を共に落とすことで、布接着装置1は、パラメータテーブル991に記憶した塗布厚で確実に接着剤を布に塗布している。処理はS12に戻る。
【0052】
CPU201は、S18で、ローラ速度及び最大ローラ速度を液晶表示部208に表示している。CPU201は、S23でローラ速度を修正した場合、液晶表示部208に表示したローラ速度を最大ローラ速度に修正する。故に、液晶表示部208に表示したローラ速度と最大ローラ速度とが一致する。ユーザは、接着剤の厚さを優先する為に布接着装置1がローラ速度を修正し、所望する厚さの接着剤が布に付着していることを認識できる。また、ユーザがペダル206を更に踏み込んでも、液晶表示部208に表示したローラ速度は最大ローラ速度以上にならないので、ユーザは、布の移送速度がペダル206の踏み込み量に依らず一定となっていることを認識できる。
【0053】
CPU201は、パラメータテーブル991に記憶した動作モードが速度優先モードである場合(S15:NO)、S14で特定して駆動条件テーブル211に記憶したギア速度が、最大ギア速度よりも大きいか否かを判断する(S33)。CPU201は、ギア速度が最大ギア速度以下である場合(S33:NO)、駆動条件テーブル211に記憶したギア速度を修正せず、そのまま維持する(S25)。S12で駆動条件テーブル211に記憶したローラ速度を修正せず、そのまま維持する(S27)。CPU201は、駆動条件テーブル211に記憶したギア速度及びローラ速度に基づいて、ギアポンプ35、上移送ローラ24、及び下移送ローラ25を回転する(S41)。布接着装置1は、パラメータテーブル991に記憶した塗布厚の接着剤を布に塗布することができる。処理はS12に戻る。
【0054】
CPU201は、S14で特定して駆動条件テーブル211に記憶したギア速度が、最大ギア速度よりも大きい場合(S33:YES)、該ギア速度で駆動ギア36及び従動ギア37を回転すると、回転速度が不安定となり、安定的に接着剤を布に塗布できない可能性がある。従ってCPU201は、駆動条件テーブル211に記憶したギア速度を最大ギア速度に修正することで(S35)、ギア速度を落とす。CPU201は、S12で駆動条件テーブル211に記憶したローラ速度は修正せず、そのまま維持する(S37)。CPU201は、修正したギア速度で駆動ギア36及び従動ギア37が回転するように、モータ91を駆動制御する。CPU201は、維持したローラ速度で上移送ローラ24及び下移送ローラ25が回転するように、モータ92、93を駆動制御する(S41)。ローラ速度は修正しないので、布接着装置1は、ペダル206の踏み込み量に応じた速度で布を移送する。このように速度優先モードでは、モータ91は安定して回転可能な回転速度の範囲内で回転し、ギアポンプ35を安定的に駆動する。またローラ速度はペダル206の踏み込み量に応じた速度で回転するので、作業者は、布を所望の移送速度で継続して移送し、接着作業を行うことができる。処理はS12に戻る。
【0055】
以上説明したように、布接着装置1は、修正したギア速度でギアポンプ35を安定的に回転し、接着剤をノズル45から安定的に吐出できる。故に布接着装置1は、布に塗布した接着剤の厚さを安定化できるので、布と布とを適切に接着して仕上がりを良好にすることができる。また布接着装置1は、厚さ優先モードで動作した場合、修正したローラ速度で上移送ローラ24及び下移送ローラ25を回転する。これによって布接着装置1は、ギア速度が最大ギア速度よりも大きい場合でも、所望する厚さの接着剤を布に塗布することができる。故に布接着装置1は、布と布とを確実に接着することができる。また布接着装置1は、速度優先モードで動作した場合、ローラ速度を維持するので、ペダル206の踏み込み量に応じた移送速度で布を移送することができる。故に作業者は、自在に布を操って効率的に接着作業を進めることができる。
【0056】
布接着装置1は、布や接着剤の種類に応じて、塗布厚及び移送速度のうちいずれを優先するかを選択することができる。故に作業者は、塗布厚を優先することで布の仕上がりを思い通りに調整するか、又は、移送速度を優先することで効率的に接着作業を進めるかを選択することができる。
【0057】
尚、図4のギアポンプ35が本発明の「供給手段」に相当し、上移送ローラ24及び下移送ローラ25が本発明の「移送手段」に相当する。図10のS11及びS13の処理を行うCPU201が本発明の「第一取得手段」に相当し、S19及びS33の処理を行うCPU201が本発明の「第一判断手段」に相当し、S21、S23、及びS35の処理を行うCPU201が本発明の「修正手段」に相当し、S41の処理を行うCPU201が本発明の「駆動制御手段」に相当する。駆動条件テーブル211に記憶したギア速度が本発明の「第一駆動条件」に相当し、駆動条件テーブル211に記憶したローラ速度が本発明の「第二駆動条件」に相当する。図10のS15の処理を行うCPU201が本発明の「第二判断手段」に相当し、S11の処理を行うCPU201が本発明の「第二取得手段」に相当する。図10のS11及びS13の処理が本発明の「第一取得ステップ」に相当し、S19及びS33の処理が本発明の「第一判断ステップ」に相当し、S21、S23、及びS35の処理が本発明の「修正ステップ」に相当し、S41の処理が本発明の「駆動制御ステップ」に相当する。
【0058】
なお本発明は前述の実施形態に限定されず、種々の変更が可能である。前述の実施形態では、ギアポンプ35を回転するモータ91の回転可能な最大の回転速度を最大ギア速度としたが、本発明はこれに限定されない。例えば最大ギア速度は、モータ91が安定して回転できる最大の回転速度としてもよい。
【0059】
前述の実施形態では、厚さ優先モードで動作する場合、ローラ速度が最大ローラ速度よりも大きくなるか否かを判断することで、ギア速度が最大ギア速度よりも大きくなるか否かを判断していた(図10、S19参照)。しかしながら本発明はこれに限定されない。布接着装置1は、ギア速度が最大ギア速度よりも大きくなるか否かを直接判断してもよい。
【0060】
厚さ優先モードで動作する場合であって、ローラ速度が最大ローラ速度よりも大きくなると判断した場合、最大ギア速度よりも小さい回転速度でギア速度を修正してもよい。また最大ローラ速度よりも小さい回転速度でローラ速度を修正してもよい。また速度優先モードで動作する場合であって、ギア速度が最大ギア速度よりも大きくなると判断した場合、最大ギア速度よりも小さい回転速度でギア速度を修正してもよい。
【0061】
布の移送速度は、ペダル206の踏み込み量に基づいて定めなくともよい。例えば作業者は、キー209を介して移送速度を直接入力してもよい。布接着装置1は、作業者が入力した移送速度に基づいて、ギア速度及びローラ速度を決定してもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 布接着装置
2 接着機
24 上移送ローラ
25 下移送ローラ
35 ギアポンプ
36 駆動ギア
37 従動ギア
45 ノズル
99 記憶装置
203 RAM
211 駆動条件テーブル
991 パラメータテーブル
【技術分野】
【0001】
本発明は、布と布を接着する布接着装置、及び接着プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
布接着装置は、針と縫糸で布を縫製する代わりに、接着剤で布と布を接着するものである。縫糸で布と布とを縫製した場合、縫糸が布表面に現れ、凹凸が発生する。布接着装置は、布と布を接着剤で接着することで、布表面に発生する凹凸を無くすことが可能である。布接着装置による加工後の布の表面は平滑である。故に、布接着装置は、肌に触れて不快感のない衣服等を作製することが可能である。
【0003】
特許文献1に記載した布接着装置は、布に塗布する接着剤の厚さ、及び、ノズルのうち接着剤を吐出する吐出口の幅を作業者が設定する。布接着装置は、作業者がペダルを踏み込んだ場合のペダルの調節量から、布の移送速度を特定する。布接着装置は、ノズルから吐出する接着剤の単位時間当たりの量を、次式によって算出する。
接着剤の単位時間当たりの量(m3/s)=布の移送速度(m/s)×接着剤の厚さ(m)×吐出口の幅(m)
【0004】
布接着装置は、算出した量の接着剤をノズルから吐出するために必要なギアポンプの回転速度を決定する。布接着装置は、ギアポンプを駆動するモータが、決定した回転速度で回転するように制御する。ギアポンプは、算出した量の接着剤をノズルに供給し、ノズルは、算出した量の接着剤を吐出する。故に布接着装置は、作業者が設定した塗布厚の接着剤を布に塗布することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−180487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ギアポンプを駆動するモータの能力には限界がある。このため、モータの能力を超える回転速度でモータが回転するように設定すると、モータの駆動状態が不安定となる可能性がある。この場合、布に付着する接着剤の厚さにばらつきが生じて不安定となり、布接着装置は、布と布を適切に接着することができないという問題点がある。
【0007】
本発明の目的は、安定的に布に接着剤を塗布し、布と布を適切に接着することができる布接着装置、及び接着プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一態様に係る布接着装置は、接着剤を布に吐出する吐出口を備えたノズルと、前記ノズルに前記接着剤を供給する供給手段と、前記布を押圧して移送する移送手段と、前記布に塗布する前記接着剤の厚さである塗布厚、前記吐出口における前記布の移送方向と交差する方向の幅である吐出幅、及び、前記移送手段が移送する前記布の速度である移送速度を取得する第一取得手段と、前記第一取得手段において取得した前記移送速度で前記布を移送し、且つ前記第一取得手段において取得した前記塗布厚で前記接着剤を前記布に塗布するために必要な前記供給手段の駆動条件である第一駆動条件で前記供給手段を駆動できるか否かを判断する第一判断手段と、前記第一判断手段において、前記第一駆動条件で前記供給手段を駆動できないと判断した場合に、前記第一駆動条件、及び、前記移送速度で前記布を移送するために必要な前記移送手段の駆動条件である第二駆動条件のうち少なくとも一方を修正する修正手段と、前記修正手段において前記第一駆動条件を修正した場合に、修正した前記第一駆動条件で前記供給手段を駆動制御し、前記第二駆動条件を修正した場合に、修正した前記第二駆動条件で前記移送手段を駆動制御する駆動制御手段とを備えている。
【0009】
第一態様によれば、布接着装置は、修正した第一駆動条件に基づいて供給手段を安定的に駆動し、接着剤をノズルから吐出できる。布接着装置は、布に塗布した接着剤の厚さを安定化できるので、布と布とを適切に接着することができる。また布接着装置は、修正した第二駆動条件に基づいて移送手段を駆動することで、第一駆動条件で供給手段を駆動できない場合でも、所望する厚さの接着剤を布に塗布することができる。故に布接着装置は、最適な厚さで接着剤を布に塗布し、布と布を確実に接着することができる。
【0010】
また第一態様において、前記供給手段は、回転駆動することで前記接着剤を送り出すギアポンプを備え、前記移送手段は、回転駆動することで前記布を移送するローラを備え、前記第一駆動条件は、前記移送速度で前記布を移送し、且つ前記塗布厚で前記接着剤を前記布に塗布するために必要な前記ギアポンプの回転速度であるギア速度であり、前記第二駆動条件は、前記移送速度で前記布を移送するために必要な前記ローラの回転速度であるローラ速度であり、前記修正手段は、前記ギア速度及び前記ローラ速度のうち少なくとも一方を修正してもよい。布接着装置は、修正したギア速度でキアポンプを安定的に駆動することができる。故に布接着装置は、ギアポンプがノズルに供給する接着剤の量を安定化できる。また布接着装置は、ローラによって布を押圧しながら移送し、布と布とを接着することができる。さらに布接着装置は、修正したローラ速度でローラを駆動することで、最適な厚さの接着剤を布に塗布することができる。
【0011】
また第一態様において、前記塗布厚及び前記移送速度のうちいずれを優先するかを判断する第二判断手段を備え、前記修正手段は、前記第二判断手段において前記塗布厚を優先すると判断した場合に、少なくとも前記ローラ速度を修正し、前記移送速度を優先すると判断した場合に、少なくとも前記ギア速度を修正してもよい。布接着装置は、布や接着剤の種類、接着作業の内容等に応じて、塗布厚及び移送速度のうちいずれを優先するかを選択することができる。故に作業者は、塗布厚を優先することで布の仕上がりを思い通りに調整するか、又は、移送速度を優先することで効率的に接着作業を進めるかを選択することができる。
【0012】
また第一態様において、前記ギアポンプが許容できる最大の回転速度である最大ギア速度を取得する第二取得手段を備え、前記第二判断手段において、前記塗布厚を優先すると判断した場合に、前記第一判断手段は、前記第二取得手段において取得した前記最大ギア速度で前記ギアポンプが駆動し、且つ前記塗布厚で前記接着剤を前記布に塗布するために必要な前記ローラの回転速度である最大ローラ速度よりも、前記ローラ速度の方が大きい場合に、前記ギア速度で前記ギアポンプを駆動できないと判断し、前記修正手段は、前記ギア速度を前記最大ギア速度に修正し、且つ、前記ローラ速度を前記最大ローラ速度に修正してもよい。布接着装置は、ギア速度を最大ギア速度に修正するので、ギアポンプが許容できる駆動条件でギアポンプを駆動することができる。故に布接着装置は、ギアポンプをより安定的に駆動することができる。また布接着装置は、ギア速度の修正に加えてローラ速度を最大ローラ速度に修正することで、塗布厚の接着剤を確実に布に塗布することができる。
【0013】
また第一態様において、前記ギアポンプが許容できる最大の回転速度である最大ギア速度を取得する第二取得手段を備え、前記第二判断手段において、前記移送速度を優先すると判断した場合に、前記第一判断手段は、前記第二取得手段において取得した前記最大ギア速度よりも前記ギア速度の方が大きい場合に、前記ギア速度で前記ギアポンプを駆動できないと判断し、前記修正手段は、前記ギア速度を前記最大ギア速度に修正してもよい。布接着装置は、ギア速度を最大ギア速度に修正するので、ギアポンプが許容できる駆動条件でギアポンプを駆動することができる。故に布接着装置は、ギアポンプをより安定的に駆動することができる。また布接着装置は、ローラ速度を修正しないので、作業者は布を思い通りの移送速度で移送することができる。故に布接着装置は、接着作業を効率的に行うことができる。
【0014】
本発明の第二態様に係る接着プログラムは、接着剤を布に吐出する吐出口を備えたノズルと、前記ノズルに前記接着剤を供給する供給手段と、前記布を押圧して移送する移送手段とを備えた布接着装置のコンピュータに実行させる接着プログラムであって、前記コンピュータに、前記布に塗布する前記接着剤の厚さである塗布厚、前記吐出口における前記布の移送方向と交差する方向の幅である吐出幅、及び、前記移送手段が移送する前記布の速度である移送速度を取得する第一取得ステップと、前記第一取得ステップにおいて取得した前記移送速度で前記布を移送し、且つ前記第一取得ステップにおいて取得した前記塗布厚で前記接着剤を前記布に塗布するために必要な前記供給手段の駆動条件である第一駆動条件で前記供給手段を駆動できるか否かを判断する第一判断ステップと、前記第一判断ステップにおいて、前記第一駆動条件で前記供給手段を駆動できないと判断した場合に、前記第一駆動条件、及び、前記移送速度で前記布を移送するために必要な前記移送手段の駆動条件である第二駆動条件のうち少なくとも一方を修正する修正ステップと、前記修正ステップにおいて前記第一駆動条件を修正した場合に、修正した前記第一駆動条件で前記供給手段を駆動制御し、前記第二駆動条件を修正した場合に、修正した前記第二駆動条件で前記移送手段を駆動制御する駆動制御ステップとを実行させる。
【0015】
第二態様によれば、布接着装置は、修正した第一駆動条件に基づいて供給手段を安定的に駆動し、接着剤をノズルから吐出できる。布接着装置は、布に塗布した接着剤の厚さを安定化できるので、布と布とを適切に接着することができる。また布接着装置は、修正した第二駆動条件に基づいて移送手段を駆動することで、第一駆動条件で供給手段を駆動できない場合でも、所望する厚さの接着剤を布に塗布することができる。故に布接着装置は、最適な厚さで接着剤を布に塗布し、布と布とを確実に接着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】布接着装置1全体を前方斜め上から見た斜視図である。
【図2】接着機2を前方斜め上から見た斜視図である。
【図3】接着機2の左側面図である。
【図4】接着機2の内部構造の透視図である。
【図5】図2におけるI−I線矢視方向屈曲断面図である。
【図6】布接着装置1の電気的構成を示すブロック図である。
【図7】駆動条件テーブル211を示す図である。
【図8】パラメータテーブル991を示す図である。
【図9】接着作業時のノズル45近傍の斜視図である。
【図10】接着処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の布接着装置1について、図面を参照して説明する。これらの図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものである。記載されている装置の構成、各種処理のフローチャート等は、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。以下、図2の上側、下側、右斜め上側、左斜め下側、右斜め下側、左斜め上側を、夫々、接着機2の上側、下側、右側、左側、前側、後側と定義して説明する。
【0018】
図1を参照し、布接着装置1の構成について説明する。布接着装置1は、接着機2、及びテーブル220を備えている。テーブル220は、接着機2を固定する。接着機2は、対向配置した二層の布の間に接着剤を付着し、布を押圧し移送する。二層の布は、接着機2の前述した動作により互いに接着する。接着機2の構成の詳細については後述する。
【0019】
テーブル220は、接着機2右側に操作パネル210を備える。操作パネル210は、液晶表示部208、及び複数のキー209を備える。液晶表示部208は、各種情報を表示する。キー209は、各種入力をするものである。作業者は、液晶表示部208を見ながらキー209を操作することで、布接着装置1の各種動作を設定する。テーブル220は、下端にペダル206を回動可能に支持している。作業者は、ペダル206の踏み込み量を調節することで、布の移送速度を調節することができる。テーブル220は、接着機2と対向する位置に制御ボックス3を備えている。制御ボックス3は、CPU201(図6参照)等を実装した制御基板を格納する。制御ボックス3は、接着機2、操作パネル210、及びペダル206と電気的に接続する。
【0020】
図2及び図3を参照し、接着機2の構成について説明する。接着機2は、台座部11、脚柱部12、及びアーム部13を備えている。台座部11は、左右方向を長手方向とする略直方体状である。脚柱部12は、台座部11右端から鉛直方向に延びている。アーム部13は、脚柱部12上端に接続し、脚柱部12左側面の左方に突出している。台座部11は、脚柱部12を支持する土台として機能する。脚柱部12は、アーム部13を支持する。アーム部13左端部は、前方から順に、ポンプケース31、貯蔵室26、梁部14を支持している。
【0021】
ポンプケース31は、第一ポンプケース32、及び第二ポンプケース33を備えている。第一ポンプケース32は、アーム部13左側面に固定している。第一ポンプケース32は、内部にギアポンプ35(図4、図5参照)を備える。ギアポンプ35は、接着剤をノズル45に供給する。第二ポンプケース33は、第一ポンプケース32左下端面から下方に延びている。第二ポンプケース33は、左側に軸部を備えている。該軸部は、支持部40上端部右側に接続し、支持部40を揺動可能に支持する。ポンプケース31は、後述する第一流路51、第二流路52(図5参照)を備えている。第一流路51は、接着剤を貯蔵室26からギアポンプ35へ導く。第二流路52は、接着剤をギアポンプ35から支持部40へ導く。
【0022】
支持部40の形状は、上下方向を長手方向とする略直方体状である。支持部40下端と台座部11の間に僅かな隙間が存在する。支持部40は、下端にノズル45を備えている。ノズル45は、支持部40から左側に延びている。支持部40は、上端に駆動伝達部43を備えている。駆動伝達部43は、エアシリンダ41の可動部42を支持する。支持部40は、エアシリンダ41の可動部42が前後に移動すると、上端の軸部を中心軸として前後方向(図3の矢印A方向)に揺動する。ノズル45は、支持部40の揺動に伴って、布の接着作業を行う場合の位置と保守を行う場合の位置に移動する。
【0023】
ノズル45は円筒形状である。ノズル45は、接着剤を吐き出す吐出口を備えている。作業者が布の接着作業を行う場合、吐出口は台座部11と対向する。作業者は、接着作業を行う場合、対向配置した2層の布の間にノズル45を挿入する。ギアポンプ35は、支持部40内の第三流路53(図5参照)を介して、接着剤をノズル45に供給する。ノズル45は、吐出口から布に接着剤を吐き出す。接着剤は、ノズル45の下方に位置する布の表面に付着する。
【0024】
貯蔵室26は、上下方向を長手方向とする略直方体状である。貯蔵室26は、アーム部13左側、且つポンプケース31後方部分から上方に延びている。貯蔵室26は、本体部27、蓋部28、及び蓋軸部29を備える。本体部27の形状は、上部が開口した有底筒状である。蓋部28は、本体部27上部開口を覆う。本体部27は、上端に蓋軸部29を有する。蓋軸部29は、蓋部28を開閉可能に支持する。貯蔵室26は、接着剤を本体部27内部に貯蔵する。貯蔵室26は貯蔵した接着剤を必要に応じてノズル45に供給する。
【0025】
梁部14は、本体部15、ばね支持部16、及び柱部17を備えている。本体部15は、アーム部13の左側後端部から左方へ水平方向に延びる部材である。ばね支持部16は板状であり、本体部15の左後端部から前方へ水平方向に延びる。柱部17は、水平面に対して約45度の角度で、本体部15から前方斜め下方へ延びている。柱部17下端部は台座部11と離れている。
【0026】
ばね支持部16は、前方端部に穴を有する。ばね支持部16は、軸部19を上下動可能に支持する。軸部19は、ばね18に挿通してある。軸部19上端部分は、ばね支持部16の穴に挿入してある。
【0027】
柱部17は、下端部分の左側に、左右方向に延びる軸部を有している。該軸部は、ローラ保持部20後端部21を支持している。ローラ保持部20は、該軸部を揺動中心として、その前端部22を上下方向に揺動する。本体部15は、ばね支持部16右側にエアシリンダ41を備えている。エアシリンダ41は、支持部40の位置を切り替えるものである。
【0028】
ローラ保持部20前端部22は、円柱状の上移送ローラ24を回転可能に支持している。上移送ローラ24は、ノズル45後方近傍にある。ローラ保持部20は、前方上面に軸支持部23を有する。軸支持部23は、軸部19を支持している。ばね18は、ばね支持部16と軸部19の下部の間に介在する。ばね18は、軸部19を下方へ付勢することで、軸部19が接続するローラ保持部20を下方へ付勢する。
【0029】
図4を参照し、接着機2の内部構造について説明する。接着機2は、内部にモータ91、92、93等を備える。モータ91は、回転軸121を介して回転駆動力をギアポンプ35に伝達することで、ギアポンプ35を駆動する。ギアポンプ35は、駆動ギア36、及び従動ギア37を備えている。駆動ギア36は、回転軸121と共に回転する。従動ギア37は、駆動ギア36と噛合する。駆動ギア36と従動ギア37は、接着剤をノズル45に供給する。
【0030】
モータ92は、回転軸126、127、128、及びベルト129、130を介して、回転駆動力を上移送ローラ24に伝達することで、上移送ローラ24を駆動する。上移送ローラ24は、モータ92が回転することで回転する。モータ93は、回転軸141、及びベルト142を介して、回転駆動力を下移送ローラ25に伝達することで、下移送ローラ25を駆動する。下移送ローラ25は円柱形状であり、回転軸141に固定している。下移送ローラ25は、上移送ローラ24下方、且つ台座部11内に位置する。下移送ローラ25は、モータ93が回転することで回転する。
【0031】
図5を参照し、接着剤の流路について説明する。貯蔵室26の本体部27は、周壁と底壁を有する。本体部27は、周壁と底壁が囲む空間に接着剤を貯蔵する。第一流路51は、貯蔵室26側の周壁からポンプケース31側へ延びる貫通穴である。第一流路51は、本体部27が貯蔵する接着剤をギアポンプ35に導く通路である。第一流路51は、貯蔵室26からポンプケース31の第一ポンプケース32内の中央に至る。第一流路51は、第一ポンプケース32の中央部分で右方に直角に曲折し、駆動ギア36と従動ギア37とが噛み合う部分の上側に至る。
【0032】
第二流路52は、ギアポンプ35を通過した接着剤を支持部40の第三流路53に導く通路である。第二流路52は、駆動ギア36と従動ギア37が噛み合う部分の下端から左方に延びる。左方に延びた第二流路52はその左端において下方へ曲折し、その下端において左方へ曲折し、支持部40の上端部の内部へ至る。第三流路53は、第二流路52を流れる接着剤をノズル45に導く通路である。第三流路53は、支持部40内で上端部から下端部まで延び、ノズル45に接続する。
【0033】
図6を参照し、布接着装置1の電気的構成について説明する。布接着装置1は、CPU201、ROM202、RAM203、記憶装置99を備えている。CPU201は、受信処理と制御処理とを実行する。受信処理は、キー209、ペダル206等からの入力情報を受信する処理である。制御処理は、モータ等を制御する処理である。ROM202は、CPU201が実行する接着プログラム、及び各種初期設定パラメータ等を記憶する。RAM203は、タイマ値、カウンタ値、フラグ、及び、後述する駆動条件テーブル211を記憶する。記憶装置99は、後述するパラメータテーブル991を記憶する。CPU201は、ROM202、RAM203、記憶装置99に夫々電気的に接続している。
【0034】
ペダル206はCPU201と電気的に接続している。作業者は、布の移送速度を調節する場合にペダル206を使用する。CPU201はペダル206の踏み込み量を認識することができる。キー209はCPU201と電気的に接続している。CPU201は、作業者によるキー209の押下状態を認識する。CPU201は、認識したキー209の押下状態に基づいて、作業者が入力した情報を記憶装置99に記憶する。表示駆動ドライバ205はCPU201と電気的に接続している。表示駆動ドライバ205は液晶表示部208と電気的に接続している。CPU201は、表示駆動ドライバ205を介して所望の情報を液晶表示部208に表示する。
【0035】
エア駆動ドライバ204はCPU201と電気的に接続している。エアシリンダ41は、エア駆動ドライバ204に電気的に接続している。CPU201は、エア駆動ドライバ204を介して、エアシリンダ41へ送り込む空気の圧力を制御する。モータ駆動ドライバ207はCPU201と電気的に接続している。モータ91、92、93は、夫々モータ駆動ドライバ207に電気的に接続している。CPU201は、モータ駆動ドライバ207を介してモータ91、92、93を制御する。
【0036】
図7を参照し、RAM203に記憶した駆動条件テーブル211について説明する。駆動条件テーブル211は、ギア速度及びローラ速度を記憶する。ギア速度は、接着作業時における駆動ギア36及び従動ギア37の回転速度である。ローラ速度は、接着作業時における上移送ローラ24及び下移送ローラ25の回転速度である。布接着装置1は、接着作業時、駆動条件テーブル211に記憶したギア速度で駆動ギア36及び従動ギア37が回転するように、モータ91を駆動制御する。布接着装置1は、接着作業時、駆動条件テーブル211に記憶したローラ速度で上移送ローラ24及び下移送ローラ25が回転するように、モータ92、93を駆動制御する。
【0037】
図8を参照し、パラメータテーブル991について説明する。パラメータテーブル991は、塗布厚、吐出幅、最大ギア速度、及び動作モードを記憶する。塗布厚は、布に塗布する接着剤の厚さである。吐出幅は、ノズル45の吐出口における布の移送方向と交差する方向(左右方向)の幅である。最大ギア速度は、駆動ギア36及び従動ギア37を駆動するモータ91が回転可能な最大の回転速度である。動作モードは、布接着装置1が接着作業を実行する場合に優先する動作種別である(詳細は後述する。)。作業者は、接着作業を行う前に、キー209を介して、塗布厚、吐出幅、最大ギア速度、及び動作モードを入力する。CPU201は、キー209を介して作業者が入力した塗布厚、吐出幅、最大ギア速度、及び動作モードを、パラメータテーブル991に記憶する。
【0038】
図9を参照し、上布151と下布152を接着する接着作業時における接着機2の動作について説明する。接着作業を行う場合、接着機2は、エアシリンダ41(図2参照)の可動部42を前方に移動して、支持部40を使用位置に移動する。作業者は、上布151と下布152を重ねて配置する。作業者は、布の接着部分にノズル45を配置する。上移送ローラ24と下移送ローラ25は、ノズル45の後方で上布151と下布152を挟持する。
【0039】
作業者がペダル206(図1参照)を踏み込むと、ギアポンプ35(図4、図5参照)は回転する。接着剤は、流路51〜53(図5参照)を経由してノズル45の吐出口から下方へ吐出し、下布152に付着する。上移送ローラ24と下移送ローラ25は、上布151と下布152とを前方から後方へ移送する方向に回転する。ばね18は、上移送ローラ24を下方へ付勢している。故に、上移送ローラ24と下移送ローラ25は、接着剤が付着した下布152に上布151を押し付けて接着する。
【0040】
布接着装置1は、ペダル206の踏み込み量に応じてローラ速度を決定し、決定したローラ速度で上移送ローラ24及び下移送ローラ25を回転する。これによって布接着装置1は、ペダル206の踏み込み量に応じた移送速度で布を移送する。布接着装置1は、パラメータテーブル991に記憶した塗布厚の接着剤を布に塗布するために、次の手順でギア速度を決定する。はじめに布接着装置1は、ペダル206の踏み込み量に応じた布の移送速度と、パラメータテーブル991に記憶した塗布厚及び吐出幅から、ノズル45から吐出する接着剤の単位時間当たりの量を、次の(1)式によって算出する。
接着剤の単位時間当たりの量(m3/s)=布の移送速度(m/s)×塗布厚(m)×吐出幅(m)・・・(1)
続いて布接着装置1は、算出した量の接着剤をノズル45に供給するために必要な駆動ギア36及び従動ギア37のギア速度を決定する。布接着装置1は、決定したギア速度で駆動ギア36及び従動ギア37を回転する。これによって布接着装置1は、パラメータテーブル991に記憶した塗布厚の接着剤を布に塗布する。
【0041】
決定したギア速度が、パラメータテーブル991に記憶した最大ギア速度を超える場合がある。このギア速度で駆動ギア36及び従動ギア37が回転するようにモータ91を駆動制御した場合、モータ91の回転速度は不安定になる。故に、ギアポンプ35の駆動状態は不安定となり、ギアポンプ35は接着剤をノズル45に安定的に供給できなくなる可能性がある。これに対して布接着装置1は、決定したギア速度が最大ギア速度を超える場合、ギア速度を最大ギア速度に落とす。これによって布接着装置1は、ギアポンプ35を安定的に駆動し、所望する量の接着剤をノズル45に供給する。
【0042】
布接着装置1は、パラメータテーブル991に記憶した動作モードに応じて動作することで、異なる手法で接着作業を行うことができる。動作モードには、厚さ優先モードと速度優先モードとがある。布接着装置1は、厚さ優先モードで動作する場合、パラメータテーブル991に記憶した塗布厚で布に接着剤を塗布することを優先する。布接着装置1は、決定したギア速度が最大ギア速度を超える場合、ギア速度を最大ギア速度に落とし、且つ、ローラ速度を落とす。これによって布接着装置1は、ギア速度を落とすことで接着剤の吐出量が減った場合でも、布の移送速度を遅くすることで、布に塗布する接着剤の厚さが塗布厚となるようにしている。
【0043】
一方布接着装置1は、速度優先モードで動作する場合、ペダル206の踏み込み量に応じた移送速度で布を移送することを優先する。布接着装置1は、ギア速度が最大ギア速度を超える場合、ギア速度を最大ギア速度に落とし、ローラ速度はそのまま維持する。これによって布接着装置1は、ペダル206の踏み込み量に応じた移送速度で布を移送し続けることができる。なお、ギア速度を落とすことで接着剤の吐出量が減っているが、布の移送速度は変化していないので、布に塗布する接着剤の厚さは、塗布厚よりも薄くなる。
【0044】
図10を参照し、布接着装置1の接着処理について説明する。CPU201は、作業者が接着作業を開始する操作を、キー209を介して入力した場合に、接着処理を起動し実行する。
【0045】
接着処理が起動すると、CPU201は、パラメータテーブル991に記憶した塗布厚、吐出幅、及び最大ギア速度を取得する(S11)。CPU201は、作業者が踏み込んだペダル206の踏み込み量に応じてローラ速度を特定する(S12)。CPU201は、特定したローラ速度を駆動条件テーブル211に記憶する。例えばCPU201は、ローラ速度を以下の手順で決定する。なお、上移送ローラ24及び下移送ローラ25の径は同一であり、且つ、モータ92とモータ93とで、回転可能な最大の回転速度は同一であるとする。はじめにCPU201は、ペダル206を最大限踏み込んだ場合の踏み込み量に対する、実際に作業者が踏み込んだペダル206の踏み込み量の割合を算出する。次にCPU201は、上移送ローラ24及び下移送ローラが回転可能な最大の回転速度を特定する。なお上移送ローラ24及び下移送ローラ25が回転可能な最大の回転速度は、モータ92、93が回転可能な最大の回転速度に相当する。CPU201は、上移送ローラ24及び下移送ローラ25が回転可能な最大の回転速度と、算出した割合とを乗算する。CPU201は、算出結果を、ローラ速度として決定する。なお、ローラ速度の決定方法はこの方法に限定されない。
【0046】
CPU201は、決定したローラ速度で上移送ローラ24及び下移送ローラ25を回転した場合の布の移送速度を取得する(S13)。CPU201は、S11で取得した塗布厚及び吐出幅、及び、S13で取得した移送速度を(1)式に代入することで、ノズル45から吐出する接着剤の単位時間当たりの量を算出する。CPU201は、算出した量の接着剤をノズル45に供給するために必要なギア速度を特定する(S14)。CPU201は、特定したギア速度を駆動条件テーブル211に記憶する。
【0047】
CPU201は、パラメータテーブル991に記憶した動作モードが厚さ優先モードであるか速度優先モードであるかを判断する(S15)。CPU201は、動作モードが厚さ優先モードである場合(S15:YES)、最大ギア速度で駆動ギア36及び従動ギア37が回転した場合にノズル45に供給する接着剤の単位時間あたりの量を算出する。以下、最大ギア速度でギアポンプ35が回転した場合にノズル45に供給する接着剤の単位時間当たりの量を「最大供給量」ともいう。CPU201は、パラメータテーブル991に記憶した塗布厚及び吐出幅と最大供給量を(1)式に代入することで、布の移送速度を算出する。CPU201は、算出した移送速度で布を移送するために必要なローラ速度を特定する(S17)。以下、塗布厚、吐出幅、及び最大供給量から算出した移送速度で布を移送するために必要なローラ速度を「最大ローラ速度」ともいう。最大ローラ速度は、パラメータテーブル991に記憶した塗布厚の接着剤を安定的に塗布する場合に取り得る最大のローラ速度に相当する。CPU201は、S17で特定した最大ローラ速度、及びS12で特定したローラ速度を、液晶表示部208に表示する(S18)。ユーザは、最大ローラ速度及びローラ速度を認識できる。
【0048】
CPU201は、S12で特定して駆動条件テーブル211に記憶したローラ速度が、S17で特定した最大ローラ速度よりも大きいか否かを判断する(S19)。CPU201は、ローラ速度が最大ローラ速度以下である場合(S19:NO)、駆動条件テーブル211に記憶したギア速度は、最大ギア速度以下の値であることになる。故に、駆動条件テーブル211に記憶したギア速度で駆動ギア36及び従動ギア37を回転した場合に、布接着装置1は、パラメータテーブル991に記憶した塗布厚で安定的に接着剤を塗布できる。
【0049】
CPU201は、S14で特定して駆動条件テーブル211に記憶したギア速度を修正せず、そのまま維持する(S25)。CPU201は、S12で特定して駆動条件テーブル211に記憶したローラ速度を修正せず、そのまま維持する(S27)。CPU201は、駆動条件テーブル211に記憶したギア速度で駆動ギア36及び従動ギア37が回転するように、モータ91を駆動制御する。CPU201は、駆動条件テーブル211に記憶したローラ速度で上移送ローラ24及び下移送ローラ25が回転するように、モータ92、93を駆動制御する(S41)。布接着装置1は、ペダル206の踏み込み量に応じた移送速度で布を移送し、パラメータテーブル991に記憶した塗布厚の接着剤を布に塗布する。処理はS12に戻る。
【0050】
CPU201は、S12で特定して駆動条件テーブル211に記憶したローラ速度が、S17で特定した最大ローラ速度よりも大きい場合(S19:YES)、駆動条件テーブル221に記憶したギア速度は、最大ギア速度を超える値であるということになる。故に、駆動条件テーブル211に記憶したギア速度で駆動ギア36及び従動ギア37を回転した場合、駆動ギア36及び従動ギア37が安定的に駆動せず、布に塗布する接着剤の厚さが不安定となる可能性がある。
【0051】
前述の場合CPU201は、駆動条件テーブル211に記憶したギア速度を最大ギア速度に修正することで(S21)、ギア速度を落とす。CPU201は、駆動条件テーブル211に記憶したローラ速度を最大ローラ速度に修正することで(S23)、ローラ速度を落とす。CPU201は、修正したギア速度で駆動ギア36及び従動ギア37が回転するように、モータ91を駆動制御する。CPU201は、修正したローラ速度で上移送ローラ24及び下移送ローラ25が回転するように、モータ92、93を駆動制御する(S41)。この場合、ノズル45から吐出する接着剤の単位時間あたりの量、移送速度、及び塗布厚は、(1)式の関係を満たす。故に布接着装置1は、ギアポンプ35を安定的に駆動し、且つ、パラメータテーブル991に記憶した塗布厚の接着剤を布に塗布することができる。このように厚さ優先モードでは、モータ91は安定して回転可能な回転速度の範囲内で回転し、ギアポンプ35を安定的に駆動する。また、ギア速度及びローラ速度を共に落とすことで、布接着装置1は、パラメータテーブル991に記憶した塗布厚で確実に接着剤を布に塗布している。処理はS12に戻る。
【0052】
CPU201は、S18で、ローラ速度及び最大ローラ速度を液晶表示部208に表示している。CPU201は、S23でローラ速度を修正した場合、液晶表示部208に表示したローラ速度を最大ローラ速度に修正する。故に、液晶表示部208に表示したローラ速度と最大ローラ速度とが一致する。ユーザは、接着剤の厚さを優先する為に布接着装置1がローラ速度を修正し、所望する厚さの接着剤が布に付着していることを認識できる。また、ユーザがペダル206を更に踏み込んでも、液晶表示部208に表示したローラ速度は最大ローラ速度以上にならないので、ユーザは、布の移送速度がペダル206の踏み込み量に依らず一定となっていることを認識できる。
【0053】
CPU201は、パラメータテーブル991に記憶した動作モードが速度優先モードである場合(S15:NO)、S14で特定して駆動条件テーブル211に記憶したギア速度が、最大ギア速度よりも大きいか否かを判断する(S33)。CPU201は、ギア速度が最大ギア速度以下である場合(S33:NO)、駆動条件テーブル211に記憶したギア速度を修正せず、そのまま維持する(S25)。S12で駆動条件テーブル211に記憶したローラ速度を修正せず、そのまま維持する(S27)。CPU201は、駆動条件テーブル211に記憶したギア速度及びローラ速度に基づいて、ギアポンプ35、上移送ローラ24、及び下移送ローラ25を回転する(S41)。布接着装置1は、パラメータテーブル991に記憶した塗布厚の接着剤を布に塗布することができる。処理はS12に戻る。
【0054】
CPU201は、S14で特定して駆動条件テーブル211に記憶したギア速度が、最大ギア速度よりも大きい場合(S33:YES)、該ギア速度で駆動ギア36及び従動ギア37を回転すると、回転速度が不安定となり、安定的に接着剤を布に塗布できない可能性がある。従ってCPU201は、駆動条件テーブル211に記憶したギア速度を最大ギア速度に修正することで(S35)、ギア速度を落とす。CPU201は、S12で駆動条件テーブル211に記憶したローラ速度は修正せず、そのまま維持する(S37)。CPU201は、修正したギア速度で駆動ギア36及び従動ギア37が回転するように、モータ91を駆動制御する。CPU201は、維持したローラ速度で上移送ローラ24及び下移送ローラ25が回転するように、モータ92、93を駆動制御する(S41)。ローラ速度は修正しないので、布接着装置1は、ペダル206の踏み込み量に応じた速度で布を移送する。このように速度優先モードでは、モータ91は安定して回転可能な回転速度の範囲内で回転し、ギアポンプ35を安定的に駆動する。またローラ速度はペダル206の踏み込み量に応じた速度で回転するので、作業者は、布を所望の移送速度で継続して移送し、接着作業を行うことができる。処理はS12に戻る。
【0055】
以上説明したように、布接着装置1は、修正したギア速度でギアポンプ35を安定的に回転し、接着剤をノズル45から安定的に吐出できる。故に布接着装置1は、布に塗布した接着剤の厚さを安定化できるので、布と布とを適切に接着して仕上がりを良好にすることができる。また布接着装置1は、厚さ優先モードで動作した場合、修正したローラ速度で上移送ローラ24及び下移送ローラ25を回転する。これによって布接着装置1は、ギア速度が最大ギア速度よりも大きい場合でも、所望する厚さの接着剤を布に塗布することができる。故に布接着装置1は、布と布とを確実に接着することができる。また布接着装置1は、速度優先モードで動作した場合、ローラ速度を維持するので、ペダル206の踏み込み量に応じた移送速度で布を移送することができる。故に作業者は、自在に布を操って効率的に接着作業を進めることができる。
【0056】
布接着装置1は、布や接着剤の種類に応じて、塗布厚及び移送速度のうちいずれを優先するかを選択することができる。故に作業者は、塗布厚を優先することで布の仕上がりを思い通りに調整するか、又は、移送速度を優先することで効率的に接着作業を進めるかを選択することができる。
【0057】
尚、図4のギアポンプ35が本発明の「供給手段」に相当し、上移送ローラ24及び下移送ローラ25が本発明の「移送手段」に相当する。図10のS11及びS13の処理を行うCPU201が本発明の「第一取得手段」に相当し、S19及びS33の処理を行うCPU201が本発明の「第一判断手段」に相当し、S21、S23、及びS35の処理を行うCPU201が本発明の「修正手段」に相当し、S41の処理を行うCPU201が本発明の「駆動制御手段」に相当する。駆動条件テーブル211に記憶したギア速度が本発明の「第一駆動条件」に相当し、駆動条件テーブル211に記憶したローラ速度が本発明の「第二駆動条件」に相当する。図10のS15の処理を行うCPU201が本発明の「第二判断手段」に相当し、S11の処理を行うCPU201が本発明の「第二取得手段」に相当する。図10のS11及びS13の処理が本発明の「第一取得ステップ」に相当し、S19及びS33の処理が本発明の「第一判断ステップ」に相当し、S21、S23、及びS35の処理が本発明の「修正ステップ」に相当し、S41の処理が本発明の「駆動制御ステップ」に相当する。
【0058】
なお本発明は前述の実施形態に限定されず、種々の変更が可能である。前述の実施形態では、ギアポンプ35を回転するモータ91の回転可能な最大の回転速度を最大ギア速度としたが、本発明はこれに限定されない。例えば最大ギア速度は、モータ91が安定して回転できる最大の回転速度としてもよい。
【0059】
前述の実施形態では、厚さ優先モードで動作する場合、ローラ速度が最大ローラ速度よりも大きくなるか否かを判断することで、ギア速度が最大ギア速度よりも大きくなるか否かを判断していた(図10、S19参照)。しかしながら本発明はこれに限定されない。布接着装置1は、ギア速度が最大ギア速度よりも大きくなるか否かを直接判断してもよい。
【0060】
厚さ優先モードで動作する場合であって、ローラ速度が最大ローラ速度よりも大きくなると判断した場合、最大ギア速度よりも小さい回転速度でギア速度を修正してもよい。また最大ローラ速度よりも小さい回転速度でローラ速度を修正してもよい。また速度優先モードで動作する場合であって、ギア速度が最大ギア速度よりも大きくなると判断した場合、最大ギア速度よりも小さい回転速度でギア速度を修正してもよい。
【0061】
布の移送速度は、ペダル206の踏み込み量に基づいて定めなくともよい。例えば作業者は、キー209を介して移送速度を直接入力してもよい。布接着装置1は、作業者が入力した移送速度に基づいて、ギア速度及びローラ速度を決定してもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 布接着装置
2 接着機
24 上移送ローラ
25 下移送ローラ
35 ギアポンプ
36 駆動ギア
37 従動ギア
45 ノズル
99 記憶装置
203 RAM
211 駆動条件テーブル
991 パラメータテーブル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着剤を布に吐出する吐出口を備えたノズルと、
前記ノズルに前記接着剤を供給する供給手段と、
前記布を押圧して移送する移送手段と、
前記布に塗布する前記接着剤の厚さである塗布厚、前記吐出口における前記布の移送方向と交差する方向の幅である吐出幅、及び、前記移送手段が移送する前記布の速度である移送速度を取得する第一取得手段と、
前記第一取得手段において取得した前記移送速度で前記布を移送し、且つ前記第一取得手段において取得した前記塗布厚で前記接着剤を前記布に塗布するために必要な前記供給手段の駆動条件である第一駆動条件で前記供給手段を駆動できるか否かを判断する第一判断手段と、
前記第一判断手段において、前記第一駆動条件で前記供給手段を駆動できないと判断した場合に、前記第一駆動条件、及び、前記移送速度で前記布を移送するために必要な前記移送手段の駆動条件である第二駆動条件のうち少なくとも一方を修正する修正手段と、
前記修正手段において前記第一駆動条件を修正した場合に、修正した前記第一駆動条件で前記供給手段を駆動制御し、前記第二駆動条件を修正した場合に、修正した前記第二駆動条件で前記移送手段を駆動制御する駆動制御手段と
を備えたことを特徴とする布接着装置。
【請求項2】
前記供給手段は、回転駆動することで前記接着剤を送り出すギアポンプを備え、
前記移送手段は、回転駆動することで前記布を移送するローラを備え、
前記第一駆動条件は、前記移送速度で前記布を移送し、且つ前記塗布厚で前記接着剤を前記布に塗布するために必要な前記ギアポンプの回転速度であるギア速度であり、
前記第二駆動条件は、前記移送速度で前記布を移送するために必要な前記ローラの回転速度であるローラ速度であり、
前記修正手段は、
前記ギア速度及び前記ローラ速度のうち少なくとも一方を修正することを特徴とする請求項1に記載の布接着装置。
【請求項3】
前記塗布厚及び前記移送速度のうちいずれを優先するかを判断する第二判断手段を備え、
前記修正手段は、
前記第二判断手段において前記塗布厚を優先すると判断した場合に、少なくとも前記ローラ速度を修正し、前記移送速度を優先すると判断した場合に、少なくとも前記ギア速度を修正することを特徴とする請求項2に記載の布接着装置。
【請求項4】
前記ギアポンプが許容できる最大の回転速度である最大ギア速度を取得する第二取得手段を備え、
前記第二判断手段において、前記塗布厚を優先すると判断した場合に、
前記第一判断手段は、
前記第二取得手段において取得した前記最大ギア速度で前記ギアポンプが駆動し、且つ前記塗布厚で前記接着剤を前記布に塗布するために必要な前記ローラの回転速度である最大ローラ速度よりも、前記ローラ速度の方が大きい場合に、前記ギア速度で前記ギアポンプを駆動できないと判断し、
前記修正手段は、
前記ギア速度を前記最大ギア速度に修正し、且つ、前記ローラ速度を前記最大ローラ速度に修正することを特徴とする請求項3に記載の布接着装置。
【請求項5】
前記ギアポンプが許容できる最大の回転速度である最大ギア速度を取得する第二取得手段を備え、
前記第二判断手段において、前記移送速度を優先すると判断した場合に、
前記第一判断手段は、
前記第二取得手段において取得した前記最大ギア速度よりも前記ギア速度の方が大きい場合に、前記ギア速度で前記ギアポンプを駆動できないと判断し、
前記修正手段は、
前記ギア速度を前記最大ギア速度に修正することを特徴とする請求項3に記載の布接着装置。
【請求項6】
接着剤を布に吐出する吐出口を備えたノズルと、前記ノズルに前記接着剤を供給する供給手段と、前記布を押圧して移送する移送手段とを備えた布接着装置のコンピュータに実行させる接着プログラムであって、
前記コンピュータに、
前記布に塗布する前記接着剤の厚さである塗布厚、前記吐出口における前記布の移送方向と交差する方向の幅である吐出幅、及び、前記移送手段が移送する前記布の速度である移送速度を取得する第一取得ステップと、
前記第一取得ステップにおいて取得した前記移送速度で前記布を移送し、且つ前記第一取得ステップにおいて取得した前記塗布厚で前記接着剤を前記布に塗布するために必要な前記供給手段の駆動条件である第一駆動条件で前記供給手段を駆動できるか否かを判断する第一判断ステップと、
前記第一判断ステップにおいて、前記第一駆動条件で前記供給手段を駆動できないと判断した場合に、前記第一駆動条件、及び、前記移送速度で前記布を移送するために必要な前記移送手段の駆動条件である第二駆動条件のうち少なくとも一方を修正する修正ステップと、
前記修正ステップにおいて前記第一駆動条件を修正した場合に、修正した前記第一駆動条件で前記供給手段を駆動制御し、前記第二駆動条件を修正した場合に、修正した前記第二駆動条件で前記移送手段を駆動制御する駆動制御ステップと
を実行させることを特徴とする接着プログラム。
【請求項1】
接着剤を布に吐出する吐出口を備えたノズルと、
前記ノズルに前記接着剤を供給する供給手段と、
前記布を押圧して移送する移送手段と、
前記布に塗布する前記接着剤の厚さである塗布厚、前記吐出口における前記布の移送方向と交差する方向の幅である吐出幅、及び、前記移送手段が移送する前記布の速度である移送速度を取得する第一取得手段と、
前記第一取得手段において取得した前記移送速度で前記布を移送し、且つ前記第一取得手段において取得した前記塗布厚で前記接着剤を前記布に塗布するために必要な前記供給手段の駆動条件である第一駆動条件で前記供給手段を駆動できるか否かを判断する第一判断手段と、
前記第一判断手段において、前記第一駆動条件で前記供給手段を駆動できないと判断した場合に、前記第一駆動条件、及び、前記移送速度で前記布を移送するために必要な前記移送手段の駆動条件である第二駆動条件のうち少なくとも一方を修正する修正手段と、
前記修正手段において前記第一駆動条件を修正した場合に、修正した前記第一駆動条件で前記供給手段を駆動制御し、前記第二駆動条件を修正した場合に、修正した前記第二駆動条件で前記移送手段を駆動制御する駆動制御手段と
を備えたことを特徴とする布接着装置。
【請求項2】
前記供給手段は、回転駆動することで前記接着剤を送り出すギアポンプを備え、
前記移送手段は、回転駆動することで前記布を移送するローラを備え、
前記第一駆動条件は、前記移送速度で前記布を移送し、且つ前記塗布厚で前記接着剤を前記布に塗布するために必要な前記ギアポンプの回転速度であるギア速度であり、
前記第二駆動条件は、前記移送速度で前記布を移送するために必要な前記ローラの回転速度であるローラ速度であり、
前記修正手段は、
前記ギア速度及び前記ローラ速度のうち少なくとも一方を修正することを特徴とする請求項1に記載の布接着装置。
【請求項3】
前記塗布厚及び前記移送速度のうちいずれを優先するかを判断する第二判断手段を備え、
前記修正手段は、
前記第二判断手段において前記塗布厚を優先すると判断した場合に、少なくとも前記ローラ速度を修正し、前記移送速度を優先すると判断した場合に、少なくとも前記ギア速度を修正することを特徴とする請求項2に記載の布接着装置。
【請求項4】
前記ギアポンプが許容できる最大の回転速度である最大ギア速度を取得する第二取得手段を備え、
前記第二判断手段において、前記塗布厚を優先すると判断した場合に、
前記第一判断手段は、
前記第二取得手段において取得した前記最大ギア速度で前記ギアポンプが駆動し、且つ前記塗布厚で前記接着剤を前記布に塗布するために必要な前記ローラの回転速度である最大ローラ速度よりも、前記ローラ速度の方が大きい場合に、前記ギア速度で前記ギアポンプを駆動できないと判断し、
前記修正手段は、
前記ギア速度を前記最大ギア速度に修正し、且つ、前記ローラ速度を前記最大ローラ速度に修正することを特徴とする請求項3に記載の布接着装置。
【請求項5】
前記ギアポンプが許容できる最大の回転速度である最大ギア速度を取得する第二取得手段を備え、
前記第二判断手段において、前記移送速度を優先すると判断した場合に、
前記第一判断手段は、
前記第二取得手段において取得した前記最大ギア速度よりも前記ギア速度の方が大きい場合に、前記ギア速度で前記ギアポンプを駆動できないと判断し、
前記修正手段は、
前記ギア速度を前記最大ギア速度に修正することを特徴とする請求項3に記載の布接着装置。
【請求項6】
接着剤を布に吐出する吐出口を備えたノズルと、前記ノズルに前記接着剤を供給する供給手段と、前記布を押圧して移送する移送手段とを備えた布接着装置のコンピュータに実行させる接着プログラムであって、
前記コンピュータに、
前記布に塗布する前記接着剤の厚さである塗布厚、前記吐出口における前記布の移送方向と交差する方向の幅である吐出幅、及び、前記移送手段が移送する前記布の速度である移送速度を取得する第一取得ステップと、
前記第一取得ステップにおいて取得した前記移送速度で前記布を移送し、且つ前記第一取得ステップにおいて取得した前記塗布厚で前記接着剤を前記布に塗布するために必要な前記供給手段の駆動条件である第一駆動条件で前記供給手段を駆動できるか否かを判断する第一判断ステップと、
前記第一判断ステップにおいて、前記第一駆動条件で前記供給手段を駆動できないと判断した場合に、前記第一駆動条件、及び、前記移送速度で前記布を移送するために必要な前記移送手段の駆動条件である第二駆動条件のうち少なくとも一方を修正する修正ステップと、
前記修正ステップにおいて前記第一駆動条件を修正した場合に、修正した前記第一駆動条件で前記供給手段を駆動制御し、前記第二駆動条件を修正した場合に、修正した前記第二駆動条件で前記移送手段を駆動制御する駆動制御ステップと
を実行させることを特徴とする接着プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2012−117160(P2012−117160A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−265445(P2010−265445)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
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