説明

布接着装置

【課題】ノズル底面の布の搬送方向下流側の端部に接着剤が付着するのを防ぐ布接着装置を提供すること。
【解決手段】ノズルユニット7は上部に平板状の取付部172が設けられている。取付部172の右端側からは支持部171が下方に延設されている。支持部171からは、ノズル17が取付部172の上面と平行に取付部172の延設方向と反対側に延設されている。ノズル17は底面が面取りされた扁平した棒状の部材である。ノズル17内部には接着剤が流れる流路が形成されている。支持部171にも流路が形成されている。ノズル17の底面には、接着剤を布に塗布する為の複数の吐出口178がノズル17の長手方向に一列に並んでいる。ノズル17の底面の布の搬送方向(図5の矢印A方向)下流側の端部にノズル17の長手方向に沿って切欠部180が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は布接着装置に関する。より詳細には接着剤を吐出するノズルの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
布接着装置は加熱した液状の接着剤をノズルから吐出する。接着剤は布に付着する。作業者は接着剤が付着した布に接着したい布を重ねる。布接着装置は両方の布を圧着する。布接着装置は該方法で布と布を接着する。布接着装置は布と布を接着剤で接着するので、縫糸による縫製時に布表面に生じる縫糸の凹凸を無くすことができる。
【0003】
特許文献1に記載の布接着装置は、ノズルの下方付近に設けたローラとノズルに対して布の移送方向下流側に設けたローラに亙ってベルトを掛架してある。布はベルト上に配置する。ローラはモータを駆動することにより回転する。布接着装置はローラの回転によって、ベルト上に配置した布を移送する。布接着装置は布の移送によって、接着剤の布への付着及び布と布との接着を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−222140号公報
【発明の概要】
【0005】
特許文献1の布接着装置は、布を移送してノズルから布に接着剤を付着した時、布が波打つとノズルの底面の布の搬送方向下流側の端部に布から接着剤が付着するという問題点があった。このノズルの端部に接着剤が付着すると布の搬送を停止した時にノズルの端部に付着した接着剤が布に付くという問題点があった。
【0006】
本発明の目的は、ノズル底面の布の搬送方向下流側の端部に接着剤が付着するのを防ぐ布接着装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の問題点を解決するために、請求項1の布接着装置は、対向配置した布の間に接着剤を吐き出して付着させる吐出口を備えた棒状のノズルと、前記接着剤が付着した前記布を押圧して移送する移送手段と、前記ノズルへ前記接着剤を導く流路を有し、且つ前記移送手段による前記布の移送方向と前記ノズルの長手方向とが交差するように前記ノズルを先端部に支持する支持部とを備えた布接着装置であって、前記布に対向する前記ノズルの前記吐出口より前記布の移送方向下流側の部分に前記ノズルの長手方向に沿って切欠部が形成されたことを特徴とする。
【0008】
請求項2の布接着装置は、請求項1の発明の構成に加えて、前記切欠部は、前記布と所定間隔を空けた平面と当該平面と直交する壁面とを有することを特徴とする。
【0009】
請求項3の布接着装置は、請求項1又は2の発明の構成に加えて、前記吐出口と前記切欠部との間には、所定厚みの壁が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の布接着装置では、ノズルの後ろ側切欠部があるので、ノズルの後ろ側に接着剤が付着するのを防止できる。
【0011】
請求項2の布接着装置では、請求項1の発明の効果に加えて、切欠部は布と所定間隔を空けた平面と当該平面と直交する壁面を有するので、布が波打っても切欠部の平面に布から接着剤が付着することを防止できる。
【0012】
請求項3の布接着装置では、請求項1又は2の発明の効果に加えて、前記吐出口と前記切欠部との間には、所定厚みの壁が設けられているので、切欠部を設けてもノズルは十分な強度を有する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】布接着装置1全体の斜視図である。
【図2】ノズルユニット7及び下移送部38近傍の右側面図である。
【図3】ノズルユニット7の正面図である。
【図4】ノズルユニット7の左斜め上から見た斜視図である。
【図5】ノズルユニット7の右斜め下から見た斜視図である。
【図6】ノズルユニット7の右側面図である。
【図7】図4のX−X線に於ける矢視方向の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態の布接着装置について、図面を参照して説明する。図1を参照し、布接着装置1全体の構成について説明する。図1に示す如く、布接着装置1は、接着機2と、制御ボックス3と、操作パネル210を備えている。接着機2は、対向配置した2層の布の間にノズルユニット7のノズル17から接着剤を吐出し、布を押圧し移送する。2層の布は、接着機2の前述した動作を経て接着する。
【0015】
接着機2は、テーブル220の上側に固定してある。テーブル220は、接着機2右側に操作パネル210を備える。操作パネル210は、液晶表示部207と、複数のキー209とを備える。液晶表示部207は、各種情報を表示する。キー209は、各種入力をするものである。作業者は、液晶表示部207を見ながらキー209を操作することで、接着機2の各種動作を設定する。
【0016】
テーブル220は下方に布の移送速度を調整する為のペダル208を備えている。制御ボックス3はペダル208の上方且つテーブル220の裏面に設けてある。制御ボックス3は布接着装置1全体を制御する制御基板を格納する。接着機2は台座部11と、脚柱部12と、アーム部13とを備えている。台座部11は略直方体状であり、上面に接着する布を配置するベッド部14を備えている。脚柱部12は台座部11右端から鉛直方向に延びている。アーム部13は脚柱部12上端に接続し、脚柱部12左側面よりも左方に突出している。台座部11は脚柱部12を支持する土台として機能する。脚柱部12はアーム部13を支持する。
【0017】
図2を参照し接着機2の接着剤を吐出するノズルユニット7及び布を移送する下移送部38の構成を説明する。図2の左側は接着機2の前方となる。下移送部38は第一プーリ25、第二プーリ28、第三プーリ29、支持アーム160、ベルト27、ばね166を備えている。第三プーリ29の形状は円柱形である。第三プーリ29は第二プーリ28の下方斜め前方に設けてある。第一プーリ25、第二プーリ28、第三プーリ29には、ベルト27が掛け渡してある。ベルト27は第一プーリ25が回転することで回転する。ベルト27は布の下面に接して布を搬送する。
【0018】
当接部162は上下方向略中央部にばね166の一端部を接続可能なばね取付部165を備えている。ばね166の他端部は支持台座が備えるフレーム40に設けたばね取付部42に接続している。ばね166は支持アーム160を、回転軸141を中心として時計回り方向(図2において)に常に付勢する。
【0019】
第四モータ94はステップモータでありベルト27下方に設けてある。第四モータ94はフレーム40に固定してある。第四モータ94はその出力軸に偏心輪65を固定している。偏心輪65は中心からの距離が徐々に大きくなるように形成した略円筒形状の部材である。偏心輪65はその外周に当接部162が当接可能である。ばね166の付勢力によって、当接部162は常に偏心輪65と当接している。
【0020】
偏心輪65は第四モータ94が回転することで回転する。偏心輪65の回転によって、当接部162は前後方向へ移動する。支持アーム160は当接部162の移動によって回転軸141を中心として揺動する。支持アーム160の揺動によって、第二プーリ28及び第三プーリ29は上下方向に移動する。ベルト27は第二プーリ28及び第三プーリ29とともに移動する。
【0021】
フレーム40は第四モータ94の角度位置を検出可能な位置検出センサ43を固定している。偏心輪65は中心からの距離が最大となる位置の外周に検出板66を設けている。位置検出センサ43は検出板66を検出することにより第四モータ94の所定角度位置を検出可能である。
【0022】
図2に示す如く下移送部38の上方では、ローラ保持部20が円柱状の第一ローラ22を回転可能に支持している。第一ローラ22は、後述する支持部171から延びたノズル17の後方近傍にある。
【0023】
図2を参照して接着作業時における下移送部38近傍の様子について説明する。ばね166の付勢力によって当接部162を前方に移動する。当接部162が前方に移動することで、ベルト27の第一ローラ22と対向する部分は上方に移動している。この位置ではベルト27とノズル17は下布を挟んで搬送する。ノズル17から接着剤を塗布された下布とノズル17上を通った上布は、第一ローラ22及びベルト27により押圧されながら搬送されることで接着しベッド部14上を移動する。
【0024】
図2〜図7を参照して、ノズルユニット7の構造を説明する。図3に示す如く、ノズルユニット7は正面視、略L字型に形成されている。図3及び図4に示す如く、ノズルユニット7は上部に平板状の取付部172が設けられている。図2に示す如く、取付部172によりノズルユニット7は保持部8に固定される。図4に示す如く、取付部172の中央には接着剤が流れ込む流路173が形成されている。取付部172には螺子孔174,175が流路173を挟んで対角線上に設けられている。支持部171は取付部172の一端側(図3において右側)から下方に延設されている。
【0025】
ノズル17は支持部171下端から取付部172の上面と平行且つ取付部172の延設方向と反対側に延設されている。ノズル17は底面が面取りされた扁平した棒状の部材である。ノズル17内部には接着剤が流れる流路189(図7参照)が形成されている。支持部171にも流路(図示外)が形成されている。図5に示す如く、ノズル17の底面には、接着剤を布に塗布する為の複数の吐出口178がノズル17の長手方向に一列に並んでいる。ノズル17の長手方向の両端部には内部の流路189(図7参照)の端部を各々塞ぐ螺子176,螺子177が螺子込まれている。図5〜図7に示す如くノズル17の底面の布の搬送方向(図5から図7の矢印A方向)の下流側の端部にノズル17の長手方向に沿って切欠部180が形成されている。
【0026】
ノズル17の構造の詳細を図6、図7を参照して説明する。切欠部180の布の搬送方向(矢印A方向)の下流側の端部は斜め上方に向けた斜面182に面取りされている。ノズル17の底面の布の搬送方向の上流側の端部181は円弧状に面取りされている。ノズル17の上面186は平面に形成され、上面186の布の搬送方向下流側の端部は斜面182の先端部に向けた斜面187となっている。この形状のノズル17が上布と下布の間に入って、下布に接着剤を吐出する。
【0027】
図7に示す如く、切欠部180は布と所定間隔を空けた平面183と当該平面183と直交する壁面184とを有する。吐出口178と切欠部180の間には所定厚み(一例として、0.5mm)の壁185が設けられている。吐出口178の一例としては直径0.5mmであり、切欠部180の壁面184の高さは0.5mmである。即ち、切欠部180が位置する布は、ノズル17の底面(平面183)と0.5mmの間隔を有する。この間隔(壁面184の高さ)は0.5mmに限られず、接着する布の特性に合わせて適宜決定する。
【0028】
以上説明したように、布接着装置1では、ノズル17の底面の布の搬送方向下流側に切欠部180を形成しているので、吐出口178から布に接着剤を塗布してもノズル17の底面の下流側に接着剤が付着すること及びノズル底面の布の搬送方向下流側の端部(斜面182等)に接着剤が付着することを防止できる。斜面182に接着剤が付着していない場合、布の搬送を停止しても布に接着剤が付くことを防止できる。また、吐出口178と切欠部180の間には所定厚みの壁185が設けられているので切欠部180を設けてもノズル17の吐出口178が欠損することがない。
【0029】
下移送部38は本発明の「移送手段」の一例である。ノズル17は「ノズル」の一例である。支持部171は「支持部」の一例である。切欠部180は「切欠部」の一例である。吐出口178は「吐出口」の一例である。流路173は「流路」の一例である。平面183は「平面」の一例である。壁面184は「壁面」の一例である。壁185は「壁」の一例である。
【0030】
本発明は、上記実施形態に限られず、適宜変更することができる。切欠部180の大きさは接着する布の厚みや材質に併せて変更すればよい。
【符号の説明】
【0031】
1 布接着装置
2 接着機
7 ノズルユニット
8 保持部
17 ノズル
171 支持部
175 螺子
176 螺子
178 吐出口
180 切欠部
181 端部
182 斜面
183 平面
184 壁面
185 壁
186 上面
187 斜面
189 流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向配置した布の間に接着剤を吐き出して付着させる吐出口を備えた棒状のノズルと、
前記接着剤が付着した前記布を押圧して移送する移送手段と、
前記ノズルへ前記接着剤を導く流路を有し、且つ前記移送手段による前記布の移送方向と前記ノズルの長手方向とが交差するように前記ノズルを先端部に支持する支持部と
を備えた布接着装置であって、
前記布に対向する前記ノズルの前記吐出口より前記布の移送方向下流側の部分に前記ノズルの長手方向に沿って切欠部が形成されたことを特徴とする布接着装置。
【請求項2】
前記切欠部は、前記布と所定間隔を空けた平面と当該平面と直交する壁面を有することを特徴とする請求項1に記載の布接着装置。
【請求項3】
前記吐出口と前記切欠部との間には、所定厚みの壁が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の布接着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−67929(P2013−67929A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209245(P2011−209245)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】