説明

布片の連結補強材

【課題】軽量で柔軟な素材からなる衣料を偏平小片によって構成することのできる布片を用いて、衣類、鞄、靴等の比較的強い締結力を必要とする製品を製作した場合であっても、布片同士の連結が緩んだり外れたりしないように、布片同士の連結を補強することのできる副資材を提供する。
【解決手段】六角形の辺および/または対角線に沿って設けられた軸部と、該軸部の六角形の頂点に位置する係合部とからなり、係合部が第1周縁部10の穴部と第2周縁部20の穴部に係合可能である連結補強材3を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、多数の偏平小片を連結することによって衣料、鞄、靴、カーテン、ブラインド、間仕切り、壁面ディスプレイ、敷物、膝掛け、アクセサリー、帽子、テーブルクロス等の各種布製品を構成することのできる布片に用いるものであって、布片同士の連結を補強することを目的とする副資材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本願出願人は、特許文献1(特許第4480791号公報)において、六角形の中央部と、該中央部の周縁に交互に位置する第1周縁部および第2周縁部とからなる布片であって、これらの第1周縁部および第2周縁部が前記六角形の一辺を共有すると共に第1周縁部が前記六角形の2つの頂点を共有し、第1周縁部と前記中央部との境界線にその辺の長さより短くその辺の1/4の長さより長い第1の切り込みを有し、第2周縁部と前記中央部との境界線にその辺の両端から、「辺の長さ−第1切り込みの長さ」の1/2の長さに等しいか又は僅かに長い第2の切り込みを有してなり、前記3つの第1切り込みは他の同一形状の異なる3布片の第2切り込みと各々切り込みを一致させて嵌合し連結可能であり、前記3つの第2切り込みは前記3布片とは別の同一形状の異なる3布片の第1切り込みと各々切り込みを一致させて嵌合し連結可能であることを特徴とする布片を開示した。
【0003】
前記布片は機能的に非常に優れ、衣料、アクセサリー、帽子等の用途にはそのまま適用しても最適であるが、鞄、靴等の比較的強い締結力を必要とする製品に適用した場合、布片同士を引き離す方向に強い力が作用して、布片同士の連結が緩んだり外れたりする虞があった。
また、布片を連結した状態の美観等を考慮すると布片の厚みは1mm以下が適しているが、これより厚みのある布片に比べて布片同士の連結が弱くなるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4480791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記布片を多数連結して靴や鞄等の比較的締結力の必要な製品を製作した場合であっても、布片同士の連結が緩んだり外れたりすることのない手段としての連結補強材を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の連結補強材は、六角形の中央部と、該中央部の周縁に交互に位置する第1周縁部および第2周縁部とからなる布片であって、これらの第1周縁部および第2周縁部が前記六角形の一辺を共有すると共に第1周縁部が前記六角形の2つの頂点を共有し、第1周縁部と前記中央部との境界線にその辺の長さより短くその辺の1/4の長さより長い第1の切り込みを有し、第2周縁部と前記中央部との境界線にその辺の両端から、「辺の長さ−第1切り込みの長さ」の1/2の長さに等しいか又は僅かに長い第2の切り込みを有してなり、前記3つの第1切り込みは他の同一形状の異なる3布片の第2切り込みと各々切り込みを一致させて嵌合し連結可能であり、前記3つの第2切り込みは前記3布片とは別の同一形状の異なる3布片の第1切り込みと各々切り込みを一致させて嵌合し連結可能であり、更に第1周縁部および第2周縁部が連結用の穴部を備えた布片同士の連結を補強するための連結補強材であって、六角形の辺および/または対角線に沿って設けられた軸部と、該軸部の六角形の頂点に位置する係合部とからなり、該係合部が前記第1周縁部の穴部と第2周縁部の穴部に係合可能であることを特徴とする。
【0007】
前記係合部が足部と頭部からなるカシメ止めであることが好ましい。
前記穴部を第1周縁部及び第2周縁部の各形状における重心位置に備えたことが好ましい。
前記連結補強材は合成樹脂からなることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の連結補強材は、布片同士の連結を簡単に補強することができる。靴や鞄等の比較的締結力の必要な製品を製作した場合であっても、本発明の連結補強材を用いれば布片同士の連結が緩んだり外れたりする虞はない。
【0009】
本発明の連結補強材を用いれば、布片を多数連結して靴や鞄等の比較的締結力の必要な製品を製作した場合であっても、布片同士の連結が緩んだり外れたりすることがないので、種々の製品の作成が可能となる。即ち、本発明の連結補強材は、布片を用いた製品のバリエーションを増やし、布片および布片を用いた製品の実用価値を高めることができる。また、本発明の連結補強材を布片に固定すると、連続する布片および連結補強材により幾何学模様が構成されるため、需要者に与える視覚的効果も高い。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の連結補強材の正面図である。
【図2】本発明の連結補強材の背面図(図2(1))および側面図(図2(2)、(3))である。
【図3】本発明の連結補強材が用いられる布片の正面図である。
【図4】図3に示した布片の連結部の状態を示す正面図である。
【図5】図3に示した布片7枚を連結した状態を示す背面図である。
【図6】本発明の連結補強材を布片に固定した状態を示す図である。
【図7】本発明の連結補強材の変形例を示す背面図である。
【符号の説明】
【0011】
2 中央部
3 連結補強材
10 第1周縁部
11 第1切り込み
20 第2周縁部
22 第2切り込み
30 軸部
31 係合部
40 穴部
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る連結補強材の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は連結補強材3の正面図であり、図2は連結補強材3の背面図(同図(1))および側面図(同図(2)、(3))である。副資材3は正六角形の辺および対角線に沿って設けられた軸部30と、該軸部の六角形の頂点の位置に設けられた係合部31とからなっている。
【0013】
図3は、本発明の連結補強材が用いられる布片の正面図であり、布片は正六角形の中央部2と、中央部2の周縁に交互に位置する第1周縁部10、10、10および第2周縁部20、20、20とからなり、第1周縁部10、10、10と第2周縁部20、20、20には、後記する係合部31を介して両者を固定するための穴部40、40、40、40、40、40が設けられている。
第1周縁部10、10、10と第2周縁部20、20、20とを交互に配置することにより、布片を平面的にほぼ無限に連結していくことが可能になる。
第1周縁部10および第2周縁部20は、それぞれ、中央部2の正六角形の一辺を共有して中央部2と一体となっている。
【0014】
図4は、図3に示した布片の連結部の状態を示す正面図である。図4において、第1の布片Pの第1周縁部10の第1切り込み11には、第2の布片Qの第2周縁部20の第2切り込み22、22が嵌合している。この状態において、第1の布片Pの第1周縁部10は第2の布片Qの中央部2の裏面に位置し、第2の布片Qの第2周縁部20は第1の布片Pの中央部2の裏面に位置することになる。
【0015】
図5は図3に示す布片7枚を連結した状態を示しており、布片の各第1切り込み11(および第2切り込み22、22)が他の同一形状の異なる布片の第2切り込み22、22(および第1切り込み11)と、それぞれが切り込みを一致させて嵌合することによって連結されている。
【0016】
続いて、図6を用いて連結補強材を布片に固定したときの状態を説明するが、図6(1)は図5に示した布片7枚を連結した状態において更に連結補強材3で固定した状態を示す背面図であり、図6(2)は布片と連結補強材3とを分離して示す斜視図である。
図6において、連結補強材3は、布片の第1周縁部10、10、10および第2周縁部20、20、20に設けられた穴部40、40、40、40、40、40を介して他の布片の周縁部に固定され、このとき連結補強材3の係合部31が穴部40、40、40、40、40、40と係合する。
【0017】
具体的には、係合部31、31、31、31、31、31を構成する足部と穴部40、40、40、40、40、40が一致するように、連結補強材3を布片の中央部2と第1周縁部10、10、10および第2周縁部20、20、20の間に挟み込み、前記係合部の足部を穴部40、40、40、40、40、40に嵌入させた後、係合部を構成する頭部32、32、32、32、32、32と連結してカシメ止め等で固定する。
連結補強材3の布片への固定方法は、カシメのほか、ボタン等の種々の方法が考えられるが、連結をより強固なものとするため、一度固定すると素手では簡単に外すことのできない方法を採ることが好ましい。
一方、上記のような穴部40を用いずに接着、バンド止めによって連結を補強しようとしても強度不足となり、好ましくない。
【0018】
また、本実施形態では、連結補強材3を布片の中央部2と第1周縁部10、10、10および第2周縁部20、20、20の間に挟み込んだが、連結補強材3と布片の中央部2により第1周縁部10、10、10および第2周縁部20、20、20を挟むように連結補強材3を布片に固定してもよい。この場合、布片の中央部2、第1(第2)周縁部、連結補強材3の順に並ぶので、軸部30が第1周縁部10および第2周縁部20を中央部側に押さえつけ、第1周縁部10および第2周縁部20の浮上りを防止する効果がある。その結果、浮き上がった第1周縁部10および第2周縁部20が、これと接する身体や物に引っかかることにより破損する虞がなくなる。
【0019】
連結補強材は、可撓性を有する合成樹脂により成型することができ、特に、連結された布片に固定した場合に布片を折り曲げる等の動きに対して抵抗がないものであることが好ましい。したがって、ポリアセタール、ポリオキシメチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ナイロンなどの弾性を有する合成樹脂により成型することが好ましい。
本発明の連結補強材は、僅かな部品により構成され、かつ、簡易な構造の故に、金型で容易に一体成型することができる。
【0020】
穴部40の位置については、第1周縁部10および第2周縁部20の形状と大きさに依存するものの、格別の制限はない。但し、穴部40を介して固定される連結補強材3によって布片同士の連結が適切に補強される位置とする必要があるため、第1周縁部10及び第2周縁部20の形状における重心位置とすることが好ましい。
【0021】
穴部40の形状と大きさについては、係合部31の構造、形状および大きさに依存するが、布片同士の連結が適切に補強される形状と大きさであれば、格別の制限はない。
【0022】
連結補強材3を構成する軸部30の大きさについては布片の大きさ、穴部40の位置、布片の素材等に依存するものの、格別の制限はない。但し、布片同士の連結が適切に補強されるとともに、布片の形状が変形しないようにする必要がある。例えば、前記した図6に示す中央部2の正六角形の一辺の長さを20mmとし、第1周縁部10および第2周縁部20の継ぎ長さ(継ぎ幅の長さに対する垂直方向の長さ)を12mmとすると共に、第1周縁部10および第2周縁部20の二等辺三角形の重心位置に穴部40を設けた場合、軸部30の正六角形の一辺の長さは13mm〜14mmの範囲とすることが好ましい。
【0023】
軸部30の断面形状は矩形、台形、円形、楕円形等、いかなる形状にも限定されない。軸部30の太さは、強度と可撓性を考慮すると1mm〜1.5mmの範囲のものが望ましいが、当該範囲に限定はない。連結の強度を重視するのであれば当該範囲よりも太いものとし、可撓性を重視するのであれば当該範囲よりも細いものとすれば良い。布片を適用する用途に応じて、前記軸部30の太さを決定すべきである。
【0024】
軸部30の形状としては正六角形の辺および対角線に沿った形状が最適である。正六角形の辺と対角線に沿った形状は、布片同士を引き離す方向に強い力が作用した場合であっても、正六角形の辺および対角線に沿って力が分散されるので布片同士の連結がより強固に補強される。
【0025】
続いて、連結補強材3の変形例を説明する。
図7(1)には、軸部30の形状を正六角形の対角線に沿ったものだけで構成した連結補強材3Aが示されている。正六角形の対角線に沿った形状とした場合、正六角形の辺および対角線に沿った形状とした連結補強材3に比べて、布片を折り曲げる等の動きに対する抵抗が少ないと云う特徴がある。また、図7(2)には、軸部30の形状を正六角形の辺に沿ったものだけで構成した連結補強材3Bが示されているが、連結補強材3Aと同様の特徴がある。
【0026】
上記連結補強材3Aおよび3Bは、それぞれ単独で用いることもできるし、両方を混合して用いることもできる。連結補強材3Aおよび3Bを併用する場合には、連結補強材3Aの係合部31a、31a、31a、31a、31a、31aと布片の穴部40、40、40、40、40、40および連結補強材3Bの係合部31b、31b、31b、31b、31b、31bが一致するように、連結補強材3Aと3Bにより第1周縁部10、10、10および第2周縁部20、20、20を挟み、係合部31a、31a、31a、31a、31a、31aと係合部31b、31b、31b、31b、31b、31bを係合させて固定する。
本実施形態によれば、連結補強材3Aおよび3Bが第1周縁部10および第2周縁部20を挟むようにして布片に固定されるので、布片同士の連結がより強固なものとなる。さらに、第1周縁部10および第2周縁部20の浮上りを防止する効果もあるので、浮き上がった第1周縁部10および第2周縁部20が、これと接する身体や物に引っかかることにより破損する虞がなくなる。
【0027】
本発明の連結補強材3は、布片の中央部2の形状が正六角形以外の形状、例えば点対称の六角形である場合には、軸部30の形状も点対称の六角形の辺および/または対角線に沿った形状とすることができる。また、連結補強材3を適用する布片は必ずしも図3および図4に示したものに限らず、例えば、六角形の中央部と、該中央部の周縁に交互に位置する第1周縁部および第2周縁部とからなる布片であって、これらの第1周縁部および第2周縁部が前記六角形の一辺を共有し、第1周縁部と前記中央部との境界線にその辺の長さより短くその辺の1/4の長さより長い第1の切り込みを有し、第2周縁部と前記中央部との境界線にその辺の両端から、「辺の長さ−第1切り込みの長さ」の1/2の長さに等しいか又は僅かに長い第2の切り込みを有してなり、前記3つの第1切り込みは他の同一形状の異なる3布片の第2切り込みと各々切り込みを一致させて嵌合し連結可能であり、前記3つの第2切り込みは前記3布片とは別の同一形状の異なる3布片の第1切り込みと各々切り込みを一致させて嵌合し連結可能な布片にも適用することができる。
【0028】
その他、軸部30の形状は、軸部30としてのデザイン性が考慮される。即ち、軸部30によって構成される製品の裏面(場合によっては、表面)の意匠を決定づけるからである。また、布片を適用する用途に応じて、形状のほか、前記軸部30の素材、太さを決定すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
六角形の中央部と、該中央部の周縁に交互に位置する第1周縁部および第2周縁部とからなる布片であって、これらの第1周縁部および第2周縁部が前記六角形の一辺を共有すると共に第1周縁部が前記六角形の2つの頂点を共有し、第1周縁部と前記中央部との境界線にその辺の長さより短くその辺の1/4の長さより長い第1の切り込みを有し、第2周縁部と前記中央部との境界線にその辺の両端から、「辺の長さ−第1切り込みの長さ」の1/2の長さに等しいか又は僅かに長い第2の切り込みを有してなり、前記3つの第1切り込みは他の同一形状の異なる3布片の第2切り込みと各々切り込みを一致させて嵌合し連結可能であり、前記3つの第2切り込みは前記3布片とは別の同一形状の異なる3布片の第1切り込みと各々切り込みを一致させて嵌合し連結可能であり、更に第1周縁部および第2周縁部が連結用の穴部を備えた布片同士の連結を補強するための連結補強材であって、
六角形の辺および/または対角線に沿って設けられた軸部と、該軸部の六角形の頂点に位置する係合部とからなり、該係合部が前記第1周縁部の穴部と第2周縁部の穴部に係合可能である連結補強材。
【請求項2】
前記係合部が足部と頭部からなるカシメ止めである請求項1記載の連結補強材。
【請求項3】
前記穴部を第1周縁部及び第2周縁部の各形状における重心位置に備えた請求項1または2記載の連結補強材。
【請求項4】
合成樹脂からなる請求項1〜3のいずれかに記載の連結補強材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−167383(P2012−167383A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−26610(P2011−26610)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(399102127)ビルマテル株式会社 (19)
【Fターム(参考)】