説明

布製品のドロップ・オン・デマンド仕上げ処理のための組成物

ドロップ・オン・デマンド式インクジェット技術によって布地の基材の上へ付着を行うための仕上げ処理組成物が記載されている。この組成物は、媒体に機能的仕上げ処理剤の分散液あるいは乳液を有し、この仕上げ処理組成物の分散液または乳液中の粒子のサイズは約2ミクロン未満である。これらの粒子を確実に充分に細かくすることによって、効果的で信頼性の高い液滴付着を詰まりなしに進めることができる。大事なことは、組成物は、使用中に、凝集または沈降が起きてはいけないということである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布地を仕上げ処理することに関し、特に、ドロップ・オン・デマンド(drop−on−demand)式インクジェット(DoD)技術を使用するデジタル型液滴付着による布地の仕上げ処理に関する。本発明はさらに、この目的に特に適合した仕上げ処理組成物およびこのような仕上げ処理を実行する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
布地の作製は、伝統的にいくつかの異なったプロセスで行われる。すなわち、材料繊維を作製すること、この材料繊維を紡績すること、布(例えば織布あるいは編布、房状材料あるいはフェルトおよび不織材料)を製造すること、この布の品質を向上させること、および最終製品を作製するかあるいは製造することである。布地の品質向上は、使用者によって望まれる外観と物理的特性とを布地に付与するという目的を有する作業の総合的結果である。布地の品質向上は、とりわけ、準備、脱色、漂白、着色(染色(dyeing)および/または捺染)および布製品の仕上げ処理を備えている。
【0003】
布地の品質を向上させるための従来のプロセスは、いくつかの部分プロセスあるいは品質向上ステップ、すなわち、布製品(基材と称されることもある)の前処理、この基材の染色、この基材のコーティング、この基材の仕上げ処理およびこの基材の後処理から構成されている(図1を参照)。
【0004】
布地をプリントするための公知の技術はいわゆるテンプレート技術である。文字および記号のような所望のパターンを前記基材へ適用することのできる切り出し薄板あるいは素子、すなわちテンプレートへインクが適用される。布地をプリントするための別の公知の技術は、いわゆる平台プリント技術であり、プリントされた画像は、プリント区域を形成しないプリント型の部品がある一平面に存在している。これに関する1つの例はいわゆるオフセットプリントであり、ここではプリントプロセスが間接的に行われる。プリントの間、プリント区域は、シリンダーの周りに張られたゴム地の上へまず移り、次いで、そこから、プリントするための物質へ移る。さらに別の技術はスクリーンプリントであり、ここでは、塗布するための物質は、プリントテンプレートにおける開口を通して、プリントのための布地に塗布される。
【0005】
すでに図1に表示されたように、前記基材の染色は別の品質向上ステップである。染色とは、色付き化学物質を全平面に、次いで1つの色で均一に塗布することである。染色は目下、布製品を染浴の中に浸すことによって行われており、これによって、布地は、前記基材の両側面に見ることのできる色付き物質で飽和される。
【0006】
仕上げ処理の1つの形態はコーティングである。布地のコーティングには、前記基材を保護するかあるいは前記基材の耐久性を増大させるような特定の機能特性を布地に付与するための、布地への薄い層の適用が含まれている。溶媒あるいは水に基づくコーティングを適用するための通常の技術は、いわゆる「ナイフオーバーローラ」型スクリーンコーター、「浸漬」型スクリーンコーターおよび「リバースローラ」型スクリーンコーターである。水中のポリマー物質の溶液、懸濁液あるいは分散液は通常、布へ塗布され、また、過剰なコーティングはその後、ドクターナイフで掻き落とされる。このような手順を有効にするために、コーティング用調合物は粘度がきわめて高いペースト状の形態になければならない。多くの調合物については、これらの調合物を前記機能性に悪影響を及ぼすことなくこのような粘度状態にすることは可能でない。このことは、増粘剤が前記機能的化学物質と不相溶性であるという事実によるためであろう。
【0007】
布地の仕上げ処理のために時には採用されるさらに別の手順は、フーラーディングのような浸漬技術あるいは浴技術の使用である。布地は適用される機能的組成物が含有されている水溶液の中に充分浸漬される。その後の乾燥、固着および濃縮の繰り返しが、この作業を遂行するために必要である。これによって、資源、とりわけ水およびエネルギーのかなり使用される。一般に、このような技術のために使用される溶液、懸濁液あるいは分散液は、低い濃度の所望の機能的組成物を有する。
【0008】
図1に示された品質向上ステップのそれぞれはいくつかの作業からなっている。前記基材の性質および所望の最終結果に左右されるが、異なる種類の化学物質についてさまざまな処理が必要である。
【0009】
プリント、染色および仕上げ処理の品質向上の工程について、しばしば同じ順序で行なわれる4つの反復工程を一般に区別することができる。これらの処理は、専門的分野において単位作業(unit operation)と称され、含浸(すなわち、化学物質の適用あるいは導入)、反応/固着(すなわち、化学物質の前記基材への結合)、洗浄(すなわち、過剰な化学物質および補助化学物質の除去)、および乾燥を含んでいる。
【0010】
通常の品質向上法の1つの短所は、品質向上の工程(染色、コーティングおよび仕上げ処理)ごとに単位作業の何回かのサイクルを実行して所望の結果を達成しなければならないということである。コーティングのためには3回以上のサイクルの単位作業がしばしば必要であり、このことは、比較的高い環境への影響、長い処理時間および比較的高い製造コストを必然的に伴う。染色のために、4回以上にもなるサイクルの単位作業が必要である。伝統的な染色プロセスには、例えば、増粘剤のような過剰な化学物質をすすぎ落とすために数回のすすぎ(ウォッシングおよびソーピング)の最終操作が必要である。すすぎの結果、水が多く使用される。これらのすすぎプロセスに続くのは乾燥プロセスであり、この乾燥プロセスは、搾り出しローラおよび/または真空システムを使用する機械的乾燥ステップと、その後に行われる、例えば布張り枠を使用する熱乾燥ステップとからなっているのが普通である。
【0011】
この時点では、別の装置において異なった布地の品質向上ステップを遂行することもまた普通である。このことは例えば、染色がこの目的に特に適したいくつかの染浴において実行され、プリントおよびコーティングが別のプリント装置およびコーティング装置において遂行され、また、仕上げ処理がさらに別の装置によって遂行されるということを意味している。異なる操作が別々の装置で個別に遂行されるため、布地の処理には、通常は異なる部屋区域に広がる比較的大きい区域が必要である。
【0012】
いくつかの刊行物では、グラフィック・イメージを作るためにインクジェットプリント技術を使用して布製品をプリントすることができることが示唆されてきた。グラフィック(紙)プリント分野からのインク調合物は、このような調合物が噴射付着のためにすでに適合しているので、この目的のために広く使用されてきた。具体的には、顔料微粒子の寸法と比較的低い固形分とによって、このようなインクはインクジェット装置に最も適している。しかしながら、このような調合物は、すべての布地、具体的にはかなりの吸収性が生じる布地への適用のために完全に適しているというものではない。過去において、布製品は、インク液滴が標準的なグラフィックプリント技術を使用して適用されるコーティングで前処理されていた。あるプロセスは、白い衣料シートの上にプリントするために従来のプリント装置が使用される米国特許第4,702,742号から知られている。さらに別のプロセスは、インクおよび固着用溶液の両方が従来のインクジェットヘッドを使用して布地へ塗布されるドイツ特許出願DE19930866号に示唆されている。しかしながら、これらの公知の方法は、グラフィック・イメージを作ることだけに関するものであり、また、使用されるこれらの調合物は、仕上げ処理のためのコーティングとして不適切なものである。
【0013】
布地の基材を品質向上させる目的のためにインクジェット型ノズルを使用することが、ともに2004年9月22日に出願された未刊行のPCT出願であるPCT/EP2004/010732号およびPCT/EP2004/010731号にもまた、示唆されてきた。提案されたこれらの方法は、布地へ1つ以上の化学物質を適用するためのいくつかのノズルと、さらに、これらのノズルに沿って前記布地を搬送するためのコンベアとを備えている装置を使用するものである。これらのノズルは、前記布製品の搬送方向を横断して延びているいくつかの連続配置状の列に並べられている。この布製品は、第1機能的層を受けることのできる第1ノズル列に沿って案内される。この布製品は次いで、さらに別の機能的層を受けるための第2ノズル列あるいは第3ノズル列に沿って案内される。このようなプロセスはデジタル式液滴付着と称されることがある。
【0014】
先に提案された方法によれば、化学物質を高濃度の形態で、かつ、正確な使用量で適用する選択肢が提供される。これによって、所望の品質向上結果を単一サイクルの単位作業だけで達成することができる。この化学物質を連続して位置した複数のノズル列の使用によるただ1回のプロセスの実行で塗布することによって、プロセスの実行当たりの効率が顕著に増大する。使用量の精度および可能であるノズル制御のために、きわめて均一な層を塗布することもできる。この化学物質を塗布することができる比較的高い濃度によって、さらに、たいていの場合に暫定的な乾燥がほとんど不要になる。上記の提案された装置のノズルは、これらのノズルに沿って案内される布地に対して静止しているのが好ましい。これによって、比較的高い処理速度ときわめて正確なパターン形成とが可能になる。デジタル式液滴付着のさらに別の利点は、これがオンデマンド送給の可能性をもたらすことである。ノズルに付いているタンクの体積が小さいという観点から、製品の切り換えも非常に短い時間(2分未満)内に実現される。従って、同一の布地ロールの後続セクションは、ほぼランダムに、異なる仕上げ処理手続きで処理することができる。より少ない一連の異なる布製品は、悪い環境影響と生産性影響とを有しうる複雑な切替え操作によることなく、単一の品質向上装置で処理することができる。
【0015】
また、東レ工業株式会社(Toray Industries)の未審査日本特許出願である特開昭61−152874号では、布地シートを機能的組成物で点の形態に含浸させることが示唆された。抗生物質、吸湿剤、撥水剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、蛍光増白剤、膨潤剤、溶剤、鹸化剤、脆化剤、無機顆粒剤、金属顆粒剤、磁性材料、難燃剤、抵抗材料、酸化剤、還元剤、香料などが含まれるさまざまな機能的組成物が示唆されている。この文献には、伝統的なフォトグラビアロール・スクリーン・プリント法では、あまりに大きすぎることもある点のパターンが作製され、吹き付け技術では、付着した製品の点の大きさおよび品質を調整することが困難であることが示されている。この文献では布地を機能的組成物で点の形態に含浸させることが提案されており、点の平均直径が30乃至500ミクロンであり、また、点の占有区域比が3乃至95%である。この文献ではインクジェットプリント技術の使用が示唆されているが、この文献では、とりわけ伝統的なコーティング組成物の高い粘度のために、従来のインクジェット装置が適していない、ことが認識されている。この文献は主として、特定可能な液滴構造を維持することと液滴が連続して流れるのを防止することとに関するものである。さらにまた、この文献によれば、溶液の使用に関する例がもたらされるが、分散あるいは懸濁というインクジェット付着の問題に対処することができない。
【0016】
グラフィック・イメージを提供するためのさまざまな型のインクジェットプリンタが広く知られている。このようなプリンタは、オフィスあるいは家庭で使用されるようなデスクトップ型インクジェットプリンタであってもよく、また、染料を包含している水性インクの小さい液滴(20pL未満)を用いて特定の種類の紙基材(プリント用紙)の上にプリントするために広く使用されている。一般に、工業的なインクジェットプリンタは、グラフィック・イメージあるいは日付/バッチのコードを製品の上にプリントするためにもまた存在しており、これらのプリンタは典型的には、染料・顔料を包含している溶剤性インクを用いて無孔性基材の上にプリントする。しかしながら、このような調合物は、とりわけ耐変色性がないために、大部分の布地に適用するには適していない。インクジェット技術を用いて布地の上にプリントするためには、布製品はこれまで、インク液滴が適用されるコーティングで前処理されてきた。品質を向上させる目的のためには、現在用いられている大部分のコーティング組成物および仕上げ処理組成物は、インクジェット技術を使用する付着については適していない。大きい液滴を作る工業的なインクジェットプリンタおよびノズルは、一般に溶剤性着色インクで使用するために設計されている。さらにまた、吐出することのできる液滴容積は、きわめて少ない50pLの程度であり、布地の仕上げ処理のためにはほとんど不充分であって、この場合には布の中へのかなりの浸透が必要である。典型的な仕上げ処理用調合物は、大部分が水性であり、また、一般に、ノズルの目詰まりを引き起こすおそれのある粒子径を有する。気泡発生、跳ね飛びおよび外皮形成に関するさらに別の問題に直面した。100KHzまで連続的に作動する多数のノズルで稼働するときには、信頼性および故障なし作業が最も重要である。特開昭61−152874号では、従来のインクジェット装置は仕上げ処理組成物を適用するためには適していないということを指摘しているものの、これをどのようにして改善するかについての教示を提供していない。
【0017】
上記PCT出願に詳しく記述された技術は、コンティニュアスインクジェット(以下においては、CIJと称する)技術を用いる。この技術によると、液滴がインクジェットノズルで連続的に形成され、吐出の際に荷電される。電場を利用することにより、液滴は、前記基材へ誘導されるか、再循環のためにガターへ誘導することができる。CIJを使用することにより、1噴射かつ1秒当たり、64,000乃至125,000個の滴個を生成することが可能になる。この多数の液滴および衣類の幅全体にわたる相互に隣接したヘッドによって、比較的高い生産性とプリント結果の比較的高い品質とが得られる。すなわち、高い付着速度を考慮すると、毎分約20メートルという布地の基材の生産速度を実現することができる。多くの場合においてCIJが最も適しているが、ノズル当たりの費用が一般に非常に高い。また、吐出される流体の仕様は、時には、非常に限定的である。これらの流体は、せん断安定性が高くなければならず、普通、電荷を持つことができるように、腐食性塩類のような導電剤が与えられていなければならない。従って、別の、それよりも簡単で、より費用のかからない、ドロップ・オン・デマンド(DoD)型のノズルを使用する必要性がある。
【0018】
ドロップ・オン・デマンド式インクジェット装置は、一般に、デスクトッププリント分野においてよく知られている。このような装置は、原則として比較的低価であるが、商業的カートリッジに対しては高い値段が付けられることもあり得る。液滴の形成の2つの主な原理がよく知られている。圧電性作動装置を用いて、流体を共鳴させることにより液滴が形成される圧電性作動、および流体の局所的沸騰によって液滴が吐出される熱感性作動(バブルジェット(登録商標))である。DoDの部類に属すると見なすことのできる液滴形成の他の方法、例えば、小型バルブが、小さな体積の流体を制御して通過させることを可能とするバルブジェット装置が知られている。作動原理は、すべての場合において、液滴が信号に応じて形成されるということである。これは、従って、液滴が連続的に作製される連続的CIJ装置と区別される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
先に提案されたデジタル式仕上げ処理手順の利点にもかかわらず、現在使用されているたいていのコーティング剤および品質向上用組成物は、コンティニュアスインクジェット技術を使用する付着には適していないということがわかった。標準的なインクジェットノズルは一般に、溶媒性(solvent-based)インクとともに使用するために適合している。さらにまた、吐出することのできる液滴の容積は、きわめて少ない50pLの程度であり、この場合には布地の中へのかなりの浸透が必要である布地の仕上げ処理のためにはほとんど不充分である。典型的なコーティング調合物は、大部分が水性であり、また、一般に、ノズルの詰まりを引き起こすおそれのある比較的大きな粒子径を有する。気泡発生、跳ね飛びおよび外皮形成(encrustation)に関するさらに別の問題が生じてきた。30KHzまで連続的に作動する多数のノズルで作動する場合、信頼性および故障の無い動作が最も重要である。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明によれば、ドロップ・オン・デマンド式インクジェット技術によって布地の基材に付着を行うための仕上げ処理組成物であって、媒体に機能的仕上げ処理剤の分散液あるいは乳液を具備し、この仕上げ処理組成物の前記分散液または乳液中の粒子のサイズが、2ミクロン未満、好ましくは1ミクロン未満、より好ましくは0.5ミクロン未満であり、凝集または沈降が起こらない仕上げ処理組成物が提供される。確実にこれらの粒子を充分に細かくすることにより、効果的で信頼性の高い液滴付着を詰まりなしに進めることができる。この状況で、粒子という用語は、分散液の中に存在している固体粒子、および例えば乳液に存在している液相あるいはゲル状相に存在している固体粒子を含むことを意図している。2ミクロンが粒子のサイズについてのおおよその限度であることに留意すべきである。最大粒子サイズが、1ミクロン未満であることは好ましく、サーマルインクジェットについては0.5ミクロン未満であることさえ必要でありうる。この値はまた、前記組成物における固形分の百分率が10%を超えて増大するにつれて減少し、前記ノズル径が50ミクロンを超えて増大するにつれて増加するであろう。この観点では前記組成物は一定の品質のものであることが最も重要であるということがわかった。従って、所定の直径よりも小さい粒子サイズについて述べることは、D99直径あるいはこれよりも良好なものに言及することを意図している。前記組成物はまた、凝集あるいは沈降を受けるべきではない。このことは、この組成物が長期の使用の間に、あるいはこのインクジェット装置が通常の使用の間にアイドル中に、所定値よりも大きい粒子が形成されないことを意味するということを意図している。多くの組成物は長期保存の間に例えば沈殿物を形成することがあるが、このことは適切な混合調整によって克服することができるということとが理解されている。
【0021】
本発明の状況では、「仕上げ処理」という用語は、インクおよび染料を使用する従来のインクジェットプリントの場合と同様に、布地の基材に色付きデザインを提供したり、あるいは外観を変化させたりするだけではなく、布地の基材の機能性を変化させるために補助薬品を使用する処理を意味するものであると理解される。これらの仕上げ処理技術は、最終製品の特性を改善しかつ/または最終製品へ特性を付加することを意味している。この背景では、この用語は、コーティングおよび含浸の両方を包含するものと、また、基材の機能性を向上させる他の物理的処理も含むものと理解される。以下では、染色と仕上げ処理とは区別される。必要であれば、仕上げ処理を、吸着特性が400乃至700nmであるというだけの理由で前記基材へ適用される粒子の付着を伴う処理を排除するものであると理解することができる。
【0022】
本明細書では、「仕上げ処理組成物」という用語は、水溶液、水溶性分散液、有機溶液、有機分散液、硬化型液体混合物(curable liquid mixture)、および活性成分を含む溶融化合物を包含している。本発明の重要な利点によれば、組成物は基材と反応しないものであってもよい。このように、組成物は、そうでない場合よりもより多様な布地へ適用することができる。
【0023】
さらにまた、「布地」という用語は、織布、編布および不織布を含むすべての形態の布製品を含むことを目的としている。この用語は、カーペット、紙および段ボールのような2次元剛性を有する繊維製品を除くことを目的としている。これらの繊維製品は、時には布地として言及されるが、これらは実質的に一定の2次元形態を維持するようにして、内部で連結されている。これらが第3の次元において柔軟であってもよいが、これらは一般には、本当の布地において本来備わっているように、繊維層の平面内で自由に伸びたり歪んだりしない。好ましいのは、布地の基材は、長さが100メートルを超え、1メートルを超える幅を備えたロールなどに供給されることである。好ましい布地には、木綿および/または他の処理ずみセルロース系繊維、さらに、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリルニトリル、アセテートおよびトリアセテートあるいはこれらの混合物が含まれている。
【0024】
最も普通の仕上げ処理剤を使用する好ましい実施形態によれば、前記媒体は、好ましくは前記吐出される組成物中に60乃至90重量%で存在する蒸留水、脱塩水および/または脱イオン水である。
【0025】
本発明によると、補助溶媒が含まれてもよい。好ましい補助溶媒には、2−ピロリドンおよびイソプロピルアルコール(IPA)が挙げられ、これらは、0乃至5重量%で存在する。この補助溶媒は、仕上げ処理剤の溶解度および/または他の薬剤との親和性(compatibility)を改善するために使用されてもよい。これらの物質間の非親和性は、配合上、よくある問題である。
【0026】
本発明のある重要な態様によれば、かなり大量の残留固形分をこの組成物によって付着させることができる。この仕上げ処理組成物は、吐出される組成物に、全てで残留固形分を、5重量%より多く、好ましくは10重量%より多く、最も好ましくは15重量%より多く含んでもよい。これによって、乾燥において著しく少ないエネルギーが使用され、作動速度をより大きくすることができる。特に圧電型作動の場合には、20%までの残留固形分が吐出されてもよい。この例では、UV硬化性調合物の特定の場合は除外されるが、このような調合物では、100%の残留物が硬化時に有効に残存することができるからである。
【0027】
本発明のさらに別の態様によれば、この仕上げ処理組成物は、前記吐出される組成物に好ましくは10乃至35重量%で存在する保湿剤をさらに有していてもよい。この保湿剤は通常、噴射が作動しないときにノズルの殻化を防止するために使用される低揮発性、高沸点の液体である。水性システムにとって適切な保湿剤には、多価アルコール、グリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセロール、n−メチルピロリドン(NMP)が挙げられる。特定の調合物については5%より多い保湿剤が使用されているようであるが、実際には、同じ物質が粘度調整剤としても存在していることがある。
【0028】
前記仕上げ処理組成物は、前記吐出される組成物に好ましくは2乃至15重量%で存在する粘度調整剤を含んでもよい。この粘度調整剤は、液滴形成・分裂の過程を調整するので、信頼性および品質を向上させるために重要な成分である。この物質は、また、活性機能的仕上げ処理構成成分としても作用し、また、いくつかのエンドユーザー特性をもたらす。一般に、溶液中の高分子量ポリマーは、これらの弾性がジェットの分裂を実現することを困難にするため、避けるべきである。ピエゾ型動作では、2乃至15センチポイズの粘度が適切であり、なお、サーマル型動作では、ノズルの正常作動温度において測定したとき、粘度が1乃至4センチポイズであることが好ましい。
【0029】
この仕上げ処理組成物は、前記吐出される組成物に好ましくは0.01乃至0.3重量%で存在する湿潤剤をさらにまた含んでもよい。この湿潤剤は、発泡を減少させることができ、また、表面張力を低下させるとともに、前記ノズルおよび前記布地の濡れを改善することができる。このような湿潤剤には、エアー・プロダクツ社(Air Products)から入手可能なサーフィノール(Surfynol)104E(登録商標)、ダイノール(Dynol)604(登録商標)等が例示される。この組成物の表面張力は28乃至50dynes/cmであるのが好ましい。表面張力が高すぎるときには、この組成物は、印字ヘッドの内側を適切に濡らすことがなく、また、確実な付着を妨げるエアーポケットを残すであろう。この流体の表面張力が低すぎるときには、印字ヘッドノズルの中にメニスカスが適切に形成されることがなく、また、流体が印字ヘッドのフェースプレート(faceplate)上に自発的に流れ(フェースプレート湿潤と知られている)、また確実な吐出が妨げられる。
【0030】
さらに、この仕上げ処理組成物は、前記吐出される組成物に好ましくは0.5重量%まで存在する殺生物剤も含んでもよい。殺生物剤はこの組成物中で細菌が成長するのを防止するために使用される。これは、この組成物の他の構成成分が細菌を殺すために充分な濃度があるときには、必要でないであろう。例としてあげられる殺生物剤には、ゼネカ・スペシャルティーズ(Zeneca Specialties)から入手可能な1,2−ベンジソチアゾリン−3−オンおよびプロクセル(Proxel)GXL(登録商標)が含まれる。
【0031】
溶媒ベースシステムでの使用において、脱ガス剤が、吐出される組成物中に0.3重量%以下で含まれてもよい。これは、流体媒体から溶解されたガスを捕集したり、あるいは解放する役割をする。溶解されたガスは、作動中に印字ヘッド内に気泡を生成することにより、最も信頼性のある吐出周波数を制限する。適当な脱ガス剤には、シクロヘキサンオンオキシム、およびエアー・プロダクツ社(Air Products)から入手可能なサーフィノール(Surfynol)DF75(登録商標)等が例示される。
【0032】
この仕上げ処理組成物は、前記吐出される組成物に好ましくは1重量%まで存在するpH調整剤をさらに有していてもよい。このpH調整剤は、組成物の固形分が安定に分散されるpH、通常はこれはpH>7である、を維持するために使用され、たいていはアルカリ性である。pH調整剤はまた、前記組成物/活性剤と布地自体との間における相互作用の化学性に影響を及ぼすためにも使用される。アンモニア、モルホリン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンおよび酢酸が適切なpH調整剤である。一般に、印字ヘッドでの腐食を減少させるためには、比較的中性の溶液を使用することがインクジェットの観点から望ましい。例えば、化学的側面から高アルカリ性溶液に対する必要性がある場合は、セラミック(圧電型)印字ヘッドが使用されてもよい。
【0033】
この仕上げ処理組成物は、前記吐出される組成物に好ましくは0.2重量%まで存在する腐食抑制剤をさらに含んでもよい。この腐食抑制剤は、流体中に(通常は活性構成成分に由来する不純物として)存在する望ましくないイオンがプリンタの腐食を引き起こすのを防止するために使用される。
【0034】
本発明のさらに別の態様によれば、この仕上げ処理剤は、劣化することなくせん断に対して耐性を有することができるために選択することができる。特に、この仕上げ処理剤は、少なくとも10/sまでのせん断に対して安定であるべきである。インクジェットプリントは高せん断技術であるため、高せん断に対して安定ではない物質は、印字ヘッドノズル内で分解して同ノズルを詰まらせるおそれがあり、また、基材についての望ましい用途あるいはエンドユーザー特性を提供しえなくなる。本発明は、DoDのための仕上げ処理組成物を目的とするが、それにもかかわらず、この組成物は、バルブジェット装置のような、圧力、せん断力およびノズル径の類似した条件が検討される、他の吐出付着技術のためにも適しているであろうと考えられる。
【0035】
本発明のさらに代わりの実施形態によると、前記仕上げ処理組成物は、好ましくは、吐出された組成物中に75乃至95重量%で存在するUV硬化性有機希釈剤に基づいていてもよい。このようなUV硬化性組成物は、迅速に硬化されて、きわめて耐久性があり、特定の薬剤のための担体として理想的である。UV硬化性組成物において特別な点は、実質的に付着された物質全体が基材に残存するということである。しかしながら、溶媒は、時々粘度を減少するために追加することもできるが、このことは、一般に好ましくはない。UV硬化性仕上げ処理組成物において、光開始剤が、好ましくは吐出される組成物中に3乃至20重量%で存在してもよい。
【0036】
この仕上げ処理剤は、布地の基材に機能的特性を付与することができるどんな適切な薬剤であってもよい。具体的には、これは、帯電防止剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤、薬用剤、毛玉防止剤、しわ防止剤、難燃剤、撥水剤、紫外線保護剤、防臭剤、耐摩耗剤、滑り止め剤、滑り促進剤、定着促進剤、耐汚染剤、耐油剤、接着剤、硬化剤、柔軟剤、伸縮性促進剤、顔料結合剤、導電剤、半導電剤、感光剤、光起電剤、および発光剤からなるグループから選択することができる。
【0037】
薬品すなわち薬用剤あるいは生物活性剤と使用するために、担体を使用することができる。薬剤は低い温度、例えば40℃未満の温度で吐出させることができる。適切な担体には、シクロデキストリン、フラーレン、アザクラウンエーテル、さらにはポリ乳酸(PLA)が含まれる。これらの担体は、布繊維および薬剤の両方への付着に向いているのが理想的である。これらの担体の検討は、オーテックス・リサーチ・ジャーナル(Autex Research Journal)の第2巻、第4号のBretelerらによる論文、表題「医療用途での布地緩慢解放システム」(Textile Slow Release System with Medical Applications)において見出され、この論文の内容は、全体が参照として本明細書に組み入れられる。極微粒子で使用するために特に適している代替の担体はゾルゲル系である。
【0038】
本発明はまた、布地の基材の実質的に連続的な供給を行うことと、複数のドロップ・オン・デマンド式インクジェットノズルからなる配列を設けることと、これらのノズルへ、前記全ての請求項のいずれか1に記載の仕上げ処理組成物を供給することと、前記ノズルから前記組成物を一連の液滴で選択的に分配し、前記基材に所定分布の複数の液滴を付着させることとを具備する布地を仕上げ処理する方法に関するものである。
【0039】
前記方法の一態様によれば、前記液滴を、5乃至15m/sの速度でノズルから分配することができる。また、前記液滴を、30KHzまでの周波数で形成することができる。
【0040】
前記ノズルは、ピエゾ型であることが好ましい。このようなノズルは、CIJノズルより非常に安価であり、使用される組成物の物理的特質の影響を受けにくい。特に、比較的高い速度および比較的多い固形分のパーセンテージが使用されうるため、比較的高い濃度の活性構成成分が吐出されうる。また、敏感な薬剤に対しては、より低いせん断が加えられ、セラミックヘッドを使用することにより、他の場合では腐食性である製品を取り扱うこともできる。
【0041】
代わりに、サーマル型印字ヘッドが、高温への露出が問題にならないか、あるいは好ましい場合に採用されてもよい。また、微細なバルブが周期的に開閉されるバルブジェット装置が、本明細書において定義されたような類似の組成物を使用する際に、類似の機能性を提供することができるとも考えられる。
【0042】
また好ましいのは、前記基材の上に、30g/mより多くの、より好ましくは約50g/mの湿潤性組成物が付着されることである。
【0043】
本発明はさらに、上で定義されたような仕上げ処理組成物を含む仕上げ処理で設けられているか、あるいは、本発明の前記方法によって仕上げられている布製品に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
本発明のさらに別の利点、特徴および細部は、本発明の好ましい実施形態についての以下の記載に基づいて明らかになる。
【0045】
参照は添付図面の説明に関して行われる。
【0046】
以下は、ほんの一例として、図面を参照して与えられた、本発明の複数の実施形態の説明である。図2乃至図5は、本発明を実施するための布地品質向上機1を示している。この品質向上機1は実質的に、未刊行のPCT出願であるPCT/EP2004/010732号およびPCT/EP2004/010731号に示唆されたようなものである。布地品質向上機1は、電動モータ(図示略)を使用して駆動される無限軌道のコンベアベルト2から組み立てられている。コンベアベルト2には、いくつかの作業を受けるハウジング3に沿って矢印P1の方向に搬送するために布製品Tを取り付けることができる。最後に、布地は矢印P2の方向に取り外されて排出される。ハウジング3の中には多数のノズル12が配置されている。これらのノズルは連続に置かれた平行なビーム14に配置されている。第1の列4、第2の列5、および第3の列6などが、このように形成されている。これらの列の数は、変えることができ(図5では破線で表されている)、また、とりわけ所望数の操作についての他の因子によって左右される。1列当たりのノズルの数もまた、変えることができ、また、とりわけこの布地へ適用されるデザインの所望の解像度によって左右される。特に好ましい実施形態では、前記ビームの有効幅は約1mであり、また、これらのビームには、各々が50乃至100μmの約8個のノズルを有している固定して配置された約29個のインクジェットヘッドが設けられている。ノズル12の各々は、インク、染料あるいは仕上げ処理組成物の液滴からなる流れを発生させることができる。
【0047】
図5において、個々の(different)ノズル12が、ネットワーク15によって、例えばマイクロコントローラあるいはコンピュータを備えた中央制御ユニット16へ(電気的にあるいは無線で)接続されていることが破線で示されている。コンベアベルト2の駆動装置もまた、ネットワーク15’を介して、前記制御ユニットへ接続されている。この場合、この制御ユニットは、要求に応じて、前記駆動装置と個々のノズルとを作動させることができる。
【0048】
塗布される仕上げ処理組成物あるいは染料が収容されている2重タンクもノズル4乃至11からなる列ごとに配置されている。複数のノズルからなる第1の列4には、タンク14a、14bが設けられ、第2の列5にはタンク15a、15bが設けられ、第3の列6には、タンク16a、16bが設けられ、同様に続く。適切な物質は、列の2つのタンクのうち少なくとも一方に収容されている。
【0049】
個々のタンクは適当な物質で充填され、異なる列に配置されたノズル12は前記布製品が適切な処理を受けるように向付けられている。図6に示された状況では、第1の列4のタンク14aには、シアン色インクが収容され、第2の列5のタンク15aには、マゼンタ色インクが収容され、第3の列6のタンク16aには、黄色インクが収容され、第4の列7のタンク17aには、黒色インクが収容されている。この布製品には、列4乃至7で、50ミクロンのCIJノズルを使用した染色/プリント処理でパターンが設けられる。次の3つの列8乃至10のタンクには、本発明による1つ以上の仕上げ処理組成物が収容され、処理された布地を35ミクロンのDoDサーマルインクジェットノズルが使用される3つの通路でコーティングすることができる。第8の列11のタンクにはさらに別の仕上げ処理組成物が収容され、プリントされかつコーティングされた布地を仕上げ処理することができる。この場合には、これらのノズルは、30ミクロンの開口を有するDoDのサーマルインクジェット型である。この実施形態では、布製品Tは、コーティングおよび/または仕上げ処理に影響を及ぼすために、光源13からくる赤外線で第5列乃至第8列の位置で処理されることが好ましい。
【0050】
図7は、この布地が別の処理シーケンスを受ける別の状況を示されている。布製品Tは、まず、この布地を複数のノズルからなる第1の列4と第2の列5とに沿って案内することにより、染色される。これらの列4、5は、70ミクロンの複数のノズルを有し、この布地に比較的滑らかな色つきコーティングを施す。第3の列6乃至第5の列8では、染色された布地は、続いて、上述のようにコーティングされ、その後に、第6の列9と第7の列10とで、最終の仕上げ処理工程が実行される。
【0051】
図8に示された実施形態では、この布製品は、まず、複数のノズルからなる第1の列4に沿って案内される。この列4の複数のノズルは、約70ミクロンであり、この布地に幅全体にわたって滑らかな全背景色を与える。この布製品は、続いて、前記コンベアベルトにより、第2の列5と第3の列6とに沿って案内され、処理された面にパターンがプリントされる。このプリント工程では、30乃至50ミクロンの微細ノズルを使用して、列5および列6で良好な解像度(definition)を達成することができる。この布地は、続いて、第4の列7乃至第6の列9に沿って案内され、染色されプリントされた布地は、3つの通路でコーティングされる。その後に、第7の列10と第8の列11とで、最終の仕上げ処理工程が実施される。
【0052】
たとえ布地の搬送がなく中断しなければならない場合にも、連続的に搬送される布製品又は布製品の複数部分を異なった方法で処理することは可能である。例えば、ノズル12のコンピュータ制御により、連続的に供給される布製品に各々の場合に異なるデザインを与えることは可能である。タンクを適切に選択することによって、布地へ異なる物質を塗布することも可能である。第1のタンク14a、15a、16aは、例えば第1のタイプの布地についての各々の場合に使用され、一方、第2タンク14b、15b、16bは別のタイプの布地について使用される。
【0053】
例1
難燃剤組成物マン(Man)10が、表1に示されている仕様に従って調製された。
【表1】

【0054】
前記調合物の物理的性質を表2に示す。
【表2】

【0055】
調合物Man10が、トライデントウルトラジェット(Trident Ultrajet)II(登録商標)32/96(フェースプレートは32個のチャネルを有し、チャネル当たり3個のノズルを有する)に搭載され、この調合物は、比較的容易に下塗りされた。調合物Man10に対する、異なる液滴のサイズ設定におけるジェットの分裂および液滴の形成が、ビジョンジェット・オブティカ(VisionJet Optica)(登録商標)システムを用いて撮像された。このシステムは、吐出工程中に液滴の形成の画像を撮像するものである。17μsのパルス幅(この印字ヘッドに対する標準設定)では、2つの液滴が形成(1つの主滴および付随体(satellite))された反面、20μsのパルス幅では、1つの液滴が形成された(前記付随体と主滴とが融合された)。
【0056】
上記の実施例は、エネルギー消費の削減に加えて、実質的にどの程度の化学物質しか必要とされないのかを示している。現在の製造技術では、1平方メートル当たり約150グラムの湿潤性物質(化学物質)が必要とされうる。デジタル式プリントでは、この布地により正確な分散され少吸収がより少ないことにより、塗布される化学物質の量は、1平方メートル当たり50グラム未満の湿潤性物質まで減少させることができる。これによって、この化学物質を約66%節約することが可能である。この節約は、主要化学物質にだけでなく、主要化学物質の作用、固定および/または反応性を促進するために、デジタル式プロセスにおいて基材が前処理される塩類のような添加剤にも関わる。これらの添加剤でも66%の節約が行われることが期待される。最後に、廃水の発生およびこの廃水の汚染影響を90%より大きく削減することができる。
【0057】
前記の実施例はそれぞれ、難燃性および帯電防止コーティングに関するものであるが、類したプロセスパラメータを従来の布地コーティングのために使用することができる。
【0058】
例2
本発明により提案された第2の例示的なコーティング手続では、基材1平方メートル当たり100グラムの重量を有する、長さ1,800メートルおよび幅1.6メートルの、漂白および乾燥された木綿の布地の基材を、撥水性コーティングでコーティング処理する。前記コーティングは、単一工程作業で行われる。
【0059】
上記によると、難燃剤組成物が、表3に示されている使用のように調製され、付着される。
【表3】

【0060】
前記調合物の物理的性質を、表4に示す。
【表4】

【0061】
前記調合物は、10g/mの速度で、室温で50ミクロンのDoDノズルを介して吐出される。このようなパラメータの選択により、前記撥水剤の浸透深さが、液滴が布地の表面上に付着されるように制御できるようになる。
【0062】
吐出後に、前記布製品は、紫外線への露出によって硬化される。得られた層は、重量が、ほぼ10g/mである。
【0063】
図9は、撥水性コーティング物質の4つの画素102が付着された織布100の一部の概略図を示している。実施例1に基づいて、ベイガード(Bayguard)(登録商標)を活性構成要素として用いる調合物が好ましいものと思われる。この布地100は、繊維104どうしの間のメッシュ状開口106を備えたメッシュ状に配置された繊維104を備える。繊維間隔はおよそ40ミクロンであり、また、これらの画素102は、各々、およそ100ミクロンの直径を有する。図9からわかるように、それぞれの画素102は少なくとも4つの開口106全体を有効に被覆している。加えて、これらの画素102は、隣接する画素102の間に細孔108が形成されている点で、完全に閉じられたコーティングを形成しないことがわかった。
【0064】
図10は、図9の布地100の10−10線に沿う断面図である。画素102はほぼ隣接する繊維104の間の開口106にわたってこの布地の面に配置されていることがわかった。このコーティング物質の粘性のために、各画素102はその形状を部分的に維持し、画素102は重なり合った領域においてともに流れる(flow together)が、個々の画素は依然として識別可能である。さらに、画素102を形成するこのコーティング物質はコーティング面で繊維104を部分的に覆って、繊維104との良好な結合を形成することがわかった。このコーティング物質の粘度は、この物質の適正な含浸度が保証されるように選定される。
【0065】
図11は、コーティング物質のより小さい液滴110が塗布された布地100に沿った、図10に類似した図を示している。これらの液滴110は、前記メッシュ状開口106と同様のサイズであり、この開口の中へ入り込むとともにこの開口を通り抜けることさえある。この結果に生じる効果は、図10の場合よりも不均一である。これは、表面仕上げ処理を施すためよりもむしろ、仕上げ処理組成物をこの物質の中へ導入するために使用することができる。
【0066】
上記のいくつかの例は本発明の好ましいいくつかの実施形態を示しているが、添付の特許請求の範囲によって規定されるように、本発明の精神および範囲に入る他のさまざまな構成も考えることができるということに留意すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】基材を品質向上させるための従来のプロセスの概略的なブロック図を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態で用いることができる布地品質向上機の斜視図である。
【図3】図2の布地品質向上機の概略的な側面図である。
【図4】図2の布地品質向上機の概略的な正面図である。
【図5】図2の布地品質向上機の概略的な断面図である。
【図6】品質向上のための様々な処理工程を実行するための好ましいシーケンスの概略図である。
【図7】品質向上用の工程を実行するための代わりの好ましいシーケンスの概略図である。
【図8】品質向上用の工程を実行するための別の好ましいシーケンスの概略図である。
【図9】本発明によってコーティングされた織布の一部の概略図である。
【図10】図9の布地の10−10線に沿う断面図である。
【図11】比較的小さい液滴が使用されたコーティングずみ布地における図10に類似した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドロップ・オン・デマンド式インクジェット技術によって布地の基材に付着を行うための仕上げ処理組成物であって、媒体に機能的仕上げ処理剤の分散液あるいは乳液を具備し、この仕上げ処理組成物の前記分散液または乳液中の粒子のサイズが、2ミクロン未満、好ましくは1ミクロン未満、より好ましくは0.5ミクロン未満であり、凝集または沈降が起こらない仕上げ処理組成物。
【請求項2】
吐出される前記組成物に、好ましくは0.01乃至0.3重量%で存在する湿潤剤をさらに具備する請求項1に記載の仕上げ処理組成物。
【請求項3】
付着時の前記組成物の表面張力が28乃至50dynes/cmである前記全ての請求項のいずれか1に記載の仕上げ処理組成物。
【請求項4】
ノズルの正常作動温度において測定すると、ピエゾ型の動作では、前記組成物の粘度が2乃至15センチポイズであり、サーマル型の動作では、前記粘度が1乃至4センチポイズである前記全ての請求項のいずれか1に記載の仕上げ処理組成物。
【請求項5】
吐出された前記組成物中の残留固形分の総量が5重量%より大きく、好ましくは10重量%より大きく、最も好ましくは15重量%より大きい前記全ての請求項のいずれか1に記載の仕上げ処理組成物。
【請求項6】
前記媒体は水であって、好ましくは、吐出された前記組成物中に60乃至90重量%で存在する前記全ての請求項のいずれか1に記載の仕上げ処理組成物。
【請求項7】
噴射される前記組成物に、好ましくは20重量%以下で存在する補助溶媒をさらに具備する前記全ての請求項のいずれか1に記載の仕上げ処理組成物。
【請求項8】
吐出される前記組成物に好ましくは10乃至35重量%で存在する保湿剤をさらに具備する前記全ての請求項のいずれか1に記載の仕上げ処理組成物。
【請求項9】
吐出された前記組成物に好ましくは2乃至15重量%で存在する粘度調整剤をさらに具備する前記全ての請求項のいずれか1に記載の仕上げ処理組成物。
【請求項10】
吐出される前記組成物に好ましくは0.5重量%以下で存在する殺生物剤をさらに具備する前記全ての請求項のいずれか1に記載の仕上げ処理組成物。
【請求項11】
吐出される前記組成物に好ましくは1重量%以下で存在するpH調整剤をさらに具備する前記全ての請求項のいずれか1に記載の仕上げ処理組成物。
【請求項12】
吐出される前記組成物に好ましくは0.2重量%以下で存在する腐食抑制剤をさらに具備する前記全ての請求項のいずれか1に記載の仕上げ処理組成物。
【請求項13】
前記媒体は、UV硬化性有機希釈剤であり、好ましくは吐出される前記組成物に75乃至95重量%で存在する請求項1乃至4のいずれか1に記載の仕上げ処理組成物。
【請求項14】
前記吐出される組成物に好ましくは3乃至20重量%で存在する光開始剤をさらに具備する請求項13に記載の仕上げ処理組成物。
【請求項15】
前記仕上げ処理剤は、少なくとも10/sまでのせん断に対して安定である前記全ての請求項のいずれか1に記載の仕上げ処理組成物。
【請求項16】
前記仕上げ処理剤は、帯電防止剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤、薬用剤、抗剥離剤、しわ防止剤、難燃剤、撥水剤、紫外線保護剤、防臭剤、耐摩耗剤、抗スリップ剤、スリップ促進剤、グリップ増強剤、耐汚染剤、撥油剤、接着剤、硬化剤、柔軟剤、伸縮性促進剤、顔料結合剤、導電剤、半導電剤、感光剤、光起電剤、および発光剤からなるグループから選択される前記全ての請求項のいずれか1に記載の仕上げ処理組成物。
【請求項17】
前記仕上げ処理剤は、ゾル−ゲルに浮遊するナノ粒子を有する前記全ての請求項のいずれか1に記載の仕上げ処理組成物。
【請求項18】
布地の基材の実質的に連続的な供給を行うことと、
複数のドロップ・オン・デマンド式インクジェットノズルからなる配列を設けることと、
これらのノズルへ、前記全ての請求項のいずれか1に記載の仕上げ処理組成物を供給することと、
前記ノズルから前記組成物を一連の液滴で選択的に分配し、前記基材に所定分布の複数の液滴を付着させることとを具備する布地を仕上げ処理する方法。
【請求項19】
前記液滴は、前記ノズルから5m/s乃至15m/sの速度で分配される請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記液滴は、10KHzより大きな、好ましくは20KHzより大きな周波数で形成される請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
前記ノズルは、ピエゾ型であり、液滴は、圧電式励振によって形成される請求項18乃至20のいずれか1に記載の方法。
【請求項22】
前記ノズルは、サーマルインクジェット型であり、液滴は、局所的気化によって形成される請求項18乃至20のいずれか1に記載の方法。
【請求項23】
前記ノズルは、バルブジェット型であり、液滴は、周期的にバルブを開閉することにより形成される請求項18乃至20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記基材に、30g/mより多くの、好ましくは50g/mより多くの湿潤組成物が付着される請求項18乃至23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
請求項1乃至17のいずれか1に記載の仕上げ処理組成物からなる仕上げ処理が施され、又は請求項18乃至24に記載の方法によって仕上げ処理された布製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2008−537573(P2008−537573A)
【公表日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−502415(P2008−502415)
【出願日】平成18年3月22日(2006.3.22)
【国際出願番号】PCT/EP2006/060969
【国際公開番号】WO2006/100277
【国際公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(506094529)テン・ケイト・アドバンスト・テクスタイルス・ビー.ブイ. (7)
【Fターム(参考)】