説明

布製品の製造方法

【課題】本発明は、乾燥処理前に布地に衝撃を加えることによりふわふわ感を有するタオルや手袋が形成される布製品の製造方法を提供することを目的とするものである。
【解決手段】本発明は、布を複数枚重ねて、その周辺を縫製する工程と、前記縫製した布を湿らせた状態とする工程と、前記水分を含ませた布に衝撃を与える工程と、前記衝撃を与えた布を乾燥させる工程を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布製品の製造方法に関する。詳しくは例えば乳児沐浴用タオル、あるいは浴用手袋などの布製品の製造方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来より乳児、高齢者あるいは病人介護の浴用を目的とするタオルが提案されており、例えば特許文献1に記載されている。具体的には図6に示すように、他数個のループ101を形成した糸102により織り上げてその一方面側にループ101を表出したタオル地風合いの生地103と、その生地103の他方面側にガーゼ104を重ね合わせた構成とされている。
【0003】
また、浴用を目的とする手拭として手袋型タオルが提案されており、例えば特許文献2に記載されている。具体的には図7に示すように、タオル生地の手袋型タオル105に親指袋106と人指し袋107並びに中指、薬指、小指用袋108を設けた構成とされている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−332146号公報
【0005】
【特許文献2】特開2002−85282号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特許文献1に記載された発明では、一方面側にタオル生地と他方面側にガーゼ生地が設けられているために通水性の優れたガーゼ生地を通して保水性の良いタオル生地に吸水されるために乳児の浴用のようにお湯に浸しながら体を洗うには扱い難くなる問題がある。
【0007】
また、特許文献2に記載された発明では、タオル生地により形成されるために水を吸収すると重くなり、かつ使用中にタオル生地がほつれてくることが多い。
【0008】
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであって乾燥処理前に布地に衝撃を加えることによりふわふわ感を有するタオルや手袋が形成される布製品の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明に係る布製品の製造方法は、布を複数枚重ねて、その周辺を縫製する工程と、前記縫製した布を湿らせた状態とする工程と、前記水分を含ませた布に圧縮方向への衝撃を与える工程と、前記衝撃を与えた布を乾燥させる工程を備える。
【0010】
ここで、布を湿らせた状態で圧縮方向への衝撃を与えて乾燥させることにより、複数枚の布の繊維が互いに絡み合いふわふわ感のある仕上げとなり、肌に対して良好な肌ざわり感を得ることができる。
【0011】
また、縫製する工程として複数枚重ねて外表に合わせて縫ったあと裏に返し、裁ち目を中に包むようにして縫い合わせることにより縫い代が表に出ることなく布製品の周辺を扁平することなくきれいに仕上げることが可能となる。
【0012】
また、布が脱脂処理をした医療用ガーゼとすることにより、目が粗く、この目の粗さがほどよいマッサージ効果と、水の吸収が一般のガーゼと比較して著しく良く、かつ軽く握るだけで吸収した水分を排出することができる。
【0013】
また、縫製した布を湿らせた状態として縫製した布に染色や水洗いにより水分を含ませて圧縮方向への衝撃を与えことにより布生地の繊維を確実に収縮させることが可能となる。
【0014】
また、乾燥させる工程として乾燥機によって衝撃を与えた布に熱を加えて乾燥させることにより効率良く、かつ急激に乾燥させることで、ふわふわ感を向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の布の製造方法では、複数枚の布を重ねて、その周辺を縫製し、染色による水分の含んだ状態、あるいは水分を与えて圧縮方向への衝撃を与えて乾燥させることにより繊維が互いに絡み合うような状態となり重なり合うことで肌に対して良好なやわらか感および肌ざわり感を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面を参酌しながら説明し、本発明の理解に供する。
図1に、本発明を適用した布製品の製造方法の一例を示すフローチャート図、図2(
図2(A)はガーゼ生地を重ねた状態を示し、図2(B)はガーゼ生地の3辺を縫い合わせて裁ち目を中に包むように裏返した状態、図2(C)はカーゼ生地を裏返して開口端を縫製した状態を示す)に本発明を適用した布製品としてタオルの縫製工程を示す説明図である。
【0017】
ここで、タオルの生地として医療用ガーゼを使用する。この医療用ガーゼは、40番の糸を使い、打ち込み数(糸の本数)は1cm角に縦、横11本前後とし、苛性ソーダに晒した後に、洗剤による水洗いをして糸に付着している脂肪分を除去する精錬工程および漂白処理がなされている。
【0018】
したがって、一般のガーゼを比較して目が粗く、この目の粗さがほどよいマッサージ効果と、水の吸収が一般のガーゼと比較して著しく良く、かつ軽く握るだけで吸収した水分を排出することができる。
【0019】
ここで、図1における縫製工程では、図2(A)で示すように、ガーゼ生地1を複数枚(本実施例では5枚)重ねた状態で、その両側端と上、下の一方端に沿って縫製する。次に、図2(B)に示すように、縫製されていない開口端より縫製されたガーゼ生地1の両側端が裏返しとなるようにひっくり返す。そして図3(C)に示すように、縫製されていない開口端を折り返して縫製する。これにより複数枚重ねられたガーゼ生地1の周囲が縫製された状態でのタオル2が形成される。
【0020】
縫製されたタオル2は、染色を行う場合では染色工程において染色液に浸すことにより所望の色に染め上げられる。また、染色を行わない場合では水処理工程において水を含浸させる。
【0021】
次に、染色工程、あるいは水処理工程においてガーゼ生地に水分が含まれた状態で手等によって圧縮、あるいは圧壊するような衝撃を与える。そして乾燥処理工程において乾燥機による乾燥、あるいは天日干しによる乾燥を行う。
【0022】
なお、乾燥処理工程においてドラム式の乾燥機を使用する場合には、ドラムが回転する際にドラム内に突設される羽根によってガーゼ生地に衝撃が与えられる。したがって、染色工程、あるいは水処理工程においてガーゼ生地に水分が含まれた状態でガーゼ生地を投入することで衝撃・乾燥を同時に行うことが可能となる。
【0023】
次に、図3は本発明を適用した布製品としてのタオルを示すものであり、乾燥されたガーゼ生地は、複数枚に重ね合わせられるガーゼ生地1の繊維が互いに絡み合うような状態となり重なり合うガーゼ生地2との間で空隙を保持した状態で乾燥される。
【0024】
また、タオル2表面のガーゼ生地1はふわふわした状態、所謂ワッフル状に形成されることになり肌触り感が非常に良くなる。
【0025】
次に、図4Aは本発明を適用した布製品として手袋の縫製した状態を示す説明図、図4Bは、本発明を適用した布製品として手袋の縫製完成状態を示す説明図である。
ここで、手袋の生地として医療用ガーゼを使用する。この医療用ガーゼを上,下3枚ずつ(合計6枚)重ね、浴用手袋型紙3の線に縫い代をつけて裁断する。そして浴用手袋型紙3の線に合せて重ね縫いする。この場合には、1mm〜1.5mm外側をほつれ防止のためもう一度縫う。更に、指の付根の部分は縫い代に少し切込みを入れて広げやすくする(図4A参照)。
【0026】
ここで、重ね縫いされた手袋を裏返す場合には、3枚と3枚で裏返すと縫い目および縫い代がそのまま中に出るため、2枚と4枚で裏返すと縫い目および縫い代は布の中に入り、指に当たることがなく、手袋4を形成することができる。そして手首部分にゴム5を入れて収縮性をもたせる。これにより手袋4は、親指挿入部6及び人指し指挿入部7並びに中指、薬指、小指挿入部8から構成される(図4B参照)。
【0027】
縫製された手袋4は、図1において詳述するように、染色を行う場合では染色工程において染色液に浸すことにより所望の色に染め上げられる。また、染色を行わない場合では水処理工程において水を含浸させる。
【0028】
次に、染色工程、あるいは水処理工程においてガーゼ生地に水分が含まれた状態で手等によって圧縮、あるいは圧壊するような衝撃を与える。そして乾燥工程において乾燥機による乾燥、あるいは天日干しによる乾燥を行う。
【0029】
なお、乾燥処理においてドラム式の乾燥機を使用する場合には、ドラムが回転する際にドラム内に突設される羽根によってガーゼ生地に衝撃が与えられる。したがって、染色工程、あるいは水処理工程においてガーゼ生地に水分が含まれた状態でガーゼ生地を投入することで衝撃・乾燥を同時に行うことが可能となる。
【0030】
次に、図5は、本発明を適用した布製品として手袋を示すものであり、乾燥されたガーゼ生地は、複数枚に重ね合わせられるガーゼ生地1の繊維が互いに絡み合うような状態となり重なり合うガーゼ生地2同士間で空隙を保持した状態で乾燥される。
【0031】
また、手袋4表面のガーゼ生地1はふわふわした状態、所謂ワフッル状に形成されることになり肌触り感が非常に良くなる。
【0032】
なお、本実施例で詳述したタオル、あるいは手袋の生地は必ずしも医療用ガーゼを使用する必要性はなく、脂肪除去処理がなされ、かつ吸水性に優れたものであればいかなる生地であっても構わない。
【0033】
なお、本実施例において詳述した縫製されたタオル、あるいは手袋などの布製品は、必ずしも染色液や水に浸す必要性はなく、水が噴霧された状態、あるいは脱水機により脱水した後のように全体が湿った状態であればよい。
【0034】
また、本実施例における乾燥処理工程では、通常の天日干し、あるいは乾燥機による乾燥などいかなる乾燥方法であっても構わないが、乾燥機により熱を加えながら乾燥させることで天候左右されることなく効率的に均一な布製品を製造することができる。
【0035】
また、本実施例における縫製工程では、布製品の周辺が縫い代が出ずにきれいに仕上げることができるように複数枚重ねて外表に合わせて縫ったあと裏に返し、裁ち目を中に包むようにして縫い合わせる方法を採用したが、必ずしもこの縫製方法である必要性はなく、いかなる縫製方法であっても構わない。
【0036】
以上の構成よりなる本発明の布製品の製造方法では、タオル、あるいは手袋などの布製品の生地として医療用ガーゼを使用することによって、通常の服地用ガーゼを使用する場合に比べた場合に、通常の服地用ガーゼでは、目が細かく脂肪やロウなど綿が本来もっている不純物の除去が不完全なために吸水が悪く、かつ排水性に劣る。また、生地同士が重なり合った状態であるために織り目に水や石鹸が詰まることにより本来のガーゼ生地の機能が損なわれる恐れがある。それに比べて医療用ガーゼでは、水分を含んだ状態で圧縮、または圧壊するような衝撃を与えて乾燥させることにより複数枚のガーゼ生地の繊維が互いに絡み合いふわふわ感のある仕上げとなり、肌に対して良好な肌ざわり感を得ることができる。
【0037】
また、乳児のおくるみとして使用する場合においても、通常の服地用ガーゼでは、肌ざわり感、あるいはふわふわ感が乏しく、更に複数枚重ねた状態であるために空隙率が小さく、保温性が劣るものであるが、タオル、あるいは手袋などの布製品の生地として医療用ガーゼを使用することによって洗濯を繰り返してもガーゼ生地のふわふわした状態を保持することができるために保温性の優れた布製品の製造を可能とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明を適用した布製品の製造方法の一例を示すフローチャート図である。
【図2】本発明を適用した布製品であるタオルの製造工程の一例を示す説明図である。
【図3】本発明を適用した布製品であるタオルの斜視図である。
【図4A】本発明を適用した布製品である手袋の縫製工程の一例を示す説明図である。
【図4B】本発明を適用した布製品である手袋の縫製が完了した状態を示す説明図である。
【図5】本発明を適用した布製品である手袋の斜視図である。
【図6】従来のタオルの一例を示す説明図である。
【図7】従来の手袋の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0039】
1 ガーゼ生地
2 タオル
3 浴用手袋型紙
4 手袋
5 ゴム
6 親指挿入部
7 人指し指挿入部
8 中指、薬指、小指挿入部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
布を複数枚重ねて、縫製する工程と、
前記縫製した布を湿らせた状態とする工程と、
前記湿った状態の布に圧縮方向への衝撃を与える工程と、
前記衝撃を与えた布を乾燥させる工程を備える
布製品の製造方法。
【請求項2】
前記縫製する工程とは、布を複数枚重ねて外表に合わせて縫ったあと裏に返し、裁ち目を中に包むようにして縫い合わせる
請求項1記載の布製品の製造方法。
【請求項3】
前記布が脱脂処理をした医療用ガーゼとする
請求項1記載の布製品の製造方法。
【請求項4】
前記縫製した布を湿らせた状態とする工程とは、布に水分を含ませる
請求項1記載の布製品の製造方法。
【請求項5】
前記乾燥させる工程とは、熱を加えながら乾燥させる
請求項1記載の布製品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−247415(P2009−247415A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−95715(P2008−95715)
【出願日】平成20年4月2日(2008.4.2)
【出願人】(505334617)
【Fターム(参考)】