説明

布類反転装置

【課題】ワーク即ち布類の先端と尾端が入れ替わってからでなくても、次の布類に対する反転作業を実行することができるようにする。
【解決手段】第1コンベアによって搬送される布類を第2コンベアへ反転させて乗せる装置について、第1コンベア11の端部と第2コンベア12の端部との間に間隔を設けて、かつ、第2コンベアが低位置となるように配置し、第1コンベアの端部から先端部分が垂れ下がって来る布類wを載せて一時溜めておくために、第1コンベアよりも低速で布類を搬送するストックコンベア14を第1及び第2コンベアの下部に配置し、第1コンベアの端部に下がっている、布類の尾端部分zを保持して第2コンベア上へ渡すために受け渡し機構15を第1コンベアの前方、かつ、第2コンベアの上部に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1コンベアから搬送されて来る布類を第2コンベアへ反転させて乗せる布類反転装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タオル、シーツ等の布類を顧客先から回収して洗濯し、アイロンを掛けて仕上げ、納品するいわゆるリネンサプライ業においては、例えば、汚れや破れなどを検出するために、布類の表裏を反転する必要が生じる。検品以外では、ガウンなどの衣類の胸を上にして折り畳む胸出し畳み、或いは胸を下にして折り畳む背出し畳みのどちらかを選択する場合にも、衣類を反転させることが必要になる。
【0003】
汚れや破れなどを検出する発明としては、例えば特開2004‐177143号の欠陥布類検出装置に関する発明があり、これは、表向きに搬送される布類を裏向きに反転させて搬送する裏向き搬送部を搬送コンベアに設けている。この構成の場合裏向き搬送部として上下のコンベアを必要とするとともに、同コンベアの下部を包み込むようなコンベアを設けなければならず、コンベアを非常に複雑に組み合わせなければならない。また、特開2005‐325489号の両面検査装置の発明では、前段コンベアからワークを受け取って裏返すために、前段コンベアに一部が重なりかつ逆方向へ回転する後段コンベアを設けている。しかし、このような構成を取る場合には搬送間隔を広く設定しなければならないという問題が生じる。
【0004】
即ち、従来は前段コンベアから搬送されるワークw1の先端部分aを、後段コンベアbにて傾斜ガイドcを用いて押し上げるとともに保持部材dによって摘み上げ(図8A)、その間にワークの尾端部分zを後段コンベアbにて進行させ(図8B)、先端aと尾端zを入れ替え(図8C)、その後ワークの保持を解除して表裏の反転を行うものである。このため、先行するワークw1の先端aと尾端zが入れ替わってからでなければ、後続するワークw2の反転に移れず(図8D)、従って、先行、後続ワーク間にはワーク1枚分の長さに等しいだけの間隔を保持して搬送しなければならない。これは、作業速度の向上のために大きなネックとなる。
【0005】
【特許文献1】特開2004‐177143号
【特許文献2】特開2005‐325489号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記の点に着目してなされたもので、その課題は、ワーク即ち布類の先端と尾端が入れ替わってからでなくても、次の布類に対する反転作業を実行することができるようにして、作業速度を向上することである。また、本発明の他の課題は、布類1枚分の長さに等しいだけの間隔を保持することなく搬送可能な、布類の反転装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するため、本発明は、第1コンベアによって搬送される布類を第2コンベアへ反転させて乗せる装置として、第1コンベアの端部と第2コンベアの端部との間に間隔を設けて、かつ、第2コンベアが低位置となるように配置し、第1コンベアの端部から先端部分が下がって来る布類を載せて一時溜めておくために、第1コンベアよりも低速で布類を搬送するストックコンベアを第1及び第2コンベアの下部に配置し、第1コンベアの端部に下がっている、布類の尾端部分を保持して第2コンベア上へ渡す受け渡し機構を第1コンベアの前方、かつ、第2コンベアの上部に配置するという手段を講じたものである。
【0008】
本発明の布類反転装置において対象となる布類としては、通常は大小各種のタオル或いはシーツ等を指すと理解して良いが、しかし、これらに限定されるものではなく類似の形態を持つものであれば対象とすることができる。本発明は二つのコンベアを用いて、その一方から他方へ布類を移し載せるあいだに、布類の先端部分と尾端部分を入れ替えるものであり、この方式を取る先行技術は前述したとおり公知であるが、本発明は先端尾端入れ替え方式において、コンベア状に投入する布類の搬送間隔を可能な限り狭めて、作業効率を向上することを特徴とする。
【0009】
本発明においては、第1コンベアの端部と第2コンベアの端部との間に間隔を設けて、かつ、第2コンベアが低位置となるように配置している。第1コンベアの端部と第2コンベアの端部との間を、布類の表裏を反転させるための作業空間とするために間隔を設けるものである。また、第2コンベアはその上部に後述する受け渡し機構を配置するために、第2コンベアの方が第1コンベアの高さよりも低位置となるように配置するものである。
【0010】
上記第1コンベアの端部から先端部分が垂れるように下がって来る布類を載せて一時溜めておくために、第1コンベアよりも低速で布類を搬送するストックコンベアを第1及び第2コンベアの下部に配置する。ストックコンベアは、第1コンベアから垂れるように下がって来る布類その先端部分から受け入れて一時的にストックしておくために、第1コンベアの搬送速度よりも低速で、同方向へ移動するものである。
【0011】
上記第1コンベアの端部に垂れるように下がっている、布類の尾端部分を保持して第2コンベア上へ渡す受け渡し機構を第1コンベアの前方、かつ、第2コンベアの上部に配置する。受け渡し機構に必要な事項は布類の尾端部分を保持すること、上記尾端部分の保持を解除して第2コンベア上に渡すことである。布類の尾端部分の保持手段としては、例えば布類を摘むクランプや、或いは布類を掛けて渡すターンロール等を適用することができ、クランプであればクランプの開閉で上記尾端部分の保持と保持の解除が可能であり、ターンロールであればロールに上記尾端部分を掛けるとともに移動することによって上記尾端部分を抜け出させるようにすることで布類の保持と保持の解除が可能である。受け渡し機構を第1コンベアの前方に配置することで、第1コンベアから搬出される布類を受け取り易くするものであり、第2コンベアの上部に配置することで、布類の尾端部分を第2コンベア上へ落とし易くするものである。
【0012】
上記受け渡し機構はスプロケットとチェーンより成る周回装置と、布類を尾端部分にて係止して保持するために上記チェーンに設けた保持手段とを有し、保持手段は第1コンベアの前方に位置して布類を受け取る受け取り位置と、受け取った布類を第2コンベア上へ落としたのち待機する待機位置との間を周回する複数個のものから成る構成を取ることができる。周回装置によって、複数個のターンロール等の保持手段を使用することができ、作業速度の高速化にも寄与する。
【0013】
本発明の布類反転装置は、上記のように構成されているので前述した洗濯済み布類の品質検査、折り畳みなど各種の作業装置と組み合わせることができる。品質検査に適用する場合には、第1コンベア側に布類の一面に対する欠陥の検査装置を配置し、第2コンベア側に布類の他の一面に対する欠陥の検査装置を配置することが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明は以上のように構成されかつ作用するものであるから、第1コンベアから垂れるように下がって来る布類をその先端部分から受け入れて一時的にストックしておくストックコンベアを備えることによって、ワーク即ち布類の先端と尾端が入れ替わってからでなくても、次の布類に対する反転作業を実行することができ、作業速度を向上することできるという効果を奏する。また、本発明によれば、布類1枚分の長さに等しいだけの間隔をあけることなく、布類を連続的に投入可能な布類の反転装置を提供することができるとともに、洗濯済み布類の品質検査、折り畳みなど各種の作業装置と組み合わせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下図示の実施形態を参照して本発明をより詳細に説明する。図1は布類反転装置10の側面を示しており、各図において、11は上流に位置する第1コンベア、12は下流に位置する第2コンベア、14はストックコンベアを示している。第1コンベア11の端部11aと第2コンベア12の端部12aとの間には反転作業を行うために所要の間隔13が設けてあり、また、第1コンベア11よりも第2コンベア12の方が低位置となるように配置されている。
【0016】
ストックコンベア14は、第1コンベア11の端部11bから先端部分aが垂れるように下がって来る布類wを載せて一時溜めておくために設けられており、第1コンベア11及び第2コンベア12の下部に配置されている。上記ストックコンベア14は、第1コンベア11よりも低速で布類を搬送するが、それは本発明の先端尾端入れ替え方式におい
て、尾端部分zが先行する状態に入れ替わって第2コンベア12を搬送されるときに、ストックされている先端部分の側が第2コンベア12の後端付近から余り離れないようにしておきたいためである。
【0017】
そして、上記第1コンベア11の後端に垂れ下がっている、布類wの尾端部分zを保持して第2コンベア上へ渡すために、受け渡し機構15が、第1コンベア11の前方、か
つ、第2コンベア12の上部に配置されている。上記の受け渡し機構15はスプロケット16、17とチェーン18より成る周回装置19と、布類wを尾端部分zにて係止して保持するために上記チェーン18に設けた保持手段とを有している。保持手段は第1コンベア11の前方に位置して布類wを受け取る受け取り位置21と、受け取った布類wを第2コンベア上へ落としたのち待機する待機位置22との間を周回する2個から成り、受け取り位置21と待機位置22とは半周期離れた位置関係にある。
【0018】
図示の例における保持手段は2個のターンロール20−1、20−2から成り、上記受け渡し機構19のチェーン18にブラケット23を介して取り付けられている。よってこの例においてはターンロール20−1、20−2のブラケット23の側24に布類wが導入されてそこから下方へ垂れ下がることになるので、ターンロール20−1、20−2の移動とともに、布類wを第2コンベア12上へ移動させることができる。周回装置19は第2コンベアの左右両側に配置されている2組のスプロケット、チェーン機構に2個のターンロール20−1、20−2の左右両端部を渡して構成されている(図2参照)。
【0019】
このような構成を有する本発明の作用を布類反転装置10の作動とともに説明する。布類w(これを先行する布類w1とする)が第1コンベア11によって搬送されて来ると、その先端部分aは端部11aから垂れるように下がり、受け取り位置21に位置しているターンロール20−1を乗り越えてブラケット23の側24に入り込み下に向かうようになる(図3A)。布類wは先端部分aがストックコンベア14に到達すると、その低速移動に伴ってゆっくりと移動する(図3B)。ストックコンベア14のゆっくりした搬送スピードのために、布類wは詰まり気味の形態で一時溜めて置かれる状態になるが、低速であるため長尺のシーツの様な布類wであっても、僅かなコンベアスペースにストックしておくことができる(図4A)。
【0020】
上記布類wの尾端部分zが設定位置を通過すると、通過がセンサー25によって検出され、その検出信号に基づいて周回装置19が作動を開始し、ターンロール20−1が第2コンベア12の上部にて第2コンベア12と同方向へ移動するので、空所24に入り込んでいる上記尾端部分zが第2コンベア12の上へ押し付けるように渡される(図4B)。この受け渡しに伴って、布類wの尾端部分zは第2コンベア12とともに移動することになるが(図5A)、その受け渡しの際、チェーン18によって移動する間その長さ分だけ押え続けるので、ターンロール20−1は自由回転により適度の抵抗力を布類wに与えながら押し付け、待機位置22まで移動する(図5B)。かくして尾端部分zが先頭に変わって第2コンベア12を搬送されるようになり、布類w(w1)に対する表裏反転作業が完了する。
【0021】
上記布類w(w1)に対する反転作業が完了間近になると、待機位置22から移動して来たターンロール20−2が受け取り位置21に付き、次の布類w(w2)を受け取る準備が完了している。引き続いて、搬送されて来た布類wが端部11aから垂れ下がり、受け取り位置21に位置しているターンロール20−2を乗り越えてチェーン18との間の空所24に入り込み、さらにストックコンベア14に達するようになる(図6A)。このとき先行ターンロール20−1が反転させた先行する布類w1がストックコンベア14に残っていても、ストックコンベア14は低速であるので先行する布類w1と後続する布類w2が絡まるような事態は起こらない。後続の布類w2も同様に反転されて第2コンベア12によって搬送されて行くが、その搬送間隔26は極く僅かであり、一定のコンベア上により高密度で布類wを搬送することができる(図6B)。
【0022】
このような本発明の布類反転装置10を洗濯、アイロン掛け済み布類wの品質検査に適用する場合には、第1コンベア11側に布類wの一面Uに対する一番目の欠陥の検査装置27を配置し、第2コンベア12側に布類wの他の一面Dに対する二番目の欠陥の検査装置28を配置することができる。布類wの一面Uに対する欠陥の検査装置27は、第1コンベア側に配置された検査台27aの上を通過する、布類wの上面(一面U)を照明する照明器29と検査用のカメラ30を有し、布類wの他の一面Dに対する欠陥の検査装置28は、第2コンベア側に配置された検査台28aの上を通過する、布類wの下面(他の一面D)を照明する照明器31と検査用のカメラ32を有している。
【0023】
上記構成において、布類wが第1コンベア11に向けて搬送されて来ると、その状態において、布類wの上面(一面U)が照明器29によって照明されるとともに、一番目の欠陥の検査装置27のカメラ30によって撮影ないし撮像される。引き続き、布類wは第1コンベア11から布類反転装置10を経て、表裏反転作業を終えてへ搬送されて来ると、布類wの上面(他の一面D)が照明器31によって証明されるとともに、二番目の欠陥の検査装置28のカメラ32によって撮影ないし撮像がなされる。従って、二つの欠陥検査装置27、28によって布類wの上方から欠陥の検査を事項することができる。
【0024】
上記のように本発明の布類反転装置10は、第1コンベア11、その前方の第2コンベア12、その下部にて低速運行するストックコンベア14を有し、第2コンベア12の上部に受け渡し機構15を設けた構成によって、布類wの投入間隔を短くし、連続的投入を可能にするとともに、コンパクト化も実現し得るという特徴を発揮するものである。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の布類反転装置は、前述したようなシーツ、タオル等の他に、浴衣やガウンなどの比較的単純な形態の衣類についても、その反転に利用できる余地がある。その際に襟や袖などの動きやすい箇所は、例えば仮止めしたり、ストックコンベアの位置を上げたり、或いはコンベア先方が下がるように傾斜させたりすることで対応可能な範囲を拡大し得るようになる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る布類反転装置の一例を示す側面説明図である。
【図2】同上の装置の平面説明図である。
【図3】同上装置の作動説明図でAは布類投入時の状態、Bは布類の先端部分がストックコンベアに着いた状態を示す側面図である。
【図4】同じく作動説明図でAは布類ストックが溜まって行く状態、Bは布類の後端部分の検知によってターンロールが移動した状態を示す側面図である。
【図5】同じく作動説明図でAはターンロールによって布類が移動して行く状態、Bは後続する布類の接近状態を示す側面図である。
【図6】同じく作動説明図でAは後続する布類の先端部分がストックコンベアに着いた状態、Bは側面図である。
【図7】本発明の布類反転装置を洗濯済み布類の品質検査装置に適用した例を示す側面図である。
【図8】従来の布類反転装置の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0027】
10 布類反転装置
11 第1コンベア
12 第2コンベア
13 所要の間隔
14 ストックコンベア
15 受け渡し機構
16、17 スプロケット
18 チェーン
19 周回装置
20−1、20−2 ターンロール
21 受け取り位置
22 待機位置
23 ブラケット
24 ブラケットの側
25 センサー
26 搬送間隔
27、28 欠陥検査装置
29、31 照明器
30、32 カメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1コンベアによって搬送される布類を第2コンベアへ反転させて乗せる装置であって、
第1コンベアの端部と第2コンベアの端部との間に間隔を設けて、かつ、第2コンベアが低位置となるように配置し、第1コンベアの端部から先端部分が下がって来る布類を載せて一時溜めておくために、第1コンベアよりも低速で布類を搬送するストックコンベアを第1及び第2コンベアの下部に配置し、第1コンベアの端部に下がっている、布類の尾端部分を保持して第2コンベア上へ渡す受け渡し機構を第1コンベアの前方、かつ、第2コンベアの上部に配置した布類反転装置。
【請求項2】
受け渡し機構はスプロケットとチェーンより成る周回装置と、布類を尾端部分にて係止して保持するために上記チェーンに設けた保持手段とを有し、
保持手段は第1コンベアの前方に位置して布類を受け取る受け取り位置と、受け取った布類を第2コンベア上へ落としたのち待機する待機位置との間を周回する複数個のものから成る請求項1記載の布類反転装置。
【請求項3】
第1コンベア側に布類の一面に対する欠陥の検査装置が配置され、第2コンベア側に布類の他の一面に対する欠陥の検査装置が配置されている請求項1記載の布類反転装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−1178(P2011−1178A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−146804(P2009−146804)
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【出願人】(000201548)
【Fターム(参考)】