布類展張搬送機
【課題】 公知の布類展張搬送機では、丸ぐり部を有した布類(布団包布)の2枚重ね部分の表裏各面をそれぞれきれいに(小皺や波打ち部分のない状態で)展張させることができない。
【解決手段】 中央部に丸ぐり部Tを有した大面積の布類Sを吊上げ状態で展張させた後、その展張吊上げ布類Sを次工程側に搬送させ得るようにした布類展張搬送機において、展張吊上げ布類Sの背面側に拡張ベルト61を有する左右一対の布類背面拡張装置6,6を設ける一方、各拡張ベルト61,61に対面する位置に、展張吊上げ布類Sの左右外側部寄り前面Sc,Scをそれぞれ各拡張ベルト61,61側に押付ける左右一対の前面押付装置7,7を配置していることにより、展張布類の表裏各面をそれぞれきれいに展張させ得るようにしている。
【解決手段】 中央部に丸ぐり部Tを有した大面積の布類Sを吊上げ状態で展張させた後、その展張吊上げ布類Sを次工程側に搬送させ得るようにした布類展張搬送機において、展張吊上げ布類Sの背面側に拡張ベルト61を有する左右一対の布類背面拡張装置6,6を設ける一方、各拡張ベルト61,61に対面する位置に、展張吊上げ布類Sの左右外側部寄り前面Sc,Scをそれぞれ各拡張ベルト61,61側に押付ける左右一対の前面押付装置7,7を配置していることにより、展張布類の表裏各面をそれぞれきれいに展張させ得るようにしている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、中央部に丸ぐり部を有した布団包布からなる大面積の布類を吊上げ状態で展張させ、その展張吊上げ状態の布類を次工程側に搬送させるための布類展張搬送機に関するものである。尚、以下の説明では、展張吊上げ状態の布類を単に展張吊上げ布類ということがある。又、以下の説明では、本願の布類展張搬送機で処理すべき布類を布団包布ということがある。
【背景技術】
【0002】
ランドリー工場においては、シーツや布団包布のような大面積布類を洗濯・乾燥後にプレス機でプレスしたり、折畳み機で折畳む作業が行われるが、その次工程装置(以下、プレス機で説明する)に布類を供給する際には、予め布類をきれいに展張させておく必要がある。
【0003】
ところで、シーツや布団包布のような大面積の布類を展張させるとともに、その展張布類を次工程側に搬送させ得るようにした布類展張搬送機として、例えば特開平7−54262号公報(特許文献1)に示されるものがある。この公知例の布類展張搬送機は、図12〜図15に示すように、布類Sの一辺の両端角部Sa,Saを左右の吊上チャック110,110で掴持し、所定高位置において各吊上チャック110,110を左右離間方向に移動させることによって、布類Sを展張吊上げ状態で保持し得るようになっている。尚、図12の公知例では、展張すべき布類Sとして、中央部に丸ぐり部Tを有する布団包布が採用されている。
【0004】
又、この公知例の布類展張搬送機では、図12に示す展張吊上げ状態の布類Sを、図13に示すように各吊上チャック110から受渡し装置104の受取チャック140(符号140′のようにチャックが閉じる)で受け取り(布類が図13のS1の状態になる)、続いて図14に示すように受取チャック140が後退する。この状態では、布類S2の上下中間部付近が送込みローラ134に接触する。そして、吸気ボックス131内が吸気されるとともに、送込みローラ134が布類送込み方向に回転して、布類S2の下半部を符号S3で示す状態を経て符号S4で示すように吸気ボックス131内に吸引する(所定タイマー後、吸気ボックス131内の吸気は停止する)。その後、コンベア(吸着コンベア)151が走行するとともに受取チャック140が開放し、布類上縁部が符号S4bで示すようにコンベア151の始端部(水平部)上に移乗する。そして、コンベア151が走行することによって、布類S4の下部側が順次引上げられていき、該布類がコンベア151によって次工程(プレス工程)側に搬送される。
【0005】
ところで、布類が展張吊上げ状態で、図14のように布類S4の下部側が吸気ボックス131内に吸引される(布類の下部側にテンションがかかる)と、布類S4はかなりの展張状態になるものの、布類Yに小皺や波打ち部分(図12の符号Y)が残ることがある。そこで、この公知例の布類展張搬送機では、コンベア151の始端部の直下近傍で展張吊上げ布類S4の背面側に左右一対の布類背面拡張装置106,106を設けている。この各布類背面拡張装置106,106は、図12に示すように左右にそれぞれ横向き姿勢で拡張ベルト161,161を有している。この各拡張ベルト161,161は、それぞれ前面側が左右外向きに走行するようになっている。又、各拡張ベルト161,161は、多数の小孔をあけた通気性のあるものを使用しており、該各拡張ベルト161,161の背面側に設けた吸気ボックス163内を吸気することにより、各拡張ベルト161,161の前面に布類の背面を吸引させ得る機能を有している。
【0006】
そして、この各布類背面拡張装置106,106は、吸気ボックス163内が吸気されるとともに各拡張ベルト161,161の前面がそれぞれ左右外向きに走行し、そのとき布類S4の背面が各拡張ベルト161,161の前面に接触しながら引き上げられていき、該布類を順次左右各外方に拡張させるように機能する。
【0007】
【特許文献1】特開平7−54262号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、展張すべき布類が中央部に丸ぐり部Tを有する布類(布団包布)Sでは、生地に表裏2枚重ね部分がある。そして、このように表裏2枚重ね生地を有する布類Sを上記公知例(図12〜図14)の布類展張搬送機で展張させる場合、展張吊上げ布類Sの背面側は各布類背面拡張装置106,106により左右に拡張させることができるものの、該展張吊上げ布類(布団包布)Sの前面側を拡張させる(皺延ばしする)機能はほとんどない。従って、丸ぐり部Tの外側の布類前面に小皺や波打ち部分(図12の符号Y)が残り易くなる。
【0009】
又、表裏2枚重ね生地を有する布類(布団包布)Sでは、2枚重ね部分の生地間(特に丸ぐり部Tの下部側)に空気が残って膨れたままになったり、図15に鎖線図示するように丸ぐり部Tの下端縁Taが重みで下方に垂れる(符号Ta′)ことがあり、2枚重ね生地部分の膨らみや垂れ下がり部分(符号Ta′)に波打ち部分ができ易くなる。尚、図15に鎖線図示する丸ぐり部下端縁Taの下方への垂れ下がりは、展張吊上げ布類Sの下部が吸気ボックス131内に吸引されることでも起こる。
【0010】
このように、図12〜図15に示す公知例の布類展張搬送機では、丸ぐり部Tを有する布類(布団包布)Sを展張させるのに、布類背面は布類背面拡張装置106,106により比較的きれいに展張させ得るものの、2枚重ね部分の前面側に小皺や波打ち部(図12の符号Y)又は膨らみや垂れ下がり部(図15の符号Ta′)等の弛みが残り易くなる。そして、布類前面に弛みが残ったままで展張布類が後送されてプレス機でプレスされると、該弛み部分を折返し状態で押し潰して明確な折り皺が発生するという問題がある。このように折り皺の付いた布類では、見栄えが悪くなるとともに、顧客からの苦情が出ることになる。
【0011】
尚、展張吊上げ布類Sが送り込まれていく途中で、図15に示す丸ぐり部下端縁Taの垂れ下がり部分Ta′が拡張ベルト161,161部分を通過するが、その際にも布類前面の垂れ下がり部分Ta′には拡張ベルト161による拡張機能は働かない。
【0012】
本願発明は、上記した公知の問題点に鑑み、布団包布のような丸ぐり部を有する布類であっても、表裏両面をきれいに展張させ得るようにした布類展張搬送機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願発明は、上記課題を解決するための手段として次の構成を有している。
【0014】
本願請求項1の発明
本願請求項1の発明は、中央部に丸ぐり部を有した布団包布からなる大面積の布類の一辺の両端角部をそれぞれ掴持した状態で所定高位置まで吊上げ、その布類の各掴持部分を左右に離間させて布類を吊上げ状態で展張させた後、その展張吊上げ布類を次工程側に搬送させ得るようにした布類展張搬送機を対象にしている。
【0015】
そして、本願請求項1の布類展張搬送機は、展張吊上げ布類の背面側に、該布類背面に摺接して布類背面側を左右外側に拡張させる拡張ベルトを有する左右一対の布類背面拡張装置を設けている一方、各布類背面拡張装置の各拡張ベルトに対面する位置に、展張吊上げ布類の左右外側部寄り前面をそれぞれ各拡張ベルト側に押付ける左右一対の前面押付装置を配置している。
【0016】
布類背面拡張装置の左右各拡張ベルトは、展張吊上げ状態にある布類の背面側で該展張吊上げ布類の上部寄り位置において、該展張吊上げ布類の幅中央部から左右に振り分けた位置に設置されている。又、該各拡張ベルトは、前面がほぼ鉛直面になる左右横長姿勢で設置されており、前面がそれぞれ左右外方向に走行するようになっている。尚、この布類背面拡張装置は、各拡張ベルトの前面に布類背面を吸引させ得る吸気機能を備えたものが好ましい。
【0017】
各前面押付装置は、各拡張ベルトの前面にある展張吊上げ布類の左右外側部寄り前面に接触し得る部材であって正面視において展張吊上げ布類の左右外側部寄り前面に対面する対面位置と展張吊上げ布類の左右外端部より外側の退避位置との間で上下に弧回動し得る状態で設置された接触部材と、該接触部材を上下に弧回動させる弧回動装置と、接触部材を拡張ベルト前面にある展張吊上げ布類の前面から離間する離間位置と該展張吊上げ布類の前面に接触する接触位置との間で前後に移動させる接離移動装置とを備えている。
【0018】
左右の各接触部材は、特に限定するものではないが、使用姿勢での正面視形状が横長長方形(例えば横長さが30〜40cm程度、上下幅が5〜10cm程度の大きさ)のものを使用できる。尚、各接触部材における布類前面に接触する部分には、ブラシ又はスポンジのような柔軟材料を使用するとよい。
【0019】
そして、この各接触部材は、それぞれ横向き姿勢での外端寄り位置を軸で枢支して、該枢支部を中心にして横向き姿勢と下向き姿勢との間で上下弧回動可能に設置している。又この各接触部材の設置位置は、処理すべき布類(布団包布)のサイズによって位置決めされるが、上記対面位置では該接触部材が展張吊上げ布類の左右外側部寄り前面に位置する一方、上記退避位置では該接触部材が展張吊上げ布類の左右外端部より外側に位置するようになっている。
【0020】
この各接触部材はそれぞれ弧回動装置により上記対面位置と上記退避位置との間で上下弧回動されるが、この弧回動装置には例えば伸縮シリンダが使用できる。
【0021】
左右の接離移動装置は、各接触部材をそれぞれ前後に移動させるものであるが、この各接離移動装置には例えば伸縮シリンダが使用できる。尚、この各接離移動装置は、各接触部材を弧回動装置とともに前後移動させるようにするとよい。
【0022】
そして、この各接離移動装置は、接触部材を後退移動(手前側に移動)させた状態では、該接触部材を拡張ベルト前面にある展張吊上げ布類の前面から離間させる一方、接触部材を前進移動(奥側に移動)させた状態では、該接触部材を拡張ベルト前面にある展張吊上げ布類の前面に接触させるように機能する。尚、接触部材が展張吊上げ布類の前面から離間した状態では、接触部材を上下に弧回動させても該接触部材が展張吊上げ布類に接触することがない。
【0023】
本願請求項1の布類展張搬送機は、次の順序で作動する。尚、布類の供給前は、左右の各接触部材がそれぞれ下向きの退避位置で且つ拡張ベルトに対して手前側の後退位置にある。又、布類背面拡張装置の各拡張ベルトは、それぞれ作動させておく(拡張ベルト前面側がそれぞれ左右外向きに走行する)。
【0024】
この状態で、まず作業位置において布類(中央部に丸ぐり部を有する布団包布)の一辺の両端角部を捜し出し、丸ぐり部が前面(手前側)に位置する状態で該両端角部をそれぞれ投入チャックに掴持させる。その後、各投入チャックが布類両端角部を掴持したまま所定高さまで上動して、布類両端角部を上方で待機している各受取チャックに受け渡し、続いて各受取チャックが左右離間方向に移動して布類を吊上げ状態で左右に展張させる。このとき、左右の各接触部材は、展張吊上げ布類の左右各外端部よりそれぞれ外側の退避位置にあり、該布類が左右に展張されるときに該布類の左右各外端部が各接触部材に接触する(絡まる)ことがない。
【0025】
尚、この状態では、展張吊上げ布類の上部は、左右の受取チャックの引張力によりかなりの緊張状態で伸展されているので、表裏各生地がほとんど接合している(表裏各生地間に空気がほとんど入っていない)が、展張吊上げ布類の左右各側部及び下部は表裏各生地間に空気が入って前面生地が膨らんでいる場合が多い(特に、丸ぐり部の下端縁部分は生地の自重で垂れ下がることが多々ある)。
【0026】
続いてその展張吊上げ布類の上縁部を搬送コンベア上に移乗させるが、このとき展張吊上げ布類が展張状態のままで後方(奥側)に移動して布類背面が左右の各拡張ベルトの前面(左右外側に走行している)に接触する。そして、その直後に左右の各接触部材が各弧回動装置によりそれぞれ下向きの退避位置から内側(横向きの対面位置)に弧回動され、続いて各接離移動装置により各接触部材をそれぞれ展張吊上げ布類の左右各外側部寄り前面に接触させる。このとき、接触部材と拡張ベルトの間で展張吊上げ布類の左右各外側部寄り部分が軽く挟圧される。
【0027】
この状態で展張吊上げ布類の上縁部が搬送コンベアによって引き取られていく(布類が展張状態のまま引き上げられる)が、それに伴って展張吊上げ布類の背面側が各拡張ベルトで順次左右に展張される一方、左右各外側部寄り前面がそれぞれ接触部材に摺動して布類の左右各側部(表裏各生地間)の空気が排除される。又、展張吊上げ布類の丸ぐり部下縁部が拡張ベルト高さに差しかかったときには、各拡張ベルトによる左右展張機能と各接触部材による押付け機能とにより、丸ぐり部の下縁部分が左右各外側に引っ張られる作用を受け、丸ぐり部の下縁部分が自重で垂れ下がっていても該丸ぐり部下縁部分も緊張状態に伸展するようになる。
【0028】
従って、丸ぐり部を有した布類(布団包布)であっても、表裏の各全面をきれいに展張させた状態でプレス工程側に搬送させることができる。
【0029】
又、この請求項1の布類展張搬送機に使用されている各前面押付装置は、左右の接触部材がそれぞれ下向きの退避位置と横向きの対面位置との間で上下に弧回動するようにしているので、各接触部材の左右方向の移動範囲が小さくて済む。このように、各接触部材の左右移動範囲幅が小さくなると、各前面押付装置の左右方向の設置スペースが小さくなり、各接触部材を左右に移動させるようにしたものであっても、この布類展張搬送機全体の左右幅が大きくならない。尚、各接触部材を退避位置と対面位置との間で移動させるのに、該各接触部材を左右に直線移動させるようにすることも考えられるが、各接触部材を左右移動させる場合には、その左右移動幅が大きくなり、その結果、各前面押付装置の左右方向の設置スペースが大きくなって、布類展張搬送機全体の左右幅が大きくなる(又は各前面押付装置が布類展張搬送機の側面から外側にはみ出る)。
【0030】
尚、この布類展張搬送機は、シーツのような1枚ものの布類も展張・搬送させることができるが、その場合には各前面押付装置全体を作業の邪魔にならない下方位置に退避させ得るようにしておくとよい。
【0031】
本願請求項2の発明
ところで、布団包布は布団本体の大きさに合わせた複数サイズのものがあり、ランドリー工場では布団包布も大サイズのものと小サイズのものとを混在して扱う場合がある。そして、大サイズの布団包布と小サイズの布団包布とでは、展張吊上げ状態での左右幅が異なる関係で、各接触部材を展張吊上げ布類の左右外側部寄り前面の対面位置に位置合わせするのに、布団包布のサイズに合わせて前面押付装置(接触部材)の位置を調整する必要がある。
【0032】
そこで、本願請求項2の発明は、請求項1の布類展張搬送機において、左右の各前面押付装置の位置を、処理すべき布類のサイズに応じてそれぞれ左右に移動調整するための位置調整装置を備えている。
【0033】
この各位置調整装置には、それぞれ伸縮シリンダが使用可能であり、該伸縮シリンダによって前面押付装置全体(接触部材と弧回動装置と接離移動装置を含む)をそれぞれ左右に移動調整し得る。尚、この位置調整装置による前面押付装置の位置調整は、操作パネル(作業位置に設置されている)に設けた位置調整スイッチで行うようにすればよい。
【0034】
この各位置調整装置による前面押付装置の位置調整は、処理すべき布類(布団包布)のサイズが予め分かっている場合には、布類の処理前(投入前)に行えばよい。又、布類のサイズが処理前(投入前)に判明できない場合は、該布類を各接触部材の手前位置で吊上げ・展張させた状態で、その展張吊上げ布類の左右各端部の位置に下向きの退避位置にある接触部材の位置を適合させるように、位置調整装置を操作することができる。
【発明の効果】
【0035】
本願請求項1の発明の効果
本願請求項1の布類展張搬送機によれば、展張吊上げ布類を搬送コンベア側に送り込む過程で、布類背面拡張装置により布類背面を左右に展張させ得るとともに、前面押付装置で布類前面をきれいに展張させ得るようになっているので、中央部に丸ぐり部を有した布類であってもその表裏両面をそれぞれきれいに(小皺や波打ち部分や膨らみ部分がない状態で)展張させることができ、仕上がり精度の良好な展張布類に加工することができるという効果がある。
【0036】
又、各前面押付装置の接触部材は、展張吊上げ布類の左右外側部寄り前面に対して、下向きの退避位置と横向きの対面位置との間で上下に弧回動させ得るようになっているので、接触部材が左右に直線移動するものに比して該各接触部材の左右移動範囲を小さくでき、それによって前面押付装置全体の左右方向の設置スペースを小さくできる。従って、接触部材を左右に移動させるようにしたものであっても、布類展張搬送機全体の左右幅を大きくしないで済むという効果がある。
【0037】
本願請求項2の発明の効果
本願請求項2の発明では、上記請求項1の布類展張搬送機において、左右の各前面押付装置の位置を、処理すべき布類のサイズに応じてそれぞれ左右に移動調整するための位置調整装置を備えている。
【0038】
従って、この請求項2の布類展張搬送機では、上記請求項1の効果に加えて、サイズの異なる布類(布団包布)であっても、左右の各接触部材をそれぞれ適正位置(展張吊上げ布類の左右各外側部寄り前面)に位置合わせすることができるという効果がある。
【実施例】
【0039】
以下、図1〜図11を参照して本願実施例の布類展張搬送機を説明する。尚、この実施例の布類展張搬送機は、シーツのような1枚ものの布類も何ら問題なく展張させることができるが、特に中央部に丸ぐり部を有する布団包布のような布類を展張させるのに適したものである。
【0040】
まず、この実施例の布類展張搬送機の基本構成を図1〜図3を参照して説明する。この布類展張搬送機は、投入装置1と、左右展張装置2と、吸引装置3と、受渡し装置4と、搬送装置5と、布類背面拡張装置6と、布類前面展張用の前面押付装置7,7とを有している。
【0041】
投入装置1は、展張すべき布類Sの一辺の両端角部Sa,Saを掴持する一対の投入チャック11,11を有し、該各投入チャック11,11を昇降装置12(図3)で上下動させ得るようにしたものである。尚、昇降装置12にはロッドレスシリンダが使用されている。
【0042】
各投入チャック11,11は、人の肩幅程度の間隔で左右に並置されている。そして、この各投入チャック11,11は、昇降装置12により投入作業高さとなる低位置(図1、図3の高さ)と布類全体を吊下げ得る高位置(布類の掴持部分を後述の受取チャック21に受け渡し得る高さ)との間で上下動せしめられる。そして、低位置において、布類の一辺の両端角部Sa,Saを各投入チャック11,11で掴持させた後(布類が図1の符号S′の状態となる)、昇降装置12で受け渡し高さまで上昇せしめられる。
【0043】
尚、この実施例では、投入装置1は左右に2基設けており、何れの投入装置1,1からでも布類を投入することができるようになっている。又、各投入装置1,1は、待機状態では、図1に示すように機体の幅中心から左右に振り分けた各位置に位置しているが、布類掴持後に上動する際には、機体の幅中心位置に移動するようになっている。
【0044】
左右展張装置2は、所定高位置において投入装置1の各投入チャック11,11から布類の両端角部Sa,Saをそれぞれ受け取る一対の受取チャック21,21を有し、該各受取チャック21,21をそれぞれ左右動装置(可逆回転可能なサーボモータを使用)22,22で左右方向に移動させ得るようにしたものである。各受取チャック21,21は、図1に示すように待機状態では機体の幅中央部において投入装置1の各投入チャック11,11の間隔と同間隔で待機しており、布類の両端角部Sa,Saを受け取った後(図1のS″の状態)、左右動装置22,22により布類の上辺部が緊張するまで左右外方に移動せしめられる(布類Sが図1の展張吊上げ状態となる)。
【0045】
吸引装置3(図3)は、受取チャック21,21が左右移動する部分の下方位置に吸気ボックス31を設けるとともに、該吸気ボックス31内の空気を吸気ファン33で吸引し得るものが採用されている。吸気ボックス31と吸気ファン33とを連続させる吸気通路32中には、切換ダンパー36が設けられており、該切換ダンパー36が図3の鎖線図示する符号36′の側に位置するときに、吸気ボックス31内が吸気ファン33によって吸引されるようになっている。又、吸気ボックス31の前壁上端部には、左右2本の送込みローラ34,34が設けられている。この各送込みローラ34,34は、それぞれモータ35,35によって所定タイミングで送込み方向に回転せしめられる。
【0046】
そして、この吸引装置3は、布類Sが展張吊上げ状態において、送込みローラ34を送込み方向に回転させるとともに、吸気ボックス31内を吸引することにより、展張吊上げ状態の布類Sの下部側を送込みローラ34を乗り越えて吸気ボックス31内に吸引し、そのとき布類の下部側にテンション作用が働いて、展張吊上げ状態の布類Sを下方に展張させる機能が発生する。
【0047】
受渡し装置4は、各受取チャック21,21により展張吊上げ状態で支持されている布類Sの上縁部を受け取る吸着ボックス41と、該吸着ボックス41内を吸気する吸気フアン42と、吸着ボックス41を前後に進退させる伸縮シリンダ43とを有している。吸着ボックス41の先端部上面(布類受取面)には、多数の小孔を形成しており、該吸着ボックス41内を吸気ファン42で吸引することにより、布類受取面に布類上縁部を吸着(保持)させ得るようになっている。そして、この受渡し装置4は、吸着ボックス41が前位置にある状態で布類受取面に布類上縁部を吸着させた後、該吸着ボックス41を図3に鎖線図示(符号41′)する位置まで後退させる間に、該布類上縁部を搬送装置5(吸着コンベア51)の始端部上に移乗させるように作動する。
【0048】
搬送装置5は、手前側に多数の小孔を設けた吸着コンベア51と、その後端部に連続する搬出コンベア52有している。吸着コンベア51の始端部は、前位置にある吸着ボックス41の先端部(布類受取面)よりやや後側の直下近傍に位置している。吸着コンベア51の上面走行部の下面には、吸気ボックス53が設置されていて、該吸気ボックス53内を吸気することで、吸着コンベア51の上面に布類上縁部を吸着させ得るようになっている。
【0049】
吸着コンベア51側の吸気ボックス53内は、上記吸引装置3の吸気ファン33を共用して、吸引装置3の吸気ボックス31とは択一的に吸気される。即ち、図3において、切換ダンパー36が実線図示にあるときには、吸引装置3側の吸気ボックス31内の吸気が停止する一方、吸着コンベア51側の吸気ボックス53内がダクト54を通して吸気され、切換ダンパーが鎖線図示する符号36′側に切換わると、逆に吸着コンベア51側の吸気ボックス53内の吸気が停止する一方、吸引装置3側の吸気ボックス31内が吸気されるようになっている。
【0050】
布類背面拡張装置6は、展張吊上げ布類Sの背面を左右に展張させるもので、左右一対ある。この各布類背面拡張装置6,6はそれぞれ拡張ベルト61,61を有している。この各拡張ベルト61,61は、吸着コンベア51の始端部より僅かに前側の直下近傍位置において、機体の幅中央部から左右に振り分けた各位置に設置されている。又、該各拡張ベルト61,61は、前面がほぼ鉛直面になる左右横長姿勢で設置されており、前面がそれぞれ左右外方向に走行するようにそれぞれモータ62,62で駆動される。尚、各拡張ベルト61,61のそれぞれ外端部は、展張吊上げ位置にある布類Sの左右端部Sd,Sdよりそれぞれ外側にはみ出す位置まで延出させている。
【0051】
各拡張ベルト61,61は、図4及び図6に示すように、多数の小孔を設けた通気性のあるベルトを使用している。そして、各拡張ベルト61,61の前面走行部の裏側には、それぞれ吸気ボックス63,63が配置されており、該吸気ボックス63,63内を吸引することにより、拡張ベルト61の前面に布類の背面を吸着させ得るようにしている。各吸気ボックス63,63内は、それぞれダクト64,64を介して吸気フアン65の吸気口にそれぞれ接続されており、該吸気フアン65の吸気により該各吸気ボックス63,63内を吸引し、それによって各拡張ベルト61,61の前面走行部の各小孔から周囲の空気を吸引し得るようになっている。尚、この実施例では、吸気フアン65は1台で両方の吸気ボックス63,63内を吸気するようにしているが、他の実施例では各吸気ボックス63,63ごとに吸気フアン65を1台ずつ使用してもよい。
【0052】
ところで、この実施例の布類展張搬送機では、処理すべき布類Sとして中央部に丸ぐり部Tを有した布団包布を採用している。この布団包布Sでは、丸ぐり部Tの周囲の生地が2枚重ね状態となっている。そして、丸ぐり部Tを有した布類Sを展張させる際には、図1に示すように丸ぐり部Tが前面側に向く姿勢で吊上げ展張するが、この場合、展張吊上げ布類Sにおける丸ぐり部T周部分の2枚重ね部分に空気が入って布類前面部分が膨らむことがある。特に、展張吊上げ状態の布類Sでは、丸ぐり部Tの下端縁Taが自重で垂れ下がることがある(図15の符号Ta′の状態)。
【0053】
そこで、この実施例の布類展張搬送機には、展張吊上げ布類Sの前面をきれいに展張させるための左右一対の前面押付装置7,7を設けている。尚、この左右一対の前面押付装置7,7は、図1〜図2に示すように同じものが左右対称形に配置されているが、該前面押付装置7の構成については、図4〜図8に示す右側の前面押付装置7で説明する。
【0054】
図4〜図6に示す前面押付装置7は、展張吊上げ布類(図1の符号Sの状態)の左右各外側部寄り前面Sc,Scに接触させる接触部材71と、該接触部材71を上下に弧回動させる弧回動装置72と、接触部材71を拡張ベルト61前面にある展張吊上げ布類Sの前面Scから離間する離間位置と展張吊上げ布類の前面Scに接触する接触位置との間で前後に移動させる接離移動装置73と、処理すべき布類Sのサイズによって前面押付装置7(接触部材71)の位置を調整する位置調整装置74とを備えている。
【0055】
接触部材71は、使用姿勢での正面視形状が横長長方形(例えば横長さが30〜40cm程度、上下幅が5〜10cm程度の大きさ)で、内側に向く面にスポンジ(ブラシでも可)のような柔軟材料を使用している。接触部材71の一端側にはブラケット75が外方に突出する状態で取付けられている。
【0056】
弧回動装置72と接離移動装置73と位置調整装置74には、それぞれ伸縮シリンダが使用されている。尚、接離移動装置73の伸縮シリンダは、比較的短小なものでよい。
【0057】
他方、この前面押付装置7(接触部材71、弧回動装置72、接離移動装置73、位置調整装置74)は、適宜長さを有するガイドフレーム81と、ガイドフレーム81を上下揺動させ得る伸縮シリンダ9と、ガイドフレーム81に対してスライドするスライドフレーム83と、弧回動装置72を支持する支持台85等の支持部材を使用して組付けられている。
【0058】
ガイドフレーム81は、適宜長さ(例えば1m程度)を有し、その一端部を側部機枠10の内面に軸82で枢支する一方、ガイドフレーム基端寄り適所を伸縮シリンダ9(基端が側部機枠10に枢支されている)の先端部に軸9aで枢支して、2点(軸82と軸9a)で支持されている。尚、伸縮シリンダ9の伸長状態では、ガイドフレーム81を左右に向く水平姿勢に維持させる一方、伸縮シリンダ9を縮小させるとガイドフレーム81を含む前面押付装置7の全体を下向き格納位置まで弧回動させ得るようになっている。
【0059】
スライドフレーム83は、図6に示す側面視においてL形に折曲させた板材が使用されている。このスライドフレーム83には、ガイドフレーム81を上下から挟持する上下2個ずつのローラ84,84が取付けられていて、スライドフレーム83がガイドフレーム81に対して左右にスライドし得るようにしている。
【0060】
支持台85は、弧回動装置(伸縮シリンダ)72を取付けるためのもので、図6に示す側面視において略L形に折曲させた板材が使用されている。この支持台85は、ガイドフレーム81及びスライドフレーム83に対して遊離状態で配置されており、後述の接離移動装置(伸縮シリンダ)73の伸縮ロッド先端に固定されている。
【0061】
これらの支持部材(ガイドフレーム81、スライドフレーム83、支持台85)と前面押付装置7(接触部材71、弧回動装置72、接離移動装置73、位置調整装置74)とは、図4〜図6に示すように組付けられている。
【0062】
位置調整装置74となる伸縮シリンダは、ガイドフレーム81とスライドフレーム83間に介設されていて、該位置調整装置(伸縮シリンダ)74によってスライドフレーム83をガイドフレーム81に沿って左右に移動させ得るようになっている。
【0063】
接離移動装置73となる伸縮シリンダは、伸縮部分が奥側に向く姿勢でスライドフレーム83の底板上に取付けられている。
【0064】
支持台85は、接離移動装置(伸縮シリンダ)73の伸縮ロッド先端に左右向き姿勢で固定されている。尚、この支持台85には、伸縮ロッド先端の固定部を中心に揺動しないようにするための適宜の姿勢安定手段が設けられる。又、この支持台85上には、弧回動装置72となる伸縮シリンダが左右向き姿勢で取付けられている。
【0065】
接触部材71は、その一端部にあるブラケット75の基端部を支持台85の内方側端部上に軸76で枢支する一方、ブラケット75の先端部と弧回動装置(伸縮シリンダ)72の伸縮ロッド先端部とを軸72aで枢支して支持している。
【0066】
そして、前面押付装置7(接触部材71、弧回動装置72、接離移動装置73、位置調整装置74)は、それぞれ次のように機能する。
【0067】
弧回動装置(伸縮シリンダ)72は、その伸縮シリンダ72の縮小状態では接触部材71を図4に実線図示するように左右内方側に向く横向き姿勢に維持させる一方、該伸縮シリンダ72を伸長させると接触部材71を図4に鎖線図示(符号71′)するように下向き姿勢に維持させるようになっている。接触部材71が横向き姿勢状態(図4の実線図示状態)では、該接触部材71が拡張ベルト61の前面にある展張吊上げ布類Sの前面Scに対面し(対面位置)、該接触部材71が下向き姿勢状態(図4の鎖線図示状態)では、該接触部材71′の全体が展張吊上げ布類Sの外端部Sdより外側に位置する(退避位置)。
【0068】
位置調整装置(伸縮シリンダ)74は、処理すべき布類Sのサイズによって接触部材71を適正位置に調整するものであり、布類Sが大サイズの場合には図5に示すように位置調整装置となる伸縮シリンダ74を縮小させる(接触部材71が外側に移動する)一方、布類Sが小サイズのものでは図8に示すように該伸縮シリンダ74を伸長させる(接触部材71が内側に移動する)。この位置調整装置74による接触部材71の位置調整は、大小いずれのサイズの布類であっても、接触部材71の横向き姿勢状態では該接触部材71が展張吊上げ布類Sの外側部寄り前面Scに対面する一方(例えば図4の実線図示状態)、接触部材71の下向き姿勢状態(符号71′)では該接触部材71′が展張吊上げ布類Sの外端部Sdより外側に位置するように調整される。尚、この位置調整装置74の操作は、操作パネルに設けた位置調整スイッチで行える。例えば、「小」の位置調整スイッチを押すと位置調整装置74が接触部材71を小サイズ布類に対応する位置に移動し、「大」の位置調整スイッチを押すと位置調整装置74が接触部材71を大サイズ布類に対応する位置に移動するようにしておくとよい。
【0069】
接離移動装置(伸縮シリンダ)73は、図5(及び図6の実線図示状態)に示すように伸縮シリンダ73の縮小状態では支持台85を手前側に後退させて接触部材71を拡張ベルト61の前面にある展張吊上げ布類Sの前面Scから離間させる一方、図7(及び図6の鎖線図示状態)に示すように伸縮シリンダ73の伸長状態では支持台85を奥側に前進させて接触部材71を拡張ベルト61の前面にある展張吊上げ布類Sの前面Scに接触させるように機能する。尚、図5(及び図6の実線図示状態)に示す離間位置における、接触部材71が展張吊上げ布類の前面Scから離間する距離は、接触部材71が図4の鎖線図示位置(退避位置)から実線図示位置(対面位置)に弧回動するとき、該接触部材71が展張吊上げ布類Sに接触しない程度に設定されている(例えば該離間距離を15〜20mmに設定する)。
【0070】
次に、この実施例の布類展張搬送機の作動方法を図9〜図11を併用して説明する。尚、運転時の初期状態では、吸引装置3の吸気フアン33、布類背面拡張装置6の吸気フアン65、各拡張ベルト61,61のモータ62、搬送装置5の吸着コンベア51及び搬出コンベア52等はそれぞれ作動している。又、前面押付装置7,7の各接触部材71,71は、それぞれ符号71′で示すように下向きの退避位置で且つ拡張ベルト61に対して手前側の後退位置にある。尚、処理しようとしている布類のサイズが判明している場合には、予め各接触部材71をそれぞれ位置調整装置74により適正位置に位置合わせしておくことができるが、布類のサイズが不明なときには後で接触部材71の位置調整をすることができる。
【0071】
そして、布類を布類展張搬送機に供給するには、作業位置において布類の一辺の両端角部を捜し出し、図1に示すようにその両端角部Sa,Saを投入装置1の各投入チャック11,11にそれぞれ掴持させる(図1、図9の各符号S′の状態)。次に各投入チャック11,11が布類両端角部Sa,Saを掴持したまま所定高さまで上動して、布類両端角部を上方で待機している各受取チャック21,21に受け渡し(図1、図9の符号S″の状態)、続いて各受取チャック21,21が左右離間方向に移動して布類を吊上げ状態で左右に展張させる。このとき、左右の各接触部材71,71が図1に符号71′で示すように展張吊上げ布類の左右各外端部Sd,Sdのそれぞれ外側近傍位置(布類サイズに適応する位置)にあるときには、そのまま次の操作に進むが、布類サイズに対して各接触部材71,71が適正位置からずれている場合には、左右の位置調整装置74,74を作動させて各接触部材71,71の布類サイズに適合する適正位置に移動させる。
【0072】
次に、展張吊上げ布類が図9の符号S″の状態から、送込みローラ34が送込み方向に高速回転するとともに、切換ダンパー36が鎖線図示(符号36′)側に切換えられて吸気ボックス31内の空気が吸引され、布類の下端側が吸気ボックス31内に吸い込まれる(展張吊上げ布類が図9の符号S1の状態になる)。このとき、この展張吊上げ布類S1には、吸気ファン33の吸引作用により、下方へのテンションがかけられて、該布類が方形状に展張される。
【0073】
尚、この状態では、展張吊上げ布類の上部は、左右の受取チャック21,21の引張力によりかなりの緊張状態で伸展されているので、表裏各生地がほとんど接合している(表裏各生地間に空気がほとんど入っていない)が、展張吊上げ布類の左右各側部及び下部は表裏各生地間に空気が入って前面生地が膨らんでいる場合が多い(特に、丸ぐり部Tの下端縁Ta部分は生地の自重で垂れ下がることが多々ある)。
【0074】
その後、切換ダンパー36′が実線図示側に切換えられ(吸着コンベア51の吸気ボックス53内が吸気される)、各受取チャック21,21が開放されて、布類の上辺部分が吸着ボックス41の先端側上面に吸着・保持される。尚、このとき、布類上辺部分を図示しないブロワーからのエアで吸着ボックス41の先端側上面に向けて押付けるようにするとよい。続いて、吸着ボックス41が図10に実線図示する位置を経て鎖線図示(符号41′)する位置まで後退するが、その間に布類上辺部分が吸着コンベア51上に移乗される(図11の符号S3の状態)。
【0075】
ところで、展張吊上げ布類の上辺部が受取チャック21から吸着ボックス41を経て吸着コンベア51の始端部に移乗される間には、展張吊上げ布類の上部寄り部分が側面視において左右の接触部材71′,71′間を前方から後方に横切るが、このとき図1に示すように左右の接触部材71′,71′がそれぞれ展張吊上げ布類の左右各外端部Sd,Sdの外側に位置しているので、布類の各外端部Sd,Sdが各接触部材71′,71′に引っ掛かることがない。
【0076】
又、布類上辺部分を吸着した吸着ボックス41が図9に示す前方突出位置から後退移動を開始し、展張吊上げ布類の上部寄り部分が左右の接触部材71′,71′間を奥側に横切った直後(例えば吸着ボックス41が図10に実線図示する位置まで後退したとき)に、左右の各弧回動装置(伸縮シリンダ)72を縮小作動させて、下向き退避位置にあった各接触部材71′,71′を図1に実線図示する横向きの対面位置まで弧回動させる(図11の符号71の状態)。続いて左右の各接離移動装置(伸縮シリンダ)73を伸長させると、図6に鎖線図示するように支持台が符号85′の位置まで移動して各接触部材71,71(スポンジ部71aの先端面)をそれぞれ展張吊上げ布類の左右各外側部寄り前面Sc,Scに接触させる(図6、図11の符号71″の状態)。
【0077】
この状態では、左右の各拡張ベルト61,61の前面がそれぞれ左右外向きに走行しており、且つ各接触部材71,71(スポンジ71aの先端面)がそれぞれ展張吊上げ布類の左右各外側部寄り前面Sc,Scに接触して布類の左右各外側部寄り部分を拡張ベルト61前面と接触部材71後面とで軽く挟圧するようになる。
【0078】
そして、その後も吸着コンベア51が走行していることにより、展張吊上げ布類の下部側が順次上方に引き上げられていくが、展張吊上げ布類の背面側が各拡張ベルト61,61で順次左右に展張される一方、左右各外側部寄り前面Sc,Scがそれぞれ接触部材71,71に摺動して布類の左右各側部(表裏各生地間)の空気が排除される。又、展張吊上げ布類の丸ぐり部下縁部が拡張ベルト61,61の高さに差しかかったときには、各拡張ベルト61,61による左右展張機能と各接触部材71,71による押付け機能とにより、丸ぐり部Tの下縁部分が左右各外側に引っ張られる作用を受け、丸ぐり部の下縁部分が自重で垂れ下がっていても該丸ぐり部の下縁部分も緊張状態に伸展するようになる。
【0079】
このように、この布類展張搬送機を使用すれば、丸ぐり部Tを有した布類(布団包布)Sであっても、表裏の各全面をそれぞれきれいに展張させた状態でプレス工程側に搬送させることができ、折り皺のない状態で加工できる。
【0080】
又、この実施例の布類展張搬送機に使用されている各前面押付装置7,7は、左右の接触部材71,71がそれぞれ下向きの退避位置と横向きの対面位置との間で上下に弧回動するようにしているので、各接触部材71,71の左右方向の移動範囲が小さくて済む。このように、各接触部材71,71の左右移動範囲幅が小さくなると、各前面押付装置7,7の左右方向の設置スペースが小さくなり、左右に前面押付装置7,7を設けたものであっても布類展張搬送機全体の左右幅が大きくならず、布類展張搬送機の床占有面積が大きくならない。
【0081】
又、この実施例の布類展張搬送機では、処理すべき布類サイズに応じて、左右の各前面押付装置7,7の位置をそれぞれ位置調整装置7,74で左右に移動調整し得るようにしているので、サイズの異なる布類(布団包布)であっても、左右の各接触部材71,71をそれぞれ適正位置(展張吊上げ布類の左右各外側部寄り前面Sc,Sc)に位置合わせすることができる。
尚、この布類展張搬送機で、シーツのような1枚ものの布類を処理する際には、左右の各前面押付装置全体を、図1に矢印で示すように作業の邪魔にならない下方位置に退避させておくとよい。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本願実施例の布類展張搬送機の正面図である。
【図2】図1のII−II矢視図である。
【図3】図1のIII−III矢視図である。
【図4】図1の右側前面押付装置部分の拡大図である。
【図5】図4の平面図である。
【図6】図4のVI−VI拡大断面図である。
【図7】図5の状態から接触部材が布類前面に接触した状態の変化図である。
【図8】図5の状態から接触部材が左右内側に移動した状態の変化図である。
【図9】図1の布類展張搬送機の作動説明図(図3相当図)である。
【図10】図9からの状態変化図である。
【図11】図10からの状態変化図である。
【図12】公知例の布類展張搬送機の正面図である。
【図13】図12の布類展張搬送機の作動説明図である。
【図14】図13からの状態変化図である。
【図15】展張吊上げ状態の布類の説明図である。
【符号の説明】
【0083】
1は投入装置、2は左右展張装置、3は吸引装置、4は受渡し装置、5は搬送装置、6は布類背面拡張装置、7は前面押付装置、11は投入チャック、21は受取チャック、22は左右動装置、61は拡張ベルト、71は接触部材、72は弧回動装置、73は接離移動装置、74は位置調整装置、Sは布類、Saは布類角部、Scは布類外側部寄り前面、Sdは布類外端部である。
【技術分野】
【0001】
本願発明は、中央部に丸ぐり部を有した布団包布からなる大面積の布類を吊上げ状態で展張させ、その展張吊上げ状態の布類を次工程側に搬送させるための布類展張搬送機に関するものである。尚、以下の説明では、展張吊上げ状態の布類を単に展張吊上げ布類ということがある。又、以下の説明では、本願の布類展張搬送機で処理すべき布類を布団包布ということがある。
【背景技術】
【0002】
ランドリー工場においては、シーツや布団包布のような大面積布類を洗濯・乾燥後にプレス機でプレスしたり、折畳み機で折畳む作業が行われるが、その次工程装置(以下、プレス機で説明する)に布類を供給する際には、予め布類をきれいに展張させておく必要がある。
【0003】
ところで、シーツや布団包布のような大面積の布類を展張させるとともに、その展張布類を次工程側に搬送させ得るようにした布類展張搬送機として、例えば特開平7−54262号公報(特許文献1)に示されるものがある。この公知例の布類展張搬送機は、図12〜図15に示すように、布類Sの一辺の両端角部Sa,Saを左右の吊上チャック110,110で掴持し、所定高位置において各吊上チャック110,110を左右離間方向に移動させることによって、布類Sを展張吊上げ状態で保持し得るようになっている。尚、図12の公知例では、展張すべき布類Sとして、中央部に丸ぐり部Tを有する布団包布が採用されている。
【0004】
又、この公知例の布類展張搬送機では、図12に示す展張吊上げ状態の布類Sを、図13に示すように各吊上チャック110から受渡し装置104の受取チャック140(符号140′のようにチャックが閉じる)で受け取り(布類が図13のS1の状態になる)、続いて図14に示すように受取チャック140が後退する。この状態では、布類S2の上下中間部付近が送込みローラ134に接触する。そして、吸気ボックス131内が吸気されるとともに、送込みローラ134が布類送込み方向に回転して、布類S2の下半部を符号S3で示す状態を経て符号S4で示すように吸気ボックス131内に吸引する(所定タイマー後、吸気ボックス131内の吸気は停止する)。その後、コンベア(吸着コンベア)151が走行するとともに受取チャック140が開放し、布類上縁部が符号S4bで示すようにコンベア151の始端部(水平部)上に移乗する。そして、コンベア151が走行することによって、布類S4の下部側が順次引上げられていき、該布類がコンベア151によって次工程(プレス工程)側に搬送される。
【0005】
ところで、布類が展張吊上げ状態で、図14のように布類S4の下部側が吸気ボックス131内に吸引される(布類の下部側にテンションがかかる)と、布類S4はかなりの展張状態になるものの、布類Yに小皺や波打ち部分(図12の符号Y)が残ることがある。そこで、この公知例の布類展張搬送機では、コンベア151の始端部の直下近傍で展張吊上げ布類S4の背面側に左右一対の布類背面拡張装置106,106を設けている。この各布類背面拡張装置106,106は、図12に示すように左右にそれぞれ横向き姿勢で拡張ベルト161,161を有している。この各拡張ベルト161,161は、それぞれ前面側が左右外向きに走行するようになっている。又、各拡張ベルト161,161は、多数の小孔をあけた通気性のあるものを使用しており、該各拡張ベルト161,161の背面側に設けた吸気ボックス163内を吸気することにより、各拡張ベルト161,161の前面に布類の背面を吸引させ得る機能を有している。
【0006】
そして、この各布類背面拡張装置106,106は、吸気ボックス163内が吸気されるとともに各拡張ベルト161,161の前面がそれぞれ左右外向きに走行し、そのとき布類S4の背面が各拡張ベルト161,161の前面に接触しながら引き上げられていき、該布類を順次左右各外方に拡張させるように機能する。
【0007】
【特許文献1】特開平7−54262号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、展張すべき布類が中央部に丸ぐり部Tを有する布類(布団包布)Sでは、生地に表裏2枚重ね部分がある。そして、このように表裏2枚重ね生地を有する布類Sを上記公知例(図12〜図14)の布類展張搬送機で展張させる場合、展張吊上げ布類Sの背面側は各布類背面拡張装置106,106により左右に拡張させることができるものの、該展張吊上げ布類(布団包布)Sの前面側を拡張させる(皺延ばしする)機能はほとんどない。従って、丸ぐり部Tの外側の布類前面に小皺や波打ち部分(図12の符号Y)が残り易くなる。
【0009】
又、表裏2枚重ね生地を有する布類(布団包布)Sでは、2枚重ね部分の生地間(特に丸ぐり部Tの下部側)に空気が残って膨れたままになったり、図15に鎖線図示するように丸ぐり部Tの下端縁Taが重みで下方に垂れる(符号Ta′)ことがあり、2枚重ね生地部分の膨らみや垂れ下がり部分(符号Ta′)に波打ち部分ができ易くなる。尚、図15に鎖線図示する丸ぐり部下端縁Taの下方への垂れ下がりは、展張吊上げ布類Sの下部が吸気ボックス131内に吸引されることでも起こる。
【0010】
このように、図12〜図15に示す公知例の布類展張搬送機では、丸ぐり部Tを有する布類(布団包布)Sを展張させるのに、布類背面は布類背面拡張装置106,106により比較的きれいに展張させ得るものの、2枚重ね部分の前面側に小皺や波打ち部(図12の符号Y)又は膨らみや垂れ下がり部(図15の符号Ta′)等の弛みが残り易くなる。そして、布類前面に弛みが残ったままで展張布類が後送されてプレス機でプレスされると、該弛み部分を折返し状態で押し潰して明確な折り皺が発生するという問題がある。このように折り皺の付いた布類では、見栄えが悪くなるとともに、顧客からの苦情が出ることになる。
【0011】
尚、展張吊上げ布類Sが送り込まれていく途中で、図15に示す丸ぐり部下端縁Taの垂れ下がり部分Ta′が拡張ベルト161,161部分を通過するが、その際にも布類前面の垂れ下がり部分Ta′には拡張ベルト161による拡張機能は働かない。
【0012】
本願発明は、上記した公知の問題点に鑑み、布団包布のような丸ぐり部を有する布類であっても、表裏両面をきれいに展張させ得るようにした布類展張搬送機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願発明は、上記課題を解決するための手段として次の構成を有している。
【0014】
本願請求項1の発明
本願請求項1の発明は、中央部に丸ぐり部を有した布団包布からなる大面積の布類の一辺の両端角部をそれぞれ掴持した状態で所定高位置まで吊上げ、その布類の各掴持部分を左右に離間させて布類を吊上げ状態で展張させた後、その展張吊上げ布類を次工程側に搬送させ得るようにした布類展張搬送機を対象にしている。
【0015】
そして、本願請求項1の布類展張搬送機は、展張吊上げ布類の背面側に、該布類背面に摺接して布類背面側を左右外側に拡張させる拡張ベルトを有する左右一対の布類背面拡張装置を設けている一方、各布類背面拡張装置の各拡張ベルトに対面する位置に、展張吊上げ布類の左右外側部寄り前面をそれぞれ各拡張ベルト側に押付ける左右一対の前面押付装置を配置している。
【0016】
布類背面拡張装置の左右各拡張ベルトは、展張吊上げ状態にある布類の背面側で該展張吊上げ布類の上部寄り位置において、該展張吊上げ布類の幅中央部から左右に振り分けた位置に設置されている。又、該各拡張ベルトは、前面がほぼ鉛直面になる左右横長姿勢で設置されており、前面がそれぞれ左右外方向に走行するようになっている。尚、この布類背面拡張装置は、各拡張ベルトの前面に布類背面を吸引させ得る吸気機能を備えたものが好ましい。
【0017】
各前面押付装置は、各拡張ベルトの前面にある展張吊上げ布類の左右外側部寄り前面に接触し得る部材であって正面視において展張吊上げ布類の左右外側部寄り前面に対面する対面位置と展張吊上げ布類の左右外端部より外側の退避位置との間で上下に弧回動し得る状態で設置された接触部材と、該接触部材を上下に弧回動させる弧回動装置と、接触部材を拡張ベルト前面にある展張吊上げ布類の前面から離間する離間位置と該展張吊上げ布類の前面に接触する接触位置との間で前後に移動させる接離移動装置とを備えている。
【0018】
左右の各接触部材は、特に限定するものではないが、使用姿勢での正面視形状が横長長方形(例えば横長さが30〜40cm程度、上下幅が5〜10cm程度の大きさ)のものを使用できる。尚、各接触部材における布類前面に接触する部分には、ブラシ又はスポンジのような柔軟材料を使用するとよい。
【0019】
そして、この各接触部材は、それぞれ横向き姿勢での外端寄り位置を軸で枢支して、該枢支部を中心にして横向き姿勢と下向き姿勢との間で上下弧回動可能に設置している。又この各接触部材の設置位置は、処理すべき布類(布団包布)のサイズによって位置決めされるが、上記対面位置では該接触部材が展張吊上げ布類の左右外側部寄り前面に位置する一方、上記退避位置では該接触部材が展張吊上げ布類の左右外端部より外側に位置するようになっている。
【0020】
この各接触部材はそれぞれ弧回動装置により上記対面位置と上記退避位置との間で上下弧回動されるが、この弧回動装置には例えば伸縮シリンダが使用できる。
【0021】
左右の接離移動装置は、各接触部材をそれぞれ前後に移動させるものであるが、この各接離移動装置には例えば伸縮シリンダが使用できる。尚、この各接離移動装置は、各接触部材を弧回動装置とともに前後移動させるようにするとよい。
【0022】
そして、この各接離移動装置は、接触部材を後退移動(手前側に移動)させた状態では、該接触部材を拡張ベルト前面にある展張吊上げ布類の前面から離間させる一方、接触部材を前進移動(奥側に移動)させた状態では、該接触部材を拡張ベルト前面にある展張吊上げ布類の前面に接触させるように機能する。尚、接触部材が展張吊上げ布類の前面から離間した状態では、接触部材を上下に弧回動させても該接触部材が展張吊上げ布類に接触することがない。
【0023】
本願請求項1の布類展張搬送機は、次の順序で作動する。尚、布類の供給前は、左右の各接触部材がそれぞれ下向きの退避位置で且つ拡張ベルトに対して手前側の後退位置にある。又、布類背面拡張装置の各拡張ベルトは、それぞれ作動させておく(拡張ベルト前面側がそれぞれ左右外向きに走行する)。
【0024】
この状態で、まず作業位置において布類(中央部に丸ぐり部を有する布団包布)の一辺の両端角部を捜し出し、丸ぐり部が前面(手前側)に位置する状態で該両端角部をそれぞれ投入チャックに掴持させる。その後、各投入チャックが布類両端角部を掴持したまま所定高さまで上動して、布類両端角部を上方で待機している各受取チャックに受け渡し、続いて各受取チャックが左右離間方向に移動して布類を吊上げ状態で左右に展張させる。このとき、左右の各接触部材は、展張吊上げ布類の左右各外端部よりそれぞれ外側の退避位置にあり、該布類が左右に展張されるときに該布類の左右各外端部が各接触部材に接触する(絡まる)ことがない。
【0025】
尚、この状態では、展張吊上げ布類の上部は、左右の受取チャックの引張力によりかなりの緊張状態で伸展されているので、表裏各生地がほとんど接合している(表裏各生地間に空気がほとんど入っていない)が、展張吊上げ布類の左右各側部及び下部は表裏各生地間に空気が入って前面生地が膨らんでいる場合が多い(特に、丸ぐり部の下端縁部分は生地の自重で垂れ下がることが多々ある)。
【0026】
続いてその展張吊上げ布類の上縁部を搬送コンベア上に移乗させるが、このとき展張吊上げ布類が展張状態のままで後方(奥側)に移動して布類背面が左右の各拡張ベルトの前面(左右外側に走行している)に接触する。そして、その直後に左右の各接触部材が各弧回動装置によりそれぞれ下向きの退避位置から内側(横向きの対面位置)に弧回動され、続いて各接離移動装置により各接触部材をそれぞれ展張吊上げ布類の左右各外側部寄り前面に接触させる。このとき、接触部材と拡張ベルトの間で展張吊上げ布類の左右各外側部寄り部分が軽く挟圧される。
【0027】
この状態で展張吊上げ布類の上縁部が搬送コンベアによって引き取られていく(布類が展張状態のまま引き上げられる)が、それに伴って展張吊上げ布類の背面側が各拡張ベルトで順次左右に展張される一方、左右各外側部寄り前面がそれぞれ接触部材に摺動して布類の左右各側部(表裏各生地間)の空気が排除される。又、展張吊上げ布類の丸ぐり部下縁部が拡張ベルト高さに差しかかったときには、各拡張ベルトによる左右展張機能と各接触部材による押付け機能とにより、丸ぐり部の下縁部分が左右各外側に引っ張られる作用を受け、丸ぐり部の下縁部分が自重で垂れ下がっていても該丸ぐり部下縁部分も緊張状態に伸展するようになる。
【0028】
従って、丸ぐり部を有した布類(布団包布)であっても、表裏の各全面をきれいに展張させた状態でプレス工程側に搬送させることができる。
【0029】
又、この請求項1の布類展張搬送機に使用されている各前面押付装置は、左右の接触部材がそれぞれ下向きの退避位置と横向きの対面位置との間で上下に弧回動するようにしているので、各接触部材の左右方向の移動範囲が小さくて済む。このように、各接触部材の左右移動範囲幅が小さくなると、各前面押付装置の左右方向の設置スペースが小さくなり、各接触部材を左右に移動させるようにしたものであっても、この布類展張搬送機全体の左右幅が大きくならない。尚、各接触部材を退避位置と対面位置との間で移動させるのに、該各接触部材を左右に直線移動させるようにすることも考えられるが、各接触部材を左右移動させる場合には、その左右移動幅が大きくなり、その結果、各前面押付装置の左右方向の設置スペースが大きくなって、布類展張搬送機全体の左右幅が大きくなる(又は各前面押付装置が布類展張搬送機の側面から外側にはみ出る)。
【0030】
尚、この布類展張搬送機は、シーツのような1枚ものの布類も展張・搬送させることができるが、その場合には各前面押付装置全体を作業の邪魔にならない下方位置に退避させ得るようにしておくとよい。
【0031】
本願請求項2の発明
ところで、布団包布は布団本体の大きさに合わせた複数サイズのものがあり、ランドリー工場では布団包布も大サイズのものと小サイズのものとを混在して扱う場合がある。そして、大サイズの布団包布と小サイズの布団包布とでは、展張吊上げ状態での左右幅が異なる関係で、各接触部材を展張吊上げ布類の左右外側部寄り前面の対面位置に位置合わせするのに、布団包布のサイズに合わせて前面押付装置(接触部材)の位置を調整する必要がある。
【0032】
そこで、本願請求項2の発明は、請求項1の布類展張搬送機において、左右の各前面押付装置の位置を、処理すべき布類のサイズに応じてそれぞれ左右に移動調整するための位置調整装置を備えている。
【0033】
この各位置調整装置には、それぞれ伸縮シリンダが使用可能であり、該伸縮シリンダによって前面押付装置全体(接触部材と弧回動装置と接離移動装置を含む)をそれぞれ左右に移動調整し得る。尚、この位置調整装置による前面押付装置の位置調整は、操作パネル(作業位置に設置されている)に設けた位置調整スイッチで行うようにすればよい。
【0034】
この各位置調整装置による前面押付装置の位置調整は、処理すべき布類(布団包布)のサイズが予め分かっている場合には、布類の処理前(投入前)に行えばよい。又、布類のサイズが処理前(投入前)に判明できない場合は、該布類を各接触部材の手前位置で吊上げ・展張させた状態で、その展張吊上げ布類の左右各端部の位置に下向きの退避位置にある接触部材の位置を適合させるように、位置調整装置を操作することができる。
【発明の効果】
【0035】
本願請求項1の発明の効果
本願請求項1の布類展張搬送機によれば、展張吊上げ布類を搬送コンベア側に送り込む過程で、布類背面拡張装置により布類背面を左右に展張させ得るとともに、前面押付装置で布類前面をきれいに展張させ得るようになっているので、中央部に丸ぐり部を有した布類であってもその表裏両面をそれぞれきれいに(小皺や波打ち部分や膨らみ部分がない状態で)展張させることができ、仕上がり精度の良好な展張布類に加工することができるという効果がある。
【0036】
又、各前面押付装置の接触部材は、展張吊上げ布類の左右外側部寄り前面に対して、下向きの退避位置と横向きの対面位置との間で上下に弧回動させ得るようになっているので、接触部材が左右に直線移動するものに比して該各接触部材の左右移動範囲を小さくでき、それによって前面押付装置全体の左右方向の設置スペースを小さくできる。従って、接触部材を左右に移動させるようにしたものであっても、布類展張搬送機全体の左右幅を大きくしないで済むという効果がある。
【0037】
本願請求項2の発明の効果
本願請求項2の発明では、上記請求項1の布類展張搬送機において、左右の各前面押付装置の位置を、処理すべき布類のサイズに応じてそれぞれ左右に移動調整するための位置調整装置を備えている。
【0038】
従って、この請求項2の布類展張搬送機では、上記請求項1の効果に加えて、サイズの異なる布類(布団包布)であっても、左右の各接触部材をそれぞれ適正位置(展張吊上げ布類の左右各外側部寄り前面)に位置合わせすることができるという効果がある。
【実施例】
【0039】
以下、図1〜図11を参照して本願実施例の布類展張搬送機を説明する。尚、この実施例の布類展張搬送機は、シーツのような1枚ものの布類も何ら問題なく展張させることができるが、特に中央部に丸ぐり部を有する布団包布のような布類を展張させるのに適したものである。
【0040】
まず、この実施例の布類展張搬送機の基本構成を図1〜図3を参照して説明する。この布類展張搬送機は、投入装置1と、左右展張装置2と、吸引装置3と、受渡し装置4と、搬送装置5と、布類背面拡張装置6と、布類前面展張用の前面押付装置7,7とを有している。
【0041】
投入装置1は、展張すべき布類Sの一辺の両端角部Sa,Saを掴持する一対の投入チャック11,11を有し、該各投入チャック11,11を昇降装置12(図3)で上下動させ得るようにしたものである。尚、昇降装置12にはロッドレスシリンダが使用されている。
【0042】
各投入チャック11,11は、人の肩幅程度の間隔で左右に並置されている。そして、この各投入チャック11,11は、昇降装置12により投入作業高さとなる低位置(図1、図3の高さ)と布類全体を吊下げ得る高位置(布類の掴持部分を後述の受取チャック21に受け渡し得る高さ)との間で上下動せしめられる。そして、低位置において、布類の一辺の両端角部Sa,Saを各投入チャック11,11で掴持させた後(布類が図1の符号S′の状態となる)、昇降装置12で受け渡し高さまで上昇せしめられる。
【0043】
尚、この実施例では、投入装置1は左右に2基設けており、何れの投入装置1,1からでも布類を投入することができるようになっている。又、各投入装置1,1は、待機状態では、図1に示すように機体の幅中心から左右に振り分けた各位置に位置しているが、布類掴持後に上動する際には、機体の幅中心位置に移動するようになっている。
【0044】
左右展張装置2は、所定高位置において投入装置1の各投入チャック11,11から布類の両端角部Sa,Saをそれぞれ受け取る一対の受取チャック21,21を有し、該各受取チャック21,21をそれぞれ左右動装置(可逆回転可能なサーボモータを使用)22,22で左右方向に移動させ得るようにしたものである。各受取チャック21,21は、図1に示すように待機状態では機体の幅中央部において投入装置1の各投入チャック11,11の間隔と同間隔で待機しており、布類の両端角部Sa,Saを受け取った後(図1のS″の状態)、左右動装置22,22により布類の上辺部が緊張するまで左右外方に移動せしめられる(布類Sが図1の展張吊上げ状態となる)。
【0045】
吸引装置3(図3)は、受取チャック21,21が左右移動する部分の下方位置に吸気ボックス31を設けるとともに、該吸気ボックス31内の空気を吸気ファン33で吸引し得るものが採用されている。吸気ボックス31と吸気ファン33とを連続させる吸気通路32中には、切換ダンパー36が設けられており、該切換ダンパー36が図3の鎖線図示する符号36′の側に位置するときに、吸気ボックス31内が吸気ファン33によって吸引されるようになっている。又、吸気ボックス31の前壁上端部には、左右2本の送込みローラ34,34が設けられている。この各送込みローラ34,34は、それぞれモータ35,35によって所定タイミングで送込み方向に回転せしめられる。
【0046】
そして、この吸引装置3は、布類Sが展張吊上げ状態において、送込みローラ34を送込み方向に回転させるとともに、吸気ボックス31内を吸引することにより、展張吊上げ状態の布類Sの下部側を送込みローラ34を乗り越えて吸気ボックス31内に吸引し、そのとき布類の下部側にテンション作用が働いて、展張吊上げ状態の布類Sを下方に展張させる機能が発生する。
【0047】
受渡し装置4は、各受取チャック21,21により展張吊上げ状態で支持されている布類Sの上縁部を受け取る吸着ボックス41と、該吸着ボックス41内を吸気する吸気フアン42と、吸着ボックス41を前後に進退させる伸縮シリンダ43とを有している。吸着ボックス41の先端部上面(布類受取面)には、多数の小孔を形成しており、該吸着ボックス41内を吸気ファン42で吸引することにより、布類受取面に布類上縁部を吸着(保持)させ得るようになっている。そして、この受渡し装置4は、吸着ボックス41が前位置にある状態で布類受取面に布類上縁部を吸着させた後、該吸着ボックス41を図3に鎖線図示(符号41′)する位置まで後退させる間に、該布類上縁部を搬送装置5(吸着コンベア51)の始端部上に移乗させるように作動する。
【0048】
搬送装置5は、手前側に多数の小孔を設けた吸着コンベア51と、その後端部に連続する搬出コンベア52有している。吸着コンベア51の始端部は、前位置にある吸着ボックス41の先端部(布類受取面)よりやや後側の直下近傍に位置している。吸着コンベア51の上面走行部の下面には、吸気ボックス53が設置されていて、該吸気ボックス53内を吸気することで、吸着コンベア51の上面に布類上縁部を吸着させ得るようになっている。
【0049】
吸着コンベア51側の吸気ボックス53内は、上記吸引装置3の吸気ファン33を共用して、吸引装置3の吸気ボックス31とは択一的に吸気される。即ち、図3において、切換ダンパー36が実線図示にあるときには、吸引装置3側の吸気ボックス31内の吸気が停止する一方、吸着コンベア51側の吸気ボックス53内がダクト54を通して吸気され、切換ダンパーが鎖線図示する符号36′側に切換わると、逆に吸着コンベア51側の吸気ボックス53内の吸気が停止する一方、吸引装置3側の吸気ボックス31内が吸気されるようになっている。
【0050】
布類背面拡張装置6は、展張吊上げ布類Sの背面を左右に展張させるもので、左右一対ある。この各布類背面拡張装置6,6はそれぞれ拡張ベルト61,61を有している。この各拡張ベルト61,61は、吸着コンベア51の始端部より僅かに前側の直下近傍位置において、機体の幅中央部から左右に振り分けた各位置に設置されている。又、該各拡張ベルト61,61は、前面がほぼ鉛直面になる左右横長姿勢で設置されており、前面がそれぞれ左右外方向に走行するようにそれぞれモータ62,62で駆動される。尚、各拡張ベルト61,61のそれぞれ外端部は、展張吊上げ位置にある布類Sの左右端部Sd,Sdよりそれぞれ外側にはみ出す位置まで延出させている。
【0051】
各拡張ベルト61,61は、図4及び図6に示すように、多数の小孔を設けた通気性のあるベルトを使用している。そして、各拡張ベルト61,61の前面走行部の裏側には、それぞれ吸気ボックス63,63が配置されており、該吸気ボックス63,63内を吸引することにより、拡張ベルト61の前面に布類の背面を吸着させ得るようにしている。各吸気ボックス63,63内は、それぞれダクト64,64を介して吸気フアン65の吸気口にそれぞれ接続されており、該吸気フアン65の吸気により該各吸気ボックス63,63内を吸引し、それによって各拡張ベルト61,61の前面走行部の各小孔から周囲の空気を吸引し得るようになっている。尚、この実施例では、吸気フアン65は1台で両方の吸気ボックス63,63内を吸気するようにしているが、他の実施例では各吸気ボックス63,63ごとに吸気フアン65を1台ずつ使用してもよい。
【0052】
ところで、この実施例の布類展張搬送機では、処理すべき布類Sとして中央部に丸ぐり部Tを有した布団包布を採用している。この布団包布Sでは、丸ぐり部Tの周囲の生地が2枚重ね状態となっている。そして、丸ぐり部Tを有した布類Sを展張させる際には、図1に示すように丸ぐり部Tが前面側に向く姿勢で吊上げ展張するが、この場合、展張吊上げ布類Sにおける丸ぐり部T周部分の2枚重ね部分に空気が入って布類前面部分が膨らむことがある。特に、展張吊上げ状態の布類Sでは、丸ぐり部Tの下端縁Taが自重で垂れ下がることがある(図15の符号Ta′の状態)。
【0053】
そこで、この実施例の布類展張搬送機には、展張吊上げ布類Sの前面をきれいに展張させるための左右一対の前面押付装置7,7を設けている。尚、この左右一対の前面押付装置7,7は、図1〜図2に示すように同じものが左右対称形に配置されているが、該前面押付装置7の構成については、図4〜図8に示す右側の前面押付装置7で説明する。
【0054】
図4〜図6に示す前面押付装置7は、展張吊上げ布類(図1の符号Sの状態)の左右各外側部寄り前面Sc,Scに接触させる接触部材71と、該接触部材71を上下に弧回動させる弧回動装置72と、接触部材71を拡張ベルト61前面にある展張吊上げ布類Sの前面Scから離間する離間位置と展張吊上げ布類の前面Scに接触する接触位置との間で前後に移動させる接離移動装置73と、処理すべき布類Sのサイズによって前面押付装置7(接触部材71)の位置を調整する位置調整装置74とを備えている。
【0055】
接触部材71は、使用姿勢での正面視形状が横長長方形(例えば横長さが30〜40cm程度、上下幅が5〜10cm程度の大きさ)で、内側に向く面にスポンジ(ブラシでも可)のような柔軟材料を使用している。接触部材71の一端側にはブラケット75が外方に突出する状態で取付けられている。
【0056】
弧回動装置72と接離移動装置73と位置調整装置74には、それぞれ伸縮シリンダが使用されている。尚、接離移動装置73の伸縮シリンダは、比較的短小なものでよい。
【0057】
他方、この前面押付装置7(接触部材71、弧回動装置72、接離移動装置73、位置調整装置74)は、適宜長さを有するガイドフレーム81と、ガイドフレーム81を上下揺動させ得る伸縮シリンダ9と、ガイドフレーム81に対してスライドするスライドフレーム83と、弧回動装置72を支持する支持台85等の支持部材を使用して組付けられている。
【0058】
ガイドフレーム81は、適宜長さ(例えば1m程度)を有し、その一端部を側部機枠10の内面に軸82で枢支する一方、ガイドフレーム基端寄り適所を伸縮シリンダ9(基端が側部機枠10に枢支されている)の先端部に軸9aで枢支して、2点(軸82と軸9a)で支持されている。尚、伸縮シリンダ9の伸長状態では、ガイドフレーム81を左右に向く水平姿勢に維持させる一方、伸縮シリンダ9を縮小させるとガイドフレーム81を含む前面押付装置7の全体を下向き格納位置まで弧回動させ得るようになっている。
【0059】
スライドフレーム83は、図6に示す側面視においてL形に折曲させた板材が使用されている。このスライドフレーム83には、ガイドフレーム81を上下から挟持する上下2個ずつのローラ84,84が取付けられていて、スライドフレーム83がガイドフレーム81に対して左右にスライドし得るようにしている。
【0060】
支持台85は、弧回動装置(伸縮シリンダ)72を取付けるためのもので、図6に示す側面視において略L形に折曲させた板材が使用されている。この支持台85は、ガイドフレーム81及びスライドフレーム83に対して遊離状態で配置されており、後述の接離移動装置(伸縮シリンダ)73の伸縮ロッド先端に固定されている。
【0061】
これらの支持部材(ガイドフレーム81、スライドフレーム83、支持台85)と前面押付装置7(接触部材71、弧回動装置72、接離移動装置73、位置調整装置74)とは、図4〜図6に示すように組付けられている。
【0062】
位置調整装置74となる伸縮シリンダは、ガイドフレーム81とスライドフレーム83間に介設されていて、該位置調整装置(伸縮シリンダ)74によってスライドフレーム83をガイドフレーム81に沿って左右に移動させ得るようになっている。
【0063】
接離移動装置73となる伸縮シリンダは、伸縮部分が奥側に向く姿勢でスライドフレーム83の底板上に取付けられている。
【0064】
支持台85は、接離移動装置(伸縮シリンダ)73の伸縮ロッド先端に左右向き姿勢で固定されている。尚、この支持台85には、伸縮ロッド先端の固定部を中心に揺動しないようにするための適宜の姿勢安定手段が設けられる。又、この支持台85上には、弧回動装置72となる伸縮シリンダが左右向き姿勢で取付けられている。
【0065】
接触部材71は、その一端部にあるブラケット75の基端部を支持台85の内方側端部上に軸76で枢支する一方、ブラケット75の先端部と弧回動装置(伸縮シリンダ)72の伸縮ロッド先端部とを軸72aで枢支して支持している。
【0066】
そして、前面押付装置7(接触部材71、弧回動装置72、接離移動装置73、位置調整装置74)は、それぞれ次のように機能する。
【0067】
弧回動装置(伸縮シリンダ)72は、その伸縮シリンダ72の縮小状態では接触部材71を図4に実線図示するように左右内方側に向く横向き姿勢に維持させる一方、該伸縮シリンダ72を伸長させると接触部材71を図4に鎖線図示(符号71′)するように下向き姿勢に維持させるようになっている。接触部材71が横向き姿勢状態(図4の実線図示状態)では、該接触部材71が拡張ベルト61の前面にある展張吊上げ布類Sの前面Scに対面し(対面位置)、該接触部材71が下向き姿勢状態(図4の鎖線図示状態)では、該接触部材71′の全体が展張吊上げ布類Sの外端部Sdより外側に位置する(退避位置)。
【0068】
位置調整装置(伸縮シリンダ)74は、処理すべき布類Sのサイズによって接触部材71を適正位置に調整するものであり、布類Sが大サイズの場合には図5に示すように位置調整装置となる伸縮シリンダ74を縮小させる(接触部材71が外側に移動する)一方、布類Sが小サイズのものでは図8に示すように該伸縮シリンダ74を伸長させる(接触部材71が内側に移動する)。この位置調整装置74による接触部材71の位置調整は、大小いずれのサイズの布類であっても、接触部材71の横向き姿勢状態では該接触部材71が展張吊上げ布類Sの外側部寄り前面Scに対面する一方(例えば図4の実線図示状態)、接触部材71の下向き姿勢状態(符号71′)では該接触部材71′が展張吊上げ布類Sの外端部Sdより外側に位置するように調整される。尚、この位置調整装置74の操作は、操作パネルに設けた位置調整スイッチで行える。例えば、「小」の位置調整スイッチを押すと位置調整装置74が接触部材71を小サイズ布類に対応する位置に移動し、「大」の位置調整スイッチを押すと位置調整装置74が接触部材71を大サイズ布類に対応する位置に移動するようにしておくとよい。
【0069】
接離移動装置(伸縮シリンダ)73は、図5(及び図6の実線図示状態)に示すように伸縮シリンダ73の縮小状態では支持台85を手前側に後退させて接触部材71を拡張ベルト61の前面にある展張吊上げ布類Sの前面Scから離間させる一方、図7(及び図6の鎖線図示状態)に示すように伸縮シリンダ73の伸長状態では支持台85を奥側に前進させて接触部材71を拡張ベルト61の前面にある展張吊上げ布類Sの前面Scに接触させるように機能する。尚、図5(及び図6の実線図示状態)に示す離間位置における、接触部材71が展張吊上げ布類の前面Scから離間する距離は、接触部材71が図4の鎖線図示位置(退避位置)から実線図示位置(対面位置)に弧回動するとき、該接触部材71が展張吊上げ布類Sに接触しない程度に設定されている(例えば該離間距離を15〜20mmに設定する)。
【0070】
次に、この実施例の布類展張搬送機の作動方法を図9〜図11を併用して説明する。尚、運転時の初期状態では、吸引装置3の吸気フアン33、布類背面拡張装置6の吸気フアン65、各拡張ベルト61,61のモータ62、搬送装置5の吸着コンベア51及び搬出コンベア52等はそれぞれ作動している。又、前面押付装置7,7の各接触部材71,71は、それぞれ符号71′で示すように下向きの退避位置で且つ拡張ベルト61に対して手前側の後退位置にある。尚、処理しようとしている布類のサイズが判明している場合には、予め各接触部材71をそれぞれ位置調整装置74により適正位置に位置合わせしておくことができるが、布類のサイズが不明なときには後で接触部材71の位置調整をすることができる。
【0071】
そして、布類を布類展張搬送機に供給するには、作業位置において布類の一辺の両端角部を捜し出し、図1に示すようにその両端角部Sa,Saを投入装置1の各投入チャック11,11にそれぞれ掴持させる(図1、図9の各符号S′の状態)。次に各投入チャック11,11が布類両端角部Sa,Saを掴持したまま所定高さまで上動して、布類両端角部を上方で待機している各受取チャック21,21に受け渡し(図1、図9の符号S″の状態)、続いて各受取チャック21,21が左右離間方向に移動して布類を吊上げ状態で左右に展張させる。このとき、左右の各接触部材71,71が図1に符号71′で示すように展張吊上げ布類の左右各外端部Sd,Sdのそれぞれ外側近傍位置(布類サイズに適応する位置)にあるときには、そのまま次の操作に進むが、布類サイズに対して各接触部材71,71が適正位置からずれている場合には、左右の位置調整装置74,74を作動させて各接触部材71,71の布類サイズに適合する適正位置に移動させる。
【0072】
次に、展張吊上げ布類が図9の符号S″の状態から、送込みローラ34が送込み方向に高速回転するとともに、切換ダンパー36が鎖線図示(符号36′)側に切換えられて吸気ボックス31内の空気が吸引され、布類の下端側が吸気ボックス31内に吸い込まれる(展張吊上げ布類が図9の符号S1の状態になる)。このとき、この展張吊上げ布類S1には、吸気ファン33の吸引作用により、下方へのテンションがかけられて、該布類が方形状に展張される。
【0073】
尚、この状態では、展張吊上げ布類の上部は、左右の受取チャック21,21の引張力によりかなりの緊張状態で伸展されているので、表裏各生地がほとんど接合している(表裏各生地間に空気がほとんど入っていない)が、展張吊上げ布類の左右各側部及び下部は表裏各生地間に空気が入って前面生地が膨らんでいる場合が多い(特に、丸ぐり部Tの下端縁Ta部分は生地の自重で垂れ下がることが多々ある)。
【0074】
その後、切換ダンパー36′が実線図示側に切換えられ(吸着コンベア51の吸気ボックス53内が吸気される)、各受取チャック21,21が開放されて、布類の上辺部分が吸着ボックス41の先端側上面に吸着・保持される。尚、このとき、布類上辺部分を図示しないブロワーからのエアで吸着ボックス41の先端側上面に向けて押付けるようにするとよい。続いて、吸着ボックス41が図10に実線図示する位置を経て鎖線図示(符号41′)する位置まで後退するが、その間に布類上辺部分が吸着コンベア51上に移乗される(図11の符号S3の状態)。
【0075】
ところで、展張吊上げ布類の上辺部が受取チャック21から吸着ボックス41を経て吸着コンベア51の始端部に移乗される間には、展張吊上げ布類の上部寄り部分が側面視において左右の接触部材71′,71′間を前方から後方に横切るが、このとき図1に示すように左右の接触部材71′,71′がそれぞれ展張吊上げ布類の左右各外端部Sd,Sdの外側に位置しているので、布類の各外端部Sd,Sdが各接触部材71′,71′に引っ掛かることがない。
【0076】
又、布類上辺部分を吸着した吸着ボックス41が図9に示す前方突出位置から後退移動を開始し、展張吊上げ布類の上部寄り部分が左右の接触部材71′,71′間を奥側に横切った直後(例えば吸着ボックス41が図10に実線図示する位置まで後退したとき)に、左右の各弧回動装置(伸縮シリンダ)72を縮小作動させて、下向き退避位置にあった各接触部材71′,71′を図1に実線図示する横向きの対面位置まで弧回動させる(図11の符号71の状態)。続いて左右の各接離移動装置(伸縮シリンダ)73を伸長させると、図6に鎖線図示するように支持台が符号85′の位置まで移動して各接触部材71,71(スポンジ部71aの先端面)をそれぞれ展張吊上げ布類の左右各外側部寄り前面Sc,Scに接触させる(図6、図11の符号71″の状態)。
【0077】
この状態では、左右の各拡張ベルト61,61の前面がそれぞれ左右外向きに走行しており、且つ各接触部材71,71(スポンジ71aの先端面)がそれぞれ展張吊上げ布類の左右各外側部寄り前面Sc,Scに接触して布類の左右各外側部寄り部分を拡張ベルト61前面と接触部材71後面とで軽く挟圧するようになる。
【0078】
そして、その後も吸着コンベア51が走行していることにより、展張吊上げ布類の下部側が順次上方に引き上げられていくが、展張吊上げ布類の背面側が各拡張ベルト61,61で順次左右に展張される一方、左右各外側部寄り前面Sc,Scがそれぞれ接触部材71,71に摺動して布類の左右各側部(表裏各生地間)の空気が排除される。又、展張吊上げ布類の丸ぐり部下縁部が拡張ベルト61,61の高さに差しかかったときには、各拡張ベルト61,61による左右展張機能と各接触部材71,71による押付け機能とにより、丸ぐり部Tの下縁部分が左右各外側に引っ張られる作用を受け、丸ぐり部の下縁部分が自重で垂れ下がっていても該丸ぐり部の下縁部分も緊張状態に伸展するようになる。
【0079】
このように、この布類展張搬送機を使用すれば、丸ぐり部Tを有した布類(布団包布)Sであっても、表裏の各全面をそれぞれきれいに展張させた状態でプレス工程側に搬送させることができ、折り皺のない状態で加工できる。
【0080】
又、この実施例の布類展張搬送機に使用されている各前面押付装置7,7は、左右の接触部材71,71がそれぞれ下向きの退避位置と横向きの対面位置との間で上下に弧回動するようにしているので、各接触部材71,71の左右方向の移動範囲が小さくて済む。このように、各接触部材71,71の左右移動範囲幅が小さくなると、各前面押付装置7,7の左右方向の設置スペースが小さくなり、左右に前面押付装置7,7を設けたものであっても布類展張搬送機全体の左右幅が大きくならず、布類展張搬送機の床占有面積が大きくならない。
【0081】
又、この実施例の布類展張搬送機では、処理すべき布類サイズに応じて、左右の各前面押付装置7,7の位置をそれぞれ位置調整装置7,74で左右に移動調整し得るようにしているので、サイズの異なる布類(布団包布)であっても、左右の各接触部材71,71をそれぞれ適正位置(展張吊上げ布類の左右各外側部寄り前面Sc,Sc)に位置合わせすることができる。
尚、この布類展張搬送機で、シーツのような1枚ものの布類を処理する際には、左右の各前面押付装置全体を、図1に矢印で示すように作業の邪魔にならない下方位置に退避させておくとよい。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本願実施例の布類展張搬送機の正面図である。
【図2】図1のII−II矢視図である。
【図3】図1のIII−III矢視図である。
【図4】図1の右側前面押付装置部分の拡大図である。
【図5】図4の平面図である。
【図6】図4のVI−VI拡大断面図である。
【図7】図5の状態から接触部材が布類前面に接触した状態の変化図である。
【図8】図5の状態から接触部材が左右内側に移動した状態の変化図である。
【図9】図1の布類展張搬送機の作動説明図(図3相当図)である。
【図10】図9からの状態変化図である。
【図11】図10からの状態変化図である。
【図12】公知例の布類展張搬送機の正面図である。
【図13】図12の布類展張搬送機の作動説明図である。
【図14】図13からの状態変化図である。
【図15】展張吊上げ状態の布類の説明図である。
【符号の説明】
【0083】
1は投入装置、2は左右展張装置、3は吸引装置、4は受渡し装置、5は搬送装置、6は布類背面拡張装置、7は前面押付装置、11は投入チャック、21は受取チャック、22は左右動装置、61は拡張ベルト、71は接触部材、72は弧回動装置、73は接離移動装置、74は位置調整装置、Sは布類、Saは布類角部、Scは布類外側部寄り前面、Sdは布類外端部である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央部に丸ぐり部(T)を有した布団包布からなる大面積の布類(S)の一辺の両端角部(Sa,Sa)をそれぞれ掴持した状態で所定高位置まで吊上げ、その布類の各掴持部分(Sa,Sa)を左右に離間させて布類(S)を吊上げ状態で展張させた後、その展張吊上げ布類(S)を次工程側に搬送させ得るようにした布類展張搬送機であって、
前記展張吊上げ布類(S)の背面側に、該布類背面に摺接して布類背面側を左右外側に拡張させる拡張ベルト(61)を有する左右一対の布類背面拡張装置(6,6)を設けている一方、
前記各布類背面拡張装置(6,6)の各拡張ベルト(61,61)に対面する位置に、前記展張吊上げ布類(S)の左右外側部寄り前面(Sc,Sc)をそれぞれ前記各拡張ベルト(61,61)側に押付ける左右一対の前面押付装置(7,7)を配置しているとともに、
前記各前面押付装置(7,7)は、前記各拡張ベルト(61,61)の前面にある展張吊上げ布類(S)の左右外側部寄り前面(Sc)に接触し得る部材であって正面視において展張吊上げ布類(S)の左右外側部寄り前面(Sc)に対面する対面位置と展張吊上げ布類(S)の左右外端部(Sd,Sd)より外側の退避位置との間で上下に弧回動し得る状態で設置された接触部材(71)と、該接触部材(71)を上下に弧回動させる弧回動装置(72)と、前記接触部材(71)を拡張ベルト(61)前面にある展張吊上げ布類(S)の前面から離間する離間位置と該展張吊上げ布類(S)の前面に接触する接触位置との間で前後に移動させる接離移動装置(73)とを備えている、
ことを特徴とする布類展張搬送機。
【請求項2】
請求項1において、
左右の各前面押付装置(7,7)の位置を、処理すべき布類(S)のサイズに応じてそれぞれ左右に移動調整するための位置調整装置(74,74)を備えている、
ことを特徴とする布類展張搬送機。
【請求項1】
中央部に丸ぐり部(T)を有した布団包布からなる大面積の布類(S)の一辺の両端角部(Sa,Sa)をそれぞれ掴持した状態で所定高位置まで吊上げ、その布類の各掴持部分(Sa,Sa)を左右に離間させて布類(S)を吊上げ状態で展張させた後、その展張吊上げ布類(S)を次工程側に搬送させ得るようにした布類展張搬送機であって、
前記展張吊上げ布類(S)の背面側に、該布類背面に摺接して布類背面側を左右外側に拡張させる拡張ベルト(61)を有する左右一対の布類背面拡張装置(6,6)を設けている一方、
前記各布類背面拡張装置(6,6)の各拡張ベルト(61,61)に対面する位置に、前記展張吊上げ布類(S)の左右外側部寄り前面(Sc,Sc)をそれぞれ前記各拡張ベルト(61,61)側に押付ける左右一対の前面押付装置(7,7)を配置しているとともに、
前記各前面押付装置(7,7)は、前記各拡張ベルト(61,61)の前面にある展張吊上げ布類(S)の左右外側部寄り前面(Sc)に接触し得る部材であって正面視において展張吊上げ布類(S)の左右外側部寄り前面(Sc)に対面する対面位置と展張吊上げ布類(S)の左右外端部(Sd,Sd)より外側の退避位置との間で上下に弧回動し得る状態で設置された接触部材(71)と、該接触部材(71)を上下に弧回動させる弧回動装置(72)と、前記接触部材(71)を拡張ベルト(61)前面にある展張吊上げ布類(S)の前面から離間する離間位置と該展張吊上げ布類(S)の前面に接触する接触位置との間で前後に移動させる接離移動装置(73)とを備えている、
ことを特徴とする布類展張搬送機。
【請求項2】
請求項1において、
左右の各前面押付装置(7,7)の位置を、処理すべき布類(S)のサイズに応じてそれぞれ左右に移動調整するための位置調整装置(74,74)を備えている、
ことを特徴とする布類展張搬送機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2007−284820(P2007−284820A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−113203(P2006−113203)
【出願日】平成18年4月17日(2006.4.17)
【出願人】(502407130)株式会社プレックス (75)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月17日(2006.4.17)
【出願人】(502407130)株式会社プレックス (75)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]