説明

布類展張搬送機

【課題】 従来の布類展張搬送機の中には、処理能力を大きくするために機枠前面部に3〜4箇所の布類投入部を有したものがあるが、このように3〜4箇所の布類投入部のあるものでは、布団包布のような布類をきれいに展張させることができにくい。
【解決手段】 シーツや布団包布のような大面積の布類Sを吊上げ状態で展張させた後、次工程側に搬送させ得るようにした布類展張搬送機において、布類投入装置を、中央投入装置1Aとその左右外側に位置する各外側投入装置1B,1Bとの少なくとも3箇所に設置するとともに、各外側投入装置1B,1Bをそれぞれ上下動装置15B,15Bで上方に退避させ得るようにしていることで、全部の投入装置1A,1B,1Bを使用する使用形態と、各外側投入装置1B,1Bを上方に退避させてその下方スペースに側縁部処理用の作業員を配置する使用形態とを選択して使用できるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、シーツや布団包布のような大面積の布類を展張させ、その展張布類を次工程側に搬送させるための布類展張搬送機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、ランドリー工場においては、洗濯・乾燥後の布類をプレス機でプレスしたり、折畳み機で折畳む作業が行われるが、その次工程装置(以下、プレス機で説明する)に布類を供給する際には、予め布類をきれいに展張させておく必要がある。
【0003】
ところで、シーツや布団包布のような大面積の布類を展張させるとともに、その展張布類を次工程側に搬送させ得るようにした布類展張搬送機として、例えば特開2001−159067号公報(特許文献1)に示されるものがある。
【0004】
この公知例(特許文献1)の布類展張搬送機は、大面積の布類の一辺の両端角部を投入装置の一対の投入チャックで掴持した状態で所定高位置まで吊上げ、その布類の各掴持部分を上方で待機している一対の受取チャックで受け取り、その各受取チャックを機枠中央部において左右に離間させることにより布類を吊上げ状態で展張させ、その吊上げ展張布類を受渡し装置を介して搬送装置に移乗させて次工程(プレス工程)側に搬送させ得るようになっている。又、吊上げ展張状態の布類は、下方の吸気ボックス内に垂れ下げた状態で該吸気ボックス内を吸引することによって下方へのテンションがかけられて、該布類が方形状に展張されるようになっている。尚、投入装置の外形下端部は、布類両端角部を各投入チャックに掴持させるために作業員の肩又は顔の高さ付近に位置している。
【0005】
ところで、この種の布類展張搬送機(例えば、上記特許文献1のもの)で布類を展張・搬送させる場合に、洗濯・乾燥済みの布類(絡まったり丸まっている)をある程度ほぐし、そのほぐした布類の一辺の両端角部を捜し出して、その両端角部を投入装置の各投入チャックに掴持させるまでは作業員が手作業で行うが、絡まったり丸まった状態の布類を投入チャック側に投入するまでにはかなりの時間(例えば1枚当たり10〜20秒程度)を要する。他方、布類展張搬送機は、布類両端角部を投入チャックが掴持した後、スタートボタンを押すと、布類が吊上げられ→各受取チャックで布類両端角部を受け取り→両受取チャックが左右に離間して布類上辺部を展張させ→吸引装置で布類下方部を吸引し→布類上辺部を搬送装置側に受け渡す、という一連の動作が連続して行われるが、この1回当たりの動作時間は、かなり短い(シーツの場合、例えば4〜5秒程度)ものである。
【0006】
そして、この種の布類展張搬送機には、1台につき投入装置を左右に複数箇所(例えば3〜4箇所)並設し、各投入装置からそれぞれ布類を投入することで、できるだけ機械の待ち時間を少なくする(機械の実質稼働時間を多くする)ようにしている。尚、このように布類の投入装置を左右に3箇所以上設置する場合は、機枠の中央寄りと機枠の左右各端部寄りにそれぞれ所定の間隔をもって配置されるが、省スペースや機枠の小型化等の要望から各投入装置間の間隔はさほど大きく取れない(隣接する投入装置間に作業員が入れるほどの間隔はない)のが現状である。
【0007】
上記公知例(特開2001−159067号公報)に示される布類展張搬送機では、吊上げ展張状態の布類の下部を吸気ボックス内に入れて該吸気ボックス内を吸引することにより、ある程度の展張状態を確保できるものの、該布類に皺や波打ち部分が残ることがある。特に、図5(A)に示すような片面中央部に丸ぐり部Scを有した布団包布Sや、図5(B)に示すような一側縁に開口部Sdを有した袋状の布団包布S等では、表裏生地が接合する部分があって、その表裏生地同士が部分的にくっついて皺や波打ち部分(符号Se)が顕著に残り易い。そして、このように皺があったり波打った状態の展張布類をそのまま後送してプレス機にかけると、該皺や波打ち部分を折返し状態で押し潰して明確な折り皺が発生し、見栄えが悪くなるとともに顧客からの苦情が出ることになる。
【0008】
ところで、布類の吊上げ展張状態(布類両端角部をそれぞれ受取チャックで掴持して左右に離間させた状態)で、その吊上げ展張布類の左右各側縁部を作業員が手で摘まんで揺する(はためかす)と、皺や波打ち部分を無くすのに有効であるが、その作業には吊上げ展張布類の左右各側縁部に作業員が近づく必要がある。
【0009】
【特許文献1】特開2001−159067号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、上記のように1台の布類展張搬送機に投入装置を3〜4箇所並設したものでは、機枠中央部で吊上げ展張される布類の左右側縁部を作業員が手で摘まもうとしても(布類側縁部を揺するため)、吊上げ展張布類の左右各側縁部の外側近傍位置にはそれぞれ外側投入装置(下端部が肩又は顔の高さにある)が位置しているので、該外側投入装置が邪魔になって布類側縁部付近に近ずくことができない。
【0011】
従って、1台の布類展張搬送機に投入装置を3〜4箇所並設したものでは(この場合、各投入装置からそれぞれ布類を投入することで機械の実質稼働率を良くすることができる)、布類に頑固な皺や波打ち部分等がある場合に、機械の性能のみでは十分な展張精度を得られないことがあった(その場合には、見栄えが悪くなるとともに顧客からの苦情が出る)。
【0012】
そこで、本願発明は、1台の布類展張搬送機に投入装置を3〜4箇所並設したものであっても、機枠中央部で吊上げ展張された布類の左右各側縁部を必要に応じて作業員が手で摘まむ(皺取りのために布類側縁部を揺らす)ことができるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願発明は、上記課題を解決するための手段として次の構成を有している。
【0014】
本願発明は、機枠の前部においてシーツや布団包布のような大面積の布類の一辺の両端角部を投入装置の各投入チャックでそれぞれ掴持して所定高位置まで吊上げ、その吊上げ布類の各掴持部分を受取チャックで受け取って機枠中央部において左右に離間させることにより布類を吊上げ状態で展張させた後、その展張布類を次工程側に搬送させ得るようにした布類展張搬送機を対象にしている。
【0015】
投入装置は、肩幅程度の間隔をもって左右一対の投入チャックを有しているとともに、各投入チャックを昇降装置により下方の投入位置と上方の受渡し位置との間で上下動させ得るようになっている。尚、投入チャック用の昇降装置は支持枠に取付けられているが、該支持枠を含めて投入装置を構成している。
【0016】
各受取チャックは、左右動装置により個別に左右移動し得るようになっている。又、布類展張時には、各受取チャックが布類を機枠の中央部で展張させるようになっている。
【0017】
本願発明の布類展張搬送機では、投入装置は、機枠中央部付近に位置する少なくとも1つの中央投入装置と、機枠中央部で展張される展張布類の左右側縁部のそれぞれ外側近傍に位置する左右2つの外側投入装置との少なくとも3箇所に設置している。
【0018】
中央投入装置は、1つでも複数でもよいが、複数の場合でも2つが適当である。尚、外側投入装置は左右に1つずつである。
【0019】
そして、この布類展張搬送機では、各外側投入装置は、それぞれ上下動装置により投入チャックが作業員の伸長より低くなる下方の使用位置と投入装置全体が作業員の身長より上方に退避する退避位置との間で上下動させ得るようにしている。各上下動装置としては、エアシリンダが採用できる。尚、中央投入装置にも、下方の使用位置と上方の退避位置との間で上下動させ得る上下動装置を設けることができるが、その場合は外側投入装置用の各上下動装置とは別のものを使用する。
【0020】
本願発明の布類展張搬送機では、全部(3〜4箇所)の投入装置を使用位置に位置させて該各投入装置からそれぞれ布類を投入し得るようにした使用形態と、左右の各外側投入装置をそれぞれ上方に退避させて中央投入装置からのみ布類を投入するようにした使用形態とを選択できる。
【0021】
ところで、本願発明の布類展張搬送機では、全部の投入装置を使用位置に位置させて作業を行う場合は、投入装置の投入チャックに布類両端角部を掴持させた後、スタートボタンを押すと、上方位置にある一対の受取チャックが当該投入装置の各投入チャックに対応する位置(受け取り位置)に移動し→各投入チャックが上動して布類が吊上げられ→各受取チャックで布類両端角部を受け取り→両受取チャックが左右に離間して布類上辺部を機枠中央部において展張させ→吸引装置で布類下方部を吸引し→布類上辺部を搬送装置側に受け渡す、という一連の動作が連続して行われる。他方、各外側投入装置を上方の退避位置に位置させた状態では、上記工程の途中の両受取チャックが左右に離間して布類上辺部を機枠中央部で展張させたときに一旦動作が中断し、その後、再度スタートボタンを押すことで以降の動作が再開されるようになっている。
【0022】
そして、シーツのような1枚ものの布類では、機械の展張機能のみで比較的きれいに展張させることができるので、全部(3〜4箇所)の投入装置を使用して機械の実質稼働率を上げるように実施する。他方、布団包布のように機械の展張機能のみでは皺や波打ち部分をきれいに展張できにくい布類では、次のように実施する。
【0023】
まず、中央投入装置は使用位置のままで、左右の各外側投入装置をそれぞれ上下動装置により上方の退避位置に位置させる。このように各外側投入装置を上方に退避させると、該各外側投入装置の下方にそれぞれ作業員が入れるスペースができる。そして、中央投入装置に布類投入用の作業員と、上記各スペースに側縁部処理用の作業員を1人ずつ配置する。
【0024】
この状態で、布類投入用作業員が布類の一辺両端角部を捜し出してその両端角部を中央投入装置の各投入チャックに掴持させた後、スタートボタンを押すと、上記のように作動して両受取チャックが離間して布類上辺部を機枠中央部において展張させたときに、動作が一旦中断する。この状態では、中央投入装置の奥側で布類の一辺両端角部がそれぞれ受取チャックで保持されていて該布類が吊上げ状態で展張されているが、その吊上げ展張布類の左右各側縁部は、それぞれ側縁部処理用の各作業員の手が届く位置にある。そして、その左右の布類側縁部を2人の側縁部処理用作業員がそれぞれ手で摘まんで、該各布類側縁部をそれぞれ揺する(はためかす)。このとき、布団包布のような2枚重ね部分がある布類では、表裏の生地間に部分的に空気が留まって頑固な皺や波打ち部分が生じ易いが、上記のように布類側縁部を揺すると表裏生地間に空気を送り込むことができるので、布団包布であっても皺や波打ち部分をきれいに除去できる。その後、再度スタートボタンを押すと、吸引装置で布類下方部を吸引し→布類上辺部を搬送装置側に受け渡し→該搬送装置により布類を次工程(プレス工程)側に後送する。
【発明の効果】
【0025】
本願発明の布類展張搬送機には、次のような効果がある。
【0026】
本願発明の布類展張搬送機では、機枠前面部の少なくとも3箇所に投入装置を設けており、皺や波打ち部分が残りにくい布類(例えば1枚もののシーツ)については全部の投入装置から布類を投入できるようにしているので、機械の実質稼働率を良好にし得る(機械の待ち時間をなくするか少なくできる)。
【0027】
又、そのように、少なくとも3箇所に投入装置を設けたものであっても、各外側投入装置をそれぞれ上方(邪魔にならない位置)に退避させることにより、その各外側投入装置の下方に作業員が入るスペースを確保できる。従って、その左右のスペースから、機枠中央部で吊上げ展張される布類の左右側縁部を作業員が摘まんで揺する(皺取りする)ことができるので、布団包布のような皺や波打ち部分が残り易い布類であっても、展張精度の良好な展張布類に仕上げることができる。
【0028】
さらに、上記各使用形態は、左右の各外側投入装置を上下動装置(エアシリンダ)で上下動させる、という簡単な構成の付加で行えるので、装置として安価に製作できる。
【実施例】
【0029】
以下、図1〜図4を参照して本願実施例を説明すると、この実施例の布類展張搬送機は、例えばランドリー工場において洗濯・乾燥済みのシーツや布団包布等の大面積布類をきれいに展張させた状態で次工程(プレス工程)側に搬送させるものである。尚、図1及び図2には、後述するように全部の投入装置(1A,1B)を使用してそれぞれの投入装置から布類を投入する使用形態を示しており、図3及び図4には、後述するように投入装置(1A,1B)の一部(中央投入装置1A)のみを使用してその一部の投入装置から布類を投入する使用形態を示している。
【0030】
図1及び図2に示す布類展張搬送機は、機枠10と、投入装置(1A,1B,1B)と、左右展張装置2と、吸引装置3と、受渡し装置4と、搬送装置5と、布類背面拡張装置6とを基本構成としている。
【0031】
機枠10の前面部には、左右にかなり広幅(例えば3m程度の幅)の空間部が形成されている。この機枠10の前面空間部には、その中央部に1つの中央投入装置1Aと、左右各外端寄り位置に1つずつの外側投入装置1B,1Bがそれぞれ設置されている。
【0032】
中央投入装置1Aは、比較的広幅(例えば150〜160cm幅)で1枚ものの支持枠13を有し、該支持枠13の左右に離間した2箇所にそれぞれ左右一対を1組とする2組の投入チャック11,11を設置している。この2組の各投入チャック11,11は、それぞれ昇降装置(ロッドレスシリンダ)12で個別に昇降させ得るようになっている。
【0033】
左右の各外側投入装置1B,1Bは、それぞれ比較的短小幅(例えば40〜50cm幅)の支持枠13に左右一対を1組とする投入チャック11,11を設置している。この各外側投入装置1B,1Bの投入チャック11,11も、それぞれの昇降装置(ロッドレスシリンダ)12で個別(1組ごと)に昇降させ得るようになっている。
【0034】
中央投入装置1A及び各外側投入装置1B,1Bのそれぞれ1組とする2つの投入チャック11,11は、左右に人の肩幅程度の間隔をもって並置されている。又、この各組(合計4組)の投入チャック11,11は、それぞれ昇降装置12により投入作業高さとなる低位置と布類全体を吊下げ得る高位置(布類の掴持部分を後述の受取チャック21に受け渡し得る高さ)との間で昇降せしめられる。そして、低位置において、布類の一辺の両端角部Sa,Saを各投入チャック11,11で掴持させた後(布類が図1、図2の符号S0の状態となる)、その布類S0を昇降装置12で符号S1で示す受け渡し高さまで上昇せしめ得るようになっている。
【0035】
中央投入装置1A及び外側投入装置1B,1Bの各昇降装置(ロッドレスシリンダ)12は、図2に示すように上部が奥側に上り傾斜する状態で設置されており、投入チャック11,11が下方の布類掴持位置から上方の布類受渡し位置まで上昇する際に、投入チャック11,11で掴持している布類を奥方向に所定距離(例えば符号S0から符号S1までの水平距離が50〜60cm程度)だけ移動させるようになっている。
【0036】
中央投入装置1A及び各外側投入装置1B,1Bは、図2に示すように、それぞれの支持枠13の上端部をそれぞれ枢軸14で枢支している。そして、中央投入装置1Aは、左右2つの上下動装置(エアシリンダ)15A,15Aにより、枢軸14部分を中心にして投入チャック11,11が作業員Mの肩の高さ(又は顔の高さ)程度に位置する下方の使用位置(図1、図2の実線図示状態)と、図2に鎖線図示(符号1A′)するように作業員の身長よりかなり高位置まで跳ね上げた退避位置との間で上下弧回動させ得るようになっている。尚、他の実施例では、中央投入装置1Aは下方の使用位置に固定したままでもよい。又、左右の各外側投入装置1B,1Bも、それぞれ1つずつの上下動装置(エアシリンダ)15Bにより、各枢軸14部分を中心にして投入チャック11,11が作業員Mの肩の高さ(又は顔の高さ)程度に位置する下方の使用位置(図1、図2の実線図示状態)と、図2に鎖線図示(符号1B′)するように作業員の身長よりかなり高位置まで跳ね上げた退避位置との間で上下弧回動させ得るようになっている。
【0037】
左右展張装置2は、所定高位置において各投入装置1A,1Bの各投入チャック11,11から布類の各角部Sa,Saをそれぞれ受け取る一対の受取チャック21,21を有し、該各受取チャック21,21をそれぞれ左右動装置(可逆回転可能なサーボモータを使用)22,22で個別に左右方向に移動させ得るようにしたものである。一対の受取チャック21,21は、各投入装置1A,1B,1Bの各組(4組)の投入チャック11,11に共用されるもので、所定の投入チャック11,11のスタートボタンを押せば、各受取チャック21,21がそれぞれ当該各投入チャック11,11に対応する位置に移動するようになっている。又、各受取チャック21,21は、適宜の位置の投入チャック11,11から布類の各角部Sa,Saを受け取った後、各左右動装置22,22により符号21′,21′で示すように機枠中央部において布類の上辺部を緊張させるまでそれぞれ所定距離だけ移動せしめられる。
【0038】
又、一対の受取チャック21,21は、図2に示すように、下方の使用位置にある投入チャック11,11の位置より水平方向に所定距離(例えば50〜60cm程度)だけ奥側に位置している。従って、各受取チャック21,21で布類の各角部Sa,Saを受け取った状態では、該布類を投入位置(図2の符号S0の位置)より所定距離(例えば50〜60cm程度)だけ奥側位置(図2の符号S1の位置)で吊持するようになっている。従って、受取チャック21,21で吊持されている布類S1は、中央投入装置1Aの奥側位置において左右に展張させるようになっている。
【0039】
吸引装置3(図2)は、受取チャック21,21が左右移動する部分の下方位置に吸気ボックス31を設けるとともに、該吸気ボックス31内の空気を吸気ファン33で吸引し得るものが採用されている。吸気ボックス31の前壁は、投入部において各投入チャック11,11で吊持される布類の位置(符号S0の位置)から奥側に所定距離(例えば60〜70cm程度)だけ離間した位置にあり、その間隔内(投入部で吊持される布類S0と吸気ボックス31の前壁間のスペース)に作業員Mが入り込んで(図4参照)、後述の作業を行うことができるようになっている。
【0040】
吸気ボックス31と吸気ファン33とを連続させる吸気通路32中には、切換ダンパー36が設けられており、該切換ダンパー36が図2に鎖線図示する符号36′の側に位置するときに、吸気ボックス31内が吸気ファン33によって吸引されるようになっている。又、吸気ボックス31の前壁上端部には、左右2本の送込みローラ34,34が設けられている。この各送込みローラ34,34は、それぞれモータ35,35によって所定タイミングで送込み方向に高速回転せしめられる。
【0041】
そして、この吸引装置3は、布類を吊上げ展張させた状態(符号S2の状態)において、吸気ボックス31内を吸引するとともに、送込みローラ34を送込み方向に高速回転させることにより、吊上げ展張布類S2の下部側を送込みローラ34を乗り越えて吸気ボックス31内に吸引するようになっている(図2の符号S3の状態)。そのとき、布類S3の下部側に吸引によるテンション作用が働いて、吊上げ展張布類S3を下方に展張させる機能が発生する。
【0042】
受渡し装置4は、各受取チャック21,21により吊上げ展張状態で支持されている布類S3の上縁部を受け取る吸着ボックス41と、該吸着ボックス41を前後に進退させるエアシリンダ43とを有している。吸着ボックス41の先端部上面(布類受取面)には、多数の小孔を形成しており、該吸着ボックス41内を吸気ファン42で吸引することにより、布類受取面に布類上縁部を吸着(保持)させ得るようになっている。そして、この受渡し装置4は、吸着ボックス41が前位置にある状態で布類受取面に布類上縁部を吸着させた後、該吸着ボックス41を図2に鎖線図示(符号41′)する位置まで後退させる間に、該布類上縁部を搬送装置5(吸着コンベア51)の始端部上に移乗させるように作動する。
【0043】
搬送装置5は、手前側に多数の小孔を設けた吸着コンベア51と、その後端部に連続する搬出コンベア52とを有している。吸着コンベア51の始端部は、前位置にある吸着ボックス41の先端部(布類受取面)よりやや後側の直下近傍に位置している。吸着コンベア51の上面走行部の下面には、吸気ボックス53が設置されていて、該吸気ボックス53内を吸気することで、吸着コンベア51の上面に布類上縁部を吸着させ得るようになっている。
【0044】
吸着コンベア51側の吸気ボックス53内は、上記吸引装置3の吸気ファン33を共用して、吸引装置3の吸気ボックス31とは択一的に吸気される。即ち、図2において、切換ダンパー36が実線図示位置にあるときには、吸引装置3側の吸気ボックス31内の吸気が停止される一方、吸着コンベア51側の吸気ボックス53内がダクト54を通して吸気され、他方、切換ダンパーが鎖線図示する符号36′側に切換わると、逆に吸着コンベア51側の吸気ボックス53内の吸気が停止される一方、吸引装置3側の吸気ボックス31内が吸気されるようになっている。
【0045】
布類背面拡張装置6は、左右一対の拡張ベルト61,61を有している。この各拡張ベルト61,61は、吸着コンベア51の始端部より僅かに前側の直下近傍位置において、機体の幅中央部から左右に振り分けた各位置に設置されている。又、該各拡張ベルト61,61は、前面がほぼ鉛直面になる左右横長姿勢で設置されており、前面がそれぞれ左右外方向に走行するようにそれぞれモータで駆動される。尚、各拡張ベルト61,61のそれぞれ外端部は、吊上げ展張位置にある布類S3の左右端部よりそれぞれ外側にはみ出す位置まで延出させている。
【0046】
各拡張ベルト61,61は、多数の小孔を設けた通気性のあるベルトを使用しており、該各拡張ベルト61,61の前面走行部の裏側を吸気ファン62で吸引するようにしている。そして、図2に符号S4で示すように布類の上辺部が吸着コンベア51の始端部上に移乗されると、該布類S4の背面が各拡張ベルト61,61の前面に吸着されながら上方に引き上げられていき、そのとき各拡張ベルト61,61の前面がそれぞれ外側に走行しているので、布類S4の背面を順次左右に展張させるような作用が働く。
【0047】
この実施例の布類展張搬送機は、図1及び図2に示すように全部の投入装置(中央投入装置1Aと各外側投入装置1B,1B)を下方の使用位置に降ろして4箇所から布類投入作業を行う使用形態と、図3及び図4に示すように左右の各外側投入装置1B,1Bをそれぞれ上方退避位置に跳ね上げて中央投入装置1Aの2箇所からのみ布類投入作業を行う使用形態とを選択することができる。尚、以下の説明では、図1及び図2の使用形態を第1使用形態といい、図3及び図4の使用形態を第2使用形態ということがある。
【0048】
図1及び図2の第1使用形態は、機械の処理だけで比較的容易に皺や波打ち部分Seが除去できるような布類(例えば1枚もののシーツ)の処理に適したものである。この場合は、中央上下動装置(エアシリンダ)15A,15Aを縮小させる一方、各外側上下動装置(エアシリンダ)15B,15Bを伸長させて、全部の投入装置(中央投入装置1A、両外側投入装置1B,1B)をそれぞれ下方の使用位置に位置させる。この第1使用形態では、機枠前面部の4箇所に布類の投入部ができ、該各投入部(4箇所)の前面にそれぞれ1人ずつの布類投入用の作業員M1〜M4を配置する。
【0049】
図3及び図4の第2使用形態は、機械の処理だけでは容易に皺や波打ち部分Seを除去できないような布類(例えば2枚重ね部分のある布団包布)の処理に適したものである。この場合は、中央投入装置1Aを下方の使用位置に維持させたままで、各外側投入装置1B,1Bをそれぞれ上方の退避位置に跳ね上げておく。そして、この第2使用形態では、中央投入装置1A(投入部が2箇所ある)の前面に2人の布類投入用の作業員M1,M2を配置する一方、各外側投入装置1B,1Bの下方スペースにそれぞれ1人ずつの側縁部処理用の作業員M3,M4を配置する。
【0050】
尚、上記各使用形態における運転時の初期状態では、各装置部分が次のようになっている。吸引装置3は、吸気ファン33が連続作動しているとともに、切換ダンパー36が実線図示側にあって吸気ボックス31内は吸気停止状態にある(搬送装置5側の吸気ボックス53内が吸引されている)。受渡し装置4の吸着ボックス41は、受取チャック21直下の手前側位置(実線図示位置)で待機している。吸着ボックス41の吸気ファン42は連続作動している。搬送装置5(吸着コンベア51及び搬出コンベア52)は連続走行している。拡張装置6は、左右各拡張ベルト61,61の前面側がそれぞれ左右外向きに走行しているとともに、吸気ファン62が連続作動していて各拡張ベルト61の前面を吸気している。
【0051】
そして、図1及び図2の第1使用形態では、それぞれの投入部(4箇所)において、それぞれ作業員M1〜M4が布類の一辺の両端角部Sa,Saを捜して、その両端角部Sa,Saを担当部分(受け持ち部分)の投入チャック11,11に掴持させる(符号S0の状態)。続いて、当該投入部のスタートボタンを押すが、該スタートボタンを押した後は次の布類の投入準備にかかることができる。そして、スタートボタンを押すと順次次の動作が行われる。
【0052】
まず一対の受取チャック21,21がそれぞれ当該スタートボタン操作位置の各投入チャック11,11に対応する位置に移動し→当該各投入チャック11,11が布類両端角部Sa,Saを掴持したまま上動し→該各角部Sa,Saを各受取チャック21,21に受け渡し(符号S1の状態)→各受取チャック21,21が機枠中央部において左右に離間して布類の上辺部を展張させ(符号S2の状態)→送込みローラ34,34が送込み方向に高速回転するとともに、切換ダンパー36が鎖線図示側(符号36′側)に切換えられて吸気ボックス31内を吸引して展張布類S2の下部側を吸気ボックス31内に吸い込み(符号S3の状態)→所定タイマー後に送込みローラ34が停止するとともに切換ダンパー36′が実線図示側に切換えられ(吸気ボックス31内が吸引停止する一方、搬送装置5の吸気ボックス53内が吸引される)→各受取チャック21,21が開放されて、布類S3の上辺部分が吸着ボックス41の先端側上面に吸着・保持され→吸着ボックス41が鎖線図示(符号41′)するように後退して、その間に布類上辺部分が吸着コンベア51の始端部上に移乗され(このとき展張布類S4の背面が各拡張ベルト61,61の前面に接触する)→該布類S4が吸着コンベア51で上方に引き上げられることで布類背面が順次各拡張ベルト61,61で左右外側に展張され→布類がきれいに展張された状態で吸着コンベア51及び搬出コンベア52上を経て次工程側に搬送される。尚、搬出コンベア52で後送される展張布類は、プレス機でプレス処理された後、折畳み機で所定小面積に折畳まれて出荷形態になる。
【0053】
このように、4箇所の投入部からそれぞれ布類を投入し得るようにした第1使用形態では、投入チャック11,11に布類両端角部を掴持させた後にスタートボタンを押すと、各受取チャック21,21が布類両端角部の受取位置まで移動する工程から展張布類が搬送装置5(搬出コンベア52)で次工程側に搬送されるまでの全工程をノンストップで連続作動するようになっている。
【0054】
各投入部においては、それぞれ一対の投入チャック11,11に布類両端角部を掴持させた後にそれぞれスタートボタンが押されるが、受取チャック21,21が作動中(先の布類の角部を保持している状態)では該投入チャック11,11が布類両端角部を掴持したまま待機している。又、受取チャック21,21は、先の布類を開放した後、直ちに次順(スタートボタンが押されている)の投入チャック11,11に対応する位置に移動して、次の布類受け取り動作が行われる。そして、図1及び図2の第1使用形態では、機枠前面部の4箇所からそれぞれ布類を投入できるので、機械の限界処理能力と同等あるいはそれを超えた布類投入能力があり、従って機械の待ち時間をなくして機械の実質稼働率を最大限まで高めることができる。
【0055】
尚、図1及び図2の第1使用形態では、布類に対して機械による展張作用だけしかないが、シーツのような1枚ものの布類では、機械の展張作用のみでも十分きれいに展張させることができる。
【0056】
他方、例えば図5(A)(B)に示す布団包布(表裏生地が重合する部分がある)のように機械による展張作用のみでは皺や波打ち部分Seが残り易い布類Sの場合は、図3及び図4の第2使用形態で行うとよい。この第2使用形態では、各外側投入装置1B,1Bをそれぞれ上方の退避位置に跳ね上げて(各外側投入装置1B,1Bの下方にそれぞれ作業員が入るスペースができる)、中央投入装置1A(2箇所の投入部がある)の前面に布類投入用の2人の作業員M1,M2を配置する一方、各外側投入装置1B,1Bの下方スペースにそれぞれ側縁部処理用の1人ずつの作業員M3,M4を配置する。
【0057】
そして、布類投入用の各作業員M1,M2がそれぞれの投入部の各投入チャック11,11に布類両端角部Sa,Sa掴持させた後、当該投入部のスタートボタンを押すが、この第2使用形態では、スタートボタンが押されると、上記と同様に各受取チャック21,21が受取位置に移動し→当該各投入チャック11,11が布類両端角部Sa,Saを掴持したまま上動し→該各角部Sa,Saを各受取チャック21,21に受け渡し(符号S1の状態)→各受取チャック21,21が機枠中央部において左右に離間して布類の上辺部を展張させる(符号S2の状態)。そして、この第2使用形態の場合は、各受取チャック21,21で布類S2を吊上げ展張させた状態で動作が一旦中断し、その中断中に布類展張補助用の各作業員M3,M4がそれぞれ吊上げ展張布類S2の左右各側縁部Sa,Saを手で摘まんで揺すり(はためかす)、布類の皺や波打ち部分Seを除去する。そして、ある程度皺や波打ち部分Seを除去した後、再度スタートボタンを押すと、以降の動作が再開されて、展張布類S2の下部側を吸気ボックス31内に吸い込み(符号S3の状態)→布類S3の上辺部分が吸着ボックス41を介して吸着コンベア51の始端部上に移乗され(符号S4の状態)→該布類S4が上方に引き上げられることで順次各拡張ベルト61,61で左右外側に展張されながら吸着コンベア51及び搬出コンベア52上を後送される。
【0058】
この第2使用形態の場合では、布類投入部が2箇所であり且つ布類を吊上げ展張状態(符号S2の状態)で一時停止させる必要があることから処理能力が低下するものの、左右各外側投入装置1B,1Bを上方退避位置に跳ね上げることにより、その各下方スペースから作業員M3,M4が吊上げ展張布類S2の各側縁部Sb,Sbをそれぞれ摘まんで揺する(皺取り操作をする)ことができる。従って、布団包布のような皺や波打ち部分Seが残り易い布類Sであっても、きれいに展張させて後送することができ、品質の良好な布類に加工できる。
【0059】
このように、この実施例の布類展張搬送機では、左右各外側投入装置1B,1Bをそれぞれ上下動装置(エアシリンダ)15B,15Bで下方の使用位置と上方の退避位置との間で変位させるという簡単な構成で、高速処理を重視した上記第1使用形態と高品質処理を重視した上記第2使用形態とに使い分けができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本願実施例の布類展張搬送機の第1使用形態の正面図である。
【図2】図1のII−II矢視図である。
【図3】図1の布類展張搬送機の第2使用形態の正面図である。
【図4】図3のIV−IV矢視図である。
【図5】本願で処理すべき2種類の布団包布における吊上げ展張状態の正面図である。
【符号の説明】
【0061】
1Aは中央投入装置、1Bは外側投入装置、2は左右展張装置、3は吸引装置、4は受渡し装置、5は搬送装置、6は拡張装置、10は機枠、11は投入チャック、12は昇降装置、13は支持枠、14は枢軸、15A,15Bは上下動装置、21は受取チャック、22は左右動装置、61は拡張ベルト、S(S1〜S4)は布類、Saは布類角部、Sbは布類側縁部である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機枠(10)の前部においてシーツや布団包布のような大面積の布類(S)の一辺の両端角部(Sa,Sa)を投入装置の各投入チャック(11,11)でそれぞれ掴持して所定高位置まで吊上げ、その吊上げ布類の各掴持部分(Sa,Sa)を受取チャック(21,21)で受け取って機枠中央部において左右に離間させることにより布類(S)を吊上げ状態で展張させた後、その展張布類(S)を次工程側に搬送させ得るようにした布類展張搬送機であって、
前記投入装置は、機枠中央部付近に位置する少なくとも1つの中央投入装置(1A)と、機枠中央部で展張される展張布類(S)の左右各側縁部(Sb,Sb)のそれぞれ外側近傍に位置する左右2つの外側投入装置(1B,1B)との少なくとも3箇所に設置しているとともに、
前記各外側投入装置(1B,1B)は、それぞれ上下動装置(15B,15B)により前記投入チャック(11,11)が作業員の身長より低くなる下方の使用位置と投入装置全体が作業員の身長より上方に退避する退避位置との間で上下動させ得るようにしている、
ことを特徴とする布類展張搬送機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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