説明

布類展張搬送機

【課題】 展張吊上げ布類を吸着ボックスを介して搬送装置上に移乗させるようにした布類展張搬送機において、従来は、吸着ボックスの後退スピードが一定の高速なので、布団包布の場合のように搬送スピードを遅すると布類の移乗に失敗することがあった。
【解決手段】 シーツや布団包布のような大面積布類Sを展張吊上げ状態で受渡し装置4により搬送装置5で次工程側に搬送させ得るようにした布類展張搬送機において、受渡し装置4は、展張吊上げ布類の上縁部を吸着し得る吸着ボックス41を前後に進退させる進退作動装置40とを有しているとともに、進退作動装置40に吸着ボックス41の後退スピードを調整する速度調整手段7を備えていることにより、搬送装置の搬送スピードに応じて吸着ボックスの後退スピードを調整することができ、それによって種類の異なる展張布類でも確実に搬送装置側に移乗させ得るようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、シーツや布団包布のような大面積の布類を吊上げ状態で展張させ、その展張吊上げ状態の布類を次工程側に搬送させるための布類展張搬送機に関するものである。尚、以下の説明では、展張吊上げ状態の布類を単に展張吊上げ布類ということがある。
【背景技術】
【0002】
ランドリー工場においては、シーツや布団包布のような大面積布類を大量に処理しているが、その処理工程は、図7に示すように、洗濯機91による洗濯と、脱水機92による脱水と、乾燥機93による乾燥と、展張機94による展張と、プレス機(アイロン機)95によるプレスと、折畳み機96による折畳み、とが順次行われる。
【0003】
ところで、シーツのような1枚物の布類では、生地重量が比較的軽く且つ乾燥機93による乾燥度合いも高くなるので、展張機94で処理されるときのシーツ重量は1.5Kg程度と比較的軽量になっている。他方、布団包布のような2枚重ね部分のある布類では、生地重量が比較的重く且つ乾燥機93による乾燥度合いも低くなるので、展張機94で処理されるときの布団包布重量は3.0Kg程度とかなり重くなっている。又、展張機94で処理されるときの布類は半乾き状態であり、処理される布類は最終的にプレス機95のドラム熱で完全乾燥される。そして、プレス機95において、半乾き状態の布類を完全乾燥させる関係で、該プレス機95を通過する布類スピードを、シーツ(短時間で乾燥し易い)の場合は40m/分程度と比較的速くし、布団包布(短時間で乾燥しにくい)の場合は20m/分程度と比較的遅く設定することが多い。尚、展張機94からの布類搬出スピードは、プレス機95を通過する布類スピード(40m/分又は20m/分)と同じに設定される。
【0004】
シーツや布団包布のような大面積の布類を展張させるとともに、その展張布類を次工程側に搬送させ得るようにした布類展張搬送機として、例えば特開平7−54262号公報(特許文献1)に示されるものがある。
【0005】
この公知例の布類展張搬送機は、図8〜図10に示すように、布類Sの一辺の両端角部を左右の吊上チャック110,110で掴持し、所定高位置において各吊上チャック110,110を左右離間方向に移動させることによって、布類Sを展張吊上げ状態で保持し得るようになっている。
【0006】
又、この公知例の布類展張搬送機では、図8に示す展張吊上げ状態の布類Sの上辺両角部を、図9に示すように各吊上チャック110から受渡し装置104の受取チャック140(左右に2つある)で受け取り(符号140′のようにチャックが閉じ、布類が図9のS1の状態になる)、続いて図10に示すように受取チャック140が奥側に後退した後、該受取チャック140が開放して(図10の鎖線図示状態)、布類上縁部を符号Saで示すようにコンベア151の始端部(水平部)上に移乗させる。コンベア151は、多数の小穴をあけた吸着コンベアが使用されており、該吸着コンベア151の始端部寄り下面に設けた吸気ボックス153内を吸気することによって、吸着コンベア151の始端部上面に展張布類の上縁部Saを吸着させ得るようになっている。そして、コンベア151が走行していることによって、布類S4の下部側が順次引上げられていき、該布類がコンベア151によって次工程(プレス工程)側に搬送される。
【0007】
ところで、図8〜図10の公知例の布類展張搬送機では、吊上チャック110,110で吊上げ展張された布類Sの上縁部Saを吸着コンベア151の始端部上に移乗させる際に、布類上辺両角部を受渡し装置104の各受取チャック140で受け取り(掴持し)、該受取チャック140を必要長さだけ後退させた後、該受取チャック140を開放させることで、布類上縁部Saを必要長さだけ吸着コンベア151の始端部上に移乗させるようにしている。従って、重量が重い布類(布団包布では3.0Kg程度ある)でも、布類上縁部Saを吸着コンベア151上に移乗させる際の移乗ミスはほとんど起こらない。
【0008】
ところが、この図8〜図10に示す布類展張搬送機では、布類上縁部を吸着コンベア151上に移乗させるのに、布類上辺両角部を受渡し装置104の各受取チャック140で掴持して後退させるようにしているので、2つの受取チャック140が必要である(コストアップになる)とともに、布類上辺両角部を吊上チャック110から受取チャック140へ受け渡す動作が必要になる(受け渡し動作が複雑になる)。
【0009】
そこで、本件出願人は、展張吊上げ状態の布類を搬送装置の吸着コンベア上に移乗させるための受渡し装置として、図11〜図13に示すように、上記受取チャック140(図9、図10)を用いない方式のものを既に複数件提案している(例えば、特許文献2の特開2006−233374号公報)。
【0010】
図11〜図13に示す布類展張搬送機は、布類の投入装置1と、布類を吊上げ展張させる左右展張装置2と、展張吊上げ状態の布類Sの下部を下方に吸引する(下方にテンションをかける)吸引装置3と、展張吊上げ布類Sを搬送装置5の吸着コンベア51上に移乗させる受渡し装置4とを備えている。尚、図11〜図13に示す布類展張搬送機の基本構成は、本願で使用する布類展張搬送機と同じものであり、詳細な構造については本願の実施例の項で説明する。
【0011】
図11〜図13の布類展張搬送機で使用されている受渡し装置4は、展張吊上げ状態で支持されている布類Sの上縁部Saを受け取る吸着ボックス41と、該吸着ボックス41内を吸気する吸気フアン42と、吸着ボックス41を前後に進退させるエアシリンダ43とを有している。吸着ボックス41の先端部上面(布類受取面)41aには、多数の小孔を形成しており、該吸着ボックス41内を吸気ファン42で吸引することにより、該吸着ボックス41の先端部上面41aに布類上縁部Saを吸着させ得るようになっている。そして、この受渡し装置4は、吸着ボックス41が前位置にある状態で布類受取面に布類上縁部を吸着させた後、該吸着ボックス41を図12に鎖線図示(符号41′)する位置まで後退させる間に、後述のスピード差によって該布類上縁部を搬送装置5の吸着コンベア51の始端部上に移乗させるように作動する(詳細は、後述の図13(A)〜(C)のように作動する)。
【0012】
搬送装置5は、手前側に穴空きベルトからなる吸着コンベア51と、その後端部に連続する搬出コンベア52を有している。吸着コンベア51の始端部は、前位置にある吸着ボックス41の先端部(布類受取面)よりやや後側の直下近傍に位置している。吸着コンベア51の上面走行部の下面には、吸気ボックス53が設置されていて、該吸気ボックス53内を吸気することで、吸着コンベア51の上面に布類上縁部を吸着させ得るようになっている。
【0013】
ところで、図11〜図13の布類展張搬送機では、後工程のプレス機での処理スピードの関係で、処理される布類がシーツの場合は搬送装置5(吸着コンベア51及び搬出コンベア52)の搬送スビードを40m/分程度に設定し、処理される布類が布団包布の場合は搬送装置5(吸着コンベア51及び搬出コンベア52)の搬送スビードを20m/分程度に設定する。他方、受渡し装置4の吸着ボックス41の後退スピード(エアシリンダ43の伸長スピード)は、布類上縁部Saを吸着ボックス41から吸着コンベア51上に移乗させるために、吸着コンベア51の搬送スピードよりかなり高速に設定されている。即ち、この布類展張搬送機では、シーツ及び布団包布の展張・搬送用に共用されるものであり、搬送装置5の搬送スピードがシーツ用の40m/分程度であっても、布類上縁部Saを確実に移乗させ得るように、吸着ボックス41の後退スピード(エアシリンダ43の伸長スピード)を100m/分程度に設定している。尚、このエアシリンダ43の伸長スピードは初速から終速まで一定である。
【0014】
そして、図11〜図13の布類展張搬送機は、次のように機能する。即ち、布類の一辺の両端角部を捜し出して、その両端角部を投入装置1の各投入チャック11,11に掴持させた後(図11、図12の符号S′の状態)、スタートボタンを押すと、各投入チャック11,11が布類両端角部を掴持したまま上動して、布類両端角部を上方で待機している各受取チャック21,21に受け渡し(符号S″の状態)、各受取チャック21,21が左右に離間して布類の上辺部を展張させる(図11の符号Sの状態)。次に、吸引装置3の吸引ボックス31内が吸気されるとともに送込みローラ34が布類送込み方向に回転して、展張吊上げ布類の下半部が吸引ボックス31内に吸引される(図12の符号S1の状態)。尚、吸引ボックス31内は所定タイマー後に吸引停止する。次に、受取チャック21,21が開放して、展張吊上げ布類Sの上縁部Saが吸着ボックス41の先端部上面41a上に所定長さ(約150mm程度)吸着され、続いて受渡し装置4のエアシリンダ43が伸長して吸着ボックス41が布類上縁部を吸着したまま後退する。そして、吸着ボックス41の後退過程において、まず図13(A)に示すように吸着ボックス41の先端部上面41aに吸着されている布類上縁部Saの直下近傍位置が吸着コンベア51の始端部に接触した時点で布類Sに接触抵抗が発生し、その後、吸着コンベア51の搬送スピードと吸着ボックス41の後退スピードとの差によって、図13(B)に示すように吸着ボックス先端部上面41aに吸着されていた布類上縁部Saが取り残されて該吸着ボックス先端部上面41aから剥離され、その剥離された布類上縁部Saが吸気ボックス53内の吸気作用により、図13(C)に示すように直ちに吸着ボックス41の始端部上面に移乗(吸着)される。その後、吸着コンベア51の始端部上に移乗した布類は、吸着コンベア51が走行していることにより、順次引き上げられて後送される。
【0015】
ところで、図14は、図11〜図13の布類展張搬送機における吸着コンベア51の搬送スピードと吸着ボックス41の後退スピード(エアシリンダ43の伸長スピード)に関連して、布類上縁部が吸着ボックス41から剥離する過程を示すグラフである。図14において、横軸は時間であり、縦軸は吸着ボックス41の移動距離を示している。尚、この布類展張搬送機では、吸着ボックス41がL0の前方待機位置からL3のストロークエンドまでの625mmの範囲で移動するようになっている。M1のスピード線は、吸着ボックス41の後退スピード(エアシリンダ43の伸長スピード)を示すもので、該M1のスピードは初速から終速まで一定の100m/分程度に設定されている。N1及びN2の各スピード線は、吸着コンベア51の搬送スピードで、N1のスピードはシーツ用の40m/分であり、N2のスピードは布団包布用の20m/分である。
【0016】
そして、処理すべき布類Sがシーツの場合は、プレス機による乾燥時間が短くてよいので吸着コンベア51の搬送スピードをシーツ用のN1(40m/分)に設定して行われる。この場合には、吸着ボックス41がL0の待機位置から後退を開始し、L1の位置(例えば220mm後退した位置)で布類上縁部Saの直下近傍が吸着コンベア51の始端部に接触し(接触抵抗が発生する)、その後、吸着ボックス41の後退スピードM1と吸着コンベア51の搬送スピードN1との差(100m/分−40m/分=60m/分)によって生じる剥離作用力により布類上縁部Saが吸着ボックス41の上面からずれて外れるが、上記両スピード差(M1−N1)が小さいほど剥離に要する移動距離P1が長くなり、この場合はL2の位置(例えば500mm後退した位置)で外れる。尚、吸着ボックス41から外れた布類上縁部Sは直ちに吸着コンベア51上に吸着される。このように、吸着コンベア51の搬送スピードがN1(40m/分)である場合には、布類上縁部Saが吸着コンベア51上に重合する幅W1は約280mm(L2の500mmの位置からL1の220mmを減じた長さ)になり、シーツのような比較的軽い重量(約1.5Kg)のものでは、該シーツ重量による落下力より吸着コンベア51による吸着力が大きくなって、布類がそのまま吸着コンベア51によって引き上げられる(布類が正常に搬送される)。
【0017】
他方、処理すべき布類Sが布団包布の場合は、プレス機による乾燥時間が長くなるので吸着コンベア51の搬送スピードを布団包布用のN2(20m/分)に設定して行われる。この場合には、吸着ボックス41がL0の待機位置から後退を開始し、L1の位置(例えば220mm後退した位置)で布類上縁部Saの直下近傍が吸着コンベア51の始端部に接触し(接触抵抗が発生する)、その後、吸着ボックス41の後退スピードM1と吸着コンベア51の搬送スピードN2との差(100m/分−20m/分=80m/分)によって布類上縁部Saが吸着ボックス41の上面からずれて外れるが、上記両スピード差(M1−N2)が大きくなるほど剥離に要する移動距離P2が短くなり、この場合はL4の位置(例えば400mm後退した位置)で外れる。尚、吸着ボックス41から外れた布類上縁部Sは直ちに吸着コンベア51上に吸着される。このように、吸着コンベア51の搬送スピードがN2(20m/分)である場合には、布類上縁部Saが吸着コンベア51上に重合する幅W2は約180mm(L2の400mmの位置からL1の220mmを減じた長さ)になり、布団包布のような比較的重い重量(約3.0Kg)のものでは、該布団包布重量による落下力が吸着コンベア51による吸着力より大きくなる場合があって、布類が吸着コンベア51上に引き上げられることなく落下することがある。
【0018】
【特許文献1】特開平7−54262号公報
【特許文献2】特開2006−233374号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
上記のように、図11〜図13の公知例(特許文献2)の布類展張搬送機では、吸着ボックス41の後退スピードM1(エアシリンダ43の伸長スピード)が一定であり且つシーツ用のコンベア搬送スピードN1(40m/分)に合わせて吸着ボックス41の後退スピードM1をかなり速く(100m/分)設定しているので、布団包布用(プレス機で完全乾燥させるのに時間がかかる)のコンベア搬送スピードN2(20m/分)で布類を搬送させようとすると、吸着コンベア51上への移乗に失敗することが時々あった。尚、布類の吸着コンベア51上への移乗に失敗すると、該布類が落下し、その落下した布類を回収する作業及び時間が必要となる。
【0020】
尚、上記図8〜図10の公知例のように、受渡し装置104に布類上縁部(両角部)を掴持するための受取チャック140,140を設けたものでは、吸着コンベア151の搬送スピードに係わりなく布類上縁部を必要長さだけ吸着コンベア151上に重合させることができるが(従って布類が脱落しない)、この公知例のものでは、上記したように2つの受取チャック140が必要であるとともに、布類上辺両角部を吊上チャック110から受取チャック140へ受け渡す動作が必要になる。
【0021】
そこで、本願発明は、シーツと布団包布とに兼用して使用される布類展張搬送機において、上記図11〜図13(特許文献2)のように受渡し装置として単に吸着ボックスを使用したものであっても、シーツと布団包布の両方を正常(確実)に吸着コンベア側に移乗させ得るようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本願発明は、上記課題を解決するための手段として次の構成を有している。尚、本願発明は、シーツや布団包布のような大面積布類をきれいに展張させた状態で次工程(プレス工程)側に搬送させ得るようにした布類展張搬送機を対象にしている。
【0023】
即ち、本願発明の布類展張搬送機は、上記大面積布類の一辺の両端角部をそれぞれ掴持した状態で所定高位置まで吊上げ、その布類の各掴持部分を左右に離間させて布類を吊上げ状態で展張させ、その展張吊上げ布類の上縁部を受渡し装置で搬送装置(コンベア)上に移乗させて、該搬送装置により展張布類を次工程側に搬送させ得るようにしたものである。
【0024】
尚、本願の布類展張搬送機の基本構造は、上記図11〜図13(特許文献2)のものを採用しており、この場合は搬送装置の始端側コンベアとして布類を吸着できる吸着コンベアが使用されている。
【0025】
そして、本願発明では、上記した基本構成の布類展張搬送機において、前記受渡し装置として、展張吊上げ布類の上縁部を吸着し得る吸着ボックスと、該吸着ボックスを前後に進退させる進退作動装置とを有しているとともに、進退作動装置には、吸着ボックスの後退スピードを調整する速度調整手段を備えていることを特徴としている。
【0026】
受渡し装置の進退作動装置としては、吸着ボックスを進退させ得るものであればよく、例えばエアシリンダやモータが使用可能である。
【0027】
上記速度調整手段としては、進退作動装置にエアシリンダを使用したものでは、エア回路中に主切換弁とは別に絞り弁付きの切換弁を設けて、エア量を調整するようにしたものを採用でき、該進退作動装置にモータを使用したものでは、該モータに回転数可変型のものを採用することができる。又、この速度調整手段は、進退作動装置の後退スピードを少なくとも2段階に調整できるものであればよいが、該後退スピードを3段階以上の複数段階に調整し得るようにしてもよい。
【0028】
本願において進退作動装置の後退スピードを調整し得るようにした理由は、次に示す背景によるものである。
【0029】
即ち、本願の布類展張搬送機は、1枚物のシーツと2枚重ね部分のある布団包布とに兼用して使用されるものである。この布類展張搬送機では、乾燥機である程度乾燥させた布類を処理するが、該布類は半乾きの状態であり、該半乾きの布類を本機で展張させた後、後続のプレス機で完全乾燥させるようになっている。又、プレス機では、布類を完全乾燥させる必要から、1枚物のシーツでは通過時間が比較的短くてよいが2枚重ね部分のある布団包布では通過時間を長くとっている。そして、布類展張搬送機とプレス機とは連動している関係で、布類の種類(シーツか布団包布か)によって布類展張搬送機の搬送スピードを変化させて運転している。具体的には、シーツの場合は搬送スピードを40m/分程度に設定し、布団包布の場合は搬送スピードを20m/分程度に設定して運転される。尚、この布類展張搬送機で処理される布類は、シーツの場合で重量が1.5Kg程度であり、布団包布の場合で重量が3.0Kg程度である。
【0030】
又、本願では、本機の前面部で吊上げ展張させた布類を搬送装置(吸着コンベア)上に移乗させるための受渡し装置として、該布類の上縁部を吸着させる吸着ボックスを使用しており、該吸着ボックス上面に布類上縁部を吸着した状態で、該吸着ボックスを高速後退させることで、該吸着ボックスの後退スピードと搬送装置(吸着コンベア)の搬送スピードとの差により布類上縁部を吸着ボックスから搬送装置(吸着コンベア)の始端部上に移乗させ得るようになっている。尚、このように吸着ボックスの後退スピードと搬送装置(吸着コンベア)の搬送スピードとの差により布類上縁部を移乗させるようにしたものでは、吸着ボックスの後退スピードを搬送装置の搬送スピードよりかなり速くする必要があるが、従来では、シーツ用の搬送スピード(40m/分程度)に対応して該吸着ボックスの後退スピードを100m/分程度の定速に設定している。ところが、このように吸着ボックスの後退スピードを100m/分程度の定速に設定したものでは、搬送装置の搬送スピードを布団包布用の20m/分程度で運転する場合に、上記図14で説明したように布類(布団包布)の移乗に失敗する(布類が落下する)ことがある。
【0031】
そこで、本願では、速度調整手段により進退作動装置の後退スピードを、シーツ用の搬送スピード(40m/分程度)と布団包布用の搬送スピード(20m/分程度)にそれぞれ適応したスピードに調整して運転し得るようにしている。即ち、搬送装置(吸着コンベア)がシーツ用の搬送スピード(40m/分程度)で運転される場合には、吸着ボックスの後退スピードを例えば100m/分程度に設定して運転し、搬送装置(吸着コンベア)が布団包布用の搬送スピード(20m/分程度)で運転される場合には、吸着ボックスの後退スピードを例えば50m/分程度に設定して運転する。
【0032】
このように、搬送装置の搬送スピードに対応して吸着ボックスの後退スピードを調整して運転すると、後述する実施例(図3)の説明のように、いずれの場合も布類上縁部を吸着コンベア上に確実に移乗させることができる(布類の移乗が失敗しない)。
【発明の効果】
【0033】
本願発明の布類展張搬送機は、上記のように受渡し装置の吸着ボックスの後退スピードを速度調整手段により調整し得るようにしているので、搬送装置(吸着コンベア)の搬送スピードがシーツ用(40m/分程度)の速い場合でも布団包布用(20m/分程度)の遅い場合でも、吸着ボックスの後退スピードをそれぞれに適したスピードに設定して運転できる。
【0034】
従って、本願の布類展張搬送機では、処理すべき布類の種類(シーツか布団包布かで搬送スピードが変化する)に応じて吸着ボックスの後退スピードを適正に調整することで、種類の異なる布類(シーツか布団包布か)の兼用機であってもそれぞれの布類を確実に搬送装置(吸着コンベア)側に移乗させることができる(布類が落下しない)という効果がある。
【実施例】
【0035】
図1〜図4には本願第1実施例の布類展張搬送機を示しており、図5及び図6には本願第2実施例の布類展張搬送機を示している。尚、図1〜図4の第1実施例では、布類展張搬送機として図11及び図12に示すものを採用しており、この第1実施例では、図11及び図12を併用して説明する。
【0036】
第1実施例の布類展張搬送機は、図11及び図12に示すように、投入装置1と、左右展張装置2と、吸引装置3と、受渡し装置4と、搬送装置5と、布類背面拡張装置6とを有している。尚、本願の各実施例では、処理すべき布類Sとして、中央部に丸ぐり部を有した布団包布を採用している。
【0037】
投入装置1は、展張すべき布類Sの一辺の両端角部を掴持する一対の投入チャック11,11を有し、該各投入チャック11,11を昇降装置12(図12)で上下動させ得るようにしたものである。尚、昇降装置12にはロッドレスシリンダが使用されている。
【0038】
各投入チャック11,11は、人の肩幅程度の間隔で左右に並置されている。そして、この各投入チャック11,11は、昇降装置12により投入作業高さとなる低位置(図11及び図12の高さ)と布類全体を吊下げ得る高位置(布類の掴持部分を後述の受取チャック21に受け渡し得る高さ)との間で上下動せしめられる。そして、低位置において、布類の一辺の両端角部を各投入チャック11,11で掴持させた後(布類が図11の符号S′の状態となる)、昇降装置12で受け渡し高さまで上昇せしめられる。
【0039】
尚、この実施例では、投入装置1は左右に2基設けており、何れの投入装置1,1からでも布類を投入することができるようになっている。又、各投入装置1,1は、待機状態では、図11に示すように機体の幅中心から左右に振り分けた各位置に位置しているが、布類掴持後に上動する際には、機体の幅中心位置に移動するようになっている。
【0040】
左右展張装置2は、所定高位置において投入装置1の各投入チャック11,11から布類の両端角部をそれぞれ受け取る一対の受取チャック21,21を有し、該各受取チャック21,21をそれぞれ左右動装置(可逆回転可能なサーボモータを使用)22,22で左右方向に移動させ得るようにしたものである。各受取チャック21,21は、図11に示すように待機状態では機体の幅中央部において投入装置1の各投入チャック11,11の間隔と同間隔で待機しており、布類の両端角部を受け取った後(図11のS″の状態)、左右動装置22,22により布類の上辺部が緊張するまで左右外方に移動せしめられる(布類Sが図11の展張吊上げ状態となる)。
【0041】
吸引装置3(図12)は、受取チャック21,21が左右移動する部分の下方位置に吸気ボックス31を設けるとともに、該吸気ボックス31内の空気を吸気ファン33で吸引し得るものが採用されている。吸気ボックス31と吸気ファン33とを連続させる吸気通路32中には、切換ダンパー36が設けられており、該切換ダンパー36が図12に鎖線図示する符号36′の側に位置するときに、吸気ボックス31内が吸気ファン33によって吸引されるようになっている。又、吸気ボックス31の前壁上端部には、左右2本の送込みローラ34,34が設けられている。この各送込みローラ34,34は、それぞれモータ35,35によって所定タイミングで送込み方向に回転せしめられる。
【0042】
そして、この吸引装置3は、布類Sが展張吊上げ状態において、送込みローラ34を送込み方向に回転させるとともに、吸気ボックス31内を吸引することにより、展張吊上げ状態の布類Sの下部側を送込みローラ34を乗り越えて吸気ボックス31内に吸引し、そのとき布類の下部側にテンション作用が働いて、展張吊上げ状態の布類Sを下方に展張させる機能が発生する。
【0043】
受渡し装置4は、各受取チャック21,21により展張吊上げ状態で支持されている布類Sの上縁部を受け取る吸着ボックス41と、該吸着ボックス41内を吸気する吸気フアン42と、吸着ボックス41を前後に進退させる左右一対のエアシリンダ43,43とを有している。尚、この第1実施例では、各エアシリンダ43,43が特許請求範囲中の進退作動装置40となるものである。
【0044】
吸着ボックス41の先端部上面(布類受取面)41aには、多数の小孔を形成しており、該吸着ボックス41内を吸気ファン42で吸引することにより、布類受取面41aに布類上縁部Saを吸着(保持)させ得るようになっている。この受渡し装置4は、各エアシリンダ43,43が縮小状態では吸着ボックス41が手前側に位置し、各エアシリンダ43,43が伸長すると吸着ボックス41を図12に鎖線図示(符号41′)する位置まで後退させるようになっている。
【0045】
そして、この受渡し装置4は、吸着ボックス41が手前側位置にある状態で布類受取面41aに布類上縁部Saを吸着させた後、該吸着ボックス41を図12に鎖線図示(符号41′)する位置まで後退させる間に、該布類上縁部Saを搬送装置5(吸着コンベア51)の始端部上に移乗させるように作動する。
【0046】
搬送装置5は、手前側に多数の小孔を設けた吸着コンベア51と、その後端部に連続する搬出コンベア52有している。吸着コンベア51の始端部は、前位置にある吸着ボックス41の先端部よりやや後側の直下近傍に位置している。吸着コンベア51の上面走行部の下面には、吸気ボックス53が設置されていて、該吸気ボックス53内を吸気することで、吸着コンベア51の上面に布類上縁部Saを吸着させ得るようになっている。
【0047】
吸着コンベア51側の吸気ボックス53内は、上記吸引装置3の吸気ファン33を共用して、吸引装置3の吸気ボックス31とは択一的に吸気される。即ち、図12において、切換ダンパー36が実線図示にあるときには、吸引装置3側の吸気ボックス31内の吸気が停止する一方、吸着コンベア51側の吸気ボックス53内がダクト54を通して吸気され、切換ダンパーが鎖線図示する符号36′側に切換わると、逆に吸着コンベア51側の吸気ボックス53内の吸気が停止する一方、吸引装置3側の吸気ボックス31内が吸気されるようになっている。
【0048】
搬出コンベア52は、吸着コンベア51から展張布類Sを受け取って、該展張布類Sを次工程側(プレス機)の受入コンベアに受け渡すものである。
【0049】
布類背面拡張装置6は、展張吊上げ布類Sの背面を左右に展張させるもので、左右一対ある。この各布類背面拡張装置6,6はそれぞれ拡張ベルト61,61を有している。この各拡張ベルト61,61は、吸着コンベア51の始端部より僅かに前側の直下近傍位置において、機体の幅中央部から左右に振り分けた各位置に設置されている。又、該各拡張ベルト61,61は、前面がほぼ鉛直面になる左右横長姿勢で設置されており、前面がそれぞれ左右外方向に走行するようにそれぞれモータ62,62で駆動される。
【0050】
各背面側拡張ベルト61,61は、多数の小孔を設けた通気性のあるベルトを使用している。そして、各背面側拡張ベルト61,61の前面走行部の裏側には、それぞれ吸気ボックス63が配置されており、該吸気ボックス63内を吸引することにより、背面側拡張ベルト61の前面に布類の背面を吸着させ得るようにしている。各吸気ボックス63内は、それぞれダクト64を介して吸気フアン65の吸気口にそれぞれ接続されており、該吸気フアン65の吸気により該各吸気ボックス63内を吸引し、それによって各背面側拡張ベルト61,61の前面走行部の各小孔から周囲の空気を吸引し得るようになっている。
【0051】
そして、この各布類背面拡張装置6,6は、展張布類が奥側に引き込まれていく際に、その布類背面が各背面側拡張ベルト61,61に接触し、該布類背面が該各背面側拡張ベルト61,61で左右各外側に拡張される。
【0052】
この第1実施例では、吸着ボックス41の進退作動装置40として一対のエアシリンダ43,43を使用しており、該各エアシリンダ43,43は図1及び図2に示すエア回路8で接続されている。このエア回路8は、主切換弁(電磁弁)82をコントローラ9からの信号で切換えることによってエアタンク81内の圧縮空気を伸長側エア管83又は縮小側エア管84に供給し得るようになっている。即ち、主切換弁82がOFFの状態では、図1に示すようにエアタンク81と縮小側エア管84とが接続し(エアシリンダ43,43が縮小する)、主切換弁82がONになると図2に示すようにエアタンク81と伸長側エア管83とが接続する(エアシリンダ43,43が伸長する)。尚、図1及び図2の配置例では、エアシリンダ43,43が伸長すると吸着ボックス41が奥側に後退し、該エアシリンダ43,43が縮小すると吸着ボックス41が手前側に前進するようになっている。
【0053】
この第1実施例では、エア回路8中に吸着ボックス41の後退スピード(エアシリンダ43,43の伸長スピード)を調整するための速度調整手段7を組み込んでいる。この第1実施例の速度調整手段7は、図1及び図2に示すように、エア回路8の縮小側エア管84に絞り弁72を組付けた切換弁(電磁弁)71A〜71Dを組み込んで構成している。尚、以下の説明では、この絞り弁72を組付けた切換弁(71A〜71D)を絞り弁付き切換弁という。
【0054】
この絞り弁付き切換弁(71A〜71D)は、1個だけでもよいが、個数を多くするほど多段階のスピード調整が行える。尚、図示例では第1〜第4からなる合計4個の絞り弁付き切換弁71A〜71Dを並列状態で使用している。この第1〜第4の絞り弁付き切換弁71A〜71Dは、コントローラ9からの信号でON・OFF操作される。又、第1の絞り弁付き切換弁71Aは、その切換によって縮小側エア管84を主切換弁82に対して連通させたり(図1)遮断させたり(図2)する機能を有している。
【0055】
各絞り弁付き切換弁71A〜71Dは、OFF状態(図1の状態)ではそれぞ絞り弁72,72・・が縮小側エア管84とは非連通となる一方、該絞り弁付き切換弁がONになる(例えば図2の第1及び第2の各絞り弁付き切換弁71A,71B)と、当該切換弁の絞り弁72が縮小側エア管84と連通するようになる。
【0056】
この第1実施例の布類展張搬送機では、図1に示すように4個の絞り弁付き切換弁71A〜71Dを全てOFFにした状態で主切換弁82もOFF状態のときには、エアタンク81が縮小側エア管84に接続して各エアシリンダ43,43が縮小している(吸着ボックス41が手前側の前進位置にある)。そして、この状態(図1の状態)から主切換弁82をONに切換えると、エアタンク81が伸長側エア管83に接続して各エアシリンダ43,43が伸長して吸着ボックス41を後退移動させるが、このとき各絞り弁付き切換弁71A〜71Dが全てOFF状態であると、縮小側エア管84が第1絞り弁付き切換弁71A及び主切換弁82を介して大気に開放していて(縮小側エア管84側のエア逃がし量が多い)、各エアシリンダ43,43の伸長スピードが高速になる(この実施例のものでは100m/分程度の高速になる)。他方、各エアシリンダ43,43の伸長スピード(吸着ボックス41の後退スピード)を遅くするには、主切換弁82と第1の絞り弁付き切換弁71Aとを連動して切換操作する。尚、第2〜第4の各絞り弁付き切換弁71B〜71Dは、各エアシリンダ43,43の伸長スピードを複数段階に調整するもので、第1絞り弁付き切換弁71Aに加えてONする個数を多くするほど、縮小側エア管84側のエア排出量が多くなってエアシリンダ43,43の伸長スピードが速くなる。
【0057】
そして、図2の使用例では、主切換弁82と第1絞り弁付き切換弁71Aとを連動させるとともに、残りの絞り弁付き切換弁のうち第2絞り弁付き切換弁71BのみをONにした状態で運転するようにしている。即ち、図2の運転状態は、第2絞り弁付き切換弁71BをONにした状態で、エアシリンダ43,43の縮小状態から主切換弁82と第1絞り弁付き切換弁71Aを0N(連動)させたものであるが、この場合、エアタンク81からのエアが主切換弁82を介して伸長側エア管83に供給される(各エアシリンダ43,43が伸長する)一方、縮小側エア管84側のエアは第1及び第2の2つの絞り弁付き切換弁71A,71Bの各絞り弁72,72を介して排出される。従って、縮小側エア管84側のエアは2つの絞り弁72,72を通って排出されるので、各エアシリンダ43,43の伸長スピードは遅くなる。尚、図2の使用例では、エアシリンダ43,43の伸長スピードが50m/分程度になる。
【0058】
本願第1実施例(図11及び図12)の布類展張搬送機の基本動作は、次の通りである。即ち、作業位置において布類の一辺の両端角部を捜し出し、図11に示すようにその両端角部を投入装置1の各投入チャック11,11にそれぞれ掴持させる(図11、図12の符号S′の状態)。次に各投入チャック11,11が布類両端角部掴持したまま所定高さまで上動して、布類両端角部を上方で待機している各受取チャック21,21に受け渡し(図11、図12の符号S″の状態)、続いて各受取チャック21,21が左右離間方向に移動して布類を吊上げ状態で左右に展張させる。
【0059】
次に、展張吊上げ布類が図12の符号S″の状態から、吸引装置3により布類の下端側が吸気ボックス31内に吸い込まれる(符号S1の状態になる)。その後、切換ダンパー36が鎖線図示側から実線図示側に切換えられ(吸着コンベア51の吸気ボックス53内が吸気される)、各受取チャック21,21が開放されて、布類の上縁部Saが吸着ボックス41の先端側上面41aに吸着・保持される。続いて、吸着ボックス41が図12の実線図示位置から鎖線図示位置(符号41′)まで後退するが、その間に図13(A)〜(C)のように布類上縁部Saが吸着コンベア51上に移乗される。そして、該展張布類が吸着コンベア51によって奥側に引き込まれていくが、このとき展張布類Sの背面が各背面側拡張ベルト61,61の前面に接触して、該展張布類Sの背面が順次左右に拡張される。以降、展張布類Sは、吸着コンベア51から搬出コンベア52(図12)を経てプレス機側に供給される。
【0060】
ところで、図3に示すように(上記課題の項でも説明した)、処理すべき布類Sが1枚物のシーツでは、後続の乾燥機の乾燥能力に応じて搬送装置5(吸着コンベア51)の搬送スピードをN1の40m/分程度に設定して運転するが、このとき吸着ボックス41の後退スピード(エアシリンダ43の伸長スピード)はM1の100m/分程度で行う。他方、処理すべき布類Sが2枚重ね部分を有する布団包布では、後続の乾燥機の乾燥能力に応じて搬送装置5(吸着コンベア51)の搬送スピードをN2の20m/分程度に設定して運転するが、この場合(20m/分)は吸着ボックス41の後退スピードがM1(100m/分)のままでは、図14で説明したように展張布類上縁部の吸着コンベア51上への重合幅(W2)が短くなって、展張布類がうまく吸着コンベア51側に移乗できない(脱落する)ことがあった。
【0061】
そこで、この第1実施例では、布団包布を処理する場合(吸着コンベア51の搬送スピードを20m/分程度で運転する場合)には、速度調整手段7を操作してエアシリンダ43,43の伸長スピード(吸着ボックス41の後退スピード)を遅くする。即ち、図2に示すように、コントローラ9からの指令で、第1絞り弁付き切換弁71AのON・OFFを主切換弁82のON・OFFと連動させるようにする(図2の使用例では第2絞り弁付き切換弁71BもONさせている)。すると、図2に示すように、主切換弁82をエアシリンダ伸長側に切換たときに、第1絞り弁付き切換弁71A(第2絞り弁付き切換弁71BはONのまま)が連動してONになり、エアシリンダ43,43の伸長動作にともにって排出エアが縮小側エア管84から第1絞り弁付き切換弁71A及び第2絞り弁付き切換弁71Bを介して各絞り弁72,72を通って放出される。従って、各絞り弁72,72の機能により(エア排出スピードが遅くなることで)、各エアシリンダ43,43の伸長スピードが遅くなる(例えば図3のM2の50m/分程度になる)。
【0062】
このように、吸着コンベア51の搬送スピードを遅くした状態(例えばN2の20m/分程度)で、エアシリンダ43,43の伸長スピード(吸着ボックス41の後退スピード)を遅くする(例えばM2の50m/分程度)と、両スピードの差(M2−N2=30m/分)が小さくなり、吸着ボックス41の先端部上面41aに吸着されている布類上縁部Saの剥離に要する移動距離P3(図3)が長くなる。具体的には、吸着ボックス41の後退が開始した後、図4(A)のように吸着ボックス41に吸着されている布類上縁部Saの直下近傍が吸着コンベア51の始端部に接触した時点(図3のL1の位置に相当する)から、図4(B)に示す布類上縁部Saの先端が吸着ボックス41の先端部から外れる位置(図3のL2の位置に相当する)までの吸着ボックス41の移動距離が長くなって、布類上縁部Saの先端が吸着ボックス先端部から外れた時点での吸着コンベア51上に吸着される布類上縁部Saの重合幅が図3及び図4(C)のW3(図3のL2(500mm)−L1(220mm)=280mm)のように長くなる。従って、処理すべき布類が布団包布のように比較的重い(例えば3.0Kg程度)ものであっても、吸着コンベア51上での布類上縁部Saの重合幅W3が長いと、その布類上縁部Saが吸着コンベア51上からずり落ちにくくなる(展張布類Sを確実に後送させることができる)。
【0063】
尚、この第1実施例では、速度調整手段7として4つの絞り弁付き切換弁71A〜71Dを用いており、機能させる絞り弁付き切換弁の個数を調整することで、吸着コンベア51の搬送スピードに応じてエアシリンダ43,43の伸長スピード(吸着ボックス41の後退スピード)を複数段階に調整できる。
【0064】
図5及び図6の第2実施例の布類展張搬送機は、受渡し装置4の進退作動装置40以外は第1実施例のもの(図11及び図12)と同じであり、この第2実施例の布類展張搬送機の基本動作は第1実施例の説明を援用する。
【0065】
この図5及び図6の第2実施例では、受渡し装置4の進退作動装置40として、回転速度可変型のモータ45を使用している。即ち、この第2実施例の進退作動装置40は、受吸着ボックス41の左右両端部位置の上面部にそれぞれ前後のプーリ47,47に巻掛けした左右2条のベルト(タイミングベルト)46,46を設置し、該各ベルト46,46の下面走行部に吸着ボックス41の左右両端部の上面を連結し、該両ベルト46,46をモータ45で前後に可逆走行させ得るようにしている。
【0066】
モータ45は、回転数調整手段73(速度調整手段7となる)で多段階に回転数(スピード)を調整できるようになっている。この回転数調整手段73は、図6に示すようにコントローラ9からの信号で操作される。尚、この回転数調整手段73は、理解し易くするためにモータ45に外付け状態で記載しているが、実際にはモータ45内に内蔵されている。
【0067】
そして、この第2実施例では、吸着コンベア51の搬送スピードに応じてモータ45の回転数を適正に調整することにより、上記第1実施例と同様に吸着ボックス41の後退スピードを調整できるようになっている。尚、このモータ45には、サーボモータを使用して、吸着ボックス後退動作時のスピードを、初速が遅く終速が速くなるように作動させてもよい。
【0068】
この第2実施例(図5、図6)の場合も、図3に示すように、シーツを処理する場合(吸着コンベア51の搬送スピードが40m/分程度)にはモータ45の回転数を吸着ボックス41が100m/分程度で後退するように設定し、布団包布を処理する場合(吸着コンベア51の搬送スピードが20m/分程度)にはモータ45の回転数を吸着ボックス41が50m/分程度で後退するように設定して、それぞれ運転することができる。尚、そのときの各作用は、上記第1実施例の場合と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本願第1実施例の布類展張搬送機(図11及び図12)における進退作動装置部分の構成説明図である。
【図2】図1の進退作動装置(速度調整手段)の作動変化図である。
【図3】本願第1実施例の布類展張搬送機における進退作動装置の機能説明用グラフである。
【図4】本願第1実施例の布類展張搬送機における進退作動装置の作動変化図である。
【図5】本願第2実施例の布類展張搬送機の中央縦断面相当図である。
【図6】図5の一部平面図である。
【図7】ランドリー工場における大面積布類の処理工程図である。
【図8】公知例(特許文献1)の布類展張搬送機の正面図である。
【図9】図8の布類展張搬送機の作動説明図である。
【図10】図9からの状態変化図である。
【図11】本願第1実施例及び特許文献2の布類展張搬送機の基本構成を示す正面図である。
【図12】図11のXII−XII矢視図である。
【図13】図11の布類展張搬送機における進退作動装置の作動変化図である。
【図14】引用文献2の布類展張搬送機における進退作動装置の機能説明用グラフである。
【符号の説明】
【0070】
1は投入装置、2は左右展張装置、4は受渡し装置、5は搬送装置、7は速度調整手段、8はエア回路、9はコントローラ、40は進退作動装置、41は吸着ボックス、41aは吸着ボックスの先端部上面、43はエアシリンダ、45はモータ、51は吸着コンベア、71A〜71Dは切換弁、72は絞り弁、82は主切換弁、Sは布類である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シーツや布団包布のような大面積の布類(S)の一辺の両端角部をそれぞれ掴持した状態で所定高位置まで吊上げ、その布類の各掴持部分を左右に離間させて布類(S)を吊上げ状態で展張させ、その展張吊上げ布類(S)の上縁部(Sa)を受渡し装置(4)で搬送装置(5)上に移乗させて、該搬送装置(5)により展張布類を次工程側に搬送させ得るようにした布類展張搬送機であって、
前記受渡し装置(4)は、展張吊上げ布類(S)の上縁部(Sa)を吸着し得る吸着ボックス(41)と、該吸着ボックス(41)を前後に進退させる進退作動装置(40)とを有しているとともに、
前記進退作動装置(40)には、前記吸着ボックス(41)の後退スピードを調整する速度調整手段(7)を備えている、
ことを特徴とする布類展張搬送機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−19285(P2009−19285A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−180756(P2007−180756)
【出願日】平成19年7月10日(2007.7.10)
【出願人】(502407130)株式会社プレックス (75)
【Fターム(参考)】