説明

布類展張搬送機

【課題】 公知の布類展張搬送機では、額縁包布のような2枚重ね部分を有する布類で、サイズの異なるものが混在している場合は、表裏各面をきれいに展張できなかった。
【解決手段】 2枚重ね部分を有する大面積の布類の一辺の両端角部を各チャック21で掴持し、該両チャック21を左右動装置22で左右に離間させて布類を展張させるようにした布類展張搬送機において、展張吊上げ布類の背面側に左右一対の拡張ベルト61を設ける一方、各背面側拡張ベルト61に対面する位置に左右一対の前面押付装置7を配置し、左右動装置22のサーボモータ23の駆動量データをコントローラ8に入力し、該コントローラ8により前面押付装置7の左右進退装置72に対して接触部材71をサーボモータ駆動量データに対応する移動量だけ移動させるような制御を行わせることにより、接触部材71を布類サイズに拘わらず自動で且つ常に適正位置に対面させ得るようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、布団包布のような2枚重ね部分を有する大面積の布類を吊上げ状態で展張させ、その展張吊上げ状態の布類を次工程側に搬送させるための布類展張搬送機に関するものである。尚、以下の説明では、展張吊上げ状態の布類を単に展張吊上げ布類ということがある。又、以下の説明では、本願の布類展張搬送機で処理すべき布類(布団包布)が主として中央部に丸ぐり部を有したものである関係で、該布類を額縁包布ということがある。
【背景技術】
【0002】
ランドリー工場においては、シーツや布団包布のような大面積布類を洗濯・乾燥後にプレス機でプレスしたり、折畳み機で折畳む作業が行われるが、その次工程装置(以下、プレス機で説明する)に布類を供給する際には、予め布類をきれいに展張させておく必要がある。
【0003】
ところで、シーツや布団包布のような大面積の布類を展張させるとともに、その展張布類を次工程側に搬送させ得るようにした布類展張搬送機として、例えば特開平7−54262号公報(特許文献1)に示されるものがある。この公知例の布類展張搬送機は、図12〜図15に示すように、布類Sの一辺の両端角部Sa,Saを左右の吊上チャック110,110で掴持し、所定高位置において各吊上チャック110,110を左右離間方向に移動させることによって、布類Sを展張吊上げ状態で保持し得るようになっている。尚、図12の公知例では、展張すべき布類Sとして、中央部に丸ぐり部Tを有する額縁包布が採用されている。
【0004】
又、この公知例の布類展張搬送機では、図12に示す展張吊上げ状態の布類Sを、図13に示すように各吊上チャック110から受渡し装置104の受取チャック140(符号140′のようにチャックが閉じる)で受け取り(布類が図13のS1の状態になる)、続いて図14に示すように受取チャック140が後退する。この状態では、布類S2の上下中間部付近が送込みローラ134に接触する。そして、吸気ボックス131内が吸気されるとともに、送込みローラ134が布類送込み方向に回転して、布類S2の下半部を符号S3で示す状態を経て符号S4で示すように吸気ボックス131内に吸引する(所定タイマー後、吸気ボックス131内の吸気は停止する)。その後、コンベア(吸着コンベア)151が走行するとともに受取チャック140が開放し、布類上縁部が符号S4bで示すようにコンベア151の始端部(水平部)上に移乗する。そして、コンベア151が走行することによって、布類S4の下部側が順次引上げられていき、該布類がコンベア151によって次工程(プレス工程)側に搬送される。
【0005】
ところで、布類が展張吊上げ状態で、図14のように布類S4の下部側が吸気ボックス131内に吸引される(布類の下部側にテンションがかかる)と、布類S4はかなりの展張状態になるものの、布類Yに小皺や波打ち部分(図12の符号Y)が残ることがある。そこで、この公知例の布類展張搬送機では、コンベア151の始端部の直下近傍で展張吊上げ布類S4の背面側に左右一対の布類背面拡張装置106,106を設けている。この各布類背面拡張装置106,106は、図12に示すように左右にそれぞれ横向き姿勢で拡張ベルト161,161を有している。この各拡張ベルト161,161は、それぞれ前面側が左右外向きに走行するようになっている。又、各拡張ベルト161,161は、多数の小孔をあけた通気性のあるものを使用しており、該各拡張ベルト161,161の背面側に設けた吸気ボックス163内を吸気することにより、各拡張ベルト161,161の前面に布類の背面を吸引させ得る機能を有している。
【0006】
そして、この各布類背面拡張装置106,106は、吸気ボックス163内が吸気されるとともに各拡張ベルト161,161の前面がそれぞれ左右外向きに走行し、そのとき布類S4の背面が各拡張ベルト161,161の前面に接触しながら引き上げられていき、該布類を順次左右各外方に拡張させるように機能する。
【0007】
ところで、展張すべき布類が中央部に丸ぐり部Tを有する布類(額縁包布)Sでは、生地に表裏2枚重ね部分がある。そして、このように表裏2枚重ね生地を有する布類Sを上記公知例(図12〜図14)の布類展張搬送機で展張させる場合、展張吊上げ布類Sの背面側は各布類背面拡張装置106,106により左右に拡張させることができるものの、該展張吊上げ布類(額縁包布)Sの前面側を拡張させる(皺延ばしする)機能はほとんどない。従って、丸ぐり部Tの外側の布類前面に小皺や波打ち部分(図12の符号Y)が残り易くなる。
【0008】
又、表裏2枚重ね生地を有する布類(額縁包布)Sでは、2枚重ね部分の生地間(特に丸ぐり部Tの下部側)に空気が残って膨れたままになったり、図15に鎖線図示するように丸ぐり部Tの下端縁Taが重みで下方に垂れる(符号Ta′)ことがあり、2枚重ね生地部分の膨らみや垂れ下がり部分(符号Ta′)に波打ち部分ができ易くなる。尚、図15に鎖線図示する丸ぐり部下端縁Taの下方への垂れ下がり(符号Ta′)は、展張吊上げ布類Sの下部が吸気ボックス131内に吸引されることでも起こる。
【0009】
このように、図12〜図15に示す公知例の布類展張搬送機では、丸ぐり部Tを有する布類(額縁包布)Sを展張させるのに、布類背面は布類背面拡張装置106,106により比較的きれいに展張させ得るものの、2枚重ね部分の前面側に小皺や波打ち部(図12の符号Y)又は膨らみや垂れ下がり部(図15の符号Ta′)等の弛みが残り易くなる。そして、布類前面に弛みが残ったままで展張布類が後送されてプレス機でプレスされると、該弛み部分を折返し状態で押し潰して明確な折り皺が発生するという問題がある。このように折り皺の付いた布類では、見栄えが悪くなるとともに、顧客からの苦情が出ることになる。
【0010】
尚、展張吊上げ布類Sが送り込まれていく途中で、図15に示す丸ぐり部下端縁Taの垂れ下がり部分Ta′が拡張ベルト161,161部分を通過するが、その際にも布類前面の垂れ下がり部分Ta′には拡張ベルト161による拡張機能は働かない。
【0011】
そこで、本件出願人は、額縁包布を前面側もきれいに展張させるために、特願2006−306141号の布類展張搬送機を提案している。この特願2006−306141号の布類展張搬送機は、図16及び図17に示すものであるが、以下これを先願例という。
【0012】
図16及び図17に示す先願例の布類展張搬送機には、展張吊上げ布類Sの背面側を左右外側に拡張させる左右一対の布類背面拡張装置206,206のほかに、該布類背面拡張装置206と協同して布類前面を左右に拡張させるための左右一対の前面押付装置207,207を有している。
【0013】
この各前面押付装置207,207は、各背面拡張装置206,206の各拡張ベルト261,261の前面にある展張吊上げ布類Sの左右外側部寄り前面Sc,Scに摺接して該左右外側部寄り前面をそれぞれ強制的に左右外側に拡張させ得る強制拡張部材271と、該強制拡張部材271を正面視において展張吊上げ布類の左右外側部寄り前面Scに対面する対面位置と展張吊上げ布類の左右外端部Sd,Sdより外側の退避位置との間で左右に移動させる左右進退装置272と、強制拡張部材271を拡張ベルト前面にある展張吊上げ布類の前面Scから離間する離間位置と該展張吊上げ布類の前面Scに接触する接触位置との間で前後に移動させる接離移動装置273とを備えている。
【0014】
左右の各強制拡張部材271には、それぞれ左右外側に走行するようにした拡張ベルト275をモータ276で駆動するようにしたものが使用されている。左右進退装置272には、左右に伸縮する伸縮シリンダ(図17)が使用されている。接離移動装置273には、前後に伸縮する伸縮シリンダが使用されている。
【0015】
図16及び図17に示す先願例の布類展張搬送機では、上記各前面押付装置207,207が次のように機能する。尚、布類の供給前は、左右の各強制拡張部材271,271がそれぞれ外側の退避位置で且つ各拡張ベルト161,161に対して手前側の離間位置にある。
【0016】
そして、この先願例の布類展張搬送機でも、作業位置において布類(中央部に丸ぐり部Tを有する額縁包布S)の一辺の両端角部を捜し出し→丸ぐり部が前面(手前側)に位置する状態で該両端角部をそれぞれ投入チャックに掴持させ(図16の符号S′の状態)→該各投入チャックが布類両端角部Sa,Saを掴持したまま所定高さまで上動し→布類両端角部Sa,Saを上方で待機している各受取チャック221,221に受け渡し(符号S″の状態)→各受取チャック221,221が左右離間方向に移動して布類を吊上げ状態で左右に展張させる(符号Sの状態)。
【0017】
続いて、その展張吊上げ布類Sの上縁部を搬送コンベア251(図17)上に移乗させるが、このとき展張吊上げ布類が展張状態のままで後方(奥側)に移動して布類背面が左右の各拡張ベルト261,261の前面に接触し→その直後に左右の各強制拡張部材271,271がそれぞれ外側の退避位置から内側の対面位置に移動され→各接離移動装置273,273により各強制拡張部材271,271をそれぞれ展張吊上げ布類の左右各外側部寄り前面Sc,Scに接触させ→各強制拡張部材271,271がモータ276,276により布類の左右各外側部寄り前面Sc,Scをそれぞれ外側に拡張させる方向に駆動され→この状態で展張吊上げ布類の上縁部が搬送コンベア251によって引き取られていく(布類が展張状態のまま引き上げられる)。
【0018】
このとき、展張吊上げ布類Sの背面側が各拡張ベルト261,261で順次左右に展張される一方、左右各外側部寄り前面Sc,Scがそれぞれ強制拡張部材271,271で左右外側に引っ張られて、布類の左右各側部(表裏各生地間)の空気が排除される。
【0019】
又、展張吊上げ布類の丸ぐり部下縁部Taが拡張ベルト高さに差しかかったときには、各拡張ベルトによる背面側展張機能と各強制拡張部材による前面側展張機能とにより、丸ぐり部Tの下縁部分Taが左右各外側に引っ張られる作用を受ける。
【0020】
さらに、展張吊上げ布類の丸ぐり部下縁部Taが拡張ベルト261の高さに差しかかった時点で、各左右進退装置272,272がそれぞれ退避側に作動し、各強制拡張部材271,271を丸ぐり部下縁部の左右各外側部寄り位置に摺接しながら退避位置まで移動するが、この各強制拡張部材の移動時に、丸ぐり部下縁部Taが左右各外側に引っ張られて、該丸ぐり部下縁部分が確実に緊張状態に伸展せしめられる。尚、退避位置まで後退した各強制拡張部材271,271は、それぞれ接離移動装置273,273により手前側の後退位置に戻されて、そこで次の布類展張作業時まで待機する。
【0021】
このように、先願例の布類展張搬送機を使用すれば、丸ぐり部を有した布類(額縁包布)であっても、表裏の各全面をきれいに展張させた状態でプレス工程側に搬送させることができる。
【0022】
【特許文献1】特開平7−54262号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
ところで、ランドリー工場では、サイズが異なる布類(額縁包布)が混在したものを処理する場合が多いが、図16及び図17に示す先願例の布類展張搬送機では、処理すべき布類Sのサイズが同じものを想定したものであり、その単一サイズの布類に応じて各強制拡張部材271,271を上記対面位置と上記退避位置との間で移動させ得るようしたものである。
【0024】
従って、先願例の布類展張搬送機では、前面押付装置207,207を小サイズ布類に対応した位置に調整した状態で大サイズ布類を投入したとき、あるいは逆に該前面押付装置207,207を大サイズ布類に対応した位置に調整した状態で小サイズ布類を投入したときには、何れも各強制拡張部材271,271が布類サイズに適合しない位置に接触(又は移動)するようになり、展張作業が失敗したり、あるいは布類前面を十分に展張できなかったりするという問題が発生する。
【0025】
尚、上記先願例では、布類展張搬送機に布類サイズに応じて各強制拡張部材271,271をそれぞれ左右適正位置に調整するための位置調整装置(例えば伸縮シリンダ)を装備して、操作パネルから、「小」の位置調整スイッチを押すと強制拡張部材271が小サイズ布類に対応する位置に移動する一方、「大」の位置調整スイッチを押すと強制拡張部材271が大サイズ布類に対応する位置に移動するようにしておくことができる旨の記載がある。
【0026】
ところが、上記のように強制拡張部材271の位置調整を手動(位置調整スイッチ)で行えるようにした布類展張搬送機であっても、布類(額縁包布)のサイズが大小混在したものを処理する場合は、各布類を吊上げ展張状態にしないと布類サイズが判別できず、しかも布類サイズを作業員が目視により確認して、該布類サイズが現状の強制拡張部材271の位置に適合しない場合には、その都度各強制拡張部材271,271の位置を手動(位置調整スイッチ)で調整する必要がある。従って、この場合は、毎回の布類サイズ確認作業及び強制拡張部材271の位置調整作業が面倒になるとともに、それらの作業(布類サイズ確認作業及び強制拡張部材の位置調整作業)に時間がかかり、処理能率が非常に悪くなる。
【0027】
そこで、本願発明は、額縁包布のような2枚重ね部分がある布類でも表裏両面をきれいに展張させ得るとともに、布類サイズが大小混在したものを処理する場合であっても、その布類サイズを自動で検出し且つ各接触部材を自動で正確に位置調整し得るようにした布類展張搬送機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本願発明は、上記課題を解決するための手段として次の構成を有している。
【0029】
[本願請求項1の発明]
本願請求項1の発明は、布団包布(額縁包布)のような大面積の布類の一辺の両端角部をそれぞれ掴持した状態で所定高位置まで吊上げ、その布類の各角部を掴持した左右一対のチャックをそれぞれ左右動装置で左右に離間させて布類を吊上げ状態で展張させた後、その展張吊上げ布類を次工程側に搬送させ得るようにした布類展張搬送機を対象にしている。
【0030】
尚、この種の布類展張搬送機では、機枠前部の作業位置に投入装置が設置されており、該投入装置の各投入チャックに布類の一辺(長辺)の両端角部を掴持させた後、スタートボタンを押すと、各投入チャックが布類各角部を掴持したまま上動し、該布類各角部を機枠上部の中央位置で待機している左右一対の受取チャック(この受取チャックが特許請求範囲中のチャックとなる)に受け渡し、該各受取チャックを左右動装置で左右に離間させ得るようになっている。尚、左右動装置は、2基使用して各左右動装置でそれぞれ各受取チャックを作動させるようにしたものでもよく、あるいは単一の左右動装置で両受取チャックを同時に作動させるようにしたものでもよい。
【0031】
左右動装置には、サーボモータを使用している。このサーボモータは、機枠中央部の待機位置において布類各角部を掴持した各受取チャックを左右外側に移動させるとともに、布類上辺部が緊張した時点(所定以上の負荷がかかった時点)で作動停止するようになっている。そして、このサーボモータからの駆動量データ(受取チャックが機枠中央部の待機位置から左右外側の停止位置まで移動したときのサーボモータ駆動量データ)は、後述するようにコントローラに入力される。尚、このサーボモータ駆動量データは、処理しようとしている布類のサイズ(左右幅)を判定するのに利用されるものである。
【0032】
又、本願発明の布類展張搬送機には、展張吊上げ布類の背面側に、該布類背面に摺接して布類背面側を左右外側に拡張させる拡張ベルトを有する左右一対の布類背面拡張装置を設ける一方、各拡張ベルトに対面する位置に、展張吊上げ布類の左右外側部寄り前面をそれぞれ各拡張ベルト側に押付ける左右一対の前面押付装置を配置している。
【0033】
布類背面拡張装置の左右各拡張ベルトは、展張吊上げ状態にある布類の背面側で該展張吊上げ布類の上部寄り位置において、該展張吊上げ布類の幅中央部から左右に振り分けた位置に設置されている。又、該各拡張ベルトは、前面がほぼ鉛直面になる左右横長姿勢で設置されており、前面がそれぞれ左右外方向に走行するようになっている。尚、この布類背面拡張装置は、各拡張ベルトの前面に布類背面を吸引させ得る吸気機能を備えたものが好ましい。
【0034】
各前面押付装置は、各拡張ベルトの前面にある展張吊上げ布類の前面に接触する接触部材と、該接触部材を正面視において展張吊上げ布類の左右外側部寄り前面に対面する対面位置と展張吊上げ布類の左右外端部より外側の退避位置との間で左右に進退させる左右進退装置と、接触部材を拡張ベルト前面にある展張吊上げ布類の前面から離間する離間位置と該展張吊上げ布類の前面に接触する接触位置との間で前後に移動させる接離移動装置とをそれぞれ備えている。
【0035】
各前面押付装置の接触部材は、この請求項1では、単に各拡張ベルトの前面にある展張吊上げ布類の前面に接触し得るものであればよいが、後述(請求項3)のように、各拡張ベルトの前面にある展張吊上げ布類の左右外側部寄り前面に摺接して該左右外側部寄り前面をそれぞれ強制的に左右外側に拡張させ得るもの(強制拡張部材)が好ましい。
【0036】
各接触部材の設置位置は、処理すべき布類(額縁包布)のサイズによって位置決めされるが、上記対面位置では該各接触部材が当該サイズの展張吊上げ布類の左右外側部寄り前面に位置する一方、上記退避位置では該各接触部材が当該サイズの展張吊上げ布類の左右外端部より外側に位置するようになっている。
【0037】
前面押付装置の左右進退装置は、各接触部材の左右移動量を調整し得るものであるが、この左右進退装置には、サーボモータを使用することができる。尚、この左右進退装置は、各接触部材についてそれぞれ1つずつ設けてもよいが、単一の左右進退装置で両接触部材に共用するようにしたものでもよい。
【0038】
左右の接離移動装置は、各接触部材をそれぞれ前後に移動させるものであるが、この各接離移動装置には例えば伸縮シリンダが使用できる。尚、この各接離移動装置は、左右進退装置により各接触部材とともに左右移動させ得るようになっている。
【0039】
そして、この各接離移動装置は、接触部材を後退移動(手前側に移動)させた状態では、該接触部材を拡張ベルト前面にある展張吊上げ布類の前面から離間させる一方、接触部材を前進移動(奥側に移動)させた状態では、該接触部材を拡張ベルト前面にある展張吊上げ布類の前面に接触させるように機能する。尚、接触部材が展張吊上げ布類の前面から離間した状態では、接触部材を左右に移動させても該接触部材が展張吊上げ布類に接触することがない。
【0040】
又、本願請求項1の布類展張搬送機では、前記左右動装置のサーボモータで各チャックを布類上辺部が左右に緊張するまで離間させたときのサーボモータ駆動量データをコントローラに入力し、該コントローラにより左右進退装置に対して各接触部材をサーボモータ駆動量データに対応する移動量だけ移動させるような制御を行わせるようにしている。
【0041】
本願請求項1の布類展張搬送機は、次の順序で作動する。尚、布類の供給前は、左右の各接触部材がそれぞれ外側の退避位置で且つ拡張ベルトに対して手前側の後退位置にある。又、布類背面拡張装置の各拡張ベルトは、それぞれ作動させておく(拡張ベルト前面側がそれぞれ左右外向きに走行する)。
【0042】
この状態で、まず作業位置において布類(額縁包布)の一辺(長辺)の両端角部を捜し出し、丸ぐり部が前面(手前側)に位置する状態で該両端角部をそれぞれ投入チャックに掴持させる。その後、各投入チャックが布類両端角部を掴持したまま所定高さまで上動して、布類両端角部を機枠上方位置の中央部で待機している各受取チャックに受け渡し、続いて各受取チャックが左右動装置により左右離間方向に移動せしめられ、布類上辺部が緊張した時点で左右動装置のサーボモータが停止する。このとき各受取チャックは、中央部の待機位置からそれぞれ同スピードで左右離間方向に移動せしめられ、布類上辺部が緊張した状態では各受取チャックが機枠中央から左右等距離の位置に位置している。従って、吊上げ展張された布類の左右各端縁も機枠中央から左右等距離の位置に位置している。
【0043】
ところで、各受取チャックの左右離間移動は左右動装置のサーボモータで行われるが、該各受取チャックを中央部の待機位置から左右離間停止位置まで移動させたときに、該サーボモータの駆動量データがコントローラに入力される。又、この布類展張搬送機で大小サイズが混在した布類を処理する場合は、該布類サイズによって布類上辺部の展張時に各受取チャックの左右離間移動距離が変化するが、この請求項1の布類展張搬送機では、毎回の布類上辺部展張時に当該処理布類のサイズに応じたサーボモータ駆動量データがコントローラに入力される。
【0044】
尚、各受取チャックによる布類上辺部の展張時には、左右の各接触部材が展張吊上げ布類の左右各外端部よりそれぞれ外側の退避位置にあり、該布類が左右に展張されるときに該布類の左右各外端部が各接触部材に接触する(絡まる)ことがない。又、この状態では、展張吊上げ布類の上部は、左右の受取チャックの引張力によりかなりの緊張状態で伸展されているので、表裏各生地がほとんど接合している(表裏各生地間に空気がほとんど入っていない)が、展張吊上げ布類の左右各側部及び下部は表裏各生地間に空気が入って前面生地が膨らんでいる場合が多い(特に、丸ぐり部の下端縁部分は生地の自重で垂れ下がることが多々ある)。
【0045】
続いて、その展張吊上げ布類の上縁部を搬送コンベア上に移乗させるが、このとき展張吊上げ布類が展張状態のままで後方(奥側)に移動して布類背面が左右の各拡張ベルトの前面(左右外側に走行している)に接触する。そして、その直後に左右の各接触部材が左右進退装置(サーボモータ)によりそれぞれ外側の退避位置から内側の対面位置に移動されるが、該各接触部材の内側移動量(左右進退装置の作動量)は、布類上辺部の展張時の上記サーボモータ駆動量データ(布類サイズデータ)に基いて発せられるコントローラからの制御信号で決定される。従って、展張吊上げ布類のサイズに拘わらず、各接触部材がそれぞれ展張吊上げ布類の左右各外側部寄り前面に正確に対面する位置まで移動せしめられる。
【0046】
その後、各接離移動装置により各接触部材をそれぞれ展張吊上げ布類の左右各外側部寄り前面に接触させるが、このとき接触部材と拡張ベルトの間で展張吊上げ布類の左右各外側部寄り部分が軽く挟圧されている。
【0047】
この状態で展張吊上げ布類の上縁部が搬送コンベアによって引き取られていく(布類が展張状態のまま引き上げられる)が、それに伴って展張吊上げ布類の背面側が各拡張ベルトで順次左右に展張される一方、左右各外側部寄り前面がそれぞれ接触部材で軽く押圧されているので、布類の左右各側部(表裏各生地間)の空気が排除される。
【0048】
そして、展張吊上げ布類の丸ぐり部下縁部が拡張ベルト高さに差しかかった時点で、左右進退装置が退避側に作動し、各接触部材を丸ぐり部下縁部の左右各外側部寄り位置に摺接しながら退避位置まで移動する。このとき、各接触部材の外側移動に伴って丸ぐり部下縁部が左右各外側に引っ張られ、該丸ぐり部下縁部分が確実に緊張状態に伸展せしめられる。尚、退避位置まで後退した各接触部材は、それぞれ接離移動装置により手前側の後退位置に戻されて、そこで次の布類展張作業時まで待機する。
【0049】
このように、本願請求項1の布類展張搬送機を使用すれば、丸ぐり部を有した布類(額縁包布)であっても、表裏の各全面をきれいに展張させた状態でプレス工程側に搬送させることができる。又、サイズが異なる布類が混在している場合であっても、各受取チャックで布類上辺部を左右に展張させる際に、左右動装置(サーボモータ)の駆動量データをコントローラに入力することで当該処理中の布類のサイズ(左右幅)を自動で検出でき、該サーボモータ駆動量データ(布類サイズデータ)に基いてコントローラからの制御信号で各接触部材を展張吊上げ布類の左右外側部寄り前面のそれぞれ正確位置に自動で対面させることができる。
【0050】
[本願請求項2の発明]
本願請求項2の発明は、上記請求項1の布類展張搬送機において、左右進退装置は単一のサーボモータで両接触部材を同時に左右逆側に移動させるようにしていることを特徴としている。
【0051】
この請求項2で使用される左右進退装置には、左右に長い間隔をもった状態で単一ベルト(無端ベルト)を巻掛けし、該単一ベルトを単一のサーボモータで駆動し得るようにしたものを使用しており、各接触部材を該単一ベルトに対して同時に左右逆側に移動するように取付けている。即ち、単一ベルト(無端ベルト)は、サーボモータによる駆動時に右走行する部分と左走行する部分とがあり、各接触部材を単一ベルトの相互に逆向きに走行する部分に取付けることによって、2つの接触部材が相互に逆向きで同時に移動するようにしている。
【0052】
従って、この請求項2の場合は、単一の左右進退装置で両接触部材を同時に作動させることができる。
【0053】
[本願請求項3の発明]
本願請求項3の発明は、上記請求項1又は2の布類展張搬送機において、各接触部材は、各布類背面拡張装置の各拡張ベルトの前面にある展張吊上げ布類の左右外側部寄り前面に摺接して該左右外側部寄り前面をそれぞれ強制的に左右外側に拡張させ得る強制拡張部材を使用していることを特徴としている。
【0054】
この請求項3で使用される各接触部材(強制拡張部材)としては、展張吊上げ布類の左右外側部寄り前面に摺接して該左右外側部寄り前面をそれぞれ強制的に左右外側に拡張させる機能を有するものであれば、適宜の構成のものが採用できる。尚、該各接触部材(強制拡張部材)としては、例えばそれぞれ左右外側に走行するようにした拡張ベルトを使用したもの(以下に示す本願実施例のもの)、又は複数個のローラを縦向き姿勢で並置して該各ローラの奥面側がそれぞれ左右外側に回転するようにしたもの、あるいは横向き螺旋ロールで布類に対して左右外向きの展張機能を有したもの、等が採用できる。
【0055】
そして、この請求項3のように、接触部材に強制拡張部材を使用したものでは、該各接触部材(強制拡張部材)を布類の左右外側部寄り前面に接触させた状態で作動させると、該布類の左右外側部寄り前面をそれぞれ強制的に外側に押す作用が働く。
【発明の効果】
【0056】
[本願請求項1の発明の効果]
本願請求項1の布類展張搬送機によれば、展張吊上げ布類を搬送コンベア側に送り込む過程で、布類背面拡張装置により布類背面を左右に展張させ得るとともに、前面押付装置の接触部材で布類前面をきれいに展張させ得るようになっているので、中央部に丸ぐり部を有した布類であってもその表裏両面をそれぞれきれいに(小皺や波打ち部分や膨らみ部分がない状態で)展張させることができ、仕上がり精度の良好な展張布類に加工することができるという効果がある。
【0057】
又、この請求項1の布類展張搬送機では、布類上辺部の展張時におけるサーボモータ駆動量データに基いてコントローラで布類サイズ(左右幅)を自動で検出でき、コントローラからの制御信号で各接触部材を該サーボモータ駆動量データに対応する移動量だけ移動させるようにしている。従って、当該処理中の布類のサイズ(左右幅)に応じて各接触部材を展張吊上げ布類の左右外側部寄り前面のそれぞれ正確位置に自動で対面させることができ、サイズが異なる布類が混在している場合であっても、自動で能率よく(ハイスピードで)布類展張作業が行えるという効果がある。
【0058】
[本願請求項2の発明の効果]
本願請求項2の発明では、上記請求項1の布類展張搬送機において、左右進退装置は単一のサーボモータで両接触部材を同時に左右逆側に移動させるようにしているので、単一の左右進退装置で両接触部材を同時に作動させることができる。
【0059】
従って、この請求項2の布類展張搬送機では、上記請求項1の効果に加えて、単一の左右進退装置を両接触部材の進退操作に共用できるので、左右進退装置の構成を簡略化できるという効果がある。
【0060】
[本願請求項3の発明の効果]
本願請求項3の発明では、上記請求項1又は2の布類展張搬送機において、各接触部材として、展張吊上げ布類の左右外側部寄り前面をそれぞれ強制的に左右外側に拡張させ得る強制拡張部材を使用しているので、各接触部材(強制拡張部材)が布類の左右外側部寄り前面に接触したときに該布類の左右外側部寄り前面をそれぞれ強制的に外側に拡張させる作用が働く。
【0061】
従って、この請求項3の布類展張搬送機には、上記請求項1又は2の効果に加えて、丸ぐり部の周囲全面を一層きれいに展張させることができ、しかも垂れ皺が残り易い丸ぐり部の下端縁もきれいに展張させることができるという効果がある。
【実施例】
【0062】
以下、図1〜図11を参照して本願実施例の布類展張搬送機を説明する。尚、本願実施例の布類展張搬送機は、シーツのような1枚ものの布類も何ら問題なく展張させることができるが、特に中央部に丸ぐり部を有する布団包布(額縁包布)のような布類であって、しかもサイズが異なる布類が混在したものを順次展張させるのに適したものである。
【0063】
まず、この実施例の布類展張搬送機の基本構成を図1〜図3を参照して説明する。この布類展張搬送機は、投入装置1と、左右展張装置2と、吸引装置3と、受渡し装置4と、搬送装置5と、布類背面拡張装置6と、布類前面展張用の前面押付装置7,7とを有している。
【0064】
投入装置1は、展張すべき布類Sの一辺(長辺)の両端角部Sa,Saを掴持する一対の投入チャック11,11を有し、該各投入チャック11,11を昇降装置12(図3)で上下動させ得るようにしたものである。尚、昇降装置12にはロッドレスシリンダが使用されている。
【0065】
各投入チャック11,11は、人の肩幅程度の間隔で左右に並置されている。そして、この各投入チャック11,11は、昇降装置12により投入作業高さとなる低位置(図1、図3の高さ)と布類全体を吊下げ得る高位置(布類の掴持部分を後述の受取チャック21に受け渡し得る高さ)との間で上下動せしめられる。そして、低位置において、布類の一辺(長辺)の両端角部Sa,Saを各投入チャック11,11で掴持させた後(布類が図1の符号S′の状態となる)、昇降装置12で受け渡し高さまで上昇せしめられる。
【0066】
尚、この実施例では、投入装置1は左右に2基設けており、何れの投入装置1,1からでも布類を投入することができるようになっている。又、各投入装置1,1は、待機状態では、図1に示すように機枠10の幅中心から左右に振り分けた各位置に位置しているが、布類掴持後に上動する際には、機枠10の幅中心位置に移動するようになっている。
【0067】
左右展張装置2は、所定高位置において投入装置1の各投入チャック11,11から布類の両端角部Sa,Saをそれぞれ受け取る一対の受取チャック21,21を有し、該各受取チャック21,21をそれぞれ左右動装置22,22で左右方向に移動させ得るようにしたものである。
【0068】
各左右動装置22,22には、それぞれサーボモータ23,23が使用されており、該各サーボモータ23,23でそれぞれベルト(タイミングベルト)24,24を可逆的に走行させ得るようになっている。
【0069】
各受取チャック21,21は、各左右動装置22,22のそれぞれのベルト24,24に固定されていて、該各ベルト24,24をサーボモータ23,23で走行させることによって各受取チャック21,21が同時に左右近接・離間方向に作動するようになっている。
【0070】
又、各受取チャック21,21は、待機状態では図1及び図2に示すように機枠10の幅中央部において投入装置1の各投入チャック11,11の間隔と同間隔で待機しており、布類の両端角部Sa,Saを受け取った後(図1のS″の状態)、左右動装置22,22により布類の上辺部Sbが緊張するまで左右外側に移動せしめられる(布類Sが図1の展張吊上げ状態となる)。そして、各左右動装置22,22のサーボモータ23,23は、布類上辺部Sbが緊張した時点(所定以上の負荷がかかった時点)で作動停止するようになっている。尚、各左右動装置22,22による各受取チャック21,21の移動スピードは等速であり、各受取チャック21,21が機枠中央部寄りの待機位置から布類上辺部が緊張するまで移動する距離L,L(図1)は同じとなる。
【0071】
吸引装置3(図3)は、受取チャック21,21が左右移動する部分の下方位置に吸気ボックス31を設けるとともに、該吸気ボックス31内の空気を吸気ファン33で吸引し得るものが採用されている。吸気ボックス31と吸気ファン33とを連続させる吸気通路32中には、切換ダンパー36が設けられており、該切換ダンパー36が図3の鎖線図示する符号36′の側に位置するときに、吸気ボックス31内が吸気ファン33によって吸引されるようになっている。又、吸気ボックス31の前壁上端部には、左右2本の送込みローラ34,34が設けられている。この各送込みローラ34,34は、それぞれモータ35,35によって所定タイミングで送込み方向(図3の右回転方向)に回転せしめられる。
【0072】
そして、この吸引装置3は、布類Sが展張吊上げ状態において、送込みローラ34を送込み方向に回転させるとともに、吸気ボックス31内を吸引することにより、展張吊上げ状態の布類Sの下部側を送込みローラ34を乗り越えて吸気ボックス31内に吸引し、そのとき布類の下部側にテンション作用が働いて、展張吊上げ状態の布類Sを下方に展張させる機能が発生する。
【0073】
受渡し装置4は、各受取チャック21,21により展張吊上げ状態で支持されている布類Sの上縁部を受け取る吸着ボックス41と、該吸着ボックス41内を吸気する吸気フアン42と、吸着ボックス41を前後に進退させる伸縮シリンダ43とを有している。吸着ボックス41の先端部上面(布類受取面)には、多数の小孔を形成しており、該吸着ボックス41内を吸気ファン42で吸引することにより、布類受取面に布類上縁部を吸着(保持)させ得るようになっている。そして、この受渡し装置4は、吸着ボックス41が前位置にある状態で布類受取面に布類上縁部を吸着させた後、該吸着ボックス41を図3に鎖線図示(符号41′)する位置まで後退させる間に、該布類上縁部を搬送装置5(吸着コンベア51)の始端部上に移乗させるように作動する。
【0074】
搬送装置5は、手前側に多数の小孔を設けた吸着コンベア51と、その後端部に連続する搬出コンベア52とを有している。吸着コンベア51の始端部は、前位置にある吸着ボックス41の先端部(布類受取面)よりやや後側の直下近傍に位置している。吸着コンベア51の上面走行部の下面には、吸気ボックス53が設置されていて、該吸気ボックス53内を吸気することで、吸着コンベア51の上面に布類上縁部を吸着させ得るようになっている。
【0075】
吸着コンベア51側の吸気ボックス53内は、上記吸引装置3の吸気ファン33を共用して、吸引装置3の吸気ボックス31とは択一的に吸気される。即ち、図3において、切換ダンパー36が実線図示位置にあるときには、吸引装置3側の吸気ボックス31内の吸気が停止する一方、吸着コンベア51側の吸気ボックス53内がダクト54を通して吸気され、切換ダンパーが鎖線図示する符号36′側に切換わると、逆に吸着コンベア51側の吸気ボックス53内の吸気が停止する一方、吸引装置3側の吸気ボックス31内が吸気されるようになっている。
【0076】
布類背面拡張装置6は、展張吊上げ布類Sの背面を左右に展張させるもので、左右一対ある。この各布類背面拡張装置6,6はそれぞれ拡張ベルト61,61を有している。尚、以下の説明では、この布類背面拡張装置6の拡張ベルト61を背面側拡張ベルトということがある。
【0077】
この各背面側拡張ベルト61,61は、吸着コンベア51の始端部より僅かに前側の直下近傍位置において、機枠10の幅中央部から左右に振り分けた各位置に設置されている。又、該各背面側拡張ベルト61,61は、前面がほぼ鉛直面になる左右横長姿勢で設置されており、前面がそれぞれ左右外方向に走行するようにそれぞれモータ62,62で駆動される。尚、各背面側拡張ベルト61,61のそれぞれ外端部は、展張吊上げ位置にある布類Sの左右端部Sd,Sdよりそれぞれ外側にはみ出す位置まで延出させている。
【0078】
各背面側拡張ベルト61,61は、図4〜図6に示すように、多数の小孔を設けた通気性のあるベルトを使用している。そして、各背面側拡張ベルト61,61の前面走行部の裏側には、それぞれ吸気ボックス63,63が配置されており、該吸気ボックス63,63内を吸引することにより、背面側拡張ベルト61の前面に布類の背面を吸着させ得るようにしている。各吸気ボックス63,63内は、それぞれダクト64,64を介して吸気フアン65の吸気口にそれぞれ接続されており、該吸気フアン65の吸気により該各吸気ボックス63,63内を吸引し、それによって各背面側拡張ベルト61,61の前面走行部の各小孔から周囲の空気を吸引し得るようになっている。尚、この実施例では、吸気フアン65は1台で両方の吸気ボックス63,63内を吸気するようにしているが、他の実施例では各吸気ボックス63,63ごとに吸気フアン65を1台ずつ使用してもよい。
【0079】
ところで、この実施例の布類展張搬送機では、処理すべき布類Sとして中央部に丸ぐり部Tを有した布団包布(額縁包布)を採用している。この額縁包布Sでは、丸ぐり部Tの周囲の生地が2枚重ね状態となっている。そして、丸ぐり部Tを有した布類Sを展張させる際には、図1に示すように丸ぐり部Tが前面側に向く姿勢で吊上げ展張するが、この場合、展張吊上げ布類Sにおける丸ぐり部Tの外周部分の2枚重ね部分に空気が入って布類前面部分が膨らむことがある。特に、展張吊上げ状態の布類Sでは、丸ぐり部Tの下端縁Taが自重で垂れ下がることがある(図15の符号Ta′の状態)。
【0080】
そこで、この実施例の布類展張搬送機には、展張吊上げ布類Sの前面をきれいに展張させるための左右一対の前面押付装置7,7を設けている。尚、この左右一対の前面押付装置7,7は、図1〜図2に示すように同じもの(サーボモータ72aは一方のみ)が左右対称形に配置されているが、該前面押付装置7の構成については、図4〜図7に示す右側の前面押付装置7で説明する。
【0081】
図4〜図7に示す前面押付装置7は、展張吊上げ布類(図1の符号Sの状態)の左右各外側部寄り前面Sc,Scに摺接させる強制拡張部材(請求項1及び2における接触部材に相当する)71と、該強制拡張部材71を左右に移動させる左右進退装置72と、強制拡張部材71を拡張ベルト61前面にある展張吊上げ布類Sの前面Scから離間する離間位置と展張吊上げ布類の前面Scに接触する接触位置との間で前後に移動させる接離移動装置73とを備えている。
【0082】
強制拡張部材71には、この実施例では、布類前面を摺接により左右外側に拡張させ得る拡張ベルト75が使用されている。尚、この拡張ベルト75の大きさは、特に限定するものではないが横長さが40〜50cm程度、上下幅が10cm程度のものでよい。この拡張ベルト75は、モータ76によりベルト奥面側が左右外側に走行するように駆動される。又、拡張ベルト75及びモータ76は、横長の支持フレーム81(図5〜図7)に装着されていて、後述するように強制拡張部材71が支持フレーム81とともに前後及び左右に移動するようになっている。尚、以下の説明では、強制拡張部材71の拡張ベルト75を前面側拡張ベルトということがある。
【0083】
そして、各強制拡張部材71,71は、その拡張ベルト(前面側拡張ベルト)75,75が各布類背面拡張装置6,6の拡張ベルト(背面側拡張ベルト)61,61と同高さ位置に対面した状態で該前面側拡張ベルト75の走行面がほぼ鉛直面となる姿勢で設置されている。
【0084】
左右進退装置72は、図2に示すように単一のサーボモータ72aで両強制拡張部材71,71を同時に左右逆側に移動させ得るようにしたものである。即ち、この左右進退装置72は、左右に長い間隔をもった状態で単一ベルト(無端ベルト)72bを巻掛けし、該単一ベルト72bを単一のサーボモータ72aで駆動し得るようにしたものである。
【0085】
左右進退装置72の単一ベルト72bは、左右の各側部機枠10,10に跨がる左右長さを有し、且つ水平面内で走行するように設置されている。そして、この単一ベルト72bは、サーボモータ72aにより左右に可逆的に走行せしめられるが、該ベルトの前側走行部分と後側走行部分とは相互に左右逆向きに走行するようになっている。
【0086】
又、単一ベルト72bには、その前側走行部分と後側走行部分にそれぞれ支持台74,74が固定されている。この各支持台74,74上には、それぞれ接離移動装置73,73が取付けられている。尚、この各支持台74,74は、それぞれ横長のガイドレール77,77により、左右水平方向に移動するようにガイドされている。
【0087】
各接離移動装置73,73には、それぞれストロークの短い伸縮シリンダが採用されている。尚、以下の説明では、各接離移動装置73,73を接離動シリンダということがある。
【0088】
各接離移動装置(接離動シリンダ)73,73のロッド先端には、それぞれ左右各強制拡張部材71,71の各支持フレーム81,81が連結されている。そして、各接離動シリンダ73,73が伸縮動作することにより、各強制拡張部材71,71を前後移動させ得るようになっている。即ち、接離動シリンダ73が伸長状態では、強制拡張部材71の拡張ベルト75が、図5及び図6に実線図示するように展張吊上げ布類S(背面側拡張ベルト61に接触している)の左右外側部寄り前面Scに対して前側に離間する位置にあり、接離動シリンダ73が縮小すると、該強制拡張部材71の拡張ベルト75が図6の鎖線図示(符号75′)及び図7に示すように上記展張吊上げ布類Sの左右外側部寄り前面Scに接触する位置まで移動するようになっている。
【0089】
左右各強制拡張部材71,71の各支持フレーム81,81と各接離移動装置(接離動シリンダ)73,73との連結位置は、各支持フレーム81,81の左右外端部であり、従って左右各強制拡張部材71,71の拡張ベルト75,75は、各接離動シリンダ73,73の連結位置よりそれぞれ左右内方側に延出するようになっている。このようにすることにより、図5及び図7に示すように、強制拡張部材71が展張吊上げ布類Sの左右外側部寄り前面Scに対面したときに、接離動シリンダ73の連結部が布類外端部Sdに接触しないようにできる。
【0090】
左右各側の強制拡張部材71,71は、左右進退装置72により、布類が両受取チャック21,21で吊上げ展張されるまでは図1及び図2に鎖線図示(符号71′,71′)するように左右外側の退避位置に移動せしめられており、該布類が吊上げ展張された後、その展張吊上げ布類Sが背面側拡張ベルト61,61に接触した状態で、図1及び図2に実線図示(符号71,71)するように該展張吊上げ布類Sの左右外側部寄り前面Sc,Scに対面する対面位置に移動せしめられるようになっている。
【0091】
ところで、処理すべき布類(額縁包布)Sは、子供用や大人用等で大小複数のサイズのものがあり、しかも大人用のものでも顧客によってサイズの異なるものが使用されている。そして、この布類展張搬送機で大小サイズの布類が混在しているものを扱う場合には、図4に示すように、小サイズの布類Sでは、受取チャック21(左右に一対ある)が実線図示する待機位置から符号21′で示す鎖線図示位置までの距離Lだけ外側移動したときに布類上辺部Saが緊張し、大サイズの布類S0では、受取チャック21が待機位置から符号21″で示す鎖線図示位置までの距離Mだけ外側移動したときに布類上辺部Saが緊張するようになる。
【0092】
従って、上記各前面押付装置7,7を使用する場合には、各強制拡張部材71,71を外側退避位置から布類サイズに応じた適正位置まで内側に移動させる必要がある。
【0093】
そこで、この実施例の布類展張搬送機では、展張吊上げ布類のサイズ(例えば図4の小サイズSや大サイズS0)に応じて、各強制拡張部材71,71を自動で適正位置まで移動させる機構を備えている。
【0094】
即ち、この実施例の布類展張搬送機では、各受取チャック21,21を左右移動させる左右動装置22,22にそれぞれサーボモータ23,23を使用している一方、各強制拡張部材71,71を左右移動させる左右進退装置72にサーボモータ72aを使用している。そして、各左右動装置22,22の各サーボモータ23,23で各受取チャック21,21を布類上辺部Sbが左右に緊張するまで離間させたときのサーボモータ駆動量データをコントローラ8に入力し、該コントローラ8から左右進退装置72のサーボモータ72aに対して各強制拡張部材71,71をサーボモータ駆動量データに対応する移動量だけ移動させるような制御信号を発するようにしている。
【0095】
具体的には、次のように作動する。尚、布類の展張前には、各強制拡張部材71,71はそれぞれ図1及び図2に符号71′,71′で示すように外方退避位置で且つ手前側離間位置にある。そして、布類の各角部Sa,Saを機枠中央位置で待機している両受取チャック21,21で吊上げた状態(布類が図1の符号S″の状態)から各左右動装置22,22(サーボモータ23,23)により該両受取チャックを符号21′,21′で示すように布類上辺部が緊張するまで左右に離間させたとき(図1の場合は布類Sが小サイズで各受取チャック21,21が距離Lずつ移動する)の各サーボモータ駆動量データをコントローラ8に入力し、そのサーボモータ駆動量データに基いてコントローラ8から左右進退装置72のサーボモータ72aに対して、外方退避位置にある各強制拡張部材71′,71′を展張吊上げ布類Sの左右外側部寄り前面Sc,Scに正確に対面する位置(符号71,71の位置)までの距離L0だけ内方移動させるようにしている。
【0096】
又、布類サイズが図4に符号S0で示す大サイズのものでは、布類上辺部の展張時に受取チャック21が符号21″で示す位置までの距離Mだけ移動し、そのときのサーボモータ23の駆動量データをコントローラ8に入力するとともに、そのサーボモータ駆動量データに基いてコントローラ8から左右進退装置72のサーボモータ72aに対して、外方退避位置にある各強制拡張部材71′を展張吊上げ布類S0の左右外側部寄り前面Scに正確に対面する位置(符号71″の位置)までの距離M0だけ内方移動させる。
【0097】
尚、各左右動装置22,22による各受取チャック21,21の移動範囲(例えば図1の各距離L,L)は常に同じであり、従ってコントローラ8に入力する上記サーボモータ駆動量データは一方のサーボモータ23のものだけでもよい。
【0098】
そして、各強制拡張部材71,71が展張吊上げ布類の左右外側部寄り前面Sc,Scに対面した後、各接離移動装置(接離動シリンダ)73,73が縮小して、各前面側拡張ベルト75,75を図6の鎖線図示位置(符号75′)及び図7に示すように布類外側部寄り前面Scに接触させる。又、接離動シリンダ73の縮小作動に前後して、強制拡張部材71のモータ76を作動させ、前面側拡張ベルト75を作動させる(ベルト奥面が左右外側に走行する)。
【0099】
又、この実施例の布類展張搬送機では、後述するように(後述の作動説明)、各強制拡張部材71,71がそれぞれ布類外側部寄り前面Sc,Scに接触した状態で展張吊上げ布類Sが上方に引き上げられていき、図11に示すように展張吊上げ布類Sの丸ぐり部Tの下端縁Ta付近が強制拡張部材71,71の高さ位置に差しかかったときに、コントローラ8からの信号で左右進退装置72(サーボモータ72a)を退避側に作動させて各強制拡張部材71,71を布類左右外側部寄り前面Sc,Scに摺接させながらそれぞれ退避位置まで移動せしめるようにしている。尚、各強制拡張部材71,71を対面位置から退避位置に移動させるタイミングは、例えば展張吊上げ布類の上方引き上げ開始時点から所定タイマー後に(展張吊上げ布類の丸ぐり部の下端縁Ta付近が強制拡張部材71,71の高さ位置に差しかかった時点で)コントローラ8からの信号で左右進退装置72を退避側に作動させるようにしたり、あるいは引き上げられる展張吊上げ布類の下端縁が所定高さ位置を通過するのを検出器で検出して該検出器からの信号で左右進退装置72を退避側に作動させるようにしたりすることができる。
【0100】
次に、この実施例の布類展張搬送機の作動方法を図8〜図11を併用して説明する。尚、運転時の初期状態では、吸引装置3の吸気フアン33、布類背面拡張装置6の吸気フアン65、各背面側拡張ベルト61,61のモータ62、搬送装置5の吸着コンベア51及び搬出コンベア52等はそれぞれ作動している。又、前面押付装置7,7の各強制拡張部材(前面側拡張ベルト)71,71は、それぞれ図1及び図2に符号71′で示すように外側の退避位置で且つ背面側拡張ベルト61に対して手前側の後退位置にある。尚、各前面側拡張ベルト75,75は、運転中は背面側拡張ベルト61,61と同様に連続走行させてもよいが、この実施例では後述のように所定の行程範囲のみで走行させる。
【0101】
布類を布類展張搬送機に供給するには、作業位置において布類の一辺(長辺)の両端角部を捜し出し、図1に示すようにその両端角部Sa,Saを投入装置1の各投入チャック11,11にそれぞれ掴持させる(図1、図8の各符号S′の状態)。次に各投入チャック11,11が布類両端角部Sa,Saを掴持したまま所定高さまで上動して、布類両端角部を上方で待機している各受取チャック21,21に受け渡し(図1、図8の符号S″の状態)、続いて各左右動装置22,22により各受取チャック21,21を布類上辺部が緊張するまで左右離間方向に移動せさて、布類上辺部Sbを吊上げ状態で左右に展張させる。
【0102】
このとき、展張される布類のサイズ(例えば図4の小サイズ布類Sや大サイズ布類S0)により受取チャック21の移動距離(図4の距離Lや距離M)が変化し、それに伴って各左右動装置22,22(サーボモータ23,23)の駆動量が変化するが、展張された布類ごとにそのサーボモータ駆動量データがそれぞれコントローラ8に入力される。
【0103】
次に、展張吊上げ布類が図8の符号S″の状態から、送込みローラ34が送込み方向に高速回転するとともに、切換ダンパー36が鎖線図示(符号36′)側に切換えられて吸気ボックス31内の空気が吸引され、布類の下端側が吸気ボックス31内に吸い込まれる(展張吊上げ布類が図8の符号S1の状態になる)。このとき、この展張吊上げ布類S1には、吸気ファン33の吸引作用により、下方へのテンションがかけられて、該布類が方形状に展張される。
【0104】
尚、この状態では、展張吊上げ布類の上部は、左右の受取チャック21,21の引張力によりかなりの緊張状態で伸展されているので、表裏各生地がほとんど接合している(表裏各生地間に空気がほとんど入っていない)が、展張吊上げ布類の左右各側部及び下部は表裏各生地間に空気が入って前面生地が膨らんでいる場合が多い(特に、丸ぐり部Tの下端縁Ta部分は生地の自重で垂れ下がることが多々ある)。
【0105】
その後、切換ダンパー36′が実線図示側に切換えられ(吸着コンベア51の吸気ボックス53内が吸気される)、各受取チャック21,21が開放されて、布類の上辺部分が吸着ボックス41の先端側上面に吸着・保持される。尚、このとき、布類上辺部分を図示しないブロワーからのエアで吸着ボックス41の先端側上面に向けて押付けるようにするとよい。続いて、吸着ボックス41が図9に実線図示する位置を経て鎖線図示位置(符号41′)まで後退するが、その間に布類上辺部分が吸着コンベア51上に移乗される(図10の符号S3の状態)。
【0106】
ところで、展張吊上げ布類の上辺部が受取チャック21から吸着ボックス41を経て吸着コンベア51の始端部に移乗される間には、展張吊上げ布類の上部寄り部分が側面視において左右の強制拡張部材71,71間を前方から後方に横切るが、このとき左右の強制拡張部材が図1に鎖線図示(符号71′)するようにそれぞれ展張吊上げ布類の左右各外端部Sd,Sdの外側に位置しているので、布類の各外端部Sd,Sdが各強制拡張部材71′に引っ掛かることがない。
【0107】
又、布類上辺部分を吸着した吸着ボックス41が図8に示す前方突出位置から後退移動を開始し、展張吊上げ布類の上部寄り部分が左右の強制拡張部材71,71間を奥側に横切った直後(例えば吸着ボックス41が図9に実線図示する位置まで後退したとき)に、コントローラ8からの制御信号で左右進退装置72のサーボモータ72aを強制拡張部材内方移動側に作動させる(サーボモータ72aを図2において右回転させる)。このときのコントローラ8からの制御信号(左右進退装置のサーボモータ72aに対する指示駆動量)は、先にコントローラ8に入力されているサーボモータ駆動量データ(各受取チャック21の移動距離データ)に対応して、各強制拡張部材71,71を各外方退避位置(71′の位置)から展張吊上げ布類の左右外側部寄り前面Sc,Scに正確に対面させる位置まで移動させるものである。例えば、図4において、布類上辺部の展張時に受取チャック21の移動距離がLの場合(小サイズ布類Sの場合)は、コントローラ8からサーボモータ72aに対して強制拡張部材71を距離L0だけ移動させる制御量の信号を出力し、該受取チャック21の移動距離がMの場合(大サイズ布類S0の場合)は、コントローラ8からサーボモータ72aに対して強制拡張部材71を距離M0だけ移動させる制御量の信号を出力する。
【0108】
このように、布類上辺部の展張時におけるサーボモータ駆動量データに基いてコントローラ8で左右進退装置72(サーボモータ72a)の作動量を制御するようにすると、布類サイズに拘わらず、毎回自動で且つ各強制拡張部材71,71を展張吊上げ布類の左右外側部寄り前面Sc,Scに対して常に適正位置に対面させることができる。
【0109】
続いて左右の各接離移動装置(接離動シリンダ)73,73を縮小させて、図6の鎖線図示又は図7に示すように各強制拡張部材71の前面側拡張ベルト75をそれぞれ展張吊上げ布類の左右各外側部寄り前面Sc,Scに接触させるとともに、各前面側拡張ベルト75,75の各モータ76を作動させて該前面側拡張ベルト75の奥側面をそれぞれ左右外向きに走行させる(図10の状態)。
【0110】
この状態(図10の状態)では、図7に示すように、展張吊上げ状態の布類Sが左右の各背面側拡張ベルト61,61と左右の各前面側拡張ベルト75,75とで表裏から軽く挟持され、且つ表裏各側の拡張ベルト61,75がそれぞれ左右外向きに走行しているので、展張吊上げ布類Sはその表裏各側からそれぞれ左右各外側に引っ張られる作用を受ける。
【0111】
そして、その後も吸着コンベア51が走行していることにより、展張吊上げ布類の下部側が順次上方に引き上げられていくが、その最中に布類の各外側部寄り部分がそれぞれ表裏から各拡張ベルト61,75で挟持され、且つ展張吊上げ布類Sの背面側が各背面側拡張ベルト61,61で順次左右外側に展張される一方、該展張吊上げ布類Sの前面側が各前面側拡張ベルト75,75で順次左右外側に展張されるので、布類の左右各側部(表裏各生地間)の空気が排除されるとともに、布類の表裏両面が左右に展張される。
【0112】
又、図11に示すように、展張吊上げ布類Sの丸ぐり部下縁部Taが前面側拡張ベルト75,75の高さ位置に差しかかったときには、各前面側拡張ベルト75,75による左右展張機能により、丸ぐり部Tの下縁Ta部分が左右各外側に引っ張られる作用を受け、丸ぐり部Tの下縁Ta部分が自重で垂れ下がっていても該丸ぐり部下縁Ta部分も緊張状態に伸展するようになる。
【0113】
さらに、展張吊上げ布類Sが図11に示す状態まで引き上げられた時点、即ち、展張吊上げ布類の丸ぐり部下縁部Taが前面側拡張ベルト75,75の高さに差しかかった時点で、コントローラ8からの信号で左右進退装置72のサーボモータ72aが退避側に作動し(サーボモータ72aが図2において左回転する)、各前面側拡張ベルト75,75を丸ぐり部下縁部Taの左右各外側部寄り位置Sc,Scに摺接しながら退避位置(図1、図2の符号71′の位置)まで移動させる。このとき、丸ぐり部下縁部Taが摺接により左右各外側に引っ張られ、丸ぐり部の下縁部分が自重で垂れ下がっていても該丸ぐり部下縁部分が確実に緊張状態に伸展する。
【0114】
退避位置まで後退した各強制拡張部材は、それぞれ接離移動装置73が伸長することにより手前側の後退位置(図2に符号71′で示す鎖線図示位置)に戻されて、そこで次の布類展張作業時まで待機する。尚、各強制拡張部材71,71が退避位置まで戻されたときに、モータ76がOFFになって、前面側拡張ベルト75の走行が停止する。
【0115】
このように、この布類展張搬送機を使用すれば、丸ぐり部Tを有した布類(額縁包布)Sであっても、表裏の各全面をそれぞれきれいに展張させた状態でプレス工程側に搬送させることができ、折り皺のない状態で加工できる。
【0116】
又、この布類展張搬送機では、サイズの異なる布類が混在したものを処理する場合であっても、該布類サイズに応じて各強制拡張部材71,71を自動で且つ展張吊上げ布類の左右外側部寄り前面Sc,Scに対して常に正確な対面位置に位置させることができる。
【0117】
又、この実施例のように、左右進退装置72として、単一のサーボモータ72aで両強制拡張部材71,71を同時に左右逆側に移動させ得るようにしたものを使用すると、単一のサーボモータ72aを両強制拡張部材71,71の進退操作に共用できるので、左右進退装置72の構成を簡略化できる。
【0118】
さらに、各接触部材として、展張吊上げ布類の左右外側部寄り前面Sc,Scをそれぞれ強制的に左右外側に拡張させ得る強制拡張部材71を使用すると、丸ぐり部の周囲全面を一層きれいに展張させることができ、しかも垂れ皺が残り易い丸ぐり部の下端縁もきれいに展張させることができる。
【0119】
尚、この布類展張搬送機で、シーツのような1枚ものの布類を処理する際には、各強制拡張部材71,71をそれぞれ外方退避位置に維持させておく(作動させない)ことができる。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】本願実施例の前面押付装置を用いた布類展張搬送機の正面図である。
【図2】図1のII−II矢視図である。
【図3】図1のIII−III矢視図である。
【図4】図1の右側前面押付装置部分の拡大図である。
【図5】図4の平面図である。
【図6】図4のVI−VI拡大断面図である。
【図7】図5の状態から強制拡張部材が布類前面に接触した状態の拡大図である。
【図8】図1の布類展張搬送機の作動説明図(図3相当図)である。
【図9】図8からの状態変化図である。
【図10】図9からの状態変化図である。
【図11】図10から状態変化したときの正面図である。
【図12】公知例の布類展張搬送機の正面図である。
【図13】図12の布類展張搬送機の作動説明図である。
【図14】図13からの状態変化図である。
【図15】展張吊上げ状態の布類の説明図である。
【図16】先願例の布類展張搬送機の正面図である。
【図17】図16の布類展張搬送機のXVII−XVII矢視図である。
【符号の説明】
【0121】
1は投入装置、2は左右展張装置、3は吸引装置、4は受渡し装置、5は搬送装置、6は布類背面拡張装置、7は前面押付装置、8はコントローラ、11は投入チャック、21は受取チャック、22は左右動装置、23はサーボモータ、61は背面側拡張ベルト、71は接触部材(強制拡張部材)、72は左右動装置、72aはサーボモータ、73は接離移動装置、75は前面側拡張ベルト、Sは布類、Saは布類角部、Sbは布類上辺部、Scは布類外側部寄り前面、Sdは布類外端部である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚重ね部分を有する大面積の布類(S)の一辺の両端角部(Sa,Sa)をそれぞれ掴持した状態で所定高位置まで吊上げ、その布類の各角部(Sa,Sa)を掴持した左右一対のチャック(21,21)を左右動装置(22)で左右に離間させて布類(S)を吊上げ状態で展張させた後、その展張吊上げ布類(S)を次工程側に搬送させ得るようにした布類展張搬送機であって、
前記左右動装置(22)にはサーボモータ(23)を使用している一方、
前記展張吊上げ布類(S)の背面側に、該布類背面に摺接して布類背面側を左右外側に拡張させる拡張ベルト(61)を有する左右一対の布類背面拡張装置(6,6)を設け、
前記各拡張ベルト(61,61)に対面する位置に、前記展張吊上げ布類(S)の左右外側部寄り前面(Sc,Sc)をそれぞれ各拡張ベルト(61,61)側に押付ける左右一対の前面押付装置(7,7)を配置し、
さらに前記各前面押付装置(7,7)は、前記各拡張ベルト(61,61)の前面にある展張吊上げ布類(S)の前面に接触する接触部材(71)と、該接触部材(71)を正面視において展張吊上げ布類(S)の左右外側部寄り前面(Sc)に対面する対面位置と展張吊上げ布類(S)の左右外端部(Sd,Sd)より外側の退避位置との間で左右に進退させる左右進退装置(72)と、前記接触部材(71)を拡張ベルト(61)前面にある展張吊上げ布類(S)の前面から離間する離間位置と該展張吊上げ布類(S)の前面に接触する接触位置との間で前後に移動させる接離移動装置(73)とをそれぞれ備え、
前記左右進退装置(72)には前記各接触部材(71,71)の左右進退量を調整し得るものを使用しているとともに、
前記各左右動装置(22,22)の各サーボモータ(23,23)で前記各チャック(21,21)を布類上辺部(Sb)が左右に緊張するまで離間させたときの各サーボモータ駆動量データをコントローラ(8)に入力し、該コントローラ(8)により前記左右進退装置(72)に対して前記各接触部材(71,71)を前記各サーボモータ駆動量データに対応する移動量だけ移動させるような制御を行わせるようにしている、
ことを特徴とする布類展張搬送機。
【請求項2】
請求項1において、
左右進退装置(72)は、単一のサーボモータ(72a)で両接触部材(71,71)を同時に左右逆側に移動させるようにしている、
ことを特徴とする布類展張搬送機。
【請求項3】
請求項1又は2において、
各接触部材(71,71)は、各布類背面拡張装置(6,6)の各拡張ベルト(61,61)の前面にある展張吊上げ布類(S)の左右外側部寄り前面(Sc,Sc)に摺接して該左右外側部寄り前面をそれぞれ強制的に左右外側に拡張させ得る強制拡張部材を使用している、
ことを特徴とする布類展張搬送機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−268571(P2009−268571A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−119594(P2008−119594)
【出願日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【出願人】(502407130)株式会社プレックス (75)
【Fターム(参考)】