説明

布類展張機及び布類展張方法

【課題】 従来では、大面積布類の全重量を両チャックで支持した状態で各チャックを布類上辺部が最終展張するまで一気に離間させるようにしているので、最終展張時における両チャックに加わる総合テンションが大きくなり、展張に失敗することがあった。
【解決手段】 大面積布類を吊上げ状態で展張させる布類展張機において、左右動装置22,22は、各チャック21,21を布類上辺部Sbが緩展張状態となる第1段離間状態と布類上辺部が緊張する最終離間状態との2段階に離間動作させるようにし、吸引ボックス31の上部開口32付近に、布類下部側Scを載せ得る載置台51を、吸引ボックス閉位置と吸引ボックス開位置との間で変位させ得るようにした可動載置台装置5を設けていることにより、載置台5上に布類下部側を載せた状態で布類上辺部を最終展張(緊張)させることができる(各チャックに加わるテンション力を2段階に分散できる)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、シーツや布団包布のような大面積の布類を展張させるための布類展張機及び布類展張方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、ランドリー工場においては、洗濯・乾燥後の布類をプレス機でプレスしたり、折畳み機で折畳む作業が行われるが、その次工程装置(以下、プレス機で説明する)に布類を供給する際には、予め布類をきれいに展張させておく必要がある。
【0003】
ところで、シーツのような大面積の布類を展張させるための布類展張機として、従来から図12及び図13に示すようなものがある(例えば、特許文献1の図1、図2)。
【0004】
この図12及び図13に示す従来の布類展張機は、大面積の布類S1の一辺の両端角部Sa,Saを保持して所定高位置まで移送する投入装置1と、投入装置1によって高位置まで移送された布類S2の両端角部Sa,Saを受取って左右方向に展張させる左右展張装置2と、左右展張装置2のほぼ直下方に設置されていて左右展張装置2で展張された布類S3の下方部を吸引して展張させる吸引装置3と、左右展張装置2及び吸引装置3で展張された布類S3を受渡す受渡し装置4と、受渡し装置4から布類Sを受取ってプレス機側に搬送する搬送装置6とを備えている。
【0005】
この従来の布類展張機では、図12に示すように投入装置1を左右に2基設置している。この投入装置1は1基だけのもの、あるいは4基程度を左右方向に並設したものもある。この各投入装置1は、人の肩幅程度の間隔をもって左右一対のチャック11,11を有している。尚、この各チャック11は、以下の説明において投入側チャックという。この各投入側チャック11,11は、布類S1の一辺の両端角部Sa,Saをそれぞれ保持する。そして、該各投入側チャック11は、布類の両端角部Sa,Saを保持した状態で、昇降装置(ロッドレスシリンダ)12により上方に移動せしめられる。
【0006】
左右展張装置2は、各投入側チャック11,11で保持されている布類両端角部Sa,Saを受取る左右一対のチャック21,21を有している。尚、この左右展張装置2側のチャック21は、以下の説明において受取側チャックという。この各受取側チャック21,21は、布類の両端角部Sa,Saを保持した状態で、それぞれ左右動装置(サーボモータ)22,22により相互に離間・近接方向に作動せしめられる。そして、各チャック21,21を図12に符号21′,21′で示す位置(布類S3の上辺部Sbが緊張する位置)まで離間させることにより、該布類上辺部Sbを布類展張機の中央部においてきれいに展張させ得るようになっている。
【0007】
吸引装置3は、縦向きの吸引ボックス31内の空気をバキュームファン33で下方に吸引するようになっている。吸引ボックス31の吸気口32の近傍には、モータ36,36(図12)よって回転せしめられる送込みローラ35,35が設けられている。この送込みローラ35,35は、同高さの定位置において左右2本使用されている。
【0008】
搬送装置6は、左右展張装置2から受渡し装置4を介して展張状態の布類S3を受取る前側コンベア(バキュームコンベア)61と、それに連続する後側コンベア(排出コンベア)62を有している。尚、後側コンベア62は、プレス機側に連続している。
【0009】
そして、図12及び図13の布類展張機は、次のように機能する。まず、洗濯・乾燥済みの大面積布類から、その一辺の両端角部Sa,Saを捜し出してそれぞれ投入装置1の各投入側チャック11,11に保持させる(符号S1の状態)。そして、スタートボタンを押すと、各投入側チャック11,11が布類両端角部Sa,Saを保持したまま上動して、その布類両端角部を左右展張装置2の各受取側チャック21,21に受渡し(S2の状態)、次に該各受取側チャック21,21が左右外側に移動して、布類S2の上辺部Sbを展張させる(S3の状態)。続いて、送込みローラ35が送込み方向に高速回転(右回転)するとともに、切換ダンパ38が鎖線図示(符号38′)側に切換えられて吸引ボックス31内の空気が吸引され、布類の下端側がS4のように吸引ボックス31内に吸い込まれる。このとき、この布類S4には、バキュームファン33の吸引作用により下方へのテンションがかけられて、該布類が方形状に展張される(S4の状態)。その後、切換ダンパ38が実線図示側に切換えられ、各受取側チャック21,21で保持されていた布類S4の上辺部Sbが吸着ボックス41の先端側上面に吸着・保持され、該吸着ボックス41が鎖線図示(符号41′)するように後退し、そのとき布類上辺部Sbが前側コンベア(バキュームコンベア)61上に移乗され、布類が展張状態のままで前側コンベア61及び後側コンベア62を経てプレス機側に供給される。このように、図12及び図13の布類展張機では、展張すべき布類の一辺の両端角部Sa,Saを捜し出して、それを各投入側チャック11,11に保持させるだけで、後は自動で方形状に展張させることができる。
【0010】
ところで、この種(図12、図13)の布類展張機では、普通サイズのシーツのほかにダブルベッド用シーツのような大面積の布類や布団包布のような2枚重ね部分のある布類も処理されるが、ダブルベッド用シーツや布団包布では、布類展張機で処理されるときの重量(脱水・乾燥されているものの、湿気を含んでいる)が3Kg程度ある。
【0011】
他方、各左右動装置22,22による布類上辺部Sbの展張動作は、布類両端角部Sa,Saを掴持した各受取側チャック21,21がかなりのスピードで離間し、布類上辺部Sbが緊張したときの急激な負荷上昇を受けて各左右動装置(モータ)22,22を停止させるようになっている。
【0012】
そして、図12及び図13の布類展張機では、布類を展張させる際に、2つの受取側チャック21,21で布類を吊上げた状態(S2の状態)で各受取側チャック21,21を左右に離間させるが、そのとき2つの受取側チャック21,21に布類の全重量の荷重と布類上辺部Sbが緊張したときの衝撃(引っ張り力)が同時に加わる。
【0013】
【特許文献1】特開2001−159067号公報(図1、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記のように、従来(例えば図12、図13)の布類展張機では、布類を展張させる際に、両受取側チャック21,21で布類を吊上げた状態(両受取側チャックで布類の全重量を負担した状態)で布類上辺部Sbを緊張させるが、布類上辺部Sbの緊張完了時点で該各受取側チャック21,21に布類の全荷重と布類上辺部の展張時の衝撃(引っ張り力)とが同時に加わり、各受取側チャック21,21に対してかなり大きな布類端部の離脱(抜け出し)作用が働く。
【0015】
従って、従来のこの種の布類展張機では、各受取側チャック21,21の布類角部掴持力が弱いと、布類上辺部Sbの緊張時に掴持していた布類角部Saが受取側チャック21から外れることがある。尚、この場合は、布類の展張に失敗し、その失敗した布類を回収して再度投入作業を行う必要がある。
【0016】
又、特にクリーニング回数が多くなって生地が脆くなっている布類では、2つの受取側チャック21,21で布類の全重量を支持した状態で、両受取側チャック21,21が布類上辺部Sbを最終展張させるまで急激に離間すると、布類掴持部分に布類の全重量による下向きのテンションと布類上辺部Sbに加わる外向きのテンションとが同時に発生するために、各チャック21,21による掴持部分の生地が延ばされたり損傷したりする虞れがあった。
【0017】
そこで、本願発明は、布類上辺部を最終展張させる時点での布類のチャック掴持部分(両端角部)の負担を軽減させ得るようにした布類展張機及び布類展張方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本願発明は、上記課題を解決するための手段として次の構成を有している。
【0019】
[本願請求項1の発明]
本願請求項1の発明は、洗濯・乾燥後のシーツや布団包布のような大面積布類をきれいに展張させるための布類展張機を対象にしている。
【0020】
この請求項1の布類展張機は、大面積布類の一辺の両端角部を所定高位置においてそれぞれチャックで掴持した状態で、該各チャックを左右動装置で左右に離間させることにより布類上辺部を左右に展張させる一方、吊上げ状態の布類の下部側を布類吊上げ位置の下方に設置した吸引ボックス内に吸引させることにより、布類を吊上げ状態で方形状に展張させるようにしたものである。
【0021】
各チャックは、床面から例えば300cm程度(特に限定するものではない)の高さ位置に設置されていて、該高さ位置で布類両端角部を掴持し得るようになっている。
【0022】
吸引ボックスは、縦向きで床面から例えば130cm程度(特に限定するものではない)の高さを有している。又、この吸引ボックス内は、バキュームファンによって所定タイミングで吸引される。尚、この種の布類展張機では、吸引ボックスの前壁上端部に送込みローラが設置されていて、吸引ボックス内を吸気するとともに送込みローラを布類送込み側に高速回転させることにより、吊上げ状態の布類の下部側をスムーズに吸引ボックス内に吸引させ得るようになっている。
【0023】
本願請求項1の布類展張機では、前記左右動装置として、各チャックを、布類上辺部が完全に緊張する手前の緩展張状態となる第1段離間状態と布類上辺部が緊張する最終離間状態との2段階に離間動作させるようにしたものを使用している。尚、左右動装置としては、サーボモータが使用できる。
【0024】
他方、吸引ボックスの上部開口付近には、布類吊上げ状態で布類下部側を載せ得る載置台を、布類下部側が吸引ボックス内に垂れ下がるのを阻止する閉位置と布類下部側が吸引ボックス内に垂れ下がるのを許容する開位置との間で変位させ得るようにした可動載置台装置を設けている。
【0025】
載置台は、吸引ボックス前壁の上端(送込みローラがあるものでは該送込みローラの上端)から若干下がった位置(例えば20cm程度低い位置)に設置するとよい。又、この載置台は、吸引ボックスの左右全幅の範囲に設けてもよいが、前記各チャックによる布類吊上げ位置の中央付近における所定長さ範囲(例えば100〜150cm程度の長さ範囲)のみに設けてもよい。
【0026】
載置台を前記閉位置と前記開位置との間で変位させる駆動装置には、回転式ソレノイドやモータや伸縮シリンダが採用できる。尚、載置台の開閉動作は、吸引ボックスの上部開口付近において上下に弧回動させるものでもよく、あるいは内外方向に出没させるものでもよい。
【0027】
又、載置台は、前記閉位置において吸引ボックス内の吸気が遮断されない通気性を有したものを使用している。尚、この載置台の通気性付与構造としては、布類載せ板部分を網目状や格子状や櫛歯状にしたものが採用できる。
【0028】
この請求項1の布類展張機では、後述の布類展張方法のように制御される。即ち、布類の一辺の両端角部を所定高位置においてそれぞれ各チャックで掴持し、該各チャックを、左右動装置でまず布類上辺部が完全に緊張する手前の緩展張状態まで離間させる。この緩展張状態では、布類上辺部が若干弛んでいて左右方向にテンションがかかっていない。そして、吸引ボックス内を吸引する前に可動載置台装置の載置台を吸引ボックスの上部開口付近において閉位置に作動させ、続いて吸引ボックス内を吸引する。すると、緩展張状態で吊上げられている布類の下部側が吸引ボックス内に吸引されようとするが、該布類下部側は吸引ボックスの上部開口付近で閉位置にある載置台上にジグザグ状に撓んだ状態で載置され、布類の全重量の約1/2程度が載置台で支持されるようになる。従って、この状態では各チャックによる布類の重量負担(各チャックに加わる下向きのテンション力)がかなり軽減されている。次に、載置台で布類下部側を支持した状態で、左右動装置により各チャックを布類上辺部が緊張するまで離間させる(両チャック間にテンションがかかる)が、このとき載置台による布類の重量負担分だけ各チャックに受ける下向きテンションが小さくなっており、その分、各チャックに対する総合離脱作用力(抜け出し力)が軽減されることになる。
【0029】
[本願請求項2の発明]
本願請求項2の発明は、上記請求項1の布類展張機において、可動載置台装置を吸引ボックスの上部開口付近から所定高さ範囲で上下動させる上下動装置を備えていることを特徴としている。
【0030】
この上下動装置としては、伸縮シリンダが適当であるが、モータにより上下動させるようにしたものでもよい。可動載置台装置の上下動範囲は、特に限定するものではないが例えば50〜60cm程度でよい。尚、可動載置台装置が吸引ボックスに対して上動すると、該可動載置台装置と吸引ボックス前壁の上端との間に所定高さの隙間が生じるが、この可動載置台装置は、吸引ボックス前壁に対して上下にスライドする所定高さ幅の遮蔽板とともに上下動させるようにするとよい。
【0031】
この請求項2のように、可動載置台装置を上下動装置で上動させ得るようにしたものでは、上記請求項1において両チャックを最大離間させる(布類上辺部を緊張させる)前に、布類下部側を載置した載置台を所定高さまで上動させることにより、該載置台上に支持する布類の重量を多くできる(換言すれば、両チャックで負担する布類の重量を少なくできる)。そして、この状態(布類下部側を載置した載置台を所定高さまで上動させた状態)で布類上辺部を緊張させると、両チャックに加わる布類重量による下向きテンション力が一層軽減されていることにより、チャック掴持部分に受ける総合テンション力が小さくなる。
【0032】
[本願請求項3の発明]
本願請求項3の発明は、シーツや布団包布のような大面積の布類の一辺の両端角部を所定高位置においてそれぞれチャックで掴持した状態で、該各チャックを左右に離間させることにより布類上辺部を左右に展張させる一方、吊上げ状態の布類の下部側を布類吊上げ位置の下方に設置した吸引ボックス内に吸引させることにより、布類を吊上げ状態で方形状に展張させるようにした布類展張方法を対象にしている。尚、この請求項3の布類展張方法は、主として上記請求項1の布類展張機を使用して行うものである。
【0033】
そして、この請求項3の布類展張方法では、各チャックで吊上げた布類を展張させる際に、各チャックを布類上辺部が完全に緊張する手前の緩展張状態まで離間させ、その緩展張状態で布類下部側の重量を吸引ボックスの上部開口付近で支持し、該布類下部側の重量を支持した状態で各チャックを布類上辺部が緊張するまで離間させ、その後に布類下部側の重量支持を解除して、該布類下部側を吸引ボックス内に吸引させるようにするものである。
【0034】
この請求項3の布類展張方法も、上記請求項1の作用説明と同様に、布類上辺部を最終展張させる前に布類下部側の重量を吸引ボックスの上部開口付近で支持し、その状態で各チャックを布類上辺部が緊張するまで離間させるようにしているので、布類上辺部を最終展張させる際の各チャックに受ける下向きテンション力(布類重量によるもの)を軽減できる。
【発明の効果】
【0035】
本願請求項1の布類展張機、及び本願請求項3の布類展張方法によれば、各チャックで吊上げた布類を展張させる際に、各チャックを布類上辺部が完全に緊張する手前の緩展張状態まで離間させ、その緩展張状態で布類下部側の重量を吸引ボックスの上部開口付近で支持し、該布類下部側の重量を支持した状態で各チャックを布類上辺部が緊張するまで離間させ、その後に布類下部側の重量支持を解除して、該布類下部側を吸引ボックス内に吸引させるようにしているので、各チャックに大きなテンションが加わる布類上辺部の展張時において布類重量の負担分(下向きテンション)を軽減できる。
【0036】
従って、本願請求項1及び3の各発明では、布類上辺部の最終緊張時(布類上辺部に大きな外向きテンションがかかる時点)において、チャック掴持部分での総合離脱作用力(布類掴持部分の抜け出し力)が軽減され、チャック掴持部分の布類角部がはずれにくくなる(布類の展張作業が失敗しない)という効果がある。又、上記のように布類上辺部の最終緊張時に布類重量による下向きテンション力が軽減されていると、各チャックで掴持されている布類角部に対する生地引っ張り力が軽減されるので、該チャック掴持部分(布類角部)の生地が延ばされたり損傷したりしにくくなるという効果もある。
【0037】
本願請求項2の発明では、上記請求項1の布類展張機において、可動載置台装置を吸引ボックスの上部開口付近から所定高さ範囲で上下動させる上下動装置を備えているので、上記請求項1において両チャックを最大離間させる(布類上辺部を緊張させる)前に、布類下部側を載置した載置台を所定高さまで上動させることにより、該載置台上に支持する布類の重量をさらに多くでき、その分、両チャックに加わる布類荷重が一層少なくなる。
【0038】
従って、この請求項2の布類展張機では、布類上辺部が最終緊張される時点でのチャック掴持部分に加わる総合テンション力が一層軽減され、上記請求項1の場合よりチャック掴持部分での総合離脱作用力(布類掴持部分の抜け出し力)が一層小さくなる。
【実施例】
【0039】
以下、図1〜図11を参照して本願実施例の布類展張機及び布類展張方法を説明する。尚、この実施例の布類展張機は、シーツや布団包布のような大面積の布類Sをきれいに展張させてプレス機や折畳み機のような次工程装置側に搬送するものである。
【0040】
図1〜図2に示す実施例の布類展張機では、従来例(図12〜図13)の布類展張機と同構造の、投入装置1と、左右展張装置2と、吸引装置3と、受渡し装置4と、送込みローラ35,35を備えている。又、搬送装置6は、前側コンベア61と後側コンベア62とを有するのは上記の従来例と同じであるが、後側コンベア62の一部62aを前部側に延出させて、例えば枕カバーやバスタオルのような小面積布類を後側コンベア62の前部62a上に直接載せ掛け得るようにしている。尚、その場合、投入装置1は図示しない揺動装置(伸縮シリンダ)で上方に跳ね上げておく。
【0041】
又、本願実施例の布類展張機(図1〜図11)において、従来例のもの(図12及び図13)と同符号を付しているものは、相互に同機能をするものであり、これらの装置類の構造、機能等の説明は、従来技術の項の説明を援用する。尚、受渡し装置4の吸着ボックス41内の空気は、吸引機(バキュームファン)42で吸引されて吸着ボックス41の前半部上面(多数の小孔が形成されている)に布類上辺部Sbを吸着させ得るようになっている。又、吸着ボックス41は、左右一対の伸縮シリンダ43,43で図2の実線図示位置と鎖線図示位置(符号41′の位置)との間で進退せしめられる。
【0042】
吸引装置3の吸引ボックス31内は、吸引機(バキュームファン)33によって下方に吸引される。この吸引ボックス31の前壁34の高さ(送込みローラ35までの高さ)は、この実施例では約130〜140cm程度である。
【0043】
吸引ボックス前壁34の前面には、該吸引ボックス前壁34に対して近接状態で上下スライド可能な遮蔽板71が設けられている。尚、この遮蔽板71の機能については後述する。この遮蔽板71は、横長で適宜高さ幅(例えば60cm程度)を有する横長の板部を有している。又、この遮蔽板71の左右各端部には、板部下面より下方に垂下する垂下部72,72が設けられている。
【0044】
この遮蔽板71は、左右一対の上下動装置7,7により、吸引ボックス前壁34の前面近接位置において上下動せしめ得るようになっている。各上下動装置7,7としては、それぞれ伸縮シリンダが採用されている。この遮蔽板71の上下動範囲(伸縮シリンダのストローク)は、該遮蔽板71の高さ幅(60cm程度)より僅かに小さい範囲(例えば55〜60cm弱)に設定されており、図2に鎖線図示するように上下動装置(伸縮シリンダ)7′が最伸長した状態でも遮蔽板71′の下端と吸気ボックス前壁34の上端とが僅かに重合するようになっている。
【0045】
送込みローラ35は、左右2本に分割したものを使用している。そして、この各送込みローラ35,35は、遮蔽板71の上部においてそれぞれ横長の取付台37,37を介して設置されている。この各送込みローラ35,35は、それぞれモータ36,36で回転せしめられる。又、各側の送込みローラ35,35と各側の取付台37,37と各側のモータ36,36とは、それぞれ一体的に結合されている。
【0046】
各取付台37,37は、その各突き合わせ側端部をそれぞれ遮蔽板71の上面中央位置において軸37aで枢着しているとともに、各取付台37,37の各外端側を傾動装置(伸縮シリンダ)8,8で支持している。傾動装置8,8となる各伸縮シリンダは、遮蔽板71の垂下部72の下端部と取付台37の外端部との間に介設されている。
【0047】
各取付台37,37の前面には、それぞれ下方に所定長さだけ垂下させたカバー39,39が取付けられている。このカバー39は、図5に示すように、送込みローラ35,35をそれぞれ傾動させたときに(取付台37が遮蔽板71の上面から離間する)、取付台37と遮蔽板71の上端部との間にできる隙間を遮蔽するものである。
【0048】
そして、左右の傾動装置(伸縮シリンダ)8,8が縮小状態にあるときには、図1に示すように、各送込みローラ35,35を水平姿勢に維持させている一方、各傾動装置8,8が伸長すると、図5に示すように各取付台37,37の外端側が軸37aを支点としてそれぞれ上方に傾動せしめられて、各送込みローラ35,35が緩やかなV形に変形する。この各送込みローラ35,35のV形傾動状態は、布団カバー(中央部に丸ぐり部を有する包布)を展張させる際に、該布団カバーの一部(下部側)が裏返し状態で吊下げられたものについて、該裏返し部分を自動で正常に戻すためのものである。尚、この種の送込みローラ傾動機構は、従来から周知であるので、詳しい説明は省略する。
【0049】
この実施例では、上下動装置(伸縮シリンダ)7,7が最縮小状態では、図1〜図3に示すように、遮蔽板71、各取付台37,37、各送込みローラ35,35、及び傾動装置8,8がそれぞれ下動位置にある。そして、図2及び図3に鎖線図示するように、各上下動装置7′が最伸長すると遮蔽板71′、各取付台37′、各送込みローラ35′(及び各傾動装置)が連結された状態で所定高さ位置まで上動するようになっている。
【0050】
ところで、従来の布類展張機では、布類を展張させる際に、両受取側チャック21,21で布類を吊上げた状態(両受取側チャックで布類の全重量を負担した状態)で布類上辺部Sbを緊張させるが、布類上辺部Sbの緊張完了時点で該各受取側チャック21,21に布類の全荷重が加わっていると、上記「発明が解決しようとする課題」の項で説明したように、布類の全荷重と布類上辺部Sbの展張時の衝撃(引っ張り力)とが同時に加わるため、各受取側チャック21,21に対してかなり大きな布類端部の離脱(抜け出し)作用力が働く(受取側チャック21,21で掴持していた布類角部Saが該受取側チャック21から外れることがある)。特に、布類がダブルベッド用の大サイズのものや布団包布のように生地が2枚重ねになっているものでは、布類自体の重量が重くなり(例えば3Kg程度)、各受取側チャック21,21に加わる下向きテンションが大きくなる。
【0051】
そこで、この実施例の布類展張機では、左右動装置22,22として、各受取側チャック21,21を布類上辺部Sbが緊張する手前の緩展張状態となる第1段離間状態(図1の間隔L1)と布類上辺部Sbが緊張する最終離間状態(図8、図10の間隔L2)との2段階に離間動作させるようにしたものを使用している一方、吸引ボックス31の上部開口32付近に布類吊上げ状態で布類下部側Scを載せ得る可動載置台装置5を設けている。
【0052】
各受取側チャック21,21を上記2段階(第1段離間状態と最終離間状態)に離間させる理由は、次の通りである。まず各受取側チャック21,21を第1段離間状態(図1の間隔L1)とするのは、布類上辺部Sbが緊張しない状態(各受取側チャック21′,21′で掴持している布類端部に緊張による離脱作用を受けない状態)で吸引ボックス31内への布類下部側Scの吸引を可能にする面積まで展張させるものであり、その後に最終離間状態(図8、図10の間隔L2)とするのは、布類上辺部Sbを緊張させた状態できれいに展張させる(図10のS7の状態)ことができるようにするためである。
【0053】
可動載置台装置5は、吸引ボックス31の上部開口(以下、吸気口ということがある)32付近を開閉し得る載置台51を駆動装置54,54により閉位置と開位置との間で変位させ得るようにしたものである。
【0054】
載置台51は、この実施例では、図3及び図4に拡大図示するように、軸棒52に載せ板53を取付けたもので、吸引ボックス31の吸気口32における吸引ボックス前壁34の上端(送込みローラ35の上端)から若干下がった位置(例えば20cm程度低い位置)において、吸引ボックス31の吸気口32のほぼ全幅(左右幅)に亘る長さ範囲に設置している。軸棒52の端部(この実施例では両端部)には、載せ板53を図3、図4に実線図示する開位置と鎖線図示(符号53′)する閉位置との間で変位させる駆動装置54を設けている。尚、この実施例では駆動装置54として、回転式ソレノイドやモータ等の回転式のものが使用されているが、伸縮シリンダも採用できる。又、この実施例では、載せ板53を上下に弧回動させるものを採用しているが、内外方向にスライド出没させるものを採用してもよい(この場合は、駆動装置54として伸縮シリンダを使用する)。
【0055】
載せ板53は、閉位置(図3、図4の符号53′の状態)で吸引ボックス31内の吸気が遮断されない通気性を有している。この実施例では、載せ板53の通気性付与構造として間欠的に多数の切欠部53a,53a・・を形成した櫛歯状のものを採用しているが、網目状や格子状のものを採用してもよい。
【0056】
尚、この実施例では、載置台51の載せ板53は、吸気ボックス31の吸気口32のほぼ全幅に亘る左右長さを有しているが、他の実施例では、該載せ板53を前記各受取側チャック21,21による布類吊上げ位置の中央付近における所定長さ範囲(例えば100〜150cm程度の長さ範囲)のみに設けてもよい。
【0057】
そして、この可動載置台装置5は、各駆動装置54,54(軸棒52でもよい)を遮蔽板71の上端寄り左右両端部に取付けて横向き姿勢に設置されており、後述するように上下動装置7,7により遮蔽板71とともに上下動するようになっている。
【0058】
この実施例の布類展張機は、次のように作動する。洗濯・乾燥済みの布類を展張させるには、図1及び図2に示すように、布類の一辺の両端角部Sa,Saを捜して、その両端角部Sa,Saを一対の投入側チャック11,11でそれぞれ保持させた後(図1、図2のS1)、スタートボタンを押すと、各投入側チャック11,11が布類両端角部Sa,Saを保持したまま上動し→各両端角部Sa,Saを左右展張装置2の各受取側チャック21,21に受け渡す(図1のS2の状態)。このときには、載置台51(載せ板53)が図2〜図4に鎖線図示(符号51′又は53′)する閉状態となっているが、載置台51が閉状態でも吸気口32部分が各切欠部53a,53a・・や載せ板先端と吸引ボックス後壁との隙間等から吸引ボックス31内に吸気される。
【0059】
次に、各受取側チャック21,21を左右動装置22,22により左右に離間させるが、第1段階では各チャック21,21を符号21′,21′で示すように布類上辺部Sbが完全に緊張する手前の緩展張状態まで離間させる(図1の間隔L1)。この第1段離間状態(符号S3で示す第1段展張状態)では、2つの受取側チャック21′,21′で布類の全重量又はほぼ全重量(布類の長さが長いものでは布類下部が床面に接触している場合もある)を支持しているものの、布類上辺部Sbが緊張されていないので、各チャック21′,21′に加わるテンションは布類荷重による下向きテンションのみである。又、この第1段展張状態では、布類下部側Scが吸引ボックス31内に吸引され得る面積まで展張されている。
【0060】
次に、送込みローラ35が送込み方向に高速回転(右回転)するとともに、切換ダンパ35が鎖線図示側(図6の実線図示側)に切換えられて吸引ボックス31内の空気が吸引される(吸気口32部分の空気が載せ板53の切欠部53a等から吸引される)と、図6に示すように布類下部側Scが送込みローラ35を越えて吸引ボックス31の吸気口32側に送り込まれる(符号S4)が、布類下部側Scは符号Sc′で示すように順次閉位置にある載置台51(載せ板53)上にジグザグに撓ませた状態で載せられる。尚、送込みローラ35は、布類下部側Scを載置台51上に送り込んだ後、停止する。
【0061】
続いて、図7に示すように、上下動装置(伸縮シリンダ)7,7が伸長して、布類下部側Scを載置台51上に載置したまま、遮蔽板71とともに載置台51が上動する。このとき、布類の上下中間部付近も載置台51上に載せられ、布類の全重量の約2/3程度が載置台51上に支持される。従って、2つの受取側チャック21,21で支持する布類の荷重が布類全重量の約1/3程度となっている。尚、上記のように載置台51の載せ板53を、布類吊上げ位置の中央付近の所定長さ範囲(100〜150cm程度)のみに設けたものでも、上記とほぼ同重量(布類全重量の約2/3程度)を支持できる。
【0062】
次に、載置台51が上動している状態で、図8に示すように各受取側チャック21,21が最終離間状態(間隔L2)まで離間し、布類上辺部Sbが緊張する。このとき各受取側チャック21,21間にテンションがかかるが、載置台51による布類の重量負担分だけ各受取側チャック21,21に受ける下向きテンションが小さくなっており、その分、各受取側チャック21,21に対する総合離脱作用力(抜け出し力)が軽減されることになる。従って、布類上辺部の展張時において、布類角部が受取側チャック掴持部分からはずれにくくなる(布類の展張作業が失敗しない)。
【0063】
次に、図8の状態から、載置台51が駆動装置54により開位置に変位され(図7の鎖線図示状態)、吸引ボックス31内が吸気されていることにより、載置台51上に載置されていた布類下部側Scが吸引ボックス31内の下方に吸引される。このとき上下動装置7,7が縮小して、図9に示すように可動載置台装置5、送込みローラ35等が元の低位置まで降下する。この状態では、図10に示すように、布類が符号S7のように左右及び上下にきれいに展張されている。
【0064】
その後、切換ダンパ38が図11に示す側に切換えられ、各受取側チャック21,21で保持されていた布類の上辺部が吸着ボックス41の先端側上面に吸着・保持され(図11の符号S8)、該吸着ボックス41が鎖線図示(符号41′)するように後退し、そのとき布類上辺部が前側コンベア(バキュームコンベア)61上に移乗されて(符号S9の状態)、展張状態のままで前側コンベア61及び後側コンベア62を経てプレス機側に供給される。
【0065】
このように、本願実施例の布類展張機では、布類を吊上げ状態で展張させるのに、第1段階として布類を図1の符号S3で示す緩展張状態とし、次に図7に示すように布類下部側Scを載置台51上に載せ、その状態で図8に示すように各受取側チャック21,21を最終離間状態まで離間させるようにしているので、布類上辺部Sbを最終展張させる際(図8)に各受取側チャック21,21による布類の重量負担が軽減される。従って、受取側チャック21,21による布類掴持部分の離脱作用力が小さくなって、布類展張作業が失敗しにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本願実施例の布類展張機の正面図である。
【図2】図1のII−II矢視図である。
【図3】図2の一部拡大断面図である。
【図4】図3のIV−IV矢視図である。
【図5】図1の状態変化図(送込みローラの傾動状態図)である。
【図6】図1からの状態変化図である。
【図7】図6からの状態変化図である。
【図8】図1の布類展張機における布類上辺部の最終展張状態の正面図である。
【図9】図7からの状態変化図である。
【図10】図1の布類展張機における布類全体の最終展張状態の正面図である。
【図11】図9からの状態変化図である。
【図12】従来の布類展張機の正面図である。
【図13】図12のXIII−XIII矢視図である。
【符号の説明】
【0067】
1は投入装置、2は左右展張装置、3は吸引装置、4は受渡し装置、5は可動載置台装置、6は搬送装置、7は上下動装置、11は投入側チャック、21は受取側チャック、22は左右動装置、31は吸引ボックス、32は上部開口(吸気口)、33はバキュームファン、35は送込みローラ、51は載置台、53は載せ板、54は駆動装置、Sは布類、Saは布類角部、Sbは布類上辺部、Scは布類下部側である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シーツや布団包布のような大面積の布類(S)の一辺の両端角部(Sa,Sa)を所定高位置においてそれぞれチャック(21,21)で掴持した状態で、該各チャック(21,21)を左右動装置(22,22)で左右に離間させることにより布類上辺部(Sb)を左右に展張させる一方、吊上げ状態の布類の下部側(Sc)を布類吊上げ位置の下方に設置した吸引ボックス(31)内に吸引させることにより、布類(S)を吊上げ状態で方形状に展張させるようにした布類展張機であって、
前記左右動装置(22,22)は、前記各チャック(21,21)を、前記布類上辺部(Sb)が完全に緊張する手前の緩展張状態となる第1段離間状態と前記布類上辺部(Sb)が緊張する最終離間状態との2段階に離間動作させるようにしている一方、
前記吸引ボックス(31)の上部開口(32)付近に、布類吊上げ状態で布類下部側(Sc)を載せ得る載置台(51)を、布類下部側(Sc)が吸引ボックス(31)内に垂れ下がるのを阻止する閉位置と布類下部側(Sc)が吸引ボックス(31)内に垂れ下がるのを許容する開位置との間で変位させ得るようにした可動載置台装置(5)を設けているとともに、
前記載置台(51)は、前記閉位置において吸引ボックス(31)内の吸気が遮断されない通気性を有したものを使用している、
ことを特徴とする布類展張機。
【請求項2】
請求項1において、可動載置台装置(5)を吸引ボックス(31)の上部開口(32)付近から所定高さ範囲で上下動させる上下動装置(7)を備えていることを特徴とする布類展張機。
【請求項3】
シーツや布団包布のような大面積の布類(S)の一辺の両端角部(Sa,Sa)を所定高位置においてそれぞれチャック(21,21)で掴持した状態で、該各チャック(21,21)を左右に離間させることにより布類上辺部(Sb)を左右に展張させる一方、吊上げ状態の布類の下部側(Sc)を布類吊上げ位置の下方に設置した吸引ボックス(31)内に吸引させることにより、布類(S)を吊上げ状態で方形状に展張させるようにした布類展張方法であって、
各チャック(21,21)で吊上げた布類を展張させる際に、各チャック(21,21)を布類上辺部(Sb)が完全に緊張する手前の緩展張状態まで離間させ、その緩展張状態で布類下部側(Sc)の重量を吸引ボックス(31)の上部開口(32)付近で支持し、該布類下部側(Sc)の重量を支持した状態で各チャック(21,21)を布類上辺部(Sb)が緊張するまで離間させ、その後に布類下部側(Sc)の重量支持を解除して、該布類下部側(Sc)を吸引ボックス(31)内に吸引させるようにする、
ことを特徴とする布類展張方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2009−68117(P2009−68117A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−234376(P2007−234376)
【出願日】平成19年9月10日(2007.9.10)
【出願人】(502407130)株式会社プレックス (75)
【Fターム(参考)】