説明

希ガス放電灯

【課題】 簡便な方式で外部電極型希ガス放電灯の給電線を接続することができるとともに、接続の面積が大きくて電気的抵抗が少なくかつ引っ張り強度が大きくて信頼性が高い希ガス放電灯を提供すること。
【解決手段】 本発明に係る希ガス放電灯10は、発光管11の内部に希ガスが封入され、該発光管11の外表面に互いに離間し、管軸方向に沿って一対の外部電極12が配設されるとともに、当該外部電極12に給電線13が接続され、前記給電線13は複数の金属素線から構成された芯線が絶縁材により被覆されて構成されてなり、前記芯線をプレスして板状の圧潰部13Aを形成し、当該圧潰部13Aを前記外部電極12に電気的に接続したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コピーやスキャナーなどのOA読み取り用、或いは、一般照明、広告、看板のバックライト用照明などに使用される希ガス放電灯に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆる外部電極方式の放電灯は、発光管の外表面上に一対の略帯状の外部電極を発光管の軸方向に形成し、発光管内周面上に蛍光体層を形成するとともに希ガスを封入して構成したものである。例えば特許文献1,2には希ガス放電灯が開示されている。
【0003】
図4,図5を参照して従来技術に係る希ガス放電灯の電極と端子の接続部構造を説明する。
(1)図4は第一の従来技術に係る希ガス放電灯の斜視図である。
この希ガス放電灯40においては、外部電極42,42間に、例えば30kHz、ピーク電圧で、およそ1600Vというような高周波、高電圧を印加すると、発光管11の内部に誘電体バリア放電が発生する。その際、発光管内に封入されているキセノンが励起されて波長172nmの紫外線を発生し、その紫外線が発光管内部に形成された蛍光体膜を励起して可視光に変換され、電極42,42の間の開口部から外部に取り出される。
【0004】
外部電極42は例えばアルミニウム製の帯状箔よりなる。給電線43は、金属よりなる素線が複数束となって絶縁性材料で被覆されて構成されたものである。給電線43端部において絶縁被覆部432から露出した素線露出部431の端部Mには、板状の端子44が半田などで電気的に接続される。この端子44を外部電極42に導電性接着剤45などで接着し、給電線43と外部電極42とを接続している。
【0005】
このような第一の従来技術においては、端子を銅で構成しているが、高電圧を印加するものであり、また異種金属を接触させているため、イオン化傾向の高低から、端子44が酸化し易く、電気的に接合不良が発生することがある。このような問題を回避するには、端子44表面にメッキ層を形成して保護することが考えられるが、製造工数が増え、生産コストも大きくなる。
【0006】
(2)図5は第二の従来技術に係る(a)給電線取り付け構造を説明する斜視図、(b)(a)において線分B−Bで切断した様子を説明する矢視断面図である。なお、先に図4で説明した構成と同じ構成については同符号で示して詳細説明を省略する。なお、図5において符号46は蛍光体膜である。
この例は、端子を使用せずに給電線43において絶縁被覆部432から外部に露出した素線露出部431を導電性接着剤45等で外部電極42に接続したものである。
この場合、端子(44)を接続する手間がかからず、また端子を使用しないため、第一の従来技術と比較して耐酸化性が良好であると考えられる。しかしながら、図5(b)で示すように金属素線と外部電極との接触面積が極めて小さく、高電圧を印加した際、給電線と外部電極との接続部で放電が集中することがある。局所的に放電が発生することで発光管温度が上がってガラスの絶縁性が低くなり、更にその部分で放電が集中する、という悪循環を招く。この結果、放電灯の長さ方向で均一な発光状態が得られなくなり、更に局所的な放電が大きくなるとガラス管が割れるという事態に至る。
【0007】
【特許文献1】特開2005−327560号公報
【特許文献2】特開2007−324034号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近時、この外部電極型の希ガス放電灯は、水銀を使用しないため、立ち上がりが速く、寒冷地での使用にも適することから、一般照明用にも用途が拡大している。この結果、用途が様々であることから管の寸法も様々なものが要求され、なかには細径化し、発光管の外径がφ6mm、電極幅が1mm以下という、非常に小型のものが開発されている。このように、電極幅が1mm以下のようになると、通常使用される給電線もまた太さ1mm程度であり、端子を用いたとしても、十分な接着面積を稼ぐことができず、安定的な接続が困難になる。また端子も極めて小さいものを用いることになるため、接続作業が煩雑で、量産性に乏しいという問題がある。
【0009】
そこで本発明は、簡便な方式で希ガス放電灯の外部電極型に給電線を接続することができて量産性に富み、接触面積が大きくて電気的抵抗が少なくかつ機械的強度を備えた信頼性の高い希ガス放電灯を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明に係る希ガス放電灯は、発光管の内部に希ガスが封入され、該発光管の外表面に互いに離間し、管軸方向に沿って一対の外部電極が配設されるとともに、当該外部電極に給電線が接続された希ガス放電灯において、
前記給電線は複数の金属素線から構成された芯線が絶縁材により被覆されて構成されてなり、
前記芯線をプレスして板状の圧潰部を形成し、当該圧潰部を前記外部電極に電気的に接続したことを特徴とする。
また、前記金属素線はニッケルメッキされた銅からなるのがよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、給電線と外部電極とを簡単に接続することができるとともに、接続部の面積が大きくて信頼性が高く、量産性に富んだ希ガス放電灯を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本願の実施形態を図1〜図3を参照しながら説明する。
図1は本発明に係る(a)希ガス放電灯の斜視図、(b)はこの希ガス放電灯をその中央部近傍においてランプの管軸に対し垂直方向に切断した断面図である。図2は給電線の加工作業工程を示す説明図、図3は(a)給電線と外部電極との接続部近傍を拡大して示す管軸方向断面図、(b)管軸に対し垂直方向に切断した断面図である。
希ガス放電灯10の発光管11は透光性の誘電体であるガラス管よりなり、その内部に内表面の全周に亘って蛍光体が塗布されて蛍光体層15が形成されるとともに、主なVUV発光元素としてキセノンガスを含む希ガスが封入されてガラス管の両端部において気密に封止されて構成されている。
【0013】
そして、発光管11の外表面上に一対の導電性の外部電極12,12が互いに離間して軸方向に配設されることにより、希ガス放電灯10が構成されている。発光管11の材質としてはソーダ石灰ガラス、アルミノ珪酸ガラス、硼珪酸ガラス、バリウムガラスなどを挙げることができる。外部電極12,12は材質としては導電性のものであれば特に制限されるものではなく、具体的には、金、銀、ニッケル、カーボン、金パラジウム、銀パラジウム、白金を、好適に用いることができ、発光管11の外表面にテープ状金属を貼付したり、前記金属と低融点ガラスを混合した導電性ペーストをスクリーン印刷して焼成したりすることにより実現する。
【0014】
発光管11の片方の端部11Aにおいては外部電極12,12に電力を供給するための給電線13,13が例えば導電性ペースト14などの接続手段によって電気的に接続されている。
【0015】
給電線13は、具体的には複数の金属素線(細線)が、シリコーンなどの電気絶縁性を有する被覆材で被覆されて構成されたものからなる。給電線13における外部電極12の接続側端部には、被覆材から露出した素線の束が圧潰されることにより、金属が塑性変形して形成された圧潰部13Aが形成されている。
【0016】
図2は、この接続側端部における給電線を拡大して説明する図である。まず図2(a)に示すように被覆を剥がして素線を12〜30mm露出させる。給電線13の素線は、線径が0.5〜1.0mmであり、給電線には例えば5〜20本が束になって入っている。材質としては、例えばニッケルメッキされた銅からなり、メッキなどの処理がされていない銅に比較して耐食性が格段に高いものである。なお、銅は金属のなかでも易変形材料であり、プレス加工により容易に変形して、素線同士を一体化することができる。
この束状の芯線131を図2(a)のようにプレス型でプレスし、図2(b)(c)で示すような圧潰部13Aを形成する。圧潰部13Aは短手方向長さaが1〜5mmであり、長手方向長さbが3〜20mmである。また厚さtは0.1〜0.25mmである。なお同図において符号131aは、圧潰されずに素線が当初の束の形状のまま残った芯線である。
【0017】
このように、給電線13の芯線131をプレス加工で圧潰して、平板状の圧潰部13Aを形成したのち、図1、図3で示すように圧潰部13Aにおける幅広の面に導電性ペースト14を塗布して外部電極12上に接続し、給電線が接続された希ガス放電灯10が完成する。
【0018】
このように本願発明によれば、給電線の素線露出部を圧潰して板状に加工し、端子として使用することにより、給電線に別部材からなる板状の端子を接続する必要が無く工数を減らすことができ、量産性に富んだ希ガス放電灯とすることができるとともに、給電線の素線の束をそのまま接続する場合と比較して、外部電極に対する接触部の面積が格段に大きくなり、放電が集中することを回避することができる。この結果、給電線と外部電極との接続部近傍が過熱状態に至ることを回避でき、ガラスの絶縁性が著しく低下して放電が更に集中し、ランプの点灯不良が発生したり、放電の衝撃でガラスにクラックが入ったりすることも防止できる。
【0019】
また、端子に別部材を用いたときは、両部材間で接続不良が発生するおそれがあったが、本発明によれば給電線と端子とが一体に成形された構造であるため、電気的ロスの発生を防止することができる。
更には、給電線の素線はそもそも耐食性が良好な材質、例えばニッケルメッキされた銅からなるので、異種金属に接続されても酸化が発生しにくいものであり、絶縁不良になるおそれがない。
【0020】
≪実施例1≫
ここで、本願発明にかかる希ガス放電灯の構成について具体的数値例及び材質について説明する。
1.希ガス放電灯
発光管:外径φ6mm、肉厚0.3mm、材質バリウムガラス。
発光管全長:100mm
外部電極幅:0.2mm
外部電極材質:アルミニウム箔、電極膜厚3μm
ここで、外部電極は、基本的に帯状であるが、帯状の意味は、外部電極膜厚に対して、外部電極幅が、1桁以上長い膜を形成している形態について言う。また、帯の模様や形状についても様々な形態が取れるが、発光管外表面の基本的に軸方向に沿った導電膜を形成している形状についても帯状として表現する。
蛍光体:青色蛍光体;BaMgAl1017:Eu
緑色蛍光体;LaPO:Ce,Tb
赤色蛍光体;(Y,Gd)BO:Eu
蛍光体の色度調整:(x,y)=(0.31,0.35)付近を基本とするが、用途により蛍光体で再現できる範囲で蛍光体の配合比を変えることで自在に変えることができる。
蛍光体平均膜厚:10〜20μm
封入ガス圧:4×10〜40×10Pa
外部電極と給電線との接続においては、銀ペーストによって接着し、その外周に熱収縮チューブを配置して加熱することで圧縮、押圧して固定するか、半田付けなどで直接接合することができる。
2.給電線
外部被覆部:材質 シリコーン
素線:材質:銅(表面ニッケルメッキ済み)、線径0.2mm、
素線13本が合わさり、芯線が構成され、被覆材に埋設されている。芯線の外径は約0.8mmであり、被覆部の外径は約1.8mm。
被覆部をはがして、芯線を約12mm露出させ、約350MPaの圧力でプレス加工した。
この結果、短手方向長さ2.5mm、長手方向長さ8mm、厚さ0.17mmの板状の圧潰部が成形された。
【0021】
給電線の端部に形成された板状圧潰部の幅広面に銀ペーストからなる導電性接着剤を塗布して外部電極上に接続して図1に示すような給電線が接続された希ガス放電灯を多数製作した。
【0022】
≪比較例1≫
上記給電線の素線露出部に圧潰部を形成しないで当初の束の形状のまま用いたことを除いて、上記実施例1と同様に、給電線が接続された放電灯を多数作製した。
【0023】
実施例1に係る希ガス放電灯と比較例1に係る希ガス放電灯について、給電線の引っ張り強度を測定した。ここで「給電線の引っ張り強度」とは、給電線を引っ張ったときに、給電線接合部の破損、電極の変形などによって、破断に至った時の最大張力である。本実験例においては、給電線に荷重測定器を取り付けて給電線を管軸と平行な方向に引っ張って測定した。なお試験数はそれぞれ10本である。
この結果、比較例1に係る希ガス放電灯においては平均の引っ張り強度は約5Nであった。実施例1に係る、リード線をプレスした後、電極に接続したランプでは、最小50N,最大100Nであり、約10倍以上の強度を得ることができることが確認できた。
給電線の引っ張り強度が小さいと、ランプ製作中及びその後の取り回し段階で給電線が外れることがあり、歩留りが悪く量産性に乏しくなる。
本実験例からも明らかなように、本実施例に係る希ガス放電灯によれば、比較例に係る希ガス放電灯よりも引っ張り強度が大きく、不具合を生じにくく、歩留りの良好な希ガス放電灯となる。
【0024】
このように本発明によれば、簡単な構成でありながら、給電線と外部電極との良好な接続状態を得ることができ、量産性に富んだ希ガス放電灯を製造することができる。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく種々の変更を加えることができる。例えば、上記実施形態では電極幅が1mm以下希ガス放電灯の例で説明したが、電極幅が1mmを超えるようなものでも本願発明を適用できることは言うまでも無い。また、発光管の周囲に絶縁性のシートやチューブを用いない例で説明したが、適宜、絶縁性材料で発光管全部を被覆してもよいし、光に対してガラスや樹脂などからなる外管の内部に希ガス放電灯を収容し、前記特許文献2記載の技術のように二重管構造の放電灯として使用することも可能である。
無論、給電線の構成においても上述の内容に限定されることなく、ランプへの印加電圧を勘案し、適宜の寸法及び材質ものを用いればよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態を説明する(a)希ガス放電灯の斜視図、(b)はこの希ガス放電灯をその中央部近傍においてランプの管軸に対し垂直方向に切断した断面図である。
【図2】本発明の実施形態を説明する給電線の加工作業工程を示す説明図である。
【図3】本発明の実施形態を説明する(a)給電線と外部電極との接続部近傍を拡大して示す管軸方向断面図、(b)管軸に対し垂直方向に切断した断面図である。本実施形態に係る二重管型希ガス放電灯の斜視図である。
【図4】第一の従来技術に係る希ガス放電灯の斜視図である。
【図5】第二の従来技術に係る(a)給電線取り付け構造を説明する斜視図、(b)(a)において線分B−Bで切断した様子を説明する矢視断面図である。
【符号の説明】
【0026】
10 希ガス放電灯
11 発光管
12 外部電極
13 給電線
131 芯線
132 絶縁被覆部
13A 圧潰部
131a 芯線
14 導電性接着剤
15 蛍光体層
20 プレス型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光管の内部に希ガスが封入され、該発光管の外表面に互いに離間し、管軸方向に沿って一対の外部電極が配設されるとともに、当該外部電極に給電線が接続された希ガス放電灯において、
前記給電線は複数の金属素線から構成された芯線が絶縁材により被覆されて構成されてなり、
前記芯線をプレスして板状の圧潰部を形成し、当該圧潰部を前記外部電極に電気的に接続した
ことを特徴とする希ガス放電灯。
【請求項2】
前記金属素線はニッケルメッキされた銅からなることを特徴とする請求項1記載の希ガス放電灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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