説明

希ガス蛍光ランプ点灯装置

【課題】希ガス蛍光ランプを周波数変調することで、広い範囲での調光を可能にする。
【解決手段】希ガス蛍光ランプの点灯周波数を90KHz以上に設定する。これにより、希ガス蛍光ランプの放電は安定し、点灯周波数に比例した光量を得ることができる。点灯周波数を希ガス蛍光ランプの光量に基づいてフィードバック制御することで、光量を常に一定に維持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、スキャナー等の読み取り用光源の点灯装置として好適な希ガス蛍光ランプ点灯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外部電極希ガス蛍光ランプは、環境負荷の高い水銀を使用していない点、周囲温度による光量変化が少ない点、発熱が少ない点、蛍光体を選択することにより発光色をかえることが出来る点等の特徴により、複写機、スキャナー等の読み取り用光源として広く利用している。
【0003】
原稿照明用光源に適した希ガス蛍光ランプとして、例えば、特許文献1に記載のものがある。
【0004】
外部電極希ガス蛍光ランプの点灯電圧波形として、大きく分けて2種類の電圧波形を利用している。一つは、発光効率は低いが点灯回路が比較的安価な正弦波形であリ、他の一つは発光効率が高いが点灯回路が比較的高価なパルス波形である。
【0005】
正弦波電圧点灯では1次側の電源電圧を変えることで、光量は100〜90%程度変化する。一方、パルス点灯では周波数を可変することで、光量は100〜80%程度変化する。
【特許文献1】特開2001−283783号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、正弦波電圧点灯及びパルス点灯のいずれの場合でも、光量の可変範囲は狭く不十分であり、規定光量に対する微調整が可能なのみである。即ち、正弦波電圧点灯を採用した場合には、1次側電源電圧を調整することで規定光量を得、パルス転送を採用した場合には周波数を例えば40Hz〜80Hzで可変することで規定光量を得る。一旦このような光量の微調整を行った後には、通常、希ガス蛍光ランプは調光を行うことなく、一定光量で使用するようになっている。
【0007】
ところが、希ガス点灯ランプは数分程度の連続点灯を行うと、時間と共に10%弱の光量減少が生じる場合がある。この間、読み取り用原稿面の光量は変動し、読み取りに際してむらが生じてしまう。
【0008】
本発明は変調周波数を適宜設定することにより十分な調光範囲を得ると共に、点灯後直後から長時間の連続点灯時でも規定光量を維持することができる希ガス蛍光ランプ点灯装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る希ガス蛍光ランプ点灯装置は、希ガスを封入したバルブ内面に蛍光体を塗布し、バルブ外面と一対の電極を設けた希ガス蛍光ランプの電極に対して、点灯電圧を供給する出力部と、前記出力部からの前記点灯電圧の周波数を変化させて、前記希ガス蛍光ランプを周波数変調する周波数制御手段とを具備したことを特徴とする。
【0010】
本発明において、出力部は、希ガス蛍光ランプの電極に対して、点灯電圧を供給する。希ガス蛍光ランプはこの点灯電圧によって駆動されて発光する。周波数制御手段は、例えば、80KHz以上の周波数で出力部からの点灯電圧の周波数を変化させて、希ガス蛍光ランプを周波数変調する。これにより、広い調光範囲での調光を行う。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、変調周波数を適宜設定することにより十分な調光範囲を得ると共に、点灯後直後から長時間に亘り規定光量を維持することができるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。図1は本発明の第1の実施の形態に係る希ガス蛍光ランプ点灯装置を示す回路図である。また、図2は外部電極を有する希ガス蛍光ランプを一部切断して示す断面図である。
【0013】
本実施の形態においては、図1の負荷3として希ガス蛍光ランプを採用する。先ず、図2を参照して外部電極を有する希ガス蛍光ランプの構造について説明する。
【0014】
外部電極希ガス蛍光ランプ10は、希ガス12が封入された透明硝子バルブ11によって構成している。例えば、透明硝子バルブ11としては、外径が8mmで管長が380mmのものを用いることができる。希ガス12としては、例えばキセノンガスやキセノン及びアルゴンの混合ガス等を用いる。例えば、xe:Ne=70%:30%で、ガス圧力が80Torrの希ガスを用いることができる。
【0015】
透明硝子バルブ11の内面には蛍光体13を塗布し、外面には一対の平行電極14を設ける。なお、硝子バルブ11は、蛍光体13が設けられていない開口部15を有し、一対の外部電極14は開口部15を避けて、ランプ軸に沿って平行に設けている。この外部電極の幅は例えば8mmである。透明硝子バルブ11は、透明絶縁膜(チューブ)16で被覆している。
【0016】
なお、本実施の形態において採用する希ガス蛍光ランプとしては、電極がバルブ外部に設けられたものだけでなく、電極が内部に設けられたものや電極が外部と内部とに設けられたものを採用することも可能である。
【0017】
外部電極14間に電圧を印加することによって、透明硝子バルブ11に封入された希ガス2が放電し、希ガス2から紫外線が発生する。この紫外線によって蛍光体3が励起されて、可視光が取り出されるようになっている。
【0018】
ところで、このような希ガス蛍光ランプ11は、従来、30〜60KHz程度の周波数で点灯していた。図3は希ガス蛍光ランプの駆動周波数が40KHzの場合における希ガス蛍光ランプの電極のランプ電流及び電圧波形を示す波形図である。
【0019】
図3に示すように、ランプ電流及び電圧波形のいずれも、点灯回路の2次巻線に発生させる正弦波波形に対して、歪んだ波形となっている。
【0020】
点灯回路からの正弦波電圧が外部電極14間に印加されると、硝子内面間の電圧が上昇する。この電圧が封入ガスの絶縁破壊電圧に達すると、放電電流が一瞬流れる。この理由から、ランプ全体に流れる電流波形は、ランプの電極間をチャージする正弦波電流に放電電流が重畳されて歪んだ電流波形となるのである。
【0021】
このように点灯周波数が従来の30〜60kHzの範囲では、ランプ電流が図3のように歪んだ波形となることから、周波数を僅かに変えても電流波形が大きく変動し、放電ちらつきが発生してしまう。
【0022】
この理由から、上述したように、従来、周波数を変化させることによる出力光量の制御は行われていない。出力光量を変化させようとする場合には、従来、点灯回路の一次側の直流電圧を変えて、二次側電圧(印加電圧)を制御している。しかし、一次側電圧を大きく変化させると、ランプのちらつきや立ち消え等が発生しやすく、光量制御範囲は100〜90%程度であり、規定光量を得るための微調整としての役割しか有しない。
【0023】
これに対し、本実施の形態においては、点灯周波数を80KHz以上、例えば90KHz以上に設定している。点灯周波数としてこのような周波数範囲を選択すると共に、点灯周波数を変化させることで、本実施の形態においては、光量を十分に広い範囲で可変にした調光を実現している。
【0024】
図4は希ガス蛍光ランプの駆動周波数が90KHzの場合における希ガス蛍光ランプのランプ電流及び電圧波形を示す波形図である。
【0025】
図4に示すように、点灯周波数が90KHz以上の場合には、ランプ電流及び電圧波形のいずれも、略正弦波波形となる。更に、90KHz以上の周波数で点灯周波数を変化させた場合でも、ランプ電流及び電圧波形に歪は発生せず、電流値の変化は連続的となる。
【0026】
図1において、周波数制御回路2は、このような90KHz以上の周波数のスイッチング信号を発生する。周波数制御回路2からのスイッチング信号はプッシュプル構成のスイッチングトランジスタQ1,Q2のベースに印加する。トランジスタQ1のコレクタは出力部を構成する昇圧トランスTの1次巻線T1の一端に接続し、エミッタは、直流電源1の負極性端子に接続する。直流電源1の正極性端子は、ノイズ除去用のコイルLを介して1次巻線T1の中点に接続する。
【0027】
トランジスタQ2のコレクタは昇圧トランスTの1次巻線T1の他端に接続し、エミッタは直流電源1の負極性端子に接続する。1次巻線T1の両端にはコンデンサCpを接続する。トランスTの2次巻線T2の両端には、負荷3としての希ガス蛍光ランプを接続している。
【0028】
トランジスタQ1のオン期間に、直流電源1、コイルL、1次巻線T1の中点、1次巻線T1の一端及びトランジスタQ1に流れる電流によって、2次巻線T2に電圧が発生する。トランジスタQ2のオン期間には、直流電源1、コイルL、1次巻線T1の中点、1次巻線T1の他端及びトランジスタQ2に電流が流れて、トランジスタQ1のオン期間とは逆向きに2次電圧が発生する。
【0029】
周波数制御回路2はトランジスタQ1,Q2を交互にオン,オフさせて、2次巻線T2に周波数が90KHz以上の出力を発生させるようになっている。
【0030】
負荷3である希ガス蛍光ランプに対向する所定位置には、希ガス蛍光ランプの光量を求めるための光量センサ4を配置している。光量センサ4は希ガス蛍光ランプの光量に応じたフィードバック信号を周波数制御回路2に出力するようになっている。
【0031】
周波数制御回路2は、フィードバック信号が所定レベルの信号となるように、トランジスタQ1,Q2に与えるスイッチング信号の周波数を変化させるようになっている。
【0032】
次に、このように構成された実施の形態の動作について図5及び図6を参照して説明する。図5は横軸に点灯周波数をとり縦軸にランプ電流をとって、2次巻線T2の出力周波数(点灯周波数)とランプ電流との関係を示すグラフである。また、図6は横軸に点灯周波数をとり縦軸に光量をとって、点灯周波数と希ガス蛍光ランプの光量及び効率との関係を示すグラフである。
【0033】
周波数制御回路2は、例えば90KHz以上の周波数のスイッチング信号をトランジスタQ1,Q2に出力する。トランジスタQ1,Q2は、スイッチング信号に応じてオン,オフして、1次巻線T1に電流を流す。これにより、2次巻線T2に、スイッチング信号の周波数に応じた周波数の出力が発生する。この出力を負荷3である希ガス蛍光ランプの外部電極14に印加する。
【0034】
図5は希ガス蛍光ランプに供給される電圧の周波数(点灯周波数)とランプ電流との関係を示している。図5に示すように、点灯周波数が高くなるにつれて、ランプ電流は連続的に変化して値が次第に増大している。図5の例では、点灯周波数を80KHzから185KHzまで変化させた場合のランプ電流変化を示している。
【0035】
図4に示すように、点灯周波数を90kHz以上に設定した場合には、電流波形は略正弦波波形となる。また、希ガス蛍光ランプは、略容量負荷であることから、ランプ電流は、図5に示すように、周波数に略比例して増加することになる。
【0036】
希ガス蛍光ランプは、ランプ電流に比例して光量が変化する。即ち、希ガス蛍光ランプの光量は、点灯周波数、つまり、周波数制御回路2のスイッチング周波数に比例して変化することになる。
【0037】
図6は実線にて点灯周波数と光量との関係を示し、破線にて点灯周波数と効率との関係を示している。図6に示すように、点灯周波数を高くすると効率が低下するものの、光量は周波数が高くなるにつれて増大しており、点灯周波数に対して光量が線形に変化していることが分かる。こうして、周波数制御回路2のスイッチング周波数を高く又は低くすることにより、希ガス蛍光ランプの光量を高く又は低くすることができる。
【0038】
更に、本実施の形態においては、フィードバック制御によって、希ガス蛍光ランプの光量を常に所定の規定光量に維持させるようになっている。即ち、光量センサ4は、負荷3である希ガス蛍光ランプの光量を検出する。光量センサ4からの光量の検出結果はフィードバック信号として、周波数制御回路2に与える。周波数制御回路2は、フィードバック信号が所定レベルとなるように、スイッチング周波数を変化させる。
【0039】
例えば、電源投入直後においては、希ガス蛍光ランプは、光量が規定光量よりも低い。この場合には、周波数制御回路2は光量センサ4による光量の検出結果から、光量を規定光量まで上昇させるように、スイッチング周波数を高くする。そうすると、2次巻線T2の出力周波数が高くなり、希ガス蛍光ランプの光量が規定光量まで上昇する。
【0040】
電源投入から十分な時間が経過すると、希ガス蛍光ランプの出力が高くなろうとする。そうすると、周波数制御回路2は、光量センサ4の検出結果に基づいて、スイッチング周波数を低くする。そうすると、2次巻線T2の出力周波数が低くなり、希ガス蛍光ランプの光量が高くなることを防止して、規定光量を維持させる。
【0041】
なお、希ガス蛍光ランプの光量を既定値に固定する必要がない場合には、光量センサ4の出力に基づいてスイッチング周波数を変化させるフィードバックループは省略することができる。この場合でも、スイッチング周波数を80KHz以上で変化させることによって、希ガス蛍光ランプの調光が可能である。
【0042】
このように本実施の形態においては、希ガス蛍光ランプの点灯周波数として80KHz以上の点灯周波数を設定すると共に、点灯周波数を変化(周波数変調)させることで、十分な光量範囲での調光を実現している。更に、希ガス蛍光ランプの出力光量を検出して、点灯周波数のフィードバック制御しており、希ガス蛍光ランプの光量を常時規定光量に維持することができる。
【0043】
例えば、本実施の形態を原稿読み取り装置の光源を点灯させるための点灯装置に適用した場合には、電源投入直後から、長時間に亘り確実に規定光量に維持することができ、安定した原稿読み取りを実現することができる。
【0044】
図7は本発明の第2の実施の形態を示す回路図である。図7において図1と同一の構成要素には同一符号を付して説明を省略する。本実施の形態は周波数変調による制御ではなく、PWM変調による光量制御を実現した例である。
【0045】
本実施の形態は周波数制御回路2に代えてPWM制御回路22を採用した点が第1の実施の形態と異なる。PWM制御回路22は、90KHz以上の周波数、例えば100〜120KHzのPWM信号を発生する。PWM制御回路22からのPWM信号はプッシュプル構成のスイッチングトランジスタQ1,Q2のベースに印加する。
【0046】
図8はPWM信号を示す波形図である。PWM制御回路22はトランジスタQ1,Q2を交互にオン,オフさせて、2次巻線T2に周波数が90KHz以上の出力を発生させるようになっている。
【0047】
また、PWM制御回路22は、光量センサ4からのフィードバック信号が所定の信号レベルとなるように、トランジスタQ1,Q2に与えるPWM信号のデューティ比を変化させるようになっている。
【0048】
このように構成された実施の形態においては、例えば90KHz以上の周波数を含む所定デューティ比のPWM信号をトランジスタQ1,Q2に供給する。2次巻線T2に接続された希ガス蛍光ランプは、点灯周波数が90kHz以上で正弦波点灯する。こうして、本実施の形態においても、ランプ電流波形は正弦波波形になる。
【0049】
光量センサ4は、希ガス蛍光ランプの光量を検出して、検出結果に基づくフィードバック信号をPWM制御回路22に出力する。PWM制御回路22は、フィードバック信号として所定レベルの信号が得られるように、PWM信号のデューティ比を変更する。こうして、希ガス蛍光ランプの光量を既定値に維持する。
【0050】
このように本実施の形態においても、点灯周波数を90KHz以上にして、希ガス蛍光ランプを正弦波点灯させている。これにより、本実施の形態においては、PWM調光を行っても放電が不安定となることはなく、調光を実現することができる。
【0051】
なお、PWM調光のサイクルとしては、5〜30kHz範囲が適当である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る希ガス蛍光ランプ点灯装置を示す回路図。
【図2】外部電極を有する希ガス蛍光ランプを一部切断して示す断面図。
【図3】希ガス蛍光ランプの駆動周波数が40KHzの場合における希ガス蛍光ランプのランプ電流及び電圧波形を示す波形図。
【図4】希ガス蛍光ランプの駆動周波数が90KHzの場合における希ガス蛍光ランプのランプ電流及び電圧波形を示す波形図。
【図5】横軸に点灯周波数をとり縦軸にランプ電流をとって、2次巻線T2の出力周波数(点灯周波数)とランプ電流との関係を示すグラフ。
【図6】横軸に点灯周波数をとり縦軸に光量をとって、点灯周波数と希ガス蛍光ランプの光量との関係を示すグラフ。
【図7】本発明の第2の実施の形態を示す回路図。
【図8】PWM信号を示す波形図。
【符号の説明】
【0053】
1…直流電源、2…周波数制御回路、3…負荷、4…光量センサ、Q1,Q2…トランジスタ、T…昇圧トランス。
代理人 弁理士 伊 藤 進

【特許請求の範囲】
【請求項1】
希ガスを封入したバルブ内面に蛍光体を塗布し、バルブ外面と一対の電極を設けた希ガス蛍光ランプの電極に対して、点灯電圧を供給する出力部と、
前記出力部からの前記点灯電圧の周波数を変化させて、前記希ガス蛍光ランプを周波数変調する周波数制御手段とを具備したことを特徴とする希ガス蛍光ランプ点灯装置。
【請求項2】
前記出力部は、前記点灯電圧として正弦波電圧又は矩形波電圧を発生することを特徴とする請求項1に記載の希ガス蛍光ランプ点灯装置。
【請求項3】
1次巻線及び2次巻線を有するトランスと、
前記トランスの一次巻線に直流電源からの電流を流す第1及び第2のスイッチング素子と、
前記トランスの2次巻線に接続された希ガス蛍光ランプの光量を検出する光量検出手段と、
前記光量検出手段の検出結果に基づいて前記第1及び第2のスイッチング素子のオンオフ周波数を変化させて周波数変調を行う周波数制御手段とを具備したことを特徴とする希ガス蛍光ランプ点灯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−4887(P2006−4887A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−182958(P2004−182958)
【出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】