説明

希土類磁石の製造方法およびめっき浴

耐食性に優れた希土類磁石の製造方法およびそれに用いるめっき浴を提供する。希土類元素を含む磁石素体に、ニッケルを含む第1保護膜と、ニッケルおよび硫黄を含む第2保護膜とを順に積層する。第1保護膜は、ニッケル源と、導電性塩と、pH安定剤とを含み、ニッケル源の濃度がニッケル原子単位で0.3mol/l〜0.7mol/lであり、導電率が80mS/cm以上の第1めっき浴を用い、電気めっきにより形成する。これにより希土類リッチ相の溶出が抑制され、ピンホールの生成が低減される。よって、耐食性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、希土類元素を含む磁石素体と、この磁石素体にこの順に積層されたニッケルを含む第1保護膜と、ニッケルおよび硫黄を含む第2保護膜とを有する希土類磁石の製造方法、およびそれに用いるめっき浴に関する。
【背景技術】
希土類磁石としては、例えば、Sm−Co系、Sm−Co17系、Sm−Fe−N系、あるいはR−Fe−B系(Rは希土類元素を表す)が知られており、高性能な永久磁石として用いられている。このうちR−Fe−B系は、希土類元素としてサマリウム(Sm)よりも豊富に存在し価格が比較的安いネオジム(Nd)を主として用いており、鉄(Fe)も安価であることに加えて、Sm−Co系などと同等以上の磁気性能を有することから、特に注目されている。
ところが、このR−Fe−B系希土類磁石は、主成分として酸化され易い希土類元素と鉄とを含有するために、耐食性が比較的低く、性能の劣化およびばらつきなどが課題となっている。
このような希土類磁石の耐食性の低さを改善することを目的として、種々の耐食性の保護膜を表面に形成することが提案されている(特開昭60−54406号公報または特開平9−7810号公報参照。)。
しかしながら、これらの保護膜により希土類磁石の耐食性は確かに向上するのであるが、更なる改善が求められていた。例えば、特開昭60−54406号公報に開示されている金属または合金の保護膜は塩水噴霧試験には合格せず、十分な耐食性を得ることが難しいという問題があった。
また、R−Fe−B系希土類磁石は、主として、主相と、希土類リッチ相と、ホウ素リッチ相とを含んで構成されているので、保護膜をめっきにより形成する場合、めっき浴に接触すると、酸化還元電位が著しく低い希土類リッチ相は、主相あるいはホウ素リッチ相と局部電池を形成してしまう。しかも、ニッケルめっき浴の場合には、酸化還元電位の低い希土類リッチ相が溶出し、酸化還元電位の高いニッケルが電析する置換めっきが起こってしまう。希土類リッチ相は主相の粒界に存在するので、希土類リッチ相の溶出によりR−Fe−B系希土類磁石は粒界腐食のようになる。この腐食部分をめっきすることは困難であり、たとえ電気めっきによりニッケルめっき層を形成したとしても、希土類リッチ相の溶出は局部腐食であるから、その部分を完全にカバーすることは難しい。工業的にはめっき膜厚を10μm以上とることによって、この局部腐食部分を強制的にカバーしているが、カバーが不十分だと保護膜のピンホールとなり、十分な耐食性を得ることができないという問題があった。
【発明の開示】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、耐食性を向上させることができる希土類磁石の製造方法、およびそれに用いるめっき浴を提供することにある。
本発明による第1の希土類磁石の製造方法は、希土類元素を含む磁石素体に、ニッケル源と、導電性塩と、pH安定剤とを含み、ニッケル源の濃度がニッケル原子単位で0.3mol/l〜0.7mol/lであり、かつ、導電率が80mS/cm以上である第1めっき浴を用い、電気めっきにより、ニッケルを含む第1保護膜を形成する工程と、第1保護膜に、ニッケルおよび硫黄を含む第2保護膜を形成する工程とを含むものである。
その際、第2保護膜を、ニッケル源と、導電性塩と、pH安定剤と、有機硫黄化合物とを含む導電率が80mS/cm以上の第2めっき浴を用い、電気めっきにより形成するようにすることが好ましい。
本発明による第2の希土類磁石の製造方法は、希土類元素を含む磁石素体に、0.3mol/l〜0.7mol/lのニッケルイオンと、硫酸イオン、塩素イオン、臭素イオン、酢酸イオン、およびピロリン酸イオンからなる群より選ばれる少なくとも1種と、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、マグネシウムイオン、およびアンモニウムイオンからなる群より選ばれる少なくとも1種と、ホウ酸イオンおよびアンモニウムイオンからなる群より選ばれる少なくとも1種とを含む導電率が80mS/cm以上の第1めっき浴を用い、電気めっきにより、ニッケルを含む第1保護膜を形成する工程と、第1保護膜に、ニッケルおよび硫黄を含む第2保護膜を形成する工程とを含むものである。
その際、第2保護膜を、ニッケルイオンと、硫酸イオン、塩素イオン、臭素イオン、酢酸イオン、およびピロリン酸イオンからなる群より選ばれる少なくとも1種と、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、マグネシウムイオン、およびアンモニウムイオンからなる群より選ばれる少なくとも1種と、ホウ酸イオンおよびアンモニウムイオンからなる群より選ばれる少なくとも1種と、有機硫黄化合物とを含む導電率が80mS/cm以上の第2めっき浴を用い、電気めっきにより形成するようにすることが好ましい。
本発明による第1のめっき浴は、ニッケル源と、導電性塩と、pH安定剤とを含み、前記ニッケル源の濃度がニッケル原子単位で0.3mol/l〜0.7mol/lであり、かつ、導電率が80mS/cm以上のものである。
本発明による第2のめっき浴は、0.3mol/l〜0.7mol/lのニッケルイオンと、硫酸イオン、塩素イオン、臭素イオン、酢酸イオン、およびピロリン酸イオンからなる群より選ばれる少なくとも1種と、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、マグネシウムイオン、およびアンモニウムイオンからなる群より選ばれる少なくとも1種と、ホウ酸イオンおよびアンモニウムイオンからなる群より選ばれる少なくとも1種とを含み、導電率が80mS/cm以上のものである。
本発明による第3のめっき浴は、ニッケル源と、導電性塩と、0.5mol/l〜1.5mol/lのpH安定剤と、有機硫黄化合物とを含み、導電率が80mS/cm以上のものである。
本発明による第4のめっき浴は、ニッケルイオンと、硫酸イオン、塩素イオン、臭素イオン、酢酸イオン、およびピロリン酸イオンからなる群より選ばれる少なくとも1種と、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、マグネシウムイオン、およびアンモニウムイオンからなる群より選ばれる少なくとも1種と、ホウ酸イオンおよびアンモニウムイオンからなる群より選ばれる少なくとも1種と、有機硫黄化合物とを含み、導電率が80mS/cm以上のものである。
本発明による希土類磁石の製造方法では、第1保護膜を、第1めっき浴を用い電気めっきにより形成するので、希土類リッチ相の溶出が抑制され、ピンホールの生成が低減される。よって、耐食性が向上する。
更に、第2保護膜を、第2めっき浴を用い電気めっきにより形成するようにすれば、ピンホールがより低減し、耐食性がより向上する。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明の一実施の形態に係る希土類磁石の製造方法を表す流れ図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の一実施の形態に係る希土類磁石の製造方法は、希土類元素を含む磁石素体と、この磁石素体にこの順に積層された第1保護膜および第2保護膜とを有する希土類磁石を製造するものである。
磁石素体は、遷移金属元素と希土類元素とを含む永久磁石により構成される。希土類元素というのは、長周期型周期表の3族に属するイットリウム(Y)およびランタノイドのランタン(La),セリウム(Ce),プラセオジム(Pr),ネオジム(Nd),プロメチウム(Pm),サマリウム(Sm),ユウロピウム(Eu),ガドリニウム(Gd),テルビウム(Tb),ジスプロシウム(Dy),ホルミウム(Ho),エルビウム(Er),ツリウム(Tm),イッテルビウム(Yb),ルテチウム(Lu)の16元素の総称である。
磁石素体を構成する永久磁石としては、例えば、1種以上の希土類元素と、鉄(Fe)と、ホウ素(B)とを含有するものが挙げられる。この磁石素体は、実質的に正方晶系の結晶構造の主相と、希土類リッチ相と、ホウ素リッチ相とを有している。主相の粒径は100μm以下であることが好ましい。希土類リッチ相およびホウ素リッチ相は非磁性相であり、主に主相の粒界に存在している。非磁性相は、通常、0.5体積%〜50体積%含まれている。
希土類元素としては、例えば、ネオジム,ジスプロシウム,プラセオジム,およびテルビウムのうち少なくとも1種を含むことが好ましい。
希土類元素の含有量は8原子%〜40原子%であることが好ましい。8原子%未満では、結晶構造がα−鉄と同一の立方晶組織となるので、高い保磁力(iHc)を得ることができず、40原子%を超えると、希土類リッチな非磁性相が多くなり、残留磁束密度(Br)が低下してしまうからである。
鉄の含有量は42原子%〜90原子%であることが好ましい。鉄が42原子%未満であると残留磁束密度が低下してしまい、90原子%を超えると保磁力が低下してしまうからである。
ホウ素の含有量は2原子%〜28原子%であることが好ましい。ホウ素が2原子%未満であると菱面体組織となるので保磁力が不十分となり、28原子%を超えるとホウ素リッチな非磁性相が多くなるので残留磁束密度が低下してしまうからである。
なお、鉄の一部をコバルト(Co)で置換するようにしてもよい。磁気特性を損なうことなく温度特性を改善することができるからである。この場合、コバルトの置換量は、Fe1−xCoで表すと原子比でxが0.5以下の範囲内であることが好ましい。これよりも置換量が多いと磁気特性が劣化してしまうからである。
また、ホウ素の一部を炭素(C),リン(P),硫黄(S),および銅(Cu)のうちの少なくとも1種で置換するようにしてもよい。生産性の向上および低コスト化を図ることができるからである。この場合、これら炭素,リン,硫黄および銅の含有量は、全体の4原子%以下であることが好ましい。これよりも多いと磁気特性が劣化してしまうからである。
更に、保磁力の向上、生産性の向上、および低コスト化のために、アルミニウム(Al),チタン(Ti),バナジウム(V),クロム(Cr),マンガン(Mn),ビスマス(Bi),ニオブ(Nb),タンタル(Ta),モリブデン(Mo),タングステン(W),アンチモン(Sb),ゲルマニウム(Ge),スズ(Sn),ジルコニウム(Zr),ニッケル(Ni),ケイ素(Si),ガリウム(Ga),銅(Cu)あるいはハフニウム(Hf)等の1種以上を添加してもよい。この場合、添加量は総計で全体の10原子%以下とすることが好ましい。これよりも多いと磁気特性の劣化を招いてしまうからである。
加えて、不可避的不純物として、酸素(O),窒素(N),炭素(C)あるいはカルシウム(Ca)等が全体の3原子%以下の範囲内で含有されていてもよい。
磁石素体を構成する永久磁石としては、また例えば、1種以上の希土類元素と、コバルトとを含有するもの、あるいは1種以上の希土類元素と、鉄と、窒素(N)とを含有するものも挙げられる。具体的には、例えば、Sm〜Co系あるいはSm−Co17系(数字は原子比)などのサマリウムとコバルトとを含むものや、または、Nd−Fe−B系などのネオジムと鉄とホウ素とを含むものが挙げられる。
第1保護膜は、ニッケルまたはニッケルを含む合金により構成される。ニッケルは生産性が高いので好ましいが、硬度、耐久性、および耐食性などの点からは、必要に応じて鉄,コバルト,銅,亜鉛(Zn),リン(P),ホウ素,マンガン(Mn),スズ(Sn)およびタングステン(W)からなる群のうちの少なくとも1種を含むニッケルの合金が好ましい。
また、第1保護膜は、後述するように、ニッケル源と、導電性塩と、pH安定剤とを含む導電率が80mS/cm以上の第1めっき浴を用い、電気めっきにより形成されたものである。これにより、本実施の形態では、第1保護膜のピンホールが低減し、耐食性を向上させることができるようになっている。
第1保護膜の厚みは、例えば、3μm以上50μm以下が好ましく、5μm以上40μm以下であればより好ましい。本実施の形態では第1保護膜のピンホールが低減されているので、厚みを薄くしても十分な耐食性を得ることができるからである。第1保護膜の平均結晶粒径は、1μm以下であることが好ましい。ピンホールを低減させることができるからである。
第2保護膜は、耐食性をより向上させ、第1保護膜の膜厚を薄くするためのものであり、ニッケルおよび硫黄を含む合金により構成されている。生産性の点からはニッケルと硫黄との合金により構成することが好ましいが、硬度、耐久性、および耐食性などの点からは、必要に応じて鉄,コバルト,銅,亜鉛,リン,ホウ素,マンガン,スズおよびタングステンからなる群のうちの少なくとも1種と、ニッケルおよび硫黄とを含む合金が好ましい。第2保護膜における硫黄の含有量は、0.01質量%以上0.8質量%以下の範囲内であることが好ましい。硫黄を含むことで、酸化還元電位が低くなり、ピンホールがあっても、第1保護膜の犠牲アノードとなり、全体として耐食性を向上させることができるからである。
また、第2保護膜は、後述するように、ニッケル源と、導電性塩と、pH安定剤と、有機硫黄化合物とを含む導電率が80mS/cm以上の第2めっき浴を用い、電気めっきにより形成されたものであることが好ましい。第2保護膜のピンホールをより低減させることができるからである。
第2保護膜の厚みは、例えば、1μm以上20μm以下が好ましく、5μm以上15μm以下であればより好ましい。ピンホールが低減されているので、厚みを薄くしても十分な耐食性を得ることができるからである。第2保護膜の平均結晶粒径は、1μm以下であることが好ましい。ピンホールの少ない良好な膜を形成することができるからである。
この希土類磁石は、例えば、第1図に示したように、磁石素体を形成したのち(ステップS101)、第1保護膜を電気めっきにより形成し(ステップS102)、その上に第2保護膜を電気めっきにより形成する(ステップS103)ことにより製造することができる。
磁石素体は、例えば次のようにして焼結法により形成することが好ましい(ステップS101参照)。まず、所望の組成の合金を鋳造し、インゴットを作製する。次いで、得られたインゴットを、スタンプミル等により粒径10μm〜800μm程度に粗粉砕し、更にボールミル等により粒径0.5μm〜5μm程度の粉末に微粉砕する。続いて、得られた粉末を、好ましくは磁場中において成形する。この場合、磁場強度は10kOe以上、成形圧力は1Mg/cm〜5Mg/cm程度とすることが好ましい。
そののち、得られた成形体を、1000℃〜1200℃で0.5時間〜24時間焼結し、冷却する。焼結雰囲気は、アルゴン(Ar)ガス等の不活性ガス雰囲気または真空とすることが好ましい。更にそののち、不活性ガス雰囲気中で、500℃〜900℃にて1時間〜5時間時効処理を行うことが好ましい。この時効処理は複数回行ってもよい。
なお、2種以上の希土類元素を用いる場合には、原料としてミッシュメタル等の混合物を用いるようにしてもよい。また、磁石素体を焼結法以外の方法により製造するようにしてもよく、例えばバルク体磁石を製造する際のいわゆる急冷法により製造するようにしてもよい。
また、第1保護膜は、ニッケル源と、導電性塩と、pH安定剤とを含む導電率が80mS/cm以上の第1めっき浴を用い、電気めっきにより形成することが好ましい(ステップS102参照)。
第1めっき浴におけるニッケル源の濃度は、ニッケル原子単位で0.3mol/l〜0.7mol/lであることが好ましい。ニッケル原子の濃度を0.7mol/l以下に低くした方が、ニッケルと希土類リッチ相との置換めっきを抑制し、希土類リッチ相の腐食を抑制することができるからである。また、第1めっき浴におけるニッケル原子の濃度を0.3mol/l以上とするのは、低くしすぎると水の電気分解が起こり、水素が発生して、工業的に適切な生産を行うこと難しくなるからである。
第1めっき浴のニッケル源としては、例えば、硫酸ニッケル(NiSO)、塩化ニッケル(NiCl,NiCl)、臭化ニッケル(NiBr,NiBr)、酢酸ニッケル(Ni(CHCOO))、ピロリン酸ニッケル(Ni)からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。なお、これらの含水塩、例えば、硫酸ニッケル・六水和物(NiSO・6HO)、あるいは塩化ニッケル・六水和物(NiCl・6HO)を用いてもよい。
導電性塩は、磁石素体の表面にニッケルイオンが接触する確率を減少させ、ニッケルと希土類リッチ相との置換めっきを鈍化させるためのものである。第1めっき浴の導電性塩としては、例えば、硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸リチウム、硫酸マグネシウム、塩化アンモニウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化マグネシウム、臭化アンモニウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化リチウム、および臭化マグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。これらは含水塩として含まれていてもよい。第1めっき浴における導電性塩の濃度は、第1めっき浴の導電率が80mS/cm以上となるようにすることが好ましい。導電率がこれよりも低い程度では導電性塩による置換めっきの鈍化効果を得ることができないからである。
pH安定剤は、磁石素体の表面のpHを安定させ、ニッケルと希土類リッチ相との置換めっきをより抑制するためのものである。第1めっき浴におけるpH安定剤の濃度は、0.5mol/l以上1.5mol/l以下の範囲内が好ましく、0.5mol/l以上1.0mol/l以下の範囲内であればより好ましい。この範囲内において置換めっきをより抑制することができるからである。第1めっき浴のpH安定剤としては、例えば、ホウ酸、ホウ酸アンモニウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸リチウム、ホウ酸マグネシウム、およびアンモニアからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。これらは含水塩として含まれていてもよい。なお、この群を構成するホウ酸は、BO、5(B)O2−、B2−、BOなどの構造を含んでいる。
すなわち、第1のめっき浴としては、例えば、0.3mol/l〜0.7mol/lのニッケルイオンと、硫酸イオン、塩素イオン、臭素イオン、酢酸イオン、およびピロリン酸イオンからなる群より選ばれる少なくとも1種と、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、マグネシウムイオン、およびアンモニウムイオンからなる群より選ばれる少なくとも1種と、ホウ酸イオンおよびアンモニウムイオンからなる群より選ばれる少なくとも1種とを含み、導電率が80mS/cm以上のものが好ましい。
第1保護膜をニッケル合金により形成する場合には、第1めっき浴に、ニッケルと合金を形成する元素の原料を添加する。原料としては、例えば、その元素の硫酸塩、塩化物、臭化物、酢酸塩、ピロリン酸塩、およびこれらの含水塩からなる群のうちの少なくとも1種が好ましい。また、第1めっき浴には、通常の耐食性向上のための半光沢ニッケルめっき用添加剤など、特性を向上させるための他の各種添加剤を添加してもよい。
第2保護膜は、ニッケル源と、導電性塩と、pH安定剤と、有機硫黄化合物とを含む導電率が80mS/cm以上の第2めっき浴を用い、電気めっきにより形成することが好ましい(ステップS103参照)。
第2めっき浴のニッケル源としては、例えば、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、臭化ニッケル、酢酸ニッケル、ピロリン酸ニッケルからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、これらの含水塩を用いてもよい。ニッケル源の濃度は特に限定されない。磁石素体と直接接触しないので、ニッケルと希土類リッチ相との置換めっきが起こるわけではないからである。
導電性塩は、第1保護膜のピンホールにニッケルイオンが接触する確率を減少させ、ピンホールを容易に被覆できるようにするためのものである。第2めっき浴の導電性塩としては、例えば、硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸リチウム、硫酸マグネシウム、塩化アンモニウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化マグネシウム、臭化アンモニウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化リチウム、および臭化マグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、これらの含水塩を用いてもよい。第2めっき浴における導電性塩の濃度は、第2めっき浴の導電率が80mS/cm以上となるようにすることが好ましい。導電率がこれよりも低い程度では導電性塩による効果が低下してしまうからである。
pH安定剤は、pHを安定させ、希土類リッチ相と、ニッケルイオンとの置換めっきを抑制するためのものである。第2めっき浴におけるpH安定剤の濃度は、0.5mol/l以上1.5mol/l以下の範囲内が好ましく、0.5mol/l以上1.0mol/l以下の範囲内であればより好ましい。この範囲において高い効果を得ることができるからである。第2めっき浴のpH安定剤としては、例えば、ホウ酸、ホウ酸アンモニウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸リチウム、ホウ酸マグネシウム、およびアンモニアからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、これらの含水塩を用いてもよい。なお、この群を構成するホウ酸も、第1めっき浴と同様に、BO、5(B)O、B2−、BOなどの構造を含んでいる。
有機硫黄化合物としては、例えば、チオ尿素やその誘導体などのN−C=Sを含むものなどが挙げられる。有機硫黄化合物にはいずれか1種を単独で用いてもよいが、2種以上を混合して用いてもよい。
すなわち、第2のめっき浴としては、例えば、ニッケルイオンと、硫酸イオン、塩素イオン、臭素イオン、酢酸イオン、およびピロリン酸イオンからなる群より選ばれる少なくとも1種と、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、マグネシウムイオン、およびアンモニウムイオンからなる群より選ばれる少なくとも1種と、ホウ酸イオンおよびアンモニウムイオンからなる群より選ばれる少なくとも1種と、有機硫黄化合物とを含み、導電率が80mS/cm以上のものが好ましい。
第2保護膜をニッケルと硫黄と他の元素との合金により形成する場合には、第2めっき浴に、他の元素の原料を添加する。原料としては、例えば、その元素の硫酸塩、塩化物、臭化物、酢酸塩、ピロリン酸塩、およびこれらの含水塩からなる群のうちの少なくとも1種が好ましい。また、第2保護膜にも、特性を向上させるための他の各種添加剤を添加してもよい。
なお、第1保護膜を形成する前に、前処理を行うようにしてもよい。前処理としては、例えば、有機溶剤による脱脂、およびそれに続いて行われる酸処理による活性化がある。
このように本実施の形態によれば、第1保護膜を、ニッケル源と、導電性塩と、pH安定剤とを含み、ニッケル源の濃度がニッケル原子単位で0.3mol/l〜0.7mol/lであり、かつ導電率が80mS/cm以上の第1めっき浴を用い、または、0.3mol/l〜0.7mol/lのニッケルイオンと、硫酸イオン、塩素イオン、臭素イオン、酢酸イオン、およびピロリン酸イオンからなる群より選ばれる少なくとも1種と、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、マグネシウムイオン、およびアンモニウムイオンからなる群より選ばれる少なくとも1種と、ホウ酸イオンおよびアンモニウムイオンからなる群より選ばれる少なくとも1種とを含む導電率が80mS/cm以上の第1めっき浴を用い、電気めっきにより形成するようにしたので、希土類リッチ相の溶出を抑制することができ、ピンホールを低減することができる。よって、耐食性を向上させることができる。
特に、第2保護膜を、ニッケル源と、導電性塩と、pH安定剤と、有機硫黄化合物とを含む導電率が80mS/cm以上の第2めっき浴を用い、または、ニッケルイオンと、硫酸イオン、塩素イオン、臭素イオン、酢酸イオン、およびピロリン酸イオンからなる群より選ばれる少なくとも1種と、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、マグネシウムイオン、およびアンモニウムイオンからなる群より選ばれる少なくとも1種と、ホウ酸イオンおよびアンモニウムイオンからなる群より選ばれる少なくとも1種と、有機硫黄化合物とを含む導電率が80mS/cm以上の第2めっき浴を用い、電気めっきにより形成するようにすれば、ピンホールをより低減することができ、耐食性をより向上させることができる。
また、第1保護膜の平均結晶粒径を1μm以下とするようにすれば、ピンホールをより低減させることができ、耐食性をより向上させることができる。
更に、本発明の具体的な実施例について説明する。
粉末冶金法によって作成した14Nd−1Dy−7B−78Fe(数字は原子比)の組成をもつ焼結体を、アルゴン雰囲気中で600℃にて2時間の熱処理を施したのち、56×40×8(mm)の大きさに加工し、さらにバレル研磨処理により面取りを行って磁石素体を得た。
次いで、この磁石素体を、アルカリ性脱脂液で洗浄した後、硝酸溶液により表面の活性化を行い、良く水洗した。続いて、磁石素体の表面に、表1に示した組成および導電率を有する第1めっき浴を用い、電気めっきにより厚み5μmの第1保護膜を形成した。電流密度は、平均して1A/dm以下であった。
なお、実施例1では、ニッケル源として硫酸ニッケル0.5mol/l、導電性塩として臭化カリウム1.5mol/l、pH安定剤としてホウ酸1.0mol/lを含み、導電率が127mS/cmの第1めっき浴を用いた。すなわち、ニッケル源の濃度はニッケル原子単位で0.5mol/l、ニッケルイオンの濃度は0.5mol/lである。
実施例2では、半光沢添加剤を添加したことを除き、実施例1と同様の第1めっき浴を用いた。
実施例3では、ニッケル源として臭化ニッケル0.3mol/l、導電性塩として硫酸リチウム1.0mol/l、pH安定剤としてホウ酸ナトリウム0.1mol/lおよびホウ酸1.4mol/lを含み、導電率が108mS/cmの第1めっき浴を用いた。すなわち、ニッケル源の濃度はニッケル原子単位で0.3mol/l、ニッケルイオンの濃度は0.3mol/lである。
実施例4では、ニッケル源としてピロリン酸ニッケル0.15mol/l、錯化剤および導電性塩としてのピロリン酸カリウム1.0mol/l、導電性塩として硫酸アンモニウム1.0mol/l、pH安定剤としてpH8のアンモニア水およびホウ酸1.0mol/lを含み、導電率が102mS/cmの第1めっき浴を用いた。すなわち、ニッケル源の濃度はニッケル原子単位で0.3mol/l、ニッケルイオンの濃度は0.3mol/lである。
実施例5では、ニッケル源として塩化ニッケル0.7mol/l、導電性塩として硫酸ナトリウム1.5mol/l、pH安定剤としてホウ酸1.2mol/l、および半光沢添加剤を含み、導電率が113mS/cmの第1めっき浴を用いた。すなわち、ニッケル源の濃度はニッケル原子単位で0.7mol/l、ニッケルイオンの濃度は0.7mol/lである。
実施例6では、ニッケル源として硫酸ニッケル0.5mol/l、導電性塩として塩化リチウム1.0mol/l、pH安定剤としてホウ酸0.7mol/l、および半光沢添加剤を含み、導電率が90mS/cmの第1めっき浴を用いた。すなわち、ニッケル源の濃度はニッケル原子単位で0.5mol/l、ニッケルイオンの濃度は0.5mol/lである。
実施例7では、ニッケル源として塩化ニッケル0.4mol/l、導電性塩として硫酸リチウム1.0mol/l、pH安定剤としてホウ酸1.0mol/l、および半光沢添加剤を含み、導電率が82mS/cmの第1めっき浴を用いた。すなわち、ニッケル源の濃度はニッケル原子単位で0.4mol/l、ニッケルイオンの濃度は0.4mol/lである。
第1保護膜を形成したのち、その表面に、表1に示した組成および導電率を有する第2めっき浴を用い、電気めっきにより厚み5μmの第2保護膜を形成した。これにより、実施例1〜7の希土類磁石を得た。
なお、実施例1では、ニッケル源として塩化ニッケル0.5mol/l、導電性塩として塩化カリウム1.5mol/l、pH安定剤としてホウ酸1.0mol/l、有機硫黄化合物を含む光沢剤を含有し、導電率が186mS/cmの第2めっき浴を用いた。
実施例2では、実施例1と同様の第2めっき浴を用いた。
実施例3では、ニッケル源として硫酸ニッケル0.7mol/l、導電性塩として塩化アンモニウム1.0mol/l、pH安定剤としてホウ酸アンモニウム0.7mol/l、有機硫黄化合物を含む光沢剤を含有し、導電率が132mS/cmの第2めっき浴を用いた。
実施例4では、ニッケル源として臭化ニッケル0.5mol/l、導電性塩として硫酸アンモニウム1.5mol/l、pH安定剤としてホウ酸1.2mol/l、有機硫黄化合物を含む光沢剤を含有し、導電率が118mS/cmの第2めっき浴を用いた。
実施例5では、ニッケル源として酢酸ニッケル0.3mol/l、導電性塩として塩化リチウム2mol/l、pH安定剤としてホウ酸0.7mol/l、有機硫黄化合物を含む光沢剤を含有し、導電率が162mS/cmの第2めっき浴を用いた。
実施例6では、ニッケル源として塩化ニッケル0.5mol/l、導電性塩として塩化カリウム1.5mol/l、pH安定剤としてホウ酸1.0mol/l、有機硫黄化合物を含む光沢剤を含有し、導電率が186mS/cmの第2めっき浴を用いた。
実施例7では、ニッケル源として塩化ニッケル0.5mol/l、導電性塩として硫酸マグネシウム1.0mol/l、pH安定剤としてホウ酸0.5mol/l、有機硫黄化合物を含む光沢剤を含有し、導電率が85mS/cmの第2めっき浴を用いた。
本実施例に対する比較例1として、表1に示した組成および導電率を有する第1めっき浴および第2めっき浴を用いたことを除き、他は本実施例と同様にして希土類磁石を作製した。比較例1では、第1めっき浴に、ニッケル源として硫酸ニッケル1.0mol/lおよび塩化ニッケル0.25mol/l、pH安定剤としてホウ酸0.6mol/l、並びに半光沢添加剤を含み、導電率が58mS/cmのものを用いると共に、第2めっき浴に、ニッケル源として硫酸ニッケル1.0mol/lおよび塩化ニッケル0.25mol/l、pH安定剤としてホウ酸0.6mol/l、並びに有機硫黄化合物を含む光沢剤を含有し、導電率が59mS/cmのものを用いた。すなわち、比較例1は、導電性塩を含まず導電率が低い第1めっき浴および第2めっき浴を用いたものである。
また、本実施例に対する比較例2として、表1に示した組成および導電率を有する第1めっき浴を用いて厚み10μmの第1保護膜を形成し、第2保護膜は形成しないことを除き、他は本実施例と同様にして希土類磁石を作製した。比較例2では、第1めっき浴にニッケル源としてスルファミン酸ニッケル1.0mol/lおよび臭化ニッケル0.1mol/l、pH安定剤としてホウ酸0.5mol/lを含み、導電率が72mS/cmのものを用いた。すなわち、比較例2は、導電性塩を含まず導電率が低い第1めっき浴を用い、第2保護膜を形成しないものである。
得られた実施例1〜7および比較例1,2の希土類磁石について、水蒸気雰囲気、120℃、0.2×10Paにおける24時間の加湿高温試験、およびJIS−C−0023による24時間の塩水噴霧試験を行い、耐食性を評価した。外観を肉眼で検査し、発錆の有無で合否を判定した。それらの結果を表1に合わせて示す。

表1に示したように、実施例1〜7によれば加湿高温試験も塩水噴霧試験も共に合格であったのに対して、比較例1,2では塩水噴霧試験において腐食がみられた。すなわち、第1保護膜を、ニッケル源と、導電性塩と、pH安定剤とを含み、ニッケル源の濃度がニッケル原子単位で0.3mol/l〜0.7mol/lであり、かつ導電率が80mS/cm以上の第1めっき浴を用いて電気めっきにより形成し、第2保護膜を、ニッケル源と、導電性塩と、pH安定剤と、有機硫黄化合物とを含む導電率が80mS/cm以上の第2めっき浴を用いて電気めっきにより形成するようにすれば、または、第1保護膜を、0.3mol/l〜0.7mol/lのニッケルイオンと、硫酸イオン、塩素イオン、臭素イオン、酢酸イオン、およびピロリン酸イオンからなる群より選ばれる少なくとも1種と、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、マグネシウムイオン、およびアンモニウムイオンからなる群より選ばれる少なくとも1種と、ホウ酸イオンおよびアンモニウムイオンからなる群より選ばれる少なくとも1種とを含む導電率が80mS/cm以上の第1めっき浴を用いて電気めっきにより形成し、第2保護膜を、ニッケルイオンと、硫酸イオン、塩素イオン、臭素イオン、酢酸イオン、およびピロリン酸イオンからなる群より選ばれる少なくとも1種と、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、マグネシウムイオン、およびアンモニウムイオンからなる群より選ばれる少なくとも1種と、ホウ酸イオンおよびアンモニウムイオンからなる群より選ばれる少なくとも1種と、有機硫黄化合物とを含む導電率が80mS/cm以上の第2めっき浴を用いて電気めっきにより形成するようにすれば、優れた耐食性を得られることが分かった。
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は、上記実施の形態および実施例に限定されるものではなく、種々変形することができる。例えば、上記実施の形態および実施例では、ニッケル源、導電性塩、pH安定剤について具体的に例を挙げて説明したが、他のものを用いてもよい。
また、上記実施の形態および実施例では、磁石素体と、この磁石素体に積層した第1保護膜および第2保護膜とを有する希土類磁石を製造する場合について説明したが、これら以外の他の構成要素を有する希土類磁石を製造する場合に用いてもよい。例えば、磁石素体と第1保護膜との間、第1保護膜と第2保護膜との間、あるいは第2保護膜の上に、他の膜を形成するようにしてもよい。
以上説明したように、本発明による希土類磁石の製造方法によれば、第1保護膜を、ニッケル源と、導電性塩と、pH安定剤とを含み、ニッケル源の濃度がニッケル原子単位で0.3mol/l〜0.7mol/lであり、かつ導電率が80mS/cm以上の第1めっき浴を用い、または、0.3mol/l〜0.7mol/lのニッケルイオンと、硫酸イオン、塩素イオン、臭素イオン、酢酸イオン、およびピロリン酸イオンからなる群より選ばれる少なくとも1種と、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、マグネシウムイオン、およびアンモニウムイオンからなる群より選ばれる少なくとも1種と、ホウ酸イオンおよびアンモニウムイオンからなる群より選ばれる少なくとも1種とを含む導電率が80mS/cm以上の第1めっき浴を用い、電気めっきにより形成するようにしたので、希土類リッチ相の溶出を抑制することができ、ピンホールを低減することができる。よって、耐食性を向上させることができる。
特に、第2保護膜を、ニッケル源と、導電性塩と、pH安定剤と、有機硫黄化合物とを含む導電率が80mS/cm以上の第2めっき浴を用い、または、ニッケルイオンと、硫酸イオン、塩素イオン、臭素イオン、酢酸イオン、およびピロリン酸イオンからなる群より選ばれる少なくとも1種と、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、マグネシウムイオン、およびアンモニウムイオンからなる群より選ばれる少なくとも1種と、ホウ酸イオンおよびアンモニウムイオンからなる群より選ぱれる少なくとも1種と、有機硫黄化合物とを含む導電率が80mS/cm以上の第2めっき浴を用い、電気めっきにより形成するようにすれば、ピンホールをより低減することができ、耐食性をより向上させることができる。
また、本発明による第1のめっき浴によれば、ニッケル源と、導電性塩と、pH安定剤とを含み、ニッケル源の濃度がニッケル原子単位で0.3mol/l〜0.7mol/lであり、かつ導電率が80mS/cm以上となるようにしたので、また、本発明による第2のめっき浴によれば、0.3mol/l〜0.7mol/lのニッケルイオンと、硫酸イオン、塩素イオン、臭素イオン、酢酸イオン、およびピロリン酸イオンからなる群より選ばれる少なくとも1種と、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、マグネシウムイオン、およびアンモニウムイオンからなる群より選ばれる少なくとも1種と、ホウ酸イオンおよびアンモニウムイオンからなる群より選ばれる少なくとも1種とを含み、導電率が80mS/cm以上となるようにしたので、また、本発明による第3のめっき浴によれば、ニッケル源と、導電性塩と、pH安定剤と、有機硫黄化合物とを含み、導電率が80mS/cm以上となるようにしたので、また、本発明による第4のめっき浴によれば、ニッケルイオンと、硫酸イオン、塩素イオン、臭素イオン、酢酸イオン、およびピロリン酸イオンからなる群より選ばれる少なくとも1種と、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、マグネシウムイオン、およびアンモニウムイオンからなる群より選ばれる少なくとも1種と、ホウ酸イオンおよびアンモニウムイオンからなる群より選ばれる少なくとも1種と、有機硫黄化合物とを含み、導電率が80mS/cm以上となるようにしたので、本発明の希土類磁石の製造方法を実現することができる。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
希土類元素を含む磁石素体に、ニッケル源と、導電性塩と、pH安定剤とを含み、ニッケル源の濃度がニッケル原子単位で0.3mol/l〜0.7mol/lであり、かつ、導電率が80mS/cm以上である第1めっき浴を用い、電気めっきにより、ニッケルを含む第1保護膜を形成する工程と、
第1保護膜に、ニッケルおよび硫黄を含む第2保護膜を形成する工程と
を含むことを特徴とする希土類磁石の製造方法。
【請求項2】
ニッケル源として、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、臭化ニッケル、酢酸ニッケル、およびピロリン酸ニッケルからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む第1めっき浴を用いることを特徴とする請求の範囲第1項記載の希土類磁石の製造方法。
【請求項3】
導電性塩として、硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸リチウム、硫酸マグネシウム、塩化アンモニウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化マグネシウム、臭化アンモニウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化リチウム、および臭化マグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む第1めっき浴を用いることを特徴とする請求の範囲第1項記載の希土類磁石の製造方法。
【請求項4】
pH安定剤として、ホウ酸、ホウ酸アンモニウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸リチウム、ホウ酸マグネシウム、およびアンモニアからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む第1めっき浴を用いることを特徴とする請求の範囲第1項記載の希土類磁石の製造方法。
【請求項5】
第2保護膜を、ニッケル源と、導電性塩と、pH安定剤と、有機硫黄化合物とを含む導電率が80mS/cm以上の第2めっき浴を用い、電気めっきにより形成することを特徴とする請求の範囲第1項記載の希土類磁石の製造方法。
【請求項6】
ニッケル源として、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、臭化ニッケル、酢酸ニッケル、およびピロリン酸ニッケルからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む第2めっき浴を用いることを特徴とする請求の範囲第5項記載の希土類磁石の製造方法。
【請求項7】
導電性塩として、硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸リチウム、硫酸マグネシウム、塩化アンモニウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化マグネシウム、臭化アンモニウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化リチウム、および臭化マグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む第2めっき浴を用いることを特徴とする請求の範囲第5項記載の希土類磁石の製造方法。
【請求項8】
pH安定剤として、ホウ酸、ホウ酸アンモニウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸リチウム、ホウ酸マグネシウム、およびアンモニアからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む第2めっき浴を用いることを特徴とする請求の範囲第5項記載の希土類磁石の製造方法。
【請求項9】
希土類元素を含む磁石素体に、0.3mol/l〜0.7mol/lのニッケルイオンと、硫酸イオン、塩素イオン、臭素イオン、酢酸イオン、およびピロリン酸イオンからなる群より選ばれる少なくとも1種と、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、マグネシウムイオン、およびアンモニウムイオンからなる群より選ばれる少なくとも1種と、ホウ酸イオンおよびアンモニウムイオンからなる群より選ばれる少なくとも1種とを含む導電率が80mS/cm以上の第1めっき浴を用い、電気めっきにより、ニッケルを含む第1保護膜を形成する工程と、
第1保護膜に、ニッケルおよび硫黄を含む第2保護膜を形成する工程と
を含むことを特徴とする希土類磁石の製造方法。
【請求項10】
第2保護膜を、ニッケルイオンと、硫酸イオン、塩素イオン、臭素イオン、酢酸イオン、およびピロリン酸イオンからなる群より選ばれる少なくとも1種と、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、マグネシウムイオン、およびアンモニウムイオンからなる群より選ばれる少なくとも1種と、ホウ酸イオンおよびアンモニウムイオンからなる群より選ばれる少なくとも1種と、有機硫黄化合物とを含む導電率が80mS/cm以上の第2めっき浴を用い、電気めっきにより形成することを特徴とする請求の範囲第9項記載の希土類磁石の製造方法。
【請求項11】
ニッケル源と、導電性塩と、pH安定剤とを含み、前記ニッケル源の濃度がニッケル原子単位で0.3mol/l〜0.7mol/lであり、かつ、導電率が80mS/cm以上であることを特徴とするめっき浴。
【請求項12】
希土類元素を含む磁石素体に、電気めっきにより保護膜を形成する際に用いられることを特徴とする請求の範囲第11項記載のめっき浴。
【請求項13】
前記ニッケル源として、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、臭化ニッケル、酢酸ニッケル、およびピロリン酸ニッケルからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求の範囲第11項記載のめっき浴。
【請求項14】
前記導電性塩として、硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸リチウム、硫酸マグネシウム、塩化アンモニウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化マグネシウム、臭化アンモニウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化リチウム、および臭化マグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求の範囲第11項記載のめっき浴。
【請求項15】
前記pH安定剤として、ホウ酸、ホウ酸アンモニウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸リチウム、ホウ酸マグネシウム、およびアンモニアからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求の範囲第11項記載のめっき浴。
【請求項16】
0.3mol/l〜0.7mol/lのニッケルイオンと、
硫酸イオン、塩素イオン、臭素イオン、酢酸イオン、およびピロリン酸イオンからなる群より選ばれる少なくとも1種と、
ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、マグネシウムイオンおよびアンモニウムイオンからなる群より選ばれる少なくとも1種と、
ホウ酸イオンおよびアンモニウムイオンからなる群より選ばれる少なくとも1種とを含み、
導電率が80mS/cm以上である
ことを特徴とするめっき浴。
【請求項17】
ニッケル源と、導電性塩と、pH安定剤と、有機硫黄化合物とを含み、導電率が80mS/cm以上であることを特徴とするめっき浴。
【請求項18】
希土類元素を含む磁石素体に、ニッケルを含む第1保護膜を介して、第2保護膜を電気めっきにより形成する際に用いられることを特徴とする請求の範囲第17項記載のめっき浴。
【請求項19】
前記ニッケル源として、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、臭化ニッケル、酢酸ニッケル、およびピロリン酸ニッケルからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求の範囲第17項記載のめっき浴。
【請求項20】
前記導電性塩として、硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸リチウム、硫酸マグネシウム、塩化アンモニウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化マグネシウム、臭化アンモニウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化リチウム、および臭化マグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求の範囲第17項記載のめっき浴。
【請求項21】
前記pH安定剤として、ホウ酸、ホウ酸アンモニウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸リチウム、ホウ酸マグネシウム、およびアンモニアからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求の範囲第17項記載のめっき浴。
【請求項22】
ニッケルイオンと、
硫酸イオン、塩素イオン、臭素イオン、酢酸イオン、およびピロリン酸イオンからなる群より選ばれる少なくとも1種と、
ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、マグネシウムイオン、およびアンモニウムイオンからなる群より選ばれる少なくとも1種と、
ホウ酸イオンおよびアンモニウムイオンからなる群より選ばれる少なくとも1種と、
有機硫黄化合物とを含み
導電率が80mS/cm以上である
ことを特徴とするめっき浴。

【国際公開番号】WO2004/079055
【国際公開日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【発行日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−503088(P2005−503088)
【国際出願番号】PCT/JP2004/002713
【国際出願日】平成16年3月4日(2004.3.4)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】