説明

希土類金属抽出剤の合成方法

【解決手段】ジアルキルジグリコールアミド酸を抽出剤成分とする希土類金属抽出剤を、ジグリコール酸Xmol、エステル化剤Ymol中、モル比Y/Xを2.5以上、反応温度70℃以上、反応時間1時間以上で反応させ、減圧濃縮することで、未反応物及び反応残分を除去して反応中間生成物を得、更に、反応溶媒として、希土類金属の溶媒抽出における有機相を形成する有機溶媒であり、かつジアルキルジグリコールアミド酸を溶解可能である無極性又は低極性溶媒を加え、反応中間生成物とジアルキルアミンZmolとを、モル比Z/Xを0.9以上として反応させることにより合成する。
【効果】軽希土類元素の分離に優れたジアルキルジグリコール酸を、高価な無水ジグリコール酸及び有害なジクロロメタンを用いることなく、低コストで、効率よく、かつ高収率で合成できるため、工業的利用価値が高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、希土類金属抽出剤、特に、軽希土類元素(La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu)の中の少なくとも2種以上の、又は該軽希土類元素の中の少なくとも1種以上とそれ以外の希土類元素(Yを含む)の少なくとも1種以上との抽出・分離に好適な希土類金属抽出剤の合成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、希土類元素は、希土類磁石や蛍光体、更には、ニッケル水素電池などの電子材料に幅広く用いられている。しかし、希土類元素の供給の現状は、産出国がほぼ限定されていること、価格の安定性を欠くこと、更には、近い将来需要が供給を上回るとも予想されることから、資源的な危機が叫ばれている。そのため、現在、それらに用いられている希土類元素使用量の削減及びその代替開発に関して様々な取組みがなされている。同時に、製品の生産時に発生する工程内スクラップや、市中より回収された電子・電気製品から有価物である希土類元素の再生(リサイクル)、更には、新たな希土類鉱床の探査や開発が強く求められている。
【0003】
希土類元素の分離方法として、イオン交換樹脂等を用いたカラム抽出法(固−液抽出法)や、金属抽出剤等を用いた溶媒抽出法(液−液抽出法)などが知られている。カラム抽出法(固−液抽出法)は、溶媒抽出法に比べ、装置が単純であり、操作性が簡単であるという利点はあるものの、抽出容量が小さく、迅速な処理ができない。このことから、溶液中における抽出すべき金属の濃度が低い場合、即ち、抽出すべき金属が不純物である場合の除去や排水処理などに多く用いられる。一方、溶媒抽出法(液−液抽出法)は、カラム抽出法に比べ、装置がより複雑であり、操作性は簡単ではないが、抽出容量が大きく、迅速な処理が可能なため、工業的な金属元素の分離精製に用いられる場合が多い。希土類元素の精製分離は、連続的な工程により、効率的な大量処理が求められるため、それを可能とする溶媒抽出法が主に用いられている。
【0004】
溶媒抽出法とは、分離対象の金属元素を含む水溶液からなる水相と、特定の金属元素を抽出する金属抽出剤及びそれを希釈するための有機溶媒からなる有機相を接触させることで、金属元素を金属抽出剤に抽出させることで分離する方法である。
【0005】
従来、金属抽出剤としてはTBP(リン酸トリブチル)、カルボン酸(バーサティックアシッド10)、リン酸エステル、ホスホン酸化合物、ホスフィン酸化合物等が知られている。例えば、リン酸エステルとしては、ジ−2−エチルヘキシルリン酸[ethylhexyl−phosphoric−acid(D2EHPA)]、ホスホン酸化合物としては2−エチルヘキシルリン酸モノ−2−エチルヘキシルエステル[2−ethylhexyl−phosphoric acid−mono−2−ethylhexyl ester(PC−88A:大八化学工業(株)製商品名)]、ホスフィン酸化合物としてはビス(2,4,4−トリメチルペンチル)リン酸[bis(2,4,4−trimethylpentyl)phosphoric acid(Cyanex272:CYTEC Industries社製商品名)]を挙げることができ、それらは、市販され、一般的に使用されている。
【0006】
溶媒抽出法における分離効率は、金属抽出剤の分離性能、つまり金属抽出剤のもつ分離係数に依存する。即ち、分離係数が大きいほど溶媒抽出法の分離効率は高くなり、分離工程の簡略化、分離設備の小規模化となり、結果的に工程の効率化及びコストダウンにつながる。一方、分離係数が小さい場合、分離工程が複雑となり、分離設備の大規模化を招いてしまう。
【0007】
現在、市販され実用化されている金属抽出剤のうちで、希土類元素に対する分離係数が大きいと言われるPC−88Aでも、原子番号が隣接した希土類元素間の分離係数は小さい。例えば、希土類元素の中で最も分離が困難とも言われるネオジム/プラセオジムの分離係数は2より小さく、約1.4であり、この分離係数は、ネオジム/プラセオジムを分離するために十分なものではない。それらを十分な純度で分離するためには、大規模な設備が必要となり、多大なコストがかかることになる。そのため、これら元素を分離する際には、従来よりも分離係数の大きな金属抽出剤及び抽出・分離方法の開発が望まれている。
【0008】
希土類元素、特に、軽希土類元素であるランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)に対して分離係数の大きな金属抽出剤としては、ジアルキルジグリコールアミド酸が知られている(特許文献1:特開2007−327085号公報)。これを用いて溶媒抽出を行うことで、希土類元素、特に、軽希土類元素の抽出・分離工程の効率化を図ることができる。実際、ジアルキルグリコールアミド酸を用いた軽希土類元素の抽出・分離は、実験室レベルにおいて、良好な結果が得られている。
【0009】
また、金属抽出剤としてアルキルジグリコールアミド酸を使用した場合の希土類元素の分離工程における実操業条件である希土類元素濃度(CA:0.01mol/L≦CA≦0.7mol/L)、及びそれに対応する金属抽出剤濃度(CO:0.1mol/L≦CO≦1.5mol/L)における軽希土類元素の抽出・分離試験、更に、実操業装置の向流多段ミキサーセトラーにおいても、良好な結果が確認されている。
【0010】
このように、金属抽出剤として、ジアルキルジグリコールアミド酸は、軽希土類元素の分離性能において、良好な分離係数を示し、加えて、使用条件に関する検討もなされているものの、その合成方法について十分な検討はなされていない。
【0011】
既知のジアルキルジグリコールアミド酸の合成方法は、下記反応式に従う。
【化1】

(式中、R1及びR2は、互いに同一又は異種のアルキル基であり、少なくとも一方は炭素数6以上の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を示す。)
【0012】
まず、無水ジグリコール酸をジクロロメタン中に懸濁させ、無水ジグリコール酸に対して等molよりも若干少ない量の第二級アルキルアミンをジクロロメタン中に溶解させて、両者を0〜30℃で混合する。無水ジグリコール酸が反応すると溶液が透明になり、そこで反応を終了する。次いで、純水洗浄による水溶性不純物の除去、脱水剤(硫酸ナトリウム)による水の除去、濾過、溶媒の除去後、更に、ヘキサンを用いて再結晶を複数回行うことで精製し、目的の生成物が得られる(特許文献1:特開2007−327085号公報)。
【0013】
この合成において反応溶媒に用いられるジクロロメタンは、化審法、労働安全衛生法、大気汚染防止法、水質汚濁防止法、PRTR法などに規定された有害な物質であり、使用しないことが好ましく、更に、原料である無水ジグリコール酸の溶解度が高くないため、合成反応が固−液反応となり、反応性に劣る。
【0014】
実際、前記の既知合成方法では、合成量が数gというスケールでしか合成していないため、90%以上の収率を得ることができるが、数kgやそれ以上のスケールでの合成の場合、その収率の低下は顕著となる。実際、数百gのスケールの合成であっても、その収率は80%を下回ることとなり、収率の低下が問題となってくる。
【0015】
また、無水ジグリコール酸は、比較的高価な薬品であるため、それを出発原料として合成されたジアルキルジグリコールアミド酸は、市販されている金属抽出剤に比べ3倍以上の価格となる。このことは、分離性能が優れているため工程の効率化の効果は大きい反面、金属抽出剤コストが高価となるため、全体的なコストダウンには結びつかないことを示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2007−327085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、前記問題点を解決するためになされたものであり、従来の合成方法における合成原料である無水ジグリコール酸や、反応溶媒であるジクロロメタンを用いることなく、更に、合成物の収率向上、合成過程の効率化及び金属抽出剤ジアルキルジグリコールアミド酸のコストダウンを図ることができる希土類金属抽出剤の合成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、希土類抽出剤であるジアルキルジグリコールアミド酸を合成する際、その原料であるジグリコール酸を、エステル化剤中で反応させ、その後、未反応のエステル化剤及びその反応残分を減圧除去することで得られた反応中間生成物と、ジアルキルアミンとを反応させる際、得られた反応中間生成物から、生成したエステルを単離することなく、反応溶媒として、溶媒抽出における有機相を形成する有機溶媒であり、ジアルキルジグリコールアミド酸を溶解可能である無極性又は低極性溶媒を用いて反応させることで、ジアルキルジグリコールアミド酸を抽出剤成分とする希土類金属抽出剤を合成し得ることを見出し、この方法がジアルキルジグリコールアミド酸金属抽出剤を合成するに際し、高収率、効率的でかつ低コストであることを知見し、本発明をなすに至った。
【0019】
従って、本発明は、下記の希土類金属抽出剤の合成方法を提供する。
請求項1:
下記一般式(1)
【化2】

(式中、R1及びR2は、互いに同一又は異種のアルキル基であり、少なくとも一方は炭素数6以上の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を示す。)
で表されるジアルキルジグリコールアミド酸を抽出剤成分とする希土類金属抽出剤を合成する方法であって、
ジグリコール酸Xmolを、エステル化剤Ymol中、モル比Y/Xを2.5以上とし、反応温度70℃以上で、反応時間1時間以上で反応させ、その後、減圧濃縮することで、未反応物及び反応残分を除去して反応中間生成物を得、
更に、前記反応中間生成物に、反応溶媒として、希土類金属の溶媒抽出における有機相を形成する有機溶媒であり、かつジアルキルジグリコールアミド酸を溶解可能である無極性又は低極性溶媒を加え、前記反応中間生成物とジアルキルアミンZmolとを、モル比Z/Xを0.9以上として反応させることを特徴とする希土類金属抽出剤の合成方法。
請求項2:
前記エステル化剤が、無水酢酸及び無水トリフルオロ酢酸から選ばれることを特徴とする請求項1記載の希土類金属抽出剤の合成方法。
請求項3:
前記希土類金属の溶媒抽出における有機相を形成する有機溶媒が、トルエン、キシレン、ヘキサン、イソドデカン、ケロシン及び高級アルコールから選ばれることを特徴とする請求項1又は2記載の希土類金属抽出剤の合成方法。
請求項4:
ジグリコール酸とエステル化剤との反応において、モル比Y/Xが、2.5≦Y/X≦6.5の範囲であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の希土類金属抽出剤の合成方法。
請求項5:
前記ジグリコール酸とエステル化剤との反応中間生成物と、ジアルキルアミンとの反応において、モル比Z/Xが、0.9≦Z/X≦1.2の範囲であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の希土類金属抽出剤の合成方法。
請求項6:
反応溶媒を、反応後に生成したジアルキルジグリコールアミド酸濃度COが0.1mol/L≦CO≦1.5mol/Lとなる量使用して反応させることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の希土類金属抽出剤の合成方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明の希土類金属抽出剤の合成方法によれば、軽希土類元素の分離に優れたジアルキルジグリコール酸を、高価な無水ジグリコール酸及び有害なジクロロメタンを用いることなく、低コストで、効率よく、かつ高収率で合成できるため、工業的利用価値が高い。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例1で合成した反応生成物(DODGAA)の1H−NMR(溶媒:CDCl3)のチャートである。
【図2】実施例2で合成した反応生成物(D2EHDGAA)の1H−NMR(溶媒:CDCl3)のチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明における希土類金属抽出剤は、下記一般式(1)
【化3】

で表されるジアルキルジグリコールアミド酸を抽出剤成分として含有する。
【0023】
ここで、R1及びR2は、互いに同一又は異種のアルキル基であるが、少なくとも一方は、炭素数6以上、好ましくは6〜18、より好ましくは7〜12の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基である。炭素数が6未満の場合、親油性が十分でないため、有機相の安定性に欠くことになり、水相との分相性が不良となるばかりか、抽出剤自身の水相への溶解が無視できなくなり、抽出剤の役割を果たすことができない。また、炭素数が過剰に大きい場合には、抽出剤の製造コストが高くなるにも拘わらず、基本性能である抽出能、分離能そのものの向上には寄与しない。なお、R1及びR2については、親油性が確保されるものであれば、一方が炭素数6以上であれば他方は6未満であってもよい。例えば、より好適なものとして、2つのオクチル基(−C817)を導入した化合物、N,N−ジオクチル−3−オキサペンタン−1,5−アミド酸:ジオクチルジグリコールアミド酸[N,N−ジオクチル−3−オキサペンタン−1,5−アミック酸:ジオクチルジグリコールアミック酸、N,N−dioctyl−3−oxapentane−1,5−amic acid:dioctyldiglycolamic acid(以下、DODGAAと称する)]や、2つの2−エチルヘキシル基(−CH2CH(C25)C49)を導入した化合物、N,N−ビス(2−エチルヘキシル)−3−オキサペンタン−1,5−アミド酸:ジ−(2−エチルヘキシル)ジグリコールアミド酸[N,N−ビス(2−エチルヘキシル)−3−オキサペンタン−1,5−アミック酸:ジ(2−エチルヘキシル)ジグリコールアミック酸、N,N−bis(2−ethylhexyl)−3−oxapentane−1,5−amicacid:di(2−ethylhexyl)diglycolamicacid(以下D2EHDGAAと称する)]などが挙げられる。
【0024】
本発明のジアルキルジグリコールアミド酸を含む希土類金属抽出剤を合成する方法では、原料であるジグリコール酸を、エステル化剤中で反応させ、更に減圧濃縮することにより、エステル化剤の未反応物及び反応残分(ジグリコール酸との反応により生成したエステル化剤の加水分解生成物)などの低沸点成分を除去して得られた反応中間生成物と、ジアルキルアミンとを、希土類金属の溶媒抽出における有機相を形成する有機溶媒であり、ジアルキルジグリコールアミド酸を溶解可能な無極性又は低極性溶媒を反応溶媒中で反応させることにより、金属抽出剤を得ることができる。例えば、まず、ジグリコール酸を、エステル化剤中に溶解後、熟成させ、更に減圧濃縮することで得られた反応中間生成物を溶媒抽出における有機相を形成する有機溶媒中に懸濁させ、次いで、ジアルキルアミンを溶媒抽出における有機相を形成する有機溶媒中に溶解させて、両者を混合することにより反応させる。ここで、ジアルキルアミンは、前記一般式(1)で示されるジアルキルジグリコールアミド酸中のR1及びR2に対応するアルキル基を有する第二級アルキルアミンを用いる。
【0025】
本発明の合成方法において、ジグリコール酸は、エステル化剤中で、反応温度が70℃以上、反応時間が1時間以上で反応させる。
【0026】
反応温度が、70℃に満たない場合、反応速度が低下するため、90%を超える反応率を得ることは難しく、十分に反応するためには多大な時間を有する。そのため、反応温度は、70℃以上であり、好ましくは70〜140℃であり、より好ましくは80〜120℃である。
【0027】
また、反応時間が1時間未満の場合、反応が十分な反応率に到達しないため、収率、純度90%以上の反応生成物を得ることができない。そのため、反応時間は、1時間以上とし、好ましくは1〜6時間、より好ましくは2〜4時間とする。
【0028】
この反応で、ジグリコール酸の量をX(mol)、エステル化剤の量をY(mol)とした場合のモル比Y/Xが、2.5未満の場合、反応が速やかに進行しないため、得られる反応中間生成物、ひいては、目的の抽出剤成分であるジアルキルジグリコールアミド酸の収率、純度は十分とならない。十分な収率と、純度90%以上を得るためのY/Xの範囲は、モル比Y/Xが2.5以上であり、2.5≦Y/X≦6.5であることが好ましく、3.5≦Y/X≦5.5であることがより好ましい。
【0029】
この反応で得られる反応中間生成物は、その大部分が無水ジグリコール酸ではあるが、未反応のジグリコール酸、エステル化剤及び原料であるジグリコール酸に含有される不純物などを少量含んでいる。本発明の合成方法によりジグリコール酸とエステル化剤との反応を行えば、合成されたジアルキルジグリコールアミド酸を含む金属抽出剤を実用上問題ない純度で得ることができる。金属抽出剤のジアルキルジグリコールアミド酸の純度を向上させるために、水洗により水溶性不純物を除去することも可能であるが、実用上は、その必要はなく、希土類金属の抽出・分離性能が劣化するなどの影響はない。
【0030】
本発明におけるエステル化剤は、エステル化剤を用いた反応後に、減圧濃縮(減圧乾燥)により、無水ジグリコール酸を残して、未反応物及び反応残分を除去(留去)するという点から、低沸点のものが選択される。このエステル化剤は、ジグリコール酸の2つのカルボキシル基を脱水縮合させることができる薬剤であり、例えば、無水酢酸、無水トリフルオロ酢酸が挙げられる。これらのエステル化剤を用いることで、その減圧除去が可能となることから、本発明の合成方法では、ジアルキルジグリコールアミド酸の純度向上のための水洗、即ち、エステル化剤を水洗除去する必要がない。
【0031】
ここで用いる反応溶媒の溶媒抽出における有機相を形成する有機溶媒としては、ジアルキルジグリコールアミド酸を溶解可能な無極性又は低極性溶媒(例えば、比誘電率が15以下)を用い、水への溶解度が低く、適度な抽出剤の溶解度をもち、比重が軽く、更に抽出能力が向上するのに適したものが選択される。例えば、トルエン、キシレン、ヘキサン、イソドデカン、ケロシン及び高級アルコール(例えば、炭素数5〜8の直鎖のアルコール)等である。これらの有機溶媒を反応溶媒に用いることで、反応溶媒の除去が不要となり、そのまま、又は必要があれば所定の溶媒抽出の有機相の金属抽出剤濃度になるように溶媒を加えるだけで、溶媒抽出の有機相として用いることができる。一方、溶媒抽出における有機相を形成する有機溶媒であるジアルキルジグリコールアミド酸を溶解可能な無極性又は低極性溶媒以外の反応溶媒の場合は、原料を混合し反応させた後、反応溶媒を除去する必要がある。
【0032】
本発明の金属抽出剤の合成方法におけるジグリコール酸(Xmol)とジアルキルアミン(Zmol)との比率(Z/X)は、ジグリコール酸とエステル化剤を反応させ、更に減圧濃縮することで得られた反応中間生成物に含まれる主成分の無水ジグリコール酸の純度を考慮すると、0.9以上であり、0.9≦Z/X≦1.2であることが好ましく、0.95≦Z/X≦1.1であることがより好ましい。本発明で得られる反応生成物には、目的のジアルキルジグリコールアミド酸と共に、未反応のジアルキルアミンが含まれる。従来の方法においては、未反応のジアルキルアミンを取り除くため、再結晶、デカンテーションといった精製を複数回実施していたが、ジアルキルアミンが残留した金属抽出剤を用いて溶媒抽出を行っても、その分離性及び分相性に何ら問題はなく、良好な抽出・分離が可能である。即ち、ジアルキルアミンが、金属抽出剤や溶媒抽出の有機相に残留していても、抽出・分離における阻害要因にならないため、不純物としてそれを除去する必要はなく、合成工程の簡略化を図ることができる。更に、再結晶、デカンテーションといった精製による反応生成物のロスも少ないことから、収率も向上する。
【0033】
Z/X>1.2の場合、得られる反応生成物には、目的のジアルキルジグリコールアミド酸と共に、過剰の未反応ジアルキルアミンが含まれることがある。この場合は、溶媒抽出における分離性、分相性に問題は生じないため、抽出剤として用いることはできるが、ジアルキルアミンを過剰に用いる意味がない。また、合成原料コストが高くなることから、効果的ではない。
【0034】
Z/X<0.9の場合、反応生成物として目的のジアルキルジグリコールアミド酸は得られるが、ジグリコール酸から生成したジグリコール酸無水物を過剰量にて反応させることになるため、反応生成物に未反応のジグリコール酸が相当量残留する。ジグリコール酸が残留した金属抽出剤を用いて溶媒抽出を行うと、十分な分離性能が得られないばかりか、有機相、水相の界面にクラッドが発生し、白濁してしまうため、分相不良となり、正常な抽出・分離ができない。これは、金属抽出剤酸と共に残留したジグリコール酸が、希土類金属イオンと錯形成するため、良好な分離・抽出ができないことを示す。つまり、ジグリコール酸が分離・抽出の阻害要因になっているためと考えられる。この場合、正常な抽出・分離ができる希土類金属抽出剤として、ジグリコール酸を含まないジアルキルジグリコールアミド酸を得るには、従来の方法と同様に、未反応のジグリコール酸を除去する工程、即ち、水溶性のジグリコール酸を取り除くために反応溶媒を除去し、反応生成物を水洗することが必要となる。ただし、水洗を行うと、水への溶解度が非常に低いジアルキルジグリコールアミド酸は、結晶化し、溶媒中に析出することがある(例えば、DODGAAの水への溶解度は、6.2×10-6mol/Lである)。ここで結晶化したジアルキルジグリコールアミド酸を希土類金属抽出剤として用いるためには、濾過、乾燥しなければならず、比率Z/Xが0.9≦Z/X≦1.2の場合に比べ、多くの工程が必要となるため、効率的ではない。
【0035】
本発明の合成方法においては、反応溶媒を、反応後にジアルキルジグリコールアミド酸濃度COが0.1mol/L≦CO≦1.5mol/Lとなる量使用して反応させることが好ましい。具体的には、例えば、合成反応によって生成するジアルキルジグリコールアミド酸の量を事前に原料の量から反応式によって化学量論量で算出し、ジアルキルジグリコールアミド酸金属抽出剤濃度COが0.1mol/L≦CO≦1.5mol/L、好ましくは0.2mol/L≦CO≦1.0mol/Lとなるように反応溶媒量を調整する。これによって、溶媒抽出時において、有機相中の金属抽出剤が、実際の抽出工程において適用する所定の濃度になるように溶媒を加えるなどの濃度調整の必要がなく、そのまま溶媒抽出の有機相として用いることができる。
【0036】
抽出剤濃度CO<0.1mol/Lの場合、合成によりジアルキルジグリコールアミド酸は生成されるものの、実操業上の溶媒抽出において、その有機相の金属抽出剤濃度が低すぎるため、0.03mol/L以下の濃度の希土類水溶液しか処理できなくなってしまうおそれがある。その場合、分離設備の大規模化を招き、コスト高となる。また、実操業につり合うように、低い抽出剤濃度を高めるのは、非常に困難であり、効率的でなく、現実的ではない。
【0037】
一方、抽出剤濃度COをCO>1.5mol/Lとすることは、金属抽出剤に含まれるジアルキルジグリコールアミド酸の種類により、一般的な溶媒抽出法で用いられる有機溶媒に対する溶解度を考慮すると、困難となることがある。その場合、合成反応後、溶媒中に溶解できないジアルキルジグリコールアミド酸は、結晶化し、析出するおそれがある。ジアルキルジグリコールアミド酸を溶解させるには、エントレーナーとなるべき溶媒や界面活性剤等を添加することで可能となるが、溶媒抽出の有機相としては、安定した操業を制御する条件がより複雑化するため効率的ではない。また、たとえ、金属抽出剤が、溶媒抽出法で用いられる有機溶媒に対する十分な溶解度を有していても、抽出されるべき水相の金属濃度に対して過剰すぎるため、意味がなく、経済的ではない。
【実施例】
【0038】
以下に実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0039】
[実施例1、比較例1]
ジグリコール酸54g(0.40mol)、無水酢酸240g(2.35mol)の混合溶液を2時間加熱還流し、その後、過剰の無水酢酸及び反応で生成した酢酸を減圧除去した。得られた濃縮物(反応中間生成物)にトルエン300gを加え、次いで、ジオクチルアミン96g(0.40mol)を滴下し、室温で2時間攪拌することで、反応生成物のトルエン溶液を得た(実施例1)。
【0040】
ここで、得られた反応生成物溶液の一部を取り出し、減圧濃縮を行うことで溶媒を除去し、その後、1H−NMRによる同定を行ったところ、この反応生成物が目的物のDODGAAであることを確認した(図1)。このDODGAAの収率は96%であった。
【0041】
また、ジグリコール酸54g(0.40mol)にトルエン300gを加え、次いで、ジオクチルアミン96g(0.40mol)を滴下し、室温で2時間攪拌することで、反応生成物のトルエン溶液を得た(比較例1)。
【0042】
次に、抽出分離性能試験を行うため、実施例1及び比較例1における反応生成物溶液中のDODGAA濃度を合成原料と反応溶媒の量から化学量論量で算出し、それらをトルエンで希釈することで、DODGAA濃度が0.3mol/Lの溶液を調製して、有機相となる有機溶液とした。
【0043】
混合希土類金属水溶液として、濃度がPr:Nd=1:1(モル比)で、Pr+Nd=0.1mol/Lとなるように塩化プラセオジムと塩化ネオジムの混合水溶液を調製して水相となる水溶液とした。前記有機溶液100mLと水溶液100mLを分液漏斗に入れ、20℃で約20分間振盪し、抽出させ平衡に達した後、有機相と水相を分離した。更に、分離した有機相100mLと5N塩酸100mLを分液漏斗に入れ、20℃で約20分間振盪し、有機相に抽出された希土類元素を塩酸水溶液中に逆抽出した。水相と逆抽出した塩酸水溶液中のプラセオジムとネオジムの濃度をICP発光分析装置(ICP−7500:島津製作所(株)製商品名)で測定した。Nd/Pr分離係数及び分相状態の結果を表1に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
実施例1で得られた反応生成物の金属抽出剤としての分離性能を示すNd/Pr分離係数は良好であり、更にその分相状態も良好であった。一方、比較例1では、分相状態が分相不良となり、Nd/Pr分離係数は測定不能であった。
【0046】
[実施例2、比較例2]
ジグリコール酸56g(0.42mol)、無水酢酸240g(2.35mol)の混合溶液を4時間加熱還流し、その後、過剰の無水酢酸及び反応で生成した酢酸を減圧除去した。得られた濃縮物(反応中間生成物)にヘキサン300gを加え、次いで、ジ(2−エチルヘキシル)アミン101g(0.42mol)を滴下し、室温で2時間攪拌することで、反応生成物のヘキサン溶液を得た(実施例2)。
【0047】
ここで、得られた反応生成物溶液の一部を取り出し、減圧濃縮を行うことで溶媒を除去し、その後、1H−NMRによる同定を行ったところ、この反応生成物が目的物のD2EHDGAAであることを確認した(図2)。このD2EHDGAAの収率は99%であった。
【0048】
また、反応溶媒に、エタノールを用いた以外は、前記と同様の方法によって、反応生成物のエタノール溶液を得た(比較例2)。
【0049】
次に、抽出分離性能試験を行うため、実施例2及び比較例2における反応生成物溶液中のD2EHDGAA濃度を合成原料と反応溶媒の量から化学量論量で算出し、それらをヘキサンで希釈することで、D2EHDGAA濃度が0.3mol/Lの溶液を調製して、有機相となる有機溶液とした。
【0050】
混合希土類金属水溶液として、濃度がPr:Nd=1:1(モル比)で、Pr+Nd=0.1mol/Lとなるように塩化プラセオジムと塩化ネオジムの混合水溶液を調製して水相となる水溶液とした。前記有機溶液100mLと水溶液100mLを分液漏斗に入れ、20℃で約20分間振盪し、抽出させ平衡に達した後、有機相と水相を分離した。更に、分離した有機相100mLと5N塩酸100mLを分液漏斗に入れ、20℃で約20分間振盪し、有機相に抽出された希土類元素を塩酸水溶液中に逆抽出した。水相と逆抽出した塩酸水溶液中のプラセオジムとネオジムの濃度をICP発光分析装置(ICP−7500:島津製作所(株)製商品名)で測定した。Nd/Pr分離係数及び分相状態の結果を表2に示す。
【0051】
【表2】

【0052】
実施例2で得られた反応生成物の金属抽出剤としての分離性能を示すNd/Pr分離係数は良好であり、更にその分相状態も良好であった。一方、比較例2では、Nd/Pr分離係数、分相状態ともに実施例2に比べて劣った結果となり、特に、その分相状態は不良であることから、溶媒抽出には不適である。
【0053】
[実施例3,4、比較例3,4]
ジグリコール酸67g(0.5mol)、無水酢酸255g(2.50mol)の混合溶液を、下記表3で示される条件にて加熱還流し、その後、過剰の無水酢酸及び反応で生成した酢酸を減圧除去した。得られた濃縮物(反応中間生成物)にトルエン200gを加え、次いで、ジ(2−エチルヘキシル)アミン121g(0.5mol)を滴下し、室温で2時間攪拌することで、反応生成物のトルエン溶液を得た。
【0054】
次に、抽出分離性能試験を行うため、実施例3,4及び比較例3,4における反応生成物溶液中のD2EHDGAA濃度を合成原料と反応溶媒の量から化学量論量で算出し、それらをトルエンで希釈することで、D2EHDGAA濃度が0.3mol/Lの溶液を調製して、有機相となる有機溶液とした。
【0055】
混合希土類金属水溶液として、濃度がPr:Nd=1:1(モル比)で、Pr+Nd=0.1mol/Lとなるように塩化プラセオジムと塩化ネオジムの混合水溶液を調製して水相となる水溶液とした。前記有機溶液100mLと水溶液100mLを分液漏斗に入れ、20℃で約20分間振盪し、抽出させ平衡に達した後、有機相と水相を分離した。更に、分離した有機相100mLと5N塩酸100mLを分液漏斗に入れ、20℃で約20分間振盪し、有機相に抽出された希土類元素を塩酸水溶液中に逆抽出した。水相と逆抽出した塩酸水溶液中のプラセオジムとネオジムの濃度をICP発光分析装置(ICP−7500:島津製作所(株)製商品名)で測定した。Nd/Pr分離係数及び分相状態の結果を表3に示す。
【0056】
【表3】

【0057】
ジグリコール酸と無水酢酸の反応条件として反応温度70℃以上、反応時間1時間以上である実施例3、4は、その金属抽出剤分離性能を示すNd/Pr分離係数及びその分相状態が良好であった。一方、この反応条件を満たさない比較例3、4は、Nd/Pr分離係数、分相状態ともに劣った結果となった。
【0058】
[実施例5,6、比較例5,6]
下記表4中、Xで示される量のジグリコール酸と、下記表4中、Yで示される量の無水酢酸の混合溶液を4時間加熱還流し、その後、過剰の無水酢酸及び反応で生成した酢酸を減圧除去した。得られた濃縮物(反応中間生成物)にトルエン400gを加え、次いで、下記表4中、Zで示される量のジオクチルアミンを滴下し、室温で2時間攪拌することで、反応生成物のトルエン溶液を得た。用いたジグリコール酸の量(Xmol)と、エステル化剤である無水酢酸の量(Ymol)との比であるY/X、及びジグリコール酸の量(Xmol)とジオクチルアミンの量(Zmol)との比であるZ/Xは、表4に示すとおりである。
【0059】
次に、抽出分離性能試験を行うため、実施例5,6及び比較例5,6における反応生成物溶液中のDODGAA濃度を合成原料と反応溶媒の量から化学量論量で算出し、それらをトルエンで希釈することで、DODGAA濃度が0.3mol/Lの溶液を調製して、有機相となる有機溶液とした。
【0060】
混合希土類金属水溶液として、濃度がPr:Nd=1:1(モル比)で、Pr+Nd=0.1mol/Lとなるように塩化プラセオジムと塩化ネオジムの混合水溶液を調製して水相となる水溶液とした。前記有機溶液100mLと水溶液100mLを分液漏斗に入れ、20℃で約20分間振盪し、抽出させ平衡に達した後、有機相と水相を分離した。更に、分離した有機相100mLと5N塩酸100mLを分液漏斗に入れ、20℃で約20分間振盪し、有機相に抽出された希土類元素を塩酸水溶液中に逆抽出した。水相と逆抽出した塩酸水溶液中のプラセオジムとネオジムの濃度をICP発光分析装置(ICP−7500:島津製作所(株)製商品名)で測定した。Nd/Pr分離係数及び分相状態の結果を表4に示す。
【0061】
【表4】

【0062】
ジグリコール酸(Xmol)、無水酢酸(Ymol)、ジオクチルアミン(Zmol)のそれぞれのモル比Y/Xが2.5以上、Z/Xが0.9以上である実施例5,6の場合、その金属抽出剤分離性能を示すNd/Pr分離係数及びその分相状態は良好であった。一方、Y/X<2.5である比較例5、及びZ/X<0.8である比較例6は、過剰であるジグリコール酸が抽出の阻止要因になってしまうため、分相状態は分相不良となり、更に、実施例に比べNd/Pr分離係数は低いものとなった。
【0063】
[実施例7〜9]
ジグリコール酸60g(0.45mol)、無水酢酸230g(2.25mol)の混合溶液を4時間加熱還流し、その後、過剰の無水酢酸及び反応で生成した酢酸を減圧除去した。得られた濃縮物(反応中間生成物)にケロシンAmLを加え、次いで、ジ(2−エチルヘキシル)アミン109g(0.45mol)を滴下し、室温で2時間攪拌することで、反応生成物のケロシン溶液を得た。反応溶媒であるケロシン量Aは、表5に示す通りである。
【0064】
ここで、得られた反応生成物溶液の一部を取り出し、減圧濃縮を行うことで溶媒を除去し、その後、1H−NMRによる同定を行ったところ、この反応生成物が目的物のD2EHDGAAであることを確認した。反応生成物であるD2EHDGAAのケロシン溶液中の濃度CO(D2EHDGAAを化学量論量として算出)を表5に示す。
【0065】
ここで得られた反応生成物(D2EHDGAA)のケロシン溶液を有機相となる有機溶液としてそのまま用いて、抽出分離性能試験を下記のように行った。
【0066】
混合希土類金属水溶液として、濃度がPr:Nd=1:1(モル比)で、Pr+Ndが表5に示す濃度となるように塩化プラセオジムと塩化ネオジムの混合水溶液を調製して水相となる水溶液とした。前記有機溶液100mLと水溶液100mLを分液漏斗に入れ、20℃で約20分間振盪し、抽出させ平衡に達した後、有機相と水相を分離した。更に、分離した有機相100mLと5N塩酸100mLを分液漏斗に入れ、20℃で約20分間振盪し、有機相に抽出された希土類元素を塩酸水溶液中に逆抽出した。水相と逆抽出した塩酸水溶液中のプラセオジムとネオジムの濃度をICP発光分析装置(ICP−7500:島津製作所(株)製商品名)で測定した。Nd/Pr分離係数及び分相状態の結果を表5に示す。
【0067】
【表5】

【0068】
D2EHDGAA濃度COが、0.1mol/L≦CO≦1.5mol/Lである実施例7〜9は高い分離係数が得られ、かつ分相が良好であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】

(式中、R1及びR2は、互いに同一又は異種のアルキル基であり、少なくとも一方は炭素数6以上の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を示す。)
で表されるジアルキルジグリコールアミド酸を抽出剤成分とする希土類金属抽出剤を合成する方法であって、
ジグリコール酸Xmolを、エステル化剤Ymol中、モル比Y/Xを2.5以上とし、反応温度70℃以上で、反応時間1時間以上で反応させ、その後、減圧濃縮することで、未反応物及び反応残分を除去して反応中間生成物を得、
更に、前記反応中間生成物に、反応溶媒として、希土類金属の溶媒抽出における有機相を形成する有機溶媒であり、かつジアルキルジグリコールアミド酸を溶解可能である無極性又は低極性溶媒を加え、前記反応中間生成物とジアルキルアミンZmolとを、モル比Z/Xを0.9以上として反応させることを特徴とする希土類金属抽出剤の合成方法。
【請求項2】
前記エステル化剤が、無水酢酸及び無水トリフルオロ酢酸から選ばれることを特徴とする請求項1記載の希土類金属抽出剤の合成方法。
【請求項3】
前記希土類金属の溶媒抽出における有機相を形成する有機溶媒が、トルエン、キシレン、ヘキサン、イソドデカン、ケロシン及び高級アルコールから選ばれることを特徴とする請求項1又は2記載の希土類金属抽出剤の合成方法。
【請求項4】
ジグリコール酸とエステル化剤との反応において、モル比Y/Xが、2.5≦Y/X≦6.5の範囲であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の希土類金属抽出剤の合成方法。
【請求項5】
前記ジグリコール酸とエステル化剤との反応中間生成物と、ジアルキルアミンとの反応において、モル比Z/Xが、0.9≦Z/X≦1.2の範囲であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の希土類金属抽出剤の合成方法。
【請求項6】
反応溶媒を、反応後に生成したジアルキルジグリコールアミド酸濃度COが0.1mol/L≦CO≦1.5mol/Lとなる量使用して反応させることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の希土類金属抽出剤の合成方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−12370(P2012−12370A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−153180(P2010−153180)
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【出願人】(505374783)独立行政法人日本原子力研究開発機構 (727)
【Fターム(参考)】