説明

帯体の巻取り方法

【課題】 帯体が傾いて巻き取り長さに異同を生じさせ、帯体の巻装に歪みが生じて一定の方向に曲がりやすくなるのを抑制できる帯体の巻取り方法を提供する。
【解決手段】 巻取り用コア1の周面2にキャリアテープ10をトラバースして巻き取る帯体の巻取り方法であり、巻取り用コア1の一端部から他端部方向に向かうにしたがい周面2を半径外方向に傾斜させ、この周面2の傾きθを、0<θ≦2arctan〔キャリアテープの厚み/トラバースピッチ〕に基づくものとする。そして、巻取り用コア1にキャリアテープ10を巻き取る場合に、巻き取ったキャリアテープ10の側部にキャリアテープ10の側部を重ねて重ね巻きする工程と、巻き取ったキャリアテープ10の側部にキャリアテープ10の側部を重ねることなく巻き取る工程とを交互に繰り返す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリアテープ等の帯体を巻き取る帯体の巻取り方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回路基板に電子部品を実装するとき等に使用されるキャリアテープは、巻取り用リールの巻取り用コアに巻装されている。ここで、キャリアテープの生産工程や電子部品の収納工程では、巻取り用リールの交換頻度を減少させ、生産効率を向上させる観点から、より長尺のキャリアテープが巻装されている。この種の巻取り用リールは、図21や図22に示すように、巻取り用コア1Aと、この巻取り用コア1Aにトラバースして巻装され、複数の電子部品を収納するキャリアテープ10とを備えている。
【0003】
巻取り用コア1Aは、図21や図22に示すように、円筒形に形成されてその左右の両端面にはフランジ3がそれぞれ備えられ、キャリアテープ10の幅よりも幅広とされている。また、キャリアテープ10は、図21に示すように、長いテープ11の長手方向に、電子部品を収納する複数のポケット12が配列形成され、テープ11の長手方向一側部には複数のスプロケット孔13が間隔をおいて穿孔されており、巻取り用コア1Aの周面2Aに連続して巻き取られる。
【0004】
テープ11の表面には、ポケット12に電子部品が収納された後にカバーテープが着脱自在に粘着され、このカバーテープが電子部品のポケット12からの脱落を防止し、キャリアテープ10の繰り出し時にテープ11から剥離される。
このような巻取り用リールは、空の巻取り用コア1Aにキャリアテープ10がトラバースして巻き取られる際、キャリアテープ10の巻き密度を向上させ、保管や搬送時の巻き崩れを防止する観点から、巻き取ったキャリアテープ10の他側部にキャリアテープ10の一側部が重ねて巻き取られる(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001‐247158号公報
【特許文献2】特開平9‐315628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来における巻取り用リールは、以上のように構成され、巻き取ったキャリアテープ10の他側部にキャリアテープ10の一側部が単に重ねて巻き取られるので、この重ね巻きに伴い、巻取り用コア1Aの周面2Aに対してキャリアテープ10の側部が傾斜して巻き取り長さに異同を生じさせ、キャリアテープ10の巻装に歪みが生じて一定の方向に曲がりやすくなる。
【0007】
この結果、キャリアテープ10のポケット12を位置決めし、このポケット12に電子部品を挿入する際にエラーが生じたり、キャリアテープ10のテープ11表面にカバーテープを粘着する作業に支障を来たし、電子部品の実装時にキャリアテープ10を円滑に繰り出すことができないおそれがある。
【0008】
本発明は上記に鑑みなされたもので、帯体が傾いて巻き取り長さに異同を生じさせ、帯体の巻装に歪みが生じて一定の方向に曲がりやすくなるのを抑制することのできる帯体の巻取り方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明においては上記課題を解決するため、巻取り用コアの湾曲した周面に帯体をトラバースして巻き取る帯体の巻取り方法であって、
巻取り用コアの一端部から他端部方向に向かうにしたがい周面を半径外方向に傾斜させ、この周面の傾きθを、0<θ≦2arctan〔帯体の厚み/トラバースピッチ〕に基づくものとし、
巻取り用コアに帯体を巻き取る場合に、巻き取った帯体の側部に帯体の側部を重ねて重ね巻きする工程と、巻き取った帯体の側部に帯体の側部を重ねることなく巻き取る工程とを交互に繰り返すことを特徴としている。
【0010】
なお、巻取り用コアの両端面にフランジをそれぞれ装着し、このフランジと巻取り用コアの周面の少なくともいずれか一方に誤取付防止手段を設け、巻取り用コアの周面周方向に帯体用の滑り止め溝を形成するとともに、この滑り止め溝を巻取り用コアの一端部から他端部方向にかけて配列することができる。
【0011】
また、巻取り用コアを、円筒形の内コアと、この内コアに嵌め合わされる円筒形の外コアとから構成し、この外コアの外周面を半径外方向に傾斜させることができる。
さらに、帯体を、巻取り用コアに巻き取られる長尺のテープと、このテープの長手方向に間隔をおいて配列形成され、電子部品を収納する複数の収納凹部と、テープの長手方向の少なくとも一側部に間隔をおいて設けられる複数の送り孔とを備えたキャリアテープとし、このキャリアテープのテープ表面に、電子部品の脱落を防止するカバーテープを設けることもできる。
【0012】
ここで、特許請求の範囲における巻取り用コアは、中空でも良いし、中実でも良い。この巻取り用コアは、紙製、ダンボール製、金属製、樹脂製等を特に問うものではない。帯体には、少なくともキャリアテープ(エンボスキャリアテープ、パンチドキャリアテープ、サーフテープ)、包装テープ、和紙テープ、アルミテープ、カバーテープ、磁気テープ等が含まれる。
【0013】
帯体に複数の送り孔が設けられる場合、テープの長手方向の一側部、あるいは両側部に設けることができる。さらに、誤取付防止手段は、巻取り用コア、フランジ、巻取り用コア及びフランジに、単数複数のマーキング、係止孔等の凹部、係止爪等の凸部等を設けることにより形成することができる。
【0014】
本発明によれば、帯体の巻き取りの際、巻取り用コアの周面が帯体の重なり部の傾きとは逆の方向に傾斜するので、帯体の重ね巻きに伴い、巻取り用コアの周面に対して帯体の側部が傾斜して巻き取り長さに異同を生じさせることが少ない。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、帯体が傾いて巻き取り長さに異同を生じさせ、帯体の巻装に歪みが生じて一定の方向に曲がりやすくなるのを抑制することができるという効果がある。
【0016】
また、巻取り用コアの両端面にフランジをそれぞれ装着し、このフランジと巻取り用コアの周面の少なくともいずれか一方に誤取付防止手段を設ければ、巻取り用コアの取付方向や周面の傾斜方向、各種装置に対する巻取り用リールのセット方向を把握し、適正な向きで取り付けることができる。また、巻取り用コアの周面周方向に帯体用の滑り止め溝を形成し、この滑り止め溝を巻取り用コアの一端部から他端部方向にかけて配列すれば、帯体の滑りに伴う巻き崩れを防止することができる。
【0017】
さらに、巻取り用コアを、円筒形の内コアと、この内コアに嵌め合わされる円筒形の外コアとから構成し、この外コアの外周面を半径外方向に傾斜させれば、既存の巻取り用コアを内コアとして活用することができ、コストの削減が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る帯体の巻取り方法の実施形態におけるキャリアテープの重ね巻き状態を模式的に示す説明図である。
【図2】本発明に係る帯体の巻取り方法の実施形態におけるキャリアテープの普通巻き状態を模式的に示す説明図である。
【図3】本発明に係る巻取り用コアとキャリアテープとの関係を模式的に示す説明図である。
【図4】本発明に係る帯体の巻取り方法の実施形態におけるキャリアテープの重ね巻き時の傾きを模式的に示す説明図である。
【図5】本発明に係る帯体の巻取り方法の実施形態における巻取り用コアを模式的に示す説明図である。
【図6】本発明に係る帯体の巻取り方法の実施形態におけるキャリアテープを模式的に示す斜視説明図である。
【図7】本発明に係る帯体の巻取り方法の第2の実施形態を模式的に示す斜視説明図である。
【図8】本発明に係る帯体の巻取り方法の第2の実施形態を模式的に示す要部説明図である。
【図9】本発明に係る帯体の巻取り方法の第3の実施形態を模式的に示す説明図である。
【図10】本発明に係る帯体の巻取り方法の第3の実施形態における他のマーキングを模式的に示す説明図である。
【図11】本発明に係る帯体の巻取り方法の第4の実施形態を模式的に示す説明図である。
【図12】本発明に係る帯体の巻取り方法の第5の実施形態を模式的に示す説明図である。
【図13】本発明に係る帯体の巻取り方法の実施例と比較例のキャリアテープの巻き取り状態を示す説明図である。
【図14】本発明に係る帯体の巻取り方法の実施例と比較例の測定結果を示すグラフである。
【図15】本発明に係る帯体の巻取り方法の実施例1の測定結果を示すグラフである。
【図16】本発明に係る帯体の巻取り方法の実施例2の測定結果を示すグラフである。
【図17】本発明に係る帯体の巻取り方法の比較例1の測定結果を示すグラフである。
【図18】本発明に係る帯体の巻取り方法の比較例2の測定結果を示すグラフである。
【図19】本発明に係る帯体の巻取り方法の比較例3の測定結果を示すグラフである。
【図20】本発明に係る帯体の巻取り方法の比較例4の測定結果を示すグラフである。
【図21】従来の巻取り用リールを模式的に示す説明図である。
【図22】従来の巻取り用コアを模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明すると、本実施形態における帯体の巻取り方法は、図1ないし図6に示すように、軸方向の径が異なり、方向性を有する巻取り用コア1と、この巻取り用コア1にトラバースして巻装され、複数の電子部品を収納するキャリアテープ10とを備え、回路基板に電子部品が実装される際、巻取り用コア1からキャリアテープ10が巻き戻して順次繰り出され、このキャリアテープ10の電子部品が回路基板に実装される。
【0020】
巻取り用コア1は、図1、図2、図5に示すように、例えば所定の樹脂を含む成形材料を使用して中空の略円錐台形に成形され、左右の一端部から他端部方向、換言すれば、軸方向に向かうにしたがい周面2が半径外方向に徐々に傾斜形成されており、巻取り装置の駆動軸にセットされる。この巻取り用コア1の成形材料としては、特に限定されるものではないが、例えば成形性や軽量性等に優れるABS樹脂、ポリスチレン、発泡ポリスチレン(PSP)、ポリオレフィン、発泡ポリオレフィン等があげられる。巻取り用コア1の左右両端面は、それぞれ開口形成され、円板形のフランジ3がそれぞれ着脱自在に装着される。
【0021】
係るフランジ3の装着に際しては、巻取り用コア1の端面に複数の係止爪をそれぞれ突出形成し、フランジ3に、各係止爪と係止する係止孔9を穿孔したり、あるいは巻取り用コア1の端面に複数の係止溝をそれぞれ形成し、フランジ3には、各係止溝と係止する係止爪を形成すると良い。
【0022】
キャリアテープ10は、図1、図2、図6に示すように、可撓性を有する長尺のテープ11を備え、このテープ11の長手方向に、電子部品を収納する有底角筒形のポケット12が複数配列形成され、テープ11の長手方向一側部には複数のスプロケット孔13が間隔をおいて穿孔されており、巻取装置の左右方向にスライド可能なガイドローラ20により巻取り用コア1の左右横方向に移動しながら、巻取り用コア1の湾曲した周面2に連続して巻き取られる。
【0023】
キャリアテープ10は、例えばポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート等からなる成形材料により1200m以上の長さに成形され、必要に応じて導電性等が選択的に付与される。テープ11の表面には、ポケット12に電子部品が収納された後に図示しないカバーテープが加熱・超音波シールされたり、あるいは着脱自在に粘着され、このカバーテープが電子部品のポケット12からの脱落を防止し、キャリアテープ10の繰り出し時にテープ11から剥離される。また、電子部品は、特に限定されるものではないが、例えばLED、セラミックコンデンサ、チップ抵抗、電気コネクタ、トランジスタ等があげられる。
【0024】
キャリアテープ10の巻き取りに際しては、巻き取られたキャリアテープ10の他側部にキャリアテープ10の一側部が重ねて巻き取られる重ね巻き(図1参照)と、巻き取られたキャリアテープ10の他側部にキャリアテープ10が重なることなく隣接して巻き取られる普通巻き(図2参照)とが交互に繰り返される。例えば、巻取り用コア1の左端から右端までキャリアテープ10を巻き取る場合には、キャリアテープ10が重ね巻きされ、巻取り用コア1の右端から左端までキャリアテープ10を巻き取る場合には、キャリアテープ10が普通巻きされる。
【0025】
さて、巻取り用コア1はキャリアテープ10の重なり部の傾きとは逆の方向に周面2がテーパーに形成される(図3参照)が、この周面2の傾きθは、0<θ≦2arctan〔キャリアテープの厚み/トラバースピッチ〕に基づいて決定される。これは、重ね巻きの際、キャリアテープ10の傾きθは、θ=arctan〔キャリアテープの厚み/トラバースピッチ〕と考えられるからである(図4参照)。
【0026】
例えばキャリアテープ10の傾きθは、キャリアテープ10の厚みが0.25mm、トラバースピッチが5.7mmの場合、θ≒2.5となる。これにより、巻取り用コア1の周面2の最適な傾きθは、キャリアテープ10の厚み、トラバースピッチ、製品のエンボス形状により異なるものの、概ね0<θ≦2θが適性と考えられる。具体的には、1°〜5°、好ましくは1.5°〜5°、より好ましくは1.5°程度が良い。
【0027】
上記構成において、巻取り用リールの巻取り用コア1にキャリアテープ10をトラバースして巻き取る場合には、巻取り装置の駆動軸に空の巻取り用コア1を嵌合し、この巻取り用コア1にキャリアテープ10の端部を巻き付けるとともに、巻取装置のガイドローラ20にキャリアテープ10を緊張して巻きかけ、その後、巻取り装置を駆動して巻取り用コア1の周面2にキャリアテープ10を左方向あるいは右方向に移動させつつ巻き取れば良い。
【0028】
すると、巻取り用コア1が回転してキャリアテープ10を巻き取り、このキャリアテープ10の重ね巻き、普通巻き、重ね巻き、普通巻き…が交互に繰り返されることにより、巻取り用コア1にキャリアテープ10がトラバースして完全に巻き取られる。すなわち、キャリアテープ10は、巻取り用コア1の径が小さい左端部から径の大きな右端部にかけては重ね巻きされるとともに、右端部から左端部にかけては普通巻きされ、これらの異なる巻き方が交互に繰り返される。
【0029】
したがって、キャリアテープ10の重ね巻きの場合には、巻取り用コア1の傾斜角度が0°より小さくなることがなく、常に一定の傾斜角度(0<θ<2θ)を保つことができる。これにより、キャリアテープ10の曲がりを効果的に低減することが大いに期待できる。
【0030】
係るキャリアテープ10の巻き取りの際、巻取り用コア1の周面2がキャリアテープ10の重なり部の傾きとは逆の方向に傾斜するので、キャリアテープ10の重なり部の傾きを著しく緩和することができ、重ね巻きに伴い、巻取り用コア1の周面2に対してキャリアテープ10の側部が傾斜して巻き取り長さや径に異同を生じさせることがない。
【0031】
したがって、キャリアテープ10の巻装に歪みが生じて一定の方向に大きく曲がるのを確実に防止することができ、この結果、キャリアテープ10のポケット12を位置決めし、このポケット12に電子部品を挿入する際にエラーが生じるのを抑制防止することができる。また、キャリアテープ10のテープ11表面にカバーテープを簡易かつ容易に粘着したり、電子部品の実装時に巻き取ったキャリアテープ10を円滑に繰り出すことができる。
【0032】
次に、図7と図8は本発明の第2の実施形態を示すもので、この場合には、巻取り用コア1を、周面の傾きが0°の円筒形の内コア4と、この内コア4に嵌合される円筒形の外コア5とから構成し、この外コア5の外周面6を半径外方向に傾斜させ、この傾斜した外周面6の周方向に滑り止め溝7を形成するとともに、この滑り止め溝7を外コア5の一端部から他端部方向、すなわち軸方向に複数配列して略階段形にするようにしている。
【0033】
内コア4は、新規のコアでも良いが、既存の巻取り用コア1を流用して使用することができる。外コア5は、内コア4に着脱自在に嵌合されたり、内コア4に接着固定される。また、滑り止め溝7は、外コア5の外周面6に段差を直接切り欠いたり、あるいはテープや紐等の線条体を巻装することにより形成される。その他の部分については、上記実施形態と略同様であるので説明を省略する。
【0034】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、巻取り用コア1を、別体の内コア4と外コア5とから構成するので、既に存在する汎用の巻取り用コア1を内コア4として活用し、コストの削減を図ることができるのは明らかである。また、外コア5の外周面6に複数の滑り止め溝7を形成するので、キャリアテープ10の滑りに伴う巻き崩れを防止することができる。
【0035】
次に、図9と図10は本発明の第3の実施形態を示すもので、この場合には、方向性を有する巻取り用コア1とフランジ3の少なくともいずれか一方に、所定の意義を示すマーキング8を形成するようにしている。
【0036】
マーキング8は、例えば巻取り用コア1の周面にレーザーマーキング法、インクジェット法、パッド印刷法、二色成形法等により視認可能な所定の模様(例えば、文字、図形、矢印等)に形成され、巻取り用コア1の取り付け方向、巻取り用コア1のテーパー方向、巻取装置に対する巻取り用リールの挿入方向、あるいはキャリアテープ10の成形機を指し示すよう機能する。その他の部分については、上記実施形態と略同様であるので説明を省略する。
【0037】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、巻取り用コア1やフランジ3にマーキング8を施すので、巻取り用コア1の周面2の傾斜方向を簡単に判別したり、巻取り用リールの取付作業を円滑に進めたり、取り付けミスを簡易に防止することができるのは明白である。
【0038】
次に、図11は本発明の第4の実施形態を示すもので、この場合には、一対のフランジ3の中心部付近に、巻取り用コア1の端面の係止爪に対する装着用の係止孔9をそれぞれ複数穿孔し、巻取り用コア1の拡径側におけるフランジ3の係止孔9と、巻取り用コア1の縮径側におけるフランジ3の係止孔9とを相互に異なる形に形成し、巻取り用リールを逆に取り付けてしまう人為的ミスを未然に防止するようにしている。
【0039】
巻取り用コア1の拡径側におけるフランジ3の各係止孔9は三角形に形成され、巻取り用コア1の縮径側におけるフランジ3の各係止孔9は長孔に形成される。その他の部分については、上記実施形態と略同様であるので説明を省略する。
【0040】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、一対のフランジ3の係止孔9の形を相違させ、フランジ3を係止する際、逆向きへの取り付けを不可能とするので、常に正しい向きで取り付けることができる。
【0041】
次に、図12は本発明の第5の実施形態を示すもので、この場合には、一対のフランジ3に、巻取り用コア1の端面の係止爪に対する装着用の係止孔9をそれぞれ複数穿孔し、巻取り用コア1の拡径側におけるフランジ3の係止孔9と、巻取り用コア1の縮径側におけるフランジ3の係止孔9とを相互に異なる位置に配列し、巻取り用リールを逆に取り付けてしまう人為的ミスを未然に防止するようにしている。
【0042】
巻取り用コア1の拡径側におけるフランジ3の各係止孔9は、フランジ3の中心部と周縁部との境界付近に形成され、巻取り用コア1の縮径側におけるフランジ3の各係止孔9は、フランジ3の中心部付近に形成される。その他の部分については、上記実施形態と略同様であるので説明を省略する。
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、一対のフランジ3の係止孔9の穿孔位置を相違させ、フランジ3を係止する際、逆向きへの取り付けを不可能とするので、常に適正な向きで取り付けることができる。
【0043】
なお、上記実施形態では巻取り用コア1を中空の略円錐台形に形成したが、中実の略円錐台形でも良い。また、巻取り用コア1の周面2を半径外方向にテーパー形成し、この周面2にシボ加工等の滑り止め加工を施しても良い。また、上記実施形態では巻取り用コア1の周面2を半径外方向に傾斜させたが、巻取り用コア1の周面2に曲率を付けつつ半径外方向に傾斜させても良い。
【0044】
また、巻取り用コア1の周面2を半径外方向に傾斜させ、この傾斜した周面2の周方向に滑り止め溝7を形成するとともに、この滑り止め溝7を一端部から他端部方向にかけて配列することもできる。また、巻取り用コア1とフランジ3とを一体化しても良いし、フランジ3を円板以外の多角形やその他の形に形成することもできる。
【0045】
さらに、一対のフランジ3に貫通孔をそれぞれ必要数穿孔し、巻取り用コア1の拡径側あるいは縮径側におけるフランジ3の貫通孔に着脱自在の別体のプラグを選択的に挿入し、巻取装置に巻取り用リールをセットする際、挿入したプラグをセンサにより検出することも可能である。こうすれば、巻取装置に巻取り用リールをセットする際、フランジ3に挿入したプラグをセンサにより検出し、巻取り用リールの過誤によるセット時に警報を鳴らすことができるので、巻取り用リールを適切にセットすることが可能になる。
【実施例】
【0046】
以下、本発明に係る帯体の巻取り方法の実施例を比較例と共に説明する。
実施例1
先ず、巻取り装置の駆動軸に空の巻取り用コアを嵌合し、この巻取り用コアにキャリアテープの端部を巻き付け、巻取装置のガイドローラにキャリアテープを緊張して巻きかけた。巻取り用コアの周面には、1.5°のテーパーを半径外方向に形成した。また、キャリアテープとして、テープの幅が8mm、各ポケットの深さが1.42mmで、テープの長手方向一側部に複数のスプロケット孔が間隔をおいて穿孔されたタイプを使用した。
【0047】
巻取装置のガイドローラにキャリアテープを巻きかけたら、巻取り装置を駆動して巻取り用コアの周面にキャリアテープを左方向あるいは右方向に移動させつつ巻き取り、キャリアテープの曲がりを測定し、この測定結果を図14、図15のグラフにまとめた。キャリアテープの巻き取りに際しては図13に示すように、キャリアテープの重ね巻きと普通巻きとを交互に繰り返した。
【0048】
重ね巻きの際、キャリアテープの傾きθは、θ≒2.5であった。また、キャリアテープの曲がりの測定に際しては、重ね巻き層の端部から開始し、普通巻き層の元の端部まで測定して終了した。キャリアテープの曲がりは、スプロケット孔の穿孔された一側部が伸びた場合をプラス、スプロケット孔のない他側部が伸びた場合をマイナスとして測定した。図14の左端は測定の開始点、中央付近の点線は反対側のフランジ付近、右端は測定開始点側のフランジを示している。また、図15の中央付近の点線は、キャリアテープの重ね巻きから普通巻きへの変更点を示している。
【0049】
キャリアテープの曲がりを測定した結果、キャリアテープの曲がりが実に少なく、きわめて良好な結果を得た。
【0050】
実施例2
基本的には実施例1と同様であるが、巻取り用コアの周面には、5°のテーパーを半径外方向に形成した。その他は実施例1と同様にしてキャリアテープの曲がりを測定し、この測定結果を図14、図16のグラフにまとめた。図16の中央付近の点線は、キャリアテープの重ね巻きから普通巻きへの変更点を示す。
キャリアテープの曲がりを測定した結果、キャリアテープの曲がりが実に少なく、きわめて良好な結果を得た。
【0051】
比較例1
基本的には実施例1と同様であるが、巻取り用コアの周面に、8°のテーパーを半径外方向に形成した。その他は実施例1と同様にしてキャリアテープの曲がりを測定し、この測定結果を図14、図17のグラフにまとめた。図17の中央付近の点線は、キャリアテープの重ね巻きから普通巻きへの変更点を示す。
キャリアテープの曲がりを測定した結果、巻取り用コアの周面の傾きθが2θよりも大きいので、キャリアテープが全体としてマイナス側に曲がり、好ましくない結果を得た。
【0052】
比較例2
基本的には実施例1と同様であるが、巻取り用コアの周面のテーパーを0°とした。すなわち、従来から存在する汎用の巻取り用コアを使用し、その他は実施例1と同様にしてキャリアテープの曲がりを測定し、この測定結果を図14、図18のグラフにまとめた。図18の中央付近の点線は、キャリアテープの重ね巻きから普通巻きへの変更点を示す。
キャリアテープの曲がりを測定した結果、キャリアテープが曲がり、好ましくない結果を得た。
【0053】
比較例3
基本的には実施例1と同様であるが、巻取り用コアの周面に、−1.5°の逆向きのテーパーを半径内方向に形成した。その他は実施例1と同様にしてキャリアテープの曲がりを測定し、この測定結果を図14、図19のグラフにまとめた。図19の中央付近の点線は、キャリアテープの重ね巻きから普通巻きへの変更点を示す。
キャリアテープの曲がりを測定した結果、キャリアテープが0°の場合よりも大きく曲がり、好ましくない結果を得た。
【0054】
比較例4
基本的には実施例1と同様であるが、巻取り用コアの周面に、−3°の逆向きのテーパーを形成した。その他は実施例1と同様にしてキャリアテープの曲がりを測定し、この測定結果を図14、図20のグラフにまとめた。図20の中央付近の点線は、キャリアテープの重ね巻きから普通巻きへの変更点を示す。
キャリアテープの曲がりを測定した結果、キャリアテープが0°の場合よりもプラス側に大きく曲がり、好ましくない結果を得た。
【0055】
以上の実施例と比較例から、巻取り用コアの周面の傾きを0<θ≦2θの範囲内とすれば、キャリアテープの曲がりを大幅に抑制することができるのを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明に係る帯体の巻取り方法は、電気部品、電子部品、精密部品等の製造分野で使用される。
【符号の説明】
【0057】
1 巻取り用コア
1A 巻取り用コア
2 周面
2A 周面
3 フランジ
4 内コア
5 外コア
6 外周面
7 滑り止め溝
8 マーキング(誤取付防止手段)
9 係止孔(誤取付防止手段)
10 キャリアテープ(帯体)
11 テープ
12 ポケット(収納凹部)
13 スプロケット孔(送り孔)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻取り用コアの湾曲した周面に帯体をトラバースして巻き取る帯体の巻取り方法であって、
巻取り用コアの一端部から他端部方向に向かうにしたがい周面を半径外方向に傾斜させ、この周面の傾きθを、0<θ≦2arctan〔帯体の厚み/トラバースピッチ〕に基づくものとし、
巻取り用コアに帯体を巻き取る場合に、巻き取った帯体の側部に帯体の側部を重ねて重ね巻きする工程と、巻き取った帯体の側部に帯体の側部を重ねることなく巻き取る工程とを交互に繰り返すことを特徴とする帯体の巻取り方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2013−100136(P2013−100136A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−15610(P2013−15610)
【出願日】平成25年1月30日(2013.1.30)
【分割の表示】特願2009−85566(P2009−85566)の分割
【原出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】