説明

帯状体への色柄転写装置

【課題】
帯状体と転写紙とが接してなるワークが,加圧加熱コンベアベルト間を通過することにより,ワークと加圧加熱コンベアベルトとを面接触させ,加圧加熱の範囲を広く確保し,高速にジッパーに色柄を転写する装置とする。

【解決手段】
凹凸形状を有する帯状体と転写紙よりなるワークを加圧加熱して帯状体に色柄を転写する色柄転写装置に次の手段を採用する。
第1に,次の各部を備える。
1.帯状体供給部
2.転写紙供給部
3.ワークを挟み込み,転写紙に帯状体表面に合わせた型を形成するに適した弾力性ある硬質材料の平らな表面を有する対の加圧式型形成ドラム
4.相対加圧可能で,加熱可能とされた加圧加熱コンベアベルトを有する転写部
第2に,ワークを加圧式型形成ドラムにて加圧し,転写紙に帯状体に合わせた型を形成した後,加圧加熱コンベアベルト間へワークを通過させ,加圧加熱し,転写紙の色柄を帯状体に転写する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,ジッパーなどの帯状体への色柄転写装置に関するもので,詳しくは,凹凸形状を有する帯状体とこれに接する転写紙よりなるワークを,加圧加熱して帯状体に色柄を転写する色柄転写装置である。
【背景技術】
【0002】
凹凸形状を有する帯状体の代表にジッパーがある。ジッパー1は,図4に示されるように、一対の基布部2、向かい合う基布部2の側端に設けられるレール部3,レール部3に装着されるスライダー4、上止金具5、下止金具6よりなり,スライダー4を上止金具5から下止金具6の間で移動させることによって、レール部3の複数の務歯7が噛み合ったり,開いたりして開閉するようになっている。このようなジッパー1では、レール部3及びスライダー4は金属またはプラスチック製で,基布部2が繊維製の布地であるのが普通である。
【0003】
ジッパー1は,従来より着色はされているものの無地の場合が多く、デザインに制約があり、製品のファッション性に適しない場合が多かった。特に衣類や袋物などに用いられるジッパー1の場合は、色や模様が合わないと、製品の地の色や柄から浮き上がってしまい、製品のファッション性に適合しない場合が生じるという問題があった。
【0004】
そこで,ジッパー1の基布部2に色柄をプリントする装置として特許文献1に示されるような技術が提示された。しかし,特許文献1による色柄のプリントは,基布部2に直接インクを噴射するものであるため,基布部2の裏面までインクが浸透して汚れが発生してしまい,ジッパー1の品質低下に繋がる場合があった。
【0005】
そのため最近では加圧状態に設置された一対の転写ローラ(加熱ローラ)の間に密着状態の転写紙とジッパー1を通過させ,ジッパー1の基布部2に色柄を転写する装置が開発された。しかし,この装置では,一対の転写ローラが接触する部分が線接触であるため,加熱及び加圧することのできる範囲もその範囲に限定されるものであった。
【0006】
ジッパー1の基布部2に転写紙の色柄を転写するためには,一定時間加熱及び加圧することが必要であり,上記のような転写ローラ式の転写装置では転写ローラの回転速度を落とす必要があった。このためジッパー1の基布部2に色柄を転写するために要する時間が長くなり,生産性が良くなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−145506号公開特許公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は,帯状体と転写紙とが接してなるワークが密着し,且つ,転写部の加圧加熱コンベアベルト間をワークが通過することにより,ワークと加圧加熱コンベアベルトとが面接触し,加熱及び加圧の範囲を広く確保し,高速にジッパーに色柄を転写する装置とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は,上記課題を解決するため,凹凸形状を有する帯状体とこれに接する転写紙よりなるワークを,加圧加熱して帯状体に色柄を転写する色柄転写装置に次の手段を採用する。
第1に,帯状体を供給する帯状体供給部と,転写紙を供給する転写紙供給部と,両供給部より供給された帯状体と転写紙とが接してなるワークを挟み込み,該ワークの転写紙に帯状体表面の凹凸形状に合わせた型を形成するに適した弾力性ある硬質材料の平らな表面を有する対の加圧式型形成ドラムと,同方向に走行する対のコンベアベルトであって,両コンベアベルトが相対加圧可能で,且つ内側に配置されたヒータにて加熱可能とされた加圧加熱コンベアベルトを有する転写部と,を備える。
【0010】
第2に,ワークを加圧式型形成ドラムにて加圧し,転写紙に帯状体の凹凸形状に合わせた型を形成した後,転写部の加圧加熱コンベアベルト間へワークを通過させ,加圧加熱コンベアベルトによりワークを加圧加熱し,転写紙の色柄を帯状体に転写することを特徴とする帯状体の色柄転写装置とする。
【0011】
また,本発明は,ワークが,凹凸形状を有する帯状体の表裏を転写紙で挟んだものであることを付加したり,更に帯状体が,ジッパーである点を付加することが可能である。
【0012】
更に,本発明は,上記発明に対し,加圧加熱コンベアベルトの内側とヒータとの間に,転がり部材を複数配置した点を付加した帯状体の色柄転写装置とすることもできる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は,次のような効果を有する。
第1に,転写部を,同方向に走行する対のコンベアベルトであって,両コンベアベルトが相対加圧可能で,且つ内側に配置されたヒータにて加熱可能とされた加圧加熱コンベアベルトを有する転写部とし,転写部の加圧加熱コンベアベルト間へワークを通過させ,加圧加熱コンベアベルトによりワークを加圧加熱し,転写紙の色柄を帯状体に転写するものであるので,ワークと加圧加熱コンベアベルトが面接触をし,ワークに対し,十分なる加圧加熱ができるため,帯状体に適正なる色柄の転写が可能となった。
【0014】
第2に,ワークの転写紙に帯状体表面の凹凸形状に合わせた型を形成するに適した弾力性ある硬質材料の平らな表面を有する対の加圧式型形成ドラムを設けているので,表面に凹凸形状を有する帯状体であっても,転写紙が凹凸に沿って密着し,凹凸による転写不都合が生じることがなくなった。更に,加圧式型形成ドラムの表面は弾力性があり,且つ,平らになっているため,表面の凹凸形状が異なった帯状体にあっても該ドラムの交換をすることなく利用することが可能なものとなった。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の1実施例の概要を示す正面説明図
【図2】ワークに対する圧力の強さを示す説明図
【図3】熱源と加圧加熱コンベアベルトの間に転がり部材を配置した状態の部分説明図
【図4】ジッパーの説明図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下,図面にしたがって,実施例とともに本発明の実施の形態について説明する。本実施例は,ジッパー1に転写紙8を用いて色柄を転写する色柄転写装置である。実施例では,本発明おける凹凸形状を有する帯状体として,図4に示されるような金属製の務歯7からなるレール部3を有するジッパー1を利用する。
【0017】
このジッパー1に接し,ジッパー1に色柄を転写する転写紙8は,デジタル化された図柄、文字などの色柄を分散染料のうちでも昇華性の高い染料で組成されたインクジェット用のインクを用い,インクジェットプリンターで印刷し,乾燥させた長尺体のものである。この転写紙8は,色柄が印刷された面をジッパー1と重ねて,圧力をかけて高温でプレスすることにより,転写紙8の色柄をジッパー1に転写することができるものである。
【0018】
色柄転写装置は,図1に示されるように帯状体であるジッパー1を供給する帯状体供給部9と,転写紙8を供給する転写紙供給部10と,転写紙8にジッパー1の凹凸に応じた型を形成する型形成部11と,色柄を転写する転写部12と,色柄転写後のジッパー1を収納する帯状体収納部13と,転写紙回収部14とを有する。
【0019】
帯状体供給部9は,ロール状に巻かれた連続するジッパー1を帯状体にして次工程に送り込む部分である。転写紙供給部10は,シッパーに対応する帯状体とされ,ロール状に巻かれた転写紙8をジッパー1に供給する部分であって,帯状体供給部9の上下2カ所に配置されている。
【0020】
尚,実施例ではジッパー1の上下両面に色柄を転写しようとする装置であるため,転写紙供給部10が,上下2カ所に設置されているが,ジッパー1の片面にのみ転写する装置の場合には転写紙8は上、下面どちらか片面のみを使用すれば足りるので,転写紙供給部10を,いずれか一方のみに設けたものとしても良いし,実施例での上下の転写紙供給部10の一方のみを稼働させるものとしても良い。
【0021】
型形成部11は,帯状体供給部9及び転写紙供給部10より供給された帯状体であるジッパー1と転写紙8とが接してなるワークを挟み込み,該ワークの転写紙8に帯状体表面の凹凸形状に合わせた型を形成するための上下一対の加圧式型形成ドラム15よりなる。上下の加圧式型形成ドラム15は,上下の転写紙8の裏側より圧をかけ,ジッパー1の凹凸により,これと対応する凹凸の型を転写紙8に形成する。
【0022】
加圧方式は,上下の加圧式型形成ドラム15の両方を互いに向かい合う方向に圧力をかける加圧機構としても良いし,ジッパー1の凹凸である務歯7が通常一方へ突出しているものが多いため,一方にのみ加圧機構を設けたものであっても良い。加圧の強さは,実施例のような金属製の務歯7からなる硬質の凸部を有する場合は,強め(転写部の圧力より強め)の圧力をかけ,軟質の凸部を有する場合には,比較的弱めの圧力に調節することが好ましい。
【0023】
加圧式型形成ドラム15のワーク(具体的にはワークの転写紙8の裏側)に当接する表面は,平らで,弾力性ある硬質素材を用いる。ここで弾力性ある硬質素材とは,ジッパー1などの帯状体の凹凸に当接し,加圧式型形成ドラム15により加圧された場合に,凸により合わせて凹み,凸が過ぎた後には,元の平らな表面に復元可能な可塑性を有する素材という意味である。実施例では,その固さと弾力性を有するウレタンスポンジを用いた。
【0024】
転写部12は,駆動輪16と従動輪19にかけられ,駆動輪16により同方向(実施例では図1中左方より右方に向かう方向)に走行する対のコンベアベルトであって,両コンベアベルトが相対加圧可能で,且つ内側に配置されたヒータ17にて加熱可能とされた加圧加熱コンベアベルト18よりなるものである。
【0025】
加圧加熱コンベアベルト18は,市販のフェルトベルトのような耐熱性及び熱伝導性の高い素材を用いる。熱伝導率を確保するため,金属板を布地で覆ったもの利用することも可能である。
【0026】
加圧加熱コンベアベルト18への圧力付与手段は、加圧加熱コンベアベルト18のかけられたベルトコンベア装置に設けられており,エアーコンプレッサーやモーターなどが用いられる。
【0027】
加圧加熱コンベアベルト18への熱源付与手段としてのヒータ17は,加圧加熱コンベアベルト18に,均一に熱が付与されるよう平型熱源が用いられる。実施例では,平型のレンズヒータが用いられている。ヒータ17は,加圧加熱コンベアベルト18の内側に設けられている。すなわち上部コンベアにおける加圧加熱コンベアベルト18に対しては,内側で,下側に位置する加圧加熱コンベアベルト18に向かって加熱し,下部コンベアにおける加圧加熱コンベアベルト18に対しては,内側で,上側に位置する加圧加熱コンベアベルト18に向かって加熱する。
【0028】
尚,図3に示すように,平型のヒータ17の下方に転がり部材として,硬質ゴムなどによる小さなタイヤ20を複数個つけ,ワークに容易に、熱及び圧力が均一にかかるようにすることが好ましい。
【0029】
ワークは,上下の加圧加熱コンベアベルト18にて,挟まれ上流(図1中左方)より,下流(図1中右方)に向かって搬送される。その間,加熱加圧される。実施例のジッパー1や硬質な凹凸のある素材の帯状体の場合には,圧力も出来るだけ高い圧力をかける。実施例では,摂氏190度の温度で,プレス圧は200g〜400g/平方センチメートルが適当である。
【0030】
但し,最初から全ての圧力をかけるのではなく、最初は50%〜60%程度の圧力をかけ、その後強い圧力をかけるものとする。最初から強い圧力をかけると転写紙8の破損、位置ずれなどの恐れがあるからである。実施例では図2で示されるように,転写部12の上流部では圧力は200g/平方センチメートルの圧力をかけ,下流部では400g/平方センチメートルの圧力をかけるようにしている。
【0031】
上記の圧力例は一例であって,軟質な凹凸のある素材の帯状体の場合には,プレス圧は200g〜300g/平方センチメートルが適当である場合もあり,更に,転写部12の上流側と下流側での圧力の変化をつけず,全体に同じ圧力を付与する場合もある。
【0032】
以下,本実施例の動作状態を説明する。
まず,帯状体供給部9及び転写紙供給部10から供給されたジッパー1と転写紙8は,ジッパー1に転写紙8の転写面を当接させて,転写紙8でジッパー1を挟んで,搬送対象のワークを形成する。
【0033】
次に,ワークは,型形成部11に送られ,上下の加圧式型形成ドラム15の間に搬送され,加圧式型形成ドラム15により,加圧され,転写紙8に帯状体であるジッパー1の凹凸形状に合わせた型(シッパー1の場合,務歯列溝)を形成した後,転写部12に送られる。
【0034】
転写部12では,上下の加圧加熱コンベアベルト18間へワークが搬送され,加圧加熱コンベアベルト18に挟まれて搬送されながら,加圧加熱コンベアベルト18によりワークを加圧加熱し,転写紙8の色柄を帯状体であるジッパー1に転写する。
【0035】
転写されたシッパー1及び使用済みの転写紙8は,転写部12より排出され,シッパー1は、帯状体収納部13へ,使用済みの転写紙8は転写紙回収部14に各々巻き取られる。
【符号の説明】
【0036】
1・・・ジッパー
2・・・基布部
3・・・レール部
4・・・スライダー
5・・・上止金具
6・・・下止金具
7・・・務歯
8・・・転写紙
9・・・帯状体供給部
10・・・転写紙供給部
11・・・型形成部
12・・・転写部
13・・・帯状体収納部
14・・・転写紙回収部
15・・・加圧式型形成ドラム
16・・・駆動輪
17・・・ヒータ
18・・・加圧加熱コンベアベルト
19・・・従動輪
20・・・タイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹凸形状を有する帯状体とこれに接する転写紙よりなるワークを,加圧加熱して帯状体に色柄を転写する色柄転写装置であって,
帯状体を供給する帯状体供給部と,
転写紙を供給する転写紙供給部と,
両供給部より供給された帯状体と転写紙とが接してなるワークを挟み込み,該ワークの転写紙に帯状体表面の凹凸形状に合わせた型を形成するに適した弾力性ある硬質材料の平らな表面を有する対の加圧式型形成ドラムと,
同方向に走行する対のコンベアベルトであって,両コンベアベルトが相対加圧可能で,且つ内側に配置されたヒータにて加熱可能とされた加圧加熱コンベアベルトを有する転写部と,を備え,

ワークを加圧式型形成ドラムにて加圧し,転写紙に帯状体の凹凸形状に合わせた型を形成した後,転写部の加圧加熱コンベアベルト間へワークを通過させ,加圧加熱コンベアベルトによりワークを加圧加熱し,転写紙の色柄を帯状体に転写することを特徴とする帯状体の色柄転写装置。
【請求項2】
ワークが,凹凸形状を有する帯状体の表裏を転写紙で挟んだものである請求項1に記載の帯状体の色柄転写装置。
【請求項3】
前記帯状体が,ジッパーである請求項1または2に記載の帯状体の色柄転写装置。
【請求項4】
加圧加熱コンベアベルトの内側とヒータとの間に,転がり部材を複数配置したことを特徴とする請求項1から3のうちいずれかに記載の帯状体の色柄転写装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−172403(P2010−172403A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−16356(P2009−16356)
【出願日】平成21年1月28日(2009.1.28)
【出願人】(509029221)
【Fターム(参考)】