説明

帯状物とその製造方法

【目的】 特殊な装置、熟練技術、特別な処理を必要とせず、比較的廉価に、任意の画像やデザインを帯状物に彩色、模様付けが可能な帯状物の製造方法の実現を課題とする。
【構成】 染料パターン作成手段40によってデジタル画像デ−タに基づき昇華性染料パターンを転写体上に作成する工程と、この転写体上の昇華性染料パターンを染料パターン転写装置50によって帯状物上に転写する工程を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状物とその製造方法に関し、特に彩色、模様付けを改良した帯状物とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ネックストラップ、鞄などのショルダー部分、シートベルト、ファスナーなどの帯状物は、従来、着色はされているものの無地の場合が多く、模様がある場合は織り込み模様の場合が多かった。このため、デザインに制約があり、製品のファッション性に適しない場合があった。ことに、衣類や袋物などに用いられるファスナーの場合は、色、模様が合わないと、製品の地の色や柄から浮き上がってしまい、製品のファッション性に適合しない場合生まれるという問題があった。また、模様があっても通常片面だけの場合が多かった。
【0003】
図2に帯状物の一例としてのファスナーの平面図を示す。図2において、符号1は係止部、符号2は基布部、符号3はスライダー、符号5はファスナー、符号6は務歯、符号7は上止金具、符号8は下止金具である。ファスナー5は、周知のようにスライダー3を上止金具7から下止金具8の間で移動させることによって、1対の基布部2に設けられた係止部1の複数の務歯6が噛み合ったり開いたりして開閉するようになっている。
従来のファスナー5では、係止部1は金属またはプラスチックで基布部2が繊維性の布地であり、着色はされているものの無地の場合が多く、製品のファッション性に適合しない場合があった。
【0004】
このような問題を避けるため、マルチヘッドのインクジェットプリンタを用いて直接印刷するようにした例(特許文献1参照。)、係止部1と基布部2とをほぼ同じ平面上に位置させた状態で印捺して模様を形成した例(特許文献2参照。)、係止部1にポリアミドを用い基布部2に易染性ポリエステルを用い、同一染料で染色した例(特許文献3参照。)などが報告されている。
【0005】
このような染色、プリントの方法は、大きく分けて、ダイレクトプリントと転写プリントの二つの方法がある。インクジェットやオフセット印刷などを用いて画像や各種の着色デザインを直接印刷するダイレクトプリントは、特殊な装置及び熟練した技術を必要とする。
【0006】
一方、転写プリントは、転写用紙に原画像を印刷した染料パターンを一旦形成した後に、各種の被転写物に転写する方法であり、写真、画像、デザイン等が細かいものも鮮明に表現できるという長所がある。転写プリントは、大きく分けて、表面貼り付けタイプと表面浸透タイプの二つに分けられる。
【0007】
表面貼り付けタイプは、写真、画像その他各種着色デザインを印刷した樹脂シートを接着剤で貼りあわせる方法であり、広く使われている方法である。この方法は、プリントした布帛の通気性を損なう等の問題がある。
【0008】
表面浸透タイプは、写真、画像又は各種着色デザインを転写した染料パターンから染料が直接被転写物に転写される方法である。
表面浸透タイプの例としては、転写しようとする画像をデジタル画像データとした後、これをインクジェットプリンタによって印写するインクジェット印写方法が開示されている。この方法では、布帛に予め滲み防止のために非染着性高分子化合物の皮膜を形成する前処理を施し、インクジェット印写の後に布帛に色素を固着するための後処理を施している(例えば、特許文献4参照)。
【0009】
【特許文献1】特開平5−330085号公報
【特許文献2】特開2001−145506号公報
【特許文献3】特開平7−246107号公報
【特許文献4】特開平9−262977号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述のように、帯状物に自由な彩色やデザインを施そうという試みが近年盛んになっている。ことに、ネックストラップ、鞄などのショルダー部分、シートベルトなどの両面に、あるいは、ファスナーの係止部と基布部とに彩色、模様付けしようという試みが近年行なわれ始めている。しかし、特殊な装置及び熟練した技術を必要ととしたり、染色しようとする部分に予め前処理を施したり、後処理を行なったりする必要があり、工数が掛かって高価なものになるという問題があった。
本発明はこの点を解決して、特殊な装置、熟練技術、特別な処理を必要とせず、比較的廉価に、且つ、処理部の通気性を損なわず、任意の画像やデザインを彩色、模様付けが可能な帯状物の製造方法及びその方法で製造される帯状物の実現を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の請求項1に記載の発明は、その表面に彩色を施して模様を形成する帯状物の製造方法において、デジタル画像デ−タに基づき昇華性染料パターンを転写体上に作成する工程と、この転写体上の前記昇華性染料パターンを前記帯状物の両面又は片面に転写する工程を含むことを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決するため、本発明の請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の帯状物の製造方法において、前記転写体は、紙、布帛、不織布またはフィルムであることを特徴とする。
【0013】
上記課題を解決するため、本発明の請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の帯状物の製造方法において、前記帯状物は係止部と基布部とを有するファスナーであることを特徴とする。また、本発明の請求項4に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の帯状物の製造方法において、前記帯状物は、トランクス用ウエストゴム、帽子用あごゴム、サスペンダー、エプロン用肩ひも、ネックストラップ、ショルダーベルトまたはシートベルトであることを特徴とする。
【0014】
上記課題を解決するため、本発明の請求項5に記載の発明は、請求項3に記載の帯状物の製造方法において、前記係止部及び/又は基布部は、ポリエステルからなることを特徴とする。
【0015】
上記課題を解決するため、本発明の請求項6に記載の発明は、帯状物において、デジタル画像デ−タに基づき昇華性染料パターンを転写体上に作成する工程と、この転写体上の前記昇華性染料パターンを転写する工程を含む製造方法によって表面に彩色を施して模様を形成したことを特徴とする。
【0016】
上記課題を解決するため、本発明の請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の帯状物において、前記転写工程による転写を両面に行って両面に彩色し模様を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の帯状物の製造方法は、以上のように実施されるので、比較的少ない工数で彩色、模様付けすることができ、前処理、後処理の必要がないので、多品種、少量生産でも廉価に製造することができる。この製造方法によって得られる帯状物は、色むらがなく、仕上がりが美しく、自由なデザインで彩色、模様付けが行なわれて、その上、通気性が損なわれない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の帯状物の製造方法を添付図面を参照に詳細に説明する。
図1は、本発明の帯状物の製造に使用する装置の構成を示す概略図である。この装置は、パターンを作成するパターン作成装置と、転写用紙上の昇華性染料パターンを布帛等の被転写物上に転写する染料パターン転写装置とからなる。
【0019】
パターン作成装置は、原画像の画像読み取り装置10と、読み取った画像データをデジタルデータとして画像処理する画像作成装置20と、デジタル画像データを記憶する記憶手段30と、デジタル画像データに基づき転写用紙上に昇華性染料パターンを形成する染料パターン作成手段40を代表的な構成要素としている。染料パターン作成手段40が画像作成装置20及び記憶手段30の機能を具備していてもよい。
【0020】
染料パターン転写装置50は、転写用紙上の昇華性染料パターンと布帛等の被転写物とを重ね合わせて密着状態に保持するために必要な部材と、密着状態において転写紙から昇華性染料を昇華させて被転写物に転写するための熱源を備えている。
【0021】
ここで、本発明の製造方法は、原画像の画像情報を画像読み取り装置10によって読み取る工程と、画像読み取り装置10によって読み取られた画像データを画像作成装置20によって所定の画像処理を行う工程と、画像処理を行った画像データを記憶手段30によって記憶する工程と、画像処理を行った画像データに基づき、染料パターン作成手段40によって転写用紙上に昇華性染料パターンを形成する工程と、染料パターン転写装置50によって被転写物上に昇華性染料パターンを転写する工程と、を含んでいる。後の2工程が必須工程である。
【0022】
次に、本発明の帯状物の製造方法を工程順に説明する。
【0023】
まず、画像読み取り装置10によって原画像のデジタル画像データが読み取られる。画像読み取り装置としては、市販のパソコンを使用することができる。パソコンに取り込む原画像は、種々の媒体に保存された種々の保存形式の画像であることができ、デジタルカメラで撮影した画像、作者がグラフィックデザインした画像、写真プリント、紙に描かれた絵、などが含まれ、白黒又はカラーであってよい。必要に応じて、アナログ画像はスキャナーでデジタル信号に変換してパソコンに取り込むことができる。以後、デジタル信号として取り込まれた画像をデジタル画像と称する。
【0024】
画像読み取り装置10によって読み取ったデジタル画像は、画像作成装置20に取り込まれる。画像作成装置20は、転写用紙上にきれいに転写できるような昇華性染料パターンを形成するために必要に応じて適切な画像処理を行う。
【0025】
デジタル画像は、暗過ぎる画像、明る過ぎる画像、コントラストの強過ぎる画像、弱すぎる画像等に、適当な階調を有して最低濃度と最高濃度が適当である所期の目的にかなった画像になるように画像調整を施すことが好ましい。
また市販のインクジェットプリンタを使用して出力する場合には、使用する昇華性染料に適したカラープロフィルとなるようにデジタルデータを修正し、色調整を行うことが好ましい。
【0026】
デジタル画像及びこれに結合された周辺画像は、適宜パソコンの記憶手段30(内部記憶装置又は外部記憶装置)に保存することができる。内部記憶装置にはハードディスクドライブを使用し、必要に応じて、フレキシブルディスク、メモリースティック、SDカード、CD−ROM、MO、ZIPなどの外部媒体に保存しても良い。
【0027】
画像作成装置20は、表示部(ディスプレイ装置)を備えていることが好ましく、この表示部によりデジタル画像及び周辺画像の内容を確認しながら、画像の選択、画像の加工、結合、修正等を行うことができる。画像の加工修正としては、不要部分の削除(トリミング)、拡大縮小、上記の背景画像の付加、氏名・年月日、その他の文字データの付加などが例示できる。
【0028】
画像読み取り装置10によって読み込まれるファイル形式、又は記憶手段30に記憶されるファイルの形式としては、JPEG、JTIF、TIF等が例示できる。必要に応じてこれらのファイル形式は相互に変換できる。
【0029】
画像作成装置20にて画像処理が済んだデジタル画像は次に、染料パターン作成手段40に転送される。そしてこの染料パターン作成手段40によって転写用紙上にデジタル画像に基づく昇華性染料パターン(ネガ)が形成される。この昇華性染料パターン(ネガ)は原画像から見ると、左右が反転した画像とすることが好ましい。染料パターン作成手段40としては、昇華性染料インクを備えたインクジェットプリンタや昇華性染料インクリボンを備えた感熱転写式プリンターが例示できる。
【0030】
転写方式としては、非接触のインクジェット方式が好ましい。以下、このインクジェット方式を代表例として説明する。この方式では、デジタル画像情報に基づき、インクジェットヘッドをXY平面内で移動させる。移動中に色データに基づきインクジェット吐出ノズルからCMY及び黒のインクの吐出を適宜行わせることにより昇華性インクのパターンが転写紙上に形成される。
本発明においてインクジェット方式とは、オンデマンドインクジェット方式を指し、なかでもピエゾオンデマンドインクジェット方式が好ましく使用できる。
【0031】
昇華性染料インクは、水性溶媒中に微細な昇華性染料を分散したインクである。分散された染料微粒子の凝集を防止するために、界面活性剤等の分散安定剤を使用する。昇華性染料インクは染料パターン作成手段により転写用紙上に一旦保持される。インクは減色法の3原色(イエロー(Y)、マゼンタ(M)及びシアン(C))を組み合わせて使用することが好ましく、必要に応じて黒インクを併用しても良い。イエローを1色とし、マゼンタ及びシアンを濃淡2色としても良い。黒インクはCMY3色を混合使用しても良く、黒1色を使用しても良い。
【0032】
昇華性染料としては多くの分散染料、一部の油溶性染料及び一部の塩基性染料が使用できる。
本発明で用いる染料は、蒸気圧が高く、且つ熱安定性の良いことが求められるため、非イオン性の分散染料が好ましい。具体的にはカラーインデックスNo.による表示で、CIDisperse Yellow−7、42、64、71、Orange−13、Red−4、50、60、146、364、Violet−28、Blue−56などが挙げられる。このほか、アミノアントラキノン系、インドアニリン系、キノフタロン系、ジシアノイミダゾール系、ジシアノメチン系、ジアミノアントラキノン系、ジヒドロキシアントラキノン系、ジアミノジヒドロキシアントラキノン系の染料が有効である。
【0033】
以下にYMCの昇華性染料について詳しく説明する。
イエローの昇華性染料としては Kayacet Yellow AG、KayakutYellow TDN(以上日本化薬(株)製)、PTY52 、Dianix Yellow 5R−E、DianixYellow F3G−E 、DianixBrilliant Yellow 5G−E(以上三菱化成(株))、プラストYellow 8040、DY108 (以上有本化学(株)製)、Sumikaron Yellow EFG、Sumikaron YellowE−4GL (以上住友化学(株)製)、FORON Brilliant YellowS6GLPI (Sand 社製)等が例示できる。
【0034】
マゼンタの昇華性染料としては、例えば Kayacet Red 026、KayacetRed 130、Kayacet Red B (以上日本化薬(株)製)、OilRed DR−99 、OilRed DK−99(以上有本化学(株)製)、Diacelliton Pink B(三菱化成(株)製)、Srmikaron Red E−FBL (住友化学(株)製)、LatylRed B (Du Pont 社製)、Sudan Red7B (BASF社製) 、Resolin Red FB、Ceres Red7B (以上 Bayer社製)等が例示できる。
【0035】
シアンの昇華性染料としては、例えば、Kayalon Fast Blue FG、KayacetBlue FR 、Kayacet Blue 136、Kayacet Blue 906(以上日本化薬(株)製)、Oil Blue 63 (有本化学(株)製)、HSB9(三菱化成(株)製)、DisperseBlue #1(住友化学(株)製)、MS Blue 50(三井東圧(株)製)、Ceres Blue GN(Bayer社製)、Duranol Brilliant Blue 2G (ICI社製)等が例示できる。
【0036】
転写用紙は、昇華性染料インクを適度に含浸することが好ましい。染料インクが転写用紙の表面から深く紙中に入りすぎると熱転写の段階で昇華しにくくなる傾向がある。逆に染料微粒子が適度に紙中に含浸されないとインクの滲みを生じる。転写用紙は、セルロースパルプからなる紙に適当な防水加工を施したものを使用する。
転写用紙はロール状でもシート状でも良い。シート状の転写用紙は転写画像の大きさに合わせて適宜選択できる。
転写用紙の替わりに、昇華性染料インクの適度な含浸性を有する布帛、不織布またはフィルムなどを転写体として用いても良い。紙の発火点は233℃と比較的低温であり、インクの昇華時に発火や劣化の虞がある。この点、比較的発火点の高い不織布などを用いる利点がある。
【0037】
転写紙上に保持された昇華性染料は、熱転写の際に加えられる高温雰囲気下で被転写物である帯状物に昇華移行して、帯状物を染色し、デジタル画像を帯状物上に描画することができる。
【0038】
本発明の帯状物の一例として、係止部1と基布部2が共にポリエステル製のファスナーを対象として考える。しかし、同一の昇華性染料インクで染色することが可能であれば、必ずしも係止部1と基布部2がポリエステル製である必要はなく、同一材料である必要もない。
【0039】
次に、染料パターン転写装置50により、転写用紙上の昇華性染料パターンを被転写物である帯状物に転写する。染料パターン転写装置50は、転写用紙(転写体)上の昇華性染料パターンと帯状物とを重ね合わせて密着状態に保持するために必要な部材と、密着状態において転写用紙から昇華性染料を被転写物に加熱転写するための熱源から構成されている。
【0040】
染料パターン転写装置50としては、二つのドラムの間に帯状物と転写用紙とを重ねて転写する方式や台状のプラテン上に帯状物と転写用紙を重ねて熱源からの熱を加える方式などを採用することができる。
また、手動又は自動の熱圧着機を使用することができ、自動式の場合は、転写温度、転写時間、転写圧力を適当な範囲に自動的に設定することができる。小規模の場合には染料パターン転写装置50として家庭用アイロンを使用することもできる。
【0041】
転写温度は、昇華性染料の種類により適宜選択できるが、130℃〜250℃が好ましく、160℃〜200℃がより好ましい。加熱により、融点が220℃〜330℃のポリエステル繊維(純粋なポリエステルの融点は265℃である。)の芯部分が揺らいで溶けかけ始める。この溶け出した繊維に、気化した染料が浸透して染色が行なわれる。
転写時間は、0.5〜5分が標準的であり、0.6〜1分がより好ましい。加熱時間は昇華性染料の熱特性によって異なり、一般に、転写後の高い堅牢度を要求する染料の場合には高い加熱温度と長い加熱時間を使用する。
転写圧力は、0.01〜1.0kg重/cm(0.098〜9.8N/cm)が好ましく、0.02〜0.5kg重/cm(0.19〜4.9N/cm)がより好ましい。
なお、転写用紙を過度に加熱し過ぎたり、長時間加熱しすぎたりすると、ポリエステル繊維が完全に融解して固着するなどの虞があるので注意が必要である。
【0042】
本発明の帯状物の製造方法では、原画像は上記のデジタル画像だけではなくアナログ画像であってもよい。アナログ画像としては、写真フィルム画像、ポスターなどが例示でき、これらは白黒もしくはカラーであってよい。
【0043】
原画像がアナログ画像の場合において、画像読み取り装置10では、光学素子を備えた撮像部で得た光学画像をデジタル信号に変換し、所定の信号処理を行ってデジタル画像データに変換して出力する。画像読み取り装置10としては、フィルムスキャナ、イメージスキャナ、コピー機、あるいはこれらの複合機などが例示できる。
【0044】
原画像としては上記のものに加え、通信ネットを通じて受信したデジタル画像を使用することができる。電気通信回線、光ファイバー通信などの通信ネットを用いて送信されたデジタル画像データを受信し、上記と同様の製造方法により被転写物に原画像が転写された帯状物を製造することができる。送信媒体としては、コンピュータ、携帯電話などが例示できる。
【0045】
以上の染料パターン転写装置50による転写工程を帯状物の両面に実施することによって、両面に彩色、模様付けを行った帯状物を製造することもできる。これにより、帯状物の両面使用が可能になり、より自由な斬新なデザインの製品に用いることができるようになる。例えば、帯状のゴム(例えば、トランクス用のウエストゴム、帽子用のあごゴム等)、サスペンダー、エプロン用の肩ひも、ネックストラップ、鞄などのショルダーベルト部分、車のシートベルトなど基布部からなる帯状物の両面に異なった模様をデザインしたり、両面に異なった彩色、模様付けを行った帯状物をリバーシブルな衣類や袋物に用いて効果を上げたりすることができる。
【0046】
以上、本発明の帯状物の製造方法について説明したが、この製造方法によって実現される彩色、模様付けされた帯状物も本発明の対象とするものである。
【0047】
以上述べたように本発明によると、
1回の加熱で簡単に染色することができ、さらに、色落ち加工などの前処理、後処理の必要がないので、少ない工数で廉価に彩色、模様付けされた帯状物を製造することができる。
半透明のポリエステル繊維などに染料を浸透させて彩色、模様付けを行なうので、仕上がりが美しい。
通常の印刷や染色と異なり、染料が繊維そのものに浸透し、繊維間の隙間に入り込むことがないので、繊維の通気性・通風性をそぐことがなく、ファスナーの係止部の動作に不具合がおきることがない。
スクリーン印刷のように色毎に版を作成する必要がなく、市販のインクジェットプリンタで印刷するだけなので、作業面、コスト面で有利で廉価になる。
ファスナーの場合、係止部と基布部を共にポリエステル繊維でできたものを用いることで、染料の浸透が全体に均一で色むらなどが生じない。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明によると、単純な模様だけでなく、色彩豊かで複雑な図柄や文字などのデザインを模様付けした帯状物を廉価に製造することができ、且つ、多品種、少ロットの生産に容易に対応することができるので、衣類や袋物、靴などのファッション産業の広範囲の分野に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の帯状物の製造方法に使用する装置例の構成を示す概念図である。
【図2】一般的なファスナーの平面図である。
【符号の説明】
【0050】
1 係止部
2 基布部
3 スライダー
5 ファスナー
6 務歯
7 上止金具
8 下止金具
10 画像読み取り装置
20 画像作成装置
30 記憶手段
40 染料パターン作成手段
50 染料パターン転写装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その表面に彩色を施して模様を形成する帯状物の製造方法において、
デジタル画像デ−タに基づき昇華性染料パターンを転写体上に作成する工程と、この転写体上の前記昇華性染料パターンを前記帯状物の両面又は片面に転写する工程を含むことを特徴とする帯状物の製造方法。
【請求項2】
前記転写体は、紙、布帛、不織布またはフィルムであることを特徴とする請求項1に記載の帯状物の製造方法。
【請求項3】
前記帯状物は、係止部と基布部とを有するファスナーであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の帯状物の製造方法。
【請求項4】
前記帯状物は、トランクス用ウエストゴム、帽子用あごゴム、サスペンダー、エプロン用肩ひも、ネックストラップ、ショルダーベルトまたはシートベルトであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の帯状物の製造方法。
【請求項5】
前記係止部及び/又は基布部は、ポリエステルからなることを特徴とする請求項3に記載の帯状物の製造方法。
【請求項6】
デジタル画像デ−タに基づき昇華性染料パターンを転写体上に作成する工程と、この転写体上の前記昇華性染料パターンを転写する工程を含む製造方法によって表面に彩色を施し模様を形成したことを特徴とする帯状物。
【請求項7】
前記転写工程による転写を両面に行って両面に彩色を施し模様を形成したことを特徴とする請求項6に記載の帯状物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−63697(P2007−63697A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−249906(P2005−249906)
【出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【出願人】(503212571)楽プリ株式会社 (6)
【Fターム(参考)】