帯状金属薄板の突合せ接合装置
【課題】 帯状金属薄板の幅等に関係なく先行帯状金属薄板と後行帯状金属薄板の突合せ溶接を高精度で行えるようにする。
【解決手段】 先行帯状金属薄板W1の後端部を支持する先行側作業テーブル3と、後行帯状金属薄板W2の先端部を支持し、両帯状金属薄板W1,W2の走行方向及び幅方向へ移動調整可能な後行側作業テーブル4と、両帯状金属薄板W1,W2の突合せ部近傍を挾持するクランプ機構5と、先行帯状金属薄板W1後端及び後行帯状金属薄板W2先端の位置決めを行うセンタープレート6と、両帯状金属薄板W1,W2の突合せ部を溶接するTIG溶接装置7とを備え、前記両作業テーブル3,4に、先行帯状金属薄板W1の後端部及び後行帯状金属薄板W2の先端部を吸着保持する電磁石2を配設し、又、TIG溶接装置7の溶接用電極棒27の先端をシャープな円錐形状に形成すると共に、突合せ溶接時に於けるアーク長を磁気吹きが生じない長さに設定する。
【解決手段】 先行帯状金属薄板W1の後端部を支持する先行側作業テーブル3と、後行帯状金属薄板W2の先端部を支持し、両帯状金属薄板W1,W2の走行方向及び幅方向へ移動調整可能な後行側作業テーブル4と、両帯状金属薄板W1,W2の突合せ部近傍を挾持するクランプ機構5と、先行帯状金属薄板W1後端及び後行帯状金属薄板W2先端の位置決めを行うセンタープレート6と、両帯状金属薄板W1,W2の突合せ部を溶接するTIG溶接装置7とを備え、前記両作業テーブル3,4に、先行帯状金属薄板W1の後端部及び後行帯状金属薄板W2の先端部を吸着保持する電磁石2を配設し、又、TIG溶接装置7の溶接用電極棒27の先端をシャープな円錐形状に形成すると共に、突合せ溶接時に於けるアーク長を磁気吹きが生じない長さに設定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状金属薄板の圧延や熱処理、表面処理を連続的に行う加工ライン、或いは帯状金属薄板からリードフレームやシャーシ類等の各種製品を連続的に生産するプレスライン等に設置され、ライン上を流れている先行帯状金属薄板の後端に後行帯状金属薄板の先端を突合せ溶接により接合する帯状金属薄板の突合せ接合装置の改良に係り、特に、電磁鋼板等の磁性を有する広幅の先行帯状金属薄板の後端と後行帯状金属薄板の先端とを突合せ溶接により接合するようにした帯状金属薄板の突合せ接合装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、帯状金属薄板の圧延や熱処理等を連続的に行う加工ラインに於いては、生産性の向上及び品質の安定化等を図るためにライン上に通されている先行帯状金属薄板の後端に後行帯状金属薄板の先端を突合せ溶接により接合し、帯状金属薄板を連続して加工処理することが行われている。
又、加工処理された帯状金属薄板を製品として需要先に供給する際にも、帯状金属薄板が所定の長さになるように帯状金属薄板同士を突合せ溶接により接合し、コイル状に巻き取ることが行われている。
【0003】
従来、帯状金属薄板の突合せ溶接には、エネルギー密度の高い熱源を利用したレーザ溶接が用いられている。このレーザ溶接は、入熱量が小さくて単位入熱当たりの溶け込み深さが大きく、溶接部が熱応力で変形したりすることもなく、又、熱影響部の結晶粒の粗大化も少なくなるため、高品質の溶接部を得ることができる等の利点がある。従って、板厚の極めて薄い電磁鋼板等の突合せ溶接には、レーザ溶接装置が広く利用されている。
【0004】
しかし、レーザ溶接装置は、極めて高価で装置自体も大型化するうえ、メンテナンスや安全面等に於いても多くの問題を抱えている。
又、レーザ溶接装置による帯状金属薄板の突合せ溶接時には、作業員が先行帯状金属薄板の後端と後行帯状金属薄板の先端との突合せを手作業に行っているため、先行帯状金属薄板と後行帯状金属薄板の突合せ力が常時一定にならなかったり、或いは両帯状金属薄板間に部分的な隙間ができたりして両帯状金属薄板の突合せを確実且つ正確に行えないと云う問題がある。このような状態でレーザ溶接により先行帯状金属薄板と後行帯状金属薄板の突合せ溶接を行うと、溶接部に部分的な溶け込み不良を生じたり、溶接部の厚み斑、穴あき、溶接部の曲り等を生じることになる。
特に、広幅の極めて薄い帯状金属薄板を正確に突突き合せる作業は、極めて難かしい作業であり、相当の経験と熟練を必要とするため、前記問題がより一層顕著に現れることになる。
【0005】
一方、本件発明者等は、レーザ溶接に替えてTIG溶接を用いることによって、極めて薄い帯状金属板であってもその突合せ溶接を高品質で且つ美麗に行うことができるようにした帯状金属板の突合せ接合装置を開発し、これを特開平11−347792号及び特開2001−47281号として公開している。この突合せ接合装置は、TIG溶接を用いているため、レーザ溶接装置に比べて低価格で操作性や作業性、取扱性等に優れている。
【0006】
ところで、前記突合せ接合装置は、帯状金属薄板の撓み及び弾性力を利用して帯状金属板の端面同士の突合せを行うようにしているため、幅が比較的狭い帯状金属薄板を突き合せる場合には、帯状金属薄板の持っている弾性力等を利用して帯状金属薄板の端面同士を簡単且つ正確に突き合せることができる。
しかし、広幅の帯状金属薄板を突き合せる場合や弾性力の小さい帯状金属薄板を突き合せる場合には、先行帯状金属薄板の後端と後行帯状金属薄板の先端とが完全に突き合されず、帯状金属板の突合せ部に部分的な間隙を生じたり、先行帯状金属薄板と後行帯状金属薄板の突合せ力が常時一定にならないと云う問題が発生する。その結果、帯状金属薄板を突合せ溶接した際に、溶接部に部分的な溶け込み不良を生じたり、溶接部の厚み斑、穴あき、溶接部の曲り等を生ずることになる。
【特許文献1】特開平11−347792号公報
【特許文献2】特開2001−47281号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑みて為されたものであり、その目的は、帯状金属薄板の幅や厚み等に関係なく先行帯状金属薄板の後端と後行帯状金属薄板の先端との突き合せを確実且つ正確に高精度で行えるようにした帯状金属薄板の突合せ接合装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1の発明は、先行帯状金属薄板の後端と後行帯状金属板の先端とを突合せ溶接により接合する帯状金属薄板の突合せ接合装置であって、前記突合せ接合装置は、先行帯状金属薄板の後端部を支持載置する先行側作業テーブルと、後行帯状金属薄板の先端部を支持載置して後行帯状金属薄板の先端を先行帯状金属薄板の後端に突き合せる後行側作業テーブルと、両帯状金属薄板の突合せ部近傍を上下方向から挾持する上部治具及下部治具から成るクランプ機構と、下部治具の中央部に昇降自在に配設されて先行帯状金属薄板の後端及び後行帯状金属薄板の先端の位置決めを夫々行うセンタープレートと、両帯状金属薄板の突合せ部を突合せ溶接するTIG溶接装置とを備えており、前記先行側作業テーブル及び後行側作業テーブルに、これらに支持載置された先行帯状金属薄板の後端部及び後行帯状金属薄板の先端部を磁力により各作業テーブル上面へ吸着保持する電磁石を夫々配設すると共に、後行側作業テーブルを両帯状金属薄板の走行方向及び幅方向へ夫々移動調整可能に構成し、更に、TIG溶接装置の溶接用電極棒の先端をシャープな円錐形状に形成すると共に、突合せ溶接時に於けるアーク長を磁気吹きが生じない長さに設定したことに特徴がある。
【0009】
本発明の請求項2の発明は、電磁石が、先行側作業テーブル及び後行側作業テーブルの上面に両帯状金属薄板の幅方向に沿って複数列の状態で夫々配設されていることに特徴がある。
【0010】
本発明の請求項3の発明は、クランプ機構の上部治具が、両帯状金属薄板の幅方向に沿う姿勢で且つ対向状に配設され、両帯状金属薄板の突合せ部近傍の上面に当接し得る上下方向へ揺動自在な長尺状の左右の上部クランプから成り、左右の上部クランプを両帯状金属薄板の幅方向に複数のブロック体に分割し、各ブッロク体の先端を弾性体により両帯状金属薄板の突合せ部近傍の上面へ弾性的に当接させるようにしたことに特徴がある。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1の突合せ接合装置は、先行側作業テーブル及び後行側作業テーブルに先行帯状金属薄板の後端部及び後行帯状金属薄板の先端部を確実且つ強固に吸着保持する電磁石を夫々配設する構成としているため、先行帯状金属薄板の後端と後行帯状金属薄板の先端とを突き合せる際に、両帯状金属薄板がズレたり、浮き上がったりするのを防止することができ、広幅の帯状金属薄板であってもその突合せを確実且つ正確に行える。
又、本発明の突合せ接合装置は、後行側作業テーブルを帯状金属薄板の走行方向及び幅方向へ移動調整可能に構成しているため、先行帯状金属薄板の後端と後行帯状金属薄板の先端とを突き合せる際に、後行側作業テーブルを帯状金属薄板の走行方向及び幅方向へ移動調整することによって、両帯状金属薄板の突合せをより一層確実且つ正確に行えると共に、先行帯状金属薄板の後端と後行帯状金属薄板の先端とを常に一定の押圧力で突き合せることができる。
更に、本発明の突合せ接合装置は、タングステン電極棒の先端をシャープな円錐形状に形成してアークを集中させると共に、突合せ溶接時に於けるアーク長を磁気吹きが生じない長さに設定しているため、アークが磁場の影響を受けると云うことがなく、溶接中の磁気吹きを防止することができる。換言すれば、本発明の突合せ接合装置は、先行帯状金属薄板及び後行帯状金属薄板を先行側作業テーブル及び後行側作業テーブルの上面へ保持するのに電磁石を使用していても、TIG溶接法を用いて両帯状金属薄板の突合せ溶接を確実且つ良好に行うことができる。
【0012】
本発明の請求項2及び請求項3の突合せ接合装置は、上記効果に加えて更に次のような効果を奏することができる。
即ち、本発明の請求項2の突合せ接合装置は、先行側作業テーブル及び後行側作業テーブルに帯状金属薄板の幅方向に沿って電磁石を複数列の状態で配設しているため、先行側作業テーブル及び後行側作業テーブルに支持載置された先行帯状金属薄板の後端部及び後行帯状金属薄板の先端部を各作業テーブル上面へより一層確実且つ強固に保持することができ、両帯状金属薄板のズレや浮き上がりが皆無となる。
又、本発明の請求項3の突合せ接合装置は、両帯状金属薄板の突合せ部近傍を押える左右の上部クランプを両帯状金属薄板の幅方向に複数のブロック体に分割し、各ブロック体の先端を弾性体の弾性力により両帯状金属薄板の突合せ部近傍の上面へ弾性的に当接させるようにしているため、広幅の帯状金属薄板であっても端部全域を幅方向に亘って下部治具の上面へ均一に押圧することができ、両帯状金属薄板の突合せを高精度に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1乃至図3は本発明の実施の形態に係る帯状金属薄板の突合せ接合装置を示すものであり、当該突合せ接合装置は、電磁鋼板等の広幅の帯状金属薄板の圧延や熱処理、表面処理を連続的に行う加工ライン、或いは帯状金属薄板からリードフレームやシャーシ類等の各種製品を連続的に生産するプレスライン等に設置されており、ライン上を流れている広幅の先行帯状金属薄板W1の後端に同じく広幅の後行帯状金属薄板W2の先端を突合せ溶接により接合し、後行帯状金属薄板W2を先行帯状金属薄板W1に引き続いてライン上へ供給できるようにしたものである。
【0014】
即ち、前記突合せ接合装置は、ライン上を流れている先行帯状金属薄板W1の走行方向に対して直交する姿勢で配置された細長いボックス状のキャビネット本体1と、キャビネット本体1に配設され、先行帯状金属薄板W1の後端部が支持載置される電磁石2を設けた先行側作業テーブル3と、キャビネット本体1に両帯状金属薄板W1,W2の走行方向及び幅方向へ移動調整可能に配設され、後行帯状金属薄板W2の先端部が支持載置される電磁石2を設けた後行側作業テーブル4と、先行帯状金属薄板W1及び後行帯状金属薄板W2の突合せ部近傍を上下方向から挾持する上部治具5′及下部治具5″から成るクランプ機構5と、下部治具5″の中央部に昇降自在に配設され、先行帯状金属薄板W1の後端及び後行帯状金属薄板W2の先端の位置決めを夫々行うセンタープレート6と、両帯状金属薄板W1,W2の突合せ部を突合せ溶接するTIG溶接装置7と、溶接条件や電極位置等を設定するモニター付きの操作盤8等から構成されている。
【0015】
具体的には、前記キャビネット本体1は、図2及び図3に示す如く、ライン上を流れている先行帯状金属薄板W1の下方位置に先行帯状金属薄板W1と直交する姿勢で配置されたボックス状の前側キャビネット部1Aと、前側キャビネット部1Aの後方位置(図2及び図3に示す前側キャビネット部1Aの右側位置)に配置されたボックス状の後側キャビネット部1Bとから成り、その内部には溶接用ガスボンベや溶接用電源装置等(何れも図示省略)が夫々格納されている。
【0016】
前記先行側作業テーブル3及び後行側作業テーブル4は、図1及び図2に示す如く、キャビネット本体1の前側キャビネット部1Aの上面に昇降可能に設けた昇降台9に水平姿勢で且つ対向状に配設されており、昇降台9の昇降に伴って先行帯状金属薄板W1及び後行帯状金属薄板W2のパスラインよりも下方位置で昇降動するようになっている。この昇降台9は、前側キャビネット部1Aの上面に複数本の鉛直姿勢の支持軸10を介して昇降自在に支持されており、前側キャビネット部1Aに設けた複数の流体圧シリンダ11を伸縮動作させることによって、昇降動するようになっている。
又、先行側作業テーブル3及び後行側作業テーブル4の上面には、これらに支持載置された先行帯状金属薄板W1の後端部及び後行帯状金属薄板W2の先端部を磁力により各作業テーブル3,4上面へ吸着保持する電磁石2が夫々配設されている。この電磁石2は、図1及び図6に示す如く、先行側作業テーブル3及び後行側作業テーブル4の上面に両帯状金属薄板W1,W2の幅方向に沿って二列の状態で夫々配設されている。
【0017】
そして、前記後行側作業テーブル4は、図4に示す如く、昇降台9の上面にガイドレール12を介して帯状金属薄板W1,W2の幅方向へ往復移動自在に支持された移動台13に配設されており、昇降台9と移動台13との間に設けた駆動装置14により帯状金属薄板W1,W2の幅方向へ往復移動するようになっている。駆動装置14は、図4及び図9に示す如く、昇降台9に帯状金属薄板W1,W2の幅方向に沿う姿勢で回転自在に支持されたネジ軸14aと、移動台13の下面側に取り付けられ、ネジ軸14aが螺挿されるブロックナット14bと、昇降台9に取り付けられ、ネジ軸14aを正逆回転させるモータ14cと、ネジ軸14aとモータ14cを連動連結する伝動機構14dとから成り、モータ14cによりネジ軸14aを正逆回転させ、ブロックナット14b及び移動台13をネジ軸14aに沿って移動させることによって、後行側作業テーブル4を帯状金属薄板W1,W2の幅方向へ往復移動させることができるようになっている。
又、後行側作業テーブル4は、図4及び図6に示す如く、移動台13の上面にガイドレール15を介して帯状金属薄板W1,W2の走行方向へ往復移動自在に支持されており、移動台13と後行側作業テーブル4との間に介設した複数の流体圧シリンダ16を伸縮動作させることによって、帯状金属薄板W1,W2の走行方向へ往復移動するようになっている。
【0018】
前記クランプ機構5は、図3に示す如く、キャビネット本体1の上方位置に前後方向へ水平移動自在に配設され、先行帯状金属薄板W1及び後行帯状金属薄板W2の突合せ部近傍の上面を保持する上部治具5′と、先行側作業テーブル3と後行側作業テーブル4の間に配設され、両作業テーブル3,4と同期的に昇降して上部治具5′との間で両帯状金属薄板W1,W2の突合せ部近傍を挾持する下部治具5″とから構成されており、上部治具5′を前進させて下部治具5″の上方位置へ移動させた後、下部治具5″を上昇させることによって、両帯状金属薄板W1,W2の突合せ部近傍を上部治具5′と下部治具5″との間で緊密且つ強固に挾持固定することができるようになっている。
【0019】
即ち、上部治具5′は、図3及び図4に示す如く、後側キャビネット部1Bの上面に設けた支持フレーム17の下面に両帯状金属薄板W1,W2の幅方向に沿う姿勢で且つ僅かな間隙を空けて対向状に配設され、両帯状金属薄板W1,W2の突合せ部近傍の上面に当接し得る長尺板状で且つ銅材製の左右の上部クランプ5aから成り、主にアークの拡がりを遮断して両帯状金属薄板W1,W2の突合せ部にアークエネルギーを集中的に与えるためのものである。
左右の上部クランプ5aは、帯状金属薄板W1,W2の幅方向に複数のブロック体5a′に分割されており、各ブロック体5a′が支持フレーム17の下面に軸18を介して上下方向へ揺動自在に支持されている。
又、左右の上部クランプ5aは、図4に示す如く、支持フレーム17と各ブロック体5a′との間に介設した弾性体19(圧縮スプリング)により下方へ附勢されており、各ブロック体5a′の薄肉板状に形成された先端部が両帯状金属薄板W1,W2の上面へ弾性的に当接するようになっている。
更に、左右の上部クランプ5aは、図4に示す如く、支持フレーム17の一部と各ブロック体5a′に挿通支持されたストッパー部材20(ボルト及びナットから成る)により下方向への揺動量が規制されている。
尚、上部治具5′を支持する支持フレーム17は、図2、図3及び図5に示す如く、後側キャビネット部1Bの上面にガイドレール21を介して両帯状金属薄板W1,W2の幅方向へ水平移動自在に配設されており、ラック22a、ピニオン22b及びモータ22cから成る駆動装置22によって、両帯状金属薄板W1,W2の幅方向へ往復移動自在となっている。この支持フレーム17を往復移動させることによって、上部治具5′は後述する下部治具5″の上方に位置するクランプ位置(図2の実線位置)と後側キャビネット部1Bの上方に位置する待機位置(図2の一点鎖線位置)とを取り得る。
【0020】
一方、下部治具5″は、図4及び図6に示す如く、先行側作業テーブル3と後行側作業テーブル4との間に配設され、両帯状金属薄板W1,W2の突合せ部近傍の下面に当接し得る長尺板状で且つ銅材製の左右の下部クランプ5bから成り、帯状金属薄板W1,W2を突合せ溶接する際に余分な熱を吸収してビードの溶け落ちや穴あき、帯状金属薄板W1,W2の熱歪等を防止すると共に、帯状金属薄板W1,W2の突合せ部の裏側にシールドガスを流して溶接部の酸化を防止するようにしたものである。
左右の下部クランプ5bは、その上面が先行側作業テーブル3及び後行側作業テーブル4の上面と面一の状態になるように先行側作業テーブル3と後行側作業テーブル4との間に配設されており、先行側作業テーブル3に複数の取付け板23を介して取り付けられている。
又、左右の下部クランプ5b間には、後述するセンタープレート6が遊嵌状態で挿通されるスリット状の間隙が形成されていると共に、左右の下部クランプ5b間の上面には、スリット状の間隙に連通してアルゴンガス等のシールドガスが流れる1mm幅の浅溝が形成されている。
【0021】
前記センタープレート6は、図4、図7及び図8に示す如く、厚さが0.5mmの薄板鋼板により長尺板状に形成されており、左右の下部クランプ5b間に形成したスリット状の間隙内に鉛直姿勢で且つ昇降自在に配設されている。このセンタープレート6は、昇降台9に取り付けた複数の流体圧シリンダ24のロッドに取付け金具25を介して取り付けられており、流体圧シリンダ24の短縮時には左右の下部クランプ5b間に形成したスリット状の間隙内に収納され、流体圧シリンダ24の伸長時にはその先端が左右の下部クランプ5bの上面から上方へ5mm程度突出するようになっている。
【0022】
前記TIG溶接装置7は、キャビネット本体1に設けた支持フレーム17に配設されており、帯状金属薄板W1,W2の突合せ部を溶接する際に支持フレーム17と共に前方へ引き出され、支持フレーム17上を帯状金属薄板W1,W2の幅方向へ沿って移動するようになっている。
即ち、TIG溶接装置7は、図4に示す如く、支持フレーム17の上面にガイドレール31を介して帯状金属薄板W1,W2の幅方向へ往復移動自在に配設された走行台26と、走行台26に昇降自在に支持され、先端部からアルゴンガス等のシールドガスを流すと共に、タングステン電極棒27を挿着した溶接用トーチ28と、溶接用トーチ28を昇降動させるサーボモータ等から成るトーチ上下動駆動装置(図示省略)と、溶接状況(タングステン電極棒27の消耗やアークの状態等)や帯状金属薄板W1,W2の突合せ状況を確認する監視カメラ(図示省略)と、走行台26に取り付けられ、先行帯状金属薄板W1及び後行帯状金属薄板W2の幅を自動測定するレーザセンサー29と、溶接開始前に於ける電極と帯状金属薄板W1,W2の間隙設定を容易にし、溶接中に於ける電極と帯状金属薄板W1,W2の接触事故を直ちに検知する電極接触検知装置(図示省略)と、走行台26を帯状金属薄板W1,W2の幅方向へ走行させる駆動装置30等から構成されており、帯状金属薄板W1,W2の突合せ部を溶接する際に支持フレーム17と一緒に前方へ引き出され、溶接用トーチ28の先端が自動的に高さ調整され且つ溶接用トーチ28が所定の速度で帯状金属薄板W1,W2の突合せ部に沿って直線移動するようになっている。
又、駆動装置30は、図2に示す如く、支持フレーム17の上面に帯状金属薄板W1,W2の幅方向に沿う姿勢で回転自在に支持されたネジ軸30aと、走行台26に取り付けられ、ネジ軸30aが螺挿されるブロックナット30bと、支持フレーム17に取り付けられ、ネジ軸30aに連動連結されてネジ軸30aを正逆回転させるモータ30cとから成り、モータ30cによりネジ軸30aを正逆回転させ、ブロックナット30b及び走行台26をネジ軸30aに沿って移動させることによって、走行台26及びこれに支持された溶接用トーチ28を帯状金属薄板W1,W2の幅方向へ往復移動させることができるようになっている。
そして、このTIG溶接装置7は、アークが集中するように溶接用電極棒27の先端がシャープな円錐形状に形成されていると共に、突合せ溶接時に於けるアーク長が磁気吹き(アークが磁場の影響を受けて偏向する現象)を生じない長さに設定されている。この実施の形態では、突合せ溶接時に於けるタングステン電極棒27の先端と両帯状金属薄板W1,W2の突合せ部との間隔が0.3mm〜0.7mmとなるように設定されている。
【0023】
次に、上述した帯状金属薄板W1,W2の突合せ接合装置を用いて広幅の先行帯状金属薄板W1と広幅の後行帯状金属薄板W2を突合せ溶接により接合する場合について説明する。
尚、溶接電流、アーク長、不活性ガスの供給量、溶接用トーチ28の走行速度、タングステン電極棒27の先端形状等の溶接条件は、帯状金属薄板W1,W2の材質、板厚、幅等に応じて最適の条件下に設定されていることは勿論である。
【0024】
先ず、先行帯状金属薄板W1の後端部と後行帯状金属薄板W2の先端部とを切断装置(図示省略)により幅方向に一直線状に切断加工した後、センタープレート6を流体圧シリンダ24により上昇させてセンタープレート6の先端部を左右の下部クランプ5bの上面から上方へ突出させる。
【0025】
次に、先行帯状金属薄板W1の後端部を先行側作業テーブル3の上面に載せ、先行帯状金属薄板W1の後端を手作業によりセンタープレート6の一方の側面に突き当てると共に、この状態で先行側作業テーブル3に設けた電磁石2をONの状態にして先行帯状金属薄板W1の後端部を磁力により先行側作業テーブル3の上面へ吸着保持して固定する(図10(A)参照)。このとき、監視カメラにより先行帯状金属薄板W1の後端の一部(溶接開始端)が監視カメラにより操作盤8のモニターに映し出される。
引き続き、後行帯状金属薄板W2の先端部を後行側作業テーブル4の上面に載せ、後行帯状金属薄板W2の先端を手作業によりセンタープレート6の他方の側面に突き当てると共に、この状態で後行側作業テーブル4に設けた電磁石2をONの状態にして後行帯状金属薄板W2の先端部を磁力により後行側作業テーブル4の上面へ保持固定する(図10(A)参照)。このときにも、監視カメラにより先行帯状金属薄板W1の後端の一部(溶接開始端)が監視カメラにより操作盤8のモニターに映し出される。
【0026】
その後、センタープレート6を流体圧シリンダ24により下降させて左右の下部クランプ5b間に収納し、後行側作業テーブル4を流体圧シリンダ16により前進させて後行帯状金属薄板W2の先端を先行金属薄板の後端に突き合せる(図10(B)参照)。この状態で後行側作業テーブル4を駆動装置14により帯状金属薄板W1,W2の幅方向へ移動調整し、先行帯状金属薄板W1と後行帯状金属薄板W2の幅方向のズレ修正を行い、両帯状金属薄板W1,W2の幅方向の両端を合致させる。このとき、両帯状金属薄板W1,W2は、両作業テーブル3,4に電磁石2により確実且つ強固に吸着保持されているため、帯状金属薄板W1,W2の突合せ時に帯状金属薄板W1,W2がズレたり、浮き上がったりすると云うことがなく、広幅の帯状金属薄板W1,W2の突合せを確実且つ正確に高精度で行えることになる。又、後行側作業テーブル4を流体圧シリンダ16により前進させて後行帯状金属薄板W2の先端を先行帯状金属薄板W1の後端に突き合せるようにしているため、両帯状金属薄板W1,W2の端面は常時加圧状態で突き合されて密着状態となっていると共に、先行帯状金属薄板W1の後端と後行帯状金属薄板W2の先端とを常に一定の押圧力で突き合せることができる。
【0027】
先行帯状金属薄板W1の後端と後行帯状金属薄板W2の先端とが突き合されたら、支持フレーム17が前進して左右の上部クランプ5aを帯状金属薄板W1,W2の突合せ部の上方位置(クランプ位置)へ移動させる(図11(A)参照)。この状態で昇降台9が流体圧シリンダ11により上昇し、両作業テーブル3,4及び下部クランプ5bをそれらの上面が上部クランプ5aの先端部下面の高さと略同じ位置になるように上昇させる(図11(B)参照)。これにより、両帯状金属薄板W1,W2は、端面同士が完全に突き合された状態で上部クランプ5aと下部クランプ5bとの間で緊密且つ強固に挾持固定される。このとき、左右の上部クランプ5aを両帯状金属薄板W1,W2の幅方向に複数のブロック体5a′に分割し、各ブロック体5a′の先端を弾性体19の弾性力により両帯状金属薄板W1,W2の突合せ部近傍の上面へ弾性的に当接させるようにしているため、広幅の帯状金属薄板W1,W2であっても端部全域を幅方向に亘って左右の下部クランプ5bの上面へ均一に押圧することができ、両帯状金属薄板W1,W2の突合せを高精度に行える。
【0028】
両帯状金属薄板W1,W2の突合せ部がクランプ機構5により挾持固定されたら、支持フレーム17上の走行台26が駆動装置30により前進し、走行台26に設けたレーザセンサー29が帯状金属薄板W1,W2の幅を自動測定し、所定のプログラムにてTIG溶接装置7により両帯状金属薄板W1,W2の突合せ部が突合せ溶接される。
即ち、先行側作業テーブル3及び後行側作業テーブル4に夫々設けた電磁石2がOFFの状態になると共に、溶接用トーチ28が下降してタングステン電極棒27の先端を帯状金属薄板W1,W2の突合せ部の端部に位置させ、タングステン電極棒27の先端と帯状金属薄板W1,W2との間にアークを発生させる。その後、走行台26が駆動装置30により後退して溶接用トーチ28を帯状金属薄板W1,W2の突合せ部に沿って走行させ、突合せ部を突合せ溶接する。このとき、タングステン電極棒27の先端をシャープな円錐形状に形成してアークを集中させていると共に、突合せ溶接時に於けるアーク長を磁気吹きが生じない長さに設定しているため、電磁鋼板のように表面に絶縁皮膜が形成されている帯状金属薄板W1,W2であっても突合せ溶接を良好且つ確実に行えると共に、アークが電磁石2及び帯状金属薄板W1,W2に生じる残留磁気の影響を受けることがなく、溶接中の磁気吹きを防止することができる。即ち、先行帯状金属薄板W1及び後行帯状金属薄板W2を先行側作業テーブル3及び後行側作業テーブル4の上面へ保持するのに電磁石2を使用していても、TIG溶接法を用いて両帯状金属薄板W1,W2の突合せ溶接を確実且つ良好に行うことができる。
【0029】
尚、先行帯状金属薄板W1及び後行帯状金属薄板W2の端部を切断装置により切断加工した際に端部が長手方向に対して直角に切断されず、帯状金属薄板W1,W2を突き合せた時に溶接開始端のみが突き合されている場合でも、溶接の進行に伴って生じる収縮変形によって、両帯状金属薄板W1,W2の溶接終端側が順次突き合されることになり、突合せ溶接を確実且つ良好に行える。
【0030】
そして、両帯状金属薄板W1,W2の突合せ溶接が終了したら、電磁石2がONの状態になって両帯状金属薄板W1,W2を各作業テーブル3,4の上面へ吸着保持すると共に、この状態で両作業テーブル3,4及び下部クランプ5bが下降し、引き続いて支持フレーム17及び上部クランプ5aが後退した後、電磁石2がOFFの状態になって両帯状金属薄板W1,W2を開放する。これによって、先行帯状金属薄板W1の後端に接合された後行帯状金属薄板W2は、先行帯状金属薄板W1に引き続いてライン上へ供給されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態に係る帯状金属薄板の突合せ接合装置の一部切欠正面図である。
【図2】突合せ接合装置の一部切欠側面図である。
【図3】突合せ接合装置の平面図である。
【図4】突合せ接合装置の要部の縦断面図である。
【図5】支持フレーム及び支持フレームを往復移動させる駆動装置の縦断面図である。
【図6】先行側作業テーブル及び後行側作業テーブルの平面図である。
【図7】センタープレート及び昇降台部分の平面図である。
【図8】支持フレーム及び上部クランプ等が先行側作業テーブル及び後行側作業テーブルの上方位置へ移動した状態の縦断面図である。
【図9】昇降台及び移動台の縦断面図である。
【図10】突合せ接合装置の作動状態を示し、(A)はセンタープレートにより先行帯状金属薄板及び後行帯状金属薄板を位置決めし、両帯状金属薄板を電磁石により先行側作業テーブル及び後行側作業テーブルに吸着保持した状態の縦断面図、(B)は後行側作業テーブルを移動調整して先行帯状金属薄板の後端と後行帯状金属薄板の先端とを突き合せた状態の縦断面図である。
【図11】突合せ接合装置の作動状態を示し、(A)は上部治具等が突き合された両帯状金属薄板の上方位置へ移動した状態の縦断面図、(B)は両作業テーブル及び下部治具等が上昇して両帯状金属薄板の突合せ部近傍を上部治具及び下部治具により挾持固定した状態の縦断面図である。
【符号の説明】
【0032】
2は電磁石、3は先行側作業テーブル、4は後行側作業テーブル、5はクランプ機構、5′は上部治具、5″は下部治具、5aは左右の上部クランプ、5a′はブロック体、6はセンタープレート、7はTIG溶接装置、19は弾性体、W1は先行帯状金属薄板、W2は後行帯状金属薄板。
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状金属薄板の圧延や熱処理、表面処理を連続的に行う加工ライン、或いは帯状金属薄板からリードフレームやシャーシ類等の各種製品を連続的に生産するプレスライン等に設置され、ライン上を流れている先行帯状金属薄板の後端に後行帯状金属薄板の先端を突合せ溶接により接合する帯状金属薄板の突合せ接合装置の改良に係り、特に、電磁鋼板等の磁性を有する広幅の先行帯状金属薄板の後端と後行帯状金属薄板の先端とを突合せ溶接により接合するようにした帯状金属薄板の突合せ接合装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、帯状金属薄板の圧延や熱処理等を連続的に行う加工ラインに於いては、生産性の向上及び品質の安定化等を図るためにライン上に通されている先行帯状金属薄板の後端に後行帯状金属薄板の先端を突合せ溶接により接合し、帯状金属薄板を連続して加工処理することが行われている。
又、加工処理された帯状金属薄板を製品として需要先に供給する際にも、帯状金属薄板が所定の長さになるように帯状金属薄板同士を突合せ溶接により接合し、コイル状に巻き取ることが行われている。
【0003】
従来、帯状金属薄板の突合せ溶接には、エネルギー密度の高い熱源を利用したレーザ溶接が用いられている。このレーザ溶接は、入熱量が小さくて単位入熱当たりの溶け込み深さが大きく、溶接部が熱応力で変形したりすることもなく、又、熱影響部の結晶粒の粗大化も少なくなるため、高品質の溶接部を得ることができる等の利点がある。従って、板厚の極めて薄い電磁鋼板等の突合せ溶接には、レーザ溶接装置が広く利用されている。
【0004】
しかし、レーザ溶接装置は、極めて高価で装置自体も大型化するうえ、メンテナンスや安全面等に於いても多くの問題を抱えている。
又、レーザ溶接装置による帯状金属薄板の突合せ溶接時には、作業員が先行帯状金属薄板の後端と後行帯状金属薄板の先端との突合せを手作業に行っているため、先行帯状金属薄板と後行帯状金属薄板の突合せ力が常時一定にならなかったり、或いは両帯状金属薄板間に部分的な隙間ができたりして両帯状金属薄板の突合せを確実且つ正確に行えないと云う問題がある。このような状態でレーザ溶接により先行帯状金属薄板と後行帯状金属薄板の突合せ溶接を行うと、溶接部に部分的な溶け込み不良を生じたり、溶接部の厚み斑、穴あき、溶接部の曲り等を生じることになる。
特に、広幅の極めて薄い帯状金属薄板を正確に突突き合せる作業は、極めて難かしい作業であり、相当の経験と熟練を必要とするため、前記問題がより一層顕著に現れることになる。
【0005】
一方、本件発明者等は、レーザ溶接に替えてTIG溶接を用いることによって、極めて薄い帯状金属板であってもその突合せ溶接を高品質で且つ美麗に行うことができるようにした帯状金属板の突合せ接合装置を開発し、これを特開平11−347792号及び特開2001−47281号として公開している。この突合せ接合装置は、TIG溶接を用いているため、レーザ溶接装置に比べて低価格で操作性や作業性、取扱性等に優れている。
【0006】
ところで、前記突合せ接合装置は、帯状金属薄板の撓み及び弾性力を利用して帯状金属板の端面同士の突合せを行うようにしているため、幅が比較的狭い帯状金属薄板を突き合せる場合には、帯状金属薄板の持っている弾性力等を利用して帯状金属薄板の端面同士を簡単且つ正確に突き合せることができる。
しかし、広幅の帯状金属薄板を突き合せる場合や弾性力の小さい帯状金属薄板を突き合せる場合には、先行帯状金属薄板の後端と後行帯状金属薄板の先端とが完全に突き合されず、帯状金属板の突合せ部に部分的な間隙を生じたり、先行帯状金属薄板と後行帯状金属薄板の突合せ力が常時一定にならないと云う問題が発生する。その結果、帯状金属薄板を突合せ溶接した際に、溶接部に部分的な溶け込み不良を生じたり、溶接部の厚み斑、穴あき、溶接部の曲り等を生ずることになる。
【特許文献1】特開平11−347792号公報
【特許文献2】特開2001−47281号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑みて為されたものであり、その目的は、帯状金属薄板の幅や厚み等に関係なく先行帯状金属薄板の後端と後行帯状金属薄板の先端との突き合せを確実且つ正確に高精度で行えるようにした帯状金属薄板の突合せ接合装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1の発明は、先行帯状金属薄板の後端と後行帯状金属板の先端とを突合せ溶接により接合する帯状金属薄板の突合せ接合装置であって、前記突合せ接合装置は、先行帯状金属薄板の後端部を支持載置する先行側作業テーブルと、後行帯状金属薄板の先端部を支持載置して後行帯状金属薄板の先端を先行帯状金属薄板の後端に突き合せる後行側作業テーブルと、両帯状金属薄板の突合せ部近傍を上下方向から挾持する上部治具及下部治具から成るクランプ機構と、下部治具の中央部に昇降自在に配設されて先行帯状金属薄板の後端及び後行帯状金属薄板の先端の位置決めを夫々行うセンタープレートと、両帯状金属薄板の突合せ部を突合せ溶接するTIG溶接装置とを備えており、前記先行側作業テーブル及び後行側作業テーブルに、これらに支持載置された先行帯状金属薄板の後端部及び後行帯状金属薄板の先端部を磁力により各作業テーブル上面へ吸着保持する電磁石を夫々配設すると共に、後行側作業テーブルを両帯状金属薄板の走行方向及び幅方向へ夫々移動調整可能に構成し、更に、TIG溶接装置の溶接用電極棒の先端をシャープな円錐形状に形成すると共に、突合せ溶接時に於けるアーク長を磁気吹きが生じない長さに設定したことに特徴がある。
【0009】
本発明の請求項2の発明は、電磁石が、先行側作業テーブル及び後行側作業テーブルの上面に両帯状金属薄板の幅方向に沿って複数列の状態で夫々配設されていることに特徴がある。
【0010】
本発明の請求項3の発明は、クランプ機構の上部治具が、両帯状金属薄板の幅方向に沿う姿勢で且つ対向状に配設され、両帯状金属薄板の突合せ部近傍の上面に当接し得る上下方向へ揺動自在な長尺状の左右の上部クランプから成り、左右の上部クランプを両帯状金属薄板の幅方向に複数のブロック体に分割し、各ブッロク体の先端を弾性体により両帯状金属薄板の突合せ部近傍の上面へ弾性的に当接させるようにしたことに特徴がある。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1の突合せ接合装置は、先行側作業テーブル及び後行側作業テーブルに先行帯状金属薄板の後端部及び後行帯状金属薄板の先端部を確実且つ強固に吸着保持する電磁石を夫々配設する構成としているため、先行帯状金属薄板の後端と後行帯状金属薄板の先端とを突き合せる際に、両帯状金属薄板がズレたり、浮き上がったりするのを防止することができ、広幅の帯状金属薄板であってもその突合せを確実且つ正確に行える。
又、本発明の突合せ接合装置は、後行側作業テーブルを帯状金属薄板の走行方向及び幅方向へ移動調整可能に構成しているため、先行帯状金属薄板の後端と後行帯状金属薄板の先端とを突き合せる際に、後行側作業テーブルを帯状金属薄板の走行方向及び幅方向へ移動調整することによって、両帯状金属薄板の突合せをより一層確実且つ正確に行えると共に、先行帯状金属薄板の後端と後行帯状金属薄板の先端とを常に一定の押圧力で突き合せることができる。
更に、本発明の突合せ接合装置は、タングステン電極棒の先端をシャープな円錐形状に形成してアークを集中させると共に、突合せ溶接時に於けるアーク長を磁気吹きが生じない長さに設定しているため、アークが磁場の影響を受けると云うことがなく、溶接中の磁気吹きを防止することができる。換言すれば、本発明の突合せ接合装置は、先行帯状金属薄板及び後行帯状金属薄板を先行側作業テーブル及び後行側作業テーブルの上面へ保持するのに電磁石を使用していても、TIG溶接法を用いて両帯状金属薄板の突合せ溶接を確実且つ良好に行うことができる。
【0012】
本発明の請求項2及び請求項3の突合せ接合装置は、上記効果に加えて更に次のような効果を奏することができる。
即ち、本発明の請求項2の突合せ接合装置は、先行側作業テーブル及び後行側作業テーブルに帯状金属薄板の幅方向に沿って電磁石を複数列の状態で配設しているため、先行側作業テーブル及び後行側作業テーブルに支持載置された先行帯状金属薄板の後端部及び後行帯状金属薄板の先端部を各作業テーブル上面へより一層確実且つ強固に保持することができ、両帯状金属薄板のズレや浮き上がりが皆無となる。
又、本発明の請求項3の突合せ接合装置は、両帯状金属薄板の突合せ部近傍を押える左右の上部クランプを両帯状金属薄板の幅方向に複数のブロック体に分割し、各ブロック体の先端を弾性体の弾性力により両帯状金属薄板の突合せ部近傍の上面へ弾性的に当接させるようにしているため、広幅の帯状金属薄板であっても端部全域を幅方向に亘って下部治具の上面へ均一に押圧することができ、両帯状金属薄板の突合せを高精度に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1乃至図3は本発明の実施の形態に係る帯状金属薄板の突合せ接合装置を示すものであり、当該突合せ接合装置は、電磁鋼板等の広幅の帯状金属薄板の圧延や熱処理、表面処理を連続的に行う加工ライン、或いは帯状金属薄板からリードフレームやシャーシ類等の各種製品を連続的に生産するプレスライン等に設置されており、ライン上を流れている広幅の先行帯状金属薄板W1の後端に同じく広幅の後行帯状金属薄板W2の先端を突合せ溶接により接合し、後行帯状金属薄板W2を先行帯状金属薄板W1に引き続いてライン上へ供給できるようにしたものである。
【0014】
即ち、前記突合せ接合装置は、ライン上を流れている先行帯状金属薄板W1の走行方向に対して直交する姿勢で配置された細長いボックス状のキャビネット本体1と、キャビネット本体1に配設され、先行帯状金属薄板W1の後端部が支持載置される電磁石2を設けた先行側作業テーブル3と、キャビネット本体1に両帯状金属薄板W1,W2の走行方向及び幅方向へ移動調整可能に配設され、後行帯状金属薄板W2の先端部が支持載置される電磁石2を設けた後行側作業テーブル4と、先行帯状金属薄板W1及び後行帯状金属薄板W2の突合せ部近傍を上下方向から挾持する上部治具5′及下部治具5″から成るクランプ機構5と、下部治具5″の中央部に昇降自在に配設され、先行帯状金属薄板W1の後端及び後行帯状金属薄板W2の先端の位置決めを夫々行うセンタープレート6と、両帯状金属薄板W1,W2の突合せ部を突合せ溶接するTIG溶接装置7と、溶接条件や電極位置等を設定するモニター付きの操作盤8等から構成されている。
【0015】
具体的には、前記キャビネット本体1は、図2及び図3に示す如く、ライン上を流れている先行帯状金属薄板W1の下方位置に先行帯状金属薄板W1と直交する姿勢で配置されたボックス状の前側キャビネット部1Aと、前側キャビネット部1Aの後方位置(図2及び図3に示す前側キャビネット部1Aの右側位置)に配置されたボックス状の後側キャビネット部1Bとから成り、その内部には溶接用ガスボンベや溶接用電源装置等(何れも図示省略)が夫々格納されている。
【0016】
前記先行側作業テーブル3及び後行側作業テーブル4は、図1及び図2に示す如く、キャビネット本体1の前側キャビネット部1Aの上面に昇降可能に設けた昇降台9に水平姿勢で且つ対向状に配設されており、昇降台9の昇降に伴って先行帯状金属薄板W1及び後行帯状金属薄板W2のパスラインよりも下方位置で昇降動するようになっている。この昇降台9は、前側キャビネット部1Aの上面に複数本の鉛直姿勢の支持軸10を介して昇降自在に支持されており、前側キャビネット部1Aに設けた複数の流体圧シリンダ11を伸縮動作させることによって、昇降動するようになっている。
又、先行側作業テーブル3及び後行側作業テーブル4の上面には、これらに支持載置された先行帯状金属薄板W1の後端部及び後行帯状金属薄板W2の先端部を磁力により各作業テーブル3,4上面へ吸着保持する電磁石2が夫々配設されている。この電磁石2は、図1及び図6に示す如く、先行側作業テーブル3及び後行側作業テーブル4の上面に両帯状金属薄板W1,W2の幅方向に沿って二列の状態で夫々配設されている。
【0017】
そして、前記後行側作業テーブル4は、図4に示す如く、昇降台9の上面にガイドレール12を介して帯状金属薄板W1,W2の幅方向へ往復移動自在に支持された移動台13に配設されており、昇降台9と移動台13との間に設けた駆動装置14により帯状金属薄板W1,W2の幅方向へ往復移動するようになっている。駆動装置14は、図4及び図9に示す如く、昇降台9に帯状金属薄板W1,W2の幅方向に沿う姿勢で回転自在に支持されたネジ軸14aと、移動台13の下面側に取り付けられ、ネジ軸14aが螺挿されるブロックナット14bと、昇降台9に取り付けられ、ネジ軸14aを正逆回転させるモータ14cと、ネジ軸14aとモータ14cを連動連結する伝動機構14dとから成り、モータ14cによりネジ軸14aを正逆回転させ、ブロックナット14b及び移動台13をネジ軸14aに沿って移動させることによって、後行側作業テーブル4を帯状金属薄板W1,W2の幅方向へ往復移動させることができるようになっている。
又、後行側作業テーブル4は、図4及び図6に示す如く、移動台13の上面にガイドレール15を介して帯状金属薄板W1,W2の走行方向へ往復移動自在に支持されており、移動台13と後行側作業テーブル4との間に介設した複数の流体圧シリンダ16を伸縮動作させることによって、帯状金属薄板W1,W2の走行方向へ往復移動するようになっている。
【0018】
前記クランプ機構5は、図3に示す如く、キャビネット本体1の上方位置に前後方向へ水平移動自在に配設され、先行帯状金属薄板W1及び後行帯状金属薄板W2の突合せ部近傍の上面を保持する上部治具5′と、先行側作業テーブル3と後行側作業テーブル4の間に配設され、両作業テーブル3,4と同期的に昇降して上部治具5′との間で両帯状金属薄板W1,W2の突合せ部近傍を挾持する下部治具5″とから構成されており、上部治具5′を前進させて下部治具5″の上方位置へ移動させた後、下部治具5″を上昇させることによって、両帯状金属薄板W1,W2の突合せ部近傍を上部治具5′と下部治具5″との間で緊密且つ強固に挾持固定することができるようになっている。
【0019】
即ち、上部治具5′は、図3及び図4に示す如く、後側キャビネット部1Bの上面に設けた支持フレーム17の下面に両帯状金属薄板W1,W2の幅方向に沿う姿勢で且つ僅かな間隙を空けて対向状に配設され、両帯状金属薄板W1,W2の突合せ部近傍の上面に当接し得る長尺板状で且つ銅材製の左右の上部クランプ5aから成り、主にアークの拡がりを遮断して両帯状金属薄板W1,W2の突合せ部にアークエネルギーを集中的に与えるためのものである。
左右の上部クランプ5aは、帯状金属薄板W1,W2の幅方向に複数のブロック体5a′に分割されており、各ブロック体5a′が支持フレーム17の下面に軸18を介して上下方向へ揺動自在に支持されている。
又、左右の上部クランプ5aは、図4に示す如く、支持フレーム17と各ブロック体5a′との間に介設した弾性体19(圧縮スプリング)により下方へ附勢されており、各ブロック体5a′の薄肉板状に形成された先端部が両帯状金属薄板W1,W2の上面へ弾性的に当接するようになっている。
更に、左右の上部クランプ5aは、図4に示す如く、支持フレーム17の一部と各ブロック体5a′に挿通支持されたストッパー部材20(ボルト及びナットから成る)により下方向への揺動量が規制されている。
尚、上部治具5′を支持する支持フレーム17は、図2、図3及び図5に示す如く、後側キャビネット部1Bの上面にガイドレール21を介して両帯状金属薄板W1,W2の幅方向へ水平移動自在に配設されており、ラック22a、ピニオン22b及びモータ22cから成る駆動装置22によって、両帯状金属薄板W1,W2の幅方向へ往復移動自在となっている。この支持フレーム17を往復移動させることによって、上部治具5′は後述する下部治具5″の上方に位置するクランプ位置(図2の実線位置)と後側キャビネット部1Bの上方に位置する待機位置(図2の一点鎖線位置)とを取り得る。
【0020】
一方、下部治具5″は、図4及び図6に示す如く、先行側作業テーブル3と後行側作業テーブル4との間に配設され、両帯状金属薄板W1,W2の突合せ部近傍の下面に当接し得る長尺板状で且つ銅材製の左右の下部クランプ5bから成り、帯状金属薄板W1,W2を突合せ溶接する際に余分な熱を吸収してビードの溶け落ちや穴あき、帯状金属薄板W1,W2の熱歪等を防止すると共に、帯状金属薄板W1,W2の突合せ部の裏側にシールドガスを流して溶接部の酸化を防止するようにしたものである。
左右の下部クランプ5bは、その上面が先行側作業テーブル3及び後行側作業テーブル4の上面と面一の状態になるように先行側作業テーブル3と後行側作業テーブル4との間に配設されており、先行側作業テーブル3に複数の取付け板23を介して取り付けられている。
又、左右の下部クランプ5b間には、後述するセンタープレート6が遊嵌状態で挿通されるスリット状の間隙が形成されていると共に、左右の下部クランプ5b間の上面には、スリット状の間隙に連通してアルゴンガス等のシールドガスが流れる1mm幅の浅溝が形成されている。
【0021】
前記センタープレート6は、図4、図7及び図8に示す如く、厚さが0.5mmの薄板鋼板により長尺板状に形成されており、左右の下部クランプ5b間に形成したスリット状の間隙内に鉛直姿勢で且つ昇降自在に配設されている。このセンタープレート6は、昇降台9に取り付けた複数の流体圧シリンダ24のロッドに取付け金具25を介して取り付けられており、流体圧シリンダ24の短縮時には左右の下部クランプ5b間に形成したスリット状の間隙内に収納され、流体圧シリンダ24の伸長時にはその先端が左右の下部クランプ5bの上面から上方へ5mm程度突出するようになっている。
【0022】
前記TIG溶接装置7は、キャビネット本体1に設けた支持フレーム17に配設されており、帯状金属薄板W1,W2の突合せ部を溶接する際に支持フレーム17と共に前方へ引き出され、支持フレーム17上を帯状金属薄板W1,W2の幅方向へ沿って移動するようになっている。
即ち、TIG溶接装置7は、図4に示す如く、支持フレーム17の上面にガイドレール31を介して帯状金属薄板W1,W2の幅方向へ往復移動自在に配設された走行台26と、走行台26に昇降自在に支持され、先端部からアルゴンガス等のシールドガスを流すと共に、タングステン電極棒27を挿着した溶接用トーチ28と、溶接用トーチ28を昇降動させるサーボモータ等から成るトーチ上下動駆動装置(図示省略)と、溶接状況(タングステン電極棒27の消耗やアークの状態等)や帯状金属薄板W1,W2の突合せ状況を確認する監視カメラ(図示省略)と、走行台26に取り付けられ、先行帯状金属薄板W1及び後行帯状金属薄板W2の幅を自動測定するレーザセンサー29と、溶接開始前に於ける電極と帯状金属薄板W1,W2の間隙設定を容易にし、溶接中に於ける電極と帯状金属薄板W1,W2の接触事故を直ちに検知する電極接触検知装置(図示省略)と、走行台26を帯状金属薄板W1,W2の幅方向へ走行させる駆動装置30等から構成されており、帯状金属薄板W1,W2の突合せ部を溶接する際に支持フレーム17と一緒に前方へ引き出され、溶接用トーチ28の先端が自動的に高さ調整され且つ溶接用トーチ28が所定の速度で帯状金属薄板W1,W2の突合せ部に沿って直線移動するようになっている。
又、駆動装置30は、図2に示す如く、支持フレーム17の上面に帯状金属薄板W1,W2の幅方向に沿う姿勢で回転自在に支持されたネジ軸30aと、走行台26に取り付けられ、ネジ軸30aが螺挿されるブロックナット30bと、支持フレーム17に取り付けられ、ネジ軸30aに連動連結されてネジ軸30aを正逆回転させるモータ30cとから成り、モータ30cによりネジ軸30aを正逆回転させ、ブロックナット30b及び走行台26をネジ軸30aに沿って移動させることによって、走行台26及びこれに支持された溶接用トーチ28を帯状金属薄板W1,W2の幅方向へ往復移動させることができるようになっている。
そして、このTIG溶接装置7は、アークが集中するように溶接用電極棒27の先端がシャープな円錐形状に形成されていると共に、突合せ溶接時に於けるアーク長が磁気吹き(アークが磁場の影響を受けて偏向する現象)を生じない長さに設定されている。この実施の形態では、突合せ溶接時に於けるタングステン電極棒27の先端と両帯状金属薄板W1,W2の突合せ部との間隔が0.3mm〜0.7mmとなるように設定されている。
【0023】
次に、上述した帯状金属薄板W1,W2の突合せ接合装置を用いて広幅の先行帯状金属薄板W1と広幅の後行帯状金属薄板W2を突合せ溶接により接合する場合について説明する。
尚、溶接電流、アーク長、不活性ガスの供給量、溶接用トーチ28の走行速度、タングステン電極棒27の先端形状等の溶接条件は、帯状金属薄板W1,W2の材質、板厚、幅等に応じて最適の条件下に設定されていることは勿論である。
【0024】
先ず、先行帯状金属薄板W1の後端部と後行帯状金属薄板W2の先端部とを切断装置(図示省略)により幅方向に一直線状に切断加工した後、センタープレート6を流体圧シリンダ24により上昇させてセンタープレート6の先端部を左右の下部クランプ5bの上面から上方へ突出させる。
【0025】
次に、先行帯状金属薄板W1の後端部を先行側作業テーブル3の上面に載せ、先行帯状金属薄板W1の後端を手作業によりセンタープレート6の一方の側面に突き当てると共に、この状態で先行側作業テーブル3に設けた電磁石2をONの状態にして先行帯状金属薄板W1の後端部を磁力により先行側作業テーブル3の上面へ吸着保持して固定する(図10(A)参照)。このとき、監視カメラにより先行帯状金属薄板W1の後端の一部(溶接開始端)が監視カメラにより操作盤8のモニターに映し出される。
引き続き、後行帯状金属薄板W2の先端部を後行側作業テーブル4の上面に載せ、後行帯状金属薄板W2の先端を手作業によりセンタープレート6の他方の側面に突き当てると共に、この状態で後行側作業テーブル4に設けた電磁石2をONの状態にして後行帯状金属薄板W2の先端部を磁力により後行側作業テーブル4の上面へ保持固定する(図10(A)参照)。このときにも、監視カメラにより先行帯状金属薄板W1の後端の一部(溶接開始端)が監視カメラにより操作盤8のモニターに映し出される。
【0026】
その後、センタープレート6を流体圧シリンダ24により下降させて左右の下部クランプ5b間に収納し、後行側作業テーブル4を流体圧シリンダ16により前進させて後行帯状金属薄板W2の先端を先行金属薄板の後端に突き合せる(図10(B)参照)。この状態で後行側作業テーブル4を駆動装置14により帯状金属薄板W1,W2の幅方向へ移動調整し、先行帯状金属薄板W1と後行帯状金属薄板W2の幅方向のズレ修正を行い、両帯状金属薄板W1,W2の幅方向の両端を合致させる。このとき、両帯状金属薄板W1,W2は、両作業テーブル3,4に電磁石2により確実且つ強固に吸着保持されているため、帯状金属薄板W1,W2の突合せ時に帯状金属薄板W1,W2がズレたり、浮き上がったりすると云うことがなく、広幅の帯状金属薄板W1,W2の突合せを確実且つ正確に高精度で行えることになる。又、後行側作業テーブル4を流体圧シリンダ16により前進させて後行帯状金属薄板W2の先端を先行帯状金属薄板W1の後端に突き合せるようにしているため、両帯状金属薄板W1,W2の端面は常時加圧状態で突き合されて密着状態となっていると共に、先行帯状金属薄板W1の後端と後行帯状金属薄板W2の先端とを常に一定の押圧力で突き合せることができる。
【0027】
先行帯状金属薄板W1の後端と後行帯状金属薄板W2の先端とが突き合されたら、支持フレーム17が前進して左右の上部クランプ5aを帯状金属薄板W1,W2の突合せ部の上方位置(クランプ位置)へ移動させる(図11(A)参照)。この状態で昇降台9が流体圧シリンダ11により上昇し、両作業テーブル3,4及び下部クランプ5bをそれらの上面が上部クランプ5aの先端部下面の高さと略同じ位置になるように上昇させる(図11(B)参照)。これにより、両帯状金属薄板W1,W2は、端面同士が完全に突き合された状態で上部クランプ5aと下部クランプ5bとの間で緊密且つ強固に挾持固定される。このとき、左右の上部クランプ5aを両帯状金属薄板W1,W2の幅方向に複数のブロック体5a′に分割し、各ブロック体5a′の先端を弾性体19の弾性力により両帯状金属薄板W1,W2の突合せ部近傍の上面へ弾性的に当接させるようにしているため、広幅の帯状金属薄板W1,W2であっても端部全域を幅方向に亘って左右の下部クランプ5bの上面へ均一に押圧することができ、両帯状金属薄板W1,W2の突合せを高精度に行える。
【0028】
両帯状金属薄板W1,W2の突合せ部がクランプ機構5により挾持固定されたら、支持フレーム17上の走行台26が駆動装置30により前進し、走行台26に設けたレーザセンサー29が帯状金属薄板W1,W2の幅を自動測定し、所定のプログラムにてTIG溶接装置7により両帯状金属薄板W1,W2の突合せ部が突合せ溶接される。
即ち、先行側作業テーブル3及び後行側作業テーブル4に夫々設けた電磁石2がOFFの状態になると共に、溶接用トーチ28が下降してタングステン電極棒27の先端を帯状金属薄板W1,W2の突合せ部の端部に位置させ、タングステン電極棒27の先端と帯状金属薄板W1,W2との間にアークを発生させる。その後、走行台26が駆動装置30により後退して溶接用トーチ28を帯状金属薄板W1,W2の突合せ部に沿って走行させ、突合せ部を突合せ溶接する。このとき、タングステン電極棒27の先端をシャープな円錐形状に形成してアークを集中させていると共に、突合せ溶接時に於けるアーク長を磁気吹きが生じない長さに設定しているため、電磁鋼板のように表面に絶縁皮膜が形成されている帯状金属薄板W1,W2であっても突合せ溶接を良好且つ確実に行えると共に、アークが電磁石2及び帯状金属薄板W1,W2に生じる残留磁気の影響を受けることがなく、溶接中の磁気吹きを防止することができる。即ち、先行帯状金属薄板W1及び後行帯状金属薄板W2を先行側作業テーブル3及び後行側作業テーブル4の上面へ保持するのに電磁石2を使用していても、TIG溶接法を用いて両帯状金属薄板W1,W2の突合せ溶接を確実且つ良好に行うことができる。
【0029】
尚、先行帯状金属薄板W1及び後行帯状金属薄板W2の端部を切断装置により切断加工した際に端部が長手方向に対して直角に切断されず、帯状金属薄板W1,W2を突き合せた時に溶接開始端のみが突き合されている場合でも、溶接の進行に伴って生じる収縮変形によって、両帯状金属薄板W1,W2の溶接終端側が順次突き合されることになり、突合せ溶接を確実且つ良好に行える。
【0030】
そして、両帯状金属薄板W1,W2の突合せ溶接が終了したら、電磁石2がONの状態になって両帯状金属薄板W1,W2を各作業テーブル3,4の上面へ吸着保持すると共に、この状態で両作業テーブル3,4及び下部クランプ5bが下降し、引き続いて支持フレーム17及び上部クランプ5aが後退した後、電磁石2がOFFの状態になって両帯状金属薄板W1,W2を開放する。これによって、先行帯状金属薄板W1の後端に接合された後行帯状金属薄板W2は、先行帯状金属薄板W1に引き続いてライン上へ供給されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態に係る帯状金属薄板の突合せ接合装置の一部切欠正面図である。
【図2】突合せ接合装置の一部切欠側面図である。
【図3】突合せ接合装置の平面図である。
【図4】突合せ接合装置の要部の縦断面図である。
【図5】支持フレーム及び支持フレームを往復移動させる駆動装置の縦断面図である。
【図6】先行側作業テーブル及び後行側作業テーブルの平面図である。
【図7】センタープレート及び昇降台部分の平面図である。
【図8】支持フレーム及び上部クランプ等が先行側作業テーブル及び後行側作業テーブルの上方位置へ移動した状態の縦断面図である。
【図9】昇降台及び移動台の縦断面図である。
【図10】突合せ接合装置の作動状態を示し、(A)はセンタープレートにより先行帯状金属薄板及び後行帯状金属薄板を位置決めし、両帯状金属薄板を電磁石により先行側作業テーブル及び後行側作業テーブルに吸着保持した状態の縦断面図、(B)は後行側作業テーブルを移動調整して先行帯状金属薄板の後端と後行帯状金属薄板の先端とを突き合せた状態の縦断面図である。
【図11】突合せ接合装置の作動状態を示し、(A)は上部治具等が突き合された両帯状金属薄板の上方位置へ移動した状態の縦断面図、(B)は両作業テーブル及び下部治具等が上昇して両帯状金属薄板の突合せ部近傍を上部治具及び下部治具により挾持固定した状態の縦断面図である。
【符号の説明】
【0032】
2は電磁石、3は先行側作業テーブル、4は後行側作業テーブル、5はクランプ機構、5′は上部治具、5″は下部治具、5aは左右の上部クランプ、5a′はブロック体、6はセンタープレート、7はTIG溶接装置、19は弾性体、W1は先行帯状金属薄板、W2は後行帯状金属薄板。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先行帯状金属薄板(W1)の後端と後行帯状金属薄板(W2)の先端とを突合せ溶接により接合する帯状金属薄板の突合せ接合装置であって、前記突合せ接合装置は、先行帯状金属薄板(W1)の後端部を支持載置する先行側作業テーブル(3)と、後行帯状金属薄板(W2)の先端部を支持載置して後行帯状金属薄板(W2)の先端を先行帯状金属薄板(W1)の後端に突き合せる後行側作業テーブル(4)と、両帯状金属薄板(W1),(W2)の突合せ部近傍を上下方向から挾持する上部治具(5′)及下部治具(5″)から成るクランプ機構(5)と、下部治具(5″)の中央部に昇降自在に配設されて先行帯状金属薄板(W1)の後端及び後行帯状金属薄板(W2)の先端の位置決めを夫々行うセンタープレート(6)と、両帯状金属薄板(W1),(W2)の突合せ部を突合せ溶接するTIG溶接装置(7)とを備えており、前記先行側作業テーブル(3)及び後行側作業テーブル(4)に、これらに支持載置された先行帯状金属薄板(W1)の後端部及び後行帯状金属薄板(W2)の先端部を磁力により各作業テーブル(3),(4)上面へ吸着保持する電磁石(2)を夫々配設すると共に、後行側作業テーブル(4)を両帯状金属薄板(W1),(W2)の走行方向及び幅方向へ夫々移動調整可能に構成し、更に、TIG溶接装置(7)の溶接用電極棒(27)の先端をシャープな円錐形状に形成すると共に、突合せ溶接時に於けるアーク長を磁気吹きが生じない長さに設定したことを特徴とする帯状金属薄板の突合せ接合装置。
【請求項2】
電磁石(2)が、先行側作業テーブル(3)及び後行側作業テーブル(4)の上面に両帯状金属薄板(W1),(W2)の幅方向に沿って複数列の状態で夫々配設されていることを特徴とする請求項1に記載の帯状金属薄板の突合せ接合装置。
【請求項3】
クランプ機構(5)の上部治具(5′)が、両帯状金属薄板(W1),(W2)の幅方向に沿う姿勢で且つ対向状に配設され、両帯状金属薄板(W1),(W2)の突合せ部近傍の上面に当接し得る上下方向へ揺動自在な長尺状の左右の上部クランプ(5a)から成り、左右の上部クランプ(5a)を両帯状金属薄板(W1),(W2)の幅方向に複数のブロック体(5a′)に分割し、各ブッロク体(5a′)の先端を弾性体(19)により両帯状金属薄板(W1),(W2)の突合せ部近傍の上面へ弾性的に当接させるようにしたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の帯状金属薄板の突合せ接合装置。
【請求項1】
先行帯状金属薄板(W1)の後端と後行帯状金属薄板(W2)の先端とを突合せ溶接により接合する帯状金属薄板の突合せ接合装置であって、前記突合せ接合装置は、先行帯状金属薄板(W1)の後端部を支持載置する先行側作業テーブル(3)と、後行帯状金属薄板(W2)の先端部を支持載置して後行帯状金属薄板(W2)の先端を先行帯状金属薄板(W1)の後端に突き合せる後行側作業テーブル(4)と、両帯状金属薄板(W1),(W2)の突合せ部近傍を上下方向から挾持する上部治具(5′)及下部治具(5″)から成るクランプ機構(5)と、下部治具(5″)の中央部に昇降自在に配設されて先行帯状金属薄板(W1)の後端及び後行帯状金属薄板(W2)の先端の位置決めを夫々行うセンタープレート(6)と、両帯状金属薄板(W1),(W2)の突合せ部を突合せ溶接するTIG溶接装置(7)とを備えており、前記先行側作業テーブル(3)及び後行側作業テーブル(4)に、これらに支持載置された先行帯状金属薄板(W1)の後端部及び後行帯状金属薄板(W2)の先端部を磁力により各作業テーブル(3),(4)上面へ吸着保持する電磁石(2)を夫々配設すると共に、後行側作業テーブル(4)を両帯状金属薄板(W1),(W2)の走行方向及び幅方向へ夫々移動調整可能に構成し、更に、TIG溶接装置(7)の溶接用電極棒(27)の先端をシャープな円錐形状に形成すると共に、突合せ溶接時に於けるアーク長を磁気吹きが生じない長さに設定したことを特徴とする帯状金属薄板の突合せ接合装置。
【請求項2】
電磁石(2)が、先行側作業テーブル(3)及び後行側作業テーブル(4)の上面に両帯状金属薄板(W1),(W2)の幅方向に沿って複数列の状態で夫々配設されていることを特徴とする請求項1に記載の帯状金属薄板の突合せ接合装置。
【請求項3】
クランプ機構(5)の上部治具(5′)が、両帯状金属薄板(W1),(W2)の幅方向に沿う姿勢で且つ対向状に配設され、両帯状金属薄板(W1),(W2)の突合せ部近傍の上面に当接し得る上下方向へ揺動自在な長尺状の左右の上部クランプ(5a)から成り、左右の上部クランプ(5a)を両帯状金属薄板(W1),(W2)の幅方向に複数のブロック体(5a′)に分割し、各ブッロク体(5a′)の先端を弾性体(19)により両帯状金属薄板(W1),(W2)の突合せ部近傍の上面へ弾性的に当接させるようにしたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の帯状金属薄板の突合せ接合装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−7265(P2006−7265A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−187201(P2004−187201)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(591286823)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(591286823)
【Fターム(参考)】
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