説明

帯電ローラ、帯電方法、プロセスカートリッジ及び電子写真装置

【課題】苛酷な高温高湿環境に曝された後に、DC帯電法によって、例えば600dpiの中間調画像のような高精細画像を出力した場合においても、均一な帯電が行える帯電ローラ、及び該帯電ローラを用いた帯電方法、プロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供する。
【解決手段】少なくとも、鋼材からなる芯金1と、該芯金上の導電性弾性体2を有する帯電ローラにおいて、該鋼材の表面が、ピンホールの無いニッケルめっきで被覆されていることを特徴とする帯電ローラ、及び該帯電ローラを用いた帯電方法、プロセスカートリッジ及び電子写真装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電ローラ、帯電方法、プロセスカートリッジ及び電子写真装置に関し、詳しくは、電圧を印加して被帯電体である電子写真感光体の表面を所定の電位に帯電処理するための導電性ローラである帯電ローラ、及び該帯電ローラを用いた帯電方法、プロセスカートリッジ及び電子写真装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から電子写真用の帯電部材として、帯電ローラが用いられてきた。帯電ローラを用いた帯電方式で最も一般的な方式としては、印加する電圧に交流と直流の電圧を重畳したAC電源を用い、スポンジ層を有する帯電ローラの使用により帯電音の発生を抑制した方式である。このような交流電源に対応した帯電ローラに関する提案がなされている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この方式とは別に、電源として直流電源のみを用いたDC帯電方式も開発されてきた。DC帯電方式は一般的に帯電を均一にすることがAC帯電方式に比較して困難であるが、電源を含めたコストが安く、また帯電によって感光体を削る量が圧倒的に少ないので、最近徐々に普及しつつある。このDC帯電方式に使用する帯電ローラにはヒドリンゴムのような極性ゴムを使用する提案が多くなされている(例えば、特許文献2参照)。あるいは普通のゴムにイオン導電剤を含有させている場合もある。
【0004】
ところで、プリンターや複写機として電子写真装置の普及が進むにつれ、より高画質な画像出力が求められてきた。また、世界中で電子写真装置が使用されるようになると、従来では考えられなかったような苛酷な環境に電子写真装置が曝される可能性も発生してきた。つまり、電子写真装置の運搬、保管時などには、熱帯に匹敵する高温高湿度の環境のもとに電子写真装置が曝される可能性も生まれてきた。
【0005】
このような場合、従来の、例えばEPDMを使用したスポンジローラのように比較的極性の小さいゴム材料を使用した帯電ローラの場合には問題は無かったが、DC帯電用に極性ゴムを使用した帯電ローラを電子写真装置に使用している場合には問題の発生する可能性がある。つまり、極性ゴムはゴム中にイオンがかなりの量含まれていると考えられているが、このイオンが一般的なニッケルめっきを施した鋼製の芯金を腐食する可能性が生まれてきた。通常の常温常湿の環境であれば、このような反応の速度は小さく、電子写真装置の装置寿命中に帯電ローラの芯金の腐食が電子写真装置の画像形成に対して問題となることは無かったが、きわめて高温高湿度の環境中に曝される可能性が発生し、かつ、従来よりも更に高精細な帯電が求められるようになると、従来の帯電ローラで長期的に高精細な帯電を行うのは非常に難しいという問題がある。
【0006】
ゴム中のイオンによって腐食する可能性が小さい芯金のアイデアとしては、従来から、めっきした鉄の他にも、アルミニウム、チタン、銅及びニッケル等の金属やこれらの金属を含むステンレス、ジュラルミン、真鍮及び青銅等の合金、更にカーボンブラックや炭素繊維をプラスチックで固めた複合材料等の、剛直で導電性を示す公知の材料が知られているが、硬度や導電性等の特性や経済性を勘案した場合に、実際に実用化されているのはほとんどがニッケルめっきを施した鋼材である。めっきの材料としては他にも亜鉛、金や銀、白金等が考えられるが、亜鉛は防食性は良好であるが、強度が小さいので芯金とした場合軸受けとの摩擦で剥がれやすいという問題があり、金や銀、白金等の貴金属はコストの点で問題がある。
【特許文献1】特開平07−072710号公報
【特許文献2】特開平05−341627号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、このような課題に対処してなされたもので、苛酷な高温高湿環境に曝された後に、DC帯電法によって、例えば600dpiの中間調画像のような高精細画像を出力した場合においても、均一な帯電が行える帯電ローラを提供することにある。本発明の別の目的は、上記帯電ローラを用いた帯電方法、プロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、少なくとも、鋼材からなる芯金と、該芯金上の導電性弾性体を有する帯電ローラにおいて、該鋼材の表面が、ピンホールの無いニッケルめっきで被覆されていることを特徴とする帯電ローラである。
【0009】
また、本発明は、上記帯電ローラを用いた帯電方法、プロセスカートリッジ及び電子写真装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、非常に苛酷な高温高湿環境に曝された後に、DC帯電法によって、例えば600dpiの中間調画像のような高精細画像を出力した場合においても、均一な帯電が行える帯電ローラを提供することが可能となった。
【0011】
また、本発明の帯電ローラを使用することにより、良好な帯電特性により、非常に苛酷な高温高湿環境に曝された後に、DC帯電法によって、例えば600dpiの中間調画像のような高精細画像を出力した場合においても、均一な帯電が行える帯電方法及びプロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0013】
本発明者らは、帯電ローラの芯金として表面にピンホールの無いニッケルめっきで被覆された鋼材を用いることにより、苛酷な高温高湿環境に曝された後に、DC帯電法によって、例えば600dpiの中間調画像のような高精細画像を出力した場合においても、均一な帯電が行える帯電ローラを提供することができることを発見し本発明に至った。
【0014】
次に、本発明の帯電ローラ、それを用いた帯電方法、プロセスカートリッジ及び及び電子写真装置を説明する。
【0015】
<1>帯電ローラ
本発明の帯電ローラの具体的な構成を図1に示す。(a)は帯電ローラの横断面を示し、(b)は縦断面を示したものである。
【0016】
本発明の帯電ローラは、芯金1とその外周に形成された導電性弾性体基層2とを有する帯電ローラである。そして該芯金が、表面にピンホールの無いニッケルめっきで被覆された鋼材であることを特徴とする。場合によっては導電性弾性体基層2の外周を被覆する表層3を有していてもよい。
【0017】
芯金の材料としては鋼材が用いられる。芯金は円柱状に形成しなければならないので、鋼の種類としては切削加工の容易な快削鋼が好適に用いられる。快削鋼としては例えば、SUM11、SUM12、SUM21、SUM22、SUM23、SUM24、SUM31、SUM32、SUM41、SUM42等が挙げられる。
【0018】
快削鋼は、振れ5μm以下の滑らかな円柱形の芯金形状に加工された後、市販の脱脂及び電解洗浄剤等の常法により前処理した後にめっきが施される。
【0019】
本発明のピンホールの無いニッケルめっきを得る第一の方法は、無電解Ni−Bめっき液にホウ酸イオン及びアンモニウムイオンを存在させることにより達成できる。即ち、本発明の芯金を得るためには、めっき液に、ニッケルイオン、ホウ素系還元剤、ホウ酸イオン及びアンモニウムイオンを含む必要がある。更にアミンを添加することにより被膜に平滑さを与え外観を良好にすることができる。
【0020】
ニッケルイオン供給源としては、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、酢酸ニッケル、スルファミン酸ニッケル等の可溶性ニッケル塩が挙げられる。
【0021】
ホウ素系還元剤とはホウ素を含有する還元剤をいい、例えば、水素化ホウ素ナトリウム等の水素化ホウ素アルカリ金属塩;ジメチルアミンボラン(DMAB)、トリメチルアミンボラン等の可溶性ボラン化合物;ジエチルアミンボラン、イソプロピルアミンボラン等の溶媒併用可溶性ボラン化合物等が挙げられる。特に、可溶性ボラン化合物が好ましく、中でもジメチルアミンボランが好ましい。
【0022】
ホウ酸イオンは、例えばめっき液に、ホウ酸アンモニウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸ニッケル等のホウ酸塩またはフリーのホウ酸を添加することによって存在させることができる。アンモニウムイオンは、ホウ酸アンモニウムや種々のアンモニウム塩及びフリーのアンモニアを添加することによって存在させることができる。特に、ホウ酸アンモニウムが、ホウ酸イオンとアンモニウムイオン以外のイオンを伴わない点で好ましい。ホウ酸アンモニウムには、メタホウ酸アンモニウム、四ホウ酸アンモニウム、五ホウ酸アンモニウム、八ホウ酸アンモニウム等があるが、特に五ホウ酸アンモニウムが好ましい。
【0023】
浸漬時間は、得ようとする膜厚に応じて適宜決定することができるが、一般に、数分〜数時間である。温度も得ようとする膜厚に応じて適宜決定することができるが、一般に50℃〜90℃である。また、膜厚は厚過ぎると芯金精度やコストの面で問題があるし、薄いと耐腐食性が劣るので、一般に、1〜100μm、好ましくは、2〜30μmである。pHは5.0〜9.0、好ましくは6.0〜7.0である。pHを大きくする場合は、アンモニアまたはNaOH、KOH等の水酸化アルカリが使用でき、低くする場合は、硫酸、塩酸等の酸を使用することができる。浴温とpHは、浴安定性と析出速度の関係を考慮して決定する。
【0024】
めっき液から取り出した芯金は水で洗浄された後、水分を蒸発させるため乾燥される。
【0025】
得られたニッケルめっき合金中のホウ素の量は好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.2〜5質量%である。
【0026】
本発明のピンホールの無いニッケルめっきを得る第二の方法は、一般的な無電解Ni−Pめっきを2回繰り返すことであり、これにより、ピンホールの無いニッケルめっきの芯金が得られる。めっき液は一般的なもので、ニッケル供給源として硫酸ニッケル、還元剤として次亜りん酸ナトリウム、pH調整剤として水酸化ナトリウム、錯化剤、緩衝材として酢酸ナトリウム、促進剤としてチオ尿素、等を含む溶液である。
【0027】
このような一般的なめっき液のめっきを1回行った後、めっき液から取り出した芯金を水で洗浄して水分を蒸発させ乾燥した後、更にもう一度めっき液に浸してめっきする。それぞれのめっき時間、温度、pHはめっきの膜厚を考慮して適切に決める。めっきを2回行うことにより、同じ位置にピンホールが重なる可能性がほとんど無いため、ピンホールの無い良好なニッケルめっきを得ることができる。
【0028】
本発明のピンホールの無いニッケルめっきを得る第三の方法は、1回めっきを行った後、芯金を300℃以上の温度で加熱処理することである。加熱処理することによりめっき層の結晶構造が変化して、ピンホールがつぶれ、ピンホールの無い良好なニッケルめっき皮膜が得られる。
【0029】
芯金1の外周に導電性弾性体基層2を成形する。導電性弾性体基層2は導電性弾性体からなっている。導電性弾性体は、導電剤と高分子弾性体とを混合して成形される。導電剤は少なくともイオン導電剤が含有されている。高分子弾性体としては、特にエピクロルヒドリンゴムが好適に用いられる。エピクロルヒドリンゴムは、ゴム自体に若干の導電性があり、導電剤の添加量が少なくても良好な導電性を発揮することができ、また、環境や位置による電気抵抗のバラツキも小さくすることができるので、高分子弾性体として好適に用いられる。
【0030】
エピクロルヒドリンゴムは、エピクロルヒドリンを中心とする環状のエーテルの開環重合体であり、ゴムを構成する主な単量体には、エピクロルヒドリン、エチレンオキシド及びアクリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0031】
重合体であるエピクロルヒドリンゴムとしては、エピクロルヒドリン単独重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−アリルグリシジルエーテル共重合体及びエピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体等が挙げられる。この中でも安定した中抵抗領域の導電性を示すことから、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体が特に好適に用いられる。エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体は、重合度や組成比を任意に調整することで導電性や加工性を制御できる。
【0032】
高分子弾性体はエピクロルヒドリンゴムを主成分とするが、必要に応じてその他の一般的なゴムを含有されてもよい。
【0033】
その他の一般的なゴムとしては、例えばEPM(エチレン・プロピレンゴム)、EPDM(エチレン・プロピレンゴム)、ノルボーネンゴム、NBR(ニトリルゴム)、クロロプレンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロスルフォン化ポリエチレン、ウレタンゴム、SBS(スチレン・ブタジエン・スチレン−ブロックコポリマー)、SEBS(スチレン・エチレンブチレン・スチレン−ブロックコポリマー)等のスチレン系ブロックコポリマー及びシリコーンゴム等が挙げられる。上記の一般的なゴムを含有する場合、その含有量は、高分子弾性体全量に対し1〜50質量%であるのが好ましい。
【0034】
導電剤としては、導電性弾性体基層の電気抵抗率のムラを小さくするという目的により、イオン導電剤を含有することが必要である。イオン導電剤が高分子弾性体の中に均一に分散し、導電性弾性体の電気抵抗率を均一化することにより、帯電ローラを直流電圧のみの電圧印加で使用したときでも均一な帯電を得ることができる。
【0035】
イオン導電剤としては、例えば、LiClOやNaClO等の過塩素酸塩、4級アンモニウム塩等が挙げられ、これらを単独または2種類以上組み合わせて用いることができる。イオン導電剤の中でも、環境変化に対して抵抗が安定なことから特に過塩素酸塩、4級アンモニウム塩が好適に用いられる。
【0036】
イオン導電剤に加えて、導電性弾性体の電気抵抗にムラを生じさせない範囲で、電子導電性の導電剤を添加することができる。電子導電性の導電剤は、電子導電性の導電剤の担う導電性が、イオン導電剤の担う導電性よりも小さい範囲で使用することができる。すなわち、電子導電性の導電剤は、高分子弾性体にイオン導電剤のみを添加した場合の体積抵抗率に対して、電子導電性の導電剤を加えて添加した場合の体積抵抗率が1/2以上であるような配合割合で使用することができる。電子導電性の導電剤としては、例えば、アルミニウム、パラジウム、鉄、銅及び銀等の金属系の粉体や繊維、カーボンブラック、金属粉や酸化チタン、酸化錫及び酸化亜鉛等の金属酸化物、硫化銅、硫化亜鉛等の金属化合物粉、または適当な粒子の表面を酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化モリブデン、亜鉛、アルミニウム、金、銀、銅、クロム、コバルト、鉄、鉛、白金、ロジウム等で電解処理、スプレー塗工、混合振とうにより付着させた粉体、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、PAN(ポリアクリロニトリル)系カーボン、ピッチ系カーボン等のカーボン粉がある。これらを単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0037】
本発明において、これらの導電剤の配合量は、感光体を安定して均一に帯電させる上で、導電性弾性体の体積抵抗率が、低温低湿環境(L/L:15℃/10%RH)、常温常湿環境(N/N:23℃/55%RH)、高温高湿環境(H/H:30℃/80%RH)で、中抵抗領域(体積抵抗率が1×10〜1×10Ω・cm)になるような量が好ましい。
【0038】
導電性弾性体の体積抵抗は、厚さ1mmのシートに成形した後、両面に金属を蒸着して電極とガード電極とを作製し、微小電流計(商品名:アドバンテスト R8340A ウルトラハイレジスタンス・メータ(ADVANTEST R8340A ULTRA HIGH RESISTANCE METER);(株)アドバンテスト製)を用いて200Vの電圧を印加して30秒後の電流を測定し、膜厚と電極面積とから計算して求める。
【0039】
導電性弾性体の体積抵抗率を上記範囲内とすることで、像担持体である感光体にピンホールがあった場合にも、大電流がピンホールに一気に集中してしまい、穴をより大きくしてしまったり、穴以外の場所に電流が流れなくなって高精細なハーフトーン画像上に黒い帯となって帯電電位が不足した部分が現れてしまったりといった不具合の発生を抑えることができ、また必要な放電電流が得られる為、感光体を所望する電位に均一に帯電させることができるといった効果が奏される。
【0040】
この他にも導電性弾性体には必要に応じて、可塑剤、充填剤、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、分散剤及び離型剤等の配合剤を加えることも好ましい。
【0041】
導電性弾性体の成形方法としては、上記の導電性弾性体の原料を混合して、例えば、押し出し成形、射出成形及び圧縮成形等の公知の方法が挙げられる。また、導電性弾性体基層は、芯金の上に直接導電性弾性体を成形して作製してもよいし、チューブ形状に成形した導電性弾性体を芯金に被覆させてもよい。必要に応じて芯金と導電性弾性体とを接着剤で接着しても良い。接着剤は熱可塑性の接着剤や熱硬化性の接着剤を必要に応じて使用する。接着剤は導電性でも良いし、絶縁性の接着剤を薄く塗って使用しても良い。なお、導電性弾性体基層の作製後に表面を研磨して形状を整えてもよい。
【0042】
導電性弾性体基層の形状は、帯電ローラが実際に使用されるときの当接力の分布を均一にするため、帯電ローラの中央部の直径が端部の直径よりも大きいクラウン形状とする。また、出来上がったローラの当接ニップ幅が均一となるために、帯電ローラの振れが小さい方が好ましい。
【0043】
図2に帯電ローラの振れの測定方法の概略図を示す。(a)は斜視図、(b)は正面図である。振れの測定値は、図のように、芯金を回転軸として帯電ローラを回転させ、回転軸と垂直に非接触レーザー測長器(本発明においては、(株)キーエンス製 LS−5000)で測定した導電性弾性体基層の半径の最大値と最小値の差を値として求める。導電性弾性体基層の軸方向に5mmピッチで前記半径の最大値と最小値の差を求め、その値の中で最大の値を帯電ローラの振れの値とする。
【0044】
帯電ローラの振れの好ましい値は、ローラ中央部の直径の1.0%以下、より好ましくは0.5%以下である。本発明のローラの直径は8mm程度が好ましいので、振れの値は具体的には80μm以下が好ましく、より好ましくは40μm以下とする。
【0045】
また、ローラの直径とは、同様に芯金を回転軸として帯電ローラを回転させ、回転軸と垂直に非接触レーザー測長器で測定した導電性弾性体基層の直径の最大値と最小値の平均とする。
【0046】
A4サイズの印刷メディア用の帯電ローラの場合、帯電ローラの軸方向中央部の直径と、導電性弾性体基層の中央部から90mmの部分の直径の値2つの平均との差を、クラウン量の値として求める。クラウン量の値は出来上がった帯電ローラの当接応力が均一になるように決めるが、好ましくはローラ直径の0.1〜5.0%、具体的には8μm〜400μmが好ましい。
【0047】
一般的に導電性弾性体基層の軸方向中心部分の直径をZ(mm)とすると、中心から端部側へx(mm)離れた場所の導電性弾性体基層の直径Y(mm)を以下のようにすると当接応力のばらつきが小さくなるので、好ましい。
【0048】
Y=Z−α×(A×B×x)/(C×D×E×F)
A:帯電ローラが使用状態で、芯金の片側端部に印加される荷重(N)
B:導電性弾性体基層の全長(mm)
C:導電性弾性体基層のアスカーC硬度(°)
D:芯金の弾性率(GPa)
E:芯金の直径(mm)
F:導電性弾性体基層の軸方向中心部分の肉厚(mm)
α:定数(0.22±0.02)
【0049】
上記のような精密な導電性弾性体基層形状とするため、導電性弾性体基層は、研磨によって成形することが好ましい。更に、微妙なクラウン形状を精密に仕上げるため、導電性弾性体基層の軸方向全長よりも幅の広い回転砥石を用いて研磨することがより好ましい。研磨の一例を図3に示す。図3のように帯電ローラ(a)は回転する砥石(b)と平行に保持され回転している。帯電ローラの回転軸と砥石の回転軸とを平衡を保ったまま距離を変化させることにより、研磨がなされ、導電性弾性体基層の表面形状がクラウン形状となり、表面粗さも一定になる。砥石の形状は、導電性弾性体基層の形状が良好なクラウン形状となるように、ダイヤモンドの刃物を使って精密な形状に整えられる。砥石の材質は、グリーンカーボランダム等の公知の材質で、研磨条件に応じて砥石の番手を決定する。
【0050】
導電性弾性体のアスカーC硬度は、90°以下が好ましく、より好ましくは85°以下である。これにより、帯電ローラと感光体との間の当接圧力が大きくなることによる帯電の不安定化を抑え、感光体や帯電ローラの表面に現像剤その他の付着を抑えるといった効果が奏される。
【0051】
なお、「アスカーC硬度」とは、日本ゴム協会標準規格SRIS0101に準拠したアスカーC型スプリング式ゴム硬度計(高分子計器(株)製)を用いて測定した帯電ローラの硬度であり、常温常湿(23℃/55%RH)の環境中に12時間以上放置した帯電ローラに対して該硬度計を10Nの力で当接させてから30秒後に測定した値とする。
【0052】
アスカーC硬度を小さくするため、導電性弾性体に可塑剤を配合する。配合量はゴム成分100質量部に対し、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上である。可塑剤としては、例えばセバシン酸とプロピレングリコールの共重合体のような、エステル系の高分子可塑剤を用いることができる。このようなエステル系の可塑剤はエピクロルヒドリンゴムと極性が近く、比較的大量に配合することが可能であり、基層の硬度を小さく制御できるメリットがある。高分子可塑剤の分子量は、好ましくは2000以上、より好ましくは4000以上である。これにより、可塑剤のローラの表面への染み出しを有効に抑えることができる。
【0053】
また、導電性弾性体基層の表面は、表層の塗工に影響しないよう、粗さを一定以下に小さくしておく。表面粗さの測定方法は、表層の説明部分に記載する。基層の好ましい表面粗さとしては、JIS B0601−1994の表面粗さに基づき十点平均粗さRzの値として10μm以下、ピーク間距離Smの値として、200μm以下とすることが好ましい。表面粗さを上記範囲とすることで、基層の表面粗さが表層の塗工後に帯電ローラ表面に現れてしまうことを防ぐことができる。
【0054】
導電性弾性体基層は、必要に応じて芯金と接着剤を介して接着される。この場合、接着剤は導電性であることが好ましい。導電性とするため、接着剤には公知の導電剤を含有させることができる。
【0055】
接着剤のバインダーとしては、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂等の樹脂が挙げられ、ウレタン系、アクリル系、ポリエステル系、ポリエーテル系及びエポキシ系等の公知の接着剤を用いることができる。
【0056】
導電性弾性体基層が完成した後に、その被覆層として表層3を設ける。
【0057】
本発明の帯電ローラの表層は、少なくとも無機微粒子と有機微粒子とを含有することが好ましい。
【0058】
無機微粒子は表面処理をされていることがより好ましい。
【0059】
無機微粒子としては、酸化チタン粉体を含有することが好ましい。酸化チタンを含有すると、高抵抗な帯電ローラを使用しても帯電電位の絶対値が大きくなり、かつ安定するので、DC帯電ローラ用として特に好ましい。工業的な酸化チタンとしては結晶形態の異なるアナターゼ型(鋭錐石)、ルチル型(金紅石)、ブルカイト型(板チタン石)の3種類があるが、ブルカイト型は学術的に取り上げられるのみで、工業面での利用は殆どなく、実質上、用いられるのはアナターゼ型とルチル型である。
【0060】
酸化チタンの一次粒子径は1.0μm以下程度の微粒子であることが好ましい。
【0061】
酸化チタンの製造法としては、硫酸チタンを加水分解して焼成する硫酸法や四塩化チタンを高温で酸化する塩素法などがある。
【0062】
更に、本発明においては、表面を疎水化処理されている酸化チタン微粉体を用いることが好ましい。疎水化処理するには、酸化チタン微粉体と反応あるいは物理吸着する有機ケイ素化合物で化学的に処理することによって付与される。好ましい方法としては、シランカップリング剤で処理する方法、あるいはシリコーンオイルの如き有機ケイ素化合物で処理する方法、あるいはシランカップリング剤で処理した後、あるいはシランカップリング剤で処理すると同時にシリコーンオイルの如き有機ケイ素化合物で処理する方法等が挙げられる。
【0063】
疎水化処理に使用されるシランカップリング剤としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフェニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α−クロルエチルトリクロルシラン、β−クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、トリオルガノシランメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン及び1,3−ジフェニルテトラメチルジシロキサンが挙げられる。
【0064】
疎水化処理に使用される有機ケイ素化合物としては、シリコーンオイルが挙げられ、好ましいシリコーンオイルとしては、25℃における粘度がおよそ30〜1,000センチストークスのものが用いられる。例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、α−メチルスチレン変性シリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイルまたはフッ素変性シリコーンオイルを用いることが好ましい。
【0065】
シリコーンオイルによる疎水化処理の方法としては、例えば、シランカップリング剤で処理された酸化チタン微粉体とシリコーンオイルとをヘンシェルミキサーの如き混合機を用いて直接混合してもよいし、ベースとなる酸化チタンヘシリコーンオイルを噴射する方法によってもよい。あるいは、適当な溶剤にシリコーンオイルを溶解あるいは分散せしめた後、ベースの酸化チタン微粉体と混合し、溶剤を除去することによって疎水化処理してもよい。
【0066】
無機微粒子の添加量は、塗工後の表層中の質量割合として0.1〜10%が好ましい。少な過ぎると無機微粒子を添加して帯電が安定する効果が得られないし、多過ぎると表層塗料の粘度の制御が難しくなり、均一に塗工することが難しくなるので、好ましくない。
【0067】
次に、表層に含有する有機微粒子としては、架橋した高分子微粒子を用いることが好ましい。架橋していないと表層塗工用の塗料としたときに溶解する恐れがあるので好ましくない。架橋した高分子微粒子を作るモノマーとしては、特には限定しないが、重合の容易さ等から、ビニル系のモノマーが好適に用いられる。
【0068】
本発明に用いるビニル系モノマーは、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルへキシル等のアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸へキシル等のメタクリル酸エステル、スチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン等の芳香族系ビニル単量体、酢酸ビニル及びアクリロニトリル等が挙げられる。
【0069】
樹脂粒子が架橋された高分子微粒子となるために、本発明においては、上記のビニル系モノマー以外に、分子内にビニル基を2つ以上有する架橋性のビニル系モノマーを使用する。このような架橋性のビニル系モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート及びトリメチロールプロパントリメタアクリレート等が挙げられる。これら架橋性のビニル系モノマーの添加量は、非架橋性のビニルモノマー100質量部に対して0.5〜30質量部が好ましい。
【0070】
これらの架橋された高分子微粒子は、シード乳化重合、分散重合または懸濁重合等により重合されるが、低分子の界面活性剤等の残留が少ないので、懸濁重合によって重合されることが好ましい。重合開始剤は、特に限定されないが、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル等の過酸化物系触媒、アゾビスイソブチロニトリルのようなアゾ系触媒が挙げられる。
【0071】
高分子微粒子の添加量は、帯電の安定化、並びに表層塗料の粘度制御の容易さといった観点から、塗工後の表層中の質量割合として1〜80質量%とすることが好ましい。
【0072】
表層のバインダーとしては、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂等の樹脂が用いられる。本発明の表層のバインダーとしては、ラクトン変性アクリルポリオールを、イソホロンジイソシアネートとヘキサメチレンジイソシアネートとで架橋したウレタン樹脂が特に好適に用いられる。
【0073】
表層のポリオールを架橋させるイソシアネートとしてヘキサメチレンジイソシアネートを単独で用いた場合、表層が柔軟でローラの塗工後の表面が均一に仕上がるというメリットがある反面、苛酷な高温高湿環境では出来上がった表層が基層中の未加硫成分(例えば、イオン導電剤や可塑剤)がローラ表面へ染み出してくることを充分に阻止できない可能性がある。このような染み出し物質が存在すると、感光体を汚染する可能性がある。
【0074】
一方、表層のポリオールを架橋させるイソシアネートとしてイソホロンジイソシアネートを単独で用いた場合、表層が基層からの染み出し物質の染み出しを防止する効果は大きいが、表層が固くなり過ぎて基層ゴムの熱収縮に追従できず、出来上がったローラの表面にシワが発生し、ローラの表面粗さや形状の面で望みのローラを得ることができないという弊害がある。
【0075】
本発明のローラの表層は、イソホロンジイソシアネートの染み出し物質ブロック性とヘキサメチレンジイソシアネートの柔軟性とを併せ持った良好な特性を持つ表層樹脂を提供し、イオン性の基層からの染み出し物質がローラ表面に染み出してくることを防止しつつ、良好な表面形状を有する帯電ローラを得ることができる。
【0076】
すなわち、本発明において表層に用いる樹脂は、ラクトン変性アクリルポリオールとイソホロンジイソシアネートとヘキサメチレンジイソシアネートとをブレンドし硬化させることにより、ラクトン変性アクリルポリオールに対してイソホロンジイソシアネートとヘキサメチレンジイソシアネートとがランダムに反応して、架橋構造が形成されたものが好ましい。
【0077】
本発明に用いるイソシアネートは、イソシアヌレート型の3量体とすることがより好ましい。分子の剛直な3量体が架橋点となり、表層がより密に架橋することができ、イオン性の基層からの染み出し物質がローラ表面に染み出してくることをより一層効果的に防止することができる。
【0078】
また、本発明に用いるイソシアネートは、イソシアネート基がブロック剤によりブロックされたブロックイソシアネートとすることがより好ましい。この理由としては、上記イソシアネート基は反応し易く、表層塗料を常温に長時間放置しておくと徐々に反応が進み、塗料の特性が変化してしまう恐れがあるからである。これに対してブロックイソシアネートは、活性なイソシアネート基がブロックされ、ブロック剤の解離温度までは反応しないので、塗料の取扱が容易になるというメリットがある。マスキングを行うブロック剤には、フェノール、クレゾール等のフェノール類、ε−カプロラクタムのラクタム類及びメチルエチルケトオキシム等のオキシム類等が挙げられるが、本発明の場合、解離温度が比較的低温のオキシム類が好ましい。
【0079】
本発明の表層樹脂を構成するラクトン変性アクリルポリオールとブロックイソシアネートの3量体を図示する。
【0080】
【化1】

【0081】
【化2】

【0082】
【化3】

【0083】
一方、ラクトン変性アクリルポリオールのOH価は80KOHmg/g程度であることが好ましい。OH価が少ないと、イソシアネートで架橋され難くなり、それによって樹脂が柔らかくなり過ぎて感光体に貼り付き易くなる。OH基が多過ぎると塗膜が硬くなり過ぎて割れ易くなる。
【0084】
本発明のラクトン変性アクリルポリオールは、分子鎖骨格がスチレンとアクリルの共重合体であり、適度な硬度と非汚染性を有する。また、末端に水酸基を有する変性したラクトン基が多数の架橋点となり、イソシアネートで密に架橋することが可能であり、基層からの未加硫成分の染み出しを防止することができる。このようなラクトン変性アクリルポリオールとしては、例えば、商品名:プラクセルDC2016;ダイセル化学工業(株)製等が挙げられる。
【0085】
表層に用いる樹脂のガラス転移温度Tgは、感光体への貼り付きを防ぎ、またトナー等による汚染を防ぐ為に、粘弾性測定法で、ピーク温度が45℃以上が好ましく、特には50℃以上あることが好ましい。
【0086】
本発明におけるガラス転移温度Tgの測定方法は、以下のようにする。まず、測定用の表層サンプルは、ローラ状態から表層を剥がし、5mm×40mm程度の短冊形に切り出す。測定装置は、動的粘弾性測定装置RSA−II(レオメトリックス・サイエンティフィック・エフ・イー(株)製)を用い、また治具としてフィルムテンションフィクスチャーを用いる。測定は、−50℃〜150℃の温度範囲において測定周波数6.28rad/sec、昇温速度5℃/min.、初期歪0.07〜0.25%のオートテンションモードで行う。損失正接tanδの温度分散を測定し、ピーク温度をTgとする。
【0087】
また特に限定はしないが、あまりTgが高過ぎても樹脂の可撓性がなくなり、塗膜が割れ易くなるので好ましくない。Tgは、架橋させるイソシアネートの比率または量によって調節する。
【0088】
ラクトン変性アクリルポリオール樹脂とイソシアネートとの配合比は、配合した塗料中のイソシアネートの中のNCO基の数(A)と、ラクトン変性アクリルポリオール樹脂中のOH基の数(B)との比、NCO/OH比=A/Bが0.1〜2.0が好ましく、特に好ましくは0.3〜1.5の範囲になるように調整する。
【0089】
ラクトン変性アクリルポリオールをイソシアネートで架橋することにより、導電性弾性体基層からの低分子成分の染み出しを防止すると共に、帯電ローラ自体がトナー等に対して汚れ難く、かつ感光体を汚染しない表層を形成することができる。
【0090】
表層を形成する樹脂塗料には、各種の導電剤やレべリング剤を混合することも好ましい。レべリング剤としては、例えばシリコーンオイルが挙げられる。
【0091】
表層に用いる導電剤としては、例えばアルミニウム、パラジウム、鉄、銅及び銀等の金属系の粉体や繊維、カーボンブラック、金属粉や酸化チタン、酸化錫及び酸化亜鉛等の金属酸化物、硫化銅や硫化亜鉛等の金属化合物、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化モリブデン、亜鉛、アルミニウム、金、銀、銅、クロム、コバルト、鉄、鉛、白金及びロジウム等を電解処理、スプレー塗工、混合振とうにより表面に付着させた粉体、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、PAN系カーボン及びピッチ系カーボン等のカーボン粉が挙げられる。
【0092】
本発明においては、導電剤としては、アンチモンをドープした導電性酸化スズが特に好適に用いられる。その理由は、アンチモンをドープした導電性酸化スズは、導電剤自体の体積抵抗率が比較的大きく、導電剤を分散する樹脂の体積抵抗率との差が他の導電剤に比較して小さいので、導電剤を分散して中抵抗の表層材料としたときに、導電剤の分布の僅かな差が表層材料の抵抗の差を生じ難く、抵抗の位置によるばらつきを比較的小さく抑制することができることが、本発明の表層材料の導電剤として好適であるからである。
【0093】
表層の樹脂に加えるこれらの導電剤の配合量は、表層の樹脂の体積抵抗率が低温低湿環境(L/L:15℃/10%RH)、常温常湿環境(N/N:23℃/55%RH)、高温高湿環境(H/H:30℃/80%RH)で、中抵抗領域(体積抵抗率が1×10〜1×1015Ω・cm)になるように決める。
【0094】
表層の体積抵抗率を上記範囲内とすることにより、感光体にピンホールがあった場合にも、ピンホールに過大な電流が流れてリークしてしまい、リークした跡が画像に表れてしまうことを防ぐことができ、また感光体を所定の電位に帯電することができるため、所望する濃度の画像を得られるという効果が奏される。
【0095】
表層の体積抵抗は、ローラ状態から表層を剥がし、5mm×5mm程度の短冊形に切り出す。両面に金属を蒸着して電極とガード電極とを作製し、微小電流計(ADVANTEST R8340A ULTRA HIGH RESISTANCE METER (株)アドバンテスト製)を用いて200Vの電圧を印加して30秒後の電流を測定し、膜厚と電極面積とから計算して求める。
【0096】
導電性酸化スズの配合量としては、塗工後の表層に対して10〜80質量%が好ましく、特に好ましくは20〜60質量%である。導電性酸化スズの一次粒径は、示差走査型電子顕微鏡観察で0.1μm以下が好ましい。表層塗料中で二次粒子が小さくなるまで公知の方法で分散する。二次粒子径は、帯電ムラの抑制の観点から、遠心沈降式粒度分布計(CAPA700:堀場製作所製)による体積平均粒径MEDIANの値で、1.0μm以下が好ましく、特に好ましくは0.5μm以下に分散する。
【0097】
本発明に用いられる導電性酸化スズは、表面がカップリング剤で表面処理されていることが好ましい。上記カップリング剤は、同一分子内に加水分解可能な基と疎水基を有し、珪素、アルミニウム、チタンまたはジルコニウム等の中心元素に結合している化合物で、この疎水基部分に長鎖アルキル基を有するものである。
【0098】
加水分解基としては、例えば比較的親水性の高い、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基及びブトキシ基等のアルコキシ基等が用いられる。その他、アクリロキシ基、メタクリロキシ基、これらの変性体及びハロゲン等も用いられる。また疎水基としては、その構造中に炭素原子が6個以上直鎖状に連なる構成を含むものであればよく、中心元素との結合形態においては、カルボン酸エステル、アルコキシ、スルホン酸エステルまたはりん酸エステルを介して、あるいはダイレクトに結合していてもよい。更に、疎水基の構造中に、エーテル結合、エポキシ基またはアミノ基等の官能基を含んでもよい。カップリング剤処理することで酸化スズ表面への水分の吸着を抑え、より環境変動の小さい表層材料を得ることができる。本発明に用いるカップリング剤としては、反応性が高いシランカップリング剤が好ましい。
【0099】
シランカップリング剤としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフェニルジクロルシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン及びヘキシルトリメトキシシラン等が挙げられるが、特に導電剤の体積抵抗率の環境変動を小さく抑えることができるので、イソブチルシランが特に好ましい。
【0100】
表層の成形方法としては、上記の表層を構成する材料を、サンドミル、ペイントシェーカ、ダイノミル及びパールミル等のビーズを利用した従来公知の分散装置を用いて公知の方法により分散させ、得られた表層形成用の樹脂塗料を、ディッピング法やスプレーコート法により、帯電ローラの表面、本発明においては導電性弾性体基層の上に塗工する。表層塗料の利用効率を考慮すると、ディッピング法が好ましい。
【0101】
表層の膜厚は、表層の抵抗を均一にし、帯電を均一にすることの容易性を担保する為に、好ましくは5〜100μmであり、より好ましくは10〜50μmである。膜厚は、ローラ断面を、例えば剃刀の刃のような鋭利な刃物で切り出して、光学顕微鏡や電子顕微鏡で観察することで測定できる。
【0102】
本発明の帯電ローラの表層の膜厚としては、電子顕微鏡で撮った断面写真中の表層の膜厚の平均を帯電ローラの表層の膜厚とする。
【0103】
表層膜厚を調整するために表層塗料の樹脂の固形分と塗工引き上げ速度を制御する。表層塗料中の樹脂の固形分を大きくすると表層の膜厚が大きくなり、固形分を小さくすると膜厚も小さくなる。表層塗料においては、揮発する溶媒に対する樹脂の固形分を12〜40質量%に調整する。また、塗工引き上げ速度を大きくすると膜厚が大きくなり、速度を小さくすると膜厚も小さくなるので、本発明においては塗工引き上げ速度を20〜5000mm/min.に調整する。
【0104】
本発明の帯電ローラの表面粗さとしては、JISB0601−1994による十点平均粗さRzで2μm以上20μm以下、ピーク間距離Smが0.5mm以下、である。これにより、仮に帯電ローラの当接力の位置バラツキが良好であっても、帯電ローラと感光体との間に大きな隙間ができず、帯電不良を招来することがなく、また遅いプロセススピードでの帯電の安定化効果を損うこともない。
【0105】
平均粗さ(Rz)の測定方法としては、書類名JIS B0601−1994の表面粗さに基づき、小坂研究所製サーフコーダーSE3400にて、軸方向3点×周方向2点の計6点について各々測定し、その平均値をとる。本発明においては、接触針は先端半径2μmのダイヤモンドとし、測定スピード0.5mm/s、カットオフλc0.8mm、基準長さ0.8mm、評価長さ8.0mmとした。
【0106】
上記範囲の表面粗さを有する帯電ローラとするため、基層の表面粗さ、表層の膜厚、高分子微粒子の平均粒径と添加量を調整する。基層の十点平均粗さはRzで20μm以下、より好ましくは15μm以下とする。
【0107】
また、本発明の帯電ローラは、図9のように、電子写真装置に用いた場合の使用状態と同様の応力で、帯電ローラ6を感光体と同じ曲率の円柱形金属32に当接させて、使用状態と同様の回転速度で円柱形金属を回転させながら(本発明では芯金1の両端に押圧具33a、33bによりそれぞれ5Nの力を加えて、直径24mmの円柱形金属に当接させ、該円柱形金属の周速45mm/sで回転させた)、電源34より直流電圧−200Vを印加したときの帯電ローラの電気抵抗が、30℃/80%RHの高温高湿の環境中では1×10Ω以上であり、15℃/10%RHの低温低湿の環境中では5×10Ω以下であることが好ましい。より好ましくは、30℃/80%RHの高温高湿の環境中では1.4×10Ω以上であり、15℃/10%RHの低温低湿環境中では5×10Ω以下であることが好ましい。35は電流計である。
【0108】
低温低湿の環境中の抵抗が上記範囲より小さいと、帯電ムラによるハーフトーン画像上の細かい横白スジがほとんど発生しないので好ましい。また、高温高湿環境中の抵抗が上記範囲より大きいと、感光体にピンホールがあったとしても印加電流がリークせず、ハーフトーン画像上に帯電の濃度ムラが現れることがないので好ましい。
【0109】
電気抵抗を上記範囲とするには、帯電ローラの導電性弾性体基層の体積抵抗率を1×10〜1×10Ω・cmに、また表層の体積抵抗率が1×10〜1×1013Ω・cmでかつ表層の膜厚が5〜40μmになるように調整すればよい。
【0110】
<2>電子写真装置
図4に本発明の帯電ローラの一つの実施の形態である帯電ローラ6を用いた電子写真装置を示す。像担持体である感光体ドラム5は矢印の方向に回転しながら、帯電ローラ6によって一次帯電され、次に露光手段により露光光11が照射され静電潜像が形成される。現像手段である現像ローラ4上の薄層になったトナーは、トナー帯電ローラ29で帯電され、次いで感光体ドラム5の表面と接触することによって、静電潜像が現像され、可視化したトナー像が形成される。
【0111】
現像されたトナー像は、転写部材である転写ローラ8と感光体ドラム5の間の現像部において、感光体ドラム5から被転写部材である印刷メディア7に転写され、その後定着部9で熱と圧力により定着され、永久画像となる。帯電前露光装置によって感光体ドラムに残った潜像に露光し、感光体ドラムの電位がアース電位に戻る。転写されなかった転写残トナーは、クリーニングブレード10で回収される。28はトナー搬送ローラ、30は弾性規制ブレード、31はトナー容器である。
【0112】
現像ローラ4、トナー帯電ローラ29、帯電ローラ6、転写ローラ8のそれぞれには電子写真装置の電源18、19、20、22から、それぞれ電圧が印加されている。
【0113】
ここで、本発明の帯電部材である帯電ローラ6には、電源20から直流電圧が印加される。印加電圧に直流電圧を用いることで、電源のコストを低く抑えることができるという利点がある。また、交流電圧を印加したときに発生する帯電音が発生しないという利点がある。
【0114】
印加する直流電圧の絶対値は、空気の放電開始電圧と被帯電体表面(感光体表面)の一次帯電電位との和とすることが好ましい。通常空気の放電開始電圧は600〜700V程度、感光体表面の一次帯電電位は300〜800V程度なので、具体的な一次帯電電圧としては900〜1500Vとすることが好ましい。
【0115】
また、フルカラー電子写真装置とする場合は、図5のように感光体ドラム5a〜d、転写ローラ8a〜d、帯電ローラ6a〜d、トナー帯電ローラ29a〜d、弾性規制ブレード30a〜d、露光光11a〜d、トナー容器31等をそれぞれ4色分用意して、直列に配置することもできる。
【0116】
あるいは、感光体を4色の現像装置で共有し、図6のように現像装置を1色の現像毎に回転させてもよい。
【0117】
更に、図7のように各色のプロセス部分を縦に並べて電子写真装置とすることもできる。
【0118】
<3>帯電方法
本発明は、帯電ローラに直流電圧を印加することにより、被帯電体を帯電させる帯電方法を提供する。
【0119】
<4>プロセスカートリッジ
本発明は、像担持体と、前記像担持体上に形成された静電潜像にトナーを転移させて可視化しトナー像を形成させる現像手段前記被転写部材にトナー像が転写された後に前記像担持体上に残留したトナーを除去するクリーニング手段と、から選ばれる少なくとも1つが、本発明の帯電ローラと一体に支持され、電子写真装置から着脱自在に構成されているプロセスカートリッジである。
【0120】
本発明のプロセスカートリッジは、例えば、図8に示すように、感光体ドラム5や帯電ローラ6、現像ローラ4及びクリーニングブレード10等が一体に支持された、電子写真装置の本体と脱着自在な構成である。(a)は1つの枠、(b)2つの枠からなっている。
【0121】
電子写真プロセスカートリッジが使用される前には、トナーシール27で現像ローラ4とトナーの接触を避けておくことが好ましい。
【実施例】
【0122】
以下に本発明を実施例をもって説明するが、本発明は実施例よって制限されるものではない。
【0123】
(実施例1)
<帯電ローラの作製>
(1)芯金の製作
快削鋼棒SUM22を、全長252mm、直径6.0mm、振れ3μm、端部のC面取り0.7mmの円柱状に切削加工した。市販の脱脂及び電解洗浄剤〔脱脂−39及びNC−20:ディップソール(株)製〕で脱脂、電解洗浄後3.5%塩酸で活性化した。次いで、水洗後、硫酸ニッケル、ジメチルアミンボラン、5ホウ酸アンモニウム、トリエタノールアミン、を含むめっき液に浸漬し、浴温63℃で無電解ニッケルめっきを行なった。めっき後、芯金を水で洗浄し、水分を蒸発させるため120℃で乾燥した。その結果、平滑で光沢のあるめっき被膜が得られた。
【0124】
断面を切断し、切断面を研磨した後、ニッケルめっき層の膜厚を測定したところ、5μmであった。蛍光X線分析によってめっき中のホウ素の質量分率を測定すると1質量%であった。
【0125】
(2)導電性弾性体基層の調製
エピクロルヒドリンゴム(商品名:エピクロマーCG102、ダイソー(株)製)100質量部、充填剤としての炭酸カルシウム30質量部、滑剤としてのステアリン酸亜鉛1質量部、研磨性改善のための補強材としての着色グレードカーボン(商品名:シーストSO、東海カーボン(株)製)4質量部、酸化亜鉛5質量部、可塑剤として、セバシン酸とプロピレングリコールの共重合体(分子量8000)を5質量部、下記式で示される過塩素酸4級アンモニウム塩2質量部、
【0126】
【化4】

老化防止剤としての2−メルカプトベンズイミダゾール1質量部をオープンロールで20分間混練し、更に、加硫促進剤としてのDM(2−ベンゾチアゾリルジサルファイド)1質量部、加硫促進剤としてのTS(テトラメチルチウラムモノサルファイド)0.5質量部、加硫剤としての硫黄1.2質量部を加えて更に15分間オープンロールで混練した。
【0127】
これをゴム押し出し機を使用して、外径11mm、内径5.5mmの円筒形に押し出し、250mmの長さに裁断し、加硫缶を使用して、160℃の水蒸気中で40分間一次加硫し、導電性弾性体基層ゴム一次加硫チューブを得た。
【0128】
次に、前記芯金円柱面の軸方向中央部231mmに金属とゴムとの導電性熱硬化性接着剤(商品名:メタロックU−20、(株)東洋化学研究所製)を塗布し、80℃で30分間乾燥した後、120℃で1時間乾燥した。この芯金を、前記導電性弾性体基層ゴム一次加硫チューブに挿入し、その後、電気オーブンの中で160℃で2時間、二次加硫と接着剤の硬化を行い、未研磨層を得た。
【0129】
この未研磨層のゴム部分の両端部を突っ切り、ゴム部分の長さを231mmとした後、ゴム部分を回転砥石で研磨し、軸方向中央部直径8.40mm、中央部から端部方向90mmの部分の直径8.28mm、のクラウン形状で表面の十点平均粗さRz6μm、振れ25μmの導電性弾性体基層を有する帯電ローラを得た。
【0130】
導電性弾性体基層を有する帯電ローラをN/N(常温常湿:23℃/55%RH)環境に24時間以上放置した後、導電性弾性体基層を有する帯電ローラの抵抗を測定したところ、2.2×10Ωであった。また、ゴム部分のアスカーC硬度は75°であった。
【0131】
(3)表層の調製
導電性酸化スズ粉体(商品名:SN−100P、石原産業(株)製)50質量部に、イソブチルシランの1%イソプロピルアルコール溶液を500質量部と平均粒径0.8mmのガラスビーズ300質量部を加え、ペイントシェーカで70時間分散後、分散液を500メッシュの網で濾過し、次にこの溶液をナウターミキサーで攪拌しながら100℃の湯浴で暖めてアルコールを飛ばして乾燥させ、表面にシランカップリング剤を付与し表面処理導電性酸化スズ粉体を得た。
【0132】
ラクトン変性アクリルポリオール(商品名:プラクセルDC2016、ダイセル化学工業(株)製)300質量部を、1316質量部のMIBK(メチルイソブチルケトン)に溶解し、固形分13質量%の溶液とした。このアクリルポリオール溶液200質量部に対して前記表面処理導電性酸化スズ粉体を44質量部、シリコーンオイル(商品名:SH−28PA、東レ・ダウコーニングシリコーン(株)製)を0.04質量部、ヘキサメチレンジシラザンとジメチルシリコーンオイルで表面処理した微粒子酸化チタン(一次粒径0.015μm)3.0質量部、平均粒径8μmの架橋ポリメチルメタクリレート(商品名:MBX−8、積水化成品工業(株)製)16質量部を配合し、これに直径0.8mmのガラスビーズ200質量部を加えて、450mlのマヨネーズビンに入れてペイントシェーカを使い12時間分散した。
【0133】
この分散液370質量部にイソホロンジイソシアネートのブロックタイプのイソシアヌレート型3量体(商品名:ベスタナートB1370、デグサ・ヒュル社ス製)を19.2質量部とヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート型3量体(商品名:デュラネートTPA−B80E、旭化成工業(株)製)を12.3質量部を混合し、ボールミルで1時間攪拌し、最後に200メッシュの網で溶液を濾過して表層塗料を得た。塗料の粘度は23℃の環境下で7.3mPa・sであった。
【0134】
前記表層塗料をディッピンク法により前記導電性弾性体基層を有する帯電ローラの表面に塗工した。引き上げ速度400mm/minで塗工し、20分間風乾した後、ローラの塗工時の軸方向を反転してもう一度引き上げ速度400mm/minで塗工し、もう一度30分間風乾した後、160℃で100分間乾燥した。膜厚は18μm、表層の体積抵抗率は8×1012Ω・cmであった。こうして完成したローラを実施例1の帯電ローラとした。
【0135】
(帯電ローラの評価)
帯電ローラの評価は、まず、帯電ローラを、温湿度が50℃×95%RHの苛酷環境に1週間放置した。苛酷環境放置が終了した帯電ローラは23℃×55%RHの常温常湿環境で12時間以上放置した。その後苛酷環境に放置した後の1)振れ、2)電子写真装置に組み込んでの画像出力、3)芯金から導電性弾性体基層を剥がして、芯金の表面に異常が無いかどうかの確認、の3点を評価した。
【0136】
<振れ評価>
基層の説明部分で言及した振れの評価法に則り、常温常湿環境中で帯電ローラの振れを測定した。
【0137】
実施例1の帯電ローラの振れは25μmと小さかった。
【0138】
<画像評価>
本試験で使用した電子写真式レーザプリンタはA4縦出力用のマシンで、記録メディアの出力スピードは、100mm/secと、画像の解像度は600dpiである。
【0139】
感光体はアルミニウムシリンダーに膜厚14μmの有機感光層(OPC層)をコートした反転現像方式の感光ドラムであり、最外層は変性ポリアリレートをバインダー樹脂とする電荷輸送層である。
【0140】
トナーは、ワックスを中心に荷電制御剤と色素等を含むスチレンとブチルアクリレートのランダムコポリマーを重合させ、更に表面にポリエステル薄層を重合させシリカ微粒子等を外添した、ガラス転移温度63℃、質量平均粒径5.5μmの重合トナーである。
【0141】
一次帯電は、上記で得られた実施例1の帯電ローラを用い、直流電圧−1150Vを帯電ローラに印加した。
【0142】
画像の評価は、ハーフトーン(感光体の回転方向と垂直方向に幅1ドット、間隔2ドットの横線を描くような画像)画像を出力して行った。
【0143】
帯電ローラに異常が発生するとハーフトーン画像上に、帯電ローラピッチの濃度ムラが発生するので、ムラの有無を観察した。
【0144】
実施例1の帯電ローラを使用した出力画像は、均一なハーフトーン画像であり、帯電が良好であることを確認した。
【0145】
<芯金表面の観察>
めっきが不充分な芯金は、導電性弾性体基層と芯金めっき層の界面にさびが発生したり、あるいは、めっき層とその下の鋼材との界面にさびが発生したりする恐れがある。そこで、画像出力が終わった帯電ローラの導電性弾性体基層を芯金から剥がして、導電性弾性体基層に覆われていた芯金と導電性弾性体基層との界面の状態を観察した。
【0146】
実施例1の帯電ローラの芯金表面は、導電性弾性体基層と接触して苛酷環境に放置された後であったが、めっき直後と変わらず、良好なめっき表面をしていた。
【0147】
(実施例2)
実施例1のめっき液を次亜りん酸イオンを含む液に変更し、かつ、水洗・乾燥後、もう一度同じ次亜りん酸イオンを含むめっき液にてめっきし、乾燥した。
【0148】
めっき液は、硫酸ニッケル、次亜りん酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、チオ尿素、を含む溶液である。この溶液で2回めっきを繰り返すことにより、平滑で光沢のあるめっき被膜が得られた。
【0149】
断面を切断し、切断面を研磨した後、ニッケルめっき層の膜厚を測定したところ、10μmであった。蛍光X線分析によってめっき中のりんの質量分率を測定すると10質量%であった。
【0150】
実施例1と同様に帯電ローラを評価したところ、良好な特性であった。
【0151】
(実施例3)
実施例1のめっき芯金の乾燥工程を300℃にした以外は、実施例1と同様にして実施例3の帯電ローラを得た。
【0152】
実施例1と同様に帯電ローラを評価したところ、良好な特性であった。
【0153】
(実施例4)
実施例2のめっき芯金の2回目の乾燥工程を300℃にした以外は、実施例2と同様にして実施例4の帯電ローラを得た。
【0154】
実施例1と同様に帯電ローラを評価したところ、良好な特性であった。
【0155】
(比較例)
実施例2の2回目のめっき工程を省略した以外は実施例2と同様の方法で比較例の帯電ローラを得た。
【0156】
実施例1と同様に評価した。
【0157】
まず、振れを測定したところ、帯電ローラの振れが80μmと非常に大きかった。
【0158】
次に電子写真装置に組み込んで、画像を出力したところ、所々に直径1cm程度の黒いシミが発生して、実用に耐えるハーフトーン画像は得られなかった。
【0159】
最後に帯電ローラの導電性弾性体基層を剥がして、芯金と基層の界面を観察したところ、所々に直径5mm程度の略円形の赤錆が発生していた。
【0160】
評価結果を表1に示す。
【0161】
【表1】

【0162】
本発明の帯電ローラが、非常に苛酷な高温高湿環境に曝された後に、DC帯電法によって、例えば600dpiの中間調画像のような高精細画像を出力した場合においても、均一な帯電が行える理由に関しては、以下のことが考えられる。
【0163】
すなわち、以前から使用されている、一般的なりんを含む無電解ニッケルめっきで被覆した鋼材の芯金には小さなピンホールがある。一方で、より高精細な画像をDC帯電で得ようとすると、帯電ローラの導電性基層をイオン系の導電性弾性体で形成する必要がある。その場合でも、常温常湿の環境中では従来のめっきでも問題にならないが、イオン系の導電性弾性体は非常に苛酷な高温高湿環境に曝された場合にはピンホールを通じて鋼材の腐食をする力が強く、基層と芯金の界面に錆びの塊を生じさせてしまう。また、帯電方式としてACを重畳すれば、前記錆びに起因するローラの振れがある程度大きくても画像に出にくい場合があると考えられるが、DC帯電の場合には帯電ローラの振れの欠陥がAC帯電に比較して画像に出やすい、という問題がある。
【0164】
そこで、より高精細な画像をDC帯電で得ようとする場合には、本発明の帯電ローラのように、芯金のめっきのピンホールをなくし、非常に苛酷な高温高湿環境に曝されてもピンホールを通したイオンの移動による錆びの発生が無い芯金を使用することが効果的である。
【0165】
その具体的な方法としては、一般的なりんを含む無電解ニッケルめっきを、ホウ素を含む無電解ニッケルめっきに変える方法、一般的なりんを含む無電解ニッケルめっきを2回す方法、あるいは無電解ニッケルめっきをした芯金を300℃以上の高温で処理し、めっきの結晶構造を変化させてピンホールを潰す方法があると考えられる。このようにしてピンホールを潰した芯金を使用することにより、経済的で、しかも非常に苛酷な高温高湿環境に曝された後でも、DC帯電法によって、例えば600dpiの中間調画像のような高精細画像を出力した場合においても、均一な帯電が行える帯電ローラを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0166】
【図1】本発明の帯電ローラの一つの実施の形態の断面を表す概略図を示し、(a)は帯電ローラの横断図、(b)は帯電ローラの断面図である。
【図2】本発明にかかる帯電ローラの振れの測定方法の概略図である。
【図3】本発明にかかる帯電ローラの研磨の一例を示す図である。
【図4】本発明の帯電ローラの一つの実施の形態である帯電ローラを用いた電子写真装置の概略図である。
【図5】本発明の帯電ローラの一つの実施の形態である帯電ローラを用いたフルカラー電子写真装置の概略図である。
【図6】本発明の帯電ローラの一つの実施の形態である帯電ローラを用いた別のフルカラー電子写真装置の概略図である。
【図7】本発明の帯電ローラの一つの実施の形態である帯電ローラを用いた別のフルカラー電子写真装置の概略図である。
【図8】本発明の帯電ローラと一体に支持されているプロセスカートリッジの概略図である。
【図9】実施例に用いた帯電ローラの抵抗の測定方法の概略図である。
【符号の説明】
【0167】
1 芯金
2 導電性弾性体基層
3 表層
4 現像ローラ
5、5a〜d 感光体ドラム
6、6a〜d 帯電ローラ
7 印刷メディア
8、8a〜d 転写ローラ
9 定着部
10 クリーニングブレード
11、11a〜d 露光光
18、19、20、22 電源
27 トナーシール
28 トナー搬送ローラ
29、29a〜d トナー帯電ローラ
30、30a〜d 弾性規制ブレード
31 トナー容器
32 円柱形金属
33a、33b 押圧具
34 電源
35 電流計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、鋼材からなる芯金と、該芯金上の導電性弾性体を有する帯電ローラにおいて、該鋼材の表面が、ピンホールの無いニッケルめっきで被覆されていることを特徴とする帯電ローラ。
【請求項2】
前記導電性弾性体がイオン導電性であることを特徴とする請求項1に記載の帯電ローラ。
【請求項3】
前記導電性弾性体がヒドリンゴムを含有することを特徴とする請求項1または2に記載の帯電ローラ。
【請求項4】
前記導電性弾性体が4級アンモニウム塩を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の帯電ローラ。
【請求項5】
前記導電性弾性体が過塩素酸塩を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の帯電ローラ。
【請求項6】
前記ニッケルめっきがホウ素を含有する無電解ニッケルめっきであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の帯電ローラ。
【請求項7】
前記ニッケルめっきが、りんを含有する無電解ニッケルめっきを1回施し、次いで水で洗浄後水分を蒸発させ、次いでもう一度りんを含有する無電解ニッケルめっきを施して形成されたニッケルめっきであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の帯電ローラ。
【請求項8】
前記ニッケルめっきが、りんあるいはホウ素を含有する無電解ニッケルめっきを施した後に、300℃以上の温度で熱処理して形成されたニッケルめっきであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の帯電ローラ。
【請求項9】
導電性弾性体の外周に1層あるいは複数層の被覆層があることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の帯電ローラ。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の帯電ローラに直流電圧を印加して被帯電体を帯電することを特徴とする帯電方法。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれかに記載の帯電ローラを使用することを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれかに記載の帯電ローラを使用し、該帯電ローラに直流電圧を印加して被帯電体を帯電することを特徴とする電子写真装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2006−163147(P2006−163147A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−356826(P2004−356826)
【出願日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】