説明

帯電ローラ、電子写真用プロセスカートリッジ及び電子写真装置

【課題】本発明の目的は、低価格で、帯電性能及び耐付着性に優れ、かつ、帯電横スジ、起動スジ及びクリーニング不良などの観点から優れている帯電ローラを提供することにある。
【解決手段】本発明は、導電性軸芯体の周りに導電性弾性体層2を形成し、少なくとも該導電性弾性体層の外側に2層以上の導電性被覆層3を有する帯電ローラにおいて、導電性被覆層の最外層3(o)の膜厚をa、導電性被覆層における内層3(i)の膜厚合計をbとしたとき、その比が以下の値の範囲であると共に、最外層3(o)に平均粒子径がa/4以上3a/4以下である微粒子11を含むことを特徴とする帯電ローラ。
0.016≦a/b≦0.300
但し、3μm≦a≦50μmかつb≧150μm

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にプリンタ・複写機等の電子写真装置において使用する帯電ローラに関する。また、該帯電ローラを具備する電子写真用プロセスカートリッジ及び電子写真装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ・複写機等の電子写真装置においては、表面に電荷が保持される感光ドラム等の画像形成体が設けられ、保持された電荷のうち一部が除電されることで該画像形成体表面に静電潜像が形成される。現像は、該静電潜像の上に帯電したトナーが供給されることで行われる。こうして得られた画像形成体上のトナー像が紙に転写され、定着されることで電子写真装置における画像の出力が完了する。
【0003】
画像形成体への電荷の供給は近年では帯電ローラが担うことが多い。帯電ローラは画像形成体に接触して回転しながら該画像形成体を帯電させる部品である。該帯電ローラは、導電性軸芯体の周りに導電性ゴム組成物等からなる導電性弾性体層と、その外周に電気抵抗を調整する役目等を果たす被覆層が形成せしめられて、構成されている。
【0004】
帯電ローラは種々の製造方式により製造される。主だったものにはチューブ被覆式と塗工式が挙げられるが、特に充分な量産性と低価格化の容易さという観点から考えると、チューブ被覆式の帯電ローラが有利である。この方式の帯電ローラの利点は、導電性軸芯体の周りに形成した導電性弾性体層の外側に、上記被覆層として導電性のチューブを被覆するだけで容易に製造されるということである。さらに、チューブ被覆式は、塗工式の場合のように導電性弾性体層の外側に被覆層として塗料をコーティングした後の焼成工程が不要であり、塗料ほど安定性に配慮する必要もない。その上、被覆用のチューブは一度条件が決まると同一特性のチューブを安定的に多量に生産可能であることから、コストメリットも非常に高い。
【0005】
しかしながら、チューブ被覆式による帯電ローラでは、チューブを膨張させる関係上、ある程度の弾性が必要不可欠である。そのため、特別な後処理を加えない限り、塗工式の帯電ローラのようにローラ表面部の硬度を高くすることは出来ないという問題があった。したがって、トナーや外添剤の耐付着性という面ではチューブ被覆式による帯電ローラは塗工式のものより不利になる。チューブは、焼成後の塗膜と異なり弾性に富むので、トナーや外添剤等が付着し易く、付着した部分が出力画像上に現れ易くなってしまう。
【0006】
耐付着性が不十分であると、特に以下のような問題が生じる。例えば、長時間の停止中に帯電ローラと画像形成体の間に挟まれていたトナー・外添剤等が、ローラ表面にしばらく線状に固着したままとなり、画像上では横方向にローラピッチの黒いスジが表れてしまう。これを起動スジというが、この起動スジは画像印刷を繰り返すうちに削れていって画像に現れなくなる。また、他の問題として、トナークリーニング手段で除去しきれずに画像形成体上に残ったトナー・外添剤等が、帯電ローラ表面の特定部分にリング状に付着して引き起こされる、クリーニング不良と呼ばれる問題もある。このクリーニング不良では画像上の端部を中心として細く薄い、多数の縦スジが現れる。こちらの不良は画像印刷を繰り返しても症状が改善されない。どちらも、耐付着性が不充分であるときに現れる現象である。
【0007】
この対策として、ローラ表面を適度に粗面化するという手法がしばしば取られる。粗面化を行うと弾性に富むチューブを使用したローラでは、ローラ表面へのトナーや外添剤等の線状の付着が抑えられ、起動スジの解消に役立つ。付着が抑えられる理由は、ローラ表面の粗面化により、ローラが画像形成体と接触する部分が少なくなるので、両者の間に挟まれることになるトナーや外添剤がすり抜ける形となるためである。したがって、ローラ表面の粗面化によりトナーや外添剤の大部分はストレスを受けなくなって付着そのものは少なくなる。
【0008】
しかしながら、粗面化が著しいと、また別の問題が生じる。帯電ローラの表面を粗面化しすぎると、画像形成体と帯電ローラとの接触面積が極端に減少することからその接触点で局所的に加わる圧力が増加し、強固な付着跡と言えるクリーニング不良が悪化してしまう。したがって、この対策だけでは耐付着性に起因する不良の全てを解消することができない。
【0009】
ところで、表面の粗面化にはもう一つの大きな働きがある。パッシェンの法則に基づいて放電に寄与すると考えられる領域の電界密度を増やすことで、帯電性能を向上させることができるのである。これはチューブ被覆式帯電ローラにおいて不足しがちな、帯電性能を補うのに非常に役立つ。
【0010】
従来チューブ被覆式帯電ローラにおいては、作製できるチューブの最小の膜厚に限度があることから、チューブである被覆層について体積固有抵抗を大きく取ることはできなかった。仮に体積固有抵抗を大きく取ると、帯電ローラの表層部全体の抵抗が高くなり過ぎ、帯電ローラに流れる電流そのものが小さくなってしまう。さらに、チューブ単体だけで考えてみても、その厚みのために非常に高抵抗となるため、供給された電荷が被覆層全体にムラなく均一に拡がり難くなる。その結果、チューブの成形時における僅かな混合不良が抵抗ムラの原因となり、そのまま画像上の濃度ムラ等の帯電不良となって表れ易くなる。
【0011】
上述の場合では、帯電ローラに流れる電流を大きくするために、帯電ローラの全体抵抗を低めに抑えることも考えられる。しかしこの場合でも、被覆層となるチューブの体積固有抵抗が充分大きく取れないと、結局帯電ローラの表層部へかかる電圧が不足するので、帯電ローラの表面への給電が充分に行われず、帯電不良となり易い。帯電性能が不足すると、帯電横スジと言われる左右にランダムに伸びる細い黒スジが出力画像全面に多量に現れることもある。画面上で黒くなった部分は、そこで帯電が充分に行われなかったことを示している。ローラ表面の粗面化は、そのようなローラの帯電性能の抜本的改善にも寄与する。
【0012】
上述のように、量産性と低価格化の容易さの観点からはチューブ被覆式による帯電ローラの製造方法の方が有利である一方、帯電ローラの表層部の物性設計に重点を置くならば、塗工式による帯電ローラの製造方法の方が適している。塗工式では二次架橋をさせてローラ表面を硬くすることができ、耐付着性に関して有利だからである。また、塗料により被覆層を形成するため、被覆層を非常に薄くすることができる点で塗工式は優れている。このため、この被覆層を高抵抗層にすることで安定した帯電特性を得ることができ、かつ、ローラ抵抗の環境安定性を高めるなどの品質上のメリットを持たせることが出来る(特許文献1)。
【0013】
ところがその一方で、塗工式では、塗料は使用するまでの安定性を確保するのが難しく、同じ処方の塗料で帯電ローラの表層部を形成しても、出来上がる帯電ローラの電気特性がいつも同じになるとは限らない場合がある。全く同じ塗料を使用し続けただけでも抵抗は徐々に変化するので、塗料の品質管理には細心の注意が必要である。さらに、二次架橋・冷却に要する時間まで考慮すると、塗工式の帯電ローラは性能的には有利であってもコスト的な不利は避けられない。
【0014】
加えて、耐付着性に関する優位性についても、環境に配慮した最近の低融点トナーに対しては有利とは言えなくなっており、さらなる設計上の工夫が必要である。
【0015】
【特許文献1】特開平5−224502号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
以上の状況を鑑み、本発明の目的は、被覆層の構成を改良して、帯電性能・耐付着性に優れ、従って帯電横スジ、起動スジ、クリーニング不良に優れた電子写真用帯電ローラを出来るだけ安価に提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
鋭意検討した結果、これらの問題を解決するためには、最外層の膜厚を充分薄くすると共に粗面化し、その内側には別の被覆層を設けて充分な厚みを持たせるのが望ましいことが判った。
【0018】
そこで、本発明に係る帯電ローラは、
導電性軸芯体の周りに導電性弾性体層を形成し、少なくとも該導電性弾性体層の外側に2層以上の導電性被覆層を有する帯電ローラにおいて、
前記導電性被覆層の最外層の膜厚をa、前記導電性被覆層における内層の合計膜厚をbとしたとき、その比が以下の値の範囲であると共に、前記最外層に平均粒子径がa/4以上3a/4以下である微粒子が含まれることを特徴とする。
0.016≦a/b≦0.300
但し、3μm≦a≦50μmかつb≧150μm
【0019】
また、前記帯電ローラは、前記最外層の表面の粗さRzjisが6μm以上24μm以下であることを特徴とする。
また、前記aと前記bの合計膜厚が以下の値の範囲であることを特徴とする。
160≦a+b≦1000
【0020】
また、前記微粒子は球状の有機微粒子であることを特徴とする。
【0021】
さらには、前記球状の有機微粒子がポリウレタン、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、シリコーンゴムからなることを特徴とする。
【0022】
また、これらの特徴を有する帯電ローラが組み込まれた、電子写真用プロセスカートリッジである。
【0023】
また、該電子写真用プロセスカートリッジを本体に装着して使用することを特徴とする、電子写真装置である。
【0024】
また、上記特徴を有する電子写真用帯電ローラが直接本体に組み込まれた、電子写真装置である。
【発明の効果】
【0025】
本発明の構成により、最外層の高抵抗化・高硬度化及びローラ表面の粗面化を達成させて充分な帯電性と耐付着性の確保ができる。したがって、帯電横スジ、起動スジ、クリーニング不良を生じない帯電ローラを、比較的安価に提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明に係る帯電ローラは、
導電性軸芯体の周りに導電性弾性体層を形成し、少なくとも該導電性弾性体層の外側に2層以上の導電性被覆層を有する帯電ローラにおいて、
前記導電性被覆層の最外層の膜厚をa、前記導電性被覆層における内層の合計膜厚をbとしたとき、その比が以下の値の範囲であると共に、前記最外層に平均粒子径がa/4以上3a/4以下である微粒子が含まれることを特徴とする。
0.016≦a/b≦0.300
但し、3μm≦a≦50μmかつb≧150μm
【0027】
以下に、図面を参照して、本発明に係る帯電ローラについて説明するとともに、本発明を実施するための好ましい帯電ローラの作製方法について述べる。
【0028】
本発明の帯電ローラは図1に示したような断面をしており、導電性軸芯体1の外周に導電性弾性体層2を設けた構造をしている。さらに、機能上の必要性から、該導電性弾性体層の外周上に2層以上の被覆層3を設けている。この場合、被覆層には、導電性弾性体層からのドラム汚染物質の漏洩防止、セット跡の防止、帯電特性の確保又は紙粉・トナー構成成分の付着防止等の機能が期待されている。
【0029】
(導電性軸芯体)
上記帯電ローラの導電性軸芯体には、例えば炭素鋼合金表面に厚さ3μmの工業ニッケルメッキを施した円柱を用いることができる。導電性軸芯体を構成する材料としては、他にも、例えば鉄、アルミニウム、チタン、銅若しくはニッケル等の金属、又はこれらの金属を含むステンレス、ジュラルミン、真鍮若しくは青銅等の合金等を使用することもできる。また、該導電性軸芯体は単なる円柱ではなく、中心部分を空洞とした円筒形状とすることもできる。
【0030】
(導電性弾性体層の作製)
本発明における帯電ローラの製造にあたっては、まず、上記導電性軸芯体1の外周に導電性弾性体層2を形成する。
【0031】
該導電性弾性体層には、画像形成体との接触面を均一に保つために、適度な低硬度及び低圧縮永久歪を得ることができる材質を使用するのが望ましく、この目的を達成できるものであれば種類を問わない。一般に、導電性弾性体層は、ゴム組成物、導電性フィラー、可塑剤、軟化剤、老化防止剤、耐熱剤、充填剤等を含んでいる。
【0032】
導電性弾性体層に使用されるゴム組成物としては、従来から用いられるものと同様なものを使用することができる。例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、(メタ)アクリロニトリルブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム(EPM)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリレートゴム又はエピクロルヒドリンゴム等が挙げられる。
【0033】
導電性弾性体層に用いられるゴムの分子量には特に制限が無く、低分子量(オリゴマー)から高分子量まで含有される。このようなゴムは、市販品が入手可能である。
【0034】
導電性フィラーとしては、例えば、カーボンブラック、グラファイト、アルミニウム、パラジウム、鉄、銅又は銀等の金属系の粉体等を用いることができる。また、酸化チタン、酸化スズ若しくは酸化亜鉛等の金属酸化物、又は硫化銅若しくは硫化亜鉛等の金属硫化物粉等を用いても良い。さらには、適当な粒子の表面を酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化モリブデン、亜鉛、アルミニウム、金、銀、銅、クロム、コバルト、鉄、鉛、白金又はロジウム等で電解処理、スプレー塗工又は混合振とう等により付着させた粉体も使用可能である。また、アセチレンブラック、「ケッチェンブラック」(登録商標)、PAN系カーボンブラック又はピッチ系カーボンブラック等のカーボン粉も使用可能な候補として挙げられる。さらに、LiClO4、NaClO4等の過塩素酸塩、4級アンモニウム塩等のイオン導電物質等も挙げられ、これらを単独または2種類以上組み合わせて用いることができる。導電性フィラーとして特に好ましいのは、カーボンブラックである。カーボンブラックの少量の添加で導電性弾性体層の体積固有抵抗を低下させることができ、ゴム組成物の硬度を大きくすることなく導電性を付与することができる。カーボンブラックの銘柄としては、例えば、「ケッチェンブラックEC」(登録商標)、「ケッチェンブラックEC600JD」(登録商標)(ともに「ケッチェンブラックインターナショナル」製)等を挙げることができる。
【0035】
導電性フィラーの配合量は適度に調整する必要があるが、導電性弾性体層の体積固有抵抗を104〜107Ω・cm程度の中抵抗領域に収めるように決めるのが良い。体積固有抵抗が104Ω・cmよりも小さいと、導電性弾性体層より外側の層が抵抗的に問題なく高抵抗であったとしても、画像形成体表面にピンホール不良と呼ばれる小さな表面欠陥が生じたときに印加電圧のほとんどが帯電ローラの外層に集中して掛かる場合がある。このため、大電流が帯電ローラ内を流れてピンホールに集中し、穴をより大きくしてしまうことがあるからである。その時は同時に穴以外の場所に電流が流れなくなり、帯電電位が不足して高精細なハーフトーン画像上に黒い帯となって現れてしまうといった不具合が発生するおそれがある。また、極端な場合は帯電ローラ自体の通電破壊に至る場合がある。逆に、導電性弾性体層の体積固有抵抗が大きすぎると、導電性弾性体層中での電圧降下が大きすぎ、画像形成体を均一に帯電するために必要な放電電流が得られない場合がある。さらには、電気抵抗調整が難しくなり、均一分散も困難になる等、導電性の制御が難しくなる場合がある。
【0036】
導電性弾性体層に添加される可塑剤としては、例えば、ポリジメチルシロキサンオイル、ジフェニルシランジオール、トリメチルシラノール、フタル酸誘導体又はアジピン酸誘導体等を用いることができる。
【0037】
導電性弾性体層に添加される軟化剤としては、例えば、潤滑油、プロセスオイル、コールタール又はヒマシ油等が使用可能である。
【0038】
導電性弾性体層に添加される老化防止剤としては、例えば、フェニレンジアミン類、フォスフェート類、キノリン類、クレゾール類、フェノール類又はジチオカルバメート金属塩類等を用いることができる。
【0039】
導電性弾性体層に添加される耐熱剤としては、例えば、酸化鉄、酸化セリウム、水酸化カリウム、ナフテン酸鉄又はナフテン酸カリウム等が使用できる。
【0040】
また、導電性弾性体層に使用されるゴム組成物には、低硬度及び低圧縮永久歪の特徴を阻害しない範囲内であれば、従来公知の加硫剤、加硫促進剤、補強充填剤、加工助剤、発泡助剤、加硫助剤等の各種配合剤や添加物を必要に応じて、さらに添加することができる。これらの配合物は、必要に応じて弾性体層材料を製造する過程において添加してもよい。
【0041】
その他、導電性弾性体層に添加される補強充填剤としては、例えば、KSCN、LiClO4、NaClO4若しくは4級アンモニウム塩等のイオン伝導物質、ヒュームドシリカ、湿式シリカ、石英微粉末、ケイソウ土、カーボンブラック、酸化亜鉛、塩基性炭酸マグネシウム、活性炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、二酸化チタン、タルク、雲母粉末、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ガラス繊維、有機補強剤又は有機充填剤等を挙げることができる。これらの補強充填剤の表面は有機珪素化合物、例えば、ポリジオルガノシロキサン等で処理して疎水化してもよい。
【0042】
導電性弾性体層の形成方法は押し出し成形、射出成形又は圧縮成形等の公知の方法を挙げることができる。導電性弾性体層は導電性軸芯体の上にクロスヘッド押し出し機を用いて直接成形しても良いし、チューブ状に成形した導電性弾性体を導電性軸芯体に被覆しても良い。また、必要であれば、成形後に導電性弾性体の表面を研磨して形状を整えても良い。
【0043】
(被覆層の形成)
以上のようにして形成された導電性弾性体層の外周上には、少なくとも2層以上の被覆層が設けられる。本発明における被覆層は塗工式あるいはチューブ被覆式のいずれによって形成しても良いが、ここでは単層又は複数層のシームレスチューブを成形し、これを順次該導電性弾性体層に外嵌することで形成する方法を以下に示す。
【0044】
被覆層の厚みとしては、全体で160〜1000μmが良く、特に200〜800μmが好ましい。厚みが少なすぎると基層中の低分子量成分の染み出しにより画像形成体を汚染するおそれがあるし、厚すぎると帯電ローラの表層部が硬くなり、融着やセット跡の回復性悪化の原因となり、好ましくない。
【0045】
求める表面物性が得られるならば、上記被覆層は2層でも良いし、3層以上であっても良い。ドラムアタック防止、長期の画像形成体への密着によるセット変形の防止といった複数機能を特に好適に達成させる場合に、3層以上の方が設計し易いこともありうる。
【0046】
また、被覆層となるチューブに使用される樹脂、エラストマー又は共重合体等は、押出し成形可能な熱可塑性樹脂であればいずれのものでも良い。例えば、エチレン酢酸ビニル、エチレンエチルアクリレート、エチレンアクリル酸メチル、ポリエステル、塩素化ポリエチレン、ポリウレタン、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、スチレンエチレンブチル、エチレンブチル、1,2−ポリブタジエン、クロロスルホン化ポリエチレン、エチレンプロピレンゴム(EPM)、ニトリルブタジエンゴム、多硫化ゴム、クロロプレンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ポリノルボルネンゴム、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)又はスチレン−ブタジエン−スチレンの水添加物(SEBS)等を使用することができ、特に制限されるものではない。
【0047】
また、上記の各樹脂や共重合体よりなるエラストマー又は変性体などのエラストマーと、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等の飽和ポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリウレタン、ポリフェニレンオキサイド、ポリテトラフルオロエチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS)、アクリロニトリル−エチレン/プロピレンゴム−スチレン樹脂(AES)、アクリロニトリル−アクリルゴム−スチレン樹脂(AAS)等のスチレン系樹脂又はアクリル系樹脂、ポリ酢酸ビニル等の塩化ビニル樹脂、ポリフッ化ビニリデン等の塩化ビニリデン樹脂、又はそれら樹脂の共重合体からなる材料の組合せが好ましい。
【0048】
さらに、上記ゴム、熱可塑性エラストマー又は熱可塑性樹脂から選ばれた少なくとも2種以上の重合体からなるポリマーアロイ又はポリマーブレンドも使用できる。
【0049】
チューブは上記各種重合体と、下記の導電性フィラー及び球状粒子、さらに必要ならばその他の添加剤からなる導電性重合体組成物を使用して、押出成形法、射出成形法又はブロー成形法などにより成膜することにより得ることができる。上記各種成形法のうちでは押出成形法が特に好適である。
【0050】
特に、形成するチューブの各層の膜厚均一性を得、さらにまた導電材などの分散性がより均一であるものを得るためには、縦型のチューブ押出し機を使用することが好ましい。
【0051】
チューブが2層からなる場合、工程の簡略化と外嵌後の特性の安定性といった観点からは、2層のチューブを一度に成形し、外嵌も一度で済ませることにより帯電ローラを完成させた方が良い。この際のチューブ成形には特に図2のようなクロスヘッド押出し機を用いる押し出し法が好適である。チューブが3層以上からなる場合には、薄い最外層と隣接する内層はクロスヘッド押出し機を用いて一体成形し、他の厚い層は個々の単層チューブを作製して外嵌を複数回繰り返しても良い。この場合も、可能な限りは一体成形するようにすると特性的に安定する。
【0052】
図2において、成形に用いるダイス4には、空気導入用の中央通孔5の周囲に内外二重の環状の押し出し流路6、7が設けられている。成形に際しては中央通孔5から空気を吹き込みながら、押し出し流路6に第1押し出し機8から被覆チューブの内部層を構成する原料組成物を、また押し出し流路7に第2押し出し機9から被覆チューブの外部層を構成する原料組成物をそれぞれ加圧注入する。内部層3(i)と外部層3(o)を重ね合わせ一体化して押し出して得られたチューブ3は内部を空気で膨らませながら、その外周に設けた水冷リング10にて冷却され、チューブ引き取り装置(タイミングプーリー)21により送られる。次いで、所定長さに切断機23にて順次切断され、帯電ローラ用の被覆チューブとして、次工程にて、導電性弾性体層に被覆される。
【0053】
なお、図2において、22はチューブの内側となる側と接する出口部品の金型(ニップル)であり、24は外面となる側と接する出口部品の金型(ダイス)である。
【0054】
最外層の被覆層に添加する微粒子としては、所定の平均粒子径を有する樹脂からなる微粒子を用いることができる。微粒子としては、球状の有機微粒子(以下、球状粒子と略す)であることが好ましい。その材料としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル、シリコーンゴム、ポリウレタン、ポリスチレン、アミノ樹脂又はフェノール樹脂等のプラスチックピグメントが挙げられる。特にポリメタクリル酸メチル、ポリウレタン又はシリコーンゴムが好ましい。
【0055】
球状粒子の平均粒子径は該導電性チューブの最外層の膜厚をaとしてa/4以上3a/4以下であるように選ぶと良い。膜厚の測定法及び平均粒子径の測定法については後述するが、薄い最外層にこの程度の平均粒子径を有する球状粒子を添加することにより、帯電ローラの表面(最外層の被覆層)に適度な粗さを付与することができ、ドラム削れ粉やトナー及び外添剤等に与えるストレスを低減させ、ローラ表面に付着し難くすることができる。さらに、パッシェンの法則に従うコロナ放電領域の電界密度を積極的に増やして画像形成体を均一帯電させることができる。
【0056】
また、被覆層の膜厚に関しては以下の関係を満たすように成形する。
0.016≦a/b≦0.300 ・・・(第1式)
但し、3μm≦a≦50μmかつb≧150μm
(a:被覆層中の最外層の膜厚、b:最外層以外の被覆層全層の膜厚合計)
【0057】
すなわち、最外層の膜厚aが被覆層におけるそれ以外の内層の膜厚合計bと比較して充分小さくなければならない(第1式)。こうすることで最外層を薄膜化・高体積固有抵抗化し、静電的に有利な構成にすると共に、薄膜化した最外層を内側から充分に支えることができる。もし、該最外層の薄膜を内側から支える内層が存在しなければ、最外層の薄膜は圧縮による永久変形を起こし易くなってしまう。最外層の薄膜、つまりローラ表面が変形すると、画像形成体との間の空隙を小さくせしめることとなり、粗面化の効果が充分に現れ難くなる。
【0058】
チューブの場合、薄膜で最外層を押出し成形すると、成形時の強い圧力で最外層がより強固になることが判明している。このためローラ表面へのトナーや外添剤のめり込みが抑制され、塗工による薄膜と同様、トナー・外添剤付着やクリーニング不良の生じ難いローラが出来上がる。その意味で、a/bは第1式の範囲内にあってもなるべく小さい方が望ましい。
【0059】
しかしながら一方で、aが非常に小さければ、上述した粗面化も達成し難い。したがって、好ましくは0.020≦a/b≦0.250が良い。さらに好ましくは0.025≦a/b≦0.200である。また、最外層が必要とする被覆層中の内層からの支えは、最外層の厚みaに反比例すると考えられるので、上記の範囲内に収まればa/bが大きめの値であっても特に差し支えない。
【0060】
特にaが小さな値である時、最外層には適度な支えが必要とされる。とりわけaの下限、a=3μmといった厚さでは、被覆層におけるそれ以外の内層の合計膜厚bとして150μmが必要である。bが小さすぎると薄い最外層がその被覆層中の内層と一緒に圧縮による変形を起こし、回復しにくくなる。
【0061】
また、a≦50μmである必要がある。これより厚過ぎるとローラ抵抗を抑えるために最外層の体積固有抵抗を小さくせざるを得ず、充分な帯電性能が得られない。
【0062】
ただしa<3μmであると、平均粒子径が3a/4以下である球状粒子を最外層にいくら含有させても、ローラ表面は帯電性と耐付着性維持のために必要な粗さを確保できない。したがって、aは3μm≦a≦50μmである必要がある。
【0063】
一方で、該被覆層中の内層の合計膜厚bは、厚過ぎないようにしなければならない。厚過ぎるとローラの変形が少なすぎて画像形成体との当接部のニップ幅が小さくなり過ぎ、粗面化されたローラ表面の頂点と画像形成体との間でトナー・外添剤が受ける圧力が大きくなり過ぎてしまい、結果としてクリーニング不良に繋がる。よって被覆層中の内層はその下限と上限が、最外層の膜厚に応じて適度に管理されなければならない。
【0064】
各被覆層の膜厚は例えば以下のように測定することができる。まず、各被覆層の膜厚を管理するために測定する際、チューブ被覆式の場合はチューブの一部をカットしたものを用意する。また、塗工式の場合は同時に塗工したローラのうち1本の表面部分を切除したものを用意する。これらはいずれも図3のような形状になり、これを走査型電子顕微鏡で観察しながら測定する。こうすると極薄い膜厚であっても確実に厚みが測定できる。ここで図3は、最外層に接する被覆層中の内層が2層の場合である。
【0065】
測定箇所は図3に示すように少なくとも5箇所選び、300〜500倍の拡大率で測定した各測定点のデータを平均する。これを最外層と被覆層におけるそれ以外の内層のそれぞれについて行い、最外層の測定値をa(図3における12)、被覆層中の内層の測定値をb(図3における13)とする。
【0066】
前記球状粒子の平均粒子径については、基本的に市販品の球状粒子の中から目的にあった径のものを選ぶことができる。実際に測定して確認するにはコールターカウンターを用いる。これは図4に示すような装置であり、コールター原理と呼ばれる細孔電気抵抗法(ESZ)で粒子の粒度分布を求めるものである。この装置では、粒子を混合した電解液が電圧を印加された際に通るアパチャー(細孔)での、インピーダンス変化を測定する。
【0067】
球状粒子がアパチャーを通るとその瞬間はアパチャー内の電解液が減ることになり、これがインピーダンスの瞬間的な増加(粒子パルス)として検出される。変化したインピーダンスが粒子の体積に換算され、さらにその粒子が完全球体であるとの仮定の元に等価球径(ESD)が求められる。こうして混合した粒子の粒度分布が求められ(図5)、それから平均粒子径が算出される。
【0068】
アパチャーを同時に複数の粒子が通過することがあれば、この方式では複数個分の体積が1個としてカウントされるので、径は大きめになる。しかしながらその時の粒子パルスは、波形が1個の粒子が通過した時の形とは違うので、適切なアルゴリズムにより別々の径を持つ複数粒子としてデータを分離することが可能である(図6)。このように複数個分の体積を1つとしてカウントした時の平均粒子径を体積平均粒子径、複数粒子に分離するような補正を掛けた時の平均粒子径を個数平均粒子径と呼ぶ。アパチャーの径に対して粒径が充分大きいときには体積平均の方が複雑な処理を加えていないという点では良いが、粒径が小さければ体積平均は実態と大きくかけ離れることになるので個数平均を用いる方が良い。
【0069】
被覆層に添加する導電性フィラーとしては公知の素材が使用でき、例えば、カーボンブラック若しくはグラファイト等の炭素微粒子;ニッケル、銀、アルミニウム若しくは銅等の金属微粒子;酸化スズ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウム若しくはシリカ等を主成分とし、これに原子価の異なる不純物イオンをドーピングした導電性金属酸化物微粒子;炭素繊維等の導電性繊維;ステンレス繊維等の金属繊維;炭素ウイスカ若しくはチタン酸カリウムウイスカ等の表面を金属酸化物や炭素などにより導電化処理した導電性チタン酸カリウムウイスカ等の導電性ウイスカ;又はポリアニリン若しくはポリピロール等の導電性重合体微粒子等が挙げられる。
【0070】
最外層は薄膜であるので成形時には非常に高い圧がかかり、形状不良を引き起こし易い。このため少なくとも最外層には、さらにワックスを添加することが望ましい。
【0071】
添加するワックスとしては、例えば、蜜蝋、鯨蝋、セラック蝋、その他各種動物由来のワックス、カルナバ蝋、木蝋、米糠蝋(ライスワックス)、キャンデリラワックス、その他植物由来のワックス、石油由来のパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、鉱物由来のモンタンワックス、オゾケライト、セレシン及びオイルシェルより抽出されたワックス等が挙げられる。また、各種合成ワックス、酸化ワックス、配合ワックス、変性モンタンワックス、その他の加工・変性ワックス等も使用できる。特に整った分子量分布を有しているので各種合成ワックスを用いるのが良い。フィッシャー・トロプシュワックスやポリエチレンワックスに大別される炭化水素系合成ワックス、椰子油・牛脂脂肪酸等の脂肪酸エステル系ワックス、ステアリン酸アミド、ジヘプタデシルケトン、硬化ヒマシ油等が示される。さらに、プレス発汗法、溶剤法、真空蒸留の利用や分別結晶方式により分別を行ったものがより好ましい。
【0072】
上記各種成形法により形成されたチューブはそのままでも使用できるが、例えば、より優れた耐久性や耐環境性などを得ることを目的として、得られたチューブをさらに架橋させて導電性架橋重合体とすることもできる。架橋方法としては、重合体の種類に応じて硫黄、有機過酸化物又はアミン類等の架橋剤を予め添加しておき、高温下に架橋結合を生成させる化学的架橋法、又は電子線若しくはγ線等の放射線を照射することにより架橋させる放射線架橋法等が有効である。上記各種架橋法のうちでは、電子線架橋法が、架橋剤又はその分解生成物の移行による画像形成体の汚染のおそれがなく、好ましい。また、電子線架橋法は高温処理が不要であり、安全性の観点からも好ましい。
【0073】
使用するチューブは非熱収縮性と熱収縮性のいずれであっても良いが、実施例では非熱収縮性のものを採用している。
【0074】
非熱収縮チューブの場合、弾性体層との密着性を確保するためには、チューブ内径は弾性体層の外径以下であることが必要である。この場合、圧縮空気を吹き込むことによりチューブ径を拡大させた状態で導電性軸芯体を有する弾性体層に挿入し、空気圧を解除すれば外嵌処理が完了し、帯電ローラを完成することができる。図7に被覆した状態の帯電ローラについて、被覆層の断面を示す。
【0075】
被覆層のうち薄い層に関しては、チューブ被覆式ではなく塗工式で形成した方が作製し易い場合もある。以下に塗料の作製法について述べる。
【0076】
塗工による被覆層を形成する材料としては、特に制限されるものではないが、例えば各種のポリアミド、フッ素樹脂、水素添加スチレン−ブチレン樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、イミド樹脂又はオレフィン樹脂等が挙げられる。この中でもウレタン樹脂を用いることが好ましい。ポリオール並びにジイソシアナートの構造と配合比を種々変化させることで物性を広範囲に変化させることができるからである。
【0077】
帯電ローラの被覆層の形成材料としてウレタン樹脂用イソシアナートを用いる場合には、通常二官能性あるいは三官能性イソシアナート及び変性イソシアナートが用いられる。これらのうちで芳香族系では1,5−ナフタレンジイソシアナート・2,4−/2,6−トリレンジイソシアナート・4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート・p−フェニレンジイソシアナート・m−/p−キシリレンジイソシアナートが挙げられ、脂環族にはイソホロンジイソシアナート・4,4’−ジシクロへキシルメタンジイソシアナート、脂肪族には1,6−ヘキサメチレンジイソシアナート・リジンジイソシアナート・1,6,11−ウンデカントリイソシアナートが挙げられる。
【0078】
ウレタン樹脂用ポリオールとしては2〜3官能性で数平均分子量が数百〜数千のポリエーテル・ポリエステル・ポリブタジエンポリオール・アクリルポリオール・ケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体などが用いられる。これらのイソシアナート並びにポリオールの官能性・数平均分子量を調整することにより、帯電ローラ表面に弾性等の望みの物性を与えることができる。
【0079】
これらの被覆層を構成する材料は、サンドミル、ペイントシェーカー、ダイノミル、パールミル、ビスコミル等のビーズを利用した分散装置かボールミルを用いた分散装置のような従来公知の分散装置を使用して分散させることができる。得られた被覆層形成用の塗料は、スプレー塗工法、ディッピング法等により導電性弾性層の表面もしくは被覆前のチューブの表面あるいは被覆後のローラ表面に塗工することができる。被覆層の厚みとしては、5〜500μm程度に対応できるが、特に5〜30μmが均一に塗工し易く、好ましい。
【0080】
上記のような塗工による被覆層を最外層に使用するには、前述の各種球状粒子を分散途中でこれに配合する。
【0081】
図8に、以上のようにして形成された帯電ローラ1’を本体内部に組み込んだ電子写真装置の一例になる概略構成を示す。
【0082】
図8において、符号31は画像形成体であり、矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。画像形成体31は、回転過程において、帯電ローラ1’により、その周面に正または負の所定電位の均一帯電を受け、次いでスリット露光やレーザービーム走査露光などの像露光手段(不図示)からの画像露光光33を受ける。こうして画像形成体31の周面に静電潜像が順次形成されていく。
【0083】
形成された静電潜像は、次いで現像手段34によりトナー現像され、現像されたトナー像は、不図示の給紙部から、画像形成体31と転写手段36との間に画像形成体31の回転と同期取りされて給紙された転写材37に、転写手段36により順次転写されていく。
【0084】
像転写を受けた転写材37は、画像形成体面から分離されて像定着手段へ導入されて像定着を受けることにより複写物(コピー)として装置外へプリントアウトされる。
【0085】
像転写後の画像形成体31の表面は、クリーニング手段35によって転写残りトナーの除去を受けて清浄面化され、繰り返し像形成に使用される。
【0086】
上述の画像形成体31、帯電ローラ1’、現像手段34およびクリーニング手段35などの構成要素のうち、複数のものをプロセスカートリッジとして一体に結合して構成し、このプロセスカートリッジを複写機やレーザービームプリンターなどの電子写真装置本体に対して着脱可能に構成してもよい。たとえば、図9に示すように、現像手段34およびクリーニング手段35を画像形成体31および帯電ローラ1’と共に一体に支持してカートリッジ化して、装置本体のレール42などの案内手段を用いて装置本体に着脱可能なプロセスカートリッジ41とすることができる。
【0087】
また、画像露光光33は、電子写真装置が複写機やプリンタである場合には、原稿からの反射光や透過光、あるいは、センサーで原稿を読取り、信号化し、この信号に従って行われるレーザービームの走査、LEDアレイの駆動および液晶シャッターアレイの駆動などにより照射される光である。
【実施例】
【0088】
以下、実施例・比較例を示して発明の効果をより明らかにするが、本発明は以下の実施例に制限されるものではない。
【0089】
〔実施例2〜7、9〜14、16〜21・比較例2〜7、9〜14、16〜21〕
(導電性軸芯体)
鉄押出成形による直径6mmの鉄棒を長さ258mmで切断した後、厚さ約3μmの化学ニッケルメッキを施したものを用意した。
【0090】
(導電性弾性体層の形成)
エチレン−プロピレン−ジエン系ゴム(EPDM)100質量部、酸化亜鉛5質量部、ステアリン酸1質量部、導電性カーボンブラック11質量部、パラフィンオイル50質量部、加硫促進剤2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT)2質量部、加硫促進剤ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT)1質量部、加硫促進剤ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDBC)1質量部、イオウ1質量部、発泡剤ADCA8質量部、尿素系発泡助剤3質量部を混錬りし未加硫のゴム組成物を作製した。また、導電性軸芯体には接着剤を塗布して準備した。
【0091】
次に、クロスヘッド押出し機を用いて該ゴム組成物をホース状に押し出し、同時にその押出し中心に導電性軸芯体を挿入し、ロール状に一体化した。続いて、このロール両端の余分なゴムを取り除いた後、連続炉にて加熱、加硫・発泡反応を行った後、冷却して硬化し、外径8.5mmの原料ローラを得た。この原料ローラのホース端部を切断して長さを224mmにすることで、導電性弾性体層が形成された導電性軸芯体を得た。
【0092】
さらに、該導電性弾性体層の表面を研磨機によって研磨した。ローラの形状をローラの軸芯体を通る断面で見れば、研磨によって表面が円弧を描くような形状に仕上げられている。同じ断面で見て、ローラの両端となる端面の外径を端部径51、一番太い中央部の外径を中央径52と呼ぶことにすると、このときの中央径52は7.95mm、端部径51は7.75mmになるようにしてある。この形状については、図10に示す。
【0093】
ここで、導電性弾性体層を直径30mmの金属ドラムに当接させ、導電性軸芯体両端で支持しながら回転させて抵抗測定を行うと、50V印加時の体積固有抵抗が約104Ω・cmであった。
【0094】
(被覆層の形成)
被覆層としては、内層及び外層の二層からなる被覆層とし、外層に球状の有機微粒子を添加した。該球状の有機微粒子としては、ポリウレタン微粒子、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)微粒子、シリコーンゴム微粒子をそれぞれ単独で各々のローラに使用した。ポリウレタン微粒子としては根上工業株式会社製「アートパール」(商品名)を使用した。ポリメタクリル酸メチル(PMMA)微粒子としては積水化成品工業株式会社製「テクポリマー」(商品名)及び綜研科学株式会社製「ケミスノー」(商品名)を使用した。シリコーンゴム微粒子としてはモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製「トスパール」(商品名)を使用した。
【0095】
被覆層の生成方法は、本実施例及び比較例では外層の膜厚がすべての例において10μm以上であるため、2層チューブの同時押し出し式とした。このとき被覆層の外層の材料としては、スチレン含有率20質量%であるスチレン系の熱可塑性エラストマーSEBCを80質量部、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂を20質量部、酸性カーボンブラックを50質量部、所定の平均粒子径の球状有機微粒子を指定量(表1〜3に記載)、酸化マグネシウムを10質量部、ステアリン酸カルシウムを1質量部及びPPワックス2質量部である。これを、加圧式ニーダーにて180℃で30分間混練した。それを冷却した後粉砕機で粉砕し、単軸押し出し機でペレット化したものを準備した。
【0096】
被覆層中の内層の材料としては、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)を100質量部にカーボンブラック2種類をそれぞれ50質量部と5質量部、導電性酸化チタンを20質量部、酸化マグネシウムを10質量部及びステアリン酸カルシウムを1質量部添加し、加圧式ニーダーを用いて180℃で15分間混練し、被覆層の外層と同様の工程でペレット化したものを用意した。
【0097】
縦型押出し機にクロスヘッドを装着し、図2に示す構成とした。この押出し機を用い、上記内層用のペレット及び外層用のペレットを1つのクロスヘッド(温度160℃)で2重層となるように合流させ、適温の水冷リング10中に押し出した。さらに冷却した後、ロールタイプのチューブ引き取り装置21にて引き取り、切断機23で切断した。このようにして、外径約8.5mm、チューブ長300mmの2層からなる被覆層用のチューブを得た。被覆層用のチューブにおける外層の膜厚及び内層の膜厚は表1〜3に示すとおりである。
【0098】
(帯電ローラの作製)
切断された上記被覆用のチューブの長さは、上記の導電性弾性体層が形成された導電性軸芯体よりも長い。両者をチューブ被覆装置(不図示)にセットし、原料ローラの導電性弾性体層外周にチューブを嵌め込み、圧密着させた。その後、導電性弾性体層から外側にはみ出るチューブ端部を1mmの余裕を持たせて切除して帯電ローラを得た。ここで、直径30mmの金属ドラムに当接させ、導電性軸芯体両端で支持しながら回転させて抵抗測定を行うと、200V印加時の抵抗が約106Ω・cmであった。
【0099】
(画像評価)
画像評価は、市場投入前の電子写真装置の試作機を用いて行った。カートリッジに帯電ローラを組み込んで、1枚通紙する毎に画像形成体が停止する間欠通紙モードを用い、10秒間に1枚出力する間隔で250枚通紙を行った後、1時間停止させる。これを4回繰り返して1000枚の通紙を行った後1晩置き、翌日に評価用のハーフトーン画像の出力を行った。さらにまた、同じタイプの通紙を1500枚目まで繰り返した後、最終的な評価用としてハーフトーン画像を出力した。1000枚通紙後と1500枚通紙後に得られたハーフトーン画像において、帯電横スジ・起動スジ・クリーニング不良が発生していないかを目視により確認した。
【0100】
帯電横スジは出力画像上で左右にランダムに伸びる細い黒スジである。程度が悪ければ画像全面に多量に現れるようになる。また、起動スジは帯電ローラ表面へのトナー・外添剤等の付着が元となって引き起こされるものである。帯電ローラと画像形成体の間に挟まれていたトナー等が、長時間の停止によりローラ表面に固着し、画像出力時においてもしばらく固着したままで、画像上に横方向にローラピッチの黒いスジが表れる。また、クリーニング不良は、図8又は図9中のクリーニング手段35で除去しきれずに画像形成体上に残ったトナー・外添剤やドラム削れ粉などが、帯電ローラ表面にリング状に付着して引き起こされるものである。画像上の端部を中心として細く薄い、多数の縦スジが表れる。
【0101】
これらの評価の判断は下記基準で行った。
<帯電横スジ・クリーニング不良共通>
◎:認められない。
〇:認められるが、極軽微で許容範囲内である。
△:認められる。不可。
×:明らかに認められる。不可。
<起動スジ>
◎:認められない。
〇:認められるが、極軽微で数枚の画像出力で消失。許容範囲内である。
△:認められる。消失まで多数枚の画像出力を要す。不可。
×:明らかに認められる。不可。
【0102】
〔実施例1、8、15・比較例1、8、15〕
(導電性軸芯体・導電性弾性体層の形成)
他の実施例・比較例と同様にして導電性軸芯体、導電性弾性体層を形成する。
【0103】
(被覆層の形成)
被覆層については、チューブ被覆層と塗料コーティング層の両方を用いることで形成した。まず、前記実施例で記述した内層の材料を用いて単層のみの縦型押し出し機を使用し、内層用のチューブを作製した。次に以下に示す方法で外層用の塗料を作製した。
【0104】
(塗料の作製)
まずラクトン変性アクリルポリオール(商品名「プラクセルDC2009」:ダイセル化学工業(株)製)をメチルイソブチルケトン(MIBK)に溶解し、固形分10%の溶液とした。もともとのアクリルポリオール100質量部に対して、カーボンブラックを70質量部配合し、さらにシリコーンオイル(SH−28PA:東レ・ダウコーニングシリコーン(株)製)を0.1質量部配合した混合液をボールミルにて5時間分散させた。その後、平均粒子径2μmの球状粒子を80質量部添加したもの(実施例1、8及び15)と、平均粒子径1.5μmの球状粒子を80質量部添加したもの(比較例8及び15)とを別々に作ってさらに3時間分散させた。この際、球状粒子としては、ポリウレタン粒子、PMMA粒子、そしてシリコーンゴム粒子を用いた。その後、各々の溶液に対して、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)とイソホロンジイソシアネート(IPDI)の1:1(当量比)混合物をNCO/OH=1.0となるように添加し、溶解して、最後に500メッシュの網で溶液を濾過し、各種外層用塗料を調製した。
【0105】
(帯電ローラの作製)
切断された被覆用チューブの長さは、上記の導電性弾性体層が形成された導電性軸芯体よりも長い。両者をチューブ被覆装置(不図示)にセットし、原料ローラの導電性弾性体層外周にチューブを嵌め込み、圧密着させた。その後、内層まで被覆されたローラをローラ塗工装置(不図示)にセットし、上述した塗料を用いてディッピングを施すことにより最外層を形成させた。その後に導電性弾性体層から外側にはみ出るチューブ端部を1mmの余裕を持たせて切除して帯電ローラを得た。最外層の膜厚は3μmのものと2.5μmのものの2種類用意した。直径30mmの金属ドラムに当接させ、導電性軸芯体両端で支持しながら回転させて行った抵抗測定では、200V印加時の抵抗が約106Ω・cmであった。
【0106】
(画像評価)
先の実施例2〜7、9〜14、16〜21及び比較例2〜7、9〜14、16〜21と全く同様の手法で、画像評価を行った。
【0107】
結果を以下の表1〜3にまとめて示す。球状有機微粒子としてポリウレタン微粒子を用いたものを表1に、ポリメタクリル酸メチル微粒子(PMMA)を用いたものを表2に、シリコーンゴム微粒子を用いたものを表3に記載した。上記外層用の被覆層に含有させる球状有機微粒子の平均粒子径・投入量については各表の通りである。平均粒子径はベックマン・コールター株式会社製のMultisizer3を用いて測定した体積平均粒子径のことである。測定時の電解液としてはISOTONIIを用いた。また膜厚に関してはロ
ーラに用いたものと同一ロットのチューブを、日立製作所製の電界放射型走査電子顕微鏡S−4300で観察・測定した。但し、最外層の膜厚が3μm以下のものはローラから切り出して測定した。なお、帯電ローラの表面の粗さを表すデータとして、Rz(JIS)を示した。
【0108】
【表1】

【0109】
【表2】

【0110】
【表3】

【0111】
実施例・比較例から解るように、導電性軸芯体の周りに導電性弾性体層を形成し、少なくともその外側に2層以上からなる導電性被覆層を有する帯電ローラにおいて、前記導電性被覆層の最外層の膜厚をa、前記導電性被覆層における内層の膜厚合計をbとしたとき、その比が以下の値の範囲であるようにし、かつ最外層に平均粒子径がa/4以上3a/4以下であるような微粒子を含有させることにより、前記最外層の高抵抗化・高硬度化及びローラ表面の粗面化を達成させて充分な帯電性と耐付着性が確保され、従って帯電横スジ、起動スジ、クリーニング不良に優れた、安価で高性能の帯電ローラを製造することが可能となる。
0.016≦a/b≦0.300
但し、3μm≦a≦50μmかつb≧150μm
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】帯電ローラの一例の断面図。
【図2】被覆用のチューブの製造に用いる縦型押出し機の一例(模式断面図)。
【図3】被覆層の断面図。
【図4】コールターカウンターの概略図。
【図5】コールターカウンターのデータ処理を示す概念図。
【図6】コールターカウンターの粒子パルスと通過粒子の関係を示す概略図。
【図7】本発明に係る帯電ローラの被覆層部分の拡大図。
【図8】本発明に係る帯電ローラを有する電子写真装置の一例を示す概略図。
【図9】本発明に係る帯電ローラが搭載されたプロセスカートリッジの一例を示す概略図。
【図10】導電性弾性体層の形状を示す概略図。
【符号の説明】
【0113】
1 :導電性軸芯体
1’ :帯電ローラ
2 :導電性弾性体層
3 :被覆層(チューブ)
3(i):内層
3(o):外層
4 :ダイス
5 :中央通孔
6 :押し出し流路
7 :押し出し流路
8 :第1押し出機
9 :第2押し出機
10 :水冷リング
11 :球状粒子
12 :最外層の膜厚
13 :被覆層中の内層の膜厚
21 :タイミングプーリー(引き取り機)
22 :ニップル
23 :切断機
24 :金型
31 :画像形成体
32 :電源
33 :画像露光光
34 :現像手段
35 :クリーニング手段
36 :転写手段
37 :転写材
41 :プロセスカートリッジ
42 :レール
51 :端部径
52 :中央径
61 :電源
62 :電極
63 :アパチャー(細孔;部分拡大図上)
64 :体積測定器
65 :通過粒子
66 :アパチャー外縁部
67 :粒子と判断される閾値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性軸芯体の周りに導電性弾性体層を形成し、少なくとも該導電性弾性体層の外側に2層以上の導電性被覆層を有する帯電ローラにおいて、
前記導電性被覆層の最外層の膜厚をa、前記導電性被覆層における内層の合計膜厚をbとしたとき、その比が以下の値の範囲であると共に、前記最外層に平均粒子径がa/4以上3a/4以下である微粒子を含有することを特徴とする帯電ローラ。
0.016≦a/b≦0.300
但し、3μm≦a≦50μmかつb≧150μm
【請求項2】
前記最外層の表面の粗さRz(JIS)が6μm以上24μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の帯電ローラ。
【請求項3】
前記aと前記bの合計膜厚が以下の値の範囲であることを特徴とする請求項1又は2に記載の帯電ローラ。
160≦a+b≦1000
【請求項4】
前記微粒子が球状の有機微粒子であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかの請求項に記載の帯電ローラ。
【請求項5】
前記球状の有機微粒子が、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル又はシリコーンゴムからなることを特徴とする請求項4に記載の帯電ローラ。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかの請求項に記載の帯電ローラを内部に組み込んでいることを特徴とする、電子写真用プロセスカートリッジ。
【請求項7】
請求項6に記載のプロセスカートリッジを内部に組み込んでいることを特徴とする、電子写真装置。
【請求項8】
請求項1乃至5のいずれかの請求項に記載の帯電ローラを本体内部に組み込んでいることを特徴とする、電子写真装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−109858(P2009−109858A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−283564(P2007−283564)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】