説明

帯電ローラ、電子写真装置およびプロセスカートリッジ

【課題】ハロゲン原子を含有するゴムを含有する導電性弾性層を有する帯電ローラにおける、導電性支持軸の表面の腐食の抑制。
【解決手段】表面が金属からなる導電性支持軸と、その外周に設けられた導電性接着剤層と、該導電性接着剤層上に設けられた、ハロゲン原子を含有するゴムを有する導電性弾性層とを有する帯電ローラであって、該導電性接着剤層が、エポキシ樹脂、脂肪酸金属塩および亜リン酸エステルを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は帯電ローラ、電子写真装置およびプロセスカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
導電性支持軸の周面にエピクロルヒドリンゴム等のイオン導電ゴムを含む導電性弾性層を備えた帯電ローラは、高温高湿条件下では、導電性弾性層中で遊離した塩素等に由来する塩化物によって導電性支持軸の表面が腐食することがあるという課題があった。このような課題に対し、特許文献1では、導電性支持軸と導電性弾性層間に導電性接着剤層を設け、導電性接着剤層がフェノール樹脂、エポキシ樹脂および導電剤を有する導電性ローラが提案されている。エポキシ樹脂のオキシラン環により、導電性弾性層から生じたハロゲン化水素をトラップし、導電性支持軸が錆びることを防ぐことができることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−208447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、電子写真装置のより一層の性能安定への要求は近年ますます高まってきている。かかる状況の下、発明者等は上記特許文献1の発明に係る帯電ローラについて検討したところ、長期の使用に伴って、導電性弾性層が導電性支持軸からの剥離することがあった。
【0005】
そこで、本発明は、長期の使用によっても、導電性弾性層の導電性支持軸からの剥離をより良く抑制でき、安定した帯電性能を長期に亘って発揮することのできる帯電ローラの提供に向けたものである。また、本発明は安定的に高品位な電子写真画像を形成できる電子写真装置およびプロセスカートリッジを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる帯電ローラは、表面が金属からなる導電性支持軸と、その外周に設けられた導電性接着剤層と、該導電性接着剤層上に設けられた、ハロゲン原子を含有するゴムを有する導電性弾性層とを有する帯電ローラであって、
該導電性接着剤層が、エポキシ樹脂、脂肪酸金属塩および亜リン酸エステルを含有することを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る電子写真装置は、上記の帯電ローラと電子写真感光体とを具備していることを特徴とする。
【0008】
更に、本発明に係るプロセスカートリッジは、帯電ローラと電子写真感光体とを具備し、電子写真装置の本体に着脱可能に構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高湿条件下での導電性支持軸表面への腐食の発生が極めて良好に抑制でき、多様な環境下でも安定して優れた帯電性能を発揮する帯電ローラを得ることができた。また、それにより、多様な環境下でも優れた電子写真画像を安定して提供できる電子写真装置およびプロセスカートリッジを得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る帯電ローラの概略図である。
【図2】本発明に係る電子写真装置の概略図である。
【図3】本発明に係る帯電ローラを用いたプロセスカートリッジの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明に係る帯電ローラの断面図である。表面が金属からなる導電性支持軸101と、該導電性支持軸101の周面に導電性接着剤層102によって接着された、ハロゲン原子を含有するゴムを有する導電性弾性層103と、必要に応じて設けられる表面層104を有する。そして、該導電性接着剤層は、エポキシ樹脂、脂肪酸金属塩及び亜リン酸エステルを含有している。
【0012】
<導電性接着剤層>
導電性接着剤層102は、エポキシ樹脂、脂肪酸金属塩および亜リン酸エステルを含有している。接着剤層にこれらの材料を含有させることの技術的な意味を説明する。特許文献1に開示されているように、導電性支持軸と、エピクロルヒドリンゴムを含む導電性弾性層との間にエポキシ樹脂を含む層を介在させることによって導電性軸芯体の腐食を抑制できる。これは、導電性弾性層中に生じるハロゲンイオンが、エポキシ樹脂のオキシラン環と反応してクロルヒドリンを生成するため、ハロゲンイオンの導電性支持軸の表面への到達が阻害されたためであると考えられる。
【0013】
しかし、前記したように特許文献1に係る帯電ローラも、長期間の使用によって導電性弾性層が導電性支持軸から剥離し、それによって帯電が不均一となる場合があることを知見した。そこで、上記の剥離について詳細な観察を行なったところ、導電性支持軸表面に腐食が生じ、それによって導電性軸芯体と接着層との界面において剥離していることが分かった。かかる腐食は、オキソラン環によって捕捉し切れなかった過剰な塩素イオンが導電性支持軸の表面に到達したことにより生じたものと本発明者らは判断した。ここで、大勝 靖一 監修「高分子添加剤の開発技術」、株式会社シーエムシ−、1998年6月20日普及版1刷発行)の第73頁下から4行目〜最下行には、ポリ塩化ビニルの安定化に関して、エポキシ化合物と金属石けんとの併用により優れた安定化効果を発揮することが記載されている。また、同文献の第74頁第1乃至3行目には、エポキシ化合物とHClとの反応によって生成したクロルヒドリンが、金属石けんにHClを与えてエポキシ環を再生することが開示されている。本発明者らは、このような開示に基づき、接着剤層にエポキシ樹脂とともに脂肪酸金属塩を共存させ、塩素イオンと反応したオキソラン環を再生させることを考えた。しかし、オキソラン環の再生によって、金属塩化物が副生し、これは塩素イオンの発生源となってしまうことが予測される。本発明者らは、そこで、阿部、須藤「新版・プラスチック配合剤−基礎と応用」株式会社 大成社 昭和62年11月30日第2刷発行)の第96頁第19〜21行目の開示に基づき、導電性接着層に、更に亜リン酸エステルを含有させることを考えた。すなわち、上記文献には、PVCの安定剤としての亜リン酸エステルが、安定剤と塩酸とが反応して出来た金属酸化物を挟みとって分解が促進するのを防止するキレーターとして効果があることが開示されている。つまり、本発明者らは、オキソラン環の再生によって副生する金属塩化物を、キレーターである亜リン酸エステルによって安定化させることを考えたものである。このような考察に基づき、導電性接着層にエポキシ樹脂、脂肪酸金属塩および亜リン酸エステルを含む導電性接着剤を用いて導電性支持軸とエピクロルヒドリンゴムを含む導電性弾性層とを接着した帯電ローラを製造し、評価した。その結果、特許文献1に係る帯電ローラでは、剥離が生じることのあった長期間の使用によっても、剥離が殆ど生じることがなく、上記の接着層が本発明の目的達成に資することを認識した。
【0014】
(エポキシ樹脂)
導電性接着層中に含有させるエポキシ樹脂として以下のものを例示できる。ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、多官能型であるフェノールノボラック型エポキシ樹脂、また、これらをベースに他の樹脂で変性した樹脂等。エポキシ樹脂としては、常温で液状もしくは、溶剤に可溶であることが好ましく、また、エポキシ当量は、100以上、5000以下、特には150以上300以下が好ましい。エポキシ当量をこの範囲とすることで接着力が良好で、かつ、塩素イオンのトラップ能力が十分な接着剤とすることができる。また、エポキシ樹脂は、接着剤層の固形分中5質量%以上50質量%以下であることが好ましい。この範囲であると、接着剤として膜強度と防錆効果が良好となる。
【0015】
(脂肪酸金属塩)
脂肪酸金属塩を構成する脂肪酸として以下のものを例示できる。酪酸、2エチルヘキソイン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、リシノール酸、ナフテン酸、モンタン酸等。好ましくは、脂肪酸の分子量が70〜500、特には、120〜300である。脂肪酸の分子量をこの範囲とすることで、接着剤を構成する樹脂の熱安定性を低下させることがなく、また、接着剤を構成する樹脂との相溶性が良好となる。脂肪酸金属塩の元となる金属としては、周期律表の1、2、12、13、14族の原子が挙げられる。具体的には、リチウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、スズ等が挙げられる。好ましくは、2族、12族である。脂肪酸金属塩の添加量は、接着剤の固形分中の樹脂分に対し0.5質量部以上25質量部以下であることが好ましい。
【0016】
(亜リン酸エステル)
亜リン酸エステルとしては以下のものを例示できる。トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリイソデシルホスファイト、トリ2−エチルヘキシルホスファイト、ジフェニルノニルフェニルホスファイト、トリノニルフェニルホスファイト等。好ましくは、分子量が200以上1200以下である。この範囲内であれば、接着剤樹脂との相溶性が良好である。より好ましくは、500以上700以下である。添加量は、固形分中の樹脂分に対し0.5質量部以上25質量部以下であることが好ましい。
【0017】
(接着成分)
導電性接着剤層は、その接着機能を果たすための必須成分としての樹脂を含む。このような樹脂としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等の樹脂が用いられる。導電性接着層を形成すための接着剤に含有させるべき接着成分としての樹脂の具体例としては、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。特に、硬化後の樹脂の水蒸気、ガスの透過性の低いことから、熱硬化性のフェノール樹脂が好ましい。また、当該接着剤には、これらの樹脂に加え、耐熱性や接着力を向上させるために、ゴム成分を混合しても良い。例えば、天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム、ウレタンゴム等が挙げられる。特に、ニトリルブタジエンゴムは、導電性弾性層と導電性接着剤層の接着力を高めることが可能で有り好ましい。
【0018】
(その他材料)
導電性接着剤層には、上記必須の成分に加え、本発明の目的を損なわない範囲で更に、導電剤、可塑剤、チクソトロピー付与剤、顔料、染料、老化防止剤、酸化防止剤、分散剤、溶剤等を配合してもよい。
【0019】
<導電性弾性層>
導電性弾性層は、上記した導電性接着剤層上に形成した未加硫ゴム組成物の層を加硫することにより得られる。本発明の未加硫ゴム組成物は、塩素等のハロゲン原子を含有する。未加硫ゴム組成物を構成するゴム成分としては、例えば、エピクロルヒドリンゴム、クロロプレンゴム(CR)、フッ素ゴム等が挙げられる。更に必要に応じて、天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム等を混合してもよい。
【0020】
前記未加硫ゴム組成物中に分散させる導電粉としては、例えば、カーボンブラック、導電性カーボン等のカーボン類、グラファイト、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛等の金属酸化物、Cu、Ag等の金属粉、導電性の繊維、等が挙げられる。また、イオン導電剤等を用いてもよい。前記ポリマー原料100質量部に対して5質量部〜200質量部添加される。
【0021】
加硫剤としては硫黄、金属酸化物、有機酸化物等、無機充填剤としてカーボンブラック、タルク、クレー、炭酸カルシウム等があげられ、その他公知の加硫促進剤、プロセスオイル等が適宜添加される。
【0022】
弾性層の形成方法としては、上記の導電性弾性体の原料を密閉型ミキサーで混合後に、押し出し成形、射出成形、又は、圧縮成形等の公知の方法により形成するのが好ましい。また、弾性層は、接着層を設けた導電性支持軸の上に直接導電性弾性体を成形して作製してもよい。あるいは、予めチューブ形状に成形した導電性弾性体を導電性支持軸上に被覆形成させてもよい。
【0023】
(表面が金属からなる導電性支持軸)
表面が金属からなる導電性支持軸101は、帯電ローラの表面に導電性支持体を介して給電するために導電性を有する。その構成は、少なくともその表面は金属からなる。表面が金属からなる導電性支持軸としては、鉄、銅、ステンレス、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケルなどの金属性(合金製)等を用いることができる。また、導電性が無い材料の表面に金属等の導電性層を設けたものであっても良い。
【0024】
<表面層>
導電性弾性層の表面には、例えば抵抗の調整等を目的として表面層を設けてもよい。表面層としては、公知のものが使用可能であるが、例えば、バインダー、導電剤、粗し剤、絶縁性の無機微粒子からなるものが挙げられる。バインダーとしては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等の樹脂が用いられる。本発明の表面層のバインダーとしては、ウレタン樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。ラクトン変性アクリルポリオールをイソシアネートで架橋したウレタン樹脂が特に好適に用いられる。導電剤としては、カーボンブラック、グラファイト、導電性酸化チタン、導電性酸化錫の導電性金属酸化物等の導電性粒子、または前記導電性粒子を他の粒子と複合化した導電性複合粒子等が挙げられる。これらを適宜量分散させることにより、所望の電気抵抗値とすることができる。粗し剤は、帯電部材の表面に微小な凹凸を形成することができ、帯電均一性の向上を図ることができる。表面の微小な凹凸は特にDC帯電方式には有効である。粗し剤としては、ウレタン系微粒子やシリコーン系微粒子、アクリル系微粒子などの高分子化合物からなる微粒子を用いることが好ましい。表面層は、スプレー塗布やディッピング塗布等の塗布法により形成できる。または、予め所定の膜厚に成膜されたシート形状又はチューブ形状の層を接着又は被覆することにより形成できる。あるいは、型内で所定の形状に材料を硬化、成形する方法も用いることができる。
【0025】
塗布法によって層を形成する場合、塗布液に用いられる溶剤としては、バインダー樹脂を溶解することができる溶剤であればよく、例えば、以下のものが挙げられる。メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類など。
【0026】
(電子写真装置)
図2は、本発明の帯電ローラを用いた電子写真装置の断面図である。当該電子写真装置は、電子写真感光体301、これを帯電する帯電ローラ302、潜像形成装置308、現像装置303、転写材304に転写する転写装置305、クリーニングブレード307および定着装置306等を具備している。電子写真感光体301は、導電性基体上に感光層を有する回転ドラム型である。電子写真感光体301は矢印の方向に所定の周速度(プロセススピード)で回転駆動される。帯電ローラ302は、電子写真感光体301に所定の力で押圧されることにより接触配置される。帯電ローラ302は、電子写真感光体301の回転に従い従動回転し、帯電用電源313から所定の直流電圧を印加することにより、電子写真感光体301を所定の電位に帯電する。電子写真感光体301に潜像を形成する潜像形成装置308は、例えばレーザービームスキャナーなどの露光装置が用いられる。一様に帯電された電子写真感光体301に、画像情報に対応した露光を行うことにより、静電潜像が形成される。現像装置303は、電子写真感光体301に接触して配設される接触式の現像ローラを有する。感光帯電極性と同極性に静電処理されたトナーを反転現像により、静電潜像をトナー像に可視化現像する。転写装置305は、接触式の転写ローラを有する。電子写真感光体301からトナー像を普通紙などの転写材304に転写する。クリーニングブレード307は、電子写真感光体301上に残留する転写残トナーを機械的に掻き落として回収する。定着装置306は、加熱されたロール等で構成され、転写されたトナー像を転写材304に定着する。
【0027】
図3は、本発明に係る帯電ローラ302、電子写真感光体301、現像装置303、及びクリーニングブレード307などが一体化され、電子写真装置の本体に着脱可能に構成されているプロセスカートリッジの断面図である。
【実施例】
【0028】
以下に本発明の具体的な実施例について説明する。なお、各実施例で変更して使用する材料は、変更前の材料と同じ質量部で用いるものである。
【0029】
<実施例1>
帯電ローラの材料として以下の材料を用意した。
【0030】
(導電性支持軸)
導電性支持軸として、快削鋼の表面に無電解ニッケルメッキ処理を施した全長252mm、直径6mmの円柱状の棒を用意した。
【0031】
(導電性接着剤層形成用の接着剤の調製)
下記の表1の材料を混合した液を450mLのガラス瓶に上記混合溶液210gと、メディアとしての平均粒径0.8mmのガラスビーズ200gを混合し、ペイントシェーカー分散機を用いて24時間分散して接着剤を得た。
【0032】
【表1】

【0033】
(導電性接着剤層の作成)
上記で調製した接着剤をロールコーターを用いて、導電性支持軸の両端部13mmを除く部分に塗布した。その後170℃のオーブンで20分加熱し、導電性接着剤層を形成した接着剤の膜厚は平均で8μmとした。
【0034】
(弾性層)
以下の表2の材料をオープンロールにて混合して未加硫ゴム組成物を調製した。
【0035】
【表2】

【0036】
(導電性ロールの作成)
クロスヘッド押し出し機に導電性支持軸の供給機構、弾性ローラの排出機構を有する装置を用意した。上記で用意した接着層付きの導電性支持軸を、その供給機構からクロスヘッドに連続的に供給した。導電性支持軸の搬送速度は60mm/secとした。クロスヘッドには内径が9.0mmであるダイスを取り付け、あらかじめ押出し機とクロスヘッドを80℃に温調した。クロスヘッドに供給した導電性支持軸の接着層の周面には、押し出し機より供給された未加硫ゴム組成物の層を形成した。その際、未加硫ゴム組成物の層が形成された導電性支持軸は、続いて連続的に供給される導電性支持軸によって押されることにより、クロスヘッドを通過し、クロスヘッドから排出される。次に、熱風により170℃の雰囲気に予め全体が温まっている熱風加硫炉の中に、未加硫ゴム組成物の層が形成された導電性支持軸を投入し、60分加熱し、未加硫ゴム組成物の層を硬化させ、弾性層を形成した。その後、弾性層の長さが228mmになるように端部の弾性層を切断、除去した。更に、弾性層の表面を回転砥石で研磨して、端部直径8.45mm、中央部直径8.5mmのクラウン形状の導電性弾性ローラを得た。
【0037】
(表面層の作製)
カプロラクトン変性アクリルポリオール溶液にメチルイソブチルケトンを加え、固形分を18質量%に調整した。この溶液の555.6質量部、および当該溶液中のカプロラクトン変性アクリルポリオール溶液の固形分100質量部に対して、下記の表3の材料を混合した混合溶液を調製した。
【0038】
【表3】

【0039】
450mLのガラス瓶に上記混合溶液210gと、メディアとしての平均粒径0.8mmのガラスビーズ200gを混合し、ペイントシェーカー分散機を用いて24時間分散した。分散後、樹脂粒子として架橋タイプアクリル粒子「MR50G」(商品名、綜研化学製)を5.44質量部(アクリルポリール100重量部に対して20重量部相当量)を添加した後、更に30分間分散して表面層形成用塗料を得た。この表面層形成用塗料を、上記で得た導電性弾性ローラに1回ディッピング塗布し、常温で30分間以上風乾し、次いで90℃に設定した熱風循環乾燥機にて1時間乾燥し、更に160℃に設定した熱風循環乾燥機にて1時間乾燥して、導電性基体上に表面層を形成した。ディッピング塗布浸漬時間は9秒、ディッピング塗布引き上げ速度は、初期速度が20mm/s、最終速度は2mm/sになるように調節し、20mm/sから2mm/sの間は、時間に対して直線的に速度を変化させた。このようにして、導電性基体上に表面層を有する帯電ローラを作製した。得られた帯電ローラを以下の方法で評価した。
【0040】
<1> 高温高湿下での放置試験
現像ローラを温度40℃、湿度95%の環境下に2ヶ月間置いた後に、外観を目視で観察し、導電性弾性層と導電性支持軸との剥離に起因する膨れの有無、程度を以下の基準で評価した。
【0041】
A:膨れの発生が認められない。
【0042】
B:帯電領域外の両端部近傍において軽微な膨れが認められる。
【0043】
C:帯電領域内に膨れが認められる。
【0044】
D:帯電領域内に多数の膨れが認められる。
【0045】
<2>画像評価
上記評価<1>に供した帯電ローラを、電子写真式のレーザープリンター(商品名:LBP5400、キヤノン株式会社製)に装着した。なお、上記レーザープリンターは、記録メディアの出力スピードは、200mm/secで画像解像度は600dpiとした。画像の評価は全て、低温低湿(15℃、10%)で行い、ハーフトーン(感光体の回転方向と垂直方向に幅1ドット、間隔2ドットの横線を描く画像)画像を出力した。出力画像を目視にて、以下の基準で評価した。
A:膨れに起因した白いもや状の画像欠陥が認められない。
B:膨れに起因する白いもや状の画像欠陥が僅かに認められる。
C:膨れに起因する白いもや状の画像欠陥が多く認められる。
<実施例2〜3>
実施例1の導電性接着剤の「トリノニルフェニルホスファイト」を「トリフェニルホスファイト」または「トリオクタデシルホスファイト」に変更した。それ以外は実施例1と同様にして帯電ローラを作製し、評価した。
<実施例4〜6>
実施例1〜3の導電性接着剤の「ステアリン酸亜鉛」を「ステアリン酸アルミニウム」に変更した。それ以外は実施例1と同様にして帯電ローラを作製し、評価した。
<実施例7〜9>
実施例1〜3の導電性接着剤において「ステアリン酸亜鉛」を「酪酸亜鉛」に変更した。それ以外は実施例1と同様にして帯電ローラを作製し、評価した。
<実施例10〜12>
実施例1〜3の導電性接着剤において「ステアリン酸亜鉛」を「酪酸カリウム」に変更した。それ以外は実施例1と同様にして帯電ローラを作製し、評価した。
<実施例13〜15>
実施例1〜3の導電性接着剤において「ステアリン酸亜鉛」を「モンタン酸亜鉛」に変更した。それ以外は実施例1と同様にして帯電ローラを作製し、評価した。
<実施例16〜18>
実施例1〜3の導電性接着剤において「ステアリン酸亜鉛」を「モンタン酸アルミニウム」に変更した。それ以外は実施例1と同様にして帯電ローラを作製し、評価した。
<実施例19〜21>
実施例1〜3の導電性接着剤において「ステアリン酸亜鉛」を「2エチルヘキソイン酸カルシウム」に変更した。それ以外は実施例1と同様にして帯電ローラを作製し、評価した。
<実施例22〜24>
実施例1〜3の導電性接着剤において「ステアリン酸亜鉛」を「2エチルヘキソイン酸ナトリウム」に変更した。それ以外は実施例1と同様にして帯電ローラを作製し、評価した。
<実施例25〜27>
実施例1〜3の導電性接着剤において「ステアリン酸亜鉛」を「ラウリン酸カルシウム」に変更した。それ以外は実施例1と同様にして帯電ローラを作製し、評価した。
<実施例28〜30>
実施例1〜3の導電性接着剤において「ステアリン酸亜鉛」を「ラウリン酸リチウム」に変更した。それ以外は実施例1と同様にして帯電ローラを作製し、評価した。
<実施例31>
実施例1の導電性接着剤において、NBRを用いず、エポキシ樹脂をビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製、グレード「834」:エポキシ当量230〜270)に変更した。それ以外は実施例1と同様にして帯電ローラを作製し、評価した。
<実施例32>
実施例1の導電性接着剤において、レゾール型フェノール樹脂を用いず、エポキシ樹脂をビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製、グレード「834」:エポキシ当量230〜270)に変更した。それ以外は実施例1と同様にして帯電ローラを作製し、評価した。
<実施例33>
実施例1の導電性接着剤において、レゾール型フェノール樹脂とNBRを用いず、エポキシ樹脂をビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製、グレード「834」:エポキシ当量230〜270)に変更した。それ以外は実施例1と同様にして帯電ローラを作製し、評価した。
<実施例34>
実施例1の弾性層の形成に用いた未加硫ゴム組成物を下記の表4のものに変更した。それ以外は、実施例1と同様にして帯電ローラを作製し、評価した。
【0046】
【表4】

【0047】
<実施例35>
実施例34の導電性接着剤において、NBRを用いず、エポキシ樹脂をビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製、グレード「834」:エポキシ当量230〜270)に変更した。それ以外は、実施例34と同様にして帯電ローラを作製し、評価した。
<実施例36>
実施例34の導電性接着剤において、フェノール樹脂を用いず、エポキシ樹脂をビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製、グレード「834」:エポキシ当量230〜270)に変更した。それ以外は、実施例34と同様にして帯電ローラを作製し、評価した。
<実施例37>
実施例34の導電性接着剤において、フェノール樹脂とNBRを用いず、エポキシ樹脂をビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製、グレード「834」:エポキシ当量230〜270)に変更した。それ以外は、実施例34と同様にして帯電ローラを作製し、評価した。
<実施例38>
実施例1の導電性接着剤において「カーボンブラック」を使用しなかった以外は実施例1と同様にして導電性接着剤を調製した。この導電性接着剤を用いた以外は実施例1と同様にして帯電ローラを作製し、評価した。
<実施例39〜41>
実施例38の導電性接着剤において「NBR」、「レゾール型フェノール樹脂」または「NBR」および「レゾール型フェノール樹脂」の両方を使用せず、かつ、エポキシ樹脂をビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製、グレード「834」:エポキシ当量230〜270)に変更した。それら以外は実施例1と同様にして導電性接着剤を調製した。これらの導電性接着剤を用いた以外は実施例38と同様にして帯電ローラを作成し、評価した。
<実施例42>
実施例34の導電性接着剤において「カーボンブラック」を使用しなかった以外は実施例1と同様にして導電性接着剤を調製した。この導電性接着剤を用いた以外は実施例34と同様にして帯電ローラを作成し、評価した。
<実施例43〜45>
実施例42の導電性接着剤において、「NBR」、「レゾール型フェノール樹脂」または「NBR」および「レゾール型フェノール樹脂」の両方を使用せず、かつ、エポキシ樹脂をビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製、グレード「834」:エポキシ当量230〜270)に変更した。それら以外は実施例1と同様にして導電性接着剤を調製した。これらの導電性接着剤を用いた以外は実施例42と同様にして帯電ローラを作成し、評価した。
<比較例1〜3>
実施例1の導電性接着剤において「ステアリン酸亜鉛」、「トリノニルフェニルホスファイト」または「ビスフェノールA型エポキシ樹脂」をそれぞれ用いなかった以外は実施例1と同様にして導電性接着剤を調製した。これらの導電性接着剤を用いた以外は、実施例1と同様にして帯電ローラを作製し、評価した。
【0048】
上記実施例1〜45及び比較例1〜3の評価結果を下記表5および表6に示す。
【0049】
【表5】

【0050】
【表6】

【符号の説明】
【0051】
101:導電性支持軸
102:導電性接着剤層
103:導電性弾性体層
104:表面層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面が金属からなる導電性支持軸と、
その周面に設けられた導電性接着剤層と、
該導電性接着剤層上に設けられた、ハロゲン原子を含有するゴムを有する導電性弾性層とを有する帯電ローラであって、
該導電性接着剤層が、エポキシ樹脂、脂肪酸金属塩および亜リン酸エステルを含有することを特徴とする帯電ローラ。
【請求項2】
前記脂肪酸金属塩が、酪酸、2エチルヘキソイン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、リシノール酸、ナフテン酸及びモンタン酸からなる群から選ばれる少なくとも1つの脂肪酸の塩である請求項1に記載の帯電ローラ。
【請求項3】
前記脂肪酸金属塩を構成している金属が、リチウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛及びスズからなる群から選ばれる少なくとも1つである請求項1または2に記載の帯電ローラ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の帯電ローラと電子写真感光体とを具備していることを特徴とする電子写真装置。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の帯電ローラと電子写真感光体とを具備し、電子写真装置の本体に着脱可能に構成されていることを特徴とするプロセスカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−59480(P2011−59480A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−210327(P2009−210327)
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】