説明

帯電器

【課題】荷電粒子を効果的に感光体に誘導することができる帯電器を提供する。
【解決手段】帯電器100は、所定方向に沿って延設され、電圧が印加されることで感光体ドラム61(感光体)を帯電させる荷電粒子を発生させるコロナワイヤ110と、コロナワイヤ110を挟んで対向して設けられ、コロナワイヤ110と感光体ドラム61との対向方向に沿って延びる一対のシールド130と、コロナワイヤ110と一対のシールド130のうちの少なくとも一方との間の領域に、シールド130に向かう荷電粒子を感光体ドラム61に向かう方向へ曲げる力を発生させる磁場を印加する永久磁石140とを備える。永久磁石140は、印加する磁場がコロナワイヤ110と感光体ドラム61との対向方向において感光体ドラム61に近づくにつれて弱くなるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に設けられた感光体に対向して配置される帯電器に関する。
【背景技術】
【0002】
感光体に対向して配置される帯電器として、電圧の印加により感光体の表面を帯電させる荷電粒子を発生させるコロナワイヤなどの放電部材と、放電部材を挟んで対向して設けられる一対のシールドとを備えるものが知られている。
【0003】
また、特許文献1には、荷電粒子(イオン)を感光体に誘導するため、シールド(シールド板)に隣接して磁石を配設することで、シールドの内側の領域に放電部材からシールドに向かう荷電粒子を感光体に向かう方向へ曲げる力を発生させる磁場を印加するように構成された帯電器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−109718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記した従来技術のような構成では、磁場はシールドの内側の領域に均一に印加されるため、荷電粒子を効果的に感光体に誘導することができなかった。
【0006】
本発明は、以上の背景に鑑みてなされたものであり、荷電粒子を効果的に感光体に誘導することができる帯電器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記した目的を達成するための本発明は、画像形成装置に設けられた感光体に対向して配置される帯電器であって、放電部材と、一対のシールドと、磁場印加手段とを備えている。
放電部材は、所定方向に沿って延設され、電圧が印加されることで感光体を帯電させる荷電粒子を発生させる。
一対のシールドは、放電部材を挟んで対向して設けられ、放電部材と感光体との対向方向に沿って延びている。
磁場印加手段は、放電部材と一対のシールドのうちの少なくとも一方との間の領域に、シールドに向かう荷電粒子を感光体に向かう方向へ曲げる力を発生させる磁場を印加する。
さらに、磁場印加手段は、印加する磁場が放電部材と感光体との対向方向において感光体に近づくにつれて弱くなるように構成されている。
【0008】
このような構成によれば、磁場印加手段により印加される磁場が、放電部材と感光体との対向方向において感光体に近づくにつれて弱くなるので、荷電粒子を効果的に感光体に誘導することができる。これにより、帯電効率を向上させることが可能となるので、高速帯電が可能となる。また、放電部材に印加する電流を低減させることが可能となるので、省エネ化や放電に伴って発生するオゾンなどの抑制が可能となる。
【0009】
補足すると、放電部材と感光体との対向方向において磁場を均一に印加した場合、荷電粒子は、対向方向の位置によらずにすべて同様の軌跡を描きながら曲がることとなる。このとき、感光体から遠い領域の荷電粒子が感光体に向かうように磁場の強さが設定されていれば、感光体に近い領域の荷電粒子は、曲がりすぎて反対側のシールドに衝突してしまう可能性がある。また、感光体に近い領域の荷電粒子が感光体に向かうように磁場の強さが設定されていれば、感光体から遠い領域の荷電粒子は、曲がりきれずにそのままシールドに衝突してしまう可能性がある。
【0010】
一方、本発明では、放電部材と感光体との対向方向において磁場を感光体に近づくにつれて弱くなるような勾配を与えながら印加することで、感光体から遠い領域の荷電粒子を急激に曲げて感光体に向かわせることができ、感光体に近い領域の荷電粒子を緩やかに曲げて感光体に向かわせることができる。これにより、荷電粒子を効果的に感光体に誘導することができる。
【0011】
前記した帯電器において、磁場印加手段は、放電部材と両方のシールドとの間の領域に、シールドに向かう荷電粒子を感光体に向かう方向へ曲げる力を発生させる磁場を印加するように設けられていることが望ましい。
【0012】
このような構成によれば、より多くの荷電粒子を感光体に誘導することができる。これにより、さらなる高速帯電や省エネ化、オゾンなどの抑制が可能となる。
【0013】
前記した各帯電器において、磁場印加手段は、シールドに隣接して配置され、前記所定方向に並んで複数設けられている構成とすることができる。
【0014】
前記した各帯電器において、磁場印加手段は、シールドに対して放電部材が配置された側でシールドに隣接して設けられている構成とすることができる。
【0015】
このような構成によれば、シールドが透磁率が高い材料から形成されていても、放電部材とシールドとの間の領域に前記したような磁場勾配を形成することができる。
【0016】
また、本発明の帯電器において、磁場印加手段は、シールドに対して放電部材が配置された側とは反対側でシールドに隣接して設けられている構成とすることもできる。
【0017】
このような構成によれば、シールドが透磁率が低い材料から形成されていても、放電部材とシールドとの間の領域に前記したような磁場勾配を形成することができる。また、放電部材とシールドとを近接配置することが可能となるので、放電部材とシールドとの間で放電が起こりやすくなり、より多くの荷電粒子を発生させることができる。さらに、磁場印加手段がシールドの放電部材側に設けられている場合、荷電粒子が磁場印加手段にトラップされる可能性があるが、磁場印加手段をシールドの放電部材側とは反対側に設けることで、そのような可能性を低減させることができる。
【0018】
前記した磁場印加手段がシールドに対して放電部材が配置された側に設けられている帯電器は、放電部材と感光体との間に設けられ、所定方向に沿って延びるグリッドをさらに備えていてもよい。
この場合、磁場印加手段は、一対のシールドの対向方向において、シールドと、当該シールドに最も近いグリッドのグリッド穴との間に設けられていることが望ましい。
【0019】
このような構成によれば、荷電粒子が通過するグリッド穴が、磁場印加手段によって塞がれることがないので、荷電粒子をより確実に感光体に誘導することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、磁場印加手段により印加される磁場が、放電部材と感光体との対向方向において感光体に近づくにつれて弱くなるので、荷電粒子を効果的に感光体に誘導することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】画像形成装置の一例としてのレーザプリンタの概略構成を示す図である。
【図2】第1実施形態に係る帯電器の拡大図である。
【図3】第1実施形態に係る帯電器の平面図である。
【図4】第1実施形態に係る帯電器の側面図である。
【図5】本発明の帯電器の作用の説明図である。
【図6】従来の帯電器の作用の説明図(a),(b)である。
【図7】第1実施形態の変形例に係る帯電器の平面図である。
【図8】第2実施形態に係る帯電器の側面図である。
【図9】荷電粒子の動きのシミュレーション結果を示す図(a)と、印加した磁場(磁束密度)を示すグラフ(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第1実施形態]
次に、本発明の第1実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明では、実施形態に係る帯電器100を備えた画像形成装置の一例としてのレーザプリンタ1の概略構成について説明した後、帯電器100の詳細な構成について説明する。
【0023】
また、レーザプリンタ1の概略構成の説明において、方向は、レーザプリンタ1を使用するユーザを基準にした方向で説明する。すなわち、図1における右側を「前」、左側を「後」とし、手前側を「左」、奥側を「右」とする。また、図1における上下方向を「上下」とする。
【0024】
<レーザプリンタの概略構成>
図1に示すように、レーザプリンタ1は、本体筐体2内に、用紙Sを供給する給紙部3と、露光装置4と、用紙S上にトナー像を転写するプロセスカートリッジ5と、用紙S上のトナー像を熱定着する定着装置8とを主に備えている。
【0025】
給紙部3は、本体筐体2内の下部に設けられ、給紙トレイ31と、用紙押圧板32と、給紙機構33とを主に備えている。給紙トレイ31に収容された用紙Sは、用紙押圧板32によって上方に寄せられ、給紙機構33によってプロセスカートリッジ5(感光体ドラム61と転写ローラ63との間)に向けて供給される。
【0026】
露光装置4は、本体筐体2内の上部に配置され、図示しないレーザ発光部やポリゴンミラー、レンズ、反射鏡などを備えている。この露光装置4では、レーザ発光部から出射される画像データに基づくレーザ光(鎖線参照)が、感光体ドラム61の表面で高速走査されることで、感光体ドラム61の表面を露光する。
【0027】
プロセスカートリッジ5は、露光装置4の下方に配置され、本体筐体2に設けられたフロントカバー21を開いたときにできる開口から本体筐体2に対して着脱可能に装着される構成となっている。このプロセスカートリッジ5は、感光体ユニット6と、現像ユニット7とから構成されている。
【0028】
感光体ユニット6は、感光体の一例としての正帯電性の感光体ドラム61と、帯電器100と、転写ローラ63とを主に備えている。
【0029】
現像ユニット7は、感光体ユニット6に対して着脱自在となっており、感光体ユニット6に装着された状態、すなわち、プロセスカートリッジ5として本体筐体2に対し着脱可能に装着されるように構成されている。この現像ユニット7は、現像ローラ71と、供給ローラ72と、層厚規制ブレード73と、トナー(現像剤)を収容するトナー収容部74と、アジテータ75とを主に備えている。
【0030】
プロセスカートリッジ5では、感光体ドラム61の表面が、帯電器100により一様に正帯電された後、露光装置4からのレーザ光の高速走査によって露光されることで、感光体ドラム61上に画像データに基づく静電潜像が形成される。また、トナー収容部74内のトナーは、アジテータ75によって撹拌されながら、まず供給ローラ72に供給され、次いで供給ローラ72から現像ローラ71に供給される。そして、現像ローラ71の回転に伴って、現像ローラ71と層厚規制ブレード73の間に進入して一定厚さの薄層として現像ローラ71上に担持される。
【0031】
現像ローラ71上に担持されたトナーは、現像ローラ71から感光体ドラム61上に形成された静電潜像に供給される。これにより、静電潜像が可視像化され、感光体ドラム61上にトナー像が形成される。その後、感光体ドラム61と転写ローラ63の間を用紙Sが搬送されることで感光体ドラム61上のトナー像が用紙S上に転写される。
【0032】
定着装置8は、プロセスカートリッジ5の後方に配置され、加熱ローラ81と、加熱ローラ81と対向配置されて加熱ローラ81を押圧する加圧ローラ82とを主に備えている。この定着装置8では、用紙S上に転写されたトナー像を、用紙Sが加熱ローラ81と加圧ローラ82との間を通過する間に熱定着させている。トナー像が熱定着された用紙Sは、排紙ローラ23によって排紙トレイ22上に排出される。
【0033】
<帯電器の詳細構成>
図2に示すように、帯電器100は、レーザプリンタ1に設けられた感光体ドラム61に所定間隔をあけて対向して配置されており、放電部材の一例としてのコロナワイヤ110と、グリッド120と、一対のシールド130と、磁場印加手段の一例としての複数の永久磁石140(図3も参照)とを主に備えている。
【0034】
なお、帯電器100の詳細構成の説明において、方向は、図2を基準にした方向で説明する。すなわち、図2における右側を「前」、左側を「後」とし、手前側を「左」、奥側を「右」とする。また、図2における上下方向を「上下」とする。
【0035】
コロナワイヤ110は、所定の電圧(帯電バイアス)が印加されることでコロナ放電を発生させる金属製のワイヤであり、所定方向、具体的には、感光体ドラム61の軸方向(左右方向)に沿って延設されている。このコロナワイヤ110は、コロナ放電により感光体ドラム61の表面を正帯電させる荷電粒子の一例としてのイオン(例えば、N2+など)を発生させる。
【0036】
グリッド120は、コロナワイヤ110と異なる電位(電位0を含む)に設定されることで、感光体ドラム61の帯電量を制御する金属製の板状部材であり、コロナワイヤ110と感光体ドラム61との間に設けられ、左右方向に沿って延びている。このグリッド120は、コロナワイヤ110のコロナ放電により発生したイオンを通過させるため、左右方向に沿って細長く延びる複数のグリッド穴121を有している(図3も参照)。
【0037】
一対のシールド130は、コロナワイヤ110を挟んで前後方向に対向して設けられた金属製の板状部材であり、左右方向と上下方向(コロナワイヤ110と感光体ドラム61との対向方向)に沿って延びている。なお、前記したグリッド120は、一対のシールド130の下端部(感光体ドラム61側の端部)をつないでおり、一対のシールド130と略直交するように設けられている。
【0038】
永久磁石140は、コロナワイヤ110と各シールド130との間の領域(コロナワイヤ110の前側の領域または後側の領域)に磁場を印加する部材であり、シールド130に隣接して設けられている。より詳細に、永久磁石140は、図3に示すように、シールド130に隣接して配置され、左右方向に並んで複数(左右に各5つずつ、合計10個)設けられている。
【0039】
各永久磁石140は、シールド130に対してコロナワイヤ110が配置された側、すなわち、シールド130の内側に設けられている。また、各永久磁石140は、前後方向(一対のシールド130の対向方向)において、シールド130と、当該シールド130に最も近いグリッド穴121との間に設けられている。詳細には、コロナワイヤ110の前側に配置された永久磁石140は、前側のシールド130と、最も前側に設けられたグリッド穴121Fとの間に設けられ、コロナワイヤ110の後側に配置された永久磁石140は、後側のシールド130と、最も後側に設けられたグリッド穴121Rとの間に設けられている。
【0040】
このような永久磁石140は、コロナワイヤ110と前側のシールド130との間の領域に磁力線が左に向く磁場を形成し、コロナワイヤ110と後側のシールド130との間の領域に磁力線が右に向く磁場を形成するようにN極およびS極の向きが配置されている。具体的には、コロナワイヤ110の前側に配置された永久磁石140は、N極を左方に向け、S極を右方に向けて配置され、コロナワイヤ110の後側に配置された永久磁石140は、N極を右方に向け、S極を左方に向けて配置されている。
【0041】
これにより、コロナワイヤ110とシールド130との間の領域に、コロナワイヤ110からシールド130に向かう正の電荷を有するイオンを、感光体ドラム61に向かう方向(下方)へ曲げる力(ローレンツ力)を発生させることができるようになっている(図5も参照)。
【0042】
図4に示すように、各永久磁石140は、側面視において、左右の両端面(磁極)が上方から下方に向けて互いに近づくように傾斜した側面視略台形状に形成されている。このような形状の永久磁石140を、シールド130に隣接して左右方向に並んで配置することで、コロナワイヤ110と各シールド130との間の領域には、上下方向において感光体ドラム61に近づくにつれて弱くなるような磁場、すなわち、上方から下方に向かうにつれて磁力線の密度が少なくなるような磁場が印加されることとなる。
【0043】
なお、本実施形態において、永久磁石140(磁場印加手段)は、シールド130に隣接して配置されている、言い換えると、コロナワイヤ110から離れて配置されているので、コロナワイヤ110の周囲の領域、より詳細には、グリッド120のグリッド穴121が設けられた部分の上方の領域(図2の破線で囲まれた領域に挟まれた領域)は、磁場が弱くなる。これにより、磁場の影響がコロナワイヤ110に及びにくくなっている。
【0044】
次に、帯電器100の作用について、前記した従来技術と比較しながら説明する。
図6(a),(b)に示す従来技術のように、上下方向において磁場を均一に印加した場合、シールド130に向かうイオンは、上下方向の位置によらずに同様の軌跡を描きながら曲がることとなる。
【0045】
従って、例えば、図6(a)に示すように、感光体ドラム61に近いイオンP2が感光体ドラム61に向かうように磁場の強さが設定されていれば、感光体ドラム61から遠いイオンP1は、曲がりきれずにそのままシールド130に衝突してしまう可能性がある。また、図6(b)に示すように、感光体ドラム61から遠いイオンP1が感光体ドラム61に向かうように磁場の強さが設定されていれば、感光体ドラム61に近いイオンP2は、曲がりすぎて反対側のシールド130などに衝突してしまう可能性がある。
【0046】
一方、図5に示すように、帯電器100では、上下方向において磁場を感光体ドラム61に近づくにつれて弱くなるような勾配を与えながら印加することで、感光体ドラムから遠い領域のイオンP1を急激に曲げて感光体ドラム61に向かわせることができ、感光体ドラム61に近い領域のイオンP2を緩やかに曲げて感光体ドラム61に向かわせることができる。
【0047】
さらに、磁場が感光体ドラム61に近づくにつれて弱くなっていることで、磁場内に進入したイオンは、曲がるときの円軌道の半径を感光体ドラム61に近づくにつれて徐々に大きくしながら磁場から脱出する。そのため、磁場から脱出したイオンは、より多くが感光体ドラム61に向かうこととなる。
以上により、より多くのイオンを感光体ドラム61に誘導することができる。
【0048】
以上によれば、本実施形態において以下のような効果を得ることができる。
永久磁石140により印加される磁場が、上下方向において感光体ドラム61に近づくにつれて弱くなるので、イオンを効果的に感光体ドラム61に誘導することができる。これにより、帯電効率を向上させることが可能となるので、高速帯電が可能となる。また、コロナワイヤ110に印加する電流を低減させることが可能となるので、省エネ化やコロナ放電に伴って発生するオゾンなどの抑制が可能となる。
【0049】
特に、本実施形態では、永久磁石140がコロナワイヤ110と両方のシールド130との間の領域に磁場を印加するように設けられているので、より多くのイオンを感光体ドラム61に誘導することができる。これにより、さらなる高速帯電や省エネ化、オゾンなどの抑制が可能となる。
【0050】
また、永久磁石140がシールド130の内側に設けられているので、シールド130が鉄などの透磁率が高い材料から形成されていても、コロナワイヤ110とシールド130との間の領域に前記したような磁場勾配を形成することができる。
【0051】
また、永久磁石140が前後方向においてシールド130と当該シールド130に最も近いグリッド120のグリッド穴121(121Fまたは121R)との間に設けられているので、イオンが通過するグリッド穴121が塞がれることがないため、イオンをより確実に感光体ドラム61に誘導することができる。
【0052】
なお、以上説明した実施形態では、永久磁石140がシールド130の内側に設けられていたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図7に示すように、永久磁石140(磁場印加手段)は、シールド130に対してコロナワイヤ110が配置された側とは反対側、すなわち、シールド130の外側に設けられていてもよい。
【0053】
これによれば、シールド130がアルミニウムなどの透磁率が低い材料から形成されていても、コロナワイヤ110とシールド130との間の領域に前記したような磁場勾配を形成することができる。また、コロナワイヤ110とシールド130とを近接配置することが可能となるので、コロナワイヤ110とシールド130との間でコロナ放電が起こりやすくなり、より多くのイオンを発生させることができる。さらに、永久磁石140がシールド130の内側に設けられている場合、イオンが永久磁石140にトラップされる可能性があるが、永久磁石140をシールド130の外側に設けることで、そのような可能性を低減させることができる。
【0054】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、本実施形態では、前記した第1実施形態と同様の構成要素については、同一符号を付して、その説明を省略することとする。
【0055】
図8に示すように、本実施形態の帯電器100は、コロナワイヤ110(放電部材)と、グリッド120と、一対のシールド130と、磁場印加手段の他の例としての複数の電磁石241,242とを主に備えている。
【0056】
電磁石241,242は、コロナワイヤ110と各シールド130との間の領域に磁場を印加する部材であり、符号を省略して示す、磁性材料からなる芯と、芯の周りに巻かれたコイルとを主に有して構成されている。本実施形態において、電磁石242は、コイルの巻き数が電磁石241のコイルの巻き数よりも少なくなっている。
【0057】
電磁石241および電磁石242は、シールド130に隣接して配置され、感光体ドラム61の軸方向に並んで複数(左右に各5つずつ、合計20個)設けられている。また、電磁石241,242は、側面視において、コイルの巻き数が多い電磁石241がコロナワイヤ110よりも上方に配置され、コイルの巻き数が少ない電磁石242がコロナワイヤ110の下方に配置されることで、上下方向にコロナワイヤ110を挟んで設けられている。
【0058】
各電磁石241,242のコイルには、少なくとも感光体ドラム61を帯電させるときに、N極が図示左端に現れ、S極が図示右端に現れるような電流が流される。本実施形態において、電磁石241のコイルに流す電流値と、電磁石242のコイルに流す電流値とは、互いに等しくなっている。
【0059】
以上のような構成により、本実施形態の帯電器100では、電磁石241,242のコイルに電流を流すことで、コイルの巻き数が少ない電磁石242によって形成される磁場が、電磁石241によって形成される磁場よりも弱くなるので、コロナワイヤ110と各シールド130との間の領域に、上下方向において感光体ドラム61に近づくにつれて弱くなるような磁場が印加されることとなる。
【0060】
なお、本実施形態において、電磁石241,242は、シールド130の内側に設けられていてもよいし、外側に設けられていてもよい。より詳細に、電磁石241,242は、シールド130が鉄などの透磁率の高い材料から形成されている場合、シールド130の内側に設けられていることが望ましく、シールド130がアルミニウムなどの透磁率の低い材料から形成されている場合、シールド130の外側に設けられていることが望ましい。
【0061】
以上によれば、本実施形態においても、前記した第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。特に、本実施形態では、磁場印加手段として電磁石241,242を使用しているので、コイルに流す電流値を調整することで、永久磁石を使用した場合よりも、印加される磁場の調整を帯電器100ごとに容易に行うことができる。また、コイルに流す電流値を調整可能なレーザプリンタ1に帯電器100を使用することで、レーザプリンタ1の設置環境に応じた最適な磁場を印加するようなことが可能となる。
【0062】
なお、磁場印加手段として電磁石を使用する構成において、磁場勾配を形成する方法は、前記した実施形態の方法、すなわち、コイルの巻き数を変える方法に限定されるものではない。すなわち、電磁石としてコイルの巻き数が互いに等しい電磁石を使用した場合であっても、前記したような磁場勾配を形成することができる。具体的には、図8を参考にして説明すると、例えば、電磁石242のコイルに流す電流値を、電磁石241のコイルに流す電流値よりも小さくすることで、前記したような磁場勾配を形成することができる。また、電磁石241と電磁石242のコイルの巻き数とコイルに流す電流値が同じであっても、電磁石242の芯の透磁率を、電磁石241の芯の透磁率よりも小さくすることで、前記したような磁場勾配を形成することができる。
【0063】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。具体的な構成については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【0064】
前記実施形態で示した磁場印加手段(永久磁石140や電磁石241,242)の構成は、前記実施形態の構成に限定されるものではない。例えば、前記第1実施形態において、永久磁石140は、左右に各5つずつ、合計10個設けられていたが、これに限定されず、4つ以下であってもよいし、6つ以上であってもよい。
【0065】
また、前記第2実施形態において、電磁石241,242は、上下に2つ並んで設けられていたが、これに限定されず、上下に3つ以上並んで設けられていてもよい。また、各シールド130に対応して設けられる永久磁石140や電磁石241,242の数は、一対のシールド130の間で互い異なっていてもよい。
【0066】
前記実施形態では、永久磁石140などの磁場印加手段が、コロナワイヤ110(放電部材)と両方のシールド130との間の領域に磁場を印加するように設けられていたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、磁場印加手段は、放電部材と一対のシールドのうちの少なくとも一方との間の領域に磁場を印加するように構成されていてもよい。具体的には、磁場印加手段を一方のシールドだけに隣接して設けてもよい。
【0067】
前記実施形態では、グリッド120とシールド130とが一体に(一部品として)形成されていたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、グリッドとシールドとは、別部品として形成されていてもよい。
【0068】
前記実施形態では、帯電器として、グリッド120を備えるスコロトロン型の帯電器100を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、本発明の帯電器は、グリッド120を備えないコロトロン型の帯電器であってもよい。
【0069】
前記実施形態では、放電部材として、所定方向に沿って張設されたワイヤ(コロナワイヤ110)を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、放電部材は、所定方向に沿って並んで設けられた複数の針状の電極であってもよい。言い換えると、本発明の帯電器は、鋸歯帯電器であってもよい。
【0070】
前記実施形態では、本発明を正帯電性の感光体ドラム61(感光体)を備えるシステムに適用した例を示したが、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、負帯電性の感光体を備えるシステムにも適用することができる。この場合、コロナワイヤ110(放電部材)とシールド130との間の領域に印加される磁場の向きは、前記実施形態(図3に示す向き)とは逆向きになる。
【0071】
前記実施形態では、本発明の帯電器が使用される画像形成装置として、モノクロ画像を形成するレーザプリンタ1を例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、カラー画像を形成するプリンタであってもよい。また、画像形成装置は、プリンタに限定されず、例えば、フラットベッドスキャナなどの原稿読取装置を備える複写機や複合機などであってもよい。
【実施例】
【0072】
次に、本発明の効果を確認した実施例(シミュレーション結果)について説明する。
本実施例では、以下に示す計算条件の下、コロナワイヤ(Wire)の放電により発生する荷電粒子(N2+相当)の動きを計算した。計算結果を図9(a)に示す。
【0073】
<計算条件>
粒子質量 :4.65×10-26 kg
粒子電荷 :1.60×10-19
シールド距離 :12.2 mm
ワイヤ−グリッド距離 : 5.7 mm
ワイヤ半径 : 0.060 mm
ワイヤ−開放部距離 : 2.0 mm
ワイヤ表面電界強度 :1.46×107 V/m
グリッド−シールド電圧:700 V
ここで、開放部とは、一対のシールド(Shield)の間のグリッド(Grid)側の端部とは反対側の端部(一対のシールドの開放された部分)をいうものとする。
【0074】
実施例では、コロナワイヤとシールドとの間の領域に下記の式(1)で示される磁場勾配Bを与えた(図9(b)の実線参照)。
B=B0(z/L)・・・(1)
ここで、B0は、磁束密度であり、22Tとした。また、Lは、図9のz方向(コロナワイヤと感光体ドラム(OPC)との対向方向)におけるシールドの長さを示し、式(1)のzは、図9のz方向の任意の位置(0≦z≦L)を示している。
【0075】
比較例では、コロナワイヤとシールドとの間の領域に一定の磁場B0(=22T)を与えた(図9(b)の破線参照)。
【0076】
<計算結果>
図9(a)に示すように、磁場勾配を与えない比較例(破線参照)では、コロナワイヤからシールドに向かう荷電粒子P1,P2は、z方向の位置によらずに、シールド近傍(磁場内)において同様の円弧状の軌跡を描きながら曲がって方向を変えている。そして、最終的に、荷電粒子P1は、感光体ドラムとは反対側(開放部)に向かい、荷電粒子P2は、グリッドの端部に衝突していることがわかる。
【0077】
一方、磁場勾配を与えた実施例(実線参照)では、磁場が感光体ドラムに近づくにつれて弱くなっているので、図示左側のシールド近傍(磁場内)において、感光体ドラムに近い荷電粒子P2は、感光体ドラムから遠い荷電粒子P1よりも緩やかに曲がって直接感光体ドラムに向かっていることがわかる。
【0078】
さらに、実施例では、磁場が感光体ドラムに近づくにつれて弱くなっていることで、磁場内に進入した荷電粒子P1,P2は、曲がるときの円軌道の半径を図示下側に向かうにつれて徐々に大きくしながら磁場から脱出している。そのため、特に荷電粒子P1は、図示左側のシールド近傍で曲がった後は、図示右側のシールドに向かっているが、図示右側のシールド近傍で円軌道の半径を徐々に大きくしながら曲がることで、最終的に、直接感光体ドラムに向かっていることがわかる。
【0079】
以上より、印加する磁場を感光体ドラムに近づくにつれて弱くすることで、荷電粒子を効果的に感光体ドラムに誘導することができることが確認された。
なお、磁場の影響が弱くなる帯電器の図示左右方向中央付近では、コロナワイヤから直接感光体ドラムに向かう荷電粒子P3は、曲がることなく、略真っ直ぐ感光体ドラムに向かっていることがわかる。
【符号の説明】
【0080】
1 レーザプリンタ
61 感光体ドラム
100 帯電器
110 コロナワイヤ
120 グリッド
121 グリッド穴
130 シールド
140 永久磁石
241 電磁石
242 電磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置に設けられた感光体に対向して配置される帯電器であって、
所定方向に沿って延設され、電圧が印加されることで前記感光体を帯電させる荷電粒子を発生させる放電部材と、
前記放電部材を挟んで対向して設けられ、前記放電部材と前記感光体との対向方向に沿って延びる一対のシールドと、
前記放電部材と前記一対のシールドのうちの少なくとも一方との間の領域に、前記シールドに向かう荷電粒子を前記感光体に向かう方向へ曲げる力を発生させる磁場を印加する磁場印加手段と、を備え、
前記磁場印加手段は、印加する磁場が前記放電部材と前記感光体との対向方向において前記感光体に近づくにつれて弱くなるように構成されていることを特徴とする帯電器。
【請求項2】
前記磁場印加手段は、前記放電部材と両方の前記シールドとの間の領域に、前記シールドに向かう荷電粒子を前記感光体に向かう方向へ曲げる力を発生させる磁場を印加するように設けられていることを特徴とする請求項1に記載の帯電器。
【請求項3】
前記磁場印加手段は、前記シールドに隣接して配置され、前記所定方向に並んで複数設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の帯電器。
【請求項4】
前記磁場印加手段は、前記シールドに対して前記放電部材が配置された側で前記シールドに隣接して設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の帯電器。
【請求項5】
前記磁場印加手段は、前記シールドに対して前記放電部材が配置された側とは反対側で前記シールドに隣接して設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の帯電器。
【請求項6】
前記放電部材と前記感光体との間に設けられ、前記所定方向に沿って延びるグリッドをさらに備え、
前記磁場印加手段は、前記一対のシールドの対向方向において、前記シールドと、当該シールドに最も近い前記グリッドのグリッド穴との間に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の帯電器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−73194(P2013−73194A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214193(P2011−214193)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】