説明

帯電性子粒子の製造方法、帯電性子粒子

【課題】母粒子表面に帯電性子粒子を固着させてなる表示用粒子を使用した情報表示装置等において、光照射下での駆動においても表示用粒子の帯電特性等が変化することなく、初期性能を長期にわたる反転耐久試験時にも維持できる表示用粒子を構成する帯電性子粒子の製造方法、及びそれを用いて製造される帯電性子粒子の提供である。
【解決手段】母粒子表面に帯電性子粒子を固着させてなる表示用粒子を、少なくとも一方が透明な対向する2枚の基板間に封入し、該基板間に電界を付与することによって前記表示用粒子を移動させて画像情報を表示する情報表示パネルに用いる前記表示用粒子を構成する帯電性子粒子の製造方法であって、架橋剤により架橋された架橋樹脂を含む樹脂微粒子を作製する樹脂微粒子作製工程と、前記樹脂微粒子を、重合開始剤を含む処理液中で該樹脂微粒子中の未反応基及び該重合開始剤を反応させる反応処理工程とを有する帯電性子粒子の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一方が透明な対向する2枚の基板間に封入した表示用粒子を移動させて画像等の情報を表示する情報表示パネルに用いる複合型の表示用粒子を構成する帯電性子粒子の製造方法、及びそれを用いて製造される帯電性子粒子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
情報表示装置として液晶表示装置(LCD)が広く普及している。しかし、一般に液晶表示装置は電力消費量が大きく、視野角が狭いなどの欠点があることが知られていた。そこで、液晶表示装置に代わるものとして、少なくとも一方が透明な2枚の基板(例えばガラス基板)間に隔壁によって仕切られた複数のセルを形成し、このセル内に粒子群として構成した表示用粒子を封入して、この表示用粒子を移動させて画像等の情報を表示する情報表示用パネルについての提案がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記のような情報表示用パネルは、例えば基板間の表示用粒子を、画像等の情報に応じて電気的に移動させることにより所期の画像等の情報を表示するようにしている。ここでは、表示要求のあった情報に応じて、粒子群(表示用粒子)が基板間の空間を繰り返し移動する。よって、表示用粒子とする粒子群を構成する、均質で耐久性を備えた表示用粒子が求められる。
【0004】
そこで、表示用粒子に対して、その電気特性の安定化や繰り返し表示書き換えを行った場合の耐久性を改善する意図で、表示用粒子の母体となる大きな粒子に、他の微小粒子を付加した、いわゆる複合型の粒子に係る技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。この技術は、母粒子の表面に子粒子を付加した複合型の表示用粒子、およびこれを用いる情報表示用パネルについて開示する。所定条件の子粒子を母粒子に付加した形態とすることで、表示書き換えのために表示用粒子を繰り返し移動させた場合の耐久性を改善することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2003/050606号パンフレット
【特許文献2】特開2006−72283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した母粒子の表面に帯電した子粒子(帯電性子粒子)を付加した複合型の表示用粒子を、情報表示用パネルを備えた情報表示装置に用いると、特に強い光照射下で表示用粒子の表面特性が変化し、帯電特性変化などによって表示コントラスト低下等の現象が起こることがあった。そして、これらにより、初期性能を長期にわたって維持できない問題があった。
【0007】
本発明は、上記の状況に鑑みなされたもので、母粒子表面に帯電性子粒子を固着させてなる表示用粒子を使用した情報表示装置等において、光照射下での駆動においても表示用粒子の帯電特性等が変化することなく、初期性能を長期にわたって維持できる表示用粒子を構成する帯電性子粒子の製造方法、及びそれを用いて製造される帯電性子粒子を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、下記本発明により解決される。すなわち、本発明は、
〔1〕 母粒子表面に帯電性子粒子を固着させてなる表示用粒子を、少なくとも一方が透明な対向する2枚の基板間に封入し、該基板間に電界を付与することによって前記表示用粒子を移動させて画像情報を表示する情報表示パネルに用いる前記表示用粒子を構成する帯電性子粒子の製造方法であって、
架橋剤により架橋された架橋樹脂を含む樹脂微粒子を作製する樹脂微粒子作製工程と、
前記樹脂微粒子を、重合開始剤を含む処理液中で該樹脂微粒子中の未反応基及び該重合開始剤を反応させる反応処理工程とを有する帯電性子粒子の製造方法、
〔2〕 前記樹脂微粒子作製工程が、重合性の単量体及び架橋剤を含む重合成分を重合させて架橋樹脂を含む樹脂微粒子とする工程であり、前記架橋剤が分子中にビニル基を2つ以上有する化合物であり、該架橋剤が前記重合成分全体中の20mol%以上含まれる〔1〕に記載の帯電性子粒子の製造方法、
〔3〕 前記反応処理工程が、前記樹脂微粒子中に残存するビニル基量を低減させる工程であり、
前記樹脂微粒子の赤外分光吸収スペクトルにおける1600cm-1の吸収強度を100%、1640cm-1の吸収強度を0%として規格化したとき、ビニル基に由来する1630cm-1の吸収強度が10%以下となるまで反応処理する〔2〕に記載の帯電性子粒子の製造方法、
〔4〕 前記重合開始剤が、アゾ系重合開始剤及び有機過酸化物系重合開始剤の少なくともいずれかである〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の帯電性子粒子の製造方法、
〔5〕 前記重合開始剤を含む処理液における重合開始剤濃度が、樹脂微粒子量に対して0.1質量%以上20質量%以下である〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の帯電性子粒子の製造方法、
〔6〕 前記処理液が有機溶剤を含み、該有機溶剤が、キシレン、トルエン、酢酸エチル及びn−酢酸ブチルから選択される1種以上である〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の帯電性子粒子の製造方法、
〔7〕 前記処理液における有機溶剤の含有量が、樹脂微粒子量に対して10質量%以上100質量%以下である〔6〕に記載の帯電性子粒子の製造方法、
〔8〕 前記樹脂微粒子作製工程が、乳化重合法または分散重合法により樹脂微粒子を作製する工程である〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の帯電性子粒子の製造方法、
〔9〕 前記架橋樹脂が、架橋オレフィン樹脂、架橋スチレン樹脂、架橋アクリル樹脂、架橋ウレタン樹脂及び架橋エポキシ樹脂から選択される1つ以上である〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の帯電性子粒子の製造方法、及び
〔10〕 母粒子表面に帯電性子粒子を固着させてなる表示用粒子を、少なくとも一方が透明な対向する2枚の基板間に封入し、該基板間に電界を付与することによって前記表示用粒子を移動させて画像情報を表示する情報表示パネルに用いる前記表示用粒子を構成する帯電性子粒子であって、
〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の帯電性子粒子の製造方法を用いて製造される帯電性子粒子、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、母粒子表面に帯電性子粒子を固着させてなる表示用粒子を使用した情報表示装置等において、光照射下での駆動においても表示用粒子の帯電特性等が変化することなく、初期性能を長期にわたって維持できる表示用粒子を構成する帯電性子粒子の製造方法、及びそれを用いて製造される帯電性子粒子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明により得られる帯電性子粒子を用いて構成された表示用粒子の一例を説明するための模式図である。
【図2】(a)、(b)はそれぞれ情報表示用パネルの一例を示す拡大断面図である。
【図3】(a)、(b)はそれぞれ情報表示用パネルの他の一例を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施形態により説明する。
本実施形態の帯電性子粒子の製造方法は、母粒子表面に帯電性子粒子を固着させてなる表示用粒子を、少なくとも一方が透明な対向する2枚の基板間に封入し、該基板間に電界を付与することによって前記表示用粒子を移動させて画像情報を表示する情報表示パネルに用いる前記表示用粒子を構成する帯電性子粒子の製造方法であって、架橋樹脂を含む樹脂微粒子を作製する樹脂微粒子作製工程と、前記樹脂微粒子を、重合開始剤を含む処理液(以下、単に「処理液」という場合がある)中で該樹脂微粒子中の未反応基及び該重合開始剤を反応させる反応処理工程とを有することを特徴とする。
【0012】
まず、本実施形態の帯電性子粒子の製造方法により得られる帯電性子粒子、及びそれを用いた表示用粒子について、図を参照しながら詳細に説明する。なお、本実施形態において「帯電性子粒子」とは、分子内に極性基を1つ以上有するモノマーを含む重合成分を重合して得られた樹脂微粒子であって、このモノマーを含まないこと以外は同様の重合成分を重合して得られた樹脂微粒子と比べて、帯電量(正、負)が高くもしくは低くなるものを意味する。
【0013】
前記帯電性子粒子(以下、単に「子粒子」という場合がある)は、例えば、後述する情報表示用パネルの少なくとも一方が透明な2枚の基板の間に封入される複合型の表示用粒子の帯電性付与に用いることができ、該表示用粒子は母粒子表面に本実施形態の帯電性子粒子が固着されて構成される。図1は、本実施形態の帯電性子粒子を用いて構成された複合型の表示用粒子の一例を示す模式図である。
【0014】
図1において、表示用粒子31は、母粒子32表面に本実施形態の帯電性子粒子33を固着してなる。すなわち、母粒子32の表面に帯電性子粒子33を固着させて複合型の表示用粒子31として構成される。
【0015】
本実施形態は、上記「固着」により子粒子が母粒子の表面に均一に付加された表示用粒子の表示性能を向上させようとするものである。母粒子の表面に子粒子が均一に配置されている図1に示す表示用粒子31を採用する情報表示用パネルは、表示書き換えを繰り返す場合の耐久性を向上させることが可能である。
ここで、前記「固着」とは、帯電性子粒子33が母粒子32の表面に埋設、接着、粘着などにより固定されているため、繰り返して表示書き換えを行った時に帯電性子粒子33の移動がないものを意味する。
【0016】
後述するように、本実施形態の帯電性子粒子は架橋剤により架橋された架橋樹脂を含み、該架橋剤として後述する分子中にビニル基を2つ以上有する化合物が好適に用いられる。帯電性子粒子に含まれる架橋樹脂を高硬度とするためには、子粒子となる樹脂微粒子の重合において前記架橋剤を大量に用いることとなるが、この場合、重合架橋が進行するとポリマーネットワークの揺らぎが抑制されるため、例えば架橋剤における1つのビニル基が反応すると、他のフリーなビニル基は反応に関与することができなかったり、反応性が低下したりして、未反応の状態でポリマー粒子(子粒子)内に残存することになる。
【0017】
本発明者らが検討した結果、上記未反応のビニル基等の架橋剤に基づく未反応基が一定量以上残存すると、熱や光等の外部刺激に対して、情報表示用パネル内の低分子物質等を吸着、反応し、帯電特性、子粒子表面特性が変化するおそれがあることが判明し、これを用いた情報表示用パネルで駆動の不具合が生じることが懸念された。このため、何らかの処理等により前記未反応のビニル基等を不活性化することが表示用粒子の高耐久化のために有効である。本実施形態においては、種々の検討の結果、架橋樹脂を含む樹脂微粒子に対して、重合開始剤を含む処理液中で前記未反応基と該重合開始剤とを反応させる反応処理を行うことにより、上記未反応のビニル基等が残存する樹脂微粒子から、効率的にしかも他の特性を悪化させることなく、該未反応のビニル基等の未反応基量を低減できることが見出された。
【0018】
(樹脂微粒子作製工程)
本工程は、架橋剤により架橋された架橋樹脂を含む樹脂微粒子を作製する工程である。
上記架橋樹脂としては、架橋オレフィン樹脂、架橋スチレン樹脂、架橋アクリル樹脂、架橋ウレタン樹脂及び架橋エポキシ樹脂から選択される1つ以上であることが好適である。これらの架橋樹脂を含むことにより、樹脂微粒子における硬度を十分に高くすることができ、またこれらの架橋樹脂を含むことにより、帯電性、帯電安定性にも優れた帯電性子粒子を得ることができる。
上記架橋樹脂の中では、架橋スチレン樹脂、架橋アクリル樹脂を用いることがより好ましい。
【0019】
前記樹脂微粒子は、例えば重合開始剤を用いて樹脂の原料であるモノマーを重合することによって得ることができる。樹脂微粒子を構成する樹脂の原料のモノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン及びα−クロロスチレン等のスチレン系モノマー;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル及びアクリル酸シクロヘキシル等のアクリル系モノマー;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル及びメタクリル酸シクロヘキシル等のメタクリル系モノマー;1,4−ブタジエン等のブタジエン系モノマー;ビニルシクロヘキサン等のシクロオレフィン系モノマー;ビニルナフタレン、4−ビニルフェニル、1,1−ジフェニルエチレン、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル及びエチレングリコールジメタクリレート等のビニル基を単独もしくは複数有するモノマーなどが挙げられる。これらのビニル基含有モノマーを単独でもしくは複数種組み合わせて使用してもよい。
【0020】
本実施形態では、樹脂微粒子は架橋剤により架橋された架橋樹脂を含むが、該架橋は前記モノマーの重合中に行われてもよいし、重合後に行われてもよい。架橋剤としては、微粒子の強度をより向上させるという観点から、ビニル基を少なくとも2つ以上有する化合物を用いることが好ましい。その意味では、前記ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル、エチレングリコールジメタクリレート等は本実施形態における架橋剤に相当する。
【0021】
上記架橋剤は、該架橋剤を含む重合成分全体中(すなわち、重合後の架橋樹脂中においては、架橋剤に由来する構成単位が前記架橋樹脂を構成する原料成分に由来する構成単位全体中)の20mol%以上含まれることが好ましい。架橋剤の含有量を上記範囲とすることにより、樹脂微粒子における硬度を十分高くすることができ、また、前述の帯電性子粒子における未反応のビニル基量を所望の範囲とすることができる。
前記架橋剤の含有量は、上記観点から、25mol%以上55mol%以下であることがより好ましい。
【0022】
前記モノマーの重合は、乳化重合法、非水分散重合法、シード重合法等に従って行うことができる。
具体的には、乳化重合法としては界面活性効果を有する乳化剤として用いて、適宜選択した溶媒中で、重合開始剤の存在下で行うことができる。重合に用いる溶媒は、特に限定されず、通常の乳化重合法で用いられる溶媒を使用することができ、例えば、精製水や精製水とメタノールとの任意比率の混合液等がある。
また、前記非水分散重合法としては上記モノマー、重合開始剤及び分散安定剤を適切な溶媒に溶解させた溶液を所定の温度下に置いて、上記モノマーを重合させる。得られた重合溶液を濾過し、適宜選択した溶媒で洗浄した後、次いで遠心分離機等によって微小粒子を回収し、所定の温度のオーブン等で乾燥させることによって、樹脂微粒子を得ることができる。
【0023】
なお、子粒子製造の際に採用する乳化重合は、従来において粒子を製造する際に用いた要領で同様に実施すればよく、場合により、乳化剤を使用しても、使用しなくてもよい。乳化剤を使用する場合には、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸アンモニウム、セチル硫酸ナトリウム、セチル硫酸アンモニウム、ステアリル硫酸ナトリウム、ステアリル硫酸アンモニウム、オレイル硫酸ナトリウム、オレイル硫酸アンモニウムなどの直鎖および分岐アルキル硫酸エステル塩;ラウリルスルホン酸ナトリウム、ラウリルスルホン酸アンモニウム、ミリスチルスルホン酸ナトリウム、ミリスチルスルホン酸アンモニウム、セチルスルホン酸ナトリウム、セチルスルホン酸アンモニウム、ステアリルスルホン酸ナトリウム、ステアリルスルホン酸アンモニウム、オレイルスルホン酸ナトリウム、オレイルスルホン酸アンモニウムなどの直鎖および分岐アルキルスルホン酸塩;α−オレフィンスルホン酸ナトリウム、α−オレフィンスルホン酸アンモニウムなどのα−オレフィンスルホン酸塩;ノニルフェノール硫酸エステルナトリウム塩、ノニルフェノール硫酸エステルアンモニウム塩、ドデシルフェノール硫酸エステルナトリウム塩(ラウリル硫酸エステルナトリウム塩)、ドデシルフェノール硫酸エステルアンモニウム塩(ラウリル硫酸エステルアンモニウム塩)などのアルキルフェノール硫酸エステル塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム)、ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム(ラウリルベンゼンスルホン酸アンモニウム)などのアルキルベンゼンスルホン酸塩;ブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ブチルナフタレンスルホン酸アンモニウムなどのアルキルナフタレンスルホン酸塩;ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、モノオクチルスルホコハク酸ナトリウムなどのアルキルスルホコハク酸塩;ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム(ラウリルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム)、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸アンモニウム(ラウリルジフェニルエーテルジスルホン酸アンモニウム)などのアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物の塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンセチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンセチルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンステアリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンステアリルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸アンモニウムなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステルナトリウム塩、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩などのポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体の硫酸エステルナトリウム塩、ポリオキシエチレン−ポリオキシブチレンブロック共重合体の硫酸エステルナトリウム塩などのポリオキシエチレン−ポリオキシアルキレンブロック共重合体の硫酸エステル塩;ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体のドデシルエーテルの硫酸エステルナトリウム塩、ポリオキシエチレン−ポリオキシブチレンブロック共重合体のドデシルエーテルの硫酸エステルナトリウム塩などのポリオキシエチレン−ポリオキシアルキレンブロック共重合体のアルキルエーテルの硫酸エステル塩等が挙げられ、これらを単独で、あるいは2種類以上を組合せて使用してもよい。
【0024】
上記バインダー樹脂のモノマーの重合に用いるモノマー重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、及び過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;過酸化水素水、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルブタノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネイト、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、及びt−ブチルパーオキシイソブチレート等の有機過酸化物;2,2’−アゾビス[2−(トリフルオロメチルスルホン酸−2−メチルイミダゾリン−2−イル)]プロパン、2,2’−アゾビス[2−(2−メチルイミダゾリン−2−イル)]プロパン塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−メチルイミダゾリン−2−イル)]プロパン硫酸塩、2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン)塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(トリフルオロメチルベンゼンスルホン酸−2−メチルイミダゾリン−2−イル)プロパン、2,2’−アゾビス[2−(トルエンスルホン酸−2−メチルイミダゾリン−2−イル)プロパン、2,2’−アゾビス[2−(ベンゼンスルホン酸−2−メチルイミダゾリン−2−イル)プロパン等のイミダゾリン基を有するアゾ開始剤;4,4’−アゾビス[4−シアノ吉草酸(メチルピリジン)アミド]等のピリジン基を有するアゾ開始剤;4,4’−アゾビス[4−シアノ吉草酸(メチルアミン)アミド]、4,4’−アゾビス[4−シアノ吉草酸(メチルシクロヘキシルアミン)アミド]、2,2−アゾビス(2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド、2,2'−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド等のアミノ基を有するアゾ開始剤;4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等のその他のアゾ開始剤が挙げられ、これらを単独で、あるいは2種類以上を組合せて使用してもよい。
これらの中で、残留重合性単量体を少なくすることができることから、有機過酸化物が好ましく、有機過酸化物エステル化合物(パーオキシエステル)がより好ましい。 また、上記重合開始剤の使用量としては、モノマー量に対し、0.03〜80質量%の範囲で用いられるのが好ましい。なお、前記重合開始剤は重合の初期に一括で投入してもよいし、重合中に追加してもよい。
【0025】
また、モノマーの重合の際に用いる分散安定剤としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合物、ポリオキシエチレンポリイソプレン共重合物、ポリビニルエーテル、ポリアクリルアミド、ポリシクロヘキサン、ポリトリシクロデシルメタクリレート、ポリ−4−メチルペンテン−1、シクロオレフィン重合物、エチレン−シクロオレフィン共重合物等が挙げられる。シクロオレフィン重合物としては、ノルボルネン、ノルボルナジエン、メチルノルボルネン、ジメチルノルボルネン、エチルノルボルネン、クロロノルボルネン、クロロメチルノルボルネン、シクロヘキシルノルボルネン、ジシクロヘキシルノルボルネン、フェニルノルボルネン、ジフェニルノルボルネン、ピリジニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン及びそのアルキルもしくはアリール置換体、トリシクロペンタジエン及びそのアルキルもしくはアリール置換体、テトラシクロドデセン及びそのアルキルもしくはアリール置換体等が挙げられる。
【0026】
前記重合における重合温度は、好ましくは50℃以上であり、さらに好ましくは60 〜90℃である。また、重合の反応時間は、好ましくは1〜96時間であり、さらに好ましくは2〜48時間である。
【0027】
上述したようにしてモノマーの重合を行った後、得られた重合溶液を濾過し、適宜選択した溶媒(例えばメタノール、アセトン、n−ヘキサン等)で洗浄し、次いで遠心分離を行うことによって重合物(微粒子)を回収し、適宜選択した温度及び乾燥期間、例えば60〜120℃で2〜24時間乾燥させることによって、架橋樹脂からなる樹脂微粒子を得ることができる。
なお、本実施形態における樹脂微粒子を乳化剤を用いた乳化重合や界面活性剤を用いた分散重合により作製する場合、前記溶媒による洗浄により、樹脂微粒子における残存乳化剤や残存界面活性剤量は5000ppm以下とすることが好ましく、2000ppm以下とすることがより好ましい。
【0028】
上記で得られる樹脂微粒子(すなわち本実施形態の帯電性子粒子)の平均粒子径は、50〜500nmの範囲とすることが好ましく、80〜350nmの範囲とすることがより好ましい。樹脂微粒子の平均粒子径が50nm以上であると、母粒子への樹脂子粒子の埋め込み時に該樹脂子粒子が完全に埋め込まれてしまうことが防止され、複合構造を有する粒子として十分な使用耐久性能を得ることができる。一方、樹脂子粒子の平均粒子径が500nm以下であると、樹脂子粒子の母粒子への埋め込みが困難になったり、埋め込み時に母粒子が変形、破損することが防止され、複合構造を有する粒子を良好に作製することができる。
【0029】
(反応処理工程)
前記の樹脂微粒子中には、未反応のビニル基等の架橋剤に基づく未反応基がかなり存在している。本工程は、前記工程により得られた樹脂微粒子に対して、重合開始剤を含む処理液中で、未反応のビニル基等の未反応基と該重合開始剤とを反応させ、未反応基量を低減させる反応処理工程である。
【0030】
本工程に用いられる重合開始剤としては、未反応のビニル基等の未反応基と反応して、該未反応基量を低減させることが可能なものであれば特に制限されず、例えば、ラジカル発生剤、酸発生剤、さらには酸化剤などを挙げることができる。
【0031】
上記ラジカル発生剤としては、熱や光によりラジカルを発生して残存モノマーを重合により消失させるものであれば特に限定されない。熱によりラジカルを発生するものとしては、例えば、アゾ系、パーオキシジカーボネート系、パーオキシエステル系、ジアシルパーオキサイド系、ハイドロパーオキサイド系、ジアルキルパーオキサイド系、パーオキシケタール系、ケトンパーオキサイド系、有機過酸化物系、過硫酸塩、過酸化水素、酸化剤−ジメチルアニリン系、アルキルホウ素系、過ヨウ素酸ソーダ系、過マンガン酸カリウム系、セリウム塩、レドックス系などの重合開始剤が挙げられる。また、光によりラジカルを発生するものとしては、例えば、アセトフェノン系、ベンゾフェノン系、ミヒラーケトン、ベンゾイン系、ベンゾインエーテル系、ベンジルジメチルケタール系、ベンゾイルベンゾエート系、α−アシロキシムエステル系、テトラメチルチウラムモノサルファイド、チオキサンソン系などの光重合開始剤が挙げられる。これらの中でもアゾ系重合開始剤及び有機過酸化物系重合開始剤の少なくともいずれかであることが、光照射での駆動により性能変化をもたらす要因となる移行物質(ラジカル)の発生を伴わない、あるいは、粒子内部への浸透助剤として用いる有機溶媒への溶解性の点で特に好ましい。
【0032】
また、上記のラジカル発生剤のうち、帯電性への影響を小さくする必要性から、末端に酸・塩基性の弱い(解離定数の小さい)官能基を有し、後に適宜選択した溶媒(例えば、メタノール、アセトン、n−ヘキサン等)により除去可能な油溶性のラジカル発生剤が好ましい。上記酸・塩基性の弱い基としては、例えば、メチル基、エチル基等の飽和脂肪族炭化水素基、水酸基、環状化合物におけるシアノ基、水酸基などが挙げられる。
【0033】
本実施形態で用いられるより具体的なラジカル発生剤としては、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエイト、2,5−ジメチル−2,5−ジ(パーオキシベンゾエート)ヘキシン−3、クメンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、4,4'−アゾビス(4−シアノペンタ酸)、2,2'−アゾビス(2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオアミド)等のアゾ化合物が挙げられる。これらは、単独或いは2種以上併用して用いることができる。
【0034】
前記酸発生剤としては、例えば、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホン酸クロリド、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホン酸ナトリウム、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホン酸カリウム、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホン酸メチル、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホン酸エチル、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホン酸カプリル、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホン酸セチルなどや、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホン酸クロリド、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホン酸ナトリウム、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホン酸カリウム、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホン酸メチル、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホン酸エチル、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホン酸ヘキシル、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホン酸ラウロイル、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホン酸ステアリルなど、1,2−ベンゾキノン−2−ジアジド−4−スルホン酸クロリド、1,2−ベンゾキノン−2−ジアジド−4−スルホン酸ナトリウム、1,2−ベンゾキノン−2−ジアジド−4−スルホン酸カリウム、1,2−ベンゾキノン−2−ジアジド−4−スルホン酸メチル、1,2−ベンゾキノン−2−ジアジド−4−スルホン酸エチル、1,2−ベンゾキノン−2−ジアジド−4−スルホン酸カプロイル、1,2−ベンゾキノン−2−ジアジド−4−スルホン酸デシル、1,2−ベンゾキノン−2−ジアジド−4−スルホン酸ステアリル、1,2−ベンゾキノン−2−ジアジドなどを挙げることができる。
【0035】
また、その他、次のようなものも用いることができる。すなわち、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、1,16−ヘキサデカンジオールなどの脂肪族ジオールと1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4(または−5)−スルホン酸クロリドとの縮合物、フエノール、ヒドロキノン、カテコール、レゾルシノール、ピロガロール等の水酸化芳香族と1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4(または−5)スルホン酸クロリドとの縮合物、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフエノン、2,2′,4,4′−テトラヒドロキシベンゾフエノン、2,2′,3,4,4′−ペンタヒドロキシベンゾフエノン、などのポリヒドロキシベンゾフエノンと1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4(または−5)スルホン酸クロリドとの縮合物、例えば、トリヒドロキシベンゾフエノンジ(1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホン酸)エステル、トリヒドロキシベンゾフエノントリ(1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホン酸)エステル、テトラヒドロキシベンゾフエノンジ(1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホン酸)エステル、テトラヒドロキシベンゾフエノントリ(1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホン酸)エステル、テトラヒドロキシベンゾフエノンテトラ(1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホン酸)エステル、トリヒドロキシベンゾフエノンジ(1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホン酸)エステル、トリヒドロキシベンゾフエノントリ(1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホン酸)エステル、テトラヒドロキシベンゾフエノンジ(1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホン酸)エステル、テトラヒドロキシベンゾフエノントリ(1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホン酸)エステル、テトラヒドロキシベンゾフエノンテトラ(1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホン酸)エステルなどや、2−ジアゾ−5,5−ジメチル−シクロヘキサン−1,3−ジオン、2,2−ジメチル−5−ジアジド−4,6−ジケト−1,3−ジオキサンなどである。
【0036】
これらの中では、アリールジアゾニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、ジアルキルフェナシルスルホニウム塩およびスルホン酸エステル化合物からなる群から選ばれるいずれか1種以上の光酸発生剤を用いることが好ましく、特に、近赤外線の照射により、ブレンステッド酸またはルイス酸を発生する光酸発生剤が好適である。
【0037】
前記酸化剤が用いられるのは、例えば、本実施形態で好ましく用いられるモノマー重合開始剤がある程度水溶性のレドックス系をなすような、酸化剤と還元剤の組み合わせの場合である。
上記酸化剤としては、例えば過酸化水素、過硫酸アンモニウムや過硫酸カリウム等の過硫酸塩、t−ブチルハイドロパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド、第二セリウム塩、過マンガン酸塩、亜塩素酸塩、次亜塩素酸塩等が挙げられる。この中でも過酸化水素が特に好ましい。
【0038】
上記還元剤は、当該酸化剤とレドックス系を形成しうるものであり、具体的には亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム等の亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、酢酸コバルト、硫酸銅、硫酸第一鉄、L−アスコルビン酸またはL−アスコルビン酸アルカリ金属塩等を挙げることができる。中でも、L−アスコルビン酸またはL−アスコルビン酸アルカリ金属塩が特に好ましい。
【0039】
上記反応処理の方法としては、前記重合開始剤を含む液中に前記工程により作製された樹脂微粒子が分散され、該重合開始剤と樹脂微粒子中の未反応基とが反応可能な処理であれば特に制限されず、前記工程において作製された樹脂微粒子を予め調製された処理液中に分散させて行ってもよいし、前記工程における重合後の重合体分散液を濾過せず、後述するようにこの分散液に重合開始剤を加えることにより、樹脂微粒子の作製と反応処理とを連続的に行ってもよい。
【0040】
本実施形態における重合開始剤を含む処理液(反応液)における重合開始剤の濃度は、樹脂微粒子量に対して0.1質量%以上20質量%以下とすることが好ましい。処理液中の重合開始剤濃度をこの範囲とすることにより、短時間で樹脂微粒子中の残存ビニル基量を効率的に低減させることができる。
前記処理液における重合開始剤の濃度は、0.5質量%以上10質量%以下とすることがより好ましく、1質量%以上5質量%以下とすることがさらに好ましい。
【0041】
また、上記重合開始剤の添加方法としては、少量ずつ連続的に添加しても、一括で添加してもよく、特に限定されるものではないが、一括投入による発熱、急激な反応を抑える観点から、少量ずつ連続的に添加することが好ましい。
なお、前記本実施形態における処理液中の重合開始剤濃度の好適範囲は、上記のように重合開始剤を連続的に添加する場合には、全量を添加し終わったときの液中の濃度である。
【0042】
本実施形態における処理液は、基本的に水が主体の溶液であるが、有機溶剤を含むことが好ましい。処理液中に有機溶剤を含むことにより、処理中に樹脂微粒子を膨潤させることが可能となり、微粒子中の未反応基を効率的に重合開始剤と反応させることができるようになる。
【0043】
本実施形態に用いることが可能な有機溶剤としては、特にモノマーやポリマーの溶剤として使用されるものが好ましく、例えばキシレン、トルエン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素;シクロヘキサン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素;酢酸エチル、n−酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3メトキシブチルアセテート等のエステル系;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒等の有機溶剤を用いることができ、またこれらの2種以上からなる混合物であっても構わない。
【0044】
これらの中でも、芳香族炭化水素及び脂環式炭化水素が好ましく、芳香族炭化水素がより好適に用いられる。より具体的には、キシレン、トルエン、酢酸エチル及びn−酢酸ブチルから選択される1種以上を用いることが好ましい。
処理液中の有機溶媒の含有量は、樹脂微粒子量に対して10質量%以上100質量%以下とすることが好ましい。含有量をこの範囲とすることにより、樹脂微粒子を適度に膨潤させつつ微粒子中に残存するビニル基等の未反応基量を、効率的に低減させることができる。上記有機溶媒の含有量は30質量%以上80質量%以下とすることがより好ましい。
【0045】
また本実施形態において、反応処理時の処理分散液(処理液+樹脂微粒子)中の樹脂微粒子固形分量としては1質量%以上30質量%以下とすることが好ましく、2質量%以上20質量%以下とすることがより好ましい。処理分散液中の樹脂微粒子固形分量を上記範囲とすることにより、短時間で処理むらなく、効率的に反応処理を行うことができる。
【0046】
上記反応処理は、例えば加熱することにより行われてもよく、かかる加熱温度としては、特に限定されるものではないが、30〜100℃の範囲で行うことが好ましく、より好ましくは40〜90℃の範囲である。
加熱温度が低すぎると、反応処理の効果(未反応基量低減効果)が出にくい場合があり、加熱温度が高すぎると樹脂微粒子の物性が悪化する場合がある。
【0047】
また、反応処理時間は、適宜調整することができるが、例えば、2〜48時間とすることが好ましく、より好ましくは4〜12時間である。
処理時間が長すぎると、樹脂微粒子(帯電性子粒子)の耐水性が低下する場合があり、処理時間が短すぎると、反応処理が十分でなく、表示用粒子として使用したときに耐久性が低下する場合がある。
また、処理液に浸漬して反応処理を行った樹脂微粒子は、その後適宜選択した溶媒(例えば、メタノール、アセトン、n−ヘキサン等)で軽く洗浄した後、80℃以上で加熱し、水分をできる限り除去するのが好ましい。
【0048】
本実施形態における反応処理は、特に樹脂微粒子中に残存するビニル基量を低減させるために有効である。そして、上記反応処理によるビニル基量の低減の度合いは、樹脂微粒子の赤外吸収スペクトルの解析により判断することができる。
すなわち、前記赤外分光吸収スペクトルにおける1630cm-1の吸収(ピーク)がビニル基に由来するため、ベンゼン環に由来する1600cm-1の吸収強度を100%、1640cm-1の吸収強度を0%として規格化したとき、1630cm-1の吸収強度(%)はほぼ粒子中の残存ビニル基量に相当する。
【0049】
本実施形態では、1630cm-1の吸収強度を10%以下となるまで反応処理することが好ましい。前記吸収強度が10%以下であれば、本実施形態の帯電性子粒子を用いてなる複合型の表示用粒子を用いた情報表示用パネルにおいて表示書き換えを繰り返し行ったときに、表示用粒子の帯電性を安定化させることができ、それによって該表示用粒子の繰り返し表示書き換え時の耐久性、さらには前記情報表示用パネルの表示安定性を向上させることが可能となる。
前記1630cm-1の吸収強度は8%以下とすることが好ましく、5%以下とすることがより好ましい。理想的には下限は0%である。なお、赤外吸収スペクトルの測定方法については後述する。
【0050】
以上説明した工程を経ることにより、本実施形態の帯電性子粒子を得ることができるが、本実施形態の帯電性子粒子の製造方法は、前記樹脂微粒子作製工程と反応処理工程とを少なくとも有していればよく、その他の工程を含んでもよい。該その他の工程としては、特に制限されるものではない。
【0051】
また、本実施形態の製造方法により得られた帯電性子粒子は、前記表示用粒子の繰り返し表示における耐久性を向上させるためには、子粒子が母粒子からはがれ難いことだけでなく、母粒子に付着、固着した子粒子が変形し難いことも必要である。この観点から、本実施形態の帯電性子粒子においては、一定加重を加えた時に、下記式(1)で示される変形率が30%以下であることが好ましい。
変形率(%)={〔最密充填高さ(mm)−加重後の高さ(mm)〕/最密充填高さ(mm)}×100 ・・・(1)
上記変形率をこの範囲とすることにより、母粒子に埋め込まれた子粒子が母粒子からはがれ難くなるだけでなく、母粒子からはがれた子粒子、あるいは母粒子に固着した子粒子ともに変形し難くなり、表示用粒子として繰り返し使用するときの耐久性を向上させることができる。上記変形率は25%以下であることがより好ましい。
【0052】
前述のように、本実施形態の製造方法により得られた帯電性子粒子は、図1に示すような子粒子が母粒子表面に付着または固着されてなる表示用粒子の当該子粒子として用いられる。以下、前記帯電性子粒子を用いた表示用粒子について説明する。
図1における母粒子32には、その主成分となる樹脂に、必要に応じて、従来と同様に、荷電制御剤、着色剤、無機添加剤等を含ませることができる。以下に、樹脂、着色剤、その他添加剤を例示する。
【0053】
樹脂の例としては、ウレタン樹脂、ウレア樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリルウレタンシリコーン樹脂、アクリルウレタンフッ素樹脂、アクリルフッ素樹脂、シリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレンアクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ブチラール樹脂、塩化ビニリデン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、メチルペンテン樹脂、シクロオレフィン系樹脂等が挙げられ、2種以上混合することもできる。特に、基板との付着力を制御する観点から、スチレンアクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、メチルペンテン樹脂、シクロオレフィン系樹脂が好適である。
【0054】
荷電制御剤としては、特に制限はないが、負荷電制御剤としては例えば、サリチル酸金属錯体、含金属アゾ染料、含金属(金属イオンや金属原子を含む)の油溶性染料、4級アンモニウム塩系化合物、カリックスアレン化合物、含ホウ素化合物(ベンジル酸ホウ素錯体)、ニトロイミダゾール誘導体等が挙げられる。正荷電制御剤としては例えば、ニグロシン染料、トリフェニルメタン系化合物、4級アンモニウム塩系化合物、ポリアミン樹脂、イミダゾール誘導体等が挙げられる。その他、超微粒子シリカ、超微粒子酸化チタン、超微粒子アルミナ等の金属酸化物、ピリジン等の含窒素環状化合物及びその誘導体や塩、各種有機顔料、フッ素、塩素、窒素等を含んだ樹脂等も荷電制御剤として用いることもできる。
【0055】
着色剤としては、以下に例示するような、有機または無機の各種、各色の顔料、染料が使用可能である。
黒色着色剤としては、カーボンブラック、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭等がある。
青色着色剤としては、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBC等がある。
【0056】
赤色着色剤としては、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッド、カルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B、C.I.ピグメントレッド2等がある。
黄色着色剤としては、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファーストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、C.I.ピグメントイエロー12等がある。
緑色着色剤としては、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、C.I.ピグメントグリーン7、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG等がある。
【0057】
橙色着色剤としては、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダンスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダンスレンブリリアントオレンジGK、C.I.ピグメントオレンジ31等がある。
紫色着色剤としては、マンガン紫、ファーストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ等がある。
白色着色剤としては、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛等がある。
体質顔料としては、バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイト等がある。また、塩基性、酸性、分散、直接染料等の各種染料として、ニグロシン、メチレンブルー、ローズベンガル、キノリンイエロー、ウルトラマリンブルー等がある。
【0058】
無機系添加剤の例としては、酸化チタン、亜鉛華、硫化亜鉛、酸化アンチモン、炭酸カルシウム、鉛白、タルク、シリカ、ケイ酸カルシウム、アルミナホワイト、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、カドミウムオレンジ、チタンイエロー、紺青、群青、コバルトブルー、コバルトグリーン、コバルトバイオレット、酸化鉄、カーボンブラック、マンガンフェライトブラック、コバルトフェライトブラック、銅粉、アルミニウム粉などが挙げられる。
これらの顔料および無機系添加剤は、単独であるいは複数組み合わせて用いることができる。このうち特に黒色顔料としてカーボンブラックが、白色顔料として酸化チタンが好ましい。また、上記着色剤を配合して所望の色の表示用粒子を作製できる。
【0059】
母粒子33を得るためには、まず、前記樹脂を凍結粉砕機で粉砕し、これを乾燥、秤量する。これと並行して、樹脂に配合する配合剤(例えば二酸化チタン)を準備してこれを秤量する。秤量したベース樹脂と配合剤とをへンシェルミキサーで予備混合し、これを乾燥してから、2軸混練り機を用いて混練りして押出して、例えば直径2mm、長さ5mm程度のペレットを製造する。
次いで上記ペレットを、更に凍結粉砕機で例えば粒子径100〜250μm程度となるよう粗粉砕して粗粉砕品を得る。この粗粉砕品を乾燥してから、粒子径が8〜10μm程度となるように微粉砕処理し、分級して目的サイズの母粒子を得る。ここまでの工程は、常法により樹脂原料を混練り、粉砕、分級して母粒子を得るものと同様である。
【0060】
後述する母粒子32表面に帯電性子粒子33を均一に付加するには、母粒子32に熱処理を施して球状化することが有効である。このため本実施形態では、上記のように得た母粒子を更に熱処理装置で処理する。ここでの熱処理装置は、例えば粒子を熱風中に噴出し、分散させ、熱風により該粒子を溶融状態とし、表面張力により球状化させるものである。上記熱処理装置としては、溶融球状化装置(MR−3、日本ニューマチック工業(株)製)等を用いることができる。
このように熱処理(サフュージョン処理)を施した処理済母粒子は、その表面に子粒子を付加するとき(子粒子複合化処理をするとき)に、いわゆる子粒子の自己組織化配列(Ordered Mixture)が円滑に進行して、母粒子表面に子粒子が均一に配置付加できる。よって、子粒子複合化処理で、球形母粒子の表面に子粒子が均一配置付加されている理想的形状の複合型粒子を製造できる。
【0061】
表示用粒子31は、上記のようにして得た母粒子32に本実施形態による帯電性子粒子33を埋設(固着)することによって得られる。埋設は、母粒子32と帯電性子粒子33とを、高速攪拌機を用いて混合・攪拌することによって行うことができる。高速攪拌機としては、ヘンシェルミキサー(商品名、三井鉱山社製)、スーパーミキサー(商品名、川田製作所社製)、Qミキサー(商品名、三井鉱山社製)、メカノフュージョンシステム(商品名、ホソカワミクロン社製)、ノビルタミル(商品名、ホソカワミクロン(株)製)、メカノミル(商品名、岡田精工社製)、ハイブリダイザー(商品名、奈良機械製作所製)等が挙げられる。
【0062】
上記母粒子32に帯電性子粒子33を埋設することによって得られる複合型粒子(表示用粒子)には、無機物微粒子を外添剤として添加することができる。
上記外添剤としては、例えば、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化タングステン、酸化イットリウム、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、窒化チタン等が挙げられる。この中ではシリカ、酸化チタンが好ましい。また、これらの無機物微粒子の平均一次粒径は、1〜300nmの範囲が好ましく、5〜100nmの範囲がより好ましい。
【0063】
上記無機物微粒子には、表面処理を行うこともできる。
無機物微粒子に正帯電性を付与できる表面処理剤としては、例えば、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジプロピルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、モノブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジオクチルアミノプロピルジメトキシシラン、ジブチルアミノプロピルジメトキシシラン、ジブチルアミノプロピルモノメトキシシラン、ジメチルアミノフェニルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン系カップリング剤等が挙げられる。
正帯電性を付与できる無機物微粒子は、特に好ましくはアミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシランまたはジメチルアミノプロピルトリメトキシシランで表面処理したシリカ微粒子である。
【0064】
前記無機物微粒子に負帯電性を付与できる表面処理剤としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、メチルメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、tert−ブチルジメチルクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のシラザン、クロロシラン、アルコキシシラン系カップリング剤が挙げられる。
負帯電性を付与できる無機物微粒子は、特に好ましくはヘキサメチルジシラザンで表面処理したシリカ微粒子である。
【0065】
表面処理は、無機物微粒子と表面処理剤とを撹拌することによって行われる。さらに溶媒を加えてもよく、加熱することにより処理を促進することもできる。また、表面処理剤の量および処理時間、温度を変えることによって、また正帯電性の表面処理剤と負帯電性の表面処理剤とを併用することで帯電量を調整できる。
【0066】
得られた表示用粒子は、平均粒子径d(0.5)が、1〜20μmの範囲であり、均一で揃っていることが好ましい。平均粒子径d(0.5)がこの範囲より大きいと表示上の鮮明さに欠ける場合があり、この範囲より小さいと粒子同士の凝集力が大きくなりすぎるために表示用粒子としての移動に支障をきたすようになる場合がある。
【0067】
また、前記表示用粒子の粒子径分布に関しては、下記式に示される粒子径分布Spanを5未満とすることが好ましく、3未満とすることがより好ましい。
Span=(d(0.9)−d(0.1))/d(0.5)
(上記式中、d(0.5)は粒子の50体積%がこれより大きく、50体積%がこれより小さいという粒子径をμmで表した数値、d(0.1)はこれ以下の粒子の比率が10体積%である粒子径をμmで表した数値、d(0.9)はこれ以下の粒子が90体積%である粒子径をμmで表した数値である。)
上記式で表されるSpanを5未満に収めることにより、各表示用粒子のサイズが揃い、均一な表示用粒子としての移動が可能となる。
【0068】
さらにまた、帯電極性が互いに異なる2種類の表示用粒子を用いた情報表示パネルを使用する場合には、使用した情報表示パネルを構成する表示用粒子の内、最大の平均粒子径d(0.5)を示す表示用粒子のd(0.5)に対する最小の平均粒子径d(0.5)を示す表示用粒子のd(0.5)の比を10以下とすることが好ましい。すなわち、上記のようにたとえ粒子径分布Spanを小さくしたとしても、互いに帯電特性の異なる表示用粒子が互いに反対方向に動くので、互いの表示用粒子サイズを同程度にして容易に移動できるようにするのが好適であり、それがこの範囲となる。
【0069】
なお、上記の粒子径分布および粒子径は、レーザー回折/散乱法などから求めることができる。すなわち、測定対象となる粒子にレーザー光を照射すると空間的に回折/散乱光の光強度分布パターンが生じ、この光強度パターンは粒子径と対応関係があることから、粒子径および粒子径分布が測定できる。ここで、本実施形態における粒子径および粒子径分布は、体積基準分布から得られたものである。具体的には、Mastersizer2000(Malvern Instruments Ltd.)測定機を用いて、窒素気流中に粒子を投入し、付属の解析ソフト(Mie理論を用いた体積基準分布を基本としたソフト)にて、粒子径および粒子径分布の測定を行なうことができる。
【0070】
次に、上記の実施形態の帯電性子粒子を用いた表示用粒子を使用した情報表示用パネルの例を、図2、図3に基づき説明する。
図2(a)、(b)に示す例では、少なくとも光学的反射率と帯電性とを有する粒子群として構成される、互いに光学的反射率および帯電特性が異なる表示用粒子を少なくとも2種以上(ここでは白色表示用粒子3Waを含んで構成した白色表示粒子群3Wと黒色表示用粒子3Baを含んで構成した黒色表示粒子群3Bを示す)基板間に封入し、隔壁4で形成された各セルにおいて、基板1に設けた電極5(TFT付き画素電極)と基板2に設けた電極6(画素電極)との間に電圧を印加することにより発生する電界に応じて、各表示用粒子を基板1、2と垂直に移動させる。そして、図2(a)に示すように、白色表示粒子群3Wを観察者に視認させて白色ドット表示を行うか、あるいは、図2(b)に示すように、黒色表示粒子群3Bを観察者に視認させて黒色ドット表示を行っている。なお、図2(a)、(b)において、手前にある隔壁は省略している。各電極5、6は、基板1、2の外側に設けても、基板の内側に設けても、基板内部に埋め込むように設けてもよい。
【0071】
また、図3(a)、(b)に示す例では、光学的反射率と帯電性とを有する粒子群として構成される、互いに光学的反射率および帯電特性が異なる表示用粒子を少なくとも2種以上(ここでは白色表示用粒子3Waを含んで構成した白色表示粒子群3Wと黒色表示用粒子3Baを含んで構成した黒色表示粒子群3Bを示す)基板間に封入し、隔壁4で形成された各セルにおいて、基板1に設けた電極5(ライン電極)と基板2に設けた電極6(ライン電極)との間に電圧を印加することにより発生する電界に応じて、表示用粒子を基板1、2と垂直に移動させる。そして、図3(a)に示すように、白色表示粒子群3Wを観察者に視認させて白色ドット表示を行うか、あるいは、図3(b)に示すように黒色表示粒子群3Bを観察者に視認させて黒色ドット表示を行っている。なお、図3(a)、(b)において、手前にある隔壁は省略している。各電極5、6は、基板1、2の外側に設けても、基板の内側に設けても、基板内部に埋め込むように設けてもよい。
【0072】
また、図示しないが、少なくとも光学的反射率と帯電性とを有する粒子群として構成される表示用粒子を1種(例えば白色表示用粒子を含んで構成した白色表示粒子群)を、一方の基板に黒色板を設けた基板間に封入し、各基板に設けた電極間に電圧を印加することにより発生する電界に応じて、表示用粒子を基板1、2と平行方向に移動させることにより、白色表示粒子群を観察者に視認させて白色ドット表示を行うか、あるいは、黒色板の色を観察者に視認させて黒色ドット表示を行ってもよい。
【0073】
また、図2、図3において、基板1、2の各々の外側に外部電界形成手段を設け、該外部電界形成手段間に電圧を印加することにより発生する電界に応じて、表示用粒子を基板1、2と垂直に移動させ、同様に白色ドット表示、あるいは、黒色ドット表示を行うこともできる。
さらに、図2、図3における3つのセルの観察者側に、図の左側から順に赤色カラーフィルター、緑色カラーフィルター、青色カラーフィルターを設けてこれら3つのセルで表示単位を構成して、同様に白色ドット表示、あるいは、黒色ドット表示を行い、各セルにおける表示のさせ方を変えることにより多色カラー表示を行うこともできる。
【0074】
以下、上記情報表示用パネルを構成する各部材について説明する。
前記基板については、少なくとも一方の基板は情報表示用パネル外側から表示用粒子の色が確認できる透明な基板2であり、可視光の透過率が高くかつ耐熱性の良い材料が好適である。基板1は透明でも不透明でもかまわない。基板材料を例示すると、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルサルフォン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリイミド、アクリルなどのポリマーシートや、金属シートのように可とう性のあるもの、および、ガラス、石英などの可とう性のない無機シートが挙げられる。基板の厚みは、2〜5000μmが好ましく、さらに5〜2000μmが好適である。2μmより薄すぎると、強度、基板間の間隔均一性を保ちにくくなり、5000μmより厚いと、薄型情報表示用パネルとする場合に不都合がある。
【0075】
必要に応じて情報表示用パネルに電極を設ける場合の電極形成材料としては、アルミニウム、銀、ニッケル、銅、金等の金属類;酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム、アンチモン錫酸化物(ATO)、亜鉛ドープ酸化インジウム(IZO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、導電性酸化錫、導電性酸化亜鉛等の導電金属酸化物類;ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンなどの導電性高分子類が例示され、適宜選択して用いられる。電極の形成方法としては、上記例示の材料をスパッタリング法、真空蒸着法、CVD(化学蒸着)法、塗布法等で薄膜状に形成する方法や、金属箔(例えば圧延銅箔)をラミネートする方法や、導電部材を溶媒や合成樹脂バインダーに混合して塗布したりする方法が用いられる。視認側であり透明である必要のある表示面側基板2に設ける電極は透明である必要があるが、背面側基板1に設ける電極は透明である必要はない。いずれの場合もパターン形成可能で導電性である上記材料を好適に用いることができる。
なお、電極厚みは、導電性が確保でき光透過性に支障がなければ良く、0.01〜10μm、好ましくは0.05〜5μmである。背面側基板1に設ける電極の材質や厚みなどは上述した表示面側基板に設ける電極と同様であるが、透明である必要はない。
【0076】
必要に応じて基板に設ける隔壁4については、その形状は表示にかかわる表示用粒子の種類や、配置する電極の形状、配置により適宜最適設定され、一概には限定されないが、隔壁の幅は2〜100μmの範囲、好ましくは3〜50μmの範囲に、隔壁の高さは10〜500μmの範囲、好ましくは10〜200μmの範囲に調整される。
また、隔壁4を形成するにあたり、対向する両基板1、2の各々にリブを形成した後に接合する両リブ法、片側の基板上にのみリブを形成する片リブ法が考えられる。本実施形態では、いずれの方法も好適に用いられる。
【0077】
これらのリブからなる隔壁4により形成されるセルは、基板平面方向からみて四角状、三角状、ライン状、円形状、六角状が例示され、配置としては格子状やハニカム状や網目状が例示される。表示面側から見える隔壁断面部分に相当する部分(セルの枠部の面積)はできるだけ小さくした方が良く、表示の鮮明さが増す。
ここで、隔壁4の形成方法を例示すると、金型転写法、スクリーン印刷法、サンドブラスト法、フォトリソ法、アディティブ法が挙げられる。いずれの方法もこの発明の情報表示用パネルに好適に用いることができるが、これらのうち、レジストフィルムを用いるフォトリソ法や金型転写法が好適に用いられる。
【0078】
さらに、表示用粒子で構成する表示粒子群を気体中空間で駆動させる方式の情報表示用パネルに適用する場合には、基板間の表示粒子群を取り巻く空隙部分の気体の管理が重要であり、表示安定性向上に寄与する。具体的には、空隙部分の気体の湿度について、25℃における相対湿度を60%RH以下とすることが好ましく、50%RH以下とすることがより好ましい。この空隙部分とは、図2、図3において、対向する基板1、基板2に挟まれる部分から、電極5、6(電極を基板の内側に設けた場合)、表示粒子群3の占有部分、隔壁4の占有部分(隔壁を設けた場合)、情報表示用パネルシール部分を除いた、いわゆる表示粒子群が接する気体部分を指すものとする。
【0079】
空隙部分の気体は、先に述べた湿度領域であれば、その種類は問わないが、乾燥空気、乾燥窒素、乾燥アルゴン、乾燥ヘリウム、乾燥二酸化炭素、乾燥メタンなどが好適である。この気体は、その湿度が保持されるように情報表示用パネルに封入することが必要であり、例えば、表示用粒子の充填、情報表示用パネルの組み立てなどを所定湿度環境下にて行い、さらに、外からの湿度侵入を防ぐシール材、シール方法を施すことが好ましい。
【0080】
情報表示用パネルにおける基板1と基板2との間隔は、表示粒子群が移動できて、コントラストを維持できればよいが、帯電性の表示用粒子を含んで構成した表示粒子群を気体中空間で駆動させる場合には、通常10〜100μmの範囲、好ましくは10〜50μmの範囲に調整される。対向する基板間の気体中、空間における表示粒子群の体積占有率は5〜70%の範囲が好ましく、さらに好ましくは5〜60%の範囲である。70%を超えると表示粒子群の移動に支障をきたす場合があり、5%に満たないとコントラストが不明確となり易い場合がある。
【実施例】
【0081】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、これらの例によって何ら限定されるものではない。
<各特性の測定方法、評価方法>
帯電性子粒子の平均粒子径、各粒子の摩擦帯電性等の諸特性は下記の方法に従って測定した。
(架橋樹脂の組成)
架橋樹脂の組成は、以下の条件にしたがって得られた樹脂微粒子0.5mgを熱分解させ、分解成分をガスクロマトグラフィー(GC)により分析し、それぞれの重合成分のピーク面積から含有量を計算することにより求めた。重合成分の実含有量は、事前にそれぞれの重合成分単体の重合体を合成し、同様に、それを以下の条件にしたがって熱分解、成分分析し、得られた検量線から算出した。
・GC:島津製作所社製、GCMS−QP2010
・カラム:DB−5(30mm×0.25mmI.D.)
・熱分解条件:590℃、1分
・カラム温度:50〜300℃(5℃/minで昇温)
・検出器温度:200℃
【0082】
(帯電性子粒子の平均粒子径)
帯電性子粒子等の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(日本電子(株)製、FE−SEM7500)を用いて、粒子総個数が200個前後となるように写真を撮影し、その写真より無作為に選んだ100個の粒子の直径(撮影された粒子の最大径)をノギスにて計測し、それらの算術平均を平均粒子径として求めた。
【0083】
(残存ビニル基量)
樹脂微粒子(帯電性子粒子)に残存するビニル基(ビニル基残存率)は以下に示すようにして測定した。
赤外分光計((株)デジラボ製、FTS7000)を用い、粒子の赤外吸収スペクトルを測定する。1600cm-1の吸収強度を100%、1640cm-1の吸収強度を0%として規格化し、それに対する1630cm-1の吸収強度(%)を残存ビニル基量とした。
【0084】
(帯電特性)
−摩擦帯電量−
摩擦帯電量は下記装置を用い、下記の条件にて一般的なブローオフ法に基づいて測定した。
・測定装置:ブローオフ方式帯電量測定機(京セラケミカル社製、TB−203)
・メッシュアパーチャ:32[μm]
・ブロー圧/サクション圧:4.5[kPa]/9.5[kPa]
・キャリア:F96−80(パウダーテック社製)
・振とう回数:1000回
−電荷保持率−
表示用粒子の電荷保持特性(電荷保持率)は、下記に示す条件にて測定した。
(1)銅セルに粒子を層厚300(μm)で充填する。
(2)スコロトロン帯電器(ニードル印加電圧:±10(kV)、グリッド電圧:±1(kV))により粒子表面電位が±1(kV)となるように電荷を付与する。
(3)グラウンド(GND)結線し、室温(22℃)、50RH%にて測定開始する。子粒子の場合は12時間経過した後の表面電位を初期表面電位で割ったものを電荷保持率(%)とした。表示用粒子の場合は同様にして、24時間後経過した時の表面電位を初期表面電位で割ったものを電荷保持率(%)とした。
(4)電荷保持特性の判断は、子粒子の場合は電荷保持率が70(%)以上、表示用粒子の場合は電荷保持率が90(%)以上であれば、電荷保持特性が高いと判断した。
【0085】
(変形率、複合化後の子粒子の変形度合い)
帯電性微粒子(子粒子)の変形率は、子粒子の変形性の程度の指標として、以下のように測定した。具体的にはフローテスター(CFT−500D:島津製作所製)の試料充填室の底を封じて、試料1.0gを投入し、その試料に300kg/cm2(2.94×107Pa)の荷重を加え、下記式(1)にて変形率を算出した。
変形率(%)={〔最密充填高さ(mm)−加重後の高さ(mm)〕/最密充填高さ(mm)}×100 ・・・(1)
なお、最密充填高さとは、前記試料を投入して子粒子が変形せずに球状に保ったまま、最密充填した時の高さであり、下記式(2)から算出される。
最密充填高さ(cm)=投入した子粒子重量(g)/子粒子の比重(g/cm3)/フローテスター充填室の底面積(cm2) ・・・ (2)
樹脂微粒子の変形率が30%以下であれば、複合化の工程で不具合は生じず、30%以上であれば、複合化の工程で、樹脂子粒子の変形・癒着等の不具合が生じる可能性が高い。
【0086】
<樹脂微粒子の製造>
(製造例1)
3口フラスコに、重合開始剤として2,2’−Azobis[2−metyl−N−(2−hydroxyetyl)propionamide](以下、「VA−086」と称する)1.2g、乳化剤としてドデシル硫酸ナトリウム(以下、「SDS」と称する)1.4g及び精製水920gをこの順に加え、VA−086及びSDSを溶解させた。次いで、スチレン(東京化成製)、ジビニルベンゼン(新日鐵化学(株)製)を質量比67:33の割合で混合した混合物200gを加えた後、室温にて20分間窒素ガスでバブリングを行った。フラスコからモノマーがもれないようにフラスコを密閉した後、90℃で8時間重合して白濁の樹脂微粒子分散液を得た。この分散液(エマルション)における樹脂微粒子の分散濃度は13.3質量%であった。
室温まで冷却後、このエマルション250gにメタノール200gを加えた後に、遠心分離機(コクサン(株)製、HL−7)を用いて、6900rpmで1時間遠心分離を行った。1時間後、固形分(樹脂微粒子)と溶液とに固液分離がなされており、溶液は透明であった。溶液を除去した後、メタノール200gを加え、2時間撹拌した後、遠心分離機を用いて、6900rpmで1時間遠心分離を行い、上澄液を除去した。この操作をさらに4回繰り返した後、80℃で1日真空乾燥し、樹脂微粒子aを得た。樹脂微粒子aの平均粒子径は269nmであり、残存ビニル基量は14.2%であった。また、樹脂微粒子aにおけるスチレン/ジビニルベンゼン比(モル%比)は71.2/28.8であった。
【0087】
(製造例2)
製造例1において、SDSの量を1.1g、スチレン、ジビニルベンゼンの質量比を4:6に変更した以外は、製造例1と同様にして樹脂微粒子bを作製した。
樹脂微粒子bの平均粒子径は256nmであり、残存ビニル基量は28.5%であった。また、樹脂微粒子aにおけるスチレン/ジビニルベンゼン比(モル%比)は45.7/54.3であった。
【0088】
(製造例3)
製造例1において、SDSの量を1.0g、スチレン、ジビニルベンゼンの質量比を3:7に変更した以外は、製造例1と同様にして樹脂微粒子cを作製した。
樹脂微粒子cの平均粒子径は252nmであり、残存ビニル基量は40.4%であった。また、樹脂微粒子cにおけるスチレン/ジビニルベンゼン比(モル%比)は34.1/65.9であった。
【0089】
<実施例1>
(樹脂微粒子の反応処理)
製造例1で得られたエマルション250g(樹脂微粒子33.3g含有)を3口フラスコに入れ、そこに予め有機溶剤として酢酸エチル(関東化学製)16.6g(樹脂微粒子量に対して50質量%)に重合開始剤として2,2’−Azobis(isobutyronitrile)(東京化成製、以下「AIBN」と称する)0.998g(樹脂微粒子量に対して3.0質量%)を溶解した混合溶液を添加し、フラスコを密栓した後、窒素雰囲気下、30℃で5時間撹拌を行った。
その後、85℃まで昇温し、5時間処理を行った。室温まで冷却後、製造例1と同様に子粒子の洗浄、乾燥作業を行い、帯電性子粒子Aを得た。処理条件と処理後の子粒子性能をまとめて第1表に示す。
【0090】
(帯電性評価用粒子、表示用粒子としての評価)
上記で得られた帯電性子粒子Aを子粒子とし、これと母粒子とからなる帯電性評価用粒子、さらには表示用粒子を作製し、帯電性評価用粒子、表示用粒子としての性能を評価した。
−帯電性評価用粒子の作製・評価−
帯電性評価用粒子は、母粒子として平均粒子径10μmのエチレン−シクロオレフィンコポリマー球状粒子、子粒子として帯電性子粒子Aを用いて、複合化装置(ホソカワミクロン(株)製、ノビルタミル(NOB−130))を用いて、投入エネルギーが2400kJとなるようにして母粒子に子粒子を埋設して複合化することにより作製した。この帯電性評価用粒子の摩擦帯電量は−17.9μC/gであり、電荷保持率は90.3%であり、負帯電を示し、かつ、表示用パネルにおける駆動に必要な帯電量および高い電荷保持特性を有していた。
【0091】
−表示用粒子の作製・評価−
母粒子としては、以下の黒色母粒子、白色母粒子を用いた。
・黒色母粒子
エチレン−シクロオレフィンコポリマー(ポリプラスチック(株)製、TOPAS6013)100質量部とカーボンブラック(エボニック−デグッサ(株)製、SPECIAL BLACK4)5質量部とを混合し、これを2軸混練機により混練して混練物を得た。これをジェットミル(日本ニューマチック(株)製、ラボジェットミルIDS−LJ型)で粉砕分級することにより、平均粒子径10μmの黒色母粒子を得た。
・白色母粒子
エチレン−シクロオレフィンコポリマー(ポリプラスチック(株)製、TOPAS6013)100質量部と二酸化チタン(石原産業(株)製、タイペークCR−50)100質量部とを混合し、2軸混練機で混練して混練物を得た。これをジェットミル(日本ニューマチック(株)製、ラボジェットミルIDS−LJ型)で粉砕分級することにより、平均粒子径10μmの白色母粒子を得た。
【0092】
・表示用粒子の作製
母粒子としては、前記の平均粒子径10μmの白色母粒子を用い、子粒子としては、前記帯電性子粒子Aを用いた。複合化装置(ホソカワミクロン(株)製、ノビルタミル(NOB−130))を用い、白色母粒子100質量部と子粒子10質量部とを混合し、投入エネルギーが2400kJとなるようにして母粒子に子粒子を埋設して複合化し、白色の複合粒子を作製した。
さらに、この複合粒子100gと外添剤として負帯電性シリカ(HDK H3004:WACKER社製)1.7g(被覆率:350%)とをあらかじめ混合した後、カーボンミキサー処理機(SMT(株)製:HFM−001C)を4000rpmで撹拌して、複合粒子表面に外添剤が均一付与するように処理を行い、白色表示用粒子を作製した。
【0093】
一方、前記黒色母粒子に対し、メラミンホルムアルデヒド縮合樹脂の微粒子(日本触媒(株)製、エポスターS)を、複合化装置(ホソカワミクロン(株)製、ノビルタミル(NOB−130))を用い、黒色母粒子100質量部と微粒子:15質量部とを混合し、投入エネルギーが2400kJとなるようにして、黒色複合粒子を作製した。さらに、黒色複合粒子100gと外添剤として正帯電性シリカ(HDK H3050VP:WACKER社製)4.9g(被覆率:1000%)とをあらかじめ混合した後、カーボンミキサー処理機(SMT(株)製:HFM−001C)を4000rpmで撹拌して、複合粒子表面に外添剤が均一に付与するように処理を行い、黒色表示用粒子を作製した。
【0094】
・表示用パネルの作製
表示用パネルの作製は、前記作製した白色表示用粒子と黒色表示用粒子とを等量組合せて、透明電極(ITO)が製膜されているパネル間に、粒子充填量が5g/m2となるように充填することにより行った。なお、用いたパネルは電極間距離が40μmとなるもので、80Vの電圧印加において2×106(V/m)の電界を表示用粒子に作用させるものとなる。
【0095】
・耐久性の評価
情報表示用パネルによる耐久性の評価は、上記のように作製した評価パネルの電極間に、80Vの電圧を電圧の向きを各々逆に印加することで、評価パネルにおいて白表示および黒表示を行った。そして、白表示および黒表示のそれぞれにおいて、光学濃度計(サカタインクスエンジニアリング(株)製、RD19I)を用いてOD値(光学濃度)の測定を行った。白表示のOD値(WOD)及び黒表示のOD値(BOD)をもとにコントラスト比(CR)(CR=10(BOD-WOD))を算出し、これをパネル性能の指標とした。
耐久試験(常光下耐久性)は蛍光灯(東芝社製、FL20S、D−EDL−D65)を用いて、情報表示用パネル表面の照度が600lxとなるようにした状態で、80V印加での白黒反転表示駆動を50万回行った。評価としては、駆動後のCRがCR>5となる場合を合格(○)とし、CR≦5となる場合を不合格(×)とした。また、評価パネルの強光下での耐久試験(強光下耐久性)は、前記の駆動前に、あらかじめ蛍光灯(東芝社製、FL20S、D−EDL−D65)を用いて情報表示用パネル表面の照度が4000lxとなるようにした状態で4日間照射した後、さらに4000lx照射下で80V印加での白黒反転駆動を50万回行い、駆動後のCRがCR>5となる場合を合格(○)とし、CR≦5となる場合を不合格(×)とした。
各評価結果を、前記帯電性評価用粒子の帯電特性とともに第2表に示す。
【0096】
<実施例2>
実施例1の樹脂微粒子の反応処理において、使用する有機溶剤をトルエン(関東化学製)16.6gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして反応処理を行い帯電性子粒子Bを得、これを用いて同様の評価を行った。
結果をまとめて第1表、第2表に示す。
【0097】
<実施例3>
実施例1の樹脂微粒子の反応処理において、使用する重合開始剤をt−Butylperoxy−2−etylhexanoate(日油(株)製、パーブチルO、以下「PBO」と称する)0.998g(樹脂微粒子量に対して3.0質量%)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして反応処理を行い帯電性子粒子Cを得、これを用いて、同様の評価を行った。
結果をまとめて第1表、第2表に示す。
【0098】
<実施例4>
実施例1の樹脂微粒子の反応処理において、使用する重合開始剤のAIBNの量を1.66g(樹脂微粒子量に対して5.0質量%)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして反応処理を行い帯電性子粒子Dを得、これを用いて、同様の評価を行った。
結果をまとめて第1表、第2表に示す。
【0099】
<実施例5>
実施例1の樹脂微粒子の反応処理において、使用する重合開始剤のAIBNの量を8.31g(樹脂微粒子量に対して25.0質量%)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして反応処理を行い帯電性子粒子Eを得、これを用いて、同様の評価を行った。
結果をまとめて第1表、第2表に示す。
【0100】
<実施例6>
実施例1の樹脂微粒子の反応処理において、処理を行うエマルションを製造例2で得られたエマルション415g(樹脂微粒子33.2g含有)、重合開始剤のAIBN量を1.66g(樹脂微粒子量に対して5.0質量%)、有機溶媒のトルエン量を23.3g(樹脂微粒子量に対して70質量%)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして反応処理を行い帯電性子粒子Fを得、これを用いて、同様の評価を行った。
結果をまとめて第1表、第2表に示す。
【0101】
<実施例7>
実施例1の樹脂微粒子の反応処理において、処理を行うエマルションを製造例3で得られたエマルション520g(樹脂微粒子33.2g含有)、重合開始剤のAIBN量を1.66g(樹脂微粒子量に対して5.0質量%)、有機溶媒のトルエン量を23.3g(樹脂微粒子量に対して70質量%)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして反応処理を行い帯電性子粒子Gを得、これを用いて、同様の評価を行った。
結果をまとめて第1表、第2表に示す。
【0102】
<比較例1>
子粒子として、製造例1における反応処理前の樹脂微粒子aを用いた以外は、実施例1と同様にして帯電性評価用粒子、表示用粒子を作製し、同様の評価を行った。
樹脂微粒子の特性を第1表に、上記評価結果をまとめて第2表に示す。
【0103】
<比較例2>
子粒子として、製造例2における反応処理前の樹脂微粒子bを用いた以外は、実施例1と同様にして帯電性評価用粒子、表示用粒子を作製し、同様の評価を行った。
樹脂微粒子の特性を第1表に、上記評価結果をまとめて第2表に示す。
【0104】
<比較例3>
子粒子として、製造例3における反応処理前の樹脂微粒子cを用いた以外は、実施例1と同様にして帯電性評価用粒子、表示用粒子を作製し、同様の評価を行った。
樹脂微粒子の特性を第1表に、上記評価結果をまとめて第2表に示す。
【0105】
【表1】

【0106】
【表2】

【0107】
第1表の実施例1〜7に示すように、架橋剤としてジビニルベンゼンを多量に配合して重合した帯電性子粒子でも、本実施形態における反応処理を施すことにより残存ビニル基量が大幅に低下することがわかる。特に、有機溶剤と重合開始剤との混合溶液を樹脂微粒子が分散したエマルジョンに添加することで、粒子内部まで重合開始剤が浸透し、粒子表面だけでなく内部の残存ビニル基を効率よく処理できているものと考えられる。また、実施例5の場合は、重合開始剤を樹脂微粒子量に対して20質量%以上添加しても残存ビニル基量はほとんど変化せず、反応処理はほとんど飽和していると考えられる。
これらの帯電性子粒子(残存ビニル基量が10%以下)を用いた複合型の表示用粒子は、実施例1〜6の評価に示すように、表示パネルでの強光下での反復表示耐久試験でも良好なコントラストが維持されることがわかる。一方、本実施形態における反応処理を行わなかった樹脂微粒子では、比較例に示すように残存ビニル基量が多く、また、これらの樹脂微粒子を子粒子とした表示用粒子では、強光下での十分な耐久性が得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明の製造方法により得られる帯電性子粒子を用いて複合化された表示用粒子を採用する情報表示用パネルは、ノートパソコン、電子手帳、PDA(Personal Digital Assistants)と呼ばれる携帯型情報機器、携帯電話、ハンディターミナル等のモバイル機器の表示部、電子書籍、電子新聞、電子マニュアル(電子取扱説明書)等の電子ペーパー、看板、ポスター、黒板やホワイトボード等の掲示板、電子卓上計算機、家電製品、自動車用品等の表示部、ポイントカード、ICカード等のカード表示部、電子広告、情報ボード、電子POP(Point Of Presence、Point Of Purchase advertising)、電子値札、電子棚札、電子楽譜、RF−ID機器の表示部のほか、POS端末、カーナビゲーション装置、時計など様々な電子機器の表示部のほか、表示書換え時にのみ外部電界形成手段や外部書換え手段を用いて表示を書換えるいわゆるリライタブルペーパーとしても好適に用いられる。
【符号の説明】
【0109】
1、2 基板
3W 白色表示粒子群
3Wa 白色表示用粒子
3B 黒色表示粒子群
3Ba 黒色表示用粒子
4 隔壁
5、6 電極
31 表示用粒子
32 母粒子
33 帯電性子粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
母粒子表面に帯電性子粒子を固着させてなる表示用粒子を、少なくとも一方が透明な対向する2枚の基板間に封入し、該基板間に電界を付与することによって前記表示用粒子を移動させて画像情報を表示する情報表示パネルに用いる前記表示用粒子を構成する帯電性子粒子の製造方法であって、
架橋剤により架橋された架橋樹脂を含む樹脂微粒子を作製する樹脂微粒子作製工程と、
前記樹脂微粒子を、重合開始剤を含む処理液中で該樹脂微粒子中の未反応基及び該重合開始剤を反応させる反応処理工程とを有する帯電性子粒子の製造方法。
【請求項2】
前記樹脂微粒子作製工程が、重合性の単量体及び架橋剤を含む重合成分を重合させて架橋樹脂を含む樹脂微粒子とする工程であり、前記架橋剤が分子中にビニル基を2つ以上有する化合物であり、該架橋剤が前記重合成分全体中の20mol%以上含まれる請求項1に記載の帯電性子粒子の製造方法。
【請求項3】
前記反応処理工程が、前記樹脂微粒子中に残存するビニル基量を低減させる工程であり、
前記樹脂微粒子の赤外分光吸収スペクトルにおける1600cm-1の吸収強度を100%、1640cm-1の吸収強度を0%として規格化したとき、ビニル基に由来する1630cm-1の吸収強度が10%以下となるまで反応処理する請求項2に記載の帯電性子粒子の製造方法。
【請求項4】
前記重合開始剤が、アゾ系重合開始剤及び有機過酸化物系重合開始剤の少なくともいずれかである請求項1〜3のいずれかに記載の帯電性子粒子の製造方法。
【請求項5】
前記重合開始剤を含む処理液における重合開始剤濃度が、樹脂微粒子量に対して0.1質量%以上20質量%以下である請求項1〜4のいずれかに記載の帯電性子粒子の製造方法。
【請求項6】
前記処理液が有機溶剤を含み、該有機溶剤が、キシレン、トルエン、酢酸エチル及びn−酢酸ブチルから選択される1種以上である請求項1〜5のいずれかに記載の帯電性子粒子の製造方法。
【請求項7】
前記処理液における有機溶剤の含有量が、樹脂微粒子量に対して10質量%以上100質量%以下である請求項6に記載の帯電性子粒子の製造方法。
【請求項8】
前記樹脂微粒子作製工程が、乳化重合法または分散重合法により樹脂微粒子を作製する工程である請求項1〜7のいずれかに記載の帯電性子粒子の製造方法。
【請求項9】
前記架橋樹脂が、架橋オレフィン樹脂、架橋スチレン樹脂、架橋アクリル樹脂、架橋ウレタン樹脂及び架橋エポキシ樹脂から選択される1つ以上である請求項1〜8のいずれかに記載の帯電性子粒子の製造方法。
【請求項10】
母粒子表面に帯電性子粒子を固着させてなる表示用粒子を、少なくとも一方が透明な対向する2枚の基板間に封入し、該基板間に電界を付与することによって前記表示用粒子を移動させて画像情報を表示する情報表示パネルに用いる前記表示用粒子を構成する帯電性子粒子であって、
請求項1〜9のいずれかに記載の帯電性子粒子の製造方法を用いて製造される帯電性子粒子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−54199(P2013−54199A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191972(P2011−191972)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】