説明

帯電装置および画像形成装置

【課題】 被電荷付与体への放電生成物の移行を抑制する帯電装置、および、この帯電装置を備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】 回転しながら被電荷付与体の表面に電荷を付与する電荷付与ロールと、電荷付与ロールの周面に接触して回転する発泡構造を有するロール形状体であって、Mg(1−x)Al(OH)(COx/2・mHO(0<x≦0.5、m:正の数)で表されるハイドロタルサイト類化合物を少なくとも周面に有する発泡体ロールとを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電荷付与ロールにより被電荷付与体の表面に電荷を付与する帯電装置、および、この帯電装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、表面にトナーによる現像像の保持が可能な像保持体の表面を帯電器により帯電して静電潜像を形成し、形成した静電潜像をトナーを含む現像剤で現像して得た現像像を記録媒体上に転写および定着させることで記録媒体上に画像を形成する画像形成装置が知られている。
【0003】
この様な画像形成装置に備えられている帯電器の一例として、像保持体の表面に接触して従動回転しながらこの像保持体の表面に電荷を付与する帯電ロールが知られている。
【0004】
帯電ロールは像保持体と接触していることから、像保持体に付着した不要物が帯電ロールに移行してくる場合があり、帯電ロールにこの様な不要物が付着したままになっていると、帯電不良等による画像欠陥が長期的に引き起こされる場合がある。
【0005】
そこで、帯電ロールに、発泡ウレタン製のロールを接触させ従動回転させることで、像保持体から帯電ロールに移行してきた不要物を微視的に凸凹な発泡構造を利用して除去する提案がなされている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
上記提案の発泡体ロールは、また、帯電ロールに与えるストレスが少なく、長期クリーニング性に優れるという特性も有している。
【特許文献1】特開平05−297690号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、帯電ロールの放電に伴って生成され帯電ロールに付着した、主にオゾンや窒素酸化物などからなる放電生成物に対してはこの発泡構造による除去は不充分なため、帯電ロール表面に付着した放電生成物が像保持体に移行するおそれがある。放電生成物は、高湿下においては空気中の水分と反応するため、像保持体表面の、放電生成物が付着した部分の抵抗はその他の部分に比べて低下する。したがって、像保持体表面の抵抗が低下したその部分に静電潜像が形成されると、その部分での静電潜像の保持は困難となり、その部分には、所謂像流れが発生することとなる。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑み、被電荷付与体への放電生成物の移行を抑制する帯電装置、および、この帯電装置を備えることで像流れの発生が抑制された画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明の帯電装置は、
回転しながら被電荷付与体に電荷を付与する電荷付与ロールと、
上記電荷付与ロールに接触して回転する、ロール形状を有した、このロール形状の周面にはMg(1−x)Al(OH)(COx/2・mHO(0<x≦0.5、m:正の数)で表されるハイドロタルサイト類化合物を有する、発泡構造の発泡体ロールとを備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明は、ハイドロタルサイト類化合物が酸を吸着する機能を有する点に着目してなされたものであり、本発明の帯電装置では、電荷付与ロールに付着する放電生成物の主成分であるオゾンや窒素酸化物等の酸化物を、発泡体ロールの周面に配したハイドロタルサイト類化合物によって吸着することで除去できる。したがって、本発明の帯電装置によれば、電荷付与ロールに付着した放電生成物の被電荷付与体への移行を抑制することができる。
【0011】
ここで、上記発泡体ロールは、ハイドロタルサイト類化合物が混入された樹脂膜を上記周面に有するものであることが好ましい。
【0012】
この様にすると、発泡体ロールの周面にハイドロタルサイト類化合物を簡易に配することができる。
【0013】
また、上記樹脂膜は、ハイドロタルサイト類化合物の含有割合が1重量%以上10重量%以下のものであることも好ましい態様である。
【0014】
樹脂膜におけるハイドロタルサイト類化合物の含有割合が少なすぎると、酸の吸着性が低下し、多すぎると、樹脂によるハイドロタルサイト類化合物を捕捉する性能が低下してハイドロタルサイト類化合物が樹脂膜から外れやすくなりこれによっても酸の吸着性が低下することから、樹脂膜におけるハイドロタルサイト類化合物の含有割合をこの範囲内に収めると、ハイドロタルサイト類化合物による放電生成物の吸着性を一層高めることができる。
【0015】
上記目的を達成するための本発明の画像形成装置は、
表面に像を保持する像保持体;
回転しながら上記像保持体の表面に電荷を付与する電荷付与ロール;
上記電荷付与ロールに接触して回転する、ロール形状を有した、このロール形状の周面にはMg(1−x)Al(OH)(COx/2・mHO(0<x≦0.5、m:正の数)で表されるハイドロタルサイト類化合物を有する、発泡構造の発泡体ロール;および
上記電荷付与ロールによって電荷が表面に付与された像保持体に静電潜像を形成し、その静電潜像を現像して現像像を形成する像形成部;
を備えたことを特徴とする。
【0016】
本発明の画像形成装置によれば、像保持体への放電生成物の移行が抑制されることから、像流れの発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、被電荷付与体への放電生成物の移行を抑制する帯電装置、および、この帯電装置を備えることで像流れの発生が抑制された画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0019】
図1は、画像形成装置の概略構成図である。
【0020】
図1に示す画像形成装置1では、帯電器11により所定の電荷が付与された、矢印A方向に回転する像保持体10の表面に、外部から送信されてきた画像データに基づいて露光器12で生成した露光光が照射されることで静電潜像が形成され、現像ロール131を有する現像器13に収容されたトナーでこの静電潜像が現像される。この現像により得られた現像像は、用紙カセット16から用紙搬送装置17により引き出され、矢印B方向に搬送されてきた記録用紙上に転写ロール14によって転写され、定着器15により定着されることにより記録用紙上に画像形成が行われる。この画像形成装置1は本発明の画像形成装置の一実施形態である。尚、この画像形成装置1は、モノクロ画像専用機である。
【0021】
この画像形成装置1に備えられている帯電器11は、詳しくは後述するが、帯電ロール111を像保持体10に接触させた状態で従動回転しながらこの像保持体10の表面に電荷を付与する接触型の帯電器であり、この帯電器11は、本発明の帯電装置の一実施形態である。
【0022】
図2は、帯電器の拡大図である。
【0023】
図2に示す帯電器11は、ハウジング110と、矢印A方向に回転する像保持体10に接触することで矢印C方向に従動回転する帯電ロール111と、この帯電ロール111に電圧を印加する電圧印加部112と、この帯電ロール111に付着した不要物を除去するクリーニングロール113とを有している。このクリーニングロール113は、帯電ロール111に接触して矢印D方向に従動回転する、周面にハイドロタルサイト類化合物粒子(Mg0.7Al0.3(OH)(CO0.15・0.57HO)が表出した樹脂膜を備えた発泡体ロールである。
【0024】
図3は、クリーニングロールの発泡構造の概念図である。
【0025】
図3(a)には、クリーニングロール113の発泡構造が概念的に示され、図3(b)には、その発泡構造の拡大図が示されている。
【0026】
このクリーニングロール113は、ロール状の発泡ウレタンに、ハイドロタルサイト類化合物粒子(Mg0.7Al0.3(OH)(CO0.15・0.57HO)が5重量パーセントの割合で混入された共重合ナイロン樹脂を含浸・硬化させたものであり、図3(b)には、発泡セル113aを形成する壁面にハイドロタルサイト類化合物粒子1132が分散配置された共重合ナイロン樹脂膜1131が形成され、その共重合ナイロン樹脂膜1131からハイドロタルサイト類化合物粒子1132が表出している様子が示されている。
【0027】
このハイドロタルサイト類化合物は、一般式が、Mg(1−x)Al(OH)(COx/2・mHO(0<x≦0.5、m:正の数)で表される、プラスに荷電した[Mg2+2(1−x)Al3+2x(OH)]層と、マイナス荷電した[CO2−x・mHO]層とからなる層状化合物であり、構造中のCO2−がイオン交換性であることで容易に他のアニオンと置換することにより酸を吸着する機能を有した物質である。この帯電器11では、酸吸着機能を有するハイドロタルサイト類化合物1132を周面に配したクリーニングロール113が帯電ロール111に接触しており、放電生成物であるオゾンや窒素酸化物は、そのハイドロタルサイト類化合物1132に吸着される。したがって、ハイドロタルサイト類化合物1132に吸着された分だけ放電生成物の像保持体10への移行は抑制されることとなる。その結果、この画像形成装置1によれば、放電生成物が像保持体10に付着することにより引き起こされる像流れの発生は抑制されている。また、この帯電器11では、ハイドロタルサイト類化合物1132が混入された樹脂膜を、発泡セル113aを形成する壁面に形成するという簡易な手法により、クリーニングロール113の周面へのハイドロタルサイト類化合物1132の配備を実現している。また、樹脂膜中のハイドロタルサイト類化合物の含有割合としては、1重量%以上10重量%以下が好ましく、この帯電器11では、樹脂膜中のハイドロタルサイト類化合物の含有割合は5重量%となっている。これは、樹脂膜におけるハイドロタルサイト類化合物の含有割合が少なすぎると、酸の吸着性が低下し、多すぎると、樹脂によるハイドロタルサイト類化合物を捕捉する性能が低下してハイドロタルサイト類化合物が樹脂膜から外れやすくなりこれによっても酸の吸着性が低下するためである。尚、上記一般式で表わされるハイドロタルサイト類化合物の具体的な物質例(構造式)としては、Mg0.7Al0.3(OH)(CO0.15・0.57HOの他にも、Mg0.8Al0.2(OH)(CO0.10・0.61HO、Mg0.75Al0.25(OH)(CO0.125・0.50HO、Mg0.83Al0.17(OH)(CO0.085・0.47HO等を挙げることができる。これらハイドロタルサイト類化合物の製造方法については、特公昭47−32918号公報、特公昭50−30039号公報、特公昭51−29129号公報、特公平4−73457号公報等に記載されている公知の製造方法と同じ方法で製造しているので説明は省略する。また、このハイドロタルサイト類化合物粒子を混入する樹脂としては、発泡体ロールの母料であるウレタンを冒さない水溶性樹脂あるいはアルコール可溶性樹脂であればよく、共重合ナイロンの他にも、ポリビニールアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム、メトキシメチル化ナイロンを挙げることができる。
【0028】
尚、以上に説明した実施形態では、本発明にいう発泡体ロールの一例として母材が発泡ウレタンのロールが示されているが、本発明にいう発泡体ロールは、ハイドロタルサイト類化合物を少なくとも周面に有するものであれば、母材は発泡ポリエチレンであってもよく、あるいは発泡ポリスチレンであってもよい。また、以上に説明した実施形態では、本発明にいう樹脂膜の一例として共重合ナイロン樹脂膜が示されているが、本発明にいう樹脂膜は、ハイドロタルサイト類化合物を含有できるものであって、発泡体ロールの母材を冒さないものであればよい。さらに、以上に説明した実施形態では、本発明にいう樹脂膜の一例として、ハイドロタルサイト類化合物を5重量パーセント含有した共重合ナイロン樹脂膜が示されているが、本発明にいう樹脂膜は、ハイドロタルサイト類化合物の含有割合が1重量%以上10重量%以下であれば好適であり、ハイドロタルサイト類化合物の含有割合が、例え1重量%未満あるいは10重量%を超えていても、ハイドロタルサイト類化合物が含有されてさえいれば、本発明の基本的な効果は減却されない。
【0029】
次に、本発明の実施例および比較例について説明する。
【0030】
実施例1から実施例5、比較例1、および比較例2は、富士Xerox社製の画像形成装置から、元々備えられていた帯電器を取り外し、図2に示すタイプの帯電器を代わりに配備した改造機において、共重合ナイロン樹脂膜中のハイドロタルサイト類化合物粒子の含有割合が異なるクリーニングロールをそれぞれ用いて、32℃85%RHの高温高湿環境下で3000枚のプリント走行を行った後、さらに同じ環境下で10時間(hr)放置した直後のプリントにおける像流れの有無を調べたものである。尚、発泡体ロールとして、ウレタン発泡体(RR26:イノアックコーポレーション製)を共通に使用した。
【0031】
実施例1は、樹脂膜中のハイドロタルサイト類化合物粒子の含有割合が5重量パーセントの場合であり、実施例2は、樹脂膜中のハイドロタルサイト類化合物粒子の含有割合が1重量パーセントの場合である。実施例3は、樹脂膜中のハイドロタルサイト類化合物粒子の含有割合が10重量パーセントの場合であり、実施例4は、樹脂膜中のハイドロタルサイト類化合物粒子の含有割合が0.5重量パーセントの場合である。実施例5は、樹脂膜中のハイドロタルサイト類化合物粒子の含有割合が15重量パーセントの場合であり、比較例1は、樹脂膜中にハイドロタルサイト類化合物粒子が含まれていない場合である。比較例2は、周面に樹脂膜が形成されておらず発泡セルが露出している場合である。
【0032】
評価については、‘○’は画像流れが未発生、‘△’は画像流れが若干発生、‘×’は画像流れが発生、とした。
【0033】
【表1】

【0034】
表1には、上述の実施例1から実施例5まで、比較例1、および比較例2それぞれについての‘樹脂膜中のハイドロタルサイト類化合物粒子の含有割合’と、‘像流れの発生’についての評価とが示されている。
【0035】
実施例1から実施例3では、‘像流れの発生’の評価は‘○’となり、実施例4および実施例5では、‘像流れの発生’の評価は‘△’となった。比較例1および比較例2では、‘像流れの発生’の評価は‘×’となった。この結果から、樹脂膜におけるハイドロタルサイト類化合物粒子の含有割合が1重量パーセントを下回ると、酸の吸着性が低下し、10重量パーセントを超えると、樹脂によるハイドロタルサイト類化合物を捕捉する性能が低下してハイドロタルサイト類化合物粒子が樹脂膜から外れやすくなりこれによっても酸の吸着性が低下することが確認できた。比較例1および比較例2では、‘像流れの発生’の評価は共に‘×’となった。この結果から、発泡体ロールの表面にハイドロタルサイト類化合物粒子を有してさえいれば、放電生成物の吸着効果があることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】画像形成装置の概略構成図である。
【図2】帯電器の拡大図である。
【図3】クリーニングロールの発泡構造の概念図である。
【符号の説明】
【0037】
1 画像形成装置
10 像保持体
11 帯電器
110 ハウジング
111 帯電ロール
112 電圧印加部
113 クリーニングロール
113a 発泡体セル
1131 共重合ナイロン樹脂膜
1132 ハイドロタルサイト類化合物粒子
12 露光器
13 現像器
14 転写ロール
15 定着器
16 用紙カセット
17 用紙搬送装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転しながら被電荷付与体に電荷を付与する電荷付与ロールと、
前記電荷付与ロールに接触して回転する、ロール形状を有した、該ロール形状の周面にはMg(1−x)Al(OH)(COx/2・mHO(0<x≦0.5、m:正の数)で表されるハイドロタルサイト類化合物を有する、発泡構造の発泡体ロールとを備えたことを特徴とする帯電装置。
【請求項2】
前記発泡体ロールは、前記ハイドロタルサイト類化合物の粒子を含有する樹脂膜を前記発泡体ロール周面に有するものであることを特徴とする請求項1記載の帯電装置。
【請求項3】
前記樹脂膜は、ハイドロタルサイト類化合物の含有割合が1重量%以上10重量%以下であることを特徴とする請求項2記載の帯電装置。
【請求項4】
表面に像を保持する像保持体;
回転しながら前記像保持体の表面に電荷を付与する電荷付与ロール;
前記電荷付与ロールに接触して回転する、ロール形状を有した、該ロール形状の周面にはMg(1−x)Al(OH)(COx/2・mHO(0<x≦0.5、m:正の数)で表されるハイドロタルサイト類化合物を有する、発泡構造の発泡体ロール;および
前記電荷付与ロールによって電荷が表面に付与された像保持体に静電潜像を形成し、その静電潜像を現像して現像像を形成する像形成部;
を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−217035(P2009−217035A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−61409(P2008−61409)
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】