説明

帯電装置および画像形成装置

【課題】潤滑剤の供給量の変動に拘わらず帯電部材での汚れを防止して安定した帯電状態を維持できる構成を備えた帯電装置を提供する。
【解決手段】ステアリン酸亜鉛および窒化ホウ素を混合した潤滑剤を供給される潜像担持体40を一様帯電する阿智電部材70を備えた帯電装置であって、帯電部材70に対して接離可能な帯電クリーニング部材77を備え、該帯電クリーニング部材77の接離条件が前記潤滑剤消費量の変動に応じて、前記帯電部材70への転写残トナーの付着を抑えることができる当接間隔や当接時間等の条件を変更することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電装置および画像形成装置に関し、さらに詳しくは、帯電装置に用いられる帯電ローラのクリーニング機構に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いる画像形成層では、帯電装置を用いて潜像担持体である感光体への一様帯電が行われた後書き込み処理による静電潜像形成が行われる。
静電潜像は現像装置により可視像処理された後、記録紙などの記録媒体に対して転写され、転写された可視像が定着されることにより複写物とされる。
【0003】
感光体は、異なる色の画像形成が行えるように複数設けられる場合もあり、この場合には、各感光体で形成された可視像が記録媒体の移動過程においてその記録媒体に対して重畳転写されることにより、あるいは、中間転写体に対して重畳転写紙された後、その重畳画像が記録媒体に一括転写される場合もある。
【0004】
このように複数の感光体から可視像を重畳転写することによりフルカラー画像などの複数色の画像を形成することができる。
【0005】
画像転写を終えた感光体には未転写トナーが残る場合があるので、クリーニング装置により未転写トナーをクリーニングすることが行われる。
感光体のクリーニングは、感光体に接触するクリーニングブレードにより未転写トナーを掻き取る構成が知られている。
【0006】
従来、感光体表面の保護およびクリーニングブレード性能向上を目的として感光体表面での潤滑性を高めることが行われている。
潤滑性を高める方法としては、現像剤中のトナーに潤滑剤粒子を外添する方法とは別に、固形の潤滑剤をブラシローラ等により削り取って感光体表面に供給する方法がある。
【0007】
上述した潤滑剤には、ステアリン酸亜鉛と窒化ホウ素を含む潤滑剤を供給する方法が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0008】
一方、帯電部材には、感光体表面に近接した状態で直流交流を重畳した帯電バイアスを印加する構成が知られている。この構成では、感光体での一様帯電が可能であるが、帯電バイアスを印加した際のバイアス極性によってトナーやトナーの外添剤等が僅かながらも帯電部材に飛翔して付着することがある。
【0009】
そこで、帯電部材に付着するトナーや異物を除去して帯電特性を適正に維持するための簡単な構成として、帯電部材表面にクリーニング部材を当接させることによりトナーを除去する構成が知られている。
【0010】
潜像担持体表面に接触する構成を用いた帯電部材の場合、帯電部材が潜像担持体表面に接触しながら連れ動くことから、クリーニング後においても未だ付着しているトナーが帯電部材に擦り取られることがある。帯電部材に付着したトナーは堆積すると帯電部材の表面特性が変化し、帯電特性が低下する虞れがある。
【0011】
従来、上述した不具合を解消するための構成として、クリーニング部材を帯電部材に対して接離できる構成を用い、感光体の使用履歴や装置の使用環境や画像面積などの履歴に基づき現実的なトナーの除去量を割り出し、その割り出し量に応じて帯電部材へのクリーニング部材の接離間隔を変更する方法が提案されている(例えば、特許文献2)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
潤滑剤として用いられる成分のうちで、ステアリン酸亜鉛は、感光体に対する保護機能が優れており、近接する帯電部材において実行される交流バイアスを重畳した場合でも感光体の摩耗を低減させることができる。
【0013】
一方、潤滑剤として窒化ホウ素を用いた場合には、感光体のクリーニングにクリーニングブレードが用いられる場合には、クリーニングブレードの当接状態を安定させることができ、感光体に対するクリーニング性能を維持させることができる。
【0014】
このような理由により、感光体に供給される潤滑剤として、ステアリン酸亜鉛と窒化ホウ素を含む成分とすることで両者の利点を持つ潤滑剤を構成することができる。
【0015】
しかし、上述した成分を含む潤滑剤を用いた場合には、潤滑剤の消費量変動が大きいという問題がある。
【0016】
図9は、感光体の走行距離に対する潤滑剤消費量の推移を説明するための図である。
図中、Aは、ステアリン酸亜鉛を主成分とする脂肪酸金属塩のみからなる潤滑剤を対象とした消費量推移を示し、Bは、ステアリン酸亜鉛を主成分とする脂肪酸金属塩を95重量部に設定し、これに対し窒化ホウ素を5重量部に設定して両者を混合した潤滑剤消費量推移を示している。
【0017】
潤滑剤は、毛足3mm、繊維系200μm、1平方インチあたりの植毛密度を15万本に設定されたPET(ポリエチレンテレフタレート)製のブラシローラにより削り取られて供給される場合を対象としている。
【0018】
図9において、Aで示す潤滑剤の場合には、多少の減少はあるものの、徐々に減少しながら安定する傾向にあるが、Bで示す潤滑剤の場合には、初期の消費量が非常に多く、この状態から徐々に減少しながら安定する傾向にある。
【0019】
このような消費量推移の変動が起こる原因は明確でないが、発明者の考察によれば、潤滑剤の種類によってブラシ繊維への付着状態に差が生じ、この差により、潤滑剤削り取り量に変化が生じることがわかった。
【0020】
潤滑剤の消費量が少なくなると、感光体の保護機能を十分に得ることができなくなり、感光体の摩耗量が増加したり、感光体表面でトナーやトナー外添剤が固着するフィルミング現象が発生しやすくなる虞がある。通常、潤滑剤の機能を十分発揮させるには、少なくとも0.2g/km以上の消費量を維持することが必要とされる。
【0021】
従って、Bのステアリン酸亜鉛と窒化ホウ素を混合した潤滑剤を使用する場合には、初期に潤滑剤消費量が非常に多い状態となることから、潤滑剤の供給量(消費量)が多くなった場合の不具合である、感光体に供給された潤滑剤が帯電部材への交流バイアス重畳を介して帯電部材側に飛翔し、帯電部材側での汚れ度が高くなるという不具合を招く虞が生じる。
【0022】
本発明の目的は、上述した従来の帯電装置における問題、特に潜像担持体に供給される潤滑剤の消費傾向による帯電部材への汚染に鑑み、潤滑剤の供給量の変動に拘わらず帯電部材での汚れを防止して安定した帯電状態を維持できる構成を備えた帯電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
この目的を達成するため、本発明は、画像形成が可能な作像部に設けられて表面に潤滑剤を供給される潜像担持体の帯電に用いられる帯電装置であって、帯電部材に付着する転写残トナーや異物を除去するために、該帯電部材に対して接離可能なクリーニング手段と、前記クリーニング手段を前記帯電部材に接離させる駆動部の駆動態位を制御可能な制御部と、を備え、前記制御部は、前記潤滑剤の消費量変動に対応して前記帯電部材への転写残トナーや異物の付着を抑える状態となるように前記クリーニング手段の接離条件を変化させることを特徴とする帯電装置にある。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、潜像担持体側での潤滑剤の消費量変動が生じた場合には、帯電部材への転写残トナーや異物の付着を抑える状態となるように帯電部材に対するクリーニング手段の接離条件を変化させる。これにより、潤滑剤消費量が増加する傾向に変動した場合でも帯電部材への転写残トナーの付着を抑制して転写残トナーの付着による帯電部材での帯電状態の悪化を防止し、安定した帯電状態を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】一実施形態にかかる帯電装置を用いる画像形成装置全体構成を説明するための概略図である。
【図2】図1に示した画像形成装置に用いられる帯電装置の一例を示す模式図である。
【図3】図1に示した画像形成装置に用いられる帯電装置の他の例を示す模式図である。
【図4】帯電装置に用いられる帯電部材の構成を説明するための断面図である。
【図5】帯電装置に用いられるクリーニング手段の構成を説明するための図である。
【図6】帯電装置に用いられる帯電クリーニング部材の構成を説明するための図である。
【図7】画像形成装置に用いられる制御部の構成を説明するためのブロック図である。
【図8】図7に示した制御部の作用を説明するためのフローチャートである。
【図9】潤滑剤に用いられる成分に基づく消費量推移を説明するための線図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面に基づき本発明を実施するための形態について説明する。
図1はタンデム中間転写方式のフルカラー複写機に適用した例を示す全体構成図である。
【0027】
同図においてフルカラー複写機は装置本体100、本体を載せる給紙テーブル200、複写装置本体上に取り付けるスキャナ300、スキャナ上に取り付けられた原稿自動搬送装置(ADF)400、等から構成されている。
【0028】
フルカラー複写機は、本体中央に、Y、C、M、Bkの4つの画像形成ユニットとして用いられる作像ユニット18Y、18C、18M、18Bkを横に並べて配置したタンデム画像形成装置20として構成されている。
タンデム画像形成装置20の各画像形成ユニットは、それぞれY、C、M、Bkの各色トナー像が形成される感光体40Y、40C、40M、40Bkを有している。
【0029】
タンデム画像形成装置20の上方には、露光装置21が設けられている。
露光装置21は、色毎に用意されたレーザダイオード(LD)方式の4つの光源と、6面のポリゴンミラーとポリゴンモータから構成される1組のポリゴンスキャナと、各光源の光路に配置されたfθレンズ、長尺WTL等のレンズやミラーから構成されている。
各色の画像情報に応じてLDから射出されたレーザ光はポリゴンスキャナにより偏向走査され各色の感光体40Y、40C、40M、40Bkに照射される。
【0030】
タンデム画像形成装置20の下方には、無端ベルト状の中間転写ベルト10が設置されている。
中間転写ベルト10は、図示例では3つの支持ローラ14、15、16に掛け回して図中時計回りに回転搬送可能であり、支持ローラ14は中間転写ベルト10を回転駆動する駆動ローラである。
【0031】
また、第1の支持ローラ14および第2の支持ローラ15の間には、各色の感光体40Y、40C、40M、40Bkから中間転写ベルト10にトナー像を転写する一次転写手段として一次転写ローラ62Y、C、M、Bkが中間転写ベルト10を間に挟んで各感光体40Y、40C、40M、40Bkに対向するように設けられている。
【0032】
第3の支持ローラ16の下流には、画像転写後に中間転写ベルト10上に残留する残留トナーを除去する中間転写ベルトクリーニング装置17を設けられている。
【0033】
中間転写ベルト10の材質としてはポリフッ化ビニリデン、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂材料をシームレスベルトに成形し使用することができる。これらの材料はそのまま用いたり、カーボンブラック等の導電材により抵抗調整したりすることが可能である。
【0034】
また、これらの樹脂を基層として、スプレーやディッピング等の方法により表層を形成し、積層構造にしても良い。
【0035】
中間転写ベルト10の下方には、2次転写装置22が設けられている。
図示構成において2次転写装置22は、2つのローラ23間に、無端ベルトである2次転写ベルト24を掛け渡して配置されている。2次転写装置22は、中間転写ベルト10を介して第3の支持ローラ16に押し当てて配置され、中間転写ベルト10上の画像を転写材に転写する。
2次転写ベルト24としては、中間転写ベルト10と同様の材料を用いることができる。
【0036】
2次転写装置22の横には、転写材上の画像を定着する定着装置25が設けられている。
定着装置25は、無端ベルトである定着ベルト26に加圧ローラ27を押し当てて構成する。
【0037】
上述した2次転写装置22には、画像転写後の転写材をこの定着装置25へと搬送するシート搬送機能も備えている。もちろん、2次転写装置22として、転写ローラや転写チャージャを配置してもよく、そのような場合は、この転写材搬送機能を別途備える必要がある。
【0038】
なお、図示例では2次転写装置22および定着装置25の下方に、上述したタンデム画像形成装置と平行に、転写材を反転排紙したり、転写材の両面に画像を形成するために転写材を反転して再給紙したりする反転装置28を備えている。
【0039】
このようなタンデム画像形成装置によりコピー動作をおこなう時は、ADFの原稿台30上に原稿をセットする。または、ADFを開いてスキャナ300のコンタクトガラス32上に原稿をセットし、ADFを閉じて原稿を押さえる。
【0040】
そして、図示されない操作部のスタートスイッチを押すと、ADFに原稿をセットした時は、原稿を搬送してコンタクトガラス上へと移動した後、他方コンタクトガラス上に原稿をセットした時は、直ちにスキャナ300を駆動し、第1走行体33および第2走行体34を走行する。
第1走行体33において光源から光を照射すると共に原稿面からの反射光をさらに反射して第2走行体34に向け、第2走行体34のミラーで反射して結像レンズ35を通して読取りセンサ36に入れ、原稿内容を読み取る。
【0041】
その後、操作部でのモード設定、あるいは操作部で自動モード選択が設定されている場合には原稿の読み取り結果に従い、フルカラーモードまたは白黒モードで画像形成動作を開始する。
【0042】
フルカラーモードが選択された場合には、各感光体が図1で反時計回り方向にそれぞれ回転する。そして、その各感光体の表面が帯電装置である帯電ローラ70により一様に帯電される。
【0043】
各色の感光体(便宜上、色の種類を意味するアルファベットを省く)40には、露光装置21から各色の画像に対応するレーザ光がそれぞれ照射され、各色の画像データに対応した潜像がそれぞれ形成される。各潜像は感光体40が回転することにより各色の現像装置60Y、C、M、Bkで各色のトナーが現像される。
【0044】
各色のトナー像は中間転写ベルト10の搬送と共に、中間転写ベルト10上に順次転写されて中間転写ベルト上にフルカラー画像を形成する。転写後の感光体40は、除電ランプ(図2において符号72で示す部材)により光除電され、クリーニング手段により転写残のトナーが除去される。
【0045】
一方、給紙ローラ42の1つを選択回転し、給紙テーブル200内の給紙部43において多段に備えられている給紙カセット44の1つから転写材を送り出し、分離ローラ45で1枚ずつ分離して給紙路46に入れ、搬送ローラ47で搬送して本体内の給紙路48に導き、レジストローラ49に突き当てて止める。
【0046】
また、手差しトレイ51からの給紙に際しては、給紙ローラ50を回転して手差しトレイ51上の転写材を送り出し、分離ローラ52で1枚ずつ分離して手差し給紙路53に入れ、同じくレジストローラ49に突き当てて止める。
【0047】
そして、中間転写ベルト10上のフルカラー画像にタイミングを合わせてレジストローラ49を回転し、中間転写ベルト10と2次転写装置22との間に転写材を送り込み、2次転写装置22で転写して転写材上にトナー像を一括転写する。
【0048】
トナー像が転写された転写材は、2次転写装置22で搬送されて定着装置25へと送り込まれ、定着装置25において熱と圧力とを加えて転写材に定着された後、切換爪55で切り換えて排出ローラ56で排出され、排紙トレイ57上にスタックされる。
【0049】
転写材の両面への画像形成時には、切換爪55で切り換えてシート反転装置28に入れ、そこで反転して再び転写位置へと再給紙され、裏面にも画像を記録した後、排出ローラ56で排紙トレイ57上に排出される。以降、2枚以上の画像形成が指示されている時には、上述した作像プロセスが繰り返される。
【0050】
所定枚数の画像形成が終了した後には、作像後処理を行ってから感光体40の回転を停止する。
作像後処理では帯電バイアス、転写バイアスをオフした状態で感光体を1周以上回転させ、その際に除電手段により感光体表面の電荷を除電して、感光体40が除電したまま放置されて感光体が劣化することを防止する。
【0051】
白黒モードが選択された場合には、支持ローラ15が下方に移動し、中間転写ベルト10を感光体Y、C、Mから離間させる。Bkの感光体40Bkのみが図1において反時計回り方向に回転し、Bk感光体の表面が帯電ローラ70により一様に帯電され、Bkの画像に対応するレーザ光が照射され、潜像が形成され、Bkのトナーにより現像されてトナー像となる。
【0052】
このトナー像は中間転写ベルト10上に転写される。この際、Bk以外の3色の感光体40Y、C、M、現像装置60Y、C、Mは停止しており、感光体40や現像剤の不要な消耗を防止する。
【0053】
一方、給紙カセット44から転写材が給紙され、レジストローラ49により、中間転写ベルト10上に形成されているトナー像と一致するタイミングで搬送される。
トナー像が転写された転写材は、フルカラー画像の場合と同様に定着装置25で定着され、指定されたモードに応じた排紙系を通って処理される。
以降、2枚以上の画像形成が指示されている時には、上述した作像プロセスが繰り返される。
【0054】
次に、作像ユニットについて詳しく説明する。作像ユニット18Y、C、M、Bk(以下、便宜上、符号18で示す場合もある)は、収容されるトナーの色が異なる以外は、同じ構成であるので、以下、添字Y、C、M、Bkを省略して説明する。
【0055】
図2は、作像ユニットの概略構成図である。
同図において感光体40の周りには、感光体40を均一に帯電する帯電手段としての帯電ローラ70、感光体40の電位を検知する電位センサ71、感光体40に形成された静電潜像を現像する現像装置(便宜上、色の種類を意味するアルファベットは省略する)60、トナー像が転写された後の感光体40の表面を除電する除電ランプ72、転写残トナーをクリーニングするための感光体クリーニング装置が配置されている。
また、作像ユニット18のケースには露光装置21からの露光光76を通過させるための開口が設けられている。
【0056】
図2に示す感光体40は、導電性支持体上に設けられた感光層を構成する電荷発生層、電荷輸送層を備えた積層型有機感光体が用いられている。
【0057】
導電性支持体は、体積抵抗1010Ωcm以下の導電性を示すもの、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、銀、金、白金等の金属、酸化スズ、酸化インジウム等の金属酸化物を、蒸着又はスパッタリングにより、フィルム状又は円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス等の管材を切削、超仕上げ、研磨等で表面処理したものからなる。
【0058】
電荷発生層は、電荷発生材料を主成分とする層である。
電荷発生材料には、無機又は有機材料が用いられ、代表的なものとしては、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、キナクリドン系顔料、キノン系縮合多環化合物、スクアリック酸系染料、フタロシアニン系顔料、ナフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩系染料、セレン、セレン−テルル合金、セレン−ヒ素合金、アモルファスシリコン等が挙げられる。これら電荷発生材料は、単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
【0059】
電荷発生層は、電荷発生材料を適宜バインダー樹脂と共に、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ジオキサン、2−ブタノン、ジクロルエタン等の溶媒を用いて、ボールミル、アトライター、サンドミルなどにより分散し、分散液を塗布することにより形成できる。
電荷発生層の塗布は、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート法等により行うことができる。
【0060】
適宜用いられるバインダー樹脂としては、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、エポキシ、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコーン、アクリル、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリアクリル、ポリアミド等の樹脂を挙げることができる。バインダー樹脂の量は、重量基準で電荷発生材料1部に対して0〜2部が適当である。
【0061】
電荷発生層は、公知の真空薄膜作製法によっても形成することができる。
電荷発生層の膜厚は、通常は0.01〜5μm、好ましくは0.1〜2μmである。
【0062】
電荷輸送層は、電荷輸送材料及びバインダー樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを塗布、乾燥することにより形成できる。また、必要により可塑剤やレベリング剤等を添加することもできる。
電荷輸送材料のうち、低分子電荷輸送材料には、電子輸送材料と正孔輸送材料とがある。
【0063】
電子輸送材料としては、例えば、クロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド等の電子受容性物質が挙げられる。
これらの電子輸送材料は、単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。
【0064】
正孔輸送材料としては、例えば、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体、9−(p−ジエチルアミノスチリルアントラセン)、1,1−ビス−(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、フェニルヒドラゾン類、α−フェニルスチルベン誘導体、チアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナジン誘導体、アクリジン誘導体、ベンゾフラン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、チオフェン誘導体等の電子供与性物質が挙げられる。これらの正孔輸送材料は、単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。
【0065】
電荷輸送材料と共に電荷輸送層に使用されるバインダー樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート、フェノキシ、ポリカーボネート、酢酸セルロース、エチルセルロース、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、アクリル、シリコーン、エポキシ、メラミン、ウレタン、フェノール、アルキッド等の熱可塑性又は熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0066】
溶剤としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、2−ブタノン、モノクロルベンゼン、ジクロルエタン、塩化メチレン等が挙げられる。
電荷輸送層の厚さは、10〜40μmの範囲で所望の感光体特性に応じて適宜選択すればよい。
所望により電荷輸送層に添加される可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等、樹脂に汎用の可塑剤を挙げることができ、その使用量は、重量基準でバインダー樹脂に対して0〜30%程度が適当である。
所望により電荷輸送層に添加されるレベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマー又はオリゴマーが挙げられ、その使用量は、重量基準でバインダー樹脂に対して0〜1%程度が適当である。
【0067】
本発明においては、感光層に含有される電荷輸送材量の含有量は、電荷輸送層の30重量%以上とするのが好ましい。30重量%未満では、感光体40へのレーザ書き込みにおけるパルス光露光において高速電子写真プロセスでの十分な光減衰時間が得られず好ましくない。
図2に示す感光体40には、導電性支持体と感光層との間に下引き層を形成することもできる。下引き層は一般に樹脂を主成分とするが、これらの樹脂はその上に感光層を溶剤を用いて塗布することを考慮すると、一般の有機溶剤に対して耐溶解性の高い樹脂であることが望ましい。
【0068】
このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン、等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン、アルキッド−メラミン、エポキシ等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂等が挙げられる。
【0069】
また、下引き層には、モアレ防止、残留電位の低減等のために、酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等の金属酸化物の微粉末を加えてもよい。
この下引き層は、上述した感光層と同様、適当な溶媒、塗工法を用いて形成することができる。
さらに、下引き層として、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を使用して、例えば、ゾル−ゲル法等により形成した金属酸化物層を用いることも有用である。この他に、下引き層には、Al2O3を陽極酸化したものにより形成したもの、ポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物、SiO、SnO2、TiO2、ITO、Ce02等の無機物を真空薄膜作製法により形成したものも有効である。下引き層の膜厚は、0〜5μmが適当である。
【0070】
感光体40には、感光層の保護及び耐久性の向上を目的に感光層の上に保護層を形成することもできる。
この保護層はバインダー樹脂に耐摩耗性を向上する目的でアルミナ、シリカ、酸化チタン、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化インジウム等の金属酸化物微粒子が添加された構成である。バインダー樹脂としては、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、オレフィン−ビニルモノマー共重合体、塩素化ポリエーテル、アリル、フェノール、ポリアセタール、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリレート、ポリアリルスルホン、ポリブチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエチン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、アクリル、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エポキシ等の樹脂が挙げられる。
【0071】
保護層に添加される金属酸化物微粒子の量は、重量基準で通常は、5〜30%である。金属酸化物微粒子の量が5%未満では、摩耗が大きく耐摩耗性を向上する効果が小さく耐久性に劣り、30%を越えると、露光時における明部電位の上昇が著しくなって、感度低下が無視できなくなるので望ましくない。保護層の形成法としては、スプレー法等通常の塗布法が採用される。保護層の厚さは、1〜10μm、好ましくは3〜8μm程度が適当である。
【0072】
保護層の膜厚が薄すぎると耐久性に劣り、保護層の膜厚を厚くしすぎると感光体製造時の生産性が低下するだけでなく、経時での残留電位の上昇が大きくなってしまう。保護層に添加する金属酸化物粒子の粒径としては0.1〜0.8μmが適当である。金属酸化物微粒子の粒径が大きすぎる場合には保護層表面の凹凸が大きくなりクリーニング性が低下する上、露光光が保護層で散乱されやすく解像力が低下し画像品質が劣る。金属酸化物微粒子の粒径が小さすぎると耐摩耗性に劣る。
【0073】
さらに保護層には、基材樹脂への金属酸化物微粒子の分散性を向上させるために分散助剤を添加することができる。添加される分散助剤は塗料等に使用されるものが適宜利用できその量は重量基準で通常は含有する金属酸化物微粒子の量に対して0.5〜4%、好ましくは、1〜2%である。
また、保護層に電荷輸送材料を添加することで、保護層中の電荷の移動を促進することができる。保護層に添加する電荷輸送材料としては電荷輸送層と同じ材料を用いることができる。
また、本発明で使用する感光体40には耐環境性の改善のため、とりわけ感度低下や残留電位の上昇を防止する目的で、各層に酸化防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、およびレベリング剤等を添加することができる。
【0074】
現像装置60は、トナーとキャリアからなる二成分現像剤が収容されている。現像装置60は感光体40に対向した現像ローラ61、現像剤を搬送・撹拌するスクリュー62、63、トナー濃度センサ64等から構成される。
【0075】
現像ローラ61は、外側の回転自在のスリーブと内側に固定された磁石から構成されている。
スクリュー62、63で、攪拌されることで摩擦帯電した現像剤は、現像ローラ61の磁力により担持され、感光体40との対向部へ搬送され、感光体40上の潜像にトナーを供給することで現像する。
また、トナーを消費した現像剤のトナー濃度を、トナー濃度センサ64により検知し、検知結果に応じて現像装置60の上部に設けられた図示しないトナー供給装置より必要量のトナーが供給される。
【0076】
トナー供給装置は、トナーを収容する図示しないトナー収納容器からトナーを移送して収納する。
トナー供給装置には、現像装置60に連通する供給口と、収納したトナーを供給口に移動させるためのスクリュー(図示されず)が設けられている。
【0077】
トナー供給時には、トナー濃度センサ64により、現像装置60へのトナー供給指令が発せられると、図示しないクラッチがオンしてスクリューを作動し、その回転時間に応じた量のトナーを供給口に向けて移動させ、供給口から現像装置60内へ落下させることによりトナーが供給される。
【0078】
現像装置60に用いられるトナーは、結着樹脂、着色剤、電荷制御剤を主成分とし、必要に応じて、他の添加剤が加えられて構成されている。
結着樹脂の具体例としては、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリエステル樹脂、等を用いることができる。トナーに使用される着色材(例えばイエロー、マゼンタ、シアン及びブラック)としては、トナー用として公知のものが使用できる。着色材の量は結着樹脂100重量部に対して0.1から15重量部が適当である。
【0079】
電荷制御剤の具体例としては、ニグロシン染料、含クロム錯体、4級アンモニウム塩などが用いられ、これらはトナー粒子の極性により使い分けされる。荷電制御剤量は、結着樹脂100重量部に対して0.1〜10重量部である。
【0080】
トナー粒子には流動性付与剤を添加しておくのが有利である。流動性付与剤としては、シリカ、チタニア、アルミナ等の金属酸化物の微粒子及びそれら微粒子をシランカップリング剤、チタネートカップリング剤等によって表面処理したものや、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリフッ化ビニリデン等のポリマー微粒子、などが用いられる。これら流動性付与剤の粒径は0.01〜3μmの範囲のものが使用される。これら流動性付与剤の添加量は、トナー粒子100重量部に対して0.1〜7.0重量部の範囲が好ましい。
【0081】
二成分現像剤用トナーを製造する方法としては、種々の公知の方法、またはそれらを組み合わせた方法により製造することができる。
例えば、混練粉砕法では、結着樹脂とカーボンブラックなどの着色材及び必要とされる添加剤を乾式混合し、エクストルーダー又は二本ロール、三本ロール等にて加熱溶融混練し、冷却固化後、ジェットミルなどの粉砕機にて粉砕し、気流分級機により分級してトナーが得られる。また、懸濁重合法や非水分散重合法により、モノマーと着色材、添加剤から直接トナーを製造することも可能である。
【0082】
キャリアは芯材それ自体からなるか、芯材上に被覆層を設けたものが一般に使用される。本発明において用いることのできる樹脂被覆キャリアの芯材としては、フェライト、マグネタイトである。この芯物質の粒径は20〜60μm程度が適当である。
【0083】
キャリア被覆層形成に使用される材料としては、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、フッ素原子を置換してなるビニルエーテル、フッ素原子を置換してなるビニルケトンがある。被覆層の形成法としては、従来と同様、キャリア芯材粒子の表面に噴霧法、浸漬法等の手段で樹脂を塗布すればよい。
【0084】
感光体クリーニング装置としては、2本のブラシローラ73、74とクリーニングブレード75を備えている。また、ブラシローラ74には固形の潤滑剤78が当接しており、潤滑剤供給部材としての機能も持っている。
【0085】
固形の潤滑剤78の例としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸鉄、ステアリン酸ニッケル、ステアリン酸コバルト、ステアリン酸銅、ステアリン酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、オレイン酸亜鉛、オレイン酸コバルト、オレイン酸マグネシウム、パルチミン酸亜鉛のような脂肪酸金属塩や、カルナウバワックスのような天然ワックスや、ポリテトラフルオロエチレンのようなフッ素系の樹脂を用いることができる。また、必要に応じてその他の材料を混合することもできる。固形の潤滑剤78は潤滑剤粒子を溶融固化させたり、圧縮成形することで作製することができる。
【0086】
ブラシローラ73、74や、ポリウレタンゴムからなるクリーニングブレード75により感光体40から掻き取られたトナーは、トナー搬送コイル79により回収され、図示しない廃トナー収納部に搬送するように構成されている。
【0087】
なお、この作像ユニット18では転写後に除電された感光体40をクリーニングするように構成されているが、転写後にクリーニングされた感光体40を除電するように構成してもよい。
【0088】
なお、図2の作像ユニット18では感光体クリーニング装置内に潤滑剤供給部材が配置されているが、この構成ではクリーニングに入力してくるトナー量により潤滑剤78の供給が影響を受けやすいという欠点があった。
これに対して、図3のように感光体クリーニング装置の下流に潤滑剤供給部材を配置することで、形成される画像面積により転写残トナーや逆転写トナーの入力量が変化しても感光体40に潤滑剤78を安定に供給することができる。
【0089】
図4には帯電ローラ70の概略構成が示されている。
同図において帯電ローラ70は、導電性支持体である芯金70Aと、帯電部材としての樹脂層70Bと、感光体40との間のギャップを保持するギャップ保持部材70Cとから構成される。芯金70Aはステンレス等の金属が用いられる。
【0090】
芯金70Aが細すぎると帯電部材の切削加工時や、感光体40に加圧された時のたわみの影響が無視できなくなり、必要なギャップ精度が得られにくい。また、芯金70Aが太すぎる場合には帯電ローラ70が大型化したり、質量が重くなったりする問題がある。このため、芯金70Aの直径としては6〜10[mm]程度が望ましい。
【0091】
帯電ローラ70の樹脂層70Bは、10〜10[Ω・cm]の体積抵抗を持つ材料が好ましい。
抵抗が低すぎると感光体40にピンホール等の欠陥があった場合に帯電バイアスのリークが発生しやすく、抵抗が高すぎると放電が十分に発生せず均一な帯電電位を得ることができない。
基材となる樹脂に導電性材料を配合することで所望の体積抵抗を得ることができる。
【0092】
基材樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジェン−スチレン共重合体、ポリカーボネート等の樹脂を用いることができる。
【0093】
これらの基材樹脂は、成形性が良いので容易に成形加工することができる。導電性材料としては四級アンモニウム塩基を有する高分子化合物のようなイオン導電性材料が好ましい。
【0094】
四級アンモニウム塩基を有するポリオレフィンの例としては、四級アンモニウム塩基を有するポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソプレン、エチレンーエチルアクリレート共重合、エチレンーメチルアクリレート共重合、エチレン−酢酸ビニル共重合、エチレン−プロピレン共重合、エチレン−ヘキセン共重合等のポリオレフィンである。
【0095】
上述したように、四級アンモニウム塩基を有するポリオレフィンについて例示したが、四級アンモニウム塩基を有するポリオレフィン以外の高分子化合物であっても構わない。前記のイオン導電性材料は、二軸混練機、ニーダー等の手段を用いることにより、前記の基材樹脂に均一に配合される。配合された材料を芯金70A上に射出成形、あるいは押出成形にすることにより、容易にローラ形状に成形することができる。
イオン導電性材料と基材樹脂の配合量は基材樹脂が100重量部に対してイオン導電性材料30〜80重量部が望ましい。
【0096】
帯電ローラ70の樹脂層70Bの厚さとしては、0.5〜3[mm]が望ましい。樹脂層70Bが薄すぎると成形が困難である上に強度の面でも問題がある。樹脂層70Bが厚すぎると帯電ローラ70が大型化するうえに樹脂層70Bの実際の抵抗が大きくなるため帯電効率が低下してしまう。
【0097】
樹脂層70Bを成形した後、樹脂層70Bの両端にあらかじめ成形しておいたギャップ保持部材70Cを圧入や接着、あるいはその両方を併用して、芯金70Aに固定する。このようにして、樹脂層70Bとギャップ保持部材70Cを一体化してから、切削や研削等の加工を行って帯電ローラ70の外径を整えることで樹脂層70Bとギャップ保持部材70Cのフレの位相を揃えることができ、帯電ギャップの変動を低減することができる。
【0098】
ギャップ保持部材70Cの材質としては帯電部材の基材と同様にポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジェン−スチレン共重合体、ポリカーボネート等の樹脂を用いることができる。ただし、感光体40にギャップ保持部材70Cを当接させるので感光体40が損傷するのを防止するために、帯電部材より硬度の低いグレードを用いることが望ましい。
【0099】
摺動性に優れ感光体40に損傷を与えにくい樹脂材料として、ポリアセタール、エチレン−エチルアクリレート共重合体、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体等の樹脂を用いることもできる。また、樹脂層70Bやギャップ保持部材70Cにはコーティング等により、トナー等が付着しにくい表層を数10[μm]程度の厚さで形成することもできる。
【0100】
ギャップ保持部材70Cを感光体40の画像領域外に付き当てることで、帯電ローラ70の樹脂層70Bと感光体40との間にギャップを形成する。
【0101】
帯電ローラ70は、芯金101の端部に取り付けられたギヤが感光体40フランジに形成されたギヤとかみ合っており、図示しない感光体駆動モータにより感光体40が回転すると帯電ローラ70も感光体40とほぼ等しい線速で連れ回り方向に回転する。
【0102】
樹脂層70Bと感光体40とは接触することがないので、帯電ローラ70として硬い樹脂材料と有機感光体を使用した場合でも画像領域の感光体40に傷が付いたりすることはない。また、ギャップが広がりすぎると異常放電が発生し均一に帯電できなくなるため、最大ギャップは100[μm]程度以下に抑える必要がある。このような感光体40と帯電ローラ70間にギャップを設けた帯電ローラ70を使用する場合には、帯電バイアスとしてDC電圧にAC電圧を重畳することが望ましい。なお、帯電ローラ70に生じる問題点に関しては後で詳細を説明する。
【0103】
ところで、帯電ローラ70を感光体40に接触配置した場合には、帯電ローラ70が感光体40に連れ回り回転する際に感光体40表面の汚れが帯電ローラ70にこすりつけられるため、帯電ローラ70にトナー等の汚れが付着しやすく、さらに固着しやすい。
【0104】
これに対して、帯電ローラ70を感光体40に非接触で近接配置することで、帯電ローラ70表面が感光体40にこすりつけられることがないので、帯電ローラ70の汚れを大幅に低減することができる。
【0105】
しかしながら、感光体40を均一に帯電させるためにAC電圧を重畳しているために、非接触に配置した場合でもわずかながら感光体40上のトナーやトナー外添剤等が帯電ローラ70に飛翔して付着してしまう。
このため、接触配置の帯電ローラ70は言うまでもなく、近接配置の帯電ローラ70でも、帯電ローラ70をクリーニングするクリーニング手段として帯電クリーニング部材77を設け、帯電ローラ70の汚れを除去する必要がある。
【0106】
ところが、このような帯電クリーニング部材77を、常時、帯電ローラ70に接触させると、初期的には帯電ローラ70表面の汚れを除去できているものの、長期間で帯電クリーニング部材77に表面に溜まったトナー等の汚れを帯電ローラ70表面にこすりつけることになり、逆に帯電ローラ70を汚してしまう。
【0107】
一方、帯電ローラ70にACバイアスを印加しているため、感光体40上の汚れを静電的に引き寄せてしまうものの、逆に帯電ローラ70に付着した汚れを感光体40に静電的に戻す力も働く。
【0108】
上述した現象に起因して、帯電クリーニング部材77を間欠的に帯電ローラ70へ当接させることで、帯電クリーニング部材77に溜まるトナーなどの汚れの量を少なくできることから、常時、帯電ローラ70に帯電クリーニング部材77を当接させる場合と違って帯電クリーニング部材77の劣化を抑えて帯電ローラ70と帯電クリーニング部材77の両方の寿命を長くすることができる。
【0109】
本発明の実施の形態においては、帯電ローラ70に対する帯電クリーニング部材77の間欠的な当接を実行するに際して、感光体40での潤滑剤消費量の変動に対応させて帯電クリーニング部材77の接離条件を設定するようになっている。
特に、この接離条件は、帯電ローラ70での汚れ、つまり帯電ローラ70への潤滑剤やトナーの付着を抑えることができる帯電クリーニング部材77の当接条件を対象としている。
【0110】
上述した接離条件として、潤滑剤78の消費量が増加する場合に帯電ローラ70に対する帯電クリーニング部材77の接触頻度を高めることが対象となっている。
接触頻度を高めるためには、帯電ローラ70に対する帯電クリーニング部材77の当接間隔や当接時間が用いられる。
【0111】
接触頻度を高める理由は次の通りである。
感光体側での潤滑剤78の消費量が増加すると、クリーニングブレード75をすり抜けるトナーも増加するため、潤滑剤78による帯電ローラ70側での汚れが発生しやすくなる。このため、帯電ローラ70の汚れが増加する機会に帯電クリーニング部材77によるクリーニングを頻繁にあるいは長い時間行うことにより、帯電ローラ70に付着した潤滑剤やトナーを除去しやすくする。
これにより、帯電ローラ70での汚れが抑えられて帯電ローラ70とクリーニングブレード75の寿命を長くすることができる。
【0112】
図5は、帯電クリーニング部材77を帯電ローラ70に対して接離する接離機構の概略構成図である。
帯電クリーニング部材77はローラ形状であり、両端をアーム80で支持されている。
アーム80は、支軸80Aを支点として揺動可能に設けられており、クリーニング時以外には図示しない付勢部材の習性により、帯電クリーニング部材77を帯電ローラ70から離間させた状態が初期状態とされている。
【0113】
アーム80は、初期状態にある時、本体側に設置された図示しないソレノイドが励磁された際にアーム80の揺動端側に位置する突起部82を押し下げる(図5中、矢印Aと逆方向)ことにより、帯電クリーニング部材77を帯電ローラ70に当接させる。
【0114】
これにより、帯電クリーニング部材77は帯電ローラ70に連れ回り回転しながら、帯電ローラ70表面をクリーニングする。
クリーニング終了後は、本体側に設置された図示しないソレノイドを解除することで、アーム80の突起部82を図5中矢印A方向に移動させ、帯電クリーニング部材77を帯電ローラ70から離間させる。なお、図5中、符号70A1は、帯電ローラ70を支持する帯電フレームを示している。
【0115】
帯電クリーニング部材77が帯電ローラ70に対して離間している状態が初期状態とされていることにより、帯電クリーニング部材77への帯電ローラ70からのトナーの付着機会が少なくされるので、帯電クリーニング部材77でのトナー堆積量を抑えて帯電ローラ70を汚すのを抑制することができる。
【0116】
このような帯電クリーニング部材77の接離動作を画像形成動作中に実行すると、ソレノイドの動作による振動が露光装置21等に伝達して画像が乱れる恐れがある。このため、帯電クリーニング部材77による帯電ローラクリーニング動作を作像動作中以外に実施する必要がある。また、帯電ローラクリーニング動作が頻繁に実行されると、ユーザの待ち時間が増えることになるため、できる限り帯電ローラクリーニング動作の実行頻度を小さくすることが望ましい。
【0117】
帯電クリーニング部材77としてはスポンジ、ブラシ等の多様な材料を使用することができるが、帯電ローラ70に対して固定して当接した場合には当接面に溜まったトナー等がかえって帯電ローラ70に付着しやすくなるため、帯電クリーニング部材77は、ローラ形状として帯電ローラ70に連れまわり回転とすることが望ましい。
【0118】
図6は、ローラ形状の帯電クリーニング部材77の概略構成図である。
この帯電クリーニング部材77は、芯金86の周りにメラミン樹脂フォーム(多孔質材)87で覆った構成であり、メラミン樹脂フォーム(多孔質材)87を帯電ローラ70表面に当接させて帯電ローラ70の汚れを除去する。
メラミン樹脂フォーム87は他のスポンジ状の材料より強度に優れ、フォーム内に空間が多く存在するため大量のトナー等の汚れを保持することが可能であり、長期にわたってクリーニング性能を維持することができる。
【0119】
上述の構成を備えた帯電クリーニング部材77は、潤滑剤消費量の変動に基づき、図7に示す制御部1000により、帯電クリーニング部材77の接離条件が設定される。
図7は、制御部1000の構成を説明するためのブロック図であり、同図において制御部1000は、画像形成処理シーケンスプログラムを実行するプロセッサが用いられる。
【0120】
制御部1000では、潤滑剤消費量に影響する作像履歴の変化に基づき、帯電ローラ70に対する帯電クリーニング部材77の当接頻度を設定する。
このため、制御部1000の入力側には、各作像ユニットでの作像履歴、いわゆる、感光体40Y,C,M,Bkの使用履歴を記憶保存しているメモリ1001が接続され、出力側には、帯電クリーニング部材77の接離駆動源として用いられるソレノイドの駆動部1002が接続されている。
上述した使用履歴には、感光体ドラムへのトナーの付着量、換言すれば残留トナー量に影響する画像面積に関する情報も保存されている。
【0121】
制御部1000では、潤滑剤78として、ステアリン酸亜鉛および窒化ホウ素を混合した潤滑剤78が用いられる場合を対象として、潤滑剤消費量の変動を前述したメモリ1001内に取り込まれている作像履歴や画像面積から判断し、消費量が増加傾向に変動したと判断した場合には、その増加傾向に応じて帯電クリーニング部材77の接触頻度を高める制御を行う。
【0122】
潤滑剤消費量は、作像履歴や画像面積が増加するに従い、累積量が増加する傾向となる。この場合の作像履歴は感光体40の走行距離が用いられる。
制御部1000では、累積量に影響する感光体40の走行距離に閾値を設け、この閾値を基準として走行距離を判別した結果に応じてソレノイドの励磁回数あるいは励磁時間を設定することにより、帯電ローラ70に対する帯電クリーニング部材77の接触頻度を高めるようになっている。
【0123】
図8は、制御部1000で実行される制御手順を説明するためのフローチャートであり、同図に示す制御手順は、次に挙げる実施例1の条件に基づく。
【実施例1】
【0124】
リコー製プリンタ「Imagio MPC600」の帯電クリーニング部材を接離可能に改造した実験機を用い、図3に示した潤滑剤供給装置の構成を対象とした作像ユニットを用いる。
帯電クリーニング部材77は、金属製の芯金86とメラミン樹脂フォーム87から構成される図6に示したローラ構造を用いる。
【0125】
潤滑剤78は、ステアリン酸亜鉛を主成分とする脂肪酸金属塩を95重量部と、窒化ホウ素を5重量部の比率で混合し圧縮成形したものを用い、潤滑剤供給部材としては、毛足3mm、繊維径200μm、1平方インチあたりの植毛密度が15万本のブラシローラを用いた。
【0126】
各色の画像面積5%とし、1ジョブあたりA4サイズの転写紙25枚の条件で通紙試験を実施した。
【0127】
試験は感光体40を含む作像ユニットがすべて新品の状態から開始し、感光体40の走行距離(感光体線速×感光体回転時間)が10kmになるまでは200枚毎、走行距離が10〜30kmまでは500枚毎、走行距離30km以降は1000枚毎に帯電ローラ(図2において符号70で示す部材)のクリーニングを実行した。帯電ローラのクリーニングは帯電ローラクリーナを帯電ローラに10秒間当接させた状態で感光体40と帯電ローラを回転させて帯電ローラクリーニング動作を実行した。
【0128】
以上の条件に基づき手順を説明すると次の通りである。
図8において、作像履歴(走行距離)が取り込まれ(ST1)、その結果が予め設定されている閾値(10km未満、10〜30km、30km以降)に達しているかどうかを判別する(ST2,3,4)。
走行距離と閾値との対比結果に応じて、帯電クリーニング部材77の当接間隔(10km未満では200枚毎、10〜30kmでは500枚毎、30km以降は1000枚毎)が設定され(ST5,6,7)、各当接間隔時期において帯電クリーニング部材77を帯電ローラ70に当接させる時間がソレノイドの励磁時間として設定される(ST8)。なお、走行距離と閾値との対比において30km以降と判断できない場合には、装置異常と判断して警報などのエラー処理が実行される(ST9)。
【0129】
以上の実施例においては、常温常湿環境で走行距離120km(通紙枚数では30万枚に相当)まで実験をしたところ、クリーニングブレードでの摩擦係数の増加や帯電ローラの汚れが原因する異常画像の発生を観察することがなかった。
【0130】
以上の実施例に対する比較例を次に挙げる。
(比較例1)
上述した実施例における条件のうちで、1000枚毎に帯電クリーニング部材77を帯電ローラ70に当接させる点を除いた条件で実験した。
常温常湿環境で通紙試験を実施したところ、走行距離で10km程度(通紙枚数で2.5万枚)経過したころからハーフトーン画像で縦スジ状の濃度ムラが発生し、帯電ローラにスジ状の汚れがあった。潤滑剤78の漏れが多く帯電ローラをクリーニングしきれていなかったために、早期に帯電ローラ汚れによる異常画像が発生した。
【0131】
(比較例2)
潤滑剤をステアリン酸亜鉛を主成分とする脂肪酸金属塩のみからなるものに変更した以外は比較例1と同じ条件で通紙試験を行った。
走行距離で60km(通紙枚数で15万枚)過ぎから帯電ローラ汚れによりハーフトーン画像で縦スジ状の濃度ムラが発生し始めた。塗布ブレードの摩耗が進行し、塗布ブレードからの潤滑剤のすり抜けが増大していたために、経時で潤滑剤の漏れが多くなり帯電ローラ汚れによる異常画像が発生した。
【符号の説明】
【0132】
10 中間転写ベル
18Y,C,M,Bk 作像ユニット
40CY,C,M,Bk 感光体
70 帯電ローラ
70A 芯金
70B 樹脂層
70C ギャップ保持部材
77 クリーニング部材
78 潤滑剤
80 アーム
82 アーム突起部
87 メラミン樹脂フォーム
100 画像形成装置本体
1000 制御部
1001 作像履歴保存用メモリ
1002 ソレノイドの駆動部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0133】
【特許文献1】特開2009−300861号公報
【特許文献2】特開2009−58559号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成が可能な作像部に設けられて表面に潤滑剤を供給される潜像担持体の帯電に用いられる帯電装置であって、
帯電部材に付着する転写残トナーや異物を除去するために、該帯電部材に対して接離可能なクリーニング手段と、
前記クリーニング手段を前記帯電部材に接離させる駆動部の駆動態位を制御可能な制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記潤滑剤の消費量変動に対応して前記帯電部材へのトナーや異物の付着を抑える状態となるように前記クリーニング手段の接離条件を変化させることを特徴とする帯電装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記クリーニング手段の接離条件として、潤滑剤の供給量が増加するのに対応して前記帯電部材に対する前記クリーニング手段の当接割合を増加させることを特徴とする請求項1記載の帯電装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記クリーニング手段の当接割合を、前記帯電部材に対する前記クリーニング手段の当接間隔あるいは当接時間のいずれかまたはその両方を変化させて設定することを特徴とする請求項1または2記載の帯電装置。
【請求項4】
前記クリーニング手段として、芯金とクリーニング用のメラミン樹脂フォームが用いられることを特徴とする請求項1乃至3のうちの一つに記載の帯電装置。
【請求項5】
前記帯電部材はローラ形状とされ、少なくとも帯電領域が前記潜像担持体に非接触で配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のうちの一つに記載の帯電装置。
【請求項6】
潜像担持体が設けられている作像部を少なくとも一つ備え、該潜像担持体の帯電工程に請求項1乃至5のうちの一つに記載の帯電装置が用いられることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
前記潜像担持体に供給される潤滑剤として、ステアリン酸亜鉛と窒化ホウ素を含む潤滑剤が用いられることを特徴とする請求項6記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記潜像担持体は、最表層に保護層が形成された有機感光体であり、外保護層には、金属酸化物粒子が分散されていることを特徴とする請求項6または7記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−72894(P2013−72894A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209694(P2011−209694)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】